(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164869
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】照明制御装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/12 20200101AFI20241121BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20241121BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20241121BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20241121BHJP
H05B 45/22 20200101ALI20241121BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H05B45/12
G09G3/34 J
G09G3/20 670J
H05B47/105
H05B45/22
G09F9/00 336F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080536
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正則
(72)【発明者】
【氏名】廣木 健人
【テーマコード(参考)】
3K273
5C080
5G435
【Fターム(参考)】
3K273PA07
3K273QA28
3K273RA02
3K273SA03
3K273SA06
3K273SA22
3K273SA23
3K273SA34
3K273SA35
3K273SA37
3K273SA46
3K273SA50
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA27
3K273TA44
3K273TA49
3K273TA77
3K273UA22
5C080AA17
5C080CC03
5C080DD14
5C080KK20
5G435AA04
5G435AA12
5G435BB16
5G435BB19
5G435EE22
5G435EE25
5G435EE30
5G435EE49
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】 光源の発光強度を適切に制御できる照明制御装置を提供する。
【解決手段】 表示装置のバックライトとしての光源と、光源の発光輝度を測定するフォトセンサと、フォトセンサによる発光輝度の検出値に基づいて、光源を駆動する制御部と、を備えた照明制御装置において、制御部は、フォトセンサの劣化状態を推定する推定処理を実行するとともに、表示装置に係るシステムの起動時に、推定処理により推定されたフォトセンサの劣化状態に基づいて光源への駆動電流の電流値を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置のバックライトとしての光源と、
光源の発光輝度を測定するフォトセンサと、
前記フォトセンサによる前記発光輝度の検出値に基づいて、前記光源を駆動する制御部と、を備えた照明制御装置において、
前記制御部は、前記フォトセンサの劣化状態を推定する推定処理を実行するとともに、前記表示装置に係るシステムの起動時に、前記推定処理により推定された前記フォトセンサの劣化状態に基づいて前記光源への駆動電流の電流値を補正する、照明制御装置。
【請求項2】
前記光源を所定電流値の駆動電流で駆動した際の前記発光輝度の前記検出値としての初期値を格納する記憶部を備え、
前記制御部は、前記推定処理において、前記光源を前記所定電流値の駆動電流で駆動した際の前記発光輝度の前記検出値と、前記初期値とを比較して、前記劣化状態を推定する、請求項1に記載の照明制御装置。
【請求項3】
前記フォトセンサの環境温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部は、前記推定処理において、前記温度検出部により検出される温度に基づいて前記発光輝度の前記検出値を補正する、請求項1または2に記載の照明制御装置。
【請求項4】
前記システムの稼働時間を積算するタイマを備え、
前記制御部は、前記推定処理において、前記タイマにより得られる積算時間に基づいて前記フォトセンサの劣化状態を推定する、請求項1または2に記載の照明制御装置。
【請求項5】
