(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164913
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】省エネ度特定システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080637
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 由起夫
(72)【発明者】
【氏名】須山 大樹
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC27
5H181FF10
5H181MA48
5H181MB03
5H181MC04
5H181MC12
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】車両による走行の実情に即した省エネ度の達成率を特定する可能性を高める。
【解決手段】省エネ度特定システムであって、対象車両が走行区間の走行において消費した実走行エネルギーを特定する実走行エネルギー特定部と、複数の車両それぞれが、前記走行区間の走行において消費した走行エネルギーに基づいて、前記走行区間における基準エネルギーを特定する基準エネルギー特定部と、走行区間の走行において車両が消費する走行エネルギーの理想値である理想エネルギーから基準エネルギーまでの範囲を基準幅とする評価軸における実走行エネルギーの値を省エネ度として特定する省エネ度特定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両が走行区間の走行において消費した実走行エネルギーを特定する実走行エネルギー特定部と、
複数の車両それぞれが、前記走行区間の走行において消費した走行エネルギーに基づいて、前記走行区間における基準エネルギーを特定する基準エネルギー特定部と、
前記走行区間の走行において車両が消費する走行エネルギーの理想値である理想エネルギーから前記基準エネルギーまでの範囲を基準幅とする評価軸における前記実走行エネルギーの値を省エネ度として特定する省エネ度特定部と、
を備える、省エネ度特定システム。
【請求項2】
前記基準エネルギー特定部は、加速度抵抗があるとした場合に、前記複数の車両それぞれが、前記走行区間の走行において消費する走行エネルギーを前記基準エネルギーとして特定し、
加速度抵抗がないとした場合に、前記複数の車両それぞれが、前記走行区間の走行において消費する走行エネルギーを前記理想エネルギーとして特定する理想エネルギー特定部をさらに備える、請求項1に記載の省エネ度特定システム。
【請求項3】
前記実走行エネルギー、前記基準エネルギー、及び前記理想エネルギーは、いずれも、車両の種類に依存しない値である、請求項1に記載の省エネ度特定システム。
【請求項4】
前記複数の車両それぞれが前記走行区間の走行データと、前記複数の車両それぞれが前記走行区間を走行した時期と、が、対応付けて記憶部に記憶され、
前記基準エネルギー特定部は、前記記憶部において、前記対象車両が前記走行区間を走行した走行時期に対応する時期に対応付けられた前記走行データに基づいて、前記基準エネルギーを特定する、請求項1に記載の省エネ度特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネ度特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行においては、エネルギー効率の向上、すなわち省エネが望まれている。特許文献1には、電動車両による実際の電費である電費実績と、車種毎に設定されている基準電費と、に基づいて、エコポイントを算出し、これを付与する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術においては、基準電費の設定によっては、多くの運転者が基準電費を達成できない場合もある。また、走行する道路の状況等により、達成可能な電費実績が異なるため、一律の基準電費によっては、実情に即したエネルギー効率の判定を行えない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、車両による走行の実情に即した省エネ度を特定する可能性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の省エネ度特定システムは、対象車両が走行区間の走行において消費した実走行エネルギーを特定する実走行エネルギー特定部と、複数の車両それぞれが、前記走行区間の走行において消費した走行エネルギーに基づいて、前記走行区間における基準エネルギーを特定する基準エネルギー特定部と、前記走行区間の走行において車両が消費する走行エネルギーの理想値である理想エネルギーから前記基準エネルギーまでの範囲を基準幅とする評価軸における前記実走行エネルギーの値を省エネ度として特定する省エネ度特定部と、を備える。
