IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧 ▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特開2024-164837製造装置、情報処理装置、および製造方法
<>
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図1
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図2
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図3
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図4
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図5
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図6
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図7
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図8
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図9
  • 特開-製造装置、情報処理装置、および製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164837
(43)【公開日】2024-11-27
(54)【発明の名称】製造装置、情報処理装置、および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/36 20060101AFI20241120BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241120BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241120BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20241120BHJP
【FI】
C12M1/36
C12M1/34 D
C12M1/00 D
C12N1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079663
(22)【出願日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2023080000
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】會澤 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】平田 宏司
(72)【発明者】
【氏名】坂上 真弓
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029BB01
4B029CC01
4B029DF06
4B029FA11
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065BC11
(57)【要約】
【課題】細胞の増殖特性を考慮したセルストックを製作すること。
【解決手段】実施形態に係る製造装置は、取得部と、決定部と、充填部とを備える。取得部は、細胞懸濁液の使用時における細胞の増殖特性に関する情報を取得する。決定部は、増殖特性に関する情報に基づいて、収容容器の一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定する。充填部は、充填量の細胞懸濁液を収容するための収容容器に充填量の細胞懸濁液を充填する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞懸濁液の使用時における細胞の増殖特性に関する情報を取得する取得部と、
前記増殖特性に関する情報に基づいて、収容容器の一つ分に対応する前記細胞懸濁液の充填量を決定する決定部と、
前記充填量の前記細胞懸濁液を収容するための前記収容容器に前記充填量の前記細胞懸濁液を充填する充填部と
を具備する、製造装置。
【請求項2】
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の増殖速度を含み、
前記決定部は、前記増殖速度に基づいて、前記充填量を決定する、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の倍加時間を含み、
前記決定部は、前記倍加時間に基づいて、前記充填量を決定する、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項4】
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の増殖曲線を含み、
前記決定部は、前記増殖曲線に基づいて、前記充填量を決定する、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項5】
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の初代培養時の第1の増殖特性情報および前記細胞を凍結および解凍した後の模擬培養時の第2の増殖特性情報を含み、
前記決定部は、前記第1の増殖特性情報および前記第2の増殖特性情報に基づいて、前記充填量を決定する、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項6】
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の由来する検体の検体情報を含み、
前記決定部は、前記検体情報に基づいて、前記充填量を決定する、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項7】
前記収容容器を供給する供給部
を更に具備する、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項8】
前記供給部は、前記充填量に応じた前記収容容器を製作する、
請求項7に記載の製造装置。
【請求項9】
前記供給部は、ブロー成形によって前記収容容器を製作する、
請求項8に記載の製造装置。
【請求項10】
前記供給部は、前記充填量に基づいて、前記収容容器の容量を調整する、
請求項7に記載の製造装置。
【請求項11】
前記供給部は、前記充填量に基づいて、複数の収容容器から前記収容容器を選択する、
請求項7に記載の製造装置。
【請求項12】
前記複数の収容容器は、サイズ、材質、および規格の少なくとも一つが異なる、
請求項11に記載の製造装置。
【請求項13】
前記充填量を操作者に提示させる制御部
を更に具備し、
前記供給部は、前記操作者からの指示を契機として前記収容容器を供給する、
請求項7に記載の製造装置。
【請求項14】
前記取得部は、前記細胞懸濁液に関する懸濁液情報と、前記細胞の細胞培養期間および目標細胞数を含む目標条件とを取得し、
前記決定部は、前記増殖特性に関する情報、前記懸濁液情報、および前記目標条件に基づいて、前記充填量を決定する、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項15】
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の倍加時間を含み、
前記決定部は、前記倍加時間、前記懸濁液情報、および前記目標条件に基づいて、前記充填量を決定する、
請求項14に記載の製造装置。
【請求項16】
前記懸濁液情報は、前記細胞懸濁液の総量と、前記細胞懸濁液中の生細胞数および細胞濃度の少なくとも一つとを含む、
請求項14に記載の製造装置。
【請求項17】
前記細胞懸濁液は、細胞加工物であり、
