(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164918
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ブローニードル
(51)【国際特許分類】
B29C 49/60 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B29C49/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080645
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 賢二
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AG07
4F208AJ08
4F208AR07
4F208LA01
4F208LA09
4F208LB01
4F208LG22
4F208LN07
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れたブローニードルを提供する。
【解決手段】ブローニードル1は、筒状の周壁21を有する筒部2と、筒部2の先端側に形成されるパリソン切裂部3を備え、パリソン切裂部3は、長剣部30と、長剣部30と略90度の角度位相をなす短剣部40を備え、長剣部30は、筒部2の軸線5に位置する尖端部31と、尖端部31に接続し、筒部2の周壁21に至る領域に形成される一対の長剣切裂エッジ32と、長剣切裂エッジ32から突出して形成される一対の長剣尖部34を備え、短剣部40は、長剣部30の長剣部側面部33から形成され、長剣部側面部33から筒部2の周壁21に至る領域に形成される一対の短剣切裂エッジ41と、短剣切裂エッジ41から突出して形成される一対の短剣尖部42を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形用金型に保持されたパリソンに挿入されるブローニードルであって、
前記ブローニードルは、筒状の周壁を有する筒部と、前記筒部の先端側に形成されるパリソン切裂部を備え、
前記パリソン切裂部は、長剣部と、前記長剣部と略90度の角度位相をなす短剣部を備え、
前記長剣部は、前記筒部の軸線に位置する尖端部と、前記尖端部に接続し、前記筒部の前記周壁に至る領域に形成される一対の長剣切裂エッジと、前記長剣切裂エッジから突出して形成される一対の長剣尖部を備え、
前記短剣部は、前記長剣部の長剣部側面部から形成され、前記長剣部側面部から前記筒部の前記周壁に至る領域に形成される一対の短剣切裂エッジと、前記短剣切裂エッジから突出して形成される一対の短剣尖部を備えていることを特徴とするブローニードル。
【請求項2】
前記長剣尖部が形成される前記長剣切裂エッジの長剣尖部起点から前記軸線に対する垂線と前記軸線との交点である長剣尖部起点交点は、前記長剣尖部の長剣尖部先端部から前記軸線に対する垂線と前記軸線との交点である長剣尖部先端部交点と同じ位置、又は前記長剣尖部先端部交点より前記筒部側に位置する請求項1に記載のブローニードル。
【請求項3】
前記長剣尖部先端部交点は、前記短剣部が形成される前記長剣部側面部の短剣部起点から前記軸線に対する垂線と前記軸線との交点である短剣部起点交点と同じ位置、又は前記短剣部起点交点より前記尖端部側に位置する請求項1又は請求項2に記載のブローニードル。
【請求項4】
前記尖端部の前記軸線に対する角度は、前記尖端部に接続する前記長剣切裂エッジの前記軸線に対する角度より小さい請求項1又は請求項2に記載のブローニードル。
【請求項5】
前記短剣部の前記長剣部側面部との接続部分には、前記軸線に対する角度が、前記軸線に対する前記短剣切裂エッジの角度より小さい短剣尖端部が形成され、前記短剣切裂エッジは、前記短剣尖端部に接続して形成される請求項1又は請求項2に記載のブローニードル。
【請求項6】
前記長剣切裂エッジと前記筒部の前記周壁との間には、長剣非エッジ部が形成され、前記短剣切裂エッジと前記筒部の前記周壁との間には、短剣非エッジ部が形成されている請求項1に記載のブローニードル。
【請求項7】
前記長剣非エッジ部と前記短剣非エッジ部は、前記軸線に対して、前記筒部の前記周壁方向に拡がる請求項6に記載のブローニードル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形用金型に保持されたパリソンに側方から挿入され、パリソン内に流体を流入又は流出するブローニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形用金型に保持されたパリソンに側方から挿入され、パリソン内に流体を流入又は流出するブローニードルとしては、例えば、特許文献1に開示されたものが挙げられる。
