(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164877
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】充填ノズル
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20241121BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/00 301C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080562
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 賢登
(72)【発明者】
【氏名】奥村 達也
(72)【発明者】
【氏名】松本 明寛
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BD03
3E172EA35
(57)【要約】
【課題】クラッチ先端の突起が半径方向外方に開いた状態で固定されてしまうことを防止することが出来る充填ノズルの提供。
【解決手段】本発明の充填ノズル(10)は、燃料充填系統の充填ホースの先端に設けられ、充填ノズルと車両用充填口(20:レセプタクル)とを連結状態を維持するクラッチ機構(12)はレセプタクル側の部材と係合するクラッチ(4)を備え、クラッチのノズル長手方向中央部或いはその近傍に弾性体(14:例えばスプリング)が配置され、弾性体(14)はクラッチをノズルの半径方向内方に付勢している。或いは、クラッチのディスペンサー側端部が管継手本体(1)と係合している係合部には、断面が概略U字状で全体がリング状の弾性体スペーサ(15)が、弾性体スペーサによりクラッチの前記端部以外の部分がノズルの半径方向内方に付勢される様に嵌合している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素燃料を貯える貯蔵タンクから車両に搭載されている車載用水素充填タンクに水素を充填する燃料充填系統の充填ホースの先端に設けられ、レセプタクルに連結される管継手本体を有し、
充填ノズルの管継手本体の内側に管継手内流路が形成され、管継手内流路には一端に弁体を有するロッドが摺動自在に配設され且つ弁体が座着する弁座が形成され、弁体を弁座に付勢する弾性材が配設されており、
充填ノズルと車両用充填口とを連結状態を維持するクラッチ機構を備えており、当該クラッチ機構はレセプタクル側の部材と係合するクラッチを備え、
クラッチはノズル長手方向に延在しており、クラッチのノズル長手方向中央部或いはその近傍に弾性体が配置されており、当該弾性体はクラッチをノズルの半径方向内方に付勢していることを特徴とする充填ノズル。
【請求項2】
水素燃料を貯える貯蔵タンクから車両に搭載されている車載用水素充填タンクに水素を充填する燃料充填系統の充填ホースの先端に設けられ、レセプタクルに連結される管継手本体を有し、
充填ノズルの管継手本体の内側に管継手内流路が形成され、管継手内流路には一端に弁体を有するロッドが摺動自在に配設され且つ弁体が座着する弁座が形成され、弁体を弁座に付勢する弾性材が配設されており、
充填ノズルと車両用充填口とを連結状態を維持するクラッチ機構を備えており、当該クラッチ機構はレセプタクル側の部材と係合するクラッチを備え、
クラッチはノズル長手方向に延在しており、クラッチのレセプタクルから離隔する側の端部が管継手本体と係合している係合部には、断面が概略U字状で全体がリング状の弾性体スペーサが、当該弾性体スペーサによりクラッチの前記端部以外の部分が充填ノズルの半径方向内方に付勢される様に嵌合しており、
前記弾性体スペーサの形状は、クラッチの前記端部が管継手本体と係合している係合部の半径方向内方の領域と概略相補的な形状であることを特徴とする充填ノズル。
【請求項3】
管継手本体にはクラッチのディスペンサー側端部を収容する円環状凹部が形成されており、当該円環状凹部と管継本体の外部とを連通する排水路を有している請求項1、2の何れかの充填ノズル。
【請求項4】
クラッチのノズル長手方向中央部或いはその近傍に弾性体が配置されており、当該弾性体がクラッチを充填ノズルの半径方向内方に付勢している請求項2の充填ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素ガスの様な気体燃料を充填するための充填ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
