(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164916
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】設計支援装置、設計支援方法、および、設計支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20241121BHJP
G06F 111/04 20200101ALN20241121BHJP
【FI】
G06F30/10 200
G06F111:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080642
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 宇
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA21
5B146DC01
5B146DC05
5B146DJ01
5B146DJ11
5B146DL08
(57)【要約】
【課題】解析や実験結果等を基にした寄与率情報や製造制約情報を用いて、効率的に設計する。
【解決手段】対象製品の仕様の変更に伴って検討が必要な設計項目を特定する検討項目特定部16と、検討項目特定部16が特定した設計項目が対象製品の仕様に与える影響である寄与率を計算する寄与率計算部12と、各設計項目に係る値の変更時に、この設計項目に係る値に影響する他の仕様を特定する仕様特定部17と、寄与率が高い順に各設計項目を出力し、仕様特定部17が特定した他の仕様を出力する出力部18とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象製品の仕様の変更により影響を受ける設計項目を特定する検討項目特定部と、
前記検討項目特定部が特定した前記設計項目が前記対象製品の仕様に与える影響である寄与率を計算する寄与率計算部と、
各前記設計項目に係る値の変更時に当該設計項目に係る値に影響する他の仕様を特定する仕様特定部と、
前記寄与率が高い順に各前記設計項目を出力し、前記仕様特定部が特定した他の仕様を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする設計支援装置。
【請求項2】
前記寄与率計算部は、前記対象製品の解析結果または実験結果を基に、前記寄与率を計算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記対象製品の解析結果または実験結果を格納する解析/実験データベースを更に備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記対象製品の解析結果または実験結果を格納する解析/実験データベースから情報を取得する情報取得部を更に備える、
ことを特徴とする請求項2に記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記寄与率計算部は、前記対象製品のシミュレーション結果を基に、前記寄与率を計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記対象製品の製造上の制約条件情報を格納する製造制約情報データベースを更に備え、
前記検討項目特定部は、対象製品の製造上の制約条件情報を用いて、前記対象製品の仕様の変更に伴って検討が必要な設計項目を特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項7】
前記製造制約情報データベースに格納されている情報は、追加または、削除が可能である、
ことを特徴とする請求項6に記載の設計支援装置。
【請求項8】
前記対象製品の仕様と設計項目との関係を格納するMBSEモデルデータベースを更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項9】
検討項目特定部が、対象製品の仕様の変更により影響を受ける設計項目を特定するステップと、
寄与率計算部が、前記設計項目が前記対象製品の仕様に与える影響である寄与率を計算するステップと、
仕様特定部が、各前記設計項目に係る値の変更時に当該設計項目に係る値に影響する他の仕様を特定するステップと、
出力部が、前記寄与率が高い順に各前記設計項目を出力するステップと、
前記仕様特定部が特定した他の仕様を出力するステップと、
を備えることを特徴とする設計支援方法。
【請求項10】
コンピュータに、
対象製品の仕様の変更により影響を受ける設計項目を特定する手順、
前記設計項目が前記対象製品の仕様に与える影響である寄与率を計算する手順、
各前記設計項目に係る値の変更時に当該設計項目に係る値に影響する他の仕様を特定する手順、
前記寄与率が高い順に各前記設計項目を出力する手順、
各前記設計項目に係る値の変更時に当該設計項目に係る値に影響する他の仕様を出力する手順、