前記検出値は、前記表示装置が非表示状態のときに計測される、請求項2に記載の照明制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光の3原色をそれぞれ発光するLED(発光ダイオード)を用いて、フィールドシーケンシャル駆動にて照明し、所望の色(例えば白色)を表現する表示装置が開示されている。この表示装置では、LEDの経年や温度による輝度低下のバラツキで表示の色味が変わってしまうことを防止するため、フォトセンサを用い、フォトセンサで検出される輝度が保たれるように、LEDの駆動条件を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の表示装置においては、例えば、フォトセンサの光入射部分に設けられるレンズが劣化に伴い黄変するなどの劣化が生じ、これが要因となりフォトセンサに入射する光量が劣化とともに減少する。このため、LEDに対する駆動条件の補正量が過剰となり、発光輝度を必要以上に増加させてしまうという問題がある。また、レンズの黄変により、所定の発光色(例えば、青色)が他の色に比べて、よりレンズを透過し難くなるという現象が発生する。このため、表示色の色バランスがくずれ、所望の色(例えば白色)を正しく表現することができなくなる。
【0005】
本開示は、光源の発光強度を適切に制御できる照明制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、
表示装置のバックライトとしての光源と、
光源の発光輝度を測定するフォトセンサと、
前記フォトセンサによる前記発光輝度の検出値に基づいて、前記光源を駆動する制御部と、を備えた照明制御装置において、
前記制御部は、前記フォトセンサの劣化状態を推定する推定処理を実行するとともに、前記表示装置に係るシステムの起動時に、前記推定処理により推定された前記フォトセンサの劣化状態に基づいて前記光源への駆動電流の電流値を補正する、照明制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、光源の発光強度を適切に制御できる照明制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の照明制御装置の構成を示す図である。
【
図2】照明制御装置の光源が適用される表示装置の構成例を示す図である。
【
図3】フォトセンサ自体の検出値に基づいて、フォトセンサの劣化状態を推定する処理を示すフローチャートである。
【
図3A】フォトセンサ自体の検出値に基づいて、フォトセンサの劣化状態を推定する処理を示すフローチャートである。
【
図4】表示装置の稼働時間等に基づいて、フォトセンサの劣化状態を示す劣化パラメータ値DPを算出する劣化パラメータ値算出処理を示すフローチャートである。
【
図5】劣化パラメータ値算出処理により算出された劣化パラメータ値DPに基づいて、光源への駆動電流の電流値を補正する補正処理を示すフローチャートである。
【
図6】変換係数Kと劣化パラメータ値DPとの関係を示す図である。
【
図6A】変換係数Kを劣化パラメータ値DPの変化に対して段階的に設定する例を示す図である。
【
図7】表示装置の稼働に伴う変換係数Kの推移を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について説明する。
【0010】
図1は、本実施例の照明制御装置の構成を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施例の照明制御装置1は、表示装置40(
図2)のバックライトとしての光源41と、光源41の発光輝度を測定するフォトセンサ10と、フォトセンサ10による発光輝度の検出値に基づいて、光源41を駆動する表示装置40の制御部50と、を備える。さらに、照明制御装置1は、フォトセンサ10の環境温度を検出する温度検出部11と、照明制御装置1の動作に必要なデータを格納する記憶部20と、表示装置40(照明制御装置1)に係るシステムの稼働時間を積算するタイマ30と、を備える。
【0012】
図1に示すように、光源41は、互いに発光色の異なる青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gを具備する。青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gは、それぞれ、対応する発光色の発光体であるLEDを用いて構成される。
【0013】
フォトセンサ10は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等により構成される。