その様な充填ノズルについて、シール構造の劣化を防止して、水素ガス漏洩の可能性を低減するため、出願人は特許文献1に開示されている技術を提案した。
当該技術は有用であるが、充填ノズルとレセプタクルが結合した状態で、充填ノズルのクラッチ先端に形成された半径方向外方及び内方に突出した(半径方向寸法が大きい)突起が凍結等で半径方向内方に移動することが出来なくなり、半径方向外方に開いた状態で固定されてしまうと、充填ノズルをレセプタクルから結合解除すること(外すこと)が出来なくなるという問題が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、クラッチ先端の突起が半径方向外方に開いた状態で固定されてしまうことを防止することが出来る充填ノズルの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の充填ノズル(10)は、
水素燃料を貯える貯蔵タンクから車両に搭載されている車載用水素充填タンクに水素を充填する燃料充填系統の充填ホースの先端に設けられ、レセプタクル(20)に連結される管継手本体(1)を有し、
充填ノズル(10)の管継手本体(1)の内側に管継手内流路(1A)が形成され、管継手内流路(1A)には一端に弁体(2A)を有するロッド(2)が摺動自在に配設され且つ弁体(2A)が座着する弁座(1H)が形成され、弁体(2A)を弁座(1H)に付勢する弾性材(3)が配設されており、
充填ノズル(10)と車両用充填口(20:レセプタクル)とをの連結状態を維持するクラッチ機構(12)を備えており、当該クラッチ機構(12)はレセプタクル(20)側の部材と係合するクラッチ(4)を備え、
クラッチ(4)はノズル長手方向に延在しており、クラッチ(4)のノズル長手方向中央部或いはその近傍に弾性体(14:例えばスプリング)が配置されており、当該弾性体(14)はクラッチ(4)をノズル(10)の半径方向内方に付勢していることを特徴としている。
【0006】
また本発明の充填ノズル(10-2)は、
水素燃料を貯える貯蔵タンクから車両に搭載されている車載用水素充填タンクに水素を充填する燃料充填系統の充填ホースの先端に設けられ、レセプタクル(20)に連結される管継手本体(1)を有し、
充填ノズル(10-2)の管継手本体(1)の内側に管継手内流路(1A)が形成され、管継手内流路(1A)には一端に弁体(2A)を有するロッド(2)が摺動自在に配設され且つ弁体(2A)が座着する弁座(1H)が形成され、弁体(2A)を弁座(1H)に付勢する弾性材(3)が配設されており、
充填ノズル(10-2)と車両用充填口(20:レセプタクル)とを連結状態を維持するクラッチ機構(12)を備えており、当該クラッチ機構(12)はレセプタクル(20)側の部材と係合するクラッチ(4)を備え、
クラッチ(4)はノズル長手方向に延在しており、クラッチ(4)のレセプタクル(20)から離隔する側の端部が管継手本体(1)と係合している係合部(円環状凹部1D)には、断面が概略U字状で全体がリング状の弾性体スペーサ(15)が、当該弾性体スペーサ(15)によりクラッチ(4)の前記端部以外の部分がノズル(10-2)の半径方向内方に付勢される様に嵌合しており、
前記弾性体スペーサ(15)の形状は、クラッチ(4)の前記端部(4E)が管継手本体(1)と係合している係合部(1D)の半径方向内方の領域(前記端部4Eの半径方向内方端面4EBよりも半径方向内方の領域)と概略相補的な形状であることを特徴としている。
【0007】
ここで、本発明の充填ノズル(10-2)において、管継手本体(1)にはクラッチ(4)のディスペンサー側端部(4E:クラッチ基部、クラッチ端部)を収容する(概略)円環状凹部(1D:溝)が形成されており、当該円環状凹部(1D)と管継手本体(1)の外部とを連通する排水路(7W)を有しているのが好ましい。
また、本発明の充填ノズル(10-2)において、クラッチ(4)のノズル長手方向中央部或いはその近傍に弾性体(14:例えばスプリング)が配置されており、当該弾性体(14)がクラッチ(4)をノズル(10)の半径方向内方に付勢する様に構成することが出来る。
【発明の効果】
【0008】
上述の構成を具備する本発明によれば、クラッチ(4)のノズル長手方向中央部或いはその近傍に弾性体(14:例えばスプリング)が配置されており、当該弾性体(14)はクラッチ(4)をノズル(10)の半径方向内方に付勢しているので、クラッチ(4)はノズル(10)の半径方向内方に付勢される。そのため、何らかの理由によりクラッチ(4)の結合が解除され難くなっても、弾性体(14:スプリング)の弾性反撥力によりクラッチ(4)は半径方向内方に押圧される。その結果、クラッチ(4)の先端は半径方向内方に移動して、クラッチ(4)の突起(4B)の端面(4BB)とレバー(5)の突起(5B)の端面(5BA)の結合は解除され、レバー(5)をレセプタクル(20)から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動することが出来る。その結果、クラッチ(4)の突起(4B)をレセプタクル(20)の嵌合溝(20A)から外して、充填ノズル(10)をレセプタクル(20)から接続解除することが出来る。