を実行させるための設計支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置、設計支援方法、および、設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品に求められる多機能・高機能化、複雑化により、製品開発を行う際に考慮すべき仕様や項目、対象部品等が増加傾向にある。このため、システム全体像の把握困難による不整合の発生や開発効率の低下、開発後期での不具合の発覚による手戻りの発生等の課題が生じる。これまでは、これらの課題が発生した際、部レベルまたは課レベルの局所最適で対応してきた。しかし、近年の製品開発の多機能化や複雑化により、局所最適で扱える範囲を超えつつある。
【0003】
そこで、効率的に製品の要求分析や設計、検証等を行う方法としてMBSE(Model Based Systems Engineering)が用いられている。MBSEは、「製品やサービスなどのシステムの開発を成功に導く」ことを目的とし、システム開発の全体最適を図るための技法、またはそのためのプロセスを定義することを目的とする開発手法である。
【0004】
従来のシステム工学のアプローチでは、要件定義や設計に関するドキュメントを手作業で作成していたため、作成に多くの時間と労力を必要とし、更新や変更が困難であり、ヒューマンエラーに影響されることがあった。MBSEでは、システムの設計や開発において、モデルベースのアプローチを使用することで、自動化されたプロセスや、より効率的なコミュニケーションと協調作業が可能となる。
【0005】
具体的にいうと、MBSEは、製品の部品構造、要求機能、設計パラメータなどの構成と関係性をモデルに記述して、視覚的に理解し易いグラフで表現する。モデルから必要な情報を切り出すことで、仕様を理解したり、レビューや妥当性を判断する作業が効率化する。そして、目的と設計結果を切り分けることで、目的の充足度を確認しながら設計できる。更にモデルを共通言語として使用することで、共通認識や共通理解を得ることができる。これにより、設計の効率化とミスの防止を図っている。
【0006】
しかし、製品の多機能化と複雑化に伴い、MBSEによって生成されるグラフも複雑化する。このため、設計者がMBSEモデルを用いて設計検討を行う際、評価の抜け漏れや、評価すべき箇所の把握に時間がかかるといった課題が生じる。また、MBSEモデルを用いることで、要求や振舞などをツリー形状で表示し、システム全体を俯瞰し、把握することが可能である。しかし、MBSEモデルでは、すべての要素が同一レベルで表示されており、どの項目がよりシステムに影響を及ぼすかの判断が困難である。
【0007】
上記の課題を解決する技術として、以下の先行技術が既に提案されている。特許文献1には、製品設計パラメータ決定支援システムにおける設計パラメータの決定方法において、製品機能および設計パラメータ間の相互作用の構造化を行い、相互作用が少ない設計パラメータグループを抽出し、その設計パラメータグループに基づいた実験計画の作成および、実験結果から製品機能と設計パラメータ間の品質影響度のモデル化を行い、製造ばらつきを考慮した設計パラメータの適正化処理および製品機能の推定を行う発明が記載されている。
【0008】
また、特許文献2で記載されている製品構成設計支援システムでは、仕様構成情報データベースには、仕様項目に対して仕様値の取りうる制約条件を記述しておき、その制約条件とに基づき、仕様項目に対して仕様値を入力する構成設計画面を生成して、構成設計画面を表示して構成設計者の入力を誘導する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-344200号公報
【特許文献2】特開2006-155601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1で開示してある技術では、過去の経過を基に相互作用が少ない設計パラメータの検討項目を対象に実験計画法を用いた検討項目の提示のみを実施している。しかし特許文献1の技術では、評価項目が多い場合、検討が長時間化することや、製造制約が考慮されていないと、製造工程からの手戻りが発生するといった課題が生じる。
【0011】
また特許文献2で開示してある技術は、既存の設計パラメータ間の相互作用情報を基に仕様変更時の適切な設計パラメータの推定を行っている。しかし特許文献2において、製造制約情報を考慮した設計パラメータの推定は行っていないため、パラメータ推定時に製造不可のパラメータを提示する可能性があるといった課題が存在する。
そこで、本発明は、MBSEモデルを用いて設計仕様の変更を検討する場合に、設計効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するため、本発明の設計支援装置は、対象製品の仕様の変更により影響を受ける設計項目を特定する検討項目特定部と、前記検討項目特定部が特定した前記設計項目が前記対象製品の仕様に与える影響である寄与率を計算する寄与率計算部と、各前記設計項目に係る値の変更時に当該設計項目に係る値に影響する他の仕様を特定する仕様特定部と、前記寄与率が高い順に各前記設計項目を出力し、前記仕様特定部が特定した他の仕様を出力する出力部と、を備える。
