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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164915
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】試料処理装置及び収容容器
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241121BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241121BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20241121BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20241121BHJP
   G01M 3/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/34 Z
G01N27/06 A
G01N21/17 A
G01M3/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080641
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真哉
【テーマコード(参考)】
2G059
2G060
2G067
4B029
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE20
2G059FF01
2G059KK04
2G059MM09
2G059MM10
2G060AA05
2G060AC00
2G060AE12
2G060AF07
2G060AG10
2G060FA01
2G060KA05
2G067AA44
2G067BB25
2G067DD10
4B029AA02
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB01
4B029DG10
4B029FA15
4B029GB06
4B029GB10
(57)【要約】
【課題】閉鎖系デバイス内の液漏れを効率的に検出すること。
【解決手段】実施形態に係る試料処理装置は、閉鎖系の流路と、収容容器と、検知部材とを備える。閉鎖系の流路は、試料を含む液体を処理するための流路である。収容容器は、流路を収容する。検知部材は、収容容器の内部に設けられ、当該収容容器の内部の空間に存在する液体を検知するための部材である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を含む液体を処理するための閉鎖系の流路と、
前記流路を収容する収容容器と、
前記収容容器の内部に設けられ、当該収容容器の内部の空間に存在する液体を検知するための検知部材と、
を備える試料処理装置。
【請求項2】
前記検知部材は、前記収容容器の内側の壁面に付与される、
請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項3】
前記検知部材は、前記収容容器の内部の空間に充填される、
請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項4】
前記検知部材は、液体との接触により化学的又は物理的性質が変化する部材であり、
前記収容容器の内部の前記検知部材の状態をセンシングするセンサと、
前記センサのセンシング結果に基づいて、前記収容容器の内部の空間の液体を検知する検知部と、
液体が検知された場合、その旨を報知する報知部と、
を更に備える、
請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項5】
前記センサは、前記収容容器の内部に設けられる、
請求項4に記載の試料処理装置。
【請求項6】
前記センサは、前記収容容器の内部の前記検知部材を撮影するカメラである、
請求項4に記載の試料処理装置。
【請求項7】
前記検知部材は、導線であり、
前記センサは、前記検知部材に流れる電流を測定する電流センサであり、
前記検知部は、電流の測定値に基づいて、前記収容容器の内部の空間の液体を検知する、
請求項4に記載の試料処理装置。
【請求項8】
前記検知部材は、液体との接触により化学的性質が変化する物質を含む、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の試料処理装置。
【請求項9】
試料を含む液体を処理するための閉鎖系の流路を収容するための収容部と、
前記収容部の内部に設けられ、当該収容部の内部の空間に存在する液体を検知する検知部材と、
を備える収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、試料処理装置及び収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、閉鎖系流路で構成された細胞培養デバイスや閉鎖系容器で構成された細胞培養デバイス等の閉鎖系デバイスが知られている。このような閉鎖系デバイスでは、感染性を有する試料を処理の対象とする場合がある。このような場合、感染防止の観点から閉鎖系デバイスからの液体の漏出(以下、液漏れともいう)の有無を確認することが重要となる。また、閉鎖系デバイスの外側からの異物の混入を防止する上でも液漏れの有無を確認することは重要である。