【0009】
ここで、例えば、充填ノズルに浸入した空気に包含される水分が水素ガスの低温により冷却されると氷結(凍結)して、クラッチ(4)とその周辺のノズル部品とを結合し、或いは、弾性体(14:スプリング)とクラッチ(4)の半径方向外方のノズル部品とを結合してしまう場合がある。そして、管継手本体(1)の概略円環状凹部(1D)内に溜まった水分が氷結すると、クラッチ(4)の突起(4B)はレセプタクル(20)の嵌合溝(20A)から外れず、充填ノズル(10)をレセプタクル(20)から接続解除することが出来なくなる。
しかし、本発明において、管継手本体(1)に形成されたクラッチ(4)のディスペンサー側端部(4E:クラッチ基部、クラッチ端部)を収容する(概略)円環状凹部(1D:溝)と管継手本体(1)の外部とを連通する排水路(7W)を設ければ、前記凹部(1D)に水分が溜まっても、排水路(7W)を介して充填ノズル(10-1、10-2)外部に排出されるので、円環状凹部(1D)が氷結することが防止される。そのため、クラッチ(4)の半径方向内方への動きは阻害されることは無く、クラッチ(4)の突起(4B)はレセプタクル(20)の嵌合溝(20A)から外れて、充填ノズル(10-1、10-2)をレセプタクル(20)から接続解除される。
【0010】
また本発明において、管継手本体(1)の概略円環状凹部(1D)には、弾性体スペーサ(15)が、クラッチ(4)を半径方向内方に付勢される様に嵌合しており、前記弾性体スペーサ(15)の形状は、クラッチ(4)端部(4E)の半径方向内方端面(4EB)よりも半径方向内方の領域と概略相補的な形状であれば、当該領域に位置するので水分や異物は浸入しない。
また、クラッチ(4)の端部(4E)は、円環状凹部(1D)における充填ノズル側端部の当接部(4EE)において管継手本体(1)と当接している。そのため、弾性体スペーサ(15)の半径方向外方に向かって作用する弾性反撥力(β)は、当接部(4EE)を回転中心とする回転力(CCW)として作用する。当該回転力(CCW)により、クラッチ(4)の端部(4E)以外の部分は半径方向内方に付勢されるため、レバー(5)をレセプタクル(20)から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動可能となり、クラッチ(4)の突起(4B)はレセプタクル(20)の嵌合溝(20A)から外れ、充填ノズル(10-2)はレセプタクル(20)から接続解除される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の概要を示す図であって、充填ノズルの管継手本体を示す断面説明図である。
【
図2】本発明の実施形態の概要を示す図であって、管継手とレセプタクルとが結合された状態を示す断面説明図である。
【
図3】
図2における符号F3部分の拡大説明図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る充填ノズルの説明断面図である。
【
図5】第1実施形態におけるスプリングの概要を示す説明図である。
【
図6】充填ノズルのクラッチと管継手との係合部を示す図であって、弾性体スペーサを嵌合していない状態を示す説明拡大図である。
【
図7】本発明の第2実施形態の要部を示す部分拡大説明断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る充填ノズルにおける排水路の概要を示す説明断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態の要部を示す部分拡大説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に本発明を理解するため、
図1~
図3を参照して、特許文献1(特許第6516207号公報)に記載の従来技術について説明する。
図1、
図2において、充填ノズル11は、例えばFCVの水素充填タンクに水素を充填する燃料充填系統の充填ホースの先端に設けられており、管継手本体1を有し、管継手本体1は充填時にレセプタクル20に連結される。
