(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164850
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 21/20 20060101AFI20241121BHJP
B24B 21/12 20060101ALI20241121BHJP
B24B 27/00 20060101ALI20241121BHJP
B24D 11/06 20060101ALI20241121BHJP
B24D 11/04 20060101ALI20241121BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B24B21/20
B24B21/12
B24B27/00 A
B24D11/06 Z
B24D11/04
H01L21/304 622F
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080496
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】516137786
【氏名又は名称】株式会社土橋製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】土橋 悦子
【テーマコード(参考)】
3C063
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C063AA04
3C063AB07
3C063BA02
3C063BA21
3C063BB23
3C063BH07
3C063EE40
3C063FF30
3C158AA05
3C158AA09
3C158AA12
3C158AA13
3C158AA14
3C158AA16
3C158AA18
3C158AC01
3C158BA02
3C158BA05
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB04
5F057AA16
5F057BA11
5F057BB01
5F057CA11
5F057DA06
5F057DA08
5F057EB23
5F057GA01
5F057GB27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属加工製品の加工面をムラなく均一に仕上げ研磨することのできる研磨装置を提供する。
【解決手段】把持アームと、前記把持アームに把持された研磨用ヘッド1と、前記把持アームにより前記研磨用ヘッド1を被研磨体に所定の押圧力で押圧して、前記被研磨体の研磨面を摺動し研磨する手段とを備えた金属加工製品の研磨装置において、前記研磨用ヘッド1は、先端部に設けられ前記押圧力を調整する手段を備えた先端ローラ8と、前記先端ローラ8の後方に配され、前記先端ローラ8の回転軸と略平行な回転軸を有する後方ローラ9a,9bと、研磨面に砥粒が貼着され、前記先端ローラ8と前記後方ローラ9a,9bとの外周を囲むように所定の張力により張り巡らされた無端の研磨ベルト6と、前記研磨ベルト6の張力を調整する張力調整手段10とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持アームと、前記把持アームに把持された研磨用ヘッドと、前記把持アームにより前記研磨用ヘッドを被研磨体に所定の押圧力で押圧して、前記被研磨体の研磨面を摺動し研磨する手段とを備えた金属加工製品の研磨装置において、
前記研磨用ヘッドは、先端部に設けられ前記押圧力を調整する手段を備えた先端ローラと、
前記先端ローラの後方に配され、前記先端ローラの回転軸と略平行な回転軸を有する後方ローラと、
研磨面に砥粒が貼着され、前記先端ローラと前記後方ローラとの外周を囲むように所定の張力により張り巡らされた無端の研磨ベルトと、