【0003】
デバイスからの液漏れの有無を確認する技術としては、デバイスの配管の外側表面に配管から外部に漏れる液体と接触することにより反応して性質が変化する部材を付すこと等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-52552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来技術では、液漏れする可能性がある個所を特定することが求められる場合がある。また、配管の接続が変更になった場合、再度部材を付さなければならなくなる可能性がある。このように、発明者は、デバイスからの液漏れの検知方法については効率の面で改善の余地があるという課題を見出した。
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、閉鎖系デバイス内の液漏れを効率よく検知することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る試料処理装置は、閉鎖系の流路と、収容容器と、検知部材とを備える。閉鎖系の流路は、試料を含む液体を処理するための流路である。収容容器は、流路を収容する。検知部材は、収容容器の内部に設けられ、当該収容容器の内部の空間に存在する液体を検知するための部材である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る細胞培養装置の一例を説明するための図である。
図2図2は、第2実施形態に係る細胞培養装置の一例を説明するための図である。
図3図3は、第3実施形態に係る細胞培養装置の一例を説明するための図である。
図4図4は、変形例に係る液体の検知処理の一例を説明するための図である。
図5図5は、変形例に係る隙間の検知処理の一例を説明するための図である。
図6図6は、実施形態とは異なる形態の細胞培養装置の一例を説明するための図である。
図7図7は、閉鎖系流路で構成される実施形態とは異なる細胞培養装置の一例を説明するための図である。
図8図8は、閉鎖系流路で構成される実施形態とは異なる細胞培養装置の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、試料処理装置及び収容容器の実施形態について詳細に説明する。また、本願に係る試料処理装置及び収容容器は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
本実施形態に係る細胞培養装置は、試料装置の一例である。本実施形態に係る細胞培養装置は、閉鎖系流路を収容する収容容器を備える二重構造容器である。また、収容容器は、内側に閉鎖系流路からの液漏れを検知する検知部材を備える。
【0011】
まず、閉鎖系流路で構成される一般的な細胞培養装置の一例を説明する。図6乃至図8は、閉鎖系流路で構成される細胞培養装置の一例を説明するための図である。
【0012】
図6に示す細胞培養装置200は、閉鎖系流路60A乃至60C、試薬容器70、及び培養容器80Aを備える。閉鎖系流路60A乃至60Cは、例えば、細胞培養に用いられる培地等の試薬や細胞培養の対象となる対象細胞を含む細胞懸濁液等を送液するための配管である。例えば、閉鎖系流路60A乃至60Cは、培地交換等の細胞培養の工程で培地や細胞懸濁液等の液体を試薬容器70から培養容器80Aへと送液する。
【0013】
閉鎖系流路60Aの一端側は、接続部J1を介して試薬容器70と連通可能に接続されている。また、閉鎖系流路60Aの他端側は、外部と接することがないよう閉鎖されている。閉鎖系流路60Bの一端側は、接続部J2を介して試薬容器70と連通可能に接続されている。また、閉鎖系流路60Bの他端側は、接続部J3を介して培養容器80Aと連通可能に接続されている。閉鎖系流路60Cの一端側は、接続部J4を介して培養容器80Aと連通可能に接続されている。また、閉鎖系流路60Cの他端側は、外部と接することがないよう閉鎖されている。
【0014】
このため、閉鎖系流路60A乃至60C、試薬容器70、及び培養容器80Aは、全体として一つの閉鎖系流路を構成する。
【0015】
また、閉鎖系流路60Aの閉鎖されている側の端部は、閉鎖系流路60Aと別の閉鎖系流路とを連通可能に接続することができる接続部(図示しない)を有している。接続部としては、例えば、いわゆる無菌接続継手を利用することができる。このため、後述するように細胞培養装置200の流路の構成が変更される場合等でも一つの閉鎖系流路を構成することが可能である。また、閉鎖系流路60Cについても閉鎖系流路60Aと同様の接続部を有している。
【0016】
試薬容器70は、細胞培養の工程で用いられる培地等の試薬を貯留するための容器である。培養容器80Aは、対象細胞の培養を行うための容器である。
