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特開2024-164844帯域外反射低減フィルタ、並びにレーダ送信機およびレーダ受信機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164844
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】帯域外反射低減フィルタ、並びにレーダ送信機およびレーダ受信機
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G01S7/03 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080484
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 昌樹
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AH40
5J070AK40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】通過帯域外の信号の反射を低減できる帯域外反射低減フィルタを提供すること。
【解決手段】帯域外反射低減フィルタは、入力される信号を2分岐して分岐後の信号を並列出力する電力分配合成器11と、並列入力される信号を合成して合成後の信号を出力する電力分配合成器12と、電力分配合成器11と電力分配合成器12を結ぶ信号ラインに接続されたLC直列共振回路13と、を備え、電力分配合成器12により2系統の信号が合成される際に、LC直列共振回路の共振周波数を含む通過帯域の信号は位相差なく合成され、通過帯域の帯域外の信号は位相差を持って合成されるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポート、第2のポート、および第3のポートを有し、前記第1のポートを介して入力される信号を2分岐して、分岐後の第1の信号を前記第2のポートから、分岐後の第2の信号を前記第3のポートから出力する第1の電力分配合成器と、
第4のポート、第5のポート、および第6のポートを有し、前記第4のポートは前記第2のポートに第1の信号ラインを介して接続され、前記第5のポートは前記第3のポートに第2の信号ラインを介して接続され、前記第4のポートおよび前記第5のポートから入力される信号を合成して、合成された信号を前記第6のポートから出力する第2の電力分配合成器と、
インダクタと前記インダクタに直列接続されたキャパシタとを有するLC直列共振回路であって、前記インダクタの前記キャパシタに接続されていない一端が前記第1の信号ラインおよび前記第2の信号ラインのうちいずれか一方にのみ接続され、前記キャパシタの前記インダクタに接続されていない一端がグラウンドに接続されたLC直列共振回路と、
を備え、
前記第1の信号ラインおよび前記第2の信号ラインの2系統の信号が前記第2の電力分配合成器により合成される際に、前記LC直列共振回路の共振周波数を含む通過帯域の信号は位相差なく合成され、前記通過帯域の帯域外の信号は位相差を持って合成されるように構成されている、
帯域外反射低減フィルタ。
【請求項2】
前記インダクタは可変インダクタであり、前記キャパシタは可変キャパシタである、
請求項1に記載された帯域外反射低減フィルタ。
【請求項3】
前記第1の電力分配合成器は、前記第1の信号に対して、前記第2の信号の位相を180°反転させて出力する、
請求項1または2に記載された帯域外反射低減フィルタ。
【請求項4】
前記第1の電力分配合成器は、前記第1の信号に対して、前記第2の信号の位相を90°遅延させて出力し、
前記第2の電力分配合成器は、前記第4のポートから入力される信号に対して、前記第5のポートから入力される信号の位相を90°遅延させて前記合成を行う、
請求項1または2に記載された帯域外反射低減フィルタ。
【請求項5】
入力信号を混合して周波数変換後の信号を出力するミキサと、
前記ミキサに接続された、請求項1に記載された帯域外反射低減フィルタと、
を備えるレーダ送信機。
【請求項6】
入力信号を混合して周波数変換後の信号を出力するミキサと、
前記ミキサに接続された、請求項1に記載された帯域外反射低減フィルタと、
