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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164890
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】リッド開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20241121BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241121BHJP
   E05B 83/34 20140101ALI20241121BHJP
【FI】
B60K15/05 B
B60K1/04 Z
E05B83/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080589
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000192914
【氏名又は名称】株式会社神菱
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】清原 敦
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ10
2E250KK01
2E250LL13
3D038CA32
3D038CB01
3D038CC16
3D235AA01
3D235BB22
3D235BB41
3D235HH08
3D235HH09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液密性を向上させながら、開閉操作が困難になることを防止できるリッド開閉装置を提供する。
【解決手段】リッド開閉装置は、プッシュロッド3と、前記プッシュロッド3を移動可能に支持するハウジング20とを備え、前記ハウジング20には通気部6が設けられている。前記通気部6は、集中室61と、開放端部65を有するスカート部63とを有している。前記集中室61は前記ハウジング20と連通し、前記スカート部63は開孔部62を介して前記集中室61と連通し、前記開放端部65の断面は前記開孔部62の断面より大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュロッド(3)と、前記プッシュロッド(3)を移動可能に支持するハウジング(20)と前記ハウジング(20)に設けられた通気部(6)とを有し、
前記通気部(6)は、集中室(61)と、開放端部(65)を有するスカート部(63)とを有し、
前記集中室(61)は、前記ハウジング(20)と連通し、
前記スカート部(63)は、開孔部(62)を介して前記集中室(61)と連通し、
前記開放端部(65)の断面は、前記開孔部(62)の断面より大きいことを特徴とするリッド開閉装置。
【請求項2】
前記通気部(6)は液流誘導部(64、66)を有し、
前記液流誘導部(64、66)は、前記スカート部(63)の前記開放端部(65)側に設けられていることを特徴とする請求項1記載のリッド開閉装置。
【請求項3】
前記スカート部(63)の前記開放端部(65)の断面は水の毛細管現象が生じない大きさであることを特徴とする請求項1記載のリッド開閉装置。
【請求項4】
前記スカート部(63)の前記集中室(61)から前記開放端部(65)に向かう方向は、前記プッシュロッド(3)移動方向と交差する方向であることを特徴とする請求項1記載のリッド開閉装置。
【請求項5】
前記スカート部(63)は、前記開孔部(62)から前記開放端部(65)に向かって末広がり形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のリッド開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリッドに使用するリッド開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の充電ポートや給油口のリッド(蓋)に使用される開閉装置が知られている。進退するプッシュロッド(リフター)を備えた開閉装置は、外部からリッド(蓋)を介してプッシュロッドが押圧される毎に、閉状態の押込位置と開状態の突出位置とが交互に切り替わるよう構成されている(特許文献1、2、3)。
また、開閉装置には、係止部を設けたリッドロック機構を備える装置もある(特許文献1、2)。ロック機構を備えた開閉装置の場合、プッシュロッドの先端部に係止部が設けられ、押込位置では、リッドはプッシュロッドの係止部によりロック状態となり、突出位置においては、リッドはプッシュロッドの係止部から解放され開状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-42527号公報
【特許文献2】特開2022-155758号公報