【0017】
接続部J1乃至J4は、培地等の試薬や細胞懸濁液で懸濁された試料等の送液により液漏れが生じ得る箇所である。例えば、接続部J1乃至J4に隙間や緩みがある場合、閉鎖系流路から試薬や試料が液漏れする可能性がある。また、接続部J1乃至J4に隙間や緩みがある場合、外部から閉鎖系流路の内部に液体が侵入する可能性もある。
【0018】
このため、感染防止(閉鎖系流路の内側から外側への物質の流出を防止する)やコンタミネーション防止(閉鎖系流路の外側から内側に異物が混入することを防止する)の観点から、接続部J1乃至J4等の液漏れが生じ得る箇所に、液体と接触することにより反応して性質が変化する検知部材を付すことで、液漏れ又はコンタミネーションの発生を検知することが行われている。
【0019】
なお、図7では、閉鎖系流路及び容器全体に液体が充填されている例について記載したが、閉鎖系流路及び容器内に存在する液体の状態はこれに限定されない。例えば、容器内にのみ液体が存在し、閉鎖系流路には送液の際のみ液体が存在していてもよい。他の図についても同様である。
【0020】
ところで、細胞培養装置の流路構成は、細胞培養の工程の中で変化する可能性がある。例えば、培養容器80Aで培養された培養を別の容器に回収するために、別の流路等が細胞培養装置の流路に接続される場合がある。
【0021】
図7は、細胞培養装置200に別の流路が接続される場合の一例である。図7では、閉鎖系流路60Cに別の閉鎖系流路60Dが接続されている。また、閉鎖系流路60Dは、回収容器80Bと接続され、回収容器80Bは、更に別の閉鎖系流路60Eと接続されている。
【0022】
また、閉鎖系流路60Eの回収容器80Bに接続されていない側の端部は、外部と接することがないよう閉鎖されている。このため、細胞培養装置200に閉鎖系流路60D、回収容器80B、及び閉鎖系流路60Eが接続された場合でも、細胞培養装置200に全体として一つの閉鎖系流路が形成されることになる。
【0023】
この場合、細胞培養装置200は、例えば、試薬容器70から細胞懸濁液を培養容器80Aへと送液し、対象細胞を回収容器80Bで回収する。また、例えば、閉鎖系流路60Eを更に別の閉鎖系流路に接続することで、対象細胞の特性を検査する等の処理を行うことも可能になる。
【0024】
また、細胞培養の工程において、特定の試薬を培養容器に供給した後に、必要量を超えて当該試薬が培養容器に流れ込むことを回避する等の目的で流路が切断される場合も考えられる。
【0025】
図8は、細胞培養装置200の流路が切断された状態の一例である。図8では、閉鎖系流路60Bの一部が切断されている。これにより、必要量を超える対象細胞への試薬の供給を防止したり、切断後に閉鎖系流路60Bを別の培養容器等に接続して、培養容器80A内の対象細胞とは別の細胞に対して、試薬容器70内の試薬を供給したりすること等が可能になる。
【0026】
このように、細胞培養装置200の流路の構成は、細胞培養の工程の中で変化する可能性がある。細胞培養装置200の流路の構成が変化する場合、予め液漏れする可能性がある箇所を特定しておかないと、効果的に液漏れを検知できない可能性がある。また、構成が変化する度に液漏れが生じる可能性がある部分に検知部材を付さなければならず非効率である。
【0027】
そこで、本実施形態の細胞培養装置は、閉鎖系流路(試薬容器や培養容器等の容器を含む)を収容容器に収容した二重構造容器とし、収容容器の内部に検知部材を備える構成としている。これにより、本実施形態の細胞培養装置は、閉鎖系流路のどこから液漏れが生じたとしても液漏れを検知することができる。
【0028】
以下、本実施形態に係る細胞培養装置の詳細について、例を挙げて説明する。図1は、第1実施形態に係る細胞培養装置100の一例を説明する図である。
【0029】
細胞培養装置100は、閉鎖系流路10A乃至10C、試薬容器20、培養容器30、収容容器40、及び検知部材50を備える。閉鎖系流路10A乃至10C、試薬容器20、及び培養容器30は、図6の閉鎖系流路60A乃至60C、試薬容器70、及び培養容器80Aと同様のため説明を省略する。なお、以下の説明では、閉鎖系流路10A乃至10C、試薬容器20、及び培養容器30を閉鎖系デバイスともいう。
【0030】
収容容器40は、閉鎖系デバイスを収容する容器である。収容容器40に閉鎖系デバイスを収容することで、細胞培養装置100は、閉鎖系デバイスと収容容器40との二重構造で細胞懸濁液等を収容する容器を構成する。なお、収容容器40を二重以上の構造にすることで、細胞培養装置100を多重構造容器として構成してもよい。
【0031】
本実施形態では、収容容器40は、樹脂や金属等の剛体により形成され、例えば直方体や立方体等の閉鎖系デバイスを収容可能な形状を有する。また、図1に示すように、収容容器40の内側の壁面と閉鎖系デバイスとの間には検知空間SPが設けられる。また、収容容器40は、少なくとも一部が透明になっており、収容容器40の内部の検知空間SPをユーザが視認できるようになっている。
【0032】