【0007】
省エネ度特定システムにおいては、基準エネルギーから理想エネルギーまでの範囲を基準軸とする評価軸を定め、この評価軸に沿って、実走行エネルギーを省エネ度に換算する。これにより、より道路の実情に即した省エネ度を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】省エネ度特定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)省エネ度特定システムの構成:
(2)省エネ度特定処理:
(3)付記:
【0010】
(1)省エネ度管理システムの構成:
図1は、省エネ度管理システム1の全体構成を示す図である。省エネ度管理システム1は、処理対象となる車両の走行における省エネ度を特定し、これを運転者等のユーザに提示するシステムである。ここで、省エネ度とは、車両の走行において消費した走行エネルギーから定まる値である。車両の走行に係る走行エネルギーが少ないほど、すなわちエネルギー効率が高いほど、省エネ度が高い。また、本実施形態に係る車両は、電気自動車でもよく、ガソリン車でもよく、ハイブリッド車でもよい。このように、そのエネルギー源は限定されない。
【0011】
省エネ度管理システム1は、省エネ度特定システム10と、車両システム20と、ビッグデータサーバ装置30と、を備えている。省エネ度特定システム10、車両システム20、及びビッグデータサーバ装置30は、ネットワークNを介して互いに通信が可能である。
【0012】
ビッグデータサーバ装置30は、記憶媒体を備え、記憶媒体には、複数のコネクティッドカーそれぞれから収集されたプローブデータが格納されている。
図2は、ビッグデータサーバ装置30に格納されているプローブデータの一例を示す図である。プローブデータには、車両ID、日時、曜日、車速、加速度、及びリンクIDが含まれる。車両IDは、車両の識別情報である。日時及び曜日は、それぞれプローブデータが得られた日時及び曜日である。リンクIDは、道路のリンクの識別情報である。
【0013】
省エネ度特定システム10は、例えば据置型の汎用コンピュータである。省エネ度特定システム10は、処理対象となる車両(以下、対象車両と称する)の車両システム20から実走行データを取得し、実走行データに基づいて、対象車両の省エネ度を特定する。実走行データとは、対象車両の走行中に得られるデータである。ここで、実走行データは、対象車両の走行に関するデータである。実走行データには、対象車両の車両ID、走行データが得られた日時、曜日、車速、加速度、車両位置が含まれるものとする。
【0014】
省エネ度特定システム10は、第1制御部100と、第1通信部110と、第1記録媒体120と、を備えている。第1制御部100は、図示しないCPU、RAM、ROM等を備えており、第1記録媒体120やROMに格納されたプログラムを実行する。第1通信部110は、ネットワークNを介して外部の装置と通信を行うための装置である。第1制御部100は、第1通信部110を介して、例えば、車両システム20及びビッグデータサーバ装置30と通信を行う。第1記録媒体120は、各種情報及び各種プログラムを記憶する。第1記録媒体120は、地図情報121を格納している。
【0015】
地図情報121は、ノードとリンクによって定義された区間のネットワークを示している。地図情報121には、ノードの位置等を示すノードデータ、ノード間の区間の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータが含まれている。ノードは交差点に該当する。また、各リンクには、道路属性が対応付けられている。ここで、道路属性とは、市町村道、主要地方道、高速道路、といった道路種別である。
【0016】