【特許文献3】特開2007-290573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開閉装置のプッシュロッドが部分的に収容される本体部は、パネルの内部(車内側)に配置されることで、開閉装置内部への雨水等の水の浸入は回避され、その内部の機構への水の影響は回避される。しかし、例えば車両の小型化の要求や、電気自動車のような複雑な充電ポートへの対応等のため、開閉装置の本体部をパネル内部に配置することが困難な場合がある。一方、本体部を上記パネル外への配置を可能とするためには、開閉装置の液密性を高める必要が生じる。
特許文献3に記載されているように、開閉装置のプッシュロッドを防水カバーにより覆うことで、液密性を向上させることができる。
【0005】
しかし、液密性の向上のために開閉装置を完全に密閉した場合、プッシュロッドを本体部内に押し込むと、本体内部の空気が圧縮され、本体内部の圧力が増大し、その結果、開閉操作が困難になる。
また、この開閉機構は、リッドの開閉を可能とするが、係止部を用いたロック機構の搭載は不可能になる。
本発明は、開閉装置のプッシュロッドが部分的に収容される本体部をパネル外への配置することを前提としつつ、完全密閉せずしかも開閉装置の液密性を向上させながら、開閉操作による本体内部の圧力増大を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるリッド開閉装置は、
プッシュロッド(3)と、前記プッシュロッド(3)を移動可能に支持するハウジング(20)と前記ハウジング(20)に設けられた通気部(6)とを有し、
前記通気部(6)は、集中室(61)と、開放端部(65)を有するスカート部(63)とを有し、
前記集中室(61)は前記ハウジング(20)と連通し、
前記スカート部(63)は開孔部(62)を介して前記集中室(61)と連通し、前記開放端部(65)の断面は前記開孔部(62)の断面より大きいことを特徴とする。
【0007】
このような構成のリッド開閉装置とすることで、液密性を向上させながら、プッシュロッドの滑らかな移動を可能とする。
【0008】
また、本発明にかかるリッド開閉装置は、上記構成において、
前記通気部(6)は液流誘導部(64、66)を有し、前記液流誘導部(64、66)は、前記スカート部(63)の前記開放端部(65)側に設けられてもよい。
【0009】
このような構成のリッド開閉装置とすることで、リッド開閉装置内に万が一水が侵入した場合、水の排出効果を向上させることができる。
【0010】
また、本発明にかかるリッド開閉装置は、上記構成において、
前記スカート部(63)の前記開放端部(65)の断面は水の毛細管現象が生じない大きさであってもよい。
【0011】
このような構成のリッド開閉装置とすることで、通気部を介して外部からの水の侵入のリスクを低減することができる。
【0012】
また、本発明にかかるリッド開閉装置は、上記構成において、
前記スカート部(63)の前記集中室(61)から前記開放端部(65)に向かう方向は、前記プッシュロッド(3)移動方向と交差する方向であってもよい。
【0013】
このような構成のリッド開閉装置とすることで、プッシュロッドの移動方向を水平方向と平行に配置し、有利に水の排出効果を得ることができる。
【0014】
また、本発明にかかるリッド開閉装置は、上記構成において、
前記スカート部(63)は、前記開孔部(62)から前記開放端部(65)に向かって末広がり形状であってもよい。
【0015】
このような構成のスカートは、水を排出し、水の侵入を阻止する効果を奏するとともに、樹脂成形を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液密性を向上させながら、開閉操作が困難になることを防止できるリッド開閉装置を提供することができる。
また、リッド開閉装置は、必要に応じて、ロック機構を搭載することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(A)~(C)は、開閉装置100の主な動作状態を示す模式図である。
図2図2(A)~(C)は、開閉装置100の構造を説明する模式図である。
図3図3(A)~(B)は、通気部6の機能を説明する模式図である。
図4図4(C)~(D)は、通気部6の機能を説明する模式図である。
図5図5(A)~(C)は、実施形態2の開閉装置100の通気部6を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0019】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0020】
(実施形態1)
以下図面を参照しながら、開閉装置100(リッド開閉装置)について説明する。以下、給電ポートのリッド(蓋)に適用する例について説明するが、燃料補給口のリッド等、他のリッドへの適用が可能である。
【0021】