本実施形態では、収容容器40は、全面が透明に形成されるものとするが、特定の一面のみが透明であってもよい。また、特定の一面の一部のみが透明であってもよい。また、透明部分を必要に応じて遮光できる構成としてもよい。これにより、遮光が必要な試薬を貯蔵したり、遮光環境で対象細胞の培養を行ったりすることができる。
【0033】
また、収容容器40は、開閉可能な構成としてもよい。なお、収容容器40を開閉可能な構成とする場合、収容容器40内部の試薬や試料の液漏れ、収容容器40外部からの異物の侵入を防止するため、開閉部分にパッキン等を設けることが好ましい。
【0034】
これにより、ユーザは対象細胞に対してピペットを用いて一部の対象細胞を分取する等の手作業で行う処理を実施できる。また、収容容器40は、区画毎に二重(多重)構造を構成してもよい。例えば、図1では、試薬容器20及び試薬容器20に接続される閉鎖系流路で構成される区画と培養容器30及び培養容器30に接続される閉鎖系流路で構成される区画に分けて二重構造を構成してもよい。
【0035】
検知部材50は、収容容器40の検知空間SPに存在する液体を検知するための部材である。一例として、検知部材50は、液状の試薬であり、収容容器40の内側の壁面に塗布される。検知部材50は、例えば、液体と接触することにより化学的性質が変化する液状の試薬(例えば、水と反応して色彩が変化する塩化コバルト水溶液等)である。
【0036】
なお、検知部材50は、収容容器40の内側の壁面の全域に塗布されてもよいし、一部の領域(例えば、収容容器40の底面領域)のみに塗布されてもよい。
【0037】
検知部材50は、液体と接触することにより色彩が変化するため、閉鎖系デバイスから検知空間SPに液漏れが生じた場合や収容容器40の外部から検知空間SPに液体が侵入した場合等に、収容容器40の壁面の内側の検知部材50に当該液体が接触することで色彩が変化する。これにより、ユーザは、収容容器40の内部の壁面を視認することで、収容容器40の検知空間SPに液体が存在するか否かを確認することができる。
【0038】
なお、収容容器40が開閉可能な構造である場合、開閉で生じる摩擦等により内側の壁面に塗布された検知部材50が失われてしまう可能性がある。このため、細胞培養装置100は、開閉が行われる度に、スプレーノズル等を用いて収容容器40内側の壁面に液状の試薬である検知部材50を塗布し直せる構成としてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、検知空間SPには、検知部材50とは反応しない気体が充填されることが好ましい。これにより、検知空間SPに存在する気体と検知部材50とが反応して検知部材50の化学的性質が変化することによる液体の存在の誤検知を防止することができる。
【0040】
上述のように、第1実施形態に係る細胞培養装置100は、閉鎖系デバイスと収容容器40とで二重構造容器を構成する。また、収容容器40の内部には、閉鎖系デバイスからの液漏れを検知可能な検知部材50が付与される。
【0041】
これにより、閉鎖系デバイスは、細胞培養等の処理が行われている間、収容容器40の内部に収容された状態となる。また、細胞培養装置100では、閉鎖系デバイスから漏れ出た液体や、収容容器40の外部から侵入した液体が検知部材50に接触すると、検知部材50が視覚的に変化することで液体の存在を検知する。
【0042】
このため、例えば、処理中に閉鎖系デバイスから液漏れがあった場合、本実施形態に係る細胞培養装置100は、閉鎖系デバイスのどの部分から液漏れがあったとしても、液漏れを検知することが可能である。したがって、閉鎖系デバイスについて、予め液漏れが生じる可能性がある箇所を特定する必要がなくなる。つまり、本実施形態に係る細胞培養装置100によれば、閉鎖系デバイス内の液漏れを効率的に検出することができる。
【0043】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、収容容器40の内側の壁面に検知部材50を塗布する形態について説明した。第2実施形態では、収容容器40の内部の検知空間SPに検知部材を充填する形態について説明する。以下の第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と共通する要素等については、図面中に同一の番号を付してその説明を省略することがある。
【0044】
図2は、第2実施形態に係る細胞培養装置100Aの一例を説明する図である。
【0045】
細胞培養装置100Aは、閉鎖系流路10A乃至10C、試薬容器20、培養容器30、収容容器40、及び検知部材50Aを備える。閉鎖系流路10A乃至10C、試薬容器20、及び培養容器30は、図1の閉鎖系流路10A乃至10C、試薬容器20、培養容器30、及び収容容器40と同様のため説明を省略する。
【0046】
検知部材50Aは、収容容器40の内部の検知空間SPに充填される。検知部材50Aは、例えば、例えば、液体と接触することにより化学的性質が変化する気体(例えば、液体と接触することにより色彩が変化するガス等)である。
【0047】