管継手本体1の内側に管継手内流路1Aが形成され、管継手内流路1Aにはロッド2が摺動自在に配設されており、弁座1Hが形成されている。ロッド2の一端には弁体2Aが設けられ、弁座1Hには弁体2Aが座着する。そして管継手内流路1Aには、弁体2Aを弁座1Hに付勢する弾性材3が配設されている。
【0013】
図2で示す様に管継手本体1とレセプタクル20を連結した状態では、水素ガスが管継手内流路1A、ロッド内流路2Bを流れ、或いは、ロッド大径部2Dの外周面と管継手内流路1Aの内周面の隙間δ1を流れて、レセプタクル嵌合凹部の底部20Cに到達し、レセプタクル内流路20Bを流れる。
レセプタクル嵌合凹部の底部20Cから、レセプタクル嵌合凹部の内壁面20Dと管継手中央突起1Eの外周面の隙間ε1を流れる水素ガスが存在したとしても、前記内周面20Dに設けられたOリング21によりシールされる。
【0014】
図2において、クラッチ機構12は、レバー5のレセプタクル側端部をクラッチ4の半径方向外方位置に保持して、クラッチ4の突起4Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れないようにする機能を有している。クラッチ機構12は、レバー5のレセプタクル側(
図1、
図2の右側)の端部に半径方向内側に突出するように設けられた突起5B(レバーの突起)と、レバーの突起5Bよりもレセプタクル20から離隔した側(
図1、
図2では左側)に配置したリング状弾性部材6(例えばOリング)を有している。
リング状弾性部材6は、レバー5のレセプタクル側端部近傍に形成された弾性体用溝5Cに嵌合している。
【0015】
図2で示すように管継手本体1とレセプタクル20を連結した場合に、ロッド2の先端の弁体2Aが弁座1Hから離隔して、水素ガスが管継手内流路1Aに流入し、ロッド内流路2B、レセプタクル内流路20Bを流過する。
その際、水素ガスは非常に高圧(例えば70MPa)であり、その圧力により管継手本体1をレセプタクル20から引き剥がそうとする引張力F1(
図2)が作用する。
引張力F1が管継手本体1に作用する結果、クラッチ4の突起4Bにおけるレセプタクル20から離隔する側(
図2で左側)の傾斜面4BAと、レセプタクル嵌合溝20Aにおけるレセプタクル20から離隔する側(
図2で左側)の傾斜面20AAとの作用により、引張力F1の分力として、クラッチ4には半径方向外方に向かう力ROが作用して、半径方向外方に向かう力ROはクラッチ4を半径方向外方に移動せしめる。
【0016】
図2におけるF3部分を拡大した
図3で示すように、半径方向外方に向かう力ROによりクラッチ4が半径方向外方に移動すると、リング状弾性体6が半径方向について潰れた状態となる。その結果、領域FTで、クラッチ4の突起4Bの端面4BBと、レバー5の突起5Bの端面5BAが接合する。端面4BBと端面5BAが接合するため、レバー5は
図3で示す状態から、レセプタクル20から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動することは出来ない。
レバー5が移動しないため、レバー5はクラッチ4の突起4Bの半径方向外方に位置し続け、クラッチ4が半径方向外方に移動することを抑止する。そのため、クラッチ4の突起4Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れてしまうことは無く、管継手本体1とレセプタクル20の連結が解除されてしまうことが防止される。
【0017】
図2、
図3において、水素ガスの充填が完了し、所定の脱圧作業が完了すれば、水素ガスの高圧に起因する引張力F1が消失する。
それに伴い、クラッチ4に作用する半径方向外方に向かう力ROも消失し、クラッチ4は半径方向内方の位置(水素ガス充填前の位置)に復帰し、リング状弾性部材6は
図3で示す潰れた状態から断面円形の状態に復帰する。そのため、前記端面4BBと前記端面5BAは、半径方向における相対位置(
図3における上下方向位置)が異なった状態となり(接合せず)、
図3における領域FTの様な状態にはならない。
従って、レバー5は
図3で示す状態とは異なり、レセプタクル20から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動可能となる。レバー5をレセプタクル20から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動すれば、レバー5はクラッチ4の半径方向外方には位置せず、前記突起4Bがレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れることが可能となる。そして、管継手本体1とレセプタクル20の連結を解除することが出来る。