前記取得部は、前記細胞加工物に関する加工物情報と、前記細胞加工物の投与を受ける対象者の体重情報とを取得し、
前記決定部は、前記加工物情報および前記体重情報に基づいて、前記充填量を決定する、
請求項1に記載の製造装置。
【請求項18】
細胞懸濁液の使用時における細胞の増殖特性に関する情報を取得する取得部と、
前記増殖特性に関する情報に基づいて、収容容器の一つ分に対応する前記細胞懸濁液の充填量を決定する決定部と
を具備する、情報処理装置。
【請求項19】
細胞懸濁液の使用時における細胞の増殖特性に関する情報を取得することと、
前記増殖特性に関する情報に基づいて、収容容器の一つ分に対応する前記細胞懸濁液の充填量を決定することと、
前記充填量の前記細胞懸濁液を収容するための前記収容容器に前記充填量の前記細胞懸濁液を充填することと
を具備する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、製造装置、情報処理装置、および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞を保管するためのセルストックの製作では、細胞の由来(例えば、ドナーの違いおよび組織の違い)や増殖特性(例えば、細胞の倍加時間)に関わらず、同種の細胞であれば容器当たりの保存細胞数が一律に定められている。このように製作されたセルストックを原材料として細胞加工物の製造を行う際、特に、細胞の増殖特性のばらつきによって、細胞を量産化するための大量培養(拡大培養)後の細胞数が異なることがある。
【0003】
例えば、細胞の増殖特性のばらつきとして、あるドナーに由来する細胞では増殖が遅く、他のドナーに由来する細胞では増殖が速いことがある。また、ドナーの違いに限らず、由来する組織の違いなどによっても、細胞の増殖特性が異なることがある。そのため、拡大培養後の細胞数が目標とする細胞数よりも少ない場合には、追加の拡大培養を行う必要があり、製造スケジュールにずれが生じ得る。他方、増殖が速い細胞では、拡大培養時において想定していない継代が必要となることがあり、余分な作業が生じ得る。また、想定よりも早いタイミングで継代が必要となれば、スケジュールを調整する必要がある。よって、何れの場合であっても、細胞の増殖特性が考慮されずに製作されたセルストックは、後工程の作業コストを増大させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-23141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、細胞の増殖特性を考慮したセルストックを製作することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る製造装置は、取得部と、決定部と、充填部とを備える。取得部は、細胞懸濁液の使用時における細胞の増殖特性に関する情報を取得する。決定部は、増殖特性に関する情報に基づいて、収容容器の一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定する。充填部は、充填量の細胞懸濁液を収容するための収容容器に充填量の細胞懸濁液を充填する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る製造装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態におけるユーザの作業および製造装置の動作を例示するワークフローである。
図3図3は、第1の実施形態に係る製造装置の具体的な動作を例示するフローチャートである。
図4図4は、細胞毎の増殖特性を考慮した培養に関する説明図である。
図5図5は、第2の実施形態におけるユーザの作業を例示するワークフローである。
図6図6は、第3の実施形態に係る製造装置の保存容器の供給方法を例示するフローチャートである。
図7図7は、第4の実施形態に係る製造装置の保存容器の供給方法を例示するフローチャートである。
図8図8は、第5の実施形態に係る製造装置の保存容器の供給方法を例示するフローチャートである。
図9図9は、第6の実施形態に係る情報処理装置の構成例を示す図である。
図10図10は、従来の細胞毎の増殖特性を考慮していない培養に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、製造装置の実施形態について詳細に説明する。実施形態に係る製造装置は、培養された細胞を含有する細胞懸濁液を保存容器に充填した細胞含有製品の製造に関するものである。以下の実施形態では、主に細胞含有製品を保存容器に充填させたセルストックを作製することについて説明する。尚、以降では、単に「培養」と記載されている場合、特別な説明がなければ、「拡大培養」の意味であるものとする。また、セルストックの作製後、細胞含有製品がすぐに利用される場合もあるため、「保存容器」は、細胞懸濁液を収容する収容容器として用いられてもよい。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る製造装置1の構成例を示す図である。製造装置1は、充填機構2、駆動機構3、入力インタフェース4、出力インタフェース5、通信インタフェース6、記憶回路7、および制御回路8を備える。
【0010】
充填機構2は、製造装置1の外部から供給される細胞懸濁液を貯留し、貯留された細胞懸濁液を充填量に応じた保存容器に充填する。具体的には、充填機構2は、細胞液貯留部21(貯留部)、容器供給部22(供給部)、および細胞液充填部23(充填部)を備える。
【0011】
細胞液貯留部21は、製造装置1の外部から供給される細胞懸濁液を貯留する容器である。細胞液貯留部21は、回転子などの攪拌部を有し、細胞懸濁液を攪拌させることができる。また、細胞液貯留部21は、樹脂製チューブなどの管路を介して細胞液充填部23と接続される。尚、回転子を駆動させるために、充填機構2は、細胞液貯留部21の下部にスターラーを有してもよい。
【0012】
容器供給部22は、制御回路8の制御に従い、細胞懸濁液の充填量に応じた保存容器を供給する。保存容器の供給方法には、保存容器の製作、可変保存容器(可変容器)の容量調整、および異なる複数の保存容器から最適な保存容器の選択などの方法がある。これらの具体的な説明は、以降の実施形態において述べられる。尚、容器供給部22は、ユーザに対して適切な保存容器を提示し、ユーザが保存容器を取得するようにしてもよい。
【0013】
細胞液充填部23は、制御回路8の制御に従い、細胞液貯留部21に貯留された細胞懸濁液を、容器供給部22により供給された保存容器に充填する。細胞液充填部23は、ポンプおよび開閉弁を有し、制御回路8の指示による充填量の細胞懸濁液を細胞液貯留部21から保存容器に充填する。尚、細胞液充填部23は、ユーザが取得した保存容器を手動で設置できる構成でもよい。
【0014】
なお、充填機構2は、細胞懸濁液を充填した保存容器を出力する(取り出す)ための取り出し口を備えてもよい。
【0015】
駆動機構3は、制御回路8の制御に従い、充填機構2を駆動させる。駆動機構3は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、およびリードスクリューにより実現される。例えば、駆動機構3は、細胞液貯留部21のスターラー、容器供給部22、および細胞液充填部23の各部を駆動させる。
【0016】
入力インタフェース4は、操作者(ユーザ)の操作によって、例えば、細胞の培養期間(細胞培養期間)および目標とする細胞数(目標細胞数)を含む目標条件の設定を受け付ける。入力インタフェース4は、例えば、マウス、キーボード、および、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッドにより実現される。入力インタフェース4は、制御回路8に接続され、ユーザから入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路8へ出力する。
【0017】