第1制御部100は、第1記録媒体120やROM等に格納された省エネ度特定プログラム101を実行することにより、通信処理部102、実走行エネルギー特定部103、基準エネルギー特定部104、理想エネルギー特定部105及び省エネ度特定部106として機能する。すなわち、以下において、通信処理部102、実走行エネルギー特定部103、基準エネルギー特定部104、理想エネルギー特定部105及び省エネ度特定部106が実行するものとして記載する処理は、第1制御部100が実行する処理である。
【0017】
通信処理部102は、第1通信部110を介して、対象車両に搭載された車両システム20から実走行データを受信する。通信処理部102はまた、省エネ度特定部106により特定された省エネ度を車両システム20に送信する。
【0018】
実走行エネルギー特定部103は、通信処理部102を介して、対象車両に搭載された車両システム20から実走行データを取得し、実走行データに基づいて、リンク単位で、実走行エネルギーを特定する。ここで、実走行エネルギーとは、対象車両が走行区間の走行において消費するエネルギーである。なお、本実施形態においては、走行区間は、リンクに相当するものとする。ただし、走行区間は、予め定められた区間であればよく、リンクに限定されるものではない。他の例としては、所定数のリンクを含む区間が走行区間として定められてもよい。
【0019】
実走行エネルギー特定部103は、地図情報121を参照することにより、車両位置から対象車両が走行中のリンクを特定する。そして、実走行エネルギー特定部103は、対象車両が1つのリンクを通過し、当該リンクの実走行データが得られると、当該リンクを処理対象のリンク(以下、対象リンクと称する)とし、対象リンクの実走行エネルギーを算出する。具体的には、実走行エネルギー特定部103は、対象リンクの走行時に対象車両が受ける走行負荷Fに、車速を乗じることにより、対象車両の単位時間当たりの走行エネルギー(実走行エネルギー)を算出する。走行負荷Fは、(式1)に示すように、空気抵抗(1/2ρCdAv2)、転がり抵抗(μMgcosθ)、勾配抵抗(Mgsinθ)、および加速抵抗((M+m)a)の加算により得られる。
F=1/2ρCdAv2+μMgcosθ+Mgsinθ+(M+m)a …(式1)
ρは、空気密度であり、予め設定された値である。Cdは、車両の種類毎に定められた空気抵抗係数(CD値)である。Aは、車両の種類毎に定められた車両前方投影面積である。vは、車両速度(リンク毎の車速の平均値)である。μは、予め定められた転がり摩擦抵抗係数である。θは、道路勾配である。θは、地図情報121から得られる。Mは、車両の種類毎の車両重量である。mは、車両の種類毎の回転体等価重量(駆動系を回転させる際の抵抗)である。gは、重力加速度である。aは、車両の加速度である。
【0020】
実走行エネルギー特定部103は、実走行データに含まれる車速及び加速度に基づいて、対象リンクの走行負荷Fを求める。そして、実走行エネルギー特定部103は、さらに、走行負荷Fと車速とに基づいて、対象リンクの実走行エネルギーを特定する。
【0021】
なお、空気抵抗係数Cd、車両前方投影面積A、車両重量M及び回転体等価重量mとしては、通常車両の種類に応じた値が用いられるが、共通の値(代表値)を用いることで、走行負荷Fとして、車両の種類に依存しない値が得られる。したがって、車両の種類に依存しない実走行エネルギーを特定することができる。
【0022】
基準エネルギー特定部104は、対象リンクの基準エネルギーを特定する。基準エネルギーとは、対象リンクに対応する走行データであるプローブデータから得られる、対象リンクの走行時に消費される標準的なエネルギーである。本実施形態の基準エネルギー特定部104は、ビッグデータサーバ装置30に格納されるプローブデータから、対象リンクの走行エネルギーの平均値を求め、これを基準エネルギーとする。なお、基準エネルギーは、対象リンクの走行エネルギーの平均値に限定されるものではない。他の例としては、基準エネルギーは、対象リンクの走行エネルギーの中央値であってもよい。このように、基準エネルギーは、対象リンクの走行エネルギーを代表するような値であればよい。
【0023】