を備えるレーダ受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、帯域外反射低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ用の送信機または受信機では、ミキサを使った周波数変換を用いることが多い(例えば、非特許文献1)。その際、ミキサからインターモジュレーション(以下、「IM」と表記する。)スプリアスが発生する。レーダ用の送受信機では、低IMスプリアスであることが求められることから、一般的にはミキサの後段にバンドパスフィルタ(以下、「BPF」と表記する。)などのフィルタ回路を配置し、フィルタ回路によりIMスプリアスを抑圧する(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】市川裕一/青木勝共著「復刻版 GHz時代の高周波回路設計」第16頁、CQ出版、2015年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の技術によれば、通過帯域以外の信号を反射させるという課題がある。すなわち、通過帯域以外の信号が反射されると、反射された反射信号がミキサに逆流し、反射信号と入力信号の合成によりIMスプリアスが増加してしまうこととなる。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、通過帯域外の信号の反射を低減できる帯域外反射低減技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態による帯域外反射低減フィルタの一側面は、第1のポート、第2のポート、および第3のポートを有し、前記第1のポートを介して入力される信号を2分岐して、分岐後の第1の信号を前記第2のポートから、分岐後の第2の信号を前記第3のポートから出力する第1の電力分配合成器と、第4のポート、第5のポート、および第6のポートを有し、前記第4のポートは前記第2のポートに第1の信号ラインを介して接続され、前記第5のポートは前記第3のポートに第2の信号ラインを介して接続され、前記第4のポートおよび前記第5のポートから入力される信号を合成して、合成された信号を前記第6のポートから出力する第2の電力分配合成器と、インダクタと前記インダクタに直列接続されたキャパシタとを有するLC直列共振回路であって、前記インダクタの前記キャパシタに接続されていない一端が前記第1の信号ラインおよび前記第2の信号ラインのうちいずれか一方にのみ接続され、前記キャパシタの前記インダクタに接続されていない一端がグラウンドに接続されたLC直列共振回路と、を備え、前記第1の信号ラインおよび前記第2の信号ラインの2系統の信号が前記第2の電力分配合成器により合成される際に、前記LC直列共振回路の共振周波数を含む通過帯域の信号は位相差なく合成され、前記通過帯域の帯域外の信号は位相差を持って合成されるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態による帯域外反射低減フィルタの一側面によれば、通過帯域外の信号の反射を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】帯域外反射低減フィルタを含むレーダ送信機またはレーダ受信機の構成例を示す図である。
図2】帯域外反射低減フィルタのフィルタリング動作を示す図である。
図3】比較例としての、BPFおよびアイソレータを用いた回路構成の図である。
図4】反射特性図である。
図5】抑圧特性図である。
図6】帯域外反射低減フィルタの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本開示における種々の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において同一または類似の符号を付された構成要素は、同一または類似の構成または機能を有するものであり、そのような構成要素についての重複する説明は省略する。
【0010】
また、本開示において、「または」との用語は、特段の記載が無い限り、包括的論理和の意味で用いる。「または」との用語を排他的論理和の意味で用いる場合は、その旨明示する。
【0011】
実施の形態1.
<構成>
(レーダ送信機;レーダ受信機)
図1および図2を参照して、本開示の実施の形態1による帯域外反射低減フィルタ1および帯域外反射低減フィルタ1を備えるレーダ送信機またはレーダ受信機について説明する。図1は、帯域外反射低減フィルタ1を含むレーダ送信機またはレーダ受信機の構成例を示す図である。図1に示されているように、レーダ送信機またはレーダ受信機は、入力信号IN1およびIN2を混合して周波数変換後の信号を出力するミキサ2と、ミキサ2に接続され、ミキサ2から出力される周波数変換後の信号を受け付ける帯域外反射低減フィルタ1と、を備える。