【0014】
温度検出部11は、フォトセンサ10の環境温度を測定可能な位置に設けられる。例えば、温度検出部11は、フォトセンサ10が実装される基板上に配置されてもよい。フォトセンサ10の環境温度を実質的に検出することが可能であれば、その設置位置は任意である。
【0015】
図2は、照明制御装置の光源が適用される表示装置の構成例を示す図である。
【0016】
図2に示す例では、車載のヘッドアップディスプレイの表示装置40が示されている。
【0017】
図2に示すように、表示装置40は、光源41、ミラー部42、反射ミラー43、DMD(反射型表示素子)44、プリズム45、フォトセンサ10、投射レンズ47、および透過型スクリーン48を有しており、フィールドシーケンシャル方式によって画像を表示するものである。表示装置40の光源41の青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gは、制御部50の制御に従って、順次、青色、赤色、および 緑色の光を発する。
【0018】
ミラー部42は、反射ミラー42a、ダイクロイックミラー42b、42cからなる。反射ミラー42aは、青色光源41Bが発した光Bを反射させる。ダイクロイックミラー42bは、赤色光源41Rが発した光Rを反射させ、反射ミラー42aで反射された光L1を透過させる。ダイクロイックミラー42cは、緑色光源41Gが発した光Gを反射させ、ダイクロイックミラー42bで透過または反射された光L2を透過させる。
【0019】
反射ミラー43は、平面鏡として構成され、ミラー部42からの光L3をプリズム45に向けて反射させる。DMD44は、多数の微小な鏡面を平面に配列した表示素子であり、表示光Lを生成する。プリズム45は、三角柱形状になっており、反射ミラー43とDMD44の間に配置されている。プリズム45は、傾斜面45aによって、光L3の一部をフォトセンサ10に反射させるとともに、他の一部をDMD44に透過させる。
【0020】
フォトセンサ10は、プリズム45の傾斜面45aで反射された光を受光して、光量データを制御部50に出力する。投射レンズ47は、表示光Lを透過型スクリーン48に投射する。表示光Lが投影されることにより、透過型スクリーン48には、画像が生成される。透過型スクリーン48を透過した光は、反射器(不図示)を経てフロントガラス(不図示)により反射されて、透過型スクリーン48に生成された画像が虚像として運転者により視認される。
【0021】
表示装置40における光源41の発光輝度は、制御部50の制御に従ってキャリブレーションされる。キャリブレーション工程では、フォトセンサ10の出力値を用いて光源41への駆動電流の電流値が調整、設定される。キャリブレーション工程は、任意のタイミングで実行可能であるが、例えば、車両制御システム(表示装置40に係るシステム)の起動に伴う表示装置40の起動時に実行される起動処理に含まれてもよい。起動処理は、表示装置40からの光が外部(フロントガラス)に照射されない状態で実行される。これにより、キャリブレーション工程において運転者等の視覚を不用意に刺激することが防止される。
【0022】
ところで、表示装置40における光源41では、経年劣化による発光輝度の低下が発生する。しかし、これと同時に、フォトセンサ10も、時間の経過に伴い出力値が低下するという問題がある。例えば、フォトセンサ10には、受光面に入射光を招く樹脂製(例えば、エポキシ樹脂)のレンズが使用されるが、このレンズの材質が時間の経過に伴い劣化し、光透過性が低下する。このため、実際の発光輝度よりも低い輝度を示す出力値がフォトセンサ10から出力されるようになる。また、光透過性の変化には、波長特性があり、例えば、レンズが黄変する場合には、赤色や緑色に比べて青色における光透過性の低下が顕著となる。本実施例では、このようなフォトセンサ10の劣化状態を推定し、推定された劣化状態に基づいて、光源41への駆動電流の電流値を補正している。
【0023】
なお、フォトセンサ10の劣化の原因は、レンズの劣化に限定されない。本開示は、他の要因によるフォトセンサ10の劣化に対しても適用することができる。
【0024】
次に、本実施例の照明制御装置1の動作について説明する。
【0025】
図3および
図3Aは、フォトセンサ自体の検出値に基づいて、フォトセンサの劣化状態を推定する処理(推定処理)を示すフローチャートである。
【0026】
図3のステップS102~S106は、初期値記憶処理を示している。
【0027】
この処理は、例えば、製造された表示装置40の出荷前に実行される。
【0028】