【0003】
図3は、特許文献1に記載された中空成形用のブローニードルを示す概略図であり、
図3(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は正面図である。ブローニードル100は、円筒状の周壁200を有する本体300と、この本体300の先端に形成された切裂部400と、この切裂部400と周壁200とを結ぶ四角錐部500とから構成されている。
【0004】
切裂部400は、比較的扁平なダガー(短剣)形状を呈し、周壁200に連続する一対の約25度の鋭角の切裂エッジ410、410を有している。また、四角錐部500は、その相対向する一対の稜線510,510が切裂エッジ410,410と軸方向視で90度の角度位相をなし、切裂エッジ410,410を先端側から後端側にかけて一定幅とさせる形に形成されている。四角錐部500の他の一対の稜線520,520は、
図3(a)中に二点鎖線で示すように、切裂部400内に位置する。切裂部400は扁平なダガー形状であり、本体300の軸方向に対するそのテーパ角度は、稜線510側のテーパ角度よりも小さく形成されている。
【0005】
特許文献1は、以下の作用を有する。ブローニードル100がパリソンに突き入れられると、先ず、ブローニードル100の切裂部400は、その切裂エッジ410,410でパリソンを一文字に切裂きながらパリソン内に進入する。そして、ブローニードル100がパリソンに更に突き入れられると、ブローニードル100の四角錐部500は、その稜線510,510でパリソンを一文字に切裂きながら進入する。
【0006】
これにより、パリソンが十文字に切裂かれることとなるため、ブローニードル100の本体300が突き入れられる際の抵抗は非常に小さいものとなり、また、パリソンがブローニードル100の周壁200に連続する鋭い切裂エッジ410,410により大きく切裂かれるため、ブローニードル100の先端にパリソンの一部が付着し、これがパリソンの内部に垂れ落ちて成形後の製品内に異物として残ってしまうことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1において、成形回数を重ねていくと、ブローニードル100の切裂部400の切裂エッジ410の先端部分と四角錐部500の稜線510の先端部分が、パリソンとの接触により摩耗し、丸みを帯びるようになる。その状態で使用すると、切裂エッジ410と稜線510上をパリソンがすべり、パリソンがブロー成形機の内側に引っ張られて伸び、最終的には、切裂エッジ410と稜線510が、伸びたパリソンを引きちぎる形でパリソンに穴が開けられる。
【0009】
その結果、きれいに十文字に切裂くことができず、寸法精度を維持できず、又、後の工程で、部品を溶着によって組み付ける場合に、溶着不良が発生する可能性がある。さらに、引きちぎられたパリソンの一部がパリソンの内部に垂れ落ちて成形後の製品内に異物として残る可能性がある。これらの不具合は、ブローニードルを交換することによって防止することができるが、ブローニードルの交換はコストアップになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、ブロー成形用金型に保持されたパリソンに挿入されるブローニードルであって、ブローニードルは、筒状の周壁を有する筒部と、筒部の先端側に形成されるパリソン切裂部を備え、パリソン切裂部は、長剣部と、長剣部と略90度の角度位相をなす短剣部を備え、長剣部は、筒部の軸線に位置する尖端部と、尖端部に接続し、筒部の周壁に至る領域に形成される一対の長剣切裂エッジと、長剣切裂エッジから突出して形成される一対の長剣尖部を備え、短剣部は、長剣部の長剣部側面部から形成され、長剣部側面部から筒部の周壁に至る領域に形成される一対の短剣切裂エッジと、短剣切裂エッジから突出して形成される一対の短剣尖部を備えていることを特徴とするブローニードルである。
【0011】
請求項1の本発明では、ブローニードルは、筒状の周壁を有する筒部と、筒部の先端側に形成されるパリソン切裂部を備え、パリソン切裂部は、長剣部と、長剣部と略90度の角度位相をなす短剣部を備え、長剣部は、筒部の軸線に位置する尖端部と、尖端部に接続し、筒部の周壁に至る領域に形成される一対の長剣切裂エッジと、長剣切裂エッジから突出して形成される一対の長剣尖部を備え、短剣部は、長剣部の長剣部側面部から形成され、長剣部側面部から筒部の周壁に至る領域に形成される一対の短剣切裂エッジと、短剣切裂エッジから突出して形成される一対の短剣尖部を備えているので、長剣部において、長剣切裂エッジの先端部分が摩耗し、長剣切裂エッジ上をパリソンがすべった場合にも、長剣尖部がパリソンに突き刺さることにより、パリソンの伸びを抑制し、長剣切裂エッジと長剣尖部によりパリソンを切裂いて行くことができる。