【0013】
本発明の設計支援方法は、検討項目特定部が、対象製品の仕様の変更により影響を受ける設計項目を特定するステップと、寄与率計算部が、前記設計項目が前記対象製品の仕様に与える影響である寄与率を計算するステップと、仕様特定部が、各前記設計項目に係る値の変更時に当該設計項目に係る値に影響する他の仕様を特定するステップと、出力部が、前記寄与率が高い順に各前記設計項目を出力するステップと、前記仕様特定部が特定した他の仕様を出力するステップと、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の設計支援プログラムは、コンピュータに、対象製品の仕様の変更により影響を受ける設計項目を特定する手順、前記設計項目が前記対象製品の仕様に与える影響である寄与率を計算する手順、各前記設計項目に係る値の変更時に当該設計項目に係る値に影響する他の仕様を特定する手順、前記寄与率が高い順に各前記設計項目を出力する手順、各前記設計項目に係る値の変更時に当該設計項目に係る値に影響する他の仕様を出力する手順、を実行させる。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、MBSEモデルを用いて設計仕様の変更を検討する場合に、設計効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る設計支援システムの構成図である。
【
図3】本実施形態の対象にしたCADモデルを説明する図である。
【
図6】寄与率を表示した設計支援画面を示す図である。
【
図7】第1実施形態の設計支援処理のフローチャートである。
【
図8】設計支援処理の変形例のフローチャートである。
【
図9】検討項目を表示した第2実施形態の設計支援画面を示す図である。
【
図10】第3実施形態の設設計支援処理のフローチャートである。
【
図11】第4実施形態に係る設計支援システムの構成図である。
【
図12】第5実施形態の設設計支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。なお、図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0018】
《第1実施形態》
図1は、本実施形態に係る設計支援システム1の構成図である。
設計支援システム1は、CADモデル作成や設計等で使用する設計支援装置2と、解析/実験データベース21、製造制約情報データベース22、MBSEモデルデータベース23とを備えている。なお、データベースは、図にて「DB」と省略記載する場合がある。
【0019】
設計支援装置2は、例えばコンピュータであり、仕様入力部11と、寄与率計算部12と、寄与率入力部13と、結果情報付与部14と、情報取得部15と、検討項目特定部16と、仕様特定部17と、出力部18とを備えている。
【0020】
仕様入力部11は、設計者等が設計支援装置2上で対象となる製品や部品の仕様変更に関する情報である仕様値等を入力する部位である。
【0021】
寄与率計算部12は、解析/実験データベース21に格納されている対象製品に関する解析結果や実験結果を基に、対象製品の仕様に対する各設計項目の寄与率を算出する部位である。ここで寄与率とは、対象製品の仕様に対して各設計項目が寄与する割合のことをいう。対象製品の仕様とは、例えは対象製品に求められる性能のことをいう。なお、寄与率計算部12は、対象製品のシミュレーション結果を基に、寄与率を計算してもよく、限定されない。
【0022】
寄与率入力部13は、寄与率計算部12で算出された結果である寄与率とは別に、設計者が各仕様項目に対する各製品の寄与率の値を、手作業で設定する部位である。
【0023】
結果情報付与部14は、寄与率計算部12によって算出された寄与率と寄与率入力部13で指定した寄与率を、MBSEモデルデータベース23内に格納されているMBSEモデルや、設計者が自分で作成したMBSEモデルに付与する部位である。
【0024】
情報取得部15は、寄与率計算部12で寄与率を計算するために必要となる情報を解析/実験データベース21から取得する部位である。
【0025】
検討項目特定部16は、寄与率計算部12によって算出された結果や寄与率入力部13で入力された値と、製造制約情報データベース22に格納されている製造上の制約条件情報を用いて、対象製品の仕様の変更により影響を受ける設計項目を特定する部位である。対象製品の仕様の変更により影響を受ける設計項目は、対象製品の仕様の変更の際に設計者が検討すべき設計項目でもある。
【0026】
仕様特定部17は、各設計項目に係る値の変更時に、この設計項目に係る値に影響する他の仕様を特定する部位である。
【0027】
出力部18は、検討項目特定部16で算出された結果を設計支援装置2の表示部に表示し、設計者にすべき項目を提示する部位である。出力部18は更に、仕様特定部17で特定した結果を設計支援装置2の表示部に表示する。
【0028】