【0018】
図1~
図3を参照して上述した特許文献1の発明は有用な技術である。
しかし、何らかの要因により、クラッチ4の突起4Bの端面4BBとレバー5の突起5Bの端面5BAの結合が解除されないと、水素充填が完了して半径方向外方に向かう力ROが消失しても、クラッチ4の突起4Bの端面4BBとレバー5の突起5Bの端面5BAが分離せず、レバー5をレセプタクル20から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動することが出来なくなる。その場合、クラッチ4の突起4Bはレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れなくなり、ノズル11をレセプタクル20から取り外すことが出来なくなってしまう。
【0019】
それに対して、
図4で示す第1実施形態の充填ノズル10では、水素充填が完了して半径方向外方に向かう力ROが消失すれば、確実にノズル11をレセプタクル20から取り外すことが出来る。
図4において、クラッチ4のノズル長手方向中央部或いはその近傍にスプリング14(弾性体)が配置され、そのスプリング14は、クラッチ4を、ノズル10の半径方向内方に付勢している。そして、管継手本体1の先端部1Cにクラッチ基部4E(クラッチのディスペンサー側端部)が係合している箇所の構造が、
図4の第1実施形態では
図1~
図3と異なっている。
図4ではレセプタクル20は図示されていないが、レセプタクル側の構造は、
図1~
図3と同様である。
図4では、左側がレセプタクル側である。
図4を参照して説明するに際しては、
図1~
図3の構成と同様な部分は
図1~
図3と同様の符号を付し重複説明はしない。以下において、
図1~
図3とは異なる点について、主に説明する。
【0020】
図4において、充填ノズル長手方向に延在するクラッチ4における充填ノズル長手方向中央部近傍には、凸部4Cが形成されている。凸部4Cの半径方向外方には、溝4Dが形成されている。溝4D内に弾性体であるスプリング14が配置されている。
スプリング14は、溝4D(
図4参照)内に配置された状態では、例えば
図5で示す様に、弾性反発力により半径方向内方へ収縮する。係る収縮力は、スプリング14から溝4Dの底部に作用し、矢印F5で示す方向へ作用する。スプリング14による弾性反撥力(矢印F5)によりクラッチ4はノズル10の半径方向内方に付勢される。
図5において、スプリング14の一端部にはクラッチ4の半径方向内方に突出する係止部14Tが設け、溝4Dの底部には孔部(図示せず)が形成されている。図示しない係止部を溝4D底部の孔部(図示せず)に係止させることにより、スプリング14が円周方向に回転することを防止出来る。
また、係止部14Tが設けられた前記端部と他端部14E2の間には隙間14Sが形成されており、例えば予期しない外力によりスプリング14が半径方向内方に付勢されても、当該隙間14Sにより破損が防止される。
図示はされていないが、スプリング14を、円環状に連結した引張コイルスプリングで構成することも出来る。
【0021】
図4で示す様に、管継手本体1は管継手本体基部1Bと管継手本体先端部1Cを備えており、クラッチ基部4E(クラッチ4のディスペンサー側端部:
図4で右側端部)は、概略円環状凹部1Dにおいて管継手本体先端部1Cと係合している。
管継手本体1の概略円環状凹部1Dとクラッチ基部4Eとの係合箇所の詳細が、
図6で示されている。
図6において、レセプタクル側を矢印AR、ディスペンサー側を矢印ADで示す。クラッチ4のディスペンサー側端部4Eは、クラッチ4の他の部分に比較して半径方向内方(
図6では下方)にオフセットされている。そしてクラッチ4のディスペンサー側端部4Eにおいて、レセプタクル側(
図6で左側)の部分は当接部4EEであり、当接部4EEは管継手本体1と係合している。また、最もディスペンサー側(
図6で最右方)に位置する最端部4EAは、当接部4EEに比較して半径方向外方(
図6では上方)である。ディスペンサー側端部4Eにおいて、半径方向内方端面4EBはディスペンサー側ADに向かって半径方向外方(
図6の上方)に向かう傾斜面を構成している。
クラッチ4のディスペンサー側端部4Eの半径方向外方端面は、傾斜面4ECと平坦面4EDを有している。
【0022】
図6では、ディスペンサー側端部4Eにおいて、半径方向外方端面の平坦面4EDは矢印Aで示す長さが移動可能であり、最端部4EAは管継手本体1に対して矢印Bで示す長さだけ移動可能であり、半径方向内方端面4EBは管継手本体1に対して矢印Cで示す長さだけ移動可能である。
図4、