検知部材50Aは、液体と接触することにより色彩が変化するため、閉鎖系デバイスから液漏れが生じた場合や収容容器40の外部から液体が混入した場合等に、収容容器40の内部の検知空間SPに充填された検知部材50Aの色彩が変化する。これにより、ユーザは、収容容器40の内部の検知空間SPを視認することで、収容容器40内部に液体が存在するか否かを確認することができる。
【0048】
本実施形態では、収容容器40の内側の壁面に液体が接触しなくても検知空間SPに液体が存在すれば、当該液体を検知することができるため、収容容器40の内側の壁面に検知部材を塗布した場合よりも液体を検知しやすくなる。
【0049】
なお、収容容器40が開閉可能な構造である場合、開閉により検知空間SPに充填された検知部材50Aが外部に流出してしまう可能性がある。このため、細胞培養装置100は、開閉が行われる度に、ガスノズル等を用いて収容容器40内部の検知空間SPに気体の検知部材50Aを充填し直せる構成としてもよい。
【0050】
また、細胞培養装置100Aは、検知部材50Aが十分な量充填されているかを検知する機構(検知部材50Aの圧力を検知可能な圧力センサ等)を備えていてもよい。これにより、検知部材50Aの充填量が不足していることによる検知漏れを防止できる。
【0051】
また、本実施形態では、検知部材50Aは、気体であるが、検知部材50Aはこれに限定されない。例えば、収容容器40の内部の検知空間SPに充填可能であれば、固体(小粒子)やゲル状の物質であってもよい。
【0052】
検知部材50Aが固体やゲル状の物質である場合、検知空間SP内に隙間なく充填されてもよいし、検知空間SP内の一部のみに充填されてもよい。一部に充填する場合、例えば、閉鎖系流路10A乃至10C、試薬容器70、及び培養容器80が検知部材50Aで覆われる量の検知部材50Aを検知空間SPに充填してもよい。
【0053】
上述のように、第2実施形態に係る細胞培養装置100Aは、収容容器40の内部の検知空間SPに充填された検知部材50Aを備える。これにより、液体が収容容器40の内側の壁面に接触していなくても、収容容器40内部に存在する液体を検知することができる。したがって、本実施形態に係る細胞培養装置100Aによれば、より高感度に収容容器40内部に存在する液体を検知することができる。
【0054】
(第3実施形態)
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、ユーザが目視で液漏れの有無を確認する形態について説明した。第3実施形態では、自動的に液漏れを検知する形態について説明する。
【0055】
図3は、第3の実施形態に係る細胞培養装置100Bの構成の一例を示す構成図である。細胞培養装置100Bは、例えば、図3に示すように、閉鎖系流路10A乃至10C、試薬容器20、培養容器30、収容容器40、検知部材50、カメラ110、及び制御装置120を有する。閉鎖系流路10A乃至10C、試薬容器20、培養容器30、収容容器40、及び検知部材50については第1実施形態と同様のため説明を省略する。
【0056】
カメラ110は、収容容器40の内部を撮影する。カメラ110はセンサの一例である。例えば、カメラ110は、制御装置120と接続される。カメラ110は、制御装置120による制御のもと、収容容器40の内部のカメラ画像を撮影する。また、カメラ110は、撮影したカメラ画像を制御装置120へ送信する。
【0057】
なお、本実施形態では、カメラ110は、収容容器40の外部に設けられるが、カメラ110は、収容容器40の内部に設けられてもよい。この場合、カメラ110と制御装置120とは、無線で接続されてもよいし、有線で接続されてもよい。有線で接続される場合は、対象細胞の培養中に収容容器40の内部が収容容器40の外部と接触しない構成とすることが好ましい。
【0058】
制御装置120は、処理回路121と、記憶回路122とを有し、カメラ110及び収容容器40にそれぞれ接続される。なお、図6における制御装置120では、処理回路121及び記憶回路122のみが示されているが、実際には、制御装置120は、入力インターフェースや、ディスプレイ等も備える。
【0059】
記憶回路122は、処理回路121に接続されており、各種データを記憶する。例えば、記憶回路122は、カメラ110によって撮影されたカメラ画像や処理回路121が読み出して実行することで各種機能を実現するための種々のプログラムを記憶する。例えば、記憶回路122は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0060】
処理回路121は、入力インターフェースを介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、細胞培養装置100Bの動作を制御する。例えば、処理回路121は、プロセッサによって実現される。
【0061】
処理回路121は、記憶回路122によって記憶されたプログラムを読み出して実行することで、制御機能121a、検知機能121b、及び表示制御機能121cを実行する。なお、検知機能121bは、検知部の一例である。表示制御機能121cは、報知部の一例である。
【0062】