【0012】
帯域外反射低減フィルタ1をレーダ受信機に用いる場合、レーダ受信機は公知の不図示の部材を備える。例えば、レーダ受信機は、LNA(Low Noise Amplifier)、局部発振器、IF増幅器、検出器、およびA/D変換器を備え、図1のミキサ2と帯域外反射低減フィルタ1は、LNAとIF増幅器の間に配置される。LNAがアンテナにより受信された受信信号を増幅して、増幅された信号が入力信号IN1としてミキサ2に入力される。また、ミキサ2には、局部発振器から出力される信号が入力信号IN2として入力される。ミキサ2は、入力信号IN1と入力信号IN2を混合して、周波数変換後の信号を帯域外反射低減フィルタ1へ出力する。帯域外反射低減フィルタ1は通過帯域の信号(IF信号)をIF増幅器へ出力し、IF増幅器はIF信号を増幅する。検出器は増幅されたIF信号からキャリアを除去し、キャリアが除去されたIF信号をA/D変換器に出力する。A/D変換器は、キャリアが除去されたIF信号をA/D変換する。A/D変換器は、変換後のデジタル信号を信号処理器へ出力する。帯域外反射低減フィルタ1をレーダ送信機に用いる場合も同様に、レーダ送信機は、図1のミキサ2と帯域外反射低減フィルタ1の他に、公知の不図示の部材を備える。
【0013】
(帯域外反射低減フィルタ)
帯域外反射低減フィルタ1は、IMスプリアスが重畳された所望の信号を2系統の信号に分岐し、いずれか一方の系統にはLC直列共振回路が接続されて共振周波数の信号に180°の位相差を与え、2系統の信号を合成する際に、LC直列共振回路の共振周波数を含む通過帯域の信号は位相差なく合成し、通過帯域の帯域外の信号は位相差を持って合成するように構成されている。このような機能を実現するために、帯域外反射低減フィルタ1は、図1に示されているように、電力分配合成器11、電力分配合成器12、およびLC直列共振回路13を備える。電力分配合成器11および電力分配合成器12は、ある信号を分配するために用いるか、複数の信号を合成するために用いるかという機能の相違があるだけであり、部材としては同一である。
【0014】
(電力分配合成器)
電力分配合成器11(第1の電力分配合成器)は、第1のポート、第2のポート、および第3のポートを有し、第1のポートを介して入力される信号を2分岐して、分岐後の第1の信号を第2のポートから、分岐後の第2の信号を第3のポートから出力する電力分配合成器である。
【0015】
電力分配合成器11の構成について、より具体的に説明をする。電力分配合成器11は、第1のポートとして入力ポート111を、第2のポートとして出力ポート112を、第3のポートとして出力ポート113を備える。入力ポート111は、ミキサ2に接続される。電力分配合成器11は、入力ポート111を介してミキサ2により周波数変換された信号を受け付け、受け付けた信号を出力ポート112および出力ポート113へ2つに分岐する。
【0016】
一例として、電力分配合成器11は、出力ポート112から出力される信号(第1の信号)に対して、出力ポート113から出力される信号(第2の信号)の位相を180°反転させて出力する。位相の反転は、180°の遅延でも、180°の進みでもよい。電力分配合成器11内の線路の長さを調節することにより位相差を付与することができる。出力ポート112は信号ライン14に接続されており、出力ポート112から信号ライン14上に分岐後の信号の一方が出力される。出力ポート113は信号ライン15に接続されており、出力ポート113から信号ライン15上に分岐後の信号の他方が出力される。
【0017】
電力分配合成器12(第2の電力分配合成器)は、第4のポート、第5のポート、および第6のポートを有し、第4のポートは電力分配合成器11の第2のポートに第1の信号ラインを介して接続され、第5のポートは電力分配合成器11の第3のポートに第2の信号ラインを介して接続され、第4のポートおよび第5のポートから入力される信号を合成して、合成された信号を第6のポートから出力する電力分配合成器である。
【0018】
電力分配合成器12の構成について、より具体的に説明をする。電力分配合成器12は、第4のポートとして入力ポート121を、第5のポートとして入力ポート122を、第6のポートとして出力ポート123を備える。入力ポート121は、第1の信号ラインとしての信号ライン14を介して、電力分配合成器11の出力ポート112に接続されている。入力ポート122は、第2の信号ラインとしての信号ライン15を介して、電力分配合成器11の出力ポート113に接続されている。