図1は、開閉装置100の主な動作状態を示す模式図である。図1(A)はリッドが開状態(解錠状態)となる開閉装置100の外観図、図1(B)はリッドが閉状態(施錠状態)となる開閉装置100の外観図、図1(C)は車体に取り付けた開閉装置100によりリッドが係止された状態を示す模式図である。
【0022】
開閉装置100は、メインボディ1、底部支持部2、プッシュロッド3を有している。メインボディ1と底部支持部2とは固定され、プッシュロッド3を収容するハウジング20を構成し、プッシュロッド3を往復移動可能に支持する。
また、ハウジング20は、プッシュロッド3が往復運動とともに回転が可能なように、プッシュロッド3を支持する。
プッシュロッド3の先端部には係止部4(ロック部材)が設けられ、係止部4の先端には緩衝部材5が設けられている。緩衝部材5は、リッド7の内側壁面が接する当接部となる。
【0023】
底部支持部2には通気部6(ベンチレータ)が設けられている。図1に示すように、通気部6は底部支持部2の壁面21(底壁面)から突出するように設けることができる。
プッシュロッド3は、長手方向(x方向)に押し込む度に、メインボディ1に対して縮退した状態と延展した状態を交互に実現できるように構成されている。
なお、通気部6は底部支持部2の壁面21の内部に組み込んでもよい。
【0024】
図1(A)に示す解錠状態では、プッシュロッド3はメインボディ1から延展した状態が維持される。解錠状態において、(図1(C)に示す)リッド7の内壁によって係止部4の先端(緩衝部材5)を押圧し、プッシュロッド3をメインボディ1内に押し込むと、開閉装置100に設けられた公知のカム機構(ノックカム機構)により、プッシュロッド3とともに係止部4が回転しながら、図1(B)に示す状態に移行し、その状態が維持される。
図1(B)に示す係止部4と図1(A)に示す係止部4とは、互いに、プッシュロッド3の長手方向に平行な回転軸に対して90°回転している。
なお、ノックカム機構については、例えば特許文献2に詳細に説明されている。
【0025】
なお、図1において、開閉装置100のプッシュロッド3が往復移動する方向(長手方向)に平行な方向をx方向とし、x方向に垂直な方向をy方向とする。車体に取り付ける場合、好適には、x方向は水平方向であり、y方向は鉛直方向である。
なお、適宜に、x方向を水平方向に対して、例えば10°以下程度傾斜してもよい。
【0026】
図1(B)に示す施錠状態では、プッシュロッド3はメインボディ1内に縮退した状態が維持される。施錠状態において、リッド7の内壁によって係止部4の先端(緩衝部材5)を押圧し、プッシュロッド3をメインボディ1内にさらに押し込むと、カム機構により、プッシュロッド3とともに係止部4が回転しながら、プッシュロッド3が延展し、図1(B)に示す状態に移行する。
【0027】
図1(C)は、リッド7がプッシュロッド3の係止部4によりロック(施錠)された状態を示す。リッド7は図示しないヒンジ等により、車体のパネルに対して可動に取り付けられている。
【0028】
リッド7の内側には被係止部71が設けられている。被係止部71は、係止部4の形状を反映した開口部を有し、図1(B)に示す方向では係止部4と係合し、図1(A)に示す方向では係止部4との係合が解除されるように構成されている。
従って、図1(A)のようにプッシュロッド3がメインボディ1から延展した状態では、リッド7を解放することが可能となり、図1(B)に示すように、プッシュロッド3がメインボディ1に縮退した状態では、リッド7は系止部4によって、閉状態で施錠される。
このように開閉装置100はリッドロック機構として機能することができる。
【0029】
図1(C)に示すように、メインボディ1を、給電部を構成する車体の壁面8(固定壁)に取り付けるため、固定補助部9を有してもよい。
開閉装置100のメインボディ1の先端側にフランジ部10を設け、車体の壁面8をフランジ部10と固定補助部9とにより挟み込むことで、開閉装置100を車体の壁面8に取り付けることができる。
開閉装置100を車体に取り付ける場合、例えば図1(C)に示すように、通気部6が鉛直方向の下方側に位置するように取り付けられる。
【0030】
図2は開閉装置100の構造を説明する図である。図2(A)は開閉装置100の内部構造を模式的に示す断面図、図2(B)はメインボディ1と底部支持部2の部分的拡大分解図、図2(C)は底部支持部2の透視図である。
図2(A)は、図1(B)に示す状態の開閉装置100の断面図である。
【0031】
メインボディ1は両端に第1の開口部1A及び第2の開口部1Bを有し、プッシュロッド3は第1の開口部1Aから挿入され、系止部4は第1の開口部1Aより外部に突出している。
第1の開口部1Aにおいて、摺動部シール11により、プッシュロッド3とメインボディ1とは、摺動可能に液密に封止されている。第2の開口部1Bにおいて、固定部シール12により、メインボディ1と底部支持部2とが液密に封止される。