【0012】
又、短剣部においても、短剣切裂エッジの先端部分が摩耗し、短剣切裂エッジ上をパリソンがすべった場合にも、短剣尖部がパリソンに突き刺さることにより、パリソンの伸びを抑制し、短剣切裂エッジと短剣尖部によりパリソンを切裂いて行くことができる。
【0013】
その結果、成形回数を重ね、長剣部と短剣部に上記不具合の発生程度の摩耗が発生した場合においても、長剣部と短剣部によって十文字に切裂き、パリソンに穴を開けることができるので、寸法精度を維持し、又、後の工程で、部品を溶着によって組み付ける場合にも、溶着不良が発生せず、さらに、引きちぎられたパリソンの一部がパリソンの内部に垂れ落ちて成形後の製品内に異物として残ることを防止することができる。又、ブローニードルの交換回数が減少するので、成形作業の効率化、コストアップの抑制を図ることができる。
【0014】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、長剣尖部が形成される長剣切裂エッジの長剣尖部起点から軸線に対する垂線と軸線との交点である長剣尖部起点交点は、長剣尖部の長剣尖部先端部から軸線に対する垂線と軸線との交点である長剣尖部先端部交点と同じ位置、又は前記長剣尖部先端部交点より前記筒部側に位置するブローニードルである。
【0015】
請求項2の本発明では、長剣尖部が形成される長剣切裂エッジの長剣尖部起点から軸線に対する垂線と軸線との交点である長剣尖部起点交点は、長剣尖部の長剣尖部先端部から軸線に対する垂線と軸線との交点である長剣尖部先端部交点と同じ位置、又は前記長剣尖部先端部交点より前記筒部側に位置するので、長剣切裂エッジ上をパリソンがすべり、パリソンが伸びた状態においても、長剣尖部をパリソンに確実に突き刺すことができる。その結果、長剣切裂エッジと長剣尖部によりパリソンを切裂いて行くことができる。
【0016】
請求項3の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、長剣尖部先端部交点は、短剣部が形成される長剣部側面部の短剣部起点から軸線に対する垂線との交点である短剣部起点交点と同じ位置、又は短剣部起点交点より尖端部側に位置するブローニードルである。
【0017】
請求項3の本発明では、長剣尖部先端部交点は、短剣部が形成される長剣部側面部の短剣部起点から軸線に対する垂線と軸線との交点である短剣部起点交点と同じ位置、又は短剣部起点交点より尖端部側に位置するので、パリソンを長剣部と短剣部により十字に切裂き始める時、又は十字に切裂き始める前に長剣尖部の長剣尖部先端部がパリソンに当接する。その結果、パリソンを長剣部と短剣部により十字に切裂き始める時に、パリソンには長剣尖部先端部が当接して突き刺す、又は既に突き刺されているので、短剣切裂エッジ上のパリソンのすべりが抑制され、パリソンを長剣部と短剣部により十字に切裂いて行くことができる。
【0018】
請求項4の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、尖端部の軸線に対する角度は、尖端部に接続する長剣切裂エッジの軸線に対する角度より小さいブローニードルである。請求項4の本発明では、尖端部の軸線に対する角度は、尖端部に接続する長剣切裂エッジの軸線に対する角度より小さいので、尖端部の先端が十分に尖っており、パリソンに確実に突き刺すことができる。その結果、長剣切裂エッジが磨耗した場合も、パリソンに突き刺される尖端部、長剣尖部と長剣切裂エッジによりパリソンを切裂いて行くことができる。
【0019】
請求項5の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、短剣部の長剣部側面部との接続部分には、軸線に対する角度が、軸線に対する短剣切裂エッジの角度より小さい短剣尖端部が形成され、短剣切裂エッジは、短剣尖端部に接続して形成されるブローニードルである。
【0020】
請求項5の本発明では、短剣部の長剣部側面部との接続部分には、軸線に対する角度が、軸線に対する短剣切裂エッジの角度より小さい短剣尖端部が形成され、短剣切裂エッジは、短剣尖端部に接続して形成されるので、短剣部において、短剣尖端部が十分に尖っており、パリソンに確実に突き刺すことができる。
【0021】
請求項6の本発明は、請求項1の発明において、長剣切裂エッジと筒部の周壁との間には、長剣非エッジ部が形成され、短剣切裂エッジと筒部の前記周壁との間には、短剣非エッジ部が形成されているブローニードルである。