図3のステップS102では、制御部50は、光源41の青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gに、それぞれ所定値の電流を供給する。
【0029】
ステップS104では、制御部50は、上記所定値の電流を供給した状態におけるフォトセンサ10の出力値を、青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gの発光輝度の初期値として取得する。
【0030】
ステップS106では、制御部50は、ステップS104で取得された初期値を記憶部20に格納し、処理を終了する。
【0031】
図3AのステップS202~212は、劣化判定処理を示している。
【0032】
この処理は、任意のタイミングで実行可能であるが、例えば、車両制御システム(表示装置40に係るシステム)の起動に伴う表示装置40の起動時に実行される起動処理に含まれてもよい。上記のように、起動処理は、表示装置40からの光が外部に照射されない状態で実行される。
【0033】
図3AのステップS202では、制御部50は、光源41の青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gに、それぞれ上記の所定値(ステップS102で供給された電流の電流値)の電流を供給する。
【0034】
ステップS204では、制御部50は、上記所定値の電流を供給した状態におけるフォトセンサ10の出力値を、青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gの発光輝度の検出値として取得する。
【0035】
ステップS206では、制御部50は、記憶部20に格納されている初期値(ステップS106で記憶部20に格納された初期値)を取得する。
【0036】
ステップS208では、制御部50は、ステップS204で取得された検出値と、ステップS206で取得された初期値とを比較し、フォトセンサ10の劣化状態を推定する。
【0037】
ステップS210では、制御部50は、ステップS208で判定されたフォトセンサ10の劣化状態が所定の劣化状態を越えているか否か判断する。制御部50は、判断が肯定されれば処理をステップS212へ進め、判断が否定されれば処理を終了する。
【0038】
ここで、ステップS208~S210において、例えば、ステップS204で取得された検出値と、ステップS206で取得された初期値との差分、あるいは、検出値と初期値との比が所定の閾値を越えた場合に、ステップS210の判断が肯定されてもよい。この場合、検出値が初期値に対して所定の差分(正値)よりも小さくなれば、あるいは、検出値を初期値で叙した数が所定の値(1よりも小さい正値)よりも小さくなれば、ステップS210の判断が肯定される。
【0039】
また、ステップS208~S210では、特定の光源、例えば、青色光源41Bを対象とする検出値と初期値に基づいて劣化状態を推定してもよい。あるいは、青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gを対象とする検出値と初期値に基づいて、総合的に劣化状態を推定してもよい。
【0040】
ステップS212では、制御部50は、記憶部20に格納された劣化フラグの値を0(初期値)から1に切り替え、処理を終了する。この劣化フラグは、その値が1のときにフォトセンサ10の劣化が一定の劣化状態よりも進行したことを示すフラグである。
【0041】
このように、劣化判定処理では、フォトセンサ10により検出される検出値の初期値からの変化量(計測される発光輝度の減少量)に基づいて、フォトセンサ10の劣化状態を推定する。また、推定されたフォトセンサ10の劣化状態が所定の劣化状態を越えている場合に、劣化フラグの値を1に設定している。
【0042】
劣化判定処理では、フォトセンサ10の検出値と初期値とを比較して、フォトセンサ10の劣化状態を推定している。しかし、この方法は、経年変化による光源41自体の輝度低下がないか、あるいは輝度低下が小さいことが前提とされる。通常、フォトセンサ10の劣化は光源41の劣化よりも早く進むため、
図3および
図3Aに示す処理は、フォトセンサ10の劣化状態を推定する処理として、光源41の劣化がごく小さい期間(早期)においては有効となる。
【0043】
次に、劣化パラメータ値算出処理(推定処理)について説明する。
【0044】