底部支持部2は支柱14を有し、スプリング13が支柱14に支持されている。プッシュロッド3は、メインボディ1内を、支柱14の長手方向に移動することができる。
スプリング13はプッシュロッド3をメインボディ1から突出する方向(延展する方向)に付勢する。すなわち、スプリング13は、プッシュロッド3を施錠状態から、解錠状態に移行させる方向に付勢する。
【0032】
回転摺動子15と底部支持部2とのカム機構により、プッシュロッド3の直線運動が、プッシュロッド3及び係止部4の回転運動に変換され、直線運動と回転運動を利用して、図1(A)に示す解錠状態と、図1(B)に示す施錠状態を、解錠状態と施錠状態とを交互に選択し、保持することができる。
なお、このような開閉装置100の解錠状態と施錠状態の交互の変更機構は、上記構成に限定することなく、公知の機構を用いることができるが、回転摺動子15を用いたカム機構を採用した場合、開閉装置100の小型化に有利である。
【0033】
図2(B)に示すように、メインボディ1と底部支持部2とは、それぞれ係合部16(固定部)と被係合部17(固定受け部)とを有している。底部支持部2の支柱14をメインボディ1内に挿入し、係合部16と被係合部17とを係合することによって、メインボディ1と底部支持部2とを固定させることができる。また、メインボディ1と底部支持部2との間に固定部シール12が設けられており、液密性を確保することができる。固定部シール12は、樹脂等の弾性を有する材料から構成される。
【0034】
底部支持部2は、メインボディ1(又は第1の開口部1A、及び第2の開口部1B)に対向する側が壁面21により閉ざされている。また、壁面21には通気部6が設けられている。
通気部6は、底部支持部2の壁面21に接して設けられ、集中室61、スカート部63、突起部64(液流誘導部)を有する。通気部6は、樹脂成形により底部支持部2と一体で製造することができる。
壁面21は集中室61と連結し、集中室61はスカート部63と連結し、スカート部63は突起部64と連結している。
突起部64はスカート部63の末端面に、配置され、突起形状をしている。
【0035】
図2(A)に示すように、集中室61の壁面21側の端面60は開放されており、集中室61は、端面60を介して底部支持部2の内部空間(ハウジング20の内部空間)と連通している。
スカート部63の集中室61側の一端部(図2(C)中上端部)には、開孔部62が設けられ、開孔部62によって集中室61の内部とスカート部63の内側が連通している。
スカート部63の他端部(図2(C)中下端部)には開放端部65が設けられている。
また、スカート部63の他端部(開放端部65側)には突起部64が設けられている。
通気部6は、底部支持部2を樹脂成形により製造する過程において、壁面21と一体化して形成することができる。
なお、図において、通気部6は壁面21から突出しているが、底部支持部2の内部に通気部6を組み込んでもよい。
【0036】
図3は通気部6の機能を説明する模式図である。なお、視認性のため、図3(A)、(B)においてはスプリング13を省略している。
車体に開閉装置100を取り付ける場合、通気部6は壁面21の鉛直下方に設けられ、鉛直方向の上方から下方に向うに従って、集中室61、(開孔部62、)スカート部63、突起部64の順に配置される。
図3(A)はプッシュロッド3が(リッド7からの押圧力により)メインボディ1内へと(矢印X1方向に)押し込まれた状態を示し、図3(B)はプッシュロッド3が(スプリング13の付勢力により)メインボディ1の外へと(矢印X2方向に)押し出された状態を示す。
なお、図3(A)、(B)中の点線矢印は、通気部6近傍の空気の流れを示す。
【0037】
図3(A)に示すように、プッシュロッド3が矢印X1方向(x方向)に移動すると、メインボディ1と底部支持部2に囲まれた領域(以下、内部領域と称す)内の空気は、プッシュロッド3と対向する集中室61に流れる。
プッシュロッド3の移動方向に対して、スカート部63の流路の方向(集中室61から開放端部65に向かう方向に平行な方向)は、交差し、好適には垂直になるよう構成されている。スカート部63内壁に囲まれた内部領域は、開孔部62から鉛直下方に向かう気体の流路を構成する。
従って、内部領域の空気はプッシュロッド3の移動方向に沿って流れ、圧縮された空気が集中室61に流れ込み、集中室61に流入した空気は、スカート部63の開孔部62を通過し、(好適には)L字状に進路が曲げられ、スカート部63の内部を流れ、開放端部65から通気部6の外部に排気される(図3(A)中、点線矢印参照)。
【0038】
なお、スカート部63の流路の方向が、プッシュロッド3の移動方向に平行であることを排除するものではない。しかし、集中室61のX1方向の対向する端部に壁が存在し、空気の流れがL字状となる場合、X1方向に流れた空気の一部が集中室61の対向する壁と衝突し、空気の圧縮効果も生じることになる。後述するように、開閉装置100の内部に、万が一侵入した水を排出する効果を高めることができる。また、開口部周辺の凍結物の排除も可能である。