【0022】
請求項6の本発明では、長剣切裂エッジと筒部の周壁との間には、長剣非エッジ部が形成され、短剣切裂エッジと筒部の前記周壁との間には、短剣非エッジ部が形成されているので、長剣非エッジと短剣非エッジ部はエッジ形状への加工が不要となり、長剣部全体に長剣切裂エッジ、短剣部全体に短剣切裂エッジを形成する場合に比較して、ブローニードル作製のコスト低減を図ることができる。
【0023】
請求項7の本発明は、請求項6の発明において、長剣非エッジ部と短剣非エッジ部は、軸線に対して、筒部の周壁方向に拡がるブローニードルである。請求項7の本発明では、長剣非エッジ部と短剣非エッジ部は、軸線に対して、筒部の周壁方向に拡がるので、長剣切裂エッジと短剣切裂エッジによりパリソンを十字に切裂いた後に、パリソンにブローニードルを筒部の周壁まで挿入すると、長剣非エッジ部と短剣非エッジ部によりパリソンが尖端部側に引伸ばされる。その結果、十文字に切裂かれた部分に切裂かれていない部分を含んだ形で、パリソンに穴あけを行うことができるので、後の工程で溶着によって部品を組み付ける時の溶着強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
ブロー成形用金型に保持されたパリソンに挿入されるブローニードルであって、ブローニードルは、筒状の周壁を有する筒部と、筒部の先端側に形成されるパリソン切裂部を備え、パリソン切裂部は、長剣部と、長剣部と略90度の角度位相をなす短剣部を備え、長剣部は、筒部の軸線に位置する尖端部と、尖端部に接続し、筒部の周壁に至る領域に形成される一対の長剣切裂エッジと、長剣切裂エッジから突出して形成される一対の長剣尖部を備え、短剣部は、長剣部の長剣部側面部から形成され、長剣部側面部から筒部の周壁に至る領域に形成される一対の短剣切裂エッジと、短剣切裂エッジから突出して形成される一対の短剣尖部を備えているので、長剣部において、長剣切裂エッジの先端部分が摩耗し、長剣切裂エッジ上をパリソンがすべった場合にも、長剣尖部がパリソンに突き刺されることにより、パリソンの伸びを抑制し、長剣切裂エッジと長剣尖部によりパリソンを切裂いて行くことができる。
【0025】
又、短剣部においても、短剣切裂エッジの先端部分が摩耗し、短剣切裂エッジ上をパリソンがすべった場合にも、短剣尖部がパリソンに突き刺されることにより、パリソンの伸びを抑制し、短剣切裂エッジと短剣尖部によりパリソンを切裂いて行くことができる。
【0026】
その結果、成形回数を重ね、長剣部と短剣部に上記不具合の発生程度の摩耗が発生した場合においても、長剣部と短剣部によって十文字に切裂き、パリソンに穴を開けることができるので、寸法精度を維持し、又、後の工程で、部品を溶着によって組み付ける場合にも、溶着不良が発生せず、さらに、引きちぎられたパリソンの一部がパリソンの内部に垂れ落ちて成形後の製品内に異物として残ることを防止することができる。又、ブローニードルの交換回数が減少するので、成形作業の効率化、コストアップの抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るブローニードルを示す概略図であり、(a)は、長剣部の側面側から見た図であり、(b)は短剣部の側面側から見た図であり、(c)は正面部である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係るブローニードルを示す概略図であり、(a)は、長剣部の側面側から見た図であり、(b)は短剣部の側面側から見た図であり、(c)は正面部である。
【
図3】従来の中空成形用ブローニードルを示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は正面図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の実施形態に係るブローニードルを、
図1に基づいて説明する。
図1(a)は、長剣部の側面側から見た図であり、(b)は短剣部の側面側から見た図であり、(c)は正面部である。ブローニードル1は、円柱筒状の周壁21を有する筒部2と、この筒部2の先端に形成されたパリソン切裂部3から構成されている。筒部2の内部には、筒部2の軸線5方向に延びる中空部22が形成されている。ここで、軸線5は、円柱筒状の筒部2の軸方向(筒部2の長手方向)の図心を通る線のことである。
【0029】
パリソン切裂部3は、
図1(c)に示すように、薄い刃である長剣部30と、長剣部30と同様に薄い刃である短剣部40を備えている。長剣部30と短剣部40の刃厚は3mmである。なお、刃厚は3mmには限定されない。又、長剣部30と短剣部40は90度の角度位相をなしている。又、長剣部30と短剣部40は、軸線5を挟んで対称形状である(