なお、本明細書において、入力インタフェース4は、マウスおよびキーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限らない。例えば、入力インタフェース4は、製造装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路8へ出力する処理回路でもよい。
【0018】
出力インタフェース5は、制御回路8に接続され、制御回路8から入力される信号を出力する。出力インタフェース5は、例えば、表示回路、印刷回路、および音声デバイスにより実現される。
【0019】
表示回路は、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、およびプラズマディスプレイを含む。また、表示回路は、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、当該ビデオ信号を外部へ出力する処理回路でもよい。印刷回路は、例えば、プリンタを含む。また、印刷回路は。印刷対象を表すデータを外部へ出力する処理回路でもよい。音声デバイスは、例えば、スピーカを含む。また、音声デバイスは、音声信号を外部へ出力する処理回路でもよい。
【0020】
通信インタフェース6は、例えば、サーバと接続する。通信インタフェース6は、制御回路8の制御に従い、サーバから、セルストックを作製する細胞に関する情報(細胞情報)を受信する。細胞情報は、例えば、細胞懸濁液の使用時(細胞培養時など)における細胞の増殖特性に関する情報(増殖特性情報)、および細胞懸濁液に関する情報(懸濁液情報)を含む。
【0021】
増殖特性情報は、例えば、細胞の増殖速度または倍加時間、および細胞の増殖曲線の少なくとも一方を含む。また例えば、増殖特性情報は、細胞の由来する検体の検体情報(例えば、年齢、性別、およびバイオマーカ)を含んでもよい。懸濁液情報は、例えば、細胞懸濁液の総量と、細胞懸濁液中の生細胞数および細胞濃度の少なくとも一つとを含む。
【0022】
記憶回路7は、例えば、磁気的記録媒体、光学的記録媒体、または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含む。尚、記憶回路7は、必ずしも単一の記憶装置により実現されない。例えば、記憶回路7は、複数の記憶装置により実現されてもよい。
【0023】
また、記憶回路7は、例えば、ユーザから入力された目標条件、通信インタフェース6によってサーバを介して取得した細胞情報、および通信インタフェース6によって病院内ネットワークNWを介して取得した患者情報を記憶する。また、記憶回路7は、制御回路8で読み出される動作プログラムを記憶する。
【0024】
制御回路8は、製造装置1の中枢として機能するプロセッサである。例えば、制御回路8は、充填機構2の各部を駆動させるための制御信号を駆動機構3へと出力する。尚、制御回路8は、記憶回路7に記憶されているデータの少なくとも一部を記憶するメモリを備えてもよい。
【0025】
また、制御回路8は、記憶回路7に記憶されている動作プログラムを実行することで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、制御回路8は、動作プログラムを実行することで、取得機能81(取得部)、決定機能82(決定部)、および制御機能83(制御部)を有する。尚、本実施形態では、単一のプロセッサによって取得機能81、決定機能82、および制御機能83が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することにより取得機能81、決定機能82、および制御機能83を実現してもよい。
【0026】
取得機能81により、制御回路8は、細胞情報を取得する。具体的には、制御回路8は、細胞懸濁液に含まれる細胞の細胞培養時の増殖特性情報を取得する。また、制御回路8は、懸濁液情報および目標条件を取得してもよい。
【0027】
決定機能82により、制御回路8は、増殖特性情報に基づいて、セルストックの一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定する。具体的には、例えば、増殖特性情報に細胞の増殖速度を含む場合、制御回路8は、増殖速度に基づいて、充填量を決定する。増殖特性情報に細胞の倍加時間を含む場合、制御回路8は、倍加時間に基づいて、充填量を決定してもよい。増殖特性情報に細胞の増殖曲線を含む場合、制御回路8は、増殖曲線に基づいて、充填量を決定してもよい。尚、制御回路8は、複数の充填量を決定し、決定した複数の充填量を充填量の候補としてもよい。
【0028】
また、制御回路8は、決定機能82により、増殖特性情報、懸濁液情報、および目標条件に基づいて、充填量を決定してもよい。具体的には、例えば、増殖特性情報に細胞の増殖速度を含む場合、制御回路8は、増殖速度、懸濁液情報、および目標条件に基づいて、充填量を決定してもよい。また、増殖特性情報に細胞の増殖曲線を含む場合、制御回路8は、増殖曲線、懸濁液情報、および目標条件に基づいて、充填量を決定してもよい。また、増殖特性情報に細胞の倍加時間を含む場合、制御回路8は、倍加時間、懸濁液情報、および目標条件に基づいて、充填量を決定してもよい。
【0029】
制御機能83により、制御回路8は、製造装置1の各部の動作を制御する。具体的には、制御回路8は、容器供給部22に対して、決定した充填量の細胞懸濁液を収容するための保存容器を供給させる。また、制御回路8は、細胞液充填部23に対して、供給された保存容器に決定した充填量の細胞懸濁液を充填させる。
【0030】
なお、制御回路8は、制御機能83により、出力インタフェース5としてのディスプレイに、決定した充填量、或いは複数の充填量を含む充填量の候補を提示してもよい。また、制御回路8は、制御機能83により、ユーザからの指示を受け付けたか否か判定してもよい。また、制御回路8は、制御機能83により、細胞懸濁液を充填した保存容器を充填機構2の取り出し口から出力(排出)させてもよい。
【0031】
以上、第1の実施形態に係る製造装置1の構成について説明した。次に、第1の実施形態におけるユーザの作業および製造装置の動作について説明する。
【0032】
図2は、第1の実施形態におけるユーザの作業および製造装置の動作を例示するワークフローである。以下では、セルストック作製に関する一連の流れについて、図2のワークフローを用いて説明する。尚、ユーザの作業の各工程の詳細については、それぞれ任意の方法を用いればよいため、説明を省略する。
【0033】
(ステップST210)
初めに、ユーザは、検体準備を行う。具体的には、ユーザは、ドナーから血液または組織を採取する。ユーザは、採取した血液または組織から培養に用いる細胞を単離する。細胞を単離した後、ユーザは、細胞播種および細胞観察により培養開始の準備を行う。
【0034】
なお、株化された細胞を使用する場合、その殆どが凍結されていることから、ユーザは、凍結した細胞を解凍する処理を行った後に培養開始の準備を行う。
【0035】
(ステップST220)
培養開始の準備が行われた後、ユーザは、細胞を培養(初代培養)する。初代培養は、本実施形態では、増殖特性情報が未知の細胞を培養することを意味する。具体的には、ユーザは、細胞のタイプ(例えば、接着性細胞、半接着性細胞、および浮遊性細胞)に応じた培養容器を準備し培養を行う。細胞培養期間はユーザによって任意に決定される。細胞培養時に得られる情報は、例えば、増殖特性情報としてサーバで管理される。尚、初代培養では、継代が行われてもよい。
【0036】
増殖特性情報は、例えば、初代培養開始時の播種細胞数、初代培養中の任意の時点までの培養時間および当該時点での細胞数、並びに初代培養終了時までの培養時間および終了時点での細胞数に基づいて算出される細胞の増殖速度または倍加時間、および細胞の増殖曲線である。
【0037】
(ステップST230)
初代培養が終了した後、ユーザは、培養後の細胞を培養容器から回収する。尚、培養している細胞が接着性細胞、或いは半接着性細胞であれば、ユーザは、培養容器などに接着している細胞を剥離した後に回収する。
【0038】
(ステップST240)