解析/実験データベース21には、寄与率計算部12で使用する各仕様に対して、各製品の条件を変化させた際の各仕様に対する解析結果や実験結果が格納されている。各製品の条件とは、形状、材料物性、制御値等の各仕様に対して影響を及ぼす製品設計項目である。
【0029】
製造制約情報データベース22には、検討項目特定部16で使用する、対象製品の製造における制約条件の情報が格納されている。つまり製造制約情報とは、対象製品の製造における制約条件の情報のことをいう。
MBSEモデルデータベース23には、対象製品のMBSEモデル情報が格納されている。対象製品のMBSEモデル情報は、後記する
図4で説明する。
【0030】
図2は、設計支援装置2のハードウェア構成を示す図である。
設計支援装置2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)201、RAM(Random Access Memory)202、ROM(Read Only Memory)203、および記憶部206を有する一般的な計算機である。設計支援装置2は更に、表示部204と通信部205とを含んで構成される。
【0031】
表示部204は、例えば液晶ディスプレイなどであり、文字や図形や画像などを表示する部位である。通信部205は、例えばネットワークインタフェースカード(NIC)などであり、解析/実験データベース21、製造制約情報データベース22、MBSEモデルデータベース23などを管理するサーバと通信する。
記憶部206は、任意の種類の記憶媒体によって構成される。例えば、記憶部206は、半導体メモリおよびハードディスクドライブで構成されてもよい。
【0032】
この例において、
図1に示した各機能部は、CPU201が記憶部206に格納された設計支援プログラム207を実行することによって実現される。
【0033】
言い換えると、この実施例において、上記の各機能部が実行する処理は、実際には、設計支援プログラム207に記述された命令に従うCPU201によって実行される。
また、表示部204による表示は、CPU201が表示のためのデータを生成して表示部204に出力し、表示部204がそのデータに従って表示を行うことによって実行される。
【0034】
図3は、本実施形態の対象にしたCADモデルを説明する図である。ここでは、設計支援装置2における処理の対象の一例である磁気レンズ41の断面図を示している。
磁気レンズ41は、例えば電子顕微鏡やイオン顕微鏡などの顕微鏡で使用されるレンズの一種で、磁場を用いて粒子を曲げることで、粒子の軌道を制御する装置である。電子顕微鏡やイオン顕微鏡は、極微な構造物を解像度よく観察するために使用され、医学、物理学、材料科学、生物学などの分野で幅広く使用されている。磁気レンズ41は、これらの分野で重要な役割を果たしている。
【0035】
磁気レンズ41は主に円筒状のコイル61と、コイル61を外周から包み込むヨーク51とによって構成されている。磁気レンズ41は、コイル61に電流を流したときにヨーク51から漏れる磁場分布が、電子の軌道を制御するためのレンズの役割を果たしている。tは、ヨーク51の肉厚を示している。dは、離心量を示している。
【0036】
図4は、MBSEモデルを説明する図である。磁気レンズ41を対象にしたMBSEモデル図(機能要求図)の一例である。
図4で示すようなMBSEモデル図は、予めMBSEモデルデータベース23に格納されているものも用いてもよいし、設計者が設計支援装置2等を用いて作成してもよい。
【0037】
図4で示すように、磁気レンズ41を設計する際の設計仕様項目として、コイル発熱温度、磁気飽和度、中心軸上における最大磁束密度等がある。つまり、製品3に寄与する仕様31は、コイル発熱温度である。製品3に寄与する仕様32は、磁気飽和度である。製品3に寄与する仕様33は、中心軸上における最大磁束密度である。つまり、対象製品の仕様を磁場レンズ性能としたとき、この仕様の変更により影響を受ける設計項目は、コイル発熱温度、磁気飽和度、中心軸上における最大磁束密度である。
【0038】
また、仕様31のコイル発熱温度に影響するものとして、設計項目311のコイル巻き数と、設計項目312のコイル61に流す電流値がある。つまり、対象製品の仕様をコイル発熱温度としたとき、この仕様の変更により影響を受ける設計項目は、コイル巻き数とコイル61に流す電流値である。
仕様32の磁気飽和度に影響するものとして、設計項目321であるヨーク51の肉厚、設計項目322である磁気レンズ41と中心軸間の離軸量、設計項目323であるコイル61に流す電流値がある。つまり、対象製品の仕様を磁気飽和度としたとき、この仕様の変更により影響を受ける設計項目は、ヨーク51の肉厚、磁気レンズ41と中心軸間の離軸量、コイル61に流す電流値である。
【0039】
図5は、設計支援画面71を示す図である。
図6は、寄与率を表示した設計支援画面71を示す図である。
図5と
図6はそれぞれMBSEモデルに寄与率情報が付与される前後の設計支援画面71を示す図である。
【0040】