制御機能121aは、細胞培養装置100B全体の動作を制御する。制御機能121aは、モータ等の駆動源(図示しない)を制御して、収容容器40の開閉を制御する。また、例えば、制御機能121aは、カメラ110からカメラ画像を受信する。また、例えば、制御機能121aは、受信したカメラ画像を記憶回路122に記憶する制御を行う。
【0063】
また、例えば、制御機能121aは、収容容器40の開閉が行われた後に、スプレーノズル(図示しない)を制御して、所定量の検知部材50を収容容器40の内側の壁面に噴霧する処理等を行ってもよい。
【0064】
検知機能121bは、収容容器40の内部を撮影したカメラ画像に基づいて、収容容器40の内部の液体を検知する。例えば、検知機能121bは、記憶回路122に記憶されたカメラ画像を解析し、収容容器40の内側の壁面に付与された検知部材50の視覚的な変化から収容容器40の内部の液体の存在を検知する。なお、カメラ画像の解析処理には、公知の画像解析技術を用いることができる。
【0065】
これにより、細胞培養装置100Bは、ユーザが収容容器40を視認していない状況で閉鎖系デバイスから液漏れが生じたような場合でも、液漏れを検知することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、検知機能121bは、収容容器40の内側の壁面に付与された検知部材50の視覚的な変化から収容容器40の内部の液体を検知するが、液体の検知方法はこれに限定されない。例えば、検知機能121bは、収容容器40の内部に充填された気体の視覚的な変化から収容容器40の内部の液体を検知してもよい。
【0067】
表示制御機能121cは、各種情報を表示装置に表示させる制御を行う。例えば、表示制御機能121cは、検知機能121bが収容容器40の内部の液体を検知した場合、ディスプレイ(図示しない)等に閉鎖系デバイスから液漏れが生じた可能性がある旨の警告を報知する。
【0068】
なお、本実施形態では、警告メッセージを表示することによりユーザに対して報知を行うが、処理回路121は、スピーカ等から警告音を発生させることにより、ユーザに報知を行ってもよい。
【0069】
上述のように、第3実施形態に係る細胞培養装置100Bは、収容容器40の内部を撮影するカメラ110が撮影したカメラ画像に基づいて、収容容器40の内部の液体を検知する。これにより、例えば、本実施形態に係る細胞培養装置100Bは、ユーザが収容容器40の内部を視認できない状況であっても閉鎖系デバイスからの液漏れを検知することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る細胞培養装置100Bは、収容容器40の内部にカメラ110を設けることにより、遮光が必要な試薬を試薬容器20に貯留させたり、遮光環境で対象細胞を培養したりすることができる。
【0071】
なお、上述した各実施形態は、各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した各実施形態に係る変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した各実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜上述した実施形態と組み合わせて実施されてもよい。
【0072】
(変形例)
上述した第1実施形態乃至第3実施形態では、液体との接触により化学的な性質が変化する検知部材を用いて収容容器の内部の液体を検知する形態について説明した。しかしながら、液体との接触により物理的な性質が変化する検知部材を用いて収容容器の内部の液体を検知してもよい。
【0073】
図4は、変形例に係る液体の検知処理の一例を説明する図である。変形例に係る収容容器40は、内側の壁面に検知部材50Bを備える。検知部材50Bは、収容容器40の内側表面に配置される複数の導線である。また、図示は省略するが、本変形例に係る細胞培養装置100は、検知部材50Bに電圧を印加する電圧印加装置を有している。例えば、電圧印加装置は、対象細胞の培養中、検知部材50Bに継続的に電圧を印加する。
【0074】
ここで、図4に示すように、検知部材50Bに液体Lが接触すると、電気抵抗率が変化するため検知部材50Bに流れる電流の大きさが変化する。このため、検知部材50Bに流れる電流の大きさを電流センサ(図示しない)で測定することにより、変形例に係る細胞培養装置100は、収容容器40の内部の液体を検知することができる。この場合、電流センサは、センサの一例である。
【0075】
本変形例に係る細胞培養装置100は、第3実施形態と同様に、制御装置120を備えるものとする。本変形例では、制御装置120の処理回路121の検知機能121bは、電流センサの計測結果に基づいて、収容容器40の内部の液体を検知する。例えば、検知機能121bは、電流の測定値が所定範囲になかった場合、収容容器40の内部の液体の存在を検知する。
【0076】
なお、電流センサを用いた液体の検知方法は上記に限定されない。例えば、電流センサにブザーを接続し、電流の測定値が所定範囲にない場合にブザーが鳴るように構成してもよい。
【0077】