細胞を回収した後、ユーザは、回収した細胞のセルカウントを行う。セルカウントには、例えば、血球計算盤による手動カウント、およびフローサイトメトリーおよび顕微鏡画像に基づく自動カウントがある。セルカウント時に得られる情報は、例えば、培養された細胞の総数である生細胞数としてサーバで管理される。
【0039】
(ステップST250)
セルカウントを行った後、ユーザは、任意の細胞濃度に応じた量の細胞保存液を用いて細胞懸濁液を作製する。細胞懸濁液の作製時に得られる情報は、例えば、作製した細胞懸濁液に含まれる細胞数の割合(濃度)である細胞濃度、および作製した細胞懸濁液の総量である細胞懸濁液総量としてサーバで管理される。ユーザは、作製した細胞懸濁液を製造装置1へと供給する。
【0040】
(ステップST260)
ステップST220において増殖特性情報がサーバで管理された後、製造装置1は、増殖特性情報に基づいて、セルストックの一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定する。ただし、増殖特性情報だけを用いて充填量を決定するには必要な情報が不足している場合があるため、ステップST240およびステップST250において懸濁液情報(生細胞数、細胞濃度、および細胞懸濁液総量)がサーバで管理された後、製造装置1は、増殖特性情報および懸濁液情報に基づいて充填量を決定してもよい。また、製造装置1は、ユーザから入力された目標条件(細胞培養期間および目標細胞数)に更に基づいて充填量を決定してもよい。以下、充填量の決定に関して具体例を挙げて説明する。
【0041】
例えば、ある細胞について、培養開始時の播種細胞数を0.5×10^6個、および細胞培養期間を120時間として初代培養を行った結果、培養終了持の回収した生細胞数が4×10^6個であった場合を想定する。この場合、120時間で細胞数が8倍に増えていることから、細胞倍加時間は40時間となる。
【0042】
この細胞を用いて更に培養を行う場合、目標細胞数を4×10^6個、および細胞培養期間を120時間と仮定すると、培養開始時の播種細胞数は、0.5×10^6個となる。また、細胞懸濁液の濃度を0.5×10^6個/mLと仮定すると、セルストックの一つ分に対応する保存容器に充填量1.0mLの細胞懸濁液を充填することとなる。
【0043】
次に、増殖特性の異なる3系統の細胞(細胞A、細胞B、および細胞C)について、それぞれセルストックを作製し、それぞれ同一の細胞培養期間(例えば、120時間)および目標細胞数(例えば、4×10^6個)を設定することを考える。これら3系統の細胞の細胞倍加時間がそれぞれ30時間、40時間、および60時間である場合、培養開始時の播種細胞数は、それぞれ0.25×10^6個、0.5×10^6個、および1.0×10^6個となる。また、細胞懸濁液の濃度を0.5×10^6個/mLで一定であると仮定すると、セルストックの一つ分に対応する保存容器にそれぞれ充填量が0.5mL、1.0mL、および2.0mLの細胞懸濁液を充填することとなる。
【0044】
なお、実際の増殖能(増殖特性)は、培養時の細胞密度の影響も受けると考えられるため、実績のある播種時の細胞密度(播種密度)の範囲で拡大培養を開始することが望ましいと考えられる。即ち、セルストックの充填細胞数を用いた播種密度が、セルストック作製前の培養期間、および細胞数のデータ取得時における、播種時の細胞密度を下回らないように設定されることが望ましいと考えられる。例えば、上述の細胞A(細胞倍加時間が30時間)において、播種時の細胞密度を検討した上で、結果として保存容器あたりの充填細胞数が、0.25×10^6個よりも多い細胞数で決定されることもありうる。これらのことから、増殖特性情報には、播種密度が含まれてもよい。
【0045】
更に、増殖特性情報として、細胞形態が含まれてもよい。細胞形態は、例えば、培養中の細胞を撮影し、撮影画像を画像解析することによって取得される。
【0046】
(ステップST270)
セルストックの一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定した後、製造装置1は、充填量の細胞懸濁液を収容するための保存容器を供給する。
【0047】
(ステップST280)
保存容器を供給した後、製造装置1は、供給された保存容器に決定された充填量の細胞懸濁液を充填する。製造装置1は、細胞懸濁液が充填された複数の保存容器をセルストックとして出力する。
【0048】
(ステップST290)
製造装置1からセルストックが出力された後、ユーザは、セルストックを任意の方法により保管する。セルストックは、典型的には凍結保管される。
【0049】
なお、ステップST220、ステップST240、およびステップST250において、細胞情報(増殖特性情報および懸濁液情報)は、サーバで管理されるとしたがこれに限らない。例えば、細胞情報は、製造装置1の記憶回路7で管理されてもよい。
【0050】
以上、第1の実施形態におけるユーザの作業および製造装置の動作について説明した。次に、第1の実施形態に係る製造装置の具体的な動作について説明する。
【0051】
図3は、第1の実施形態に係る製造装置の具体的な動作を例示するフローチャートである。尚、図3のフローチャートの開始時において、細胞液貯留部21には、保存容器に充填するための細胞懸濁液が貯留されているものとする。
【0052】
(ステップST310)
制御回路8は、取得機能81を実行する。取得機能81を実行すると、制御回路8は、細胞情報および目標条件を取得する。
【0053】
(ステップST320)
細胞情報および目標条件を取得した後、制御回路8は、決定機能82を実行する。決定機能82を実行すると、制御回路8は、細胞情報および目標条件に基づいて充填量を決定する。
【0054】
(ステップST330)
充填量を決定した後、制御回路8は、制御機能83を実行する。制御機能83を実行すると、制御回路8は、充填量の候補をユーザに提示する。具体的には、制御回路8は、出力インタフェース5としてのディスプレイに充填量の候補を表示させる。
【0055】
(ステップST340)
充填量の候補を表示した後、制御回路8は、制御機能83により、ユーザからの指示を受け付けたか否か判定する。ユーザからの指示は、提示された充填量の候補から充填量を選択する指示である。ユーザからの指示を受け付けている場合、処理はステップST350へと進む。ユーザからの指示を受け付けていない場合、ユーザからの指示を受け付けるまでステップST340を待機する。
【0056】
(ステップST350)
ユーザからの指示を受け付けた後、制御回路8は、制御機能83により、容器供給部22に対して、充填量に応じた保存容器を供給させる。この時、容器供給部22は、充填量に応じた保存容器を供給する。
【0057】
(ステップST360)
保存容器を供給させた後、制御回路8は、制御機能83により、細胞液充填部23に対して、細胞懸濁液を保存容器に充填させる。この時、細胞液充填部23は、決定された充填量の細胞懸濁液を保存容器に充填する。
【0058】
(ステップST370)
細胞懸濁液を保存容器に充填させた後、制御回路8は、制御機能83により、充填機構2に対して、細胞懸濁液を充填した保存容器を出力させる。この時、充填機構2は、細胞懸濁液を充填した保存容器を出力する。ステップST370の後、図3のフローチャートの処理は終了する。
【0059】
以上、第1の実施形態に係る製造装置の具体的な動作について説明した。次に、従来の増殖特性を考慮していない培養と、第1の実施形態における増殖特性を考慮した培養とについて、図10および図4を用いて説明する。
【0060】
図10は、従来の細胞毎の増殖特性を考慮していない培養に関する説明図である。図10には、前述した増殖特性の異なる細胞A、細胞B、および細胞Cのそれぞれについて、細胞培養前の状態と細胞培養後の状態とが示されている。
【0061】
細胞Aに関する保存容器1010には、例えば、細胞Aを含む細胞懸濁液が1.0mL充填されている。また例えば、細胞Bに関する保存容器1020および細胞Cに関する保存容器1030にも、細胞Bを含む細胞懸濁液および細胞Cを含む細胞懸濁液がそれぞれ1.0mL充填されている。
【0062】