本実施例では、フォトセンサ10の劣化状態をフォトセンサ10の出力値が示す輝度に反映させている。すなわち、フォトセンサ10の劣化パラメータ値DPを算出し、劣化パラメータ値DPをフォトセンサ10の劣化の進行度とみなすことで、フォトセンサ10の劣化状態を推定している。また、算出された劣化パラメータ値DPに基づいて、出力値が示す輝度を補正し、補正された輝度に基づいて光源41への駆動電流の電流値を設定している。
【0045】
図4は、表示装置の稼働時間等に基づいて、フォトセンサの劣化状態を示す劣化パラメータ値DPを算出する劣化パラメータ値算出処理(推定処理)を示すフローチャートである。
【0046】
この処理は、例えば、表示装置40が稼働している間、実行される。また、この処理は、劣化フラグ(ステップS212)の値が1であり、後述する劣化パラメータ更新終了フラグ(ステップS332)の値が0のときに限り、実行されてもよい。この処理は、劣化フラグ(ステップS212)の値と無関係に、表示装置40が稼働している間、実行されてもよい。
【0047】
図4のステップS302では、制御部50は、記憶部20に格納されている劣化パラメータ値DPを取得する。なお、劣化パラメータ値DPの初期値(例えば、表示装置40の出荷時の値)は、0である。
【0048】
ステップS304では、制御部50は、タイマ30をリセットし、タイマ30による計時を開始する。
【0049】
ステップS306では、制御部50は、温度検出部11により検出されている温度Tを取得する。
【0050】
ステップS308では、制御部50は、ステップS306で取得された温度Tが100℃以上か否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS310へ進め、判断が否定されれば処理をステップS312へ進める。
【0051】
ステップS312では、制御部50は、ステップS306で取得された温度Tが90℃以上か否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS314へ進め、判断が否定されれば処理をステップS316へ進める。
【0052】
ステップS316では、制御部50は、ステップS306で取得された温度Tが80℃以上か否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS318へ進め、判断が否定されれば処理をステップS320へ進める。
【0053】
ステップS320では、制御部50は、ステップS306で取得された温度Tが70℃以上か否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS322へ進め、判断が否定されれば処理をステップS324へ進める。
【0054】
ステップS324では、制御部50は、ステップS306で取得された温度Tが60℃以上か否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS326へ進め、判断が否定されれば処理をステップS328へ進める。
【0055】
ステップS310では、制御部50は、ステップS302で取得された劣化パラメータ値DPに、劣化係数DC6×周期ΔTを付加し、処理をステップS330へ進める。
【0056】
ステップS314では、制御部50は、ステップS302で取得された劣化パラメータ値DPに、劣化係数DC5×周期ΔTを付加し、処理をステップS330へ進める。
【0057】
ステップS318では、制御部50は、ステップS302で取得された劣化パラメータ値DPに、劣化係数DC4×周期ΔTを付加し、処理をステップS330へ進める。
【0058】
ステップS322では、制御部50は、ステップS302で取得された劣化パラメータ値DPに、劣化係数DC3×周期ΔTを付加し、処理をステップS330へ進める。
【0059】
ステップS326では、制御部50は、ステップS302で取得された劣化パラメータ値DPに、劣化係数DC2×周期ΔTを付加し、処理をステップS330へ進める。
【0060】
ステップS328では、制御部50は、ステップS302で取得された劣化パラメータ値DPに、劣化係数DC1×周期ΔTを付加し、処理をステップS330へ進める。
【0061】
ステップS330では、制御部50は、算出された劣化パラメータ値DPが所定の閾値DPmaxを越えているか否か判断し、判断が肯定されればステップS332へ処理を進め、判断が否定されれば処理をステップS334へ進める。
【0062】
ステップS332では、制御部50は、劣化パラメータ値DPを閾値DPmaxに設定し、記憶部20に格納されている劣化パラメータ更新終了フラグの値を1に設定する。なお、劣化パラメータ更新終了フラグの初期値(出荷時の値)は、0である。
【0063】