また、L字状に空気の流路を構成することで、異物(泥、粉塵等)の侵入を効果的に阻止し、開閉装置100内部の損傷を阻止することもできる。
【0039】
図3(B)に示すように、プッシュロッド3が矢印X2方向(-x方向)に移動すると、内部領域が減圧され、外気が、スカート部63(及び開孔部62)を経由して、集中室61に流れ込み、内部領域に流入する。すなわち、外気は、鉛直上方に流入し、集中室61においてL字状に進路が曲げられ、プッシュロッド3の移動方向に沿って流れる(図3(B)中、点線矢印参照)。
メインボディ1と底部支持部2に囲まれた領域が密閉されている場合、その領域の気圧がプッシュロッド3の移動を阻害するが、上記のように通気部6は、プッシュロッド3の移動に抵抗する空気圧の変化を抑制する。
【0040】
なお、万が一内部領域に水が浸入した場合、図3(A)に示す排気過程は、水を排出する効果を有する。図1(C)に示すように、通気部6が鉛直方向の下方に位置するように取り付けると、内部領域に入り込んだ水は重力によってメインボディ1の下方に集まることになる。内部領域の空気は唯一の排気経路である通気部6の集中室61へ向かって流れる。その空気の流れによって、水は集中室61に送り込まれる。その後、空気は開孔部62を通過する。
開孔部62の径は、集中室61内の空間の幅w及び奥行きDより狭く設定されている(図2(B)、(C)参照)。集中室61で圧力が高められた空気は、開孔部62のノズルとしての機能により、開孔部62を通過し、流速が速められる。水が、流速が速められた空気とともに、開孔部62から、スカート部63を経由して外方に放出(排出)される。また、空気流により、異物の排出が促進され、さらに異物の侵入も防止される。
【0041】
また、外気との流通経路である通気部6から内部領域に水や異物が浸入することを防ぐためには、スカート部63の内径を小さくすることが効果的である。しかし、水は、毛細管現象によって、細い管の中を移動する性質がある。従って、スカート部63の内径を小さくすると、毛細管現象によって、水は、スカート部63から集中室61に移動することになる。また、プッシュロッド3をX1方向に押し込む際には、空気が排出する抵抗を高めてしまう。
【0042】
そのため、スカート部63は、開孔部62が設けられている集中室61側(上端部)から、集中室61側に対向する他方側(下端部)に向かうに従って、徐々に、(又は段階的に、)その断面(断面積)が大きくなる形状(末広がり形状)に設定されている。好適には、図3に示すように、スカート部63の断面は円形であり、その径は集中室61側からその他方側へ向かうに従って、単調に増加するように構成することができる。
このように、開孔部62で速められた流速は、スカート部63による低速化が抑えられ、効果的に水を排出することができる。
【0043】
突起部64が設けられているスカート部63の下端部(開放端部65)の断面(又は内径)は、水の毛細管現象が発生しないサイズ、好適には、例えば円の内径が4mm以上を有するように設定される。
その結果、毛細管現象による、外部からの水の移動は防止される。一方、開孔部62は水や異物の侵入を防止するため、その断面のサイズを小さく(例えば非限定的に円の内径が1mm以下に)設定することが可能となる。このようなスカート部63の形状と配置によって、水や異物の侵入を極力抑えることができる。
また、末広がり形状のスカート部63は、開孔部62から放出される空気の流れを阻害せず、空気流による水や異物の排出を高める効果を有するとともに、スカート部63内部の水溜まりを防止する効果を有する。
【0044】
さらに、図4(D)に示すように、スカート部63の下端部には、複数の突起部64が局所的に設けられている。スカート部63の内壁面や外壁面に付着した水は、重力によって突起部64へ移動する。その結果、水は局所的に突起部64に集められる(集中する)ため、水とスカート部63の下端部との接触面積が減少し、水の付着力が減少するとともに、水の重量を集中(増加)させる。その結果、(点線で示すように)水の落下が促進される。突起部64は水(液体)の下方への移動(流動)を誘導する液流誘導部を構成する。
【0045】
突起部64の形状は、図4(D)に示す形状に限定するものではない。例えば、円周方向に従った突起部64の断面形状が、(長方形ではなく)先細りとなるように傾斜を設け、例えば三角形や台形となるようにしてもよい。
図4においては、突起部64の個数が4個の例を示すが、個数は4個に限定されない。
【0046】
スカート部63の毛細管現象を防止する効果と、突起部64の付着した水の落下を促進する効果により、水の浸入のリスクを極力低減することができる。
【0047】
なお、スカート部63の内壁は上端部から下端部に向かって内径(又は断面積)が単調に増大すればよい。図4(C)に示すように、スカート部63の内壁面はスカート部63の長手方向(y方向)に対して傾斜する形状を有する領域と、長手方向(y方向)に対して平行となる(内径が同一となる)領域が存在してもよく、全ての壁面が傾斜を有する形状であってもよい。