細胞A、細胞B、および細胞Cは、それぞれ増殖特性が異なっている。そのため、細胞培養後の生細胞数もそれぞれ異なっている。図9では、細胞Aについて培養容器4つ分の培養が行われ、細胞Bについて培養容器3つ分の培養が行われ、細胞Cについて培養容器2つ分の培養が行われたことが示されている。目標条件を培養容器3つ分とした場合、細胞Aでは培養容器一つ分が余剰であり、細胞Cでは培養容器一つ分が不足することとなる。
【0063】
図4は、細胞毎の増殖特性を考慮した培養に関する説明図である。図4には、前述した増殖特性の異なる細胞A、細胞B、および細胞Cのそれぞれについて、細胞培養前の状態と細胞培養後の状態とが示されている。
【0064】
細胞Aに関する保存容器410には、例えば、細胞Aを含む細胞懸濁液が0.5mL充填されている。また、細胞Bに関する保存容器420には、例えば、細胞Bを含む細胞懸濁液が1.0mL充填されている。また、細胞Cに関する保存容器430には、例えば、細胞Cを含む細胞懸濁液が2.0mL充填されている。
【0065】
保存容器410、保存容器420、および保存容器430は、例えば、それぞれ充填量に応じたサイズを有している。例えば、保存容器410の容積は、保存容器420の容積よりも小さい。また、保存容器420の容積は、保存容器430の容積よりも小さい。
【0066】
細胞A、細胞B、および細胞Cは、それぞれ増殖特性が異なっている。そのため、本実施形態では、個々の細胞について細胞培養前の充填量(細胞数)が異なるようにしている。これによって、増殖特性が異なる複数の細胞であっても、細胞培養後の生細胞数を略同数にすることができる。図4では、それぞれの細胞について培養容器3つ分の培養が行われたことが示されている。
【0067】
以上説明したように、第1の実施形態に係る製造装置は、細胞懸濁液に含まれる細胞の細胞培養時の増殖特性に関する情報を取得し、増殖特性に関する情報に基づいて、セルストックの一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定し、充填量の細胞懸濁液を収容するための保存容器に充填量の細胞懸濁液を充填する。
【0068】
従って、第1の実施形態に係る製造装置は、セルストックに充填する細胞懸濁液に関して、増殖特性のばらつきを考慮することにより、拡大培養後の細胞数を目標とする細胞数に略等しくすることができる。よって、第1の実施形態に係る製造装置は、細胞の増殖特性を考慮したセルストックを製作することができる。
【0069】
例えば、本製造装置で製作したセルストックを拡大培養に用いた場合、増殖能の高い細胞では細胞数が少ない状態から拡大培養をスタートさせ、増殖能の低い細胞では細胞数が多い状態から拡大培養をスタートさせることができる。このことから、一定の拡大培養期間の後には、両者とも同程度の細胞数に達することが見込める。即ち、目標細胞数の判定基準を同じタイミングでクリアすることが想定される。これにより、培養後のばらつきを低減することが可能となり、製造スケジュールの計画および実行に係る管理についても容易になることが考えられる。
【0070】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、主にドナーから採取した細胞を用いて細胞培養時の増殖特性情報を取得することについて説明した。他方、第2の実施形態では、ドナーから採取した細胞について、凍結および解凍の工程も考慮した増殖特性情報を取得することについて説明する。
【0071】
ドナーから採取した細胞から作製したセルストックは、凍結保管されることが想定される。しかし、初代培養によって取得された増殖特性情報は、凍結および解凍の工程による影響が考慮されていない。よって、ドナーから採取した細胞を一旦凍結および解凍した後に培養し、増殖特性情報を取得することは有用であると考えられる。以降では、凍結および解凍の工程を行っていない細胞の細胞培養時の増殖特性に関する情報を第1の増殖特性情報と呼ぶ。また、凍結および解凍を行っている細胞の細胞培養時の増殖特性に関する情報を第2の増殖特性情報と呼ぶ。尚、増殖特性情報は、第1の増殖特性情報および第2の増殖特性情報を含んでもよい。
【0072】
図5は、第2の実施形態におけるユーザの作業を例示するワークフローである。図5のワークフローは、図2のワークフローのステップST210およびステップST220を置き換えたものに相当する。尚、図5のワークフローでは、ユーザ作業の細胞を回収するステップ以降(例えば、図2のステップST230以降)と、製造装置の動作とについては図示を省略している。
【0073】
(ステップST510)
初めに、ユーザは、検体準備を行う。本実施形態では、ドナーから採取した血液または組織を用いるものとする。よって、ユーザは、採取した血液または組織から培養に用いる細胞を単離する。細胞を単離した後、ユーザは、初代培養を行う細胞と、模擬培養を行う細胞とのそれぞれについて、細胞播種および細胞観察により培養開始の準備を行う。模擬培養とは、本実施形態では、細胞を凍結および解凍する工程を経た後に培養することを意味する。
【0074】
(ステップST520)
培養開始の準備が行われた後、ユーザは、細胞を培養(初代培養)する。具体的には、ユーザは、細胞のタイプ(例えば、接着性細胞、半接着性細胞、および浮遊性細胞)に応じた培養容器を準備し培養を行う。初代培養時に得られる情報は、例えば、第1の増殖特性情報としてサーバで管理される。
【0075】
(ステップST530)
ステップST520と並行して、ユーザは、摸擬培養用の細胞を凍結させる。この工程は、図2のステップST290におけるセルストックの凍結保管を模したものである。
【0076】
(ステップST540)
細胞を凍結させた後、ユーザは、凍結させた細胞を解凍させる。
【0077】
(ステップST550)
細胞を解凍させた後、ユーザは、細胞を培養(模擬培養)する。この工程は、実質的には初代培養であるため、ステップST520と同様である。模擬培養時に得られる情報は、例えば、第2の増殖特性情報としてサーバで管理される。
【0078】
なお、ステップST550において第2の増殖特性情報がサーバで管理された後、図示しない製造装置1は、第1の増殖特性情報および第2の増殖特性情報に基づいて、セルストックの一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定する。
【0079】
具体的には、第2の増殖特性情報に含まれる細胞の増殖速度が第1の増殖特性情報に含まれる細胞の増殖速度よりも遅い場合、製造装置1は、第1の増殖特性情報に基づく第1の充填量と第2の増殖特性情報に基づく第2の充填量とを決定してもよい。この場合、第2の充填量は、第1の充填量よりも多い。また、製造装置1は、決定された充填量の候補をユーザに提示し、いずれかの充填量を選択する指示を受け付けてもよい。
【0080】
更に、初代培養と模擬培養とは、培養条件(培地の組成、濃度、温度、湿度、および培養容器の種類など)を同じにすることが望ましい。培養条件を同じにすることによって、増殖特性以外の要因による影響を低減させることができると考える。
【0081】
以上より、第2の実施形態では、制御回路8は、決定機能82により、第1の増殖特性情報および第2の増殖特性情報に基づいて、セルストックの一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定する。換言すると、増殖特性情報は初代培養時の第1の増殖特性情報および模擬培養時の第2の増殖特性情報を含み、制御回路8は、第1の増殖特性情報および第2の増殖特性情報に基づいて、充填量を決定する。
【0082】
以上説明したように、第2の実施形態に係る製造装置は、細胞懸濁液に含まれる細胞の細胞培養時の増殖特性に関する情報を取得し、増殖特性に関する情報に基づいて、セルストックの一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定し、充填量の細胞懸濁液を収容するための保存容器に充填量の細胞懸濁液を充填する。第2の実施形態において、増殖特性に関する情報は、細胞の初代培養時の第1の増殖特性情報および細胞を凍結および解凍した後の模擬培養時の第2の増殖特性情報を含み、本製造装置は、第1の増殖特性および第2の増殖特性に基づいて充填量を決定する。