【0019】
一例として、入力ポート121から入力される信号と、入力ポート122から入力される信号との間に位相差が生じないように構成されている。合成された信号は、出力ポート123から出力される。
【0020】
(LC直列共振回路)
LC直列共振回路13は、インダクタと、インダクタに直列接続されたキャパシタとを有するLC直列共振回路であって、インダクタのキャパシタに接続されていない一端が第1の信号ラインおよび第2の信号ラインのうちいずれか一方にのみ接続され、キャパシタのインダクタに接続されていない一端がグラウンドに接続されたLC直列共振回路である。
【0021】
LC直列共振回路13の構成について、より具体的に説明をする。LC直列共振回路13は、インダクタ131およびキャパシタ132が直列に接続された共振回路である。一例として、インダクタ131の一端は第2の信号ラインである信号ライン15に接続され、インダクタ131の他端はキャパシタ132の一端に接続されている。キャパシタ132の他端は、グラウンドに接続されている。LC直列共振回路13の共振周波数は、ミキサ2に入力されるキャリアの周波数であるキャリア周波数と同一となるように設定されている。
【0022】
<動作>
次に、図2を参照して、帯域外反射低減フィルタ1の動作について説明する。
【0023】
まず、ミキサ2により、キャリア(例えばIN1)の周波数が信号波(例えばIN2)により変調され、周波数変換後の信号が帯域外反射低減フィルタ1に入力される。この周波数変換後の信号には、所望の信号の他に、不要な信号であるIMスプリアスも含まれている。
【0024】
電力分配合成器11は、周波数変換後の信号を入力ポート111を介して受け付け、周波数変換後の信号を2つの信号に分配する。分配後の一方の信号を出力ポート112から出力し、分配後の他方の信号を出力ポート113から出力する。ここで、出力ポート113から出力される信号は、出力ポート112から出力される信号に対して180°の位相差を有している。
【0025】
なお、図2では、電力分配合成器11に入力される信号のうち、電力分配合成器11により反射される信号をカーブ状の矢印で示しているが、この反射信号は図4を参照して後述するように微弱であるので問題ない。
【0026】
図2において、ウインドウW_112は出力ポート112から出力される信号を示し、ウインドウW_113は出力ポート113ら出力される信号を示す。ウインドウW_112により示されているように、出力ポート112から出力される信号には、通過信号P1と、不要信号U1が含まれている。また、ウインドウW_113により示されているように、出力ポート113から出力される信号には、通過信号P2と、不要信号U2が含まれている。通過信号P2と不要信号U2は、出力ポート112から出力される信号に対して180°の位相差を有している。
【0027】
出力ポート112から出力される信号は、電力分配合成器12の入力ポート121に入力される。
【0028】
他方、出力ポート113から出力される信号については、キャリア周波数と同一の共振周波数に設定されたLC直列共振回路13の作用を受ける。そのため、出力ポート113から出力される信号のうち、所望の信号(通過信号)については位相が180°回転する。出力ポート113から出力される信号のうち、不要信号については位相の回転が抑制される。位相の回転が抑制されることにより、位相が全く回らなくてもよい。すなわち、位相の回転が0°であってもよい。なお、不要信号の位相の回転を0°に抑制できる場合は、後段の電力分配合成器12により不要信号を完全にキャンセルできる。以下の説明では、不要信号の位相の回転が0°に抑制された場合を想定して説明をする。
【0029】
図2のウインドウW_113からウインドウW_122への遷移が、以上で説明した動作を表している。ウインドウW_113に示されている通過信号P2は、LC直列共振回路13の作用により位相が180°回転し、ウインドウW_122に示されている通過信号P2’となる。他方、ウインドウW_113に示されている不要信号U2は、LC直列共振回路13の作用を受けず、ウインドウW_122に示されている不要信号U2’となる。不要信号U2’は不要信号U2と同位相である。
【0030】