このようなスカート部63の末広がり形状は、底部支持部2の製造工程において、押しピンによるスカート部63の成形も容易にする。
【0048】
また、内部領域に直接繋がる開孔部62に、スカート部63の代わりに、ラビリンス構造の屈曲した空気の通路を設け、水や異物の侵入を防止してもよい。しかし、このような複雑な構造の通路を有する底部支持部2を、樹脂成形で製造することは困難であり、また空気のスムーズな流れが阻害され、空気の流れを利用した液体の排出効果も低下することになる。
上記構成の通気部6は、空気の通路が単調に径が変化する構造であり、底部支持部2を樹脂成形で容易に製造することが可能であり、また開孔部62のノズルとしての機能による効果的な液体排出作用を得ることができる。
【0049】
また、液密性の向上とプッシュロッド3の移動の容易性を両立させることを目的として、気体のみを通過し、液体を通過させない特別なフィルターを嵌め込んだ通気孔を底部支持部2に設ける手段も考えられる。しかし、上記通気部6の構成とすることで、別途フィルターを取り付ける追加的な工程が不要であり、また、部品としてのフィルターの保管、管理も不要となる。
【0050】
上記のように、液密性を向上させる目的で、プッシュロッド3を覆うカバーを使用しないため、カバーを取り付ける工程を必要とせず、また、開閉装置100の部品としてカバーを保管、管理する必要がなく、作業者の作業負担の増大を抑制することができる。
【0051】
なお、ロック機構を備えた開閉装置100について説明したが、係止部4のようなロック機構を有しないプッシュロッドを移動可能に支持するハウジングに、上記のような通気部6を設けることで、リッドの開閉のみを行う簡易的な開閉装置を提供することも可能である。ロック機構の要否に従って、係止部4の有無を決定すればよい。
【0052】
(実施形態2)
実施形態1においては、スカート部63の下端部には、水(液滴)の落下を誘導するために突起形状の液流誘導部である突起部64を設けている。
実施形態2においては、突起部64の代わりにスカート部63に、スカート部63の長手方向に対して傾斜する下端面66Sを有する液流誘導部(傾斜部66)を設け、水の落下を促進する。
【0053】
図5(A)は、実施形態2の開閉装置100の例を示す斜視図であり、図5(B)は通気部6の断面図、図5(C)は通気部6近傍の部分拡大図である。
図5に示すように、スカート部63の下端部には傾斜部66(液流誘導部)が設けられている。傾斜部66は、例えば円筒を斜めに切断した形状(斜切円筒形状)を有している。
図5(B)に示すように、傾斜部66の下端面66Sは、スカート部63の長手方向(図中y方向)に対して、所定の角度θ(0<θ<90°)を有している。角度θは、例えば30~70°とすることができるが、これに限定するものではない。
【0054】
スカート部63の内壁に付着した水(液体)は、重力により下方に移動する。図5(C)の矢印A、矢印Bに示すように、水は傾斜部66の下端面66Sに沿って移動し、傾斜部66の先端に集められ、水滴(液滴)が大きく成長する。スカート部63から遠ざかる(下方に移動する)ほど、傾斜部66との接触面積が減少し、その後、図5(C)中の点線で示すように、水滴は傾斜部66の先端から下方に落下する。
このように傾斜部66は水(液体)の移動(流動)を誘導し、水(液体)の落下を促進する効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明にかかるリッド開閉装置は、本体部をパネル外への配置することを前提としつつ、開閉装置の液密性を向上させるとともに、プッシュロッドをスムーズに移動させることが可能であり、開閉操作が困難になることを防止できる。
また、リッド開閉装置は、リッドの施錠機構を備えさせることも可能となる。
本開閉装置は、給電ポートのリッドの他、燃料補給口のリッド等の他のリッドへの適用も可能である。そのため、産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0056】
100 開閉装置(リッド開閉装置)
1 メインボディ
2 底部支持部
21 壁面(底壁面)
3 プッシュロッド
4 係止部
5 緩衝部材
6 通気部(ベンチレータ)
60 端面
61 集中室(チャンバ)
62 開孔部
63 スカート部
64 突起部(液流誘導部)
65 開放端部
66 傾斜部(液流誘導部)
66S 下端面
7 リッド
71 被係止部
8 壁面(固定壁)
9 固定補助部
10 フランジ部
11 摺動部シール
12 固定部シール
13 スプリング
14 支柱
15 回転摺動子
16 係合部(固定部)
17 被係合部(固定受け部)
20 ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5