【0083】
従って、第2の実施形態に係る製造装置は、細胞懸濁液の凍結および解凍による増殖特性の影響を考慮したセルストックを製作することができる。
【0084】
(第2の実施形態の他の実施例)
第2の実施形態では、ドナーから採取した細胞について、それぞれ初代培養および模擬培養を行うことについて説明した。他方、第2の実施形態の他の実施例では、模擬培養で用いる細胞を、初代培養後の細胞としてもよい。以下では、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0085】
第2の実施形態の他の実施例では、ステップST530において、ドナーから採取した細胞を凍結させずに、初代培養後の細胞を凍結させる。即ち、第2の実施形態の他の実施例では、模擬培養で用いる細胞を初代培養後の細胞とする。セルストックの作成では、基本的に初代培養後の細胞が凍結保管されるため、初代培養後の細胞について凍結・解凍した後に模擬培養することは、実際の使用環境を反映したものとなる。よって、第2の実施形態の他の実施例で得られる増殖特性情報は、第2の実施形態で得られる増殖特性情報よりも高い確度が見込める。
【0086】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態では、容器供給部22による保存容器の供給において、任意の方法が用いられることを説明した。第3の実施形態では、容器供給部22による保存容器の具体的な供給方法として、保存容器を製作する方法について説明する。
【0087】
第3の実施形態において、制御回路8は、制御機能83により、充填量に応じた金型を選択する。金型を選択した後、制御回路8は、容器供給部22に対して、選択した金型を用いて保存容器を製作させる。また、制御回路8は、容器供給部22に対して、製作された保存容器の滅菌処理または微粒子除去を行わせる。また、制御回路8は、容器供給部22に対して、充填量に応じた保存容器を出力させる。
【0088】
第3の実施形態において、容器供給部22は、例えば、ブロー成形機である。容器供給部22は、制御回路8の制御に従い、選択された金型を用いて保存容器を製作する。具体的には、容器供給部22は、例えば、溶かした樹脂を金型に入れ、樹脂の内部に圧縮空気を入れるブロー成形によって保存容器を製作する。また、容器供給部22は、制御回路8の制御に従い、製作した保存容器の滅菌処理または微粒子除去を行う。また、容器供給部22は、制御回路8の制御に従い、充填量に応じた保存容器を出力する。
【0089】
なお、第3の実施形態において、容器供給部22は、保存容器の製作に必要な金型および保存容器の原材料となる樹脂を備えてもよい。また、容器供給部22は、ブロー成形に限らず、他の手法で保存容器を作製してもよい。また、容器供給部22は、金型および樹脂を用いた保存容器の作製に限らず、他の方法によって充填量に応じた保存容器を作製してもよい。
【0090】
図6は、第3の実施形態に係る製造装置の保存容器の供給方法を例示するフローチャートである。図6のフローチャートは、図3のフローチャートのステップST350の具体例である。図6のフローチャートは、図3のステップST340の処理後に開始する。
【0091】
(ステップST610)
ステップST340においてユーザからの指示を受け付けた後、制御回路8は、制御機能83により、充填量に応じた金型を選択する。具体的には、制御回路8は、容器供給部22が有する複数の金型と、複数の金型それぞれに対応する充填量とを対応付けた情報に基づいて、充填量に応じた金型を選択する。
【0092】
(ステップST620)
金型を選択した後、制御回路8は、金型の情報を容器供給部22へ出力する。容器供給部22は、選択された金型を用いて保存容器を製作する。具体的には、容器供給部22は、金型へ樹脂をブロー成形することによって保存容器を製作する。
【0093】
(ステップST630)
保存容器を製作した後、容器供給部22は、製作した保存容器の滅菌処理または微粒子除去を行う。尚、容器供給部22は、製作した保存容器の滅菌処理および微粒子除去の両方を行ってもよいし、必要に応じてそれら全てを行わなくてもよい。
【0094】
(ステップST640)
保存容器の滅菌処理または微粒子除去を行った後、容器供給部22は、充填量に応じた保存容器を出力する。ステップST640の後、処理は、図3のステップST360へと進む。
【0095】
以上説明したように、第3の実施形態に係る製造装置は、保存容器を供給する際に、充填量に応じた保存容器を製作する。
【0096】
従って、第3の実施形態に係る製造装置は、充填量に応じた最適な保存容器を製作することができるため、ロット毎、或いはドナー毎に最適なセルストックを作製することができる。
【0097】
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、容器供給部22による保存容器の具体的な供給方法として、保存容器を製作する方法について説明した。第4の実施形態では、容器供給部22による保存容器の具体的な供給方法として、可変容器を容量調整する方法について説明する。
【0098】
第4の実施形態において、制御回路8は、制御機能83により、充填量に応じて可変容器の容量を決定する。可変容器の容量を決定した後、制御回路8は、容器供給部22に対して、決定された容量に応じて可変容器の容量を調整させる。また、制御回路8は、容器供給部22に対して、充填量に応じた保存容器を出力させる。
【0099】
第4の実施形態において、容器供給部22は、制御回路8の制御に従い、決定された容量に応じて可変容器の容量を調整する。具体的には、容器供給部22は、例えば、可変容器としての滅菌済みの細胞保存バッグの一部を、シーラーなどで溶着することによって可変容器の容量を調整する。また、容器供給部22は、制御回路8の制御に従い、充填量に応じた保存容器を出力する。
【0100】
なお、第4の実施形態において、容器供給部22は、可変容器の容量調整に必要なシーラーを備えてもよい。
【0101】
図7は、第4の実施形態に係る製造装置の保存容器の供給方法を例示するフローチャートである。図7のフローチャートは、図3のフローチャートのステップST350の具体例である。図7のフローチャートは、図3のステップST340の処理後に開始する。
【0102】
(ステップST710)
ステップST340においてユーザからの指示を受け付けた後、制御回路8は、制御機能83により、充填量に応じて可変容器の容量を決定する。
【0103】
(ステップST720)
可変容器の容量を決定した後、制御回路8は、可変容器の容量の情報を容器供給部22へ出力する。容器供給部22は、決定された容量に応じて可変容器の容量を調整する。具体的には、容器供給部22は、細胞保存バッグの一部を、シーラーなどで溶着することによって可変容器の容量を調整する。
【0104】
例えば、平板面積100%の状態で20mLの細胞懸濁液を充填可能な細胞保存バッグに細胞懸濁液を10mL充填する場合、容器供給部22は、平板面積の50%の領域を溶着して、細胞保存バッグの容量を調整する。この容量調整により、細胞懸濁液を充填した細胞保存バッグの厚さを略等しくすることができる。容量調整を行わない場合、細胞懸濁液の充填量が異なると細胞保存バッグの厚さも異なることとなる。細胞保存バッグの厚さが異なると、細胞保存バッグの凍結保管時に、充填されている細胞懸濁液に含まれる細胞の生存率に良くない影響を及ぼす可能性がある。このような可能性を避けるため、細胞懸濁液の充填量が異なっていても、細胞保存バッグの厚さを略等しくすることは有用であると考える。
【0105】
また、容器供給部22は、細胞保存バッグの周辺部を溶着することが望ましいと考えられる。細胞保存バッグの周辺部を溶着することにより、細胞懸濁液を細胞保存バッグの中心部に充填することができるため、充填されている細胞懸濁液を外部の衝撃から保護することが期待できる。
【0106】
(ステップST730)