各プローブデータから走行エネルギーを算出する処理は、実走行エネルギー特定部103が対象車両の実走行データから実走行エネルギーを算出する処理と同様である。すなわち、基準エネルギー特定部104は、ビッグデータサーバ装置30に格納される複数のプローブデータのうち、対象リンクに対応する各データから、対象リンクの走行負荷を求め、その平均値を求める。そして、基準エネルギー特定部104は、走行負荷の平均値に、対象リンクの平均車速を乗じる。これにより得られる対象リンクの走行エネルギーが基準エネルギーである。ここで、対象リンクの平均車速は、ビッグデータサーバ装置30に格納される複数のプローブデータのうち、対象リンクに対応するデータに含まれる複数の車速の平均値である。
【0024】
理想エネルギー特定部105は、走行リンクの理想エネルギーを特定する。理想エネルギーとは、走行リンクの走行において加減速がない場合の走行エネルギーである。理想エネルギー特定部105は、ビッグデータサーバ装置30に格納される複数のプローブデータのうち、対象リンクに対応したデータから理想の走行負荷を求める。具体的には、理想エネルギー特定部105は、(式1)から加速度の項((M+m)a)を抜いた値を、理想の走行負荷として求める。そして、理想エネルギー特定部105は、理想の走行負荷に、走行リンクの平均車速を乗じることで、理想エネルギーを得る。このように、本実施形態においては、加速度抵抗があるとした場合に車両が消費するエネルギーを基準エネルギーとし、加速度抵抗がないとした場合に車両が消費するエネルギーを理想エネルギーとした。これにより、道路の状態と、実際の走行データと、を反映した値を、基準エネルギー及び理想エネルギーとして得ることができる。
【0025】
省エネ度特定部106は、基準エネルギー、理想エネルギー及び実走行エネルギーに基づいて、省エネ度を特定する。省エネ度は、省エネの程度を示す評価値であり、省エネの程度が高いほど高い値を示す。省エネ度特定部106は、省エネ度を示す評価軸に、基準エネルギーと理想エネルギーを割り当てる。
図3は、省エネ度のグラフを示す図である。
図4に示すグラフの横軸は、評価軸であり、省エネ度を示す。縦軸は、評価軸の値である評価値毎のビックデータにおける頻度を示す。
【0026】
省エネ度特定部106は、基準エネルギーと理想エネルギーを評価軸の予め定められた値に割り当てる。本実施形態においては、基準エネルギーと理想エネルギーは、それぞれ省エネ度50及び省エネ度70に割り当てられる。このように、基準エネルギーから理想エネルギーまでの範囲が評価軸における予め定められた幅(基準幅、
図4の例では20の幅)に割り当てられることで、基準エネルギーから理想エネルギーまでの範囲が基準幅に変更される。これにより、基準エネルギー又は理想エネルギーと実走行エネルギーの差分を、省エネ度の評価軸における差分に換算することができるので、省エネ度特定部106は、実走行エネルギーから省エネ度を算出する。
図4の例では、実走行エネルギーから実走行における省エネ度Eは、(式2)により得られる。
E=(実走行エネルギー-基準エネルギー)/(理想エネルギー-基準エネルギー)×(70-50)+50 ・・・(式2)
このように、省エネ度特定部106は、理想エネルギーから基準エネルギーまでの範囲を基準とする評価軸における走行エネルギーの値を、省エネ度として特定する。すなわち、省エネ度特定部106は、走行エネルギーとして取り得る範囲を定め、実際の走行により得られた実走行エネルギーの、その範囲における位置を省エネ度として定める。これにより、より実情に即した省エネ度を特定することができる。
【0027】
図1に示す車両システム20は、車両に搭載される車両システムとして実現される。車両システム20は、走行データを省エネ度特定システム10に送信する。車両システム20はまた、省エネ度特定システム10により特定された、車両の省エネ度を受信し、これを表示することで、ユーザに省エネ度を通知する。
【0028】
車両システム20は、第2制御部200と、第2通信部210と、第2記録媒体220と、表示部230と、を備えている。第2制御部200は、図示しないCPU、RAM、ROM等を備えており、第2記録媒体220やROMに格納されたプログラムを実行する。第2通信部210は、ネットワークNを介して外部の装置と通信を行うための装置である。第2制御部200は、第2通信部210を介して、例えば、省エネ度特定システム10と通信を行う。第2記録媒体220は、各種情報及び各種プログラムを記憶する。
【0029】
(2)省エネ度特定処理:
図4は、省エネ度処理を示すフローチャートである。省エネ度特定処理は、対象車両が走行を開始した場合に開始する。本実施形態においては、対象車両が経路探索により得られた走行経路に沿って、現在地から目的地まで走行する場合を例に説明する。