前記研磨ベルトの張力を調整する張力調整手段とを備えたことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記先端ローラは、前後に進退するスライドブロックに固着され、前記先端ローラの背面には押圧力調整バネが配されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記後方ローラは、前記先端ローラを頂点とする略2等辺三角形の端点を形成するように一対配置されていることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記張力調整手段は、前記一対の後方ローラーの略中間点で、前後に進退するスライドブロックに固着され、前記前記研磨ベルトを外側から押圧する後部に張力調整用バネが配された張力調整ローラであることを特徴とする請求項3に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記張力調整手段は、前記研磨ベルトを内側から押圧するように配置されたスプリングプランジャー及び/又はトーションバネであることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記後方ローラはラチェット機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記被研磨体の研磨面に当接する前記研磨ベルトの当接面は、前記把持アームによる前記被研磨体の研磨においては固定され、前記把持アームによる押圧で前記被研磨体の研磨面と前記研磨ベルトの当接面との間で生じる摩擦力以上の摩擦力を生じさせる研磨当接面更新部にあっては、前記把持アームによる前記研磨用ヘッドを前記研磨当接面更新部に押圧し所定の摺動により、前記研磨ベルトが回転することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記研磨ベルトが、その長手方向に複数の区間に区分され、その各区間に、互いに粒度及び/又は種類の異なる砥粒が貼着されてなることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属加工製品等の仕上げ加工に用いる研磨装置に関し、特に研磨材を常に良好な状態に維持することで、ムラの無い均一な研磨が可能な研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種金属加工製品は、成形後のバリ落とし、円角の形成、装飾性金属の鏡面仕上げ等を目的として、表面研磨が行われている。従来かかる金属加工製品の表面研磨は、やすりや砥石、サンドペーパー等を用いて、人力で研磨することが多かったが、人力研磨は作業者の疲労が大きく、かつ生産性が低いという問題がある。そのため、機械金属加工工場においては、自動研磨装置が用いられるようになってきており、手作業よりも均一に仕上げることが出来き、品質安定につながっている。
【0003】
自動研磨装置は一般的に、その先端に研磨材(本明細書では、研磨材とは「砥石、やすり、サンドペーパー、バフ等の被研磨体に接触して、研磨機能を発揮するもの」の総称として用いる)が装着された研磨用ヘッドと、これを把持・固定する把持アームとからなり、把持アームには、研磨材を被研磨体(以下、ワークという)に押し付けて、往復及び/又は回転摺動させる研磨作業機能と、研磨材をワークの所望の位置に移動させる位置決め機能とが備えられている。かかる把持アームとしては、把持アームを備えた産業用ロボットが用いられるケースが一般的である。
【0004】
表面研磨は、研磨対象物の材質や研磨目的によって、その作業内容は多種・多様に変わってくる。そのため、研磨材の種類、砥粒の粒度や研磨作業の態様も、研磨目的に応じて多様に変える必要がある。また、機械研磨装置の種類としては、ロール研磨機、ベルト研磨機、ロータリー研磨機などに大別される。一般的に、ロール研磨機とロータリー研磨機は、主にワークの形状が一定の場合に用いられる。金属加工製品等では、ワークの形状が多種多様なため、ベルト研磨機が用いられるケースが多く、そのためベルト研磨機に関し、例えば、下記特許文献1から4に示すような特許が出願されている
【0005】
特許文献1には、樹脂成形品のバートライン(バリ)研磨装置として、研磨ベルトと、仕上研磨する板状の研磨板とを隣接配置し、樹脂成形品の方向を可変にするとともに、研磨ベルトの研磨面を傾斜させることで、様々な形状の成形品に対応できる研磨装置が開示されている。
【0006】
特許文献2には、板状のワークのバリ取りを目的とする研磨装置であって、一対の研磨ベルトでワークを挟み、ベルトの一部(研磨部)を面方向に加振して、研磨を行うとともに、研磨ベルトを逐次送って(移動させることによって)、研磨面の更新を行うバリ取り装置が開示されている。
【0007】