可変容器の容量を調整した後、容器供給部22は、充填量に応じた保存容器を出力する。ステップST730の後、処理は図3のステップST360へと進む。
【0107】
以上説明したように、第4の実施形態に係る製造装置は、保存容器を供給する際に、充填量に基づいて、保存容器の容量を調整する。
【0108】
従って、第4の実施形態に係る製造装置は、容量変更可能な保存容器(例えば、細胞保存バッグ)を用いることにより、充填量が異なる場合であっても同一の規格(例えば、材質および容量変更前のサイズ)の保存容器でセルストックを製作することができる。
【0109】
従来、細胞保存容器の容積のラインナップは、前述のとおり、任意の容量を網羅するようには設計されていない。クライオチューブなどに対して比較的、任意の容量に応じることが可能な細胞保存バッグを用いて充填をする場合においては、充填量に応じて厚さの異なる細胞含有製品ができあがる。それらを保管時に凍結する場合、細胞懸濁液の厚さの違いが細胞の生存率に悪影響を及ぼす可能性があると考えられる。凍結保管の際に細胞内に生じる水結晶の挙動に起因する細胞膜の破損が、凍結融解後の細胞の生存率に影響すると考えられていることから、細胞の生存を高めるためには、凍結時の冷却温度を厳密に管理する必要がある。そのためには、厚さの異なる細胞含有製品ではなく、均一な厚さをもつ細胞含有製品からなるセルストックの方が、冷却温度の管理の上で扱いやすいと考えられる。
【0110】
(第5の実施形態)
第4の実施形態では、容器供給部22による保存容器の具体的な供給方法として、可変容器を容量調整する方法について説明した。第5の実施形態では、容器供給部22による保存容器の具体的な供給方法として、異なる複数の保存容器から最適な保存容器を選択する方法について説明する。
【0111】
第5の実施形態において、制御回路8は、制御機能83により、充填量に応じた容量の容器を選択する。容器を選択した後、制御回路8は、容器供給部22に対して、選択した容器としての充填量に応じた保存容器を出力させる。
【0112】
第5の実施形態において、容器供給部22は、制御回路8の制御に従い、充填量に応じた保存容器である選択された容器を出力する。
【0113】
図8は、第5の実施形態に係る製造装置の保存容器の供給方法を例示するフローチャートである。図8のフローチャートは、図3のフローチャートのステップST350の具体例である。図8のフローチャートは、図3のステップST340の処理後に開始する。
【0114】
(ステップST810)
ステップST340においてユーザからの指示を受け付けた後、制御回路8は、制御機能83により、充填量に応じた容量の容器を選択する。具体的には、制御回路8は、充填量の情報に基づき、決定された充填量に最適な容器を選択する。制御回路8は、サイズの異なる複数の容器を選択してもよい。また、選択される複数の容器は、材質および規格の異なる容器でもよく、バイアル瓶、クライオチューブ、および細胞保存バッグなどがある。
【0115】
(ステップST820)
制御回路8は、制御機能83により、容器の候補をユーザに提示する。具体的には、制御回路8は、出力インタフェース5としてのディスプレイに容器の候補を表示させる。
【0116】
(ステップST830)
制御回路8は、制御機能83により、ユーザからの指示を受け付けたか否か判定する。ユーザからの指示は、提示された容器の候補から充填させる容器を選択する指示である。ユーザからの指示を受け付けている場合、処理はステップST840へと進む。ユーザからの指示を受け付けていない場合、ユーザからの指示を受け付けるまでステップST340を待機する。
【0117】
(ステップST840)
ユーザからの指示を受け付けた後、制御回路8は、選択された容器の情報を容器供給部22へ出力する。容器供給部22は、選択された容器である充填量に応じた保存容器を出力する。ステップST840の後、処理は図3のステップST360へと進む。
【0118】
以上説明したように、第5の実施形態に係る製造装置は、保存容器を供給する際に、充填量に基づいて、サイズの異なる複数の保存容器から最適な保存容器を選択する。
【0119】
従って、第5の実施形態に係る製造装置は、サイズ、材質、および規格などが異なる複数の保存容器から最適な保存容器を選択することができるため、細胞の種類によらず最適なセルストックを製作することができる。
【0120】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、セルストックの作製について説明したがこれに限らない。例えば、患者に適用される細胞加工物(再生医療等製品および特定細胞加工物など)の製造に適用されてもよい。具体的には、製造装置1は、細胞情報、患者投与に必要な体重1kgあたりの細胞数、および患者の体重に応じて細胞加工物の充填量を決定し、充填量に応じた保存容器に細胞加工物を充填する。
【0121】
細胞加工物を扱う場合、患者への投与の利便性などの情報も踏まえて、製造装置1は、充填量に応じた保存容器を供給してよい。例えば、患者へ時間を空けて複数回投与する分の細胞加工物の充填量に応じた保存容器を供給する場合、製造装置1は、一つの保存容器に細胞加工物を充填してもよいし、複数の保存容器に分けて細胞加工物を充填してもよい。複数の保存容器を分ける理由には、例えば、常温時の保存期間が関係している。基本的に保存容器は凍結保管されるため、解凍後の常温での保存期間が長い場合には、複数回の投与分の細胞加工物を一つの保存容器で保存してもよい。一方、解凍後の常温での保存期間が短い場合には、1回の投与分の細胞加工物を都度解凍できるように、複数回の投与分の細胞加工物を複数の保存容器で保存してもよい。
【0122】
他の実施形態において、制御回路8は、取得機能81により、加工物情報および体重情報を取得する。加工物情報は、細胞加工物に関し、例えば、保存方法および投与方法に関する情報を含む。体重情報は、細胞加工物の投与を受ける患者等(対象者)の体重の情報である。制御回路8は、決定機能82により、加工物情報および体重情報に基づいて、細胞加工物の充填量を決定する。制御回路8は、制御機能83により、容器供給部22に対して、決定した充填量の細胞加工物を収容するための保存容器を供給させる。また、制御回路8は、細胞液充填部23に対して、供給された保存容器に決定した充填量の細胞加工物を充填させる。
【0123】
他の実施形態において、容器供給部22は、制御回路8の制御に従い、決定した充填量の細胞加工物を収容するための保存容器を供給する。また、細胞液充填部23は、制御回路8の制御に従い、供給した保存容器に決定した充填量の細胞加工物を充填する。
【0124】
以上説明したように、他の実施形態に係る製造装置は、細胞懸濁液としての細胞加工物について、上記各実施形態と同様に、細胞加工物の充填量を決定し、充填量に応じた保存容器を供給し、保存容器に充填量の細胞加工物を充填する。
【0125】
従って、他の実施形態に係る製造装置は、細胞加工物の種類によらず、適切な保存容器に細胞加工物を充填することができる。
【0126】
例えば、本製造装置を用いて再生医療等製品を製造する場合、ユーザは、安定した製造スケジュールのもとで、追加の拡大培養、および継代などの余分な作業を回避することができる。また別の側面として、再生医療等製品の提供を受ける患者は、適切なタイミングで当該製品の投与(或いは適応)を受けることができる。
【0127】
なお、本実施形態に係る製造装置は、初代培養の際にiPS細胞を樹立させ、このiPS細胞を用いたセルストックの作製にも用いることができる。
【0128】
(第6の実施形態)
第1の実施形態から第5の実施形態までは、セルストックの一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定し、決定した充填量の細胞懸濁液を保存容器に充填することによって、セルストックを製造する製造装置について説明した。他方、第6の実施形態では、セルストックの製造までは行わず、細胞懸濁液の充填量を決定する情報処理装置について説明する。
【0129】