また、電流センサを用いる場合、収容容器40は透明な部分を有していなくてもよい。収容容器40全体を不透明とすることで、例えば、光によって性質が変化してしまうような試薬を試薬容器70に貯留すること等が可能になる。
【0078】
また、電流センサを用いて、収容容器40の開閉時に検知部材50Bに隙間が発生したことを検知してもよい。この場合、検知部材50Bは、収容容器40の開閉部分に設けられる。また、この場合の検知部材50Bは、液漏れや液体の侵入ではなく、収容容器40が開状態であることを検知する。
【0079】
例えば、収容容器40が開状態であることを検知し、ユーザにその旨を報知することで、ユーザは収容容器40の内部の閉鎖系流路から試料や試薬がしたり、収容容器40の内部に外部から異物が侵入したりする可能性があることを素早く察知することができる。
【0080】
ここで、図5は、変形例に係る検知部材50Bの隙間の検知処理の一例を説明する図である。図5に示すように、検知部材50Bに隙間Gが発生した場合、検知部材50Bには電流が流れなくなる(又は流れ難くなる)。
【0081】
したがって、収容容器40の開閉時に電流センサで検知部材50Bに流れる電流を測定すれば隙間Gを検知することができる。図5の例では、検知機能121bは、電流センサの計測値が所定の閾値を下回る場合、検知部材50Bの隙間Gを検知する。
【0082】
本変形例に係る細胞培養装置100によれば、検知部材の再付与や再充填といった処理を行うことなく、収容容器40の内部の液体を検知することができる。
【0083】
また、上述した実施形態及び変形例では、処理回路121が有する各処理機能について説明した。ここで、例えば、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路122に記憶される。処理回路121は、各プログラムを記憶回路122から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路121は、図3に示した各処理機能を有することとなる。
【0084】
なお、図3では、単一の処理回路121によって各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路121は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路121が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0085】
また、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0086】
ここで、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0087】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、閉鎖系デバイス内の液漏れを効率的に検出することができる。
【0088】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0089】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0090】
(付記1)
試料を含む液体を処理するための閉鎖系の流路と、
前記流路を収容する収容容器と、
前記収容容器の内部に設けられ、当該収容容器の内部の空間に存在する液体を検知するための検知部材と、
を備える試料処理装置。
(付記2)
前記検知部材は、前記収容容器の内側の壁面に付与されてもよい。
(付記3)
前記検知部材は、前記収容容器の内部の空間に充填されてもよい。
(付記4)
前記検知部材は、液体との接触により化学的又は物理的性質が変化する部材であってもよく、
前記収容容器の内部の前記検知部材の状態をセンシングするセンサと、
前記センサのセンシング結果に基づいて、前記収容容器の内部の空間の液体を検知する検知部と、
液体が検知された場合、その旨を報知する報知部と、
を更に備えていてもよい。
(付記5)
前記センサは、前記収容容器の内部に設けられてもよい。
(付記6)
前記センサは、前記収容容器の内部の前記検知部材を撮影するカメラであってもよい。
(付記7)
前記検知部材は、導線であってもよく、
前記センサは、前記検知部材に流れる電流を測定する電流センサであってもよく、
前記検知部は、電流の測定値に基づいて、前記収容容器の内部の空間の液体を検知してもよい。
(付記8)
前記検知部材は、液体との接触により化学的性質が変化する物質を含んでいてもよい。
(付記9)
試料を含む液体を処理するための閉鎖系の流路を収容するための収容部と、
前記収容部の内部に設けられ、当該収容部の内部の空間に存在する液体を検知する検知部材と、
を備える収容容器。
【符号の説明】
【0091】
100、100A、100B 細胞培養装置
10A~10C 閉鎖系流路
20 試薬容器
30 培養容器
40 収容容器
50、50A 検知部材
120 制御装置
121 処理回路
121a 制御機能
121b 検知機能
122 記憶回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8