図5に示す設計支援画面71には、CADモデルペイン72と、MBSEモデルペイン73と、出力ペイン74と、寄与率表示ボタン75とが表示されている。この設計支援画面71は、ユーザに製品とそのMBSEモデルを示して、製品の設計を支援するものである。
【0041】
CADモデルペイン72には、製品である磁気レンズ41のCADモデルが表示されている。MBSEモデルペイン73には、磁気レンズ41のMBSEモデルが表示されている。出力ペイン74には、このMBSEモデルを分析した結果が出力されるが、
図5では何も出力されていない。寄与率表示ボタン75は、MBSEモデルに寄与率を併せて表示するボタンである。
【0042】
図6に示す設計支援画面71には、CADモデルペイン72と、MBSEモデルペイン73と、出力ペイン74と、出力ボタン76とが表示されている。
【0043】
CADモデルペイン72には、製品である磁気レンズ41のCADモデルが表示されている。MBSEモデルペイン73には、磁気レンズ41のMBSEモデルが表示されると共に、各仕様に対する設計項目の寄与率と、製品に対する各仕様の寄与率が表示されている。
【0044】
コイル発熱温度の左上には、磁場レンズの性能に対するコイル発熱温度の寄与率の40%が表示されている。磁気飽和度の左上には、磁場レンズの性能に対する磁気飽和度の寄与率の35%が表示されている。最大磁束密度の左上には、磁場レンズの性能に対する最大磁束密度の寄与率の25%が表示されている。
【0045】
コイル巻き数の左上には、コイル発熱温度に対するコイル巻き数の寄与率の40%が表示されている。電流値の左上には、コイル発熱温度に対する電流値の寄与率の60%が表示されている。
【0046】
ヨーク肉厚の左上には、磁気飽和度に対するヨーク肉厚の寄与率の35%が表示されている。離軸率の左上には、磁気飽和度に対する離軸率の寄与率の27%が表示されている。電流値の左上には、磁気飽和度に対する電流値の寄与率の38%が表示されている。
【0047】
出力ペイン74には、このMBSEモデルを分析した結果が出力されるが、
図6では何も出力されていない。寄与率表示ボタン75は、MBSEモデルに寄与率を併せて表示するボタンである。
【0048】
図7は、第1実施形態の設計支援処理のフローチャートである。
設計者の指示により、一連の設計支援処理が開始する。不図示のモデル作成装置は、対象となる製品またはシステムに関するMBSEモデルを作成する(ステップS101)。
次に、設計支援装置2の出力部18は、表示部204にMBSEモデルを表示する(ステップS102)。
【0049】
ステップS103にて、CPU201は、
図5に示す寄与率表示ボタン75をクリックされたか否かを判定する。寄与率表示ボタン75がクリックされたとCPU201が判定したならば(Yes)、処理はステップS104に進む。寄与率表示ボタン75がクリックされていないとCPU201が判定したならば(No)、処理はステップS103を繰り返す。
【0050】
ステップS104にて、情報取得部15は、解析/実験データベース21にアクセスする。寄与率計算部12は、各部品に対して寄与率を計算する(ステップS105)。結果情報付与部14は、MBSEモデルの該当箇所に、結果情報である寄与率を付与する(ステップS106)。そして、出力部18は、
図6で示したように、結果情報である寄与率を、設計支援装置2の表示部204に表示する(ステップS107)。以上により、
図7の一連の処理は完了する。
【0051】
寄与率の算出方法の一つとして下記の方法があるが、本発明での寄与率は、各部品等の各設計項目がその製品に及ぼす影響の度合いを示すものであるため、寄与率の計算方法は下記の計算方法に限定したものでは無い。
【0052】
図8は、設計支援処理の変形例のフローチャートである。
設計者の指示により、一連の設計支援処理が開始する。最初、情報取得部15は、MBSEモデルデータベース23にアクセスし、対象製品や部品となるMBSEモデルを取得する(ステップS1011)。以降、ステップS102からS107までの処理は、
図7に示した設計支援処理と同様である。
【0053】
第1実施形態の設計支援装置は、従来のMBSEモデルに寄与率の情報を付与し、モデルを高精度化し、新たな付加価値創出に貢献する。寄与率の情報により、設計変更時に優先して検討・評価すべき設計項目を提示できる。そして、設計項目の検討に伴い、その他に検討すべき仕様を提示できる。これにより、検討期間の短縮、向け漏れ防止に貢献する。
【0054】
《第2実施形態》
実施例1で記載した設計支援装置2において、磁気飽和度の要求仕様値を従来のYY%からyy%に変更した変更設計を行った場合、実施例1で記載した処理フローを基に寄与率の算出を行う。その後、
図9で示すように、MBSEモデル上に寄与率を表示するだけでなく、設計支援装置2の表示部204に、ステップS106で算出された寄与率の高い項目から順に表示させ、設計者に優先的に検討すべき項目を提示する。
【0055】
図9は、検討項目を表示した設計支援画面71を示す図である。