図1(a)、
図1(b))。
【0030】
図1(a)に示すように、長剣部30には、筒部2の軸線5上に位置する尖端部31が形成されている。尖端部31における筒部2方向に拡がる尖端部31の軸線5に対する角度Aは、軸線5を挟んで両側20度の40度である。なお、角度Aは40度には限定されない。又、尖端部31の
図1(b)における角度Bは軸線5を挟んで両側7.5度の15度である。なお、角度Bは15度には限定されない。
【0031】
尖端部31の筒部2側の端部から筒部2側には、一対の鋭角の長剣切裂エッジ32が筒部2の周壁21に至る領域に形成されている。長剣切裂エッジ32における
図1(a)の長剣切裂エッジ32の側面側の角度Cは軸線5を挟んで両側40度の80度である。なお、角度Cは80度には限定されない。又、長剣切裂エッジ32における長剣切裂エッジ32のエッジの角度は、尖端部31の角度Bと同じである。なお、長剣切裂エッジ32のエッジの角度は、尖端部31の角度Bと同様に15度には限定されない。
【0032】
長剣切裂エッジ32には、長剣切裂エッジ32から突出して一対の長剣尖部34が形成されている。長剣尖部34において、長剣切裂エッジ32の長剣尖部起点35から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である長剣尖部起点交点51は、長剣尖部34の長剣尖部先端部36から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である長剣尖部先端部交点52より筒部2側に位置している。したがって、長剣尖部34は、尖端部31側に尖った形状になっている。
【0033】
図1(b)に示すように、短剣部40は、長剣部30の長剣部側面部33から、長剣部30と90度の角度位相をなして形成され、長剣部側面部33から筒部2に至る領域に形成される一対の鋭角の短剣切裂エッジ41が形成されている。短剣切裂エッジ41における短剣切裂エッジ41の側面側の角度Dは軸線5を挟んで両側40度の80度である。なお、角度Dは80度には限定されない。又、
図1(a)の短剣切裂エッジ41のエッジの角度Eは、長剣切裂エッジ32と同じ軸線5を挟んで両側7.5度の15度である。なお、角度Eは15度には限定されない。
【0034】
短剣切裂エッジ41には、短剣切裂エッジ41から突出して一対の短剣尖部42が形成されている。短剣尖部42において、短剣切裂エッジ41の短剣尖部起点43から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である短剣尖部起点交点53は、短剣尖部42の短剣尖部先端部44から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である短剣尖部先端部交点54より筒部2側に位置している。したがって、短剣尖部42は、長剣尖部34と同様に尖端部31側に尖った形状になっている。
【0035】
又、長剣尖部先端部交点52(
図1(a))は、長剣部側面部33の短剣部起点37から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である短剣部起点交点55より尖端部31側に位置している。
【0036】
長剣切裂エッジ32と筒部2の周壁21との間には、長剣非エッジ部38が形成されている。又、短剣切裂エッジ41と筒部2の周壁21との間には、短剣非エッジ部45が形成されている。長剣非エッジ部38と短剣非エッジ部45は、長剣切裂エッジ32と短剣切裂エッジ41のように尖っておらず、長剣切裂エッジ32と短剣切裂エッジ41に連結し、筒部2の周壁21に繋がる部分は、軸線5と垂直方向の断面において、弧形状になっている。本第1の実施形態では、長剣非エッジ部38と短剣非エッジ部45は、半径1.5mm、つまり、長剣部30と短剣部40の刃厚3mmの2分の1である円弧形状である。その結果、長剣非エッジ部38と短剣非エッジ部45は、長剣切裂エッジ32と短剣切裂エッジ41によってパリソンを切裂いた後、筒部2の周壁21に至るまでパリソンに接しながら通過する。又、本第1の実施形態では、長剣非エッジ部38と短剣非エッジ部45は、軸線5に平行である。
【0037】