このようにして、電力分配合成器12の入力ポート121には、通過信号P1と、不要信号U1とが入力される。また、電力分配合成器12の入力ポート122には、通過信号P2’と、不要信号U2’とが入力される。また、電力分配合成器12は、これらの信号を同相で合成して、合成した信号を出力する。したがって、図2のウインドウW_OUTに示されているように、通過信号P1と通過信号P2’は同相で合成されて、P_OUTが生成される。また、不要信号U1と不要信号U2’は逆相で合成されて、振幅が0のU_OUTが生成される。最終的には、P_OUTとU_OUTが合成された信号が電力分配合成器12の出力ポート123から出力されるが、U_OUTは振幅が0であるので、P_OUTだけが出力されることとなる。したがって、ミキサ2により周波数変換された後の信号から不要信号(IMスプリアス)を除去して、所望の信号であるP_OUTを抽出することができる。
【0031】
<変形例1>
以上の説明では、インダクタ131のインダクタンスおよびキャパシタ132のキャパシタンスは固定値であることを想定して説明をした。しかしながら、インダクタ131のインダクタンスおよびキャパシタ132のキャパシタンスは可変であってもよい。
【0032】
ここで、図3を参照して、比較例に係るフィルタの構成について説明をする。図3に示されているように、比較例に係るフィルタは、実施の形態1による帯域外反射低減フィルタ1に相当する構成要素として、アイソレータ3と、バンドパスフィルタ4とを備える。
【0033】
比較例の構成によれば、ミキサ2により周波数変換された後の信号は、アイソレータ3を通過して、バンドパスフィルタ4に入力される。通過帯域の信号はバンドパスフィルタ4を通過し、通過帯域外の信号はバンドパスフィルタ4により反射される。この反射された信号はアイソレータ3によりグラウンドへ導かれることで除去される。このような比較例の構成には、汎用性が低いという課題がある。すなわち、比較例のようにアイソレータを用いる構成によれば、アイソレータのパラメータは固定であるので、キャリア周波数ごとにアイソレータを用意しなければならない。したがって、比較例の構成には、汎用性が低いという課題がある。
【0034】
これに対し、本変形例のように可変インダクタおよび可変キャパシタを用いることにより、用いるキャリアの周波数にLC直列共振回路13の共振周波数を柔軟に適合させることができるので、汎用性の高い帯域外反射低減フィルタ1を得ることができる。なお、共振周波数fは、f=1/2π(LC)1/2により定まる。式中、Lはインダクタンス、Cははキャパシタンスを表す。
【0035】
次に、図4および図5を参照して、実施の形態1による帯域外反射低減フィルタ1のフィルタ特性について説明をする。図4は反射特性図であり、入力信号の電力に対する反射信号の電力の比を表す。図5は抑圧特性図であり、通過信号の電力に対して不要信号の電力をどの程度抑圧できているかを示す。
【0036】
図4に示されているように、比較例によるフィルタ構成によれば、矢印で示した100Mhzの通過信号以外の周波数では0[dB]となっており、全反射されていることが分かる。これに対して、実施の形態1(変形例の場合も同様である。)による帯域外反射低減フィルタ1によれば、矢印で示した100Mhzの通過信号以外の周波数でも反射信号が十分に抑圧されていることが分かる。
【0037】
図5に示されているように、実施の形態1による帯域外反射低減フィルタ1も、比較例によるフィルタも、同程度に100Mhzの通過信号以外の不要信号を十分に抑圧できている。
【0038】
<変形例2>
以上の説明では、電力分配合成器11に関し、出力ポート113から出力される信号が、出力ポート112から出力される信号に対して180°の位相差を有するように構成されている場合について説明をした。
【0039】
しかしながら、本開示の技術はこの場合に限られない。所望の信号は同相で合成し、不要な信号は逆相で合成してキャンセルできれば良いので、不要な信号への位相ズレの与え方は種々ありうる。例えば、電力分配合成器11の出力ポート113から出力される信号が出力ポート112から出力される信号に対して90°の位相遅れを有し、かつ電力分配合成器12の入力ポート121から入力される信号に対して、入力ポート122から入力される信号の位相を90°遅延させて合成を行うように構成されていてもよい。電力分配合成器11および電力分配合成器12がこのように構成されている場合であっても、実施の形態1と同様の効果が奏される。
【0040】
<変形例3>