特許文献3には、ワーク表面の多様な曲面を連続して研磨できるベルト式研磨機として、縁端の曲率等の異なる複数の研磨輪を備え、切り替え装置により、研磨ベルトを背面から押圧する研磨輪を交換して研磨できるベルト式研磨機(ベルトサンダー)が開示されている。
【0008】
特許文献4は、特許文献3と同一の出願人により提出されているもので、上記研磨輪の転換機構に関するものであり、ベルト式研ぎ・研磨機における研磨輪の転換機構により、ワークピース表面の特別な曲面に対して研ぎと研磨を行い、かつ研ぎと研磨の効率が高くなる技術が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特許第5430734号公報
【特許文献2】特許第5758680号公報
【特許文献3】特許第5826898号公報
【特許文献4】特許第5863901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
金属加工製品は、成形後にバリ落としや凹凸の平滑化、キズ取り等を目的とする粗研磨や中研磨を行った後、鏡面加工を目的とした仕上げ研磨を行うことが多い。粗研磨は、グラインダー等を用いて効率よく行うことができるが、仕上げ研磨にはグラインダーは用いることができない。
【0011】
また、デイスク基板や半導体基板の表面仕上げ研磨は、液状砥粒を用いたバフ研磨により行われているが、金属加工製品においては、その形状が多種多様なため、かかる方法の適用は難しい。
従来、金属加工製品の仕上げ研磨は、砥粒の細かいサンドペーパーを用い、作業者が手作業で研磨を行っていた。かかる手作業の研磨は、熟練を要する上、生産性が低く工程上のネックになっていた。
【0012】
前述した特許文献1~4のベルト式研磨装置は、主としてバリ取り等を目的とするものであり、金属加工製品の仕上げ研磨には使用できない。多様な形状の金属加工製品の機械研磨にはベルト研磨方式による研磨が好適であるが、市販されている電動ベルトサンダーは手動で使用するものであり、今のところ金属加工製品のベルト式自動研磨装置は存在していない。
【0013】
金属加工製品の仕上げ研磨における研磨装置としての必須要件は、第1に研磨材の研磨面を常に良好な状態に維持し、第2に研磨面全体をムラなく均一に研磨し得ることにある。即ち、本発明の課題は、ベルト式研磨装置であって、金属加工製品の研磨面全体をムラなく均一に研磨することのできる金属加工製品の研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明は、把持アームと、前記把持アームに把持された研磨用ヘッドと、前記把持アームにより前記研磨用ヘッドを被研磨体に所定の押圧力で押圧して、前記被研磨体の研磨面を摺動し研磨する手段とを備えた金属加工製品の研磨装置において、
前記研磨用ヘッドは、先端部に設けられ前記押圧力を調整する手段を備えた先端ローラと、
前記先端ローラの後方に配され、前記先端ローラの回転軸と略平行な回転軸を有する後方ローラと、
研磨面に砥粒が貼着され、前記先端ローラと前記後方ローラとの外周を囲むように所定の張力により張り巡らされた無端の研磨ベルトと、
前記研磨ベルトの張力を調整する張力調整手段とを備えたことを特徴とする研磨装置である。
【0015】
先端ローラは、前後に進退するスライドブロックに固着され、前記先端ローラの背面には押圧力調整用バネが配されていることが望ましい。先端ローラを前後に進退するように構成し、先端ローラの背面に押圧力を調整するバネを設けることで、研磨用ヘッドを被研磨体に押圧したときの押圧力を調整することができる。先端ローラを直線的に前後にスライドさせるには、例えばLMガイド(Linear Motion Guide)を設ける構造があげられる。
【0016】
張力調整手段としては、例えば、研磨ベルトを外側から押圧し、その後部に張力調整用バネが配され、前後に進退する張力調整ローラがあげられる。張力を調整するバネと張力調整ローラの進退とにより、研磨用ヘッドの被研磨体への押圧により緩んだ研磨ベルトの張力を調整することができる。張力調整ローラを直線的に前後にスライドさせるには、例えばLMガイドを設ける構造があげられる。他の張力調整手段としては、例えば、研磨ベルトを内側から外側に向かって押圧するようにスプリングプランジャーを設ける。あるいは研磨ベルトを内側から外側に向かって押圧するトーションバネを設けることで、研磨ベルトの緩みを調整することができる。