設計支援画面71の出力ペイン74には、磁場レンズの磁気飽和度に対して優先的に検討すべき設計項目が順番に表示されている。設計項目の順番は、各設計項目の寄与度の大きさの順番であり、ここでは電流値、ヨーク肉厚、離軸率の順番で表示されている。
【0056】
設計支援画面71の出力ペイン74には更に、その他に検討すべき仕様としてコイル発熱温度が表示されている。磁場レンズの磁気飽和度に対して電流値を検討した場合、電流値の変更はコイル発熱温度に寄与しているため、これを含めて検討しなければならない。
【0057】
また、MBSEモデルペイン73から分かるように、本実施形態で対象にした磁気レンズ41の場合、磁気飽和度に寄与する設計項目を変更する際、電流値の値を変更する必要がある。しかし、電流値は、磁気飽和度に影響するだけでなく、コイル発熱温度にも影響を及ぼす。このため、設計支援画面71には、仕様変更時に検討すべき設計項目の表示を行うだけでなく、変更予定の設計項目が他の仕様にも影響を及ぼす場合、その仕様も設計支援装置2に表示し、設計者に追加で検討すべき設計項目も提示する。
【0058】
《第3実施形態》
図10は、第3実施形態の設設計支援処理のフローチャートである。
設計者の指示により、一連の設計支援処理が開始する。最初、情報取得部15は、MBSEモデルデータベース23にアクセスし、対象製品や部品となるMBSEモデルを取得する(ステップS1011)。
次に、設計支援装置2の出力部18は、表示部204にMBSEモデルを表示する(ステップS102)。
【0059】
ステップS103にて、CPU201は、
図4に示す寄与率表示ボタン75をクリックされたか否かを判定する。寄与率表示ボタン75がクリックされたとCPU201が判定したならば(Yes)、処理はステップS104に進む。寄与率表示ボタン75がクリックされていないとCPU201が判定したならば(No)、処理はステップS103を繰り返す。
【0060】
ステップS104にて、情報取得部15は、解析/実験データベース21にアクセスする。寄与率計算部12は、製造制約情報データベース22にアクセスしつつ、各部品に対して寄与率を計算する(ステップS106)。結果情報付与部14は、MBSEモデルの該当箇所に、結果情報である寄与率を付与する(ステップS106)。製造制約上、変更できない設計項目には、寄与率を付与しない。
【0061】
そして、出力部18は、
図6で示したように、結果情報である寄与率を、設計支援装置2の表示部204に表示する(ステップS107)。この際、出力部18は、該当する設計項目を除外して表示する。以上により、
図10の一連の工程を完了する。
【0062】
《第4実施形態》
図1に示した設計支援装置2で使用される解析/実験データベース21、製造制約情報データベース22、MBSEモデルデータベース23は、クラウド等の装置外のネットワーク上に格納されている。しかし、これに限られず、設計支援装置2内に組み込んだ状態で提供してもよい。
【0063】
図11は、第4実施形態に係る設計支援システム1の構成図である。
CADモデル作成や設計等で使用する設計支援装置2は、解析/実験データベース21、製造制約情報データベース22、MBSEモデルデータベース23とを備えている。このように、解析/実験データベース21、製造制約情報データベース22、MBSEモデルデータベース23は、通信部205を介してアクセス可能であればよく、限定されない。
【0064】
《第5実施形態》
設計支援システム1および設計支援装置2において、ステップS10で表示された結果を基に、ステップS112でシミュレーションや実験等による再検討を行い、得られた結果を解析/実験データベース21に格納させ、寄与率計算で使用する解析/実験データベース21に格納されている情報を更新することができる。
【0065】
図12は、第5実施形態の設設計支援処理のフローチャートである。
ステップS1011からステップS107までの処理は、
図10の処理と同様である。
ステップS107で表示された結果を基に、不図示のシミュレーション装置は、シミュレーションによる再検討を行う(ステップS108)。設計支援装置2は、得られたシミュレーション結果を解析/実験データベース21に格納すると(ステップS109)、
図11の処理を終了する。これにより、ステップS105の寄与率計算で使用する解析/実験データベース21に格納されている情報を更新することができる。
【0066】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0067】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0068】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 設計支援システム
11 仕様入力部
12 寄与率計算部
13 寄与率入力部
14 結果情報付与部
15 情報取得部
16 検討項目特定部
17 仕様特定部
18 出力部
2 設計支援装置
21 解析/実験データベース
22 製造制約情報データベース
23 MBSEモデルデータベース
41 磁気レンズ
51 ヨーク
61 コイル
71 設計支援画面