図5を参照して上述した様に、クラッチ4のノズル長手方向中央部或いはその近傍に形成された溝4D内に配置されたスプリング14の弾性反撥力により、クラッチ4はノズル10の半径方向内方に付勢されている。係る弾性反発力が作用するクラッチ4は、レセプタクル側(
図6では矢印AR側)は何処にも支持されておらず、ディスペンサー側の端部4Eは上述した通り矢印A、B、Cで示す長さだけ移動可能である。
そのため、管継手本体先端部1Cにクラッチ4のディスペンサー側端部4Eが係合している係合箇所(凹部1D:
図4参照)では、スプリング14の弾性反撥力によりクラッチ4をノズル10の半径方向内方に付勢することを阻害しない。
【0023】
図4、
図5の第1実施形態の充填ノズル10においては、何らかの理由によりクラッチ4の突起4Bの端面4BB(
図2、
図3参照)とレバー5の突起5Bの端面5BA(
図2、
図3参照)の結合が解除され難くなっても、スプリング14の弾性反撥力によりクラッチ4を半径方向内方に付勢し、押圧する。
水素充填が完了して半径方向外方に向かう力RO(
図2、
図3)が消失すれば、スプリング14の弾性反発力によりクラッチ4の先端は半径方向内方に移動し、クラッチ4の突起4Bの端面4BBとレバー5の突起5Bの端面5BAの結合は解除され、レバー5をレセプタクル20から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動することが出来る。その結果、クラッチ4の突起4Bをレセプタクル20の嵌合溝20Aから外して、充填ノズル10をレセプタクル20から接続解除することが出来る。
なお、
図4、
図5の第1実施形態において、管継手本体先端部1Cにクラッチ4のディスペンサー側端部4Eが係合する構成は、
図6に示すものには限定されない。例えば、
図1、
図2に示す構成(特許文献1に記載の構成)とすることも可能である。
【0024】
図4、
図5の第1実施形態において、例えば、充填ノズル10に浸入した空気に包含される水分が水素ガスの低温により冷却されると氷結(凍結)して、クラッチ4とその周辺のノズル部品とを結合してしまう場合がある。例えば充填ノズル10の管継手本体1がレセプタクル20に結合した状態において、円環状溝1D(クラッチ4のディスペンサー側端部4Eが係合している凹部)に溜まった水分が氷結すると、スプリング14の弾性反撥力ではクラッチ4は半径方向内方に動くことが出来なくなり、クラッチ4の突起4Bはレセプタクル20の嵌合溝20A(
図2、
図3)から外れず、充填ノズル10をレセプタクル20から接続解除することが出来なくなる。
図4、
図5の第1実施形態では、その様な凍結に伴う不都合を防止することは困難である。
【0025】
係る不都合は、本発明の第2実施形態により解消される。
図7、
図8を参照して、第2実施形態について説明する。
図7、
図8において、第2実施形態に係る充填ノズルは、全体が符号10-1で示されている。
図7において、管継手本体1に形成されているクラッチ4のディスペンサー側端部4Eと係合している円環状凹部1Dには、排水路7Wが連通している。
図8において点線で示す様に、排水路7Wは管継手本体1を貫通しており、明示はされていないが、充填ノズル10-1のグリップと充填ホースの境界に設けた排水ポート(図示せず)に連通して、当該境界から充填ノズル10-1の外部に排水する様に構成されている。ただし、充填ノズル10-1のグリップと充填ホースの境界以外の箇所に、前記排水ポートを形成することも可能である。
図7、
図8の第2実施形態において、円環状凹部1Dに水分が溜まっても、溜まった水分は排水路7Wを介して充填ノズル10-1外部に排出されるので、円環状凹部1Dが氷結することが防止される。そのため、スプリング14の弾性反撥力によりクラッチ4は半径方向内方に動き、レバー(5)をレセプタクル(20)から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動可能となり、クラッチ4の突起4Bはレセプタクル20の嵌合溝20A(
図2、
図3)から外れて、充填ノズル10をレセプタクル20から接続解除できる。
図7、
図8の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図4~
図6の第1実施形態と同様である。
【0026】
次に、
図9を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図9の第3実施形態に係る充填ノズルは、全体が符号10-2で示されている。
図9においてクラッチ4のディスペンサー側端部4E(レセプタクル20から離隔する側の端部、