【0017】
後方ローラはラチェット機構を備えることが望ましい。ラチェット機構により研磨ベルトの回転を一方向に制限でき、研磨当接面の更新を確実に行うことができる。また、研磨ベルトの交換を確実に行うことができる。
研磨ベルトはその長手方向に複数の区間に区分され、その各区間に、互いに粒度及び/又は種類の異なる砥粒が貼着されているように構成することで多様な用途の研磨に対応することができる。
【0018】
被研磨体の研磨面に当接する前記研磨ベルトの当接面は、前記把持アームによる前記被研磨体の研磨においては固定され、前記把持アームによる押圧で前記被研磨体の研磨面と前記研磨ベルトの当接面との間で生じる摩擦力以上の摩擦力を生じさせる前記研磨当接面更新部に前記研磨用ヘッドを押圧し、所定の距離摺動し、前記研磨ベルトを回転させる
【発明の効果】
【0019】
本発明により、研磨ベルトの研磨面を常に良好な状態に維持し、研磨面全体をムラなく均一に研磨し得る研磨ベルトを使用した金属加工製品の研磨装置を提供することができる。
【0020】
また、研磨ベルトを交換することなく、研磨面の砥粒粒度を被研磨体の研磨目的に応じたものに変えていくことが可能な研磨装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、実施例の図面を参照して、本発明の望ましい実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施例である金属加工製品の研磨装置の全体構成を示す図で、
図1(a)は斜視図、
図1(b) は側面図である。
【0022】
図1に見られるように、この研磨装置は、その先端に研磨面に砥粒が貼着された無端の研磨ベルトが装着された研磨用ヘッド1と、かかる研磨用ヘッド1を把持し固定する把持アーム2とからなっている。把持アーム2は、ベース5に立設されたスタンド3により支持されている。
【0023】
把持アーム2は、多軸(多関節)の回動機構を有し、これにより研磨用ヘッド1をX,Y,Zの任意の三次元方向に移動可能にする。すなわち、X-Y平面の移動により、研磨用ヘッド1を被研磨体4(ワーク4)の表面の所望の位置に移動させ、Z方向の動作で、研磨用ヘッド1をワーク4の表面に当接させる。
【0024】
さらに、この把持アーム2は、研磨用ヘッド1を傾斜させることも可能で、これにより、研磨ベルト6(
図2参照)の研磨面も傾斜するから、ワーク4の表面が傾斜面や曲面である場合にも対応できる。なお、かかる把持アーム2は、本発明固有の構成ではなく、従来から、マニピュレーター等に用いる産業用多軸ロボットに多用されているものである。したがって把持アーム2及びスタンド3の部分は、市販の産業用多軸ロボットを適用することができる。
【0025】
本発明の特徴の一つは、研磨ベルト6よる研磨動作の態様が、通常のベルトサンダーと異なる点にある。すなわち、ベルトサンダーでは、研磨ベルトをその長手方向に回転駆動し、これをワーク4に押圧して研磨を行うのに対して、本発明の研磨装置では、研磨ベルト6は固定された状態(ベルトが回転駆動されていない状態)で、把持アーム2により研磨ベルトの被研磨体当接部分をワーク4に押圧し、これを往復、摺動させて研磨を行うところにある。
【0026】
図2は、本発明の一実施例である研磨装置の研磨動作を説明するための図で、
図1(a)のA部の部分拡大図である。研磨時において、研磨ベルト6は回転駆動されていない状態でワーク4に押圧され、研磨ベルト6をX方向、Y方向に往復、摺動させ研磨する。
【0027】
なお、研磨する際に研磨用ヘッド1に加振装置を付加する場合には、研磨用ヘッド1に、振幅数mm程度、振動周期数十rpm程度の往復振動を与えられるものであれば良く、その形式や取り付け方法を限定する必要はない。かかる加振装置は、種々のものが市販されており、その中から適切なものを選択して使用すればよい。
【0028】
従来のベルトサンダーのような一方向研磨では、ワーク4の表面に粗い線状痕が形成され易いが、これに対して本発明では、研磨ベルト6を往復、摺動させる、あるいは往復、摺動とともに加振を行い研磨するので、鏡面を含む平滑な線状痕の残る研磨面を得ることができる。
【0029】