図9は、第6の実施形態に係る情報処理装置10の構成例を示す図である。情報処理装置10は、入力インタフェース4A、出力インタフェース5A、通信インタフェース6A、記憶回路7A、および制御回路8Aを備える。尚、入力インタフェース4A、出力インタフェース5A、通信インタフェース6A、および記憶回路7Aは、製造装置1の入力インタフェース4、出力インタフェース5、通信インタフェース6、および記憶回路7と同様のため、説明を省略する。
【0130】
制御回路8Aは、情報処理装置10の中枢として機能するプロセッサである。例えば、制御回路は、記憶回路7Aに記憶されている処理プログラムを実行することで、この処理プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、制御回路8は、処理プログラムを実行することで、取得機能81A(取得部)、決定機能82A(決定部)、および制御機能83A(制御部)を有する。尚、本実施形態では、単一のプロセッサによって取得機能81A、決定機能82A、および制御機能83Aが実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが処理プログラムを実行することにより取得機能81A、決定機能82A、および制御機能83Aを実現してもよい。また、取得機能81Aおよび決定機能82Aは、製造装置1における制御回路8の取得機能81および決定機能82と同様のため、説明を省略する。
【0131】
制御機能83Aにより、制御回路8Aは、出力インタフェース5Aとしてのディスプレイに、決定した充填量、或いは充填量の候補を提示する。
【0132】
以上、第6の実施形態に係る情報処理装置10の構成について説明した。第6の実施形態に係る情報処理装置の動作は、図3のステップST310からステップST330までと略同様であるため説明を省略する。
【0133】
以上説明したように、第6の実施形態に係る情報処理装置は、細胞懸濁液に含まれる細胞の細胞培養時の増殖特性に関する情報を取得し、増殖特性に関する情報に基づいて、セルストックの一つ分に対応する細胞懸濁液の充填量を決定する。
【0134】
従って、第6の実施形態に係る情報処理装置は、セルストックに充填する細胞懸濁液に関して、増殖特性のばらつきを考慮することにより、拡大培養後の細胞数を目標とする細胞数に略等しくすることができる。よって、第6の実施形態に係る情報処理装置は、細胞の増殖特性を考慮したセルストックの製作に利用することができる。
【0135】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、細胞の増殖特性を考慮したセルストックを製作することができる。
【0136】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0137】
加えて、実施形態に係る各機能は、前記処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに前記手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0138】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0139】
以上の実施形態に関し、発明の一側面及び選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0140】
(付記1)
細胞懸濁液の使用時における細胞の増殖特性に関する情報を取得する取得部と、
前記増殖特性に関する情報に基づいて、収容容器の一つ分に対応する前記細胞懸濁液の充填量を決定する決定部と、
前記充填量の前記細胞懸濁液を収容するための前記収容容器に前記充填量の前記細胞懸濁液を充填する充填部と
を具備する、製造装置。
【0141】
(付記2)
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の増殖速度を含み、
前記決定部は、前記増殖速度に基づいて、前記充填量を決定してもよい。
【0142】
(付記3)
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の倍加時間を含み、
前記決定部は、前記倍加時間に基づいて、前記充填量を決定してもよい。
【0143】
(付記4)
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の増殖曲線を含み、
前記決定部は、前記増殖曲線に基づいて、前記充填量を決定してもよい。
【0144】
(付記5)
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の初代培養時の第1の増殖特性情報および前記細胞を凍結および解凍した後の模擬培養時の第2の増殖特性情報を含み、
前記決定部は、前記第1の増殖特性情報および前記第2の増殖特性情報に基づいて、前記充填量を決定してもよい。
【0145】
(付記6)
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の由来する検体の検体情報を含み、
前記決定部は、前記検体情報に基づいて、前記充填量を決定してもよい。
【0146】
(付記7)
前記収容容器を供給する供給部
を更に具備してもよい。
【0147】
(付記8)
前記供給部は、前記充填量に応じた前記収容容器を製作してもよい。
【0148】
(付記9)
前記供給部は、ブロー成形によって前記収容容器を製作してもよい。
【0149】
(付記10)
前記供給部は、前記充填量に基づいて、前記収容容器の容量を調整してもよい。
【0150】
(付記11)
前記供給部は、前記充填量に基づいて、複数の収容容器から前記収容容器を選択してもよい。
【0151】
(付記12)
前記複数の収容容器は、サイズ、材質、および規格の少なくとも一つが異なってもよい。
【0152】
(付記13)
前記充填量を操作者に提示させる制御部
を更に具備し、
前記供給部は、前記操作者からの指示を契機として前記収容容器を供給してもよい。
【0153】
(付記14)
前記取得部は、前記細胞懸濁液に関する懸濁液情報と、前記細胞の細胞培養期間および目標細胞数を含む目標条件とを取得し、
前記決定部は、前記増殖特性に関する情報、前記懸濁液情報、および前記目標条件に基づいて、前記充填量を決定してもよい。
【0154】
(付記15)
前記増殖特性に関する情報は、前記細胞の倍加時間を含み、
前記決定部は、前記倍加時間、前記懸濁液情報、および前記目標条件に基づいて、前記充填量を決定してもよい。
【0155】
(付記16)
前記懸濁液情報は、前記細胞懸濁液の総量と、前記細胞懸濁液中の生細胞数および細胞濃度の少なくとも一つとを含んでもよい。
【0156】
(付記17)
前記細胞懸濁液は、細胞加工物であり、
前記取得部は、前記細胞加工物に関する加工物情報と、前記細胞加工物の投与を受ける対象者の体重情報とを取得し、
前記決定部は、前記加工物情報および前記体重情報に基づいて、前記充填量を決定してもよい。
【0157】
(付記18)
細胞懸濁液の使用時における細胞の増殖特性に関する情報を取得する取得部と、
前記増殖特性に関する情報に基づいて、収容容器の一つ分に対応する前記細胞懸濁液の充填量を決定する決定部と
を具備する、情報処理装置。
【0158】
(付記19)
細胞懸濁液の使用時における細胞の増殖特性に関する情報を取得することと、
前記増殖特性に関する情報に基づいて、収容容器の一つ分に対応する前記細胞懸濁液の充填量を決定することと、
前記充填量の前記細胞懸濁液を収容するための前記収容容器に前記充填量の前記細胞懸濁液を充填することと
を具備する、製造方法。
【符号の説明】
【0159】
1 製造装置
10 情報処理装置
2 充填機構
3 駆動機構
4,4A 入力インタフェース
5,5A 出力インタフェース
6,6A 通信インタフェース
7,7A 記憶回路
8,8A 制御回路
21 細胞液貯留部
22 容器供給部
23 細胞液充填部
81,81A 取得機能
82,82A 決定機能
83,83A 制御機能
410,420,430,1010,1020,1030 保存容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10