【0030】
省エネ度特定処理においては、まず、通信処理部102は、対象車両に搭載された車両システム20から実走行データの取得を開始する。以降は、継続的に実走行データの取得を継続する(ステップS100)。次に、実走行エネルギー特定部103は、リンク単位の実走行データ、すなわち、1つのリンクに対応する実走行データを、取得済みか否かを判断する。実走行エネルギー特定部103は、リンク単位の実走行データを取得済みとなるまで待機する(ステップS102でN)。そして、実走行エネルギー特定部103は、リンク単位の実走行データを取得済みの場合には(ステップS102でY)、走行済みのリンクを対象リンクとし、対象リンクの実走行データに基づいて、実走行エネルギーを特定する(ステップS104)。
図5に示すように、走行経路には複数のリンクが含まれており、各リンクを通過する度に、通信処理部102は、通過したリンクに対応する実走行データを受信し、実走行エネルギー特定部103は、これを取得する。
【0031】
実走行エネルギー特定部103は、上述の通り、実走行データに基づいて、走行負荷Fを算出し、走行負荷Fに車速を乗じることにより、対象車両の実走行エネルギーを算出する。次に、基準エネルギー特定部104は、対象リンクの基準エネルギーを特定する(ステップS106)。次に、理想エネルギー特定部105は、対象リンクの理想エネルギーを特定する(ステップS108)。基準エネルギー及び理想エネルギーは、いずれも、上述の通り、対象リンクのプローブデータに基づいて、特定される。
【0032】
次に、省エネ度特定部106は、基準エネルギーと理想エネルギーの範囲を基準幅とする、省エネ度の評価軸を設定する(ステップS110)。具体的には、基準エネルギーから理想エネルギーまでの範囲を、評価軸における予め定められた基準幅の範囲に割り当てる。次に、省エネ度特定部106は、実走行エネルギーを省エネ度の評価軸に従い、対象リンクの実走行エネルギーを省エネ度に換算することで、実走行における省エネ度を特定する(ステップS112)。
【0033】
次に、第1制御部100は、対象車両の走行が終了したか否かを判断する(ステップS114)。例えば、車両システム20において、ユーザが走行終了を指示した場合や、目的地に到着した場合に、車両システム20から走行終了通知が送信されるものとし、第1制御部100は、走行終了通知を受信した場合に、対象車両の走行が終了したと判断する。走行が終了していない場合には(ステップS114でN)、第1制御部100は、処理をステップS102へ進め、リンク単位での対象リンクの省エネ度特定を繰り返す。
【0034】
一方で、第1制御部100は、走行が終了した場合には(ステップS114でY)、対象車両による一連の走行において得られた複数のリンクそれぞれの省エネ度に基づいて、総合省エネ度を算出する(ステップS116)。ここで、一連の走行は、経路探索における出発地から目的地までの走行や、走行開始から走行終了通知を受信するまでの間の同一日の走行、など、所定の単位の走行であればよい。
【0035】
第1制御部100は、複数のリンクそれぞれの省エネ度の平均値を総合省エネ度として算出する。なお、他の例としては、第1制御部100は、リンクの長さに応じた重み付けを行った上で、省エネ度を加算し、リンクの数で除算した値を総合省エネ度として算出してもよい。
【0036】
次に、第1制御部100は、総合省エネ度を車両システム20の表示部230に表示させる(ステップS118)。具体的には、第1制御部100は、総合省エネ度を車両システム20に送信する。車両システム20は、総合省エネ度を受信すると、これを表示部230に表示する。以上で、省エネ度特定処理が完了する。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、省エネ度特定システム10は、基準エネルギーから理想エネルギーまでの範囲を評価軸の予め定められた範囲に割り当てることで、その幅を基準幅に変更する。そして、省エネ度特定システム10は、評価軸に沿って、実走行エネルギーを省エネ度に換算する。これにより、より道路の実情に即した省エネ度を特定することができる。
【0038】
(3)付記:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。そうした第1の変形例としては、省エネ度特定システム10が備える各部(実走行エネルギー特定部103、基準エネルギー特定部104、理想エネルギー特定部105、省エネ度特定部106)の機能の少なくとも一部は、例えば、車両システム20が備えることとしてもよい。