本発明の研磨装置のもう一つの特徴は、研磨ベルト6がワーク4に接触している部分(以下、研磨当接面という)が容易に更新できるようにしているところにある。長時間研磨を続けると、研磨ベルト6の研磨当接面が、目詰まりや砥粒の脱落等により消耗し研磨性能が低下する。
【0030】
そのため、研磨当接面を定期的に新たな研磨当接面に更新する必要がある。研磨ベルト6は、全面に砥粒が貼着されているから、研磨ベルト6を所望の距離だけ長手方向に移動させれば、研磨当接面の更新が可能となる。本実施例の装置においては、研磨用ヘッド1に、かかる研磨ベルト6の研磨当接面の更新機能が内蔵されている。以下、本実施例の研磨装置における研磨用ヘッド1の構成について説明する。
【0031】
図3及び
図4は、本第一の実施例における研磨用ヘッド1の構成を示す図で、
図3(a)は斜視図、
図3(b)は
図3(a)の前部拡大図、
図4(a)は平面図、
図4(b)は側面図である。これらの図に見られるように、研磨用ヘッド1のヘッド基台7には3個のローラ(基台先端付近の先端ローラ8とヘッド基台7後方に先端ローラ8の回転軸と平行に回転する一対の後方ローラ(9a、9b)が立設され、それらの外周を取り囲んで、研磨ベルト6が研磨面を外側にして張り巡らされている。
【0032】
また、本第一の実施例では、一対の後方ローラ9(9a,9b)の中央付近に、研磨ベルト6の外側を押圧して、その張力を調整するための張力調整ローラ10が立設されている。先端ローラ8と張力調整ローラ10は、その背面にバネが配されており、これらはスライドブロック16-1により前後に移動可能な可動ローラである。一方、後方ローラ9は固定ローラである。これらの取り付け構造は後述する。なお、本実施例ではスライドブロック16-1と、スライドレール16-2としてLMガイド(Linear Motion Guide)を用いた。
【0033】
ヘッド基台7の後端には、取付け板11が、ヘッド基台7から直立するように配設され、これにより研磨用ヘッド1を把持アーム2にネジ止めで取り付けることができる。また、本発明に用いる研磨ベルト6は、従来のベルトサンダーに用いられているものを流用することができる。
【0034】
研磨ベルトは、紙製又は布製の研磨ベルトに砥粒を接着してなるもので、ベルトの幅、長さや砥粒の粒度について、種々異なるものが市販されている。したがって、この中から、本装置に適合するものを選択して使用すればよい。適合するものが無い場合は、特注品として制作することもできる。
【0035】
上述したように研磨ベルト6の研磨当接面は、研磨を続けると目詰まりや砥粒の脱落等により消耗し研磨性能が劣化する。このため定期的に研磨ベルト6を所定の長さ回転させ、新たな研磨当接面に更新する必要がある。
【0036】
研磨ベルト6は、柔軟性のある帯状材料の片面全面に砥粒を貼着して、その砥粒面が外側に来るように両端を連結した環状ベルト(無端ベルト)からなる。このため無端ベルトをその長さ方向(
図2のX方向)に、研磨当接面の長さだけ回転させることで、研磨当接面を更新することができる。
【0037】
本発明の第一の実施例においては、研磨ベルト6が一方向にしか回転しないように、後方ローラ9にラチェット機構を設けた。次に、ワーク4の研磨面を摺動している研磨状態では研磨ベルト6が回転しない、即ち、研磨状態におけるワーク4の研磨面と研磨ベルトの研磨当接面との間に生じる研磨摩擦力では研磨ベルト6は回転せず、研磨摩擦力以上の摩擦力で研磨ベルトを摺動すると研磨ベルトが回転するように研磨ベルトの張力が設定されている。
【0038】
研磨状態では研磨ベルト6が回転しない構成とするなかで、研磨当接面の更新はベース5に強い摩擦力が生じる研磨当接面更新部50(本実施例ではマジックテープ(登録商標)を使用した)を設け、研磨用ヘッド1の研磨当接面をベース5に設けられた研磨当接面更新部50に押圧し、研磨ベルト6の回転可能な方向に研磨当接面の長さ程度、研磨用ヘッド1を移動することで、研磨当接面の更新が行えるように構成した。
【0039】
次に、本実施例における各ローラの取付け構造について説明する。先ず、先端ローラ8は、その回転軸がヘッド基台7に直立するように配置され、上側の回転軸は、軸受け部材12aで支持され、下側の回転軸は軸受け部材12bで支持されている。軸受け部材12aと軸受け部材12bは、連結部材13で連結され、これら全体で先端ローラ8の取付けブロックを構成している。
【0040】