図6で右側端部)が管継手本体1と係合している係合部には、弾性体スペーサ15が嵌合している。弾性体スペーサ15の弾性反撥力は、矢印βで示す様に、クラッチ4の端部4Eに作用する。
この弾性体スペーサ15の形状は、凹部1Dの空隙における半径方向内方の領域(
図9においては、凹部1Dの下側の領域)と、概略相補的な形状であり、その領域に位置している。
弾性体スペーサ15が、凹部1Dのディスペンサー側端部4Eの半径方向内方端面4EBよりも半径方向内方(
図9の下方)の領域に位置していれば、当該領域には水分や異物は浸入しない。
また、
図9の第3実施形態では、第2実施形態と同様に、円環状凹部1Dに排水路7Wが連通している。そのため、弾性体スペーサ15の半径方向外方(
図9では上方)に水が溜まっても、排水路7Wを介して充填ノズル10-1外部に排出される。
【0027】
ここで、クラッチ4の端部4Eは、凹部1Dにおける充填ノズル側(矢印AR側:
図9の左方)端部の当接部4EEにおいて、管継手本体1と当接している。そのため、半径方向外方(
図9の上方)に向かって作用する弾性反撥力βは、当接部4EEを回転中心として、矢印CCWで示す回転力として作用する。なお、
図6において符号4EFで示す隅部を回転中心として回転力を発生することも可能である。
そして、矢印CCWで示す方向に作用する回転力は、クラッチ4のレセプタクル側部分4R(クラッチ4のディスペンサー側端部4E以外の部分)を半径方向内方に移動させる力となる。係る力により、クラッチ4は半径方向内方に動き、クラッチ4の突起4Bはレセプタクル20の嵌合溝20A(
図2、
図3)から外れ、充填ノズル10はレセプタクル20から接続解除される。すなわち、弾性体スペーサ15は、クラッチ4を給油ノズル10-2の半径方向内方に付勢する様に構成されている。
第3実施形態においては、弾性体スペーサ15によりクラッチ4のレセプタクル側部分4R(クラッチ4のディスペンサー側端部4E以外の部分)を半径方向内方に移動させる力が発生するので、スプリング14を省略することが出来る。もちろん、スプリング14を設け、弾性体スペーサ15の弾性反撥力及びスプリング14の弾性反撥力の双方によって、クラッチ4を半径方向内方に付勢することも出来る。
【0028】
図9の第3実施形態によれば、弾性体スペーサ15および排水路7Wの効果により、円環状凹部1Dが氷結し難い。
そして、弾性体スペーサ15の弾性反撥力により、クラッチ4を半径方向内方に付勢するので、レバー(5)をレセプタクル(20)から離隔する方向(
図2、
図3では左方向)に移動可能となり、クラッチ4の突起4Bはレセプタクル20の嵌合溝20Aから外れ、充填ノズル10をレセプタクル20から確実に接続解除することが出来る。
図9の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図4~
図8の実施形態と同様である。
【0029】
図示の実施形態において、弾性体スペーサ15の材料は独立発泡のゴムが望ましい。
連泡構造では、水が浸入する恐れがあるので、弾性体スペーサ15を構成する材料としては不適切である。ただし、クラッチ4を半径方向内方に付勢する作用のみで足りるのであれば、連泡構造のゴムを採用することも可能である。
また、図示の実施形態において、独立発泡のゴム或いは連泡構造のゴムに代えて、シリコン等の合成樹脂を用いることも出来る。
係る弾性体スペーサを製造するに際して、クラッチ4の端部4E(ディスペンサー側端部)が管継手本体1と係合している係合部の空間に溶融したゴム或いはシリコンを流し込むことにより、製造することが可能である。流し込んだゴム或いはシリコンが硬化した後、硬化したゴム或いはシリコンを取り出せば、弾性体スペーサ15が製造される。ただし、当該係合部の空間に流し込んだゴム或いはシリコンが硬化すれば、弾性体スペーサ15として作用するので、取り外すことなく、そのまま弾性体スペーサ15として充填することも可能である。
なお、弾性体スペーサ15の寸法AからC(
図6)について上述した条件を考慮しつつ、流し込むゴム或いはシリコンの組成や特性を考慮することが必要である。
【0030】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0031】
1・・・管継手本体
1A・・・管継手内流路
1D・・・円環状凹部
1H・・・弁座
2・・・ロッド
2A・・・弁体
3・・・弾性材
4・・・クラッチ
4E・・・クラッチのディスペンサー側端部
5・・・レバー
7W・・・排水路
10、10-1、10-2・・・充填ノズル
12・・・クラッチ機構
14・・・スプリング(弾性体)
15・・・弾性体スペーサ
20・・・レセプタクル(車両用充填口)