【0039】
また、第2の変形例としては、本実施形態においては、ステップS112において、走行リンクが変化する度に走行済みのリンクを対象リンクとして省エネ度を特定することとしたが、例えば、1時間など所定時間が経過する度に、経過した時間に走行済みの複数のリンクそれぞれを対象リンクとし、各対象リンクの省エネ度を特定してもよい。このように、対象リンクの省エネ度を特定するタイミングは、実施形態に限定されるものではない。
【0040】
また、第3の変形例としては、基準エネルギー及び理想エネルギーを特定するタイミングは、実施形態に限定されるものではない。他の例としては、基準エネルギー及び理想エネルギーは、リンク毎の値が予め特定され、第1記録媒体120に格納されていることとしてもよい。この場合には、
図4を参照しつつ説明した省エネ度特定処理において、基準エネルギー特定部104は、基準エネルギー特定処理(ステップS106)を実行するのに替えて、基準エネルギーを第1記録媒体120から読み出せばよい。同様に、理想エネルギー特定部105は、理想エネルギー特定処理(ステップS108)を実行するのに替えて、理想エネルギーを第1記録媒体から読み出せばよい。さらに、これらのエネルギー値は、ビッグデータサーバ装置30へのプローブデータの蓄積に応じて、適宜更新されるものとしてもよい。
【0041】
第4の変形例としては、省エネ度特定部106は、道路属性毎の省エネ度をさらに特定してもよい。この場合には、省エネ度特定部106は、走行車両が通過したリンクの道路属性を、地図情報121を参照して特定する。そして、省エネ度特定部106は、走行済みのリンクを道路属性毎に分類し、道路属性毎の総合の省エネ度を求めてもよい。この場合、例えば、
図6に示すように、車両システム20の表示部230には、道路属性毎の総合の省エネ度と、すべての道路属性に対応した省エネ度を総合した総合省エネ度と、が表示されてもよい。
【0042】
第5の変形例としては、基準エネルギー及び理想エネルギーを算出する際に利用されるプローブデータは、対象車両が対象リンクを走行した時間帯が一致するデータに限定されてもよい。または、各エネルギーを算出する際に利用されるプローブデータは、対象車両が対象リンクを走行した時間帯だけでなく、曜日も一致するデータに限定されてもよい。また、他の例としては、各エネルギーを算出する際に利用されるプローブデータは、対象車両が対象リンクを走行した日(例えば毎月15日)が同じデータに限定されてもよい。このように、基準エネルギー特定部104は、ビッグデータサーバ装置30に格納されているプローブデータのうち、対象車両が対象リンクを走行した走行時期に対応する時期に対応付けられたプローブデータ(走行データ)を抽出する。そして、基準エネルギー特定部104は、抽出したプローブデータに基づいて、基準エネルギーを特定する。同様に、理想エネルギー特定部105は、ビッグデータサーバ装置30に格納されているプローブデータのうち、対象車両が対象リンクを走行した走行時期に対応する時期に対応付けられたプローブデータ(走行データ)を抽出する。そして、理想エネルギー特定部105は、抽出したプローブデータに基づいて、理想エネルギーを特定する。
【0043】
さらに、本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム及びプログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置で共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、システムの一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0044】
1…省エネ度管理システム、10…省エネ度特定システム、20…車両システム、30…ビッグデータサーバ装置、100…第1制御部、101…省エネ度特定プログラム、102…通信処理部、103…実走行エネルギー特定部、104…基準エネルギー特定部、105…理想エネルギー特定部、106…省エネ度特定部、110…第1通信部、120…第1記録媒体、121…地図情報、200…第2制御部、210…第2通信部、220…第2記録媒体、230…表示部