先端ローラ8の後方には、押圧用バネ14が配され、このバネの後端はバネ保持ブロック15の中央付近に固定され、バネの前端はフリーの状態で連結部材13の後面に当接して、これを押圧する。また、下側の軸受け部材12bの下面は、スライドブロック16-1の上面に載置・固定されている。
【0041】
スライドブロック16-1は、スライドレール16-2により直線的に前後に進退するようになっており、バネの反発力で、先端ローラの取付けブロック全体を前後に進退させることができる。また、図示していないが、LMガイドには、ガイド溝が形成されており、軸受け部材12bの横ずれを防止している。また、このガイド溝は、研磨用ヘッド1全体が傾斜した時にも、先端ローラ8の脱落を防止する機能を有する。
【0042】
つぎに、一対の後方ローラ9(9a,9b)は、片側(下側)のみ回転する機構軸(ラチェット機構)を有し、この軸が一対の軸受けブロック17の軸孔に篏合して、回動可能に支持される。軸受けブロック17は、ヘッド基台7にネジ止めされ、後方ローラ9(9a,9b)は研磨ベルト6を安定に支持している。
【0043】
また、張力調整ローラ10の回転軸は、軸受けベース18の軸孔に把持され、軸受けベース18は、ヘッド基台7の中央軸付近に敷設されたスライドブロック16-1に固着され、スライドレール16-2によりスライド可能に配設されている。軸受けベース18の背面には張力調整用バネ19が配されている。張力調整用バネ19の後端は、取付け板11に固定され、その前端はフリーの状態で、軸受けベース18の背面を押圧するように構成されている。
【0044】
図5は研磨ベルトの張力を調整する張力調整手段として、スプリングプランジャー210を用いた第二の実施例である研磨用ヘッドの構成を示す斜視図である。また、
図6(b)はその側面図、
図6(a)は平面図、
図7は
図6(b)に示すA-Aの平断面図である。第一実施例においては、
図3、
図4に示すように一対の後方ローラ9(9a,9b)の中央付近に、研磨ベルト6の外側を押圧して、その張力を調整するための張力調整ローラ10を立設している。そして、先端ローラ8と張力調整ローラ10の背面にバネを配し、これらはスライドブロック16-1により前後に移動可能な可動ローラとしている。かかる構造により、張力を調整するバネと張力調整ローラの進退とにより、研磨用ヘッドの被研磨体への押圧により緩んだ研磨ベルト6の張力を調整している。
【0045】
これに対して、第二の実施例では、
図5から
図7に示すように第一の実施例の張力調整ローラ10に代えて、研磨ベルト60を内側から外側に向かって押圧するようにスプリングプランジャー210を設けている。スプリングプランジャー210は、
図5、
図7に示すようにバネ保持ブロック150の側端に形成されたコ字型の切欠き部に固定されており、スプリングプランジャー210の先端(ピン)が研磨ベルトを内側から押圧している。かかる構成により研磨ベルトの張力を調整している。なお、第二の実施例においては、研磨ベルト60の張りを保持する研磨ベルト保持ポール200を設けている。
【0046】
また、第二の実施例における研磨用ヘッドには、先端ローラ80の後方であって、その略直線上に先端ローラ80の回転軸と平行に回転する後方ローラ90が一つ立設され、その外周を取り囲んで、研磨ベルト60が研磨ベルト保持ポール200の外側を通り、研磨面を外側にして張り巡らされている。後方ローラ90は固定されており、ラチェット機構を備えている。第二の実施例の研磨用ヘッドは、張力調整手段と後方ローラの数と設置場所以外の構成は、基本的には第一実施例の研磨用ヘッド同じである。先端ローラ80の後方には、押圧用バネ140が配され、このバネの後端はバネ保持ブロック150の中央付近に固定され、バネの前端はフリーの状態で連結部材130の後面に当接して、これを押圧している。また、下側の軸受け部材120bの下面は、スライドブロック161の上面に載置・固定されており、スライドブロック161は、スライドレール162により直線的に前後に進退するように構成されている。
【0047】
図8は研磨ベルトの張力を調整する張力調整手段として、トーションバネ220を用いた第三の実施例である研磨用ヘッドの構成を示す斜視図であり、
図9はその平面図である。第三の実施例では、
図8、