以上の説明では、LC直列共振回路13が信号ライン15に接続されている構成について説明をした。しかしながら、図6に示されているように、LC直列共振回路13―1は、信号ライン15に代えて信号ライン14に接続されていてもよい。このことは、出力ポート112、出力ポート113、入力ポート121、入力ポート122の位相差の組合せ方、例えば(0°,180°,0°,0°)の組合せ方か(0°,90°,0°,90°)の組合せ方かに関係ない。LC直列共振回路13―1が信号ライン14に接続されている場合であっても、実施の形態1と同様の効果が奏される。
【0041】
<付記>
以上で説明した種々の実施形態のいくつかの側面について、以下のとおりまとめる。
【0042】
(付記1)
付記1の帯域外反射低減フィルタ(1)は、第1のポート(111)、第2のポート(112)、および第3のポート(113)を有し、前記第1のポートを介して入力される信号を2分岐して、分岐後の第1の信号を前記第2のポートから、分岐後の第2の信号を前記第3のポートから出力する第1の電力分配合成器(11)と、
第4のポート(121)、第5のポート(122)、および第6のポート(123)を有し、前記第4のポートは前記第2のポートに第1の信号ライン(14)を介して接続され、前記第5のポートは前記第3のポートに第2の信号ライン(15)を介して接続され、前記第4のポートおよび前記第5のポートから入力される信号を合成して、合成された信号を前記第6のポートから出力する第2の電力分配合成器(12)と、
インダクタ(131)と前記インダクタに直列接続されたキャパシタ(132)とを有するLC直列共振回路であって、前記インダクタの前記キャパシタに接続されていない一端が前記第1の信号ラインおよび前記第2の信号ラインのうちいずれか一方にのみ接続され、前記キャパシタの前記インダクタに接続されていない一端がグラウンドに接続されたLC直列共振回路(13;13-1)と、
を備え、
前記第1の信号ラインおよび前記第2の信号ラインの2系統の信号が前記第2の電力分配合成器により合成される際に、前記LC直列共振回路の共振周波数を含む通過帯域の信号は位相差なく合成され、前記通過帯域の帯域外の信号は位相差を持って合成されるように構成されている。
【0043】
付記1において、前記通過帯域の帯域外の信号は、180°の位相差を持って合成されてよい。
【0044】
(付記2)
付記2の帯域外反射低減フィルタは、付記1に記載された帯域外反射低減フィルタであって、前記インダクタは可変インダクタであり、前記キャパシタは可変キャパシタである。
【0045】
(付記3)
付記3の帯域外反射低減フィルタは、付記1または2に記載された帯域外反射低減フィルタであって、前記第1の電力分配合成器は、前記第1の信号に対して、前記第2の信号の位相を180°反転させて出力する。
【0046】
(付記4)
付記3の帯域外反射低減フィルタは、付記1または2に記載された帯域外反射低減フィルタであって、前記第1の電力分配合成器は、前記第1の信号に対して、前記第2の信号の位相を90°遅延させて出力し、
前記第2の電力分配合成器は、前記第4のポートから入力される信号に対して、前記第5のポートから入力される信号の位相を90°遅延させて前記合成を行う。
【0047】
(付記5)
付記5のレーダ送信機は、入力信号を混合して周波数変換後の信号を出力するミキサ(2)と、
前記ミキサに接続された、付記1から付記4のいずれか1つに記載された帯域外反射低減フィルタと、を備える。
【0048】
(付記6)
付記6のレーダ受信機は、入力信号を混合して周波数変換後の信号を出力するミキサ(2)と、
前記ミキサに接続された、付記1から付記4のいずれか1つに記載された帯域外反射低減フィルタと、を備える。
【0049】
なお、実施形態を組み合わせたり、各実施形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示の帯域外反射低減フィルタは、送信機または受信機においてIMスプリアスを低減するフィルタとして用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 帯域外反射低減フィルタ、2 ミキサ、3 アイソレータ、4 バンドパスフィルタ、11 電力分配合成器、12 電力分配合成器、13 LC直列共振回路、14 信号ライン、15 信号ライン、111 入力ポート、112 出力ポート、113 出力ポート、121 入力ポート、122 入力ポート、123 出力ポート、131 インダクタ、132 キャパシタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6