筒部2の尖端部31側には、周壁21に接続する四角錐部23が形成されている。長剣部30の長剣切裂エッジ32と短剣部40の短剣切裂エッジ41は、四角錐部23の稜線の位置に該当する。四角錐部23の尖端部31側の四面には、各面1カ所、同一開口径の円柱状の開口部24が形成されている。又、開口部24は中空部22に繋がっている。なお、各面の開口部24の数は1つには限定されず、開口部24の形状も同一開口径の円柱状には限定されない。開口部24は、中空部22に連通し、この開口部24を通じて流体をパリソン内に均等に噴射、又は吸引する。ここで、流体は、パリソンを膨張させるための空気や、パリソンを冷却するための冷却ガスや冷却水を指す。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)長剣部30は、筒部2の軸線5に位置する尖端部31を有し、尖端部31における筒部2方向に拡がる尖端部31の軸線5に対する角度Aは、尖端部31に接続する長剣切裂エッジ32の側面側の角度Cより小さいので、尖端部31の先端が十分に尖っており、パリソンに確実に突き刺し、突き入れることができる。
【0039】
(2)尖端部31の筒部2側の端部から筒部2側には、一対の鋭角の長剣切裂エッジ32が筒部2の周壁21に至る領域に形成され、長剣切裂エッジ32には、一対の長剣尖部34が突出して形成されているので、長剣部30において、長剣切裂エッジ32の先端部分が摩耗し、長剣切裂エッジ32上をパリソンがすべった場合にも、長剣尖部34がパリソンに突き刺さり、パリソンに突き入れられた尖端部31と長剣尖部34によりパリソンの伸びを抑制し、長剣切裂エッジ32と長剣尖部34によりパリソンを切裂いて行くことができる。
【0040】
(3)長剣尖部34において、長剣切裂エッジ32の長剣尖部起点35から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である長剣尖部起点交点51は、長剣尖部34の長剣尖部先端部36から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である長剣尖部先端部交点52より筒部2側に位置しているので、長剣切裂エッジ32上をパリソンがすべり、長剣切裂エッジ32によってパリソンが尖端部31側に引伸ばされた場合にも、長剣尖部先端部36をパリソンに確実に突き刺すことができる。
【0041】
(4)短剣部40は、長剣部30の長剣部側面部33から、長剣部30と90度の角度位相をなして形成され、長剣部側面部33から筒部2に至る領域に形成される一対の鋭角の短剣切裂エッジ41が形成されているので、パリソンを長剣部30と短剣部40により十字に切裂いて行くことができる。
【0042】
(5)長剣尖部先端部交点52は、長剣部側面部33の短剣部起点37から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である短剣部起点交点55より尖端部31側に位置しているので、パリソンを長剣部30と短剣部40により十字に切裂き始める前に長剣尖部34の長剣尖部先端部36がパリソンに突き刺さることにより、短剣切裂エッジ41上のパリソンのすべりが抑制され、パリソンを長剣切裂エッジ32と短剣部40により十字に切裂いて行くことができる。
【0043】
(6)短剣切裂エッジ41には、一対の短剣尖部42が突出して形成されているので、短剣切裂エッジ41の先端部分が摩耗し、短剣切裂エッジ41上をパリソンがすべった場合にも、短剣尖部42がパリソンに突き入れられることにより、パリソンの伸びを抑制し、短剣切裂エッジ41と短剣尖部42によりパリソンを切裂いて行くことができる。
【0044】
(7)短剣尖部42において、短剣切裂エッジ41の短剣尖部起点43から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である短剣尖部起点交点53は、短剣尖部42の短剣尖部先端部44から軸線5に対する垂線と軸線5との交点である短剣尖部先端部交点54より筒部2側に位置し、尖端部31側に尖った形状になっているので、短剣切裂エッジ41上をパリソンがすべり、短剣切裂エッジ41によってパリソンが尖端部31側に引伸ばされた場合にも、短剣尖部先端部44をパリソンに確実に突き刺すことができる。その結果、パリソンを長剣部30と短剣部40により十字に切裂いて行くことができる。
【0045】
(8)筒部2の尖端部31側には、周壁21に接続する四角錐部23が形成され、四角錐部23の尖端部31側の四面には、各面1カ所、同一開口径の円柱状の開口部24が形成され、開口部24は中空部22に繋がっているので、長剣部30と短剣部40をパリソン内に挿入した時点で、流体をパリソン内に均等に噴射、又は吸引することがき、開口部24を筒部2の周壁21に形成する場合に比較してブローニードル1の全長を短くすることができる。
【0046】