ステップS334では、記憶部20に格納されている劣化パラメータ値DPを現在の値に更新する。
【0064】
ステップS336では、制御部50は、タイマ30による計時が周期ΔTに到達するのを待って、処理をステップS304へ進める。
【0065】
このように、本実施例では、ステップS304~ステップS336の処理を周期ΔTごとに繰り返している。ここで、劣化係数DC1~DC6は、フォトセンサ10の環境温度に対応する温度Tに対応付けられ、劣化係数DC6>劣化係数DC5>劣化係数DC4>劣化係数DC3>劣化係数DC2>劣化係数DC1とされる。すなわち、フォトセンサ10の環境温度が上昇するにつれ、劣化係数DCN(N=1~6)が増加する。例えば、劣化係数DC1=0.2、劣化係数DC2=0.6、劣化係数DC3=0.7、劣化係数DC4=0.8、劣化係数DC5=0.9、劣化係数DC6=1に設定される。これは、フォトセンサ10の環境温度が上昇するほど、フォトセンサ10の劣化の進行が早まることに対応している。
【0066】
また、本実施例では、劣化パラメータ値DPの上限値として閾値DPmaxが設定されている(ステップS332)。これは、フォトセンサ10の劣化状態が一定の劣化状態で飽和し、それ以上、進行しないことに対応している。
【0067】
なお、厳密には、フォトセンサ10の劣化は、表示装置40が稼働していない期間も進行する。したがって、劣化パラメータ値算出処理を、表示装置40が稼働していない期間を含め、実行してもよい。この場合、フォトセンサ10の環境温度として、例えば、外気温度や車内の温度(室内温度)を計測するセンサの検出温度を用いてもよい。
【0068】
図5は、劣化パラメータ値算出処理により算出された劣化パラメータ値DPに基づいて、光源への駆動電流の電流値を補正する補正処理を示すフローチャート、
図6は、変換係数Kと劣化パラメータ値DPとの関係を示す図である。
【0069】
補正処理は、任意のタイミングで実行可能であるが、例えば、車両制御システム(表示装置40に係るシステム)の起動に伴う表示装置40の起動時に実行される起動処理に含まれてもよい。上記のように、起動処理は、表示装置40からの光が外部に照射されない状態で実行される。
【0070】
図5のステップS402では、制御部5は、記憶部20に格納されている劣化パラメータ値DPを取得する。
【0071】
ステップS404では、制御部5は、記憶部20に格納された、変換係数Kと劣化パラメータ値DPとの関係(
図6)を示すテーブルにアクセスし、ステップS402で取得された劣化パラメータ値DPに対応付けられた変換係数Kを取得する。
【0072】
変換係数Kは、フォトセンサ10に入射する光の輝度と、フォトセンサ10の出力値が示す輝度との関係(比率)を示す係数であるといえる。例えば、フォトセンサ10の劣化がない、すなわち劣化パラメータ値DPが0のとき、フォトセンサ10は、上記の初期値を出力する状態にある。したがって、このときの変換係数Kは1(100%)である。しかし、フォトセンサ10の劣化が進むと、変換係数Kは低下し、劣化パラメータ値DPが閾値DPmaxとなったとき、
図6の例では、変換係数Kは約0.65(65%)となる。このとき、フォトセンサ10の出力値が示す輝度は、フォトセンサ10に照射される光の輝度の約65%まで低下する。
【0073】
なお、変換係数Kとして、青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gの発光色のそれぞれに対応する変換係数KB、変換係数KRおよび変換係数KGを定めることができる。例えば、
図6において、グラフ51Bは、青の発光色に対する変換係数KBを、グラフ51Rは、赤の発光色に対する変換係数KRを、それぞれ示している。
【0074】
ここで、変換係数KB、変換係数KRおよび変換係数KGが互いに相違することは、フォトセンサ10の劣化状態に対応する各発光色における出力値低下の影響が異なることに対応している。例えば、フォトセンサ10に使用されるレンズが時間経過に伴い黄変する場合には、青の発光色に対応する変換係数KBが他の変換係数KR、KGよりも大きく低下する。例えば、
図6の例では、劣化パラメータ値DPが閾値DPmaxとなったときに、変換係数KBは約0.65まで減少する。しかし、劣化パラメータ値DPが閾値DPmaxとなったときの変換係数KR、KGの減少幅は、変換係数KBよりも抑制される。
【0075】
図6Aは、変換係数Kを劣化パラメータ値DPの変化に対して段階的に設定する例を示す図である。
図6Aにおいても、グラフ51Bは、青の発光色に対する変換係数KBを、グラフ51Rは、赤の発光色に対する変換係数KRを、それぞれ示している。