図9に示すように第二の実施例の張力調整手段であるスプリングプランジャー210に代えて、研磨ベルト60を内側から外側に向かって押圧するようにトーションバネ220を設けている。トーションバネ220は、トーションバネ保持ポール221に保持され、バネの端部がバネ保持ブロック150に当接し、他端部が研磨ベルト60に当接することで、研磨ベルト60の張力を調整している。第二の実施例の研磨用ヘッドと、第三の実施例の研磨用ヘッドの相違は、張力調整手段が異なる以外は同じ構成である。
【0048】
本発明においては、研磨面にムラの無い均一な仕上げ研磨を可能にするため、二つの工夫をとりいれている。その第一は、先端ローラ8の背面に押圧用バネ14を配して、研磨圧力の均一化を図っている点である。すなわち、研磨圧力が高くなれば、押圧用バネが縮退して圧力が低下し、圧力は低くなればバネが伸長して圧力を高めるという自動均圧化機能を有する。この機能は研磨面の磨きムラを無くす上で重要であることが知見されている。
【0049】
第二の工夫は、張力調整手段により研磨ベルトの張力を一定に維持するように構成していることである。すなわち、研磨ベルトの張力を一定に把持し、研磨ベルトの緩みを無くし、研磨ムラの無い良好な仕上げ研磨面を可能としている。
【0050】
上記の工夫により、本発明の研磨装置による仕上げ研磨の製品は、職人による手研磨のものに遜色にない程度の平滑性と均一性を有することが確かめられている。また、本発明の研磨装置では、付加的に以下のような有用な機能を実現することができる。例えば、研磨ベルトの全長は研磨当接面に比して十分に大きいため、研磨ベルトをその長手方向で複数の区域に区分し、それぞれの区域で、砥粒の種類及び/又は粒度の異なる研磨ベルトを用いる等である。
【0051】
これにより、例えば、粗研磨に用いる砥粒の領域と、仕上げ研磨に用いる砥粒の領域を設け、一本の研磨ベルトで、ベルト交換を行うことなく、粗研磨と仕上げ研磨の両方を行うことが可能になる。また、そのほか、仕上げ研磨でも、砥粒の粒度が順次細かくなるように変えて、鏡面研磨の精度を高めることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
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図1】本発明一実施例である研磨装置の全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例の研磨装置の研磨動作を説明するための図である。
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図3】本発明の第一実施例の研磨装置の研磨用ヘッドの構造を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第一実施例の研磨装置の研磨用ヘッドの構造を示す平面図及び側面図である。
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図5】本発明の第二実施例の研磨装置の研磨用ヘッドの構造を示す斜視図である。
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図6】本発明の第二実施例の研磨装置の研磨用ヘッドの構造を示す平面図及び側面図である。
【
図7】本発明の第二実施例の研磨装置のA-A断面図である。
【
図8】本発明の第三実施例の研磨装置の研磨用ヘッドの構造を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第三実施例の研磨装置の研磨用ヘッドの構造を示す平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1:研磨用ヘッド、2:把持アーム、3:スタンド、4:ワーク、5:ベース、
6、60:研磨ベルト、
7,70:ヘッド基台、
8,80:先端ローラ、
9,9a,9b,90:後方ローラ、
10:張力調整ローラ、
11,110:取付け板、
12a,12b,120a,120b:軸受け部材、
13,130:連結部材、
14,140:押圧用バネ、
15,150:バネ保持ブロック、
16―1,161:スライドブロック、
16-2,162:スライドレール、
17:軸受けブロック、18:軸受けベース、19:張力調整用バネ、50:研磨当接面更新部
200:研磨ベルト保持ポール
210:スプリングプランジャー
220:トーションバネ
221:トーションバネ保持ポール
222:トーションバネ端部