(9)長剣切裂エッジ32と筒部2の周壁21との間には、長剣非エッジ部38が形成され、短剣切裂エッジ41と筒部2の周壁21との間には、短剣非エッジ部45が形成されているので、長剣非エッジ部38と短剣非エッジ部45はエッジ形状への加工が不要となり、長剣部30全体に長剣切裂エッジ32、短剣部40全体に短剣切裂エッジ41を形成する場合に比較して、ブローニードル1作製のコスト低減を図ることができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態に係るブローニードルを、
図2に基づいて説明する。
図2(a)は、長剣部の側面側から見た図であり、(b)は短剣部の側面側から見た図であり、(c)は正面部である。
【0048】
第2の実施形態と上記の第1の実施形態の相違点は、以下の通りである。
第1に、
図2(b)に示すように、短剣部40にも長剣部30における尖端部31と同様に、短剣尖端部46が形成されている。短剣尖端部46の角度Fは、尖端部31の角度Aと同様に軸線5を挟んで両側20度の40度である。なお、角度Fは、角度Dより小さければ、40度には限定されない。
【0049】
第2に、長剣尖部起点交点51と長剣尖部先端部交点52は、軸線5上の同じ点である。つまり、長剣尖部起点交点51と長剣尖部先端部交点52を結ぶ線は、軸線5に対して垂直である。
【0050】
第3に、短剣尖部起点交点53と短剣尖部先端部交点54は、軸線5上の同じ点である。つまり、短剣尖部起点交点53と短剣尖部先端部交点54を結ぶ線は、軸線5に対して垂直である。
【0051】
第4に、長剣非エッジ部38と短剣非エッジ部45は、軸線5に平行ではなく、筒部2の周壁21方向に拡がる直線形状に形成されている。
【0052】
上記の第2と第3の相違点については、軸線5上の位置に相違はあるが、それらの効果は、上記の(3)、(7)と同じである。本第2の実施形態では、上記の第1の実施形態に対して、さらに、以下に示す効果が得られるようになる。
【0053】
(10)短剣部40にも長剣部30における尖端部31と同様に、短剣尖端部46が形成されており、短剣尖端部46における筒部2方向に拡がる軸線5に対する角度Fは、短剣尖端部46に接続する短剣切裂エッジ41の角度Dより小さいので、短剣尖端部46の先端が十分に尖っており、パリソンに確実に突き入れることができる。
【0054】
(11)長剣非エッジ部38と短剣非エッジ部45は、軸線5に平行ではなく、筒部2の周壁21方向に拡がる直線形状に形成されているので、長剣切裂エッジ32と短剣切裂エッジ41によりパリソンを十字に切裂いた後に、パリソンにブローニードル1を筒部2の周壁21まで挿入すると、長剣非エッジ部38と短剣非エッジ部45によりパリソンが尖端部31側に引伸ばされる。その結果、十文字に切裂かれた部分に切裂かれていない部分を含んだ形で、パリソンへの穴あけを行うことができる。一方、切裂かれていない部分を含まない場合は、十文字の切裂き形状がブローニードル1を挿入するパリソン側面まで達しているので、後に溶着によって部品を組み付ける時に、切り裂き部分の強度が低下する可能性がある。したがって、切裂かれていない部分を含むことにより、溶着によって部品を組み付ける時の溶着強度を高めることができる。
【0055】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0056】
本発明には、請求項4に加え、以下の構成が含まれる。
前記尖端部の前記軸線に対する角度は、前記尖端部に接続する前記長剣切裂エッジの前記軸線に対する角度より小さい請求項3に記載のブローニードル。
【0057】
本発明には、請求項5に加え、以下の構成が含まれる。
前記短剣部の前記長剣部側面部との接続部分には、前記軸線に対する角度が、前記軸線に対する前記短剣切裂エッジの角度より小さい短剣尖端部が形成され、前記短剣切裂エッジは、前記短剣尖端部に接続して形成される請求項3に記載のブローニードル。
【0058】
本発明には、請求項6に加え、以下の構成が含まれる。
前記長剣切裂エッジと前記筒部の前記周壁との間には、長剣非エッジ部が形成され、前記短剣切裂エッジと前記筒部の前記周壁との間には、短剣非エッジ部が形成されている請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載のブローニードル。
【符号の説明】
【0059】
1 筒部
2 フロアパネル
3 パリソン切裂部
5 軸線
21 周壁
30 長剣部
31 尖端部
32 長剣切裂エッジ
34 長剣尖部
35 長剣尖部起点
36 長剣尖部先端部
39 長剣非エッジ部
40 短剣部
41 短剣切裂エッジ
42 短剣尖部
43 短剣尖部起点
44 短剣尖部先端部
45 短剣非エッジ部
46 短剣尖端部