【0076】
ステップS406では、制御部5は、ステップS404で取得された変換係数Kを記憶部20に格納する。
【0077】
次に、ステップS408では、制御部50は、キャリブレーション工程を実行し、処理を終了する。
【0078】
このキャリブレーション工程では、ステップS404において記憶部20に格納された変換係数Kを用いて光源41のキャリブレーションが実行される。キャリブレーションにより、光源41への駆動電流の電流値と、光源41の発光輝度との関係が取得され、当該関係が以降の動作に適用される。これにより、キャリブレーション後における表示装置40の動作では、光源41への駆動電流の電流値には、補正処理において更新された変換係数Kが反映されることになる。すなわち、変換係数KB、変換係数KRおよび変換係数KGは、それぞれ青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gへの駆動電流の電流値を補正する係数として機能する。記憶部20に設定された変換係数KB、変換係数KRおよび変換係数KGの値は、次の起動処理において更新されるまで、表示装置40における光源41への駆動電流の電流値の補正に使用される。
【0079】
このように、駆動電流の電流値を変換係数Kにより補正することにより、フォトセンサ10の劣化に起因して過剰な駆動電流が光源41に供給されることを防止することができる。また、変換係数KB、変換係数KRおよび変換係数KGを独立して定めることにより、青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gの発光輝度のそれぞれを適切に管理できる。また、各発光色の適切なバランスを確保することができ、表示装置40において、長期間にわたり安定した表示色(例えば、白色)を維持することができる。
【0080】
なお、駆動電流を制御する方法は任意であるが、例えば、パルス幅変調を用いて光源41への駆動電流を制御している場合には、パルス幅変調におけるデューティー比を介してその電流値が制御される。したがって、パルス幅変調におけるデューティー比を変換係数Kにより補正すればよい。
【0081】
図7は、表示装置の稼働に伴う変換係数Kの推移を例示する図である。
図7において、横軸は表示装置40の稼働時間を、縦軸は変換係数Kの値を示している。
【0082】
図7の例は、
図6に示す変換係数Kと劣化パラメータ値DPとの関係に対応している。
図7において、グラフ52Bは、青の発光色に対する変換係数KBを、グラフ52Rは、赤の発光色に対する変換係数KRを、それぞれ示している。この場合、劣化パラメータ値DPは、時間経過とともに上昇し、時刻t1に閾値DPmaxに到達する。時刻t1以降は、劣化パラメータ値DPと同様、変換係数K(変換係数KB、KR)は一定値を維持する。
【0083】
図7に示すように、稼働時間の経過とともに、青の発光色に対応する変換係数KBが他の変換係数KR、KG(
図7では、変換係数KRのみ図示)よりも大きく低下する。なお、上記のように、フォトセンサ10の劣化の進行速度は、その環境温度に影響される。したがって、劣化パラメータ値DPが閾値DPmaxに到達するまでの時間は、温度環境の履歴に左右され、一定ではない。
【0084】
以上のように、本実施例の照明制御装置1によれば、フォトセンサ10の劣化状態を推定し、推定されたフォトセンサ10の劣化状態に基づいて光源41への駆動電流の電流値を補正している。このため、フォトセンサ10が劣化しても光源41へ過剰な駆動電流が供給されることを防止でき、光源41の発行強度を適切に制御できる。また、照明制御装置1によれば、変換係数KB、変換係数KRおよび変換係数KGを独立して定めている。このため、青色光源41B、赤色光源41Rおよび緑色光源41Gの発光輝度のそれぞれを適切に管理できる。また、各発光色の適切なバランスを確保することができ、表示装置40において、長期間にわたり安定した表示色(例えば、白色)を維持することができる。
【0085】
また、照明制御装置1によれば、補正処理を起動処理に含めることにより、表示装置40からの光が外部に照射されない状態で補正処理を実行することができる。
【0086】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部または複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 フォトセンサ
11 温度検出部
20 記憶部
30 タイマ
40 表示装置
41 光源
41B 青色光源
41R 赤色光源
41G 緑色光源