(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164923
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】吸音材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/165 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G10K11/165
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080650
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA02
5D061AA06
5D061AA29
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】粒状体が偏在しにくい吸音材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】吸音材は、吸音性を有する複数の粒状体10を備えている。各粒状体10は、粒状の芯部12、及び芯部12を覆う被覆部14を有している。被覆部14は、水分を吸収すると粘着性を発揮する接着性材料を含有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸音性を有する複数の粒状体を備え、
前記各粒状体は、
粒状の芯部と、
水分を吸収すると粘着性を発揮する接着性材料を含有し、前記芯部を覆う被覆部とを有することを特徴とする吸音材。
【請求項2】
請求項1に記載の吸音材において、
前記被覆部に占める前記接着性材料の重量割合は、5%以上である吸音材。
【請求項3】
請求項2に記載の吸音材において、
前記被覆部に占める前記接着性材料の重量割合は、10%以上である吸音材。
【請求項4】
請求項1に記載の吸音材において、
前記接着性材料は、吸水性ポリマーである吸音材。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の吸音材において、
前記被覆部は、前記接着性材料以外の有機材料を含有する吸音材。
【請求項6】
請求項5に記載の吸音材において、
前記被覆部は、実質的に、前記接着性材料及び前記有機材料のみからなる吸音材。
【請求項7】
請求項5に記載の吸音材において、
前記有機材料は、紙類である吸音材。
【請求項8】
請求項1乃至4の何れかに記載の吸音材において、
前記芯部は、粉体状の材料が押し固められた造粒物からなる吸音材。
【請求項9】
請求項1乃至4の何れかに記載の吸音材において、
前記各粒状体は、有機物のみからなる吸音材。
【請求項10】
吸音性を有する複数の粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、
前記粒状体形成工程は、
前記各粒状体を構成する粒状の芯部を形成する芯部形成工程と、
水分を吸収すると粘着性を発揮する接着性材料を含有し、前記芯部を覆う被覆部を形成する被覆部形成工程とを含むことを特徴とする吸音材の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の吸音材の製造方法において、
前記被覆部形成工程においては、前記被覆部に占める前記接着性材料の重量割合が5%以上となるように、当該被覆部を形成する吸音材の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の吸音材の製造方法において、
前記被覆部形成工程においては、前記被覆部に占める前記接着性材料の重量割合が10%以上となるように、当該被覆部を形成する吸音材の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の吸音材の製造方法において、
前記接着性材料は、吸水性ポリマーである吸音材の製造方法。
【請求項14】
請求項10乃至13の何れかに記載の吸音材の製造方法において、
前記被覆部形成工程においては、前記接着性材料以外の有機材料を含有する前記被覆部を形成する吸音材の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の吸音材の製造方法において、
前記被覆部形成工程においては、実質的に前記接着性材料及び前記有機材料のみからなる前記被覆部を形成する吸音材の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の吸音材の製造方法において、
前記有機材料は、紙類である吸音材の製造方法。
【請求項17】
請求項10乃至13の何れかに記載の吸音材の製造方法において、
前記芯部形成工程においては、粉体状の材料が押し固められた造粒物からなる前記芯部を形成する吸音材の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の吸音材の製造方法において、
前記芯部形成工程においては、押出造粒により前記芯部を形成する吸音材の製造方法。
【請求項19】
請求項10乃至13の何れかに記載の吸音材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、有機物のみからなる前記各粒状体を形成する吸音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸音材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された吸音材は、複数の粒状体からなり、吸音体を構成している。各粒状体は、無機材料からなる。吸音体は、鋼製パネル等の硬質体、又は布製袋等の軟質体に複数の粒状体が充填されてなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の吸音材は、粒状体が音のエネルギーを吸収することにより、防音に効果を発揮する。しかしながら、硬質体又は軟質体の中で複数の粒状体が偏在すると、粒状体が少ない部分において音のエネルギーが吸収されにくくなってしまう。このことは、従来の吸音材の防音効果を低下させる要因であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、粒状体が偏在しにくい吸音材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による吸音材は、吸音性を有する複数の粒状体を備え、上記各粒状体は、粒状の芯部と、水分を吸収すると粘着性を発揮する接着性材料を含有し、上記芯部を覆う被覆部とを有することを特徴とする。
【0007】
この吸音材においては、被覆部を有する粒状体が設けられている。被覆部には、水分を吸収すると粘着性を発揮する接着性材料が含有されている。このため、被覆部を水で濡らすことにより、複数の粒状体を相互に接着させることができる。これにより、各粒状体が自由に移動できなくなるため、粒状体が偏在しにくいようにすることができる。
【0008】
また、本発明による吸音材の製造方法は、吸音性を有する複数の粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、上記粒状体形成工程は、上記各粒状体を構成する粒状の芯部を形成する芯部形成工程と、水分を吸収すると粘着性を発揮する接着性材料を含有し、上記芯部を覆う被覆部を形成する被覆部形成工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
この製造方法においては、被覆部を有する粒状体が形成される。被覆部には、水分を吸収すると粘着性を発揮する接着性材料が含有されている。このため、製造後の吸音材においては、被覆部を水で濡らすことにより、複数の粒状体を相互に接着させることができる。これにより、各粒状体が自由に移動できなくなるため、粒状体が偏在しにくいようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粒状体が偏在しにくい吸音材、及びその製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による吸音材の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による吸音材の一実施形態を示す模式図である。吸音材1は、複数の粒状体10を備えている。粒状体10は、吸音性を有している。すなわち、粒状体10は、音のエネルギーを吸収する性質を有している。吸音材1は、例えば、建物、道路もしくは鉄道、又はそれらの工事現場における防音対策に使用される。建物の防音対策に使用される場合、吸音材1は、例えば、壁(例えば戸境壁)の中や床の下に配設される。
【0014】
図2は、粒状体10を示す模式図である。粒状体10は、粒状をしている。かかる粒状の形状としては、例えば、球、円柱、又は楕円体が挙げられる。各粒状体10の粒径は、例えば、5mm以上30mm以下である。ここで、粒状体10の粒径は、当該粒状体10を内包し得る最小の球の直径として定義される。各粒状体10は、有機物のみからなることが好ましい。
【0015】
各粒状体10は、芯部12、及び被覆部14を有している。芯部12は、粒状に成形された造粒物である。本実施形態において芯部12は、粉体状の材料が押し固められた造粒物からなる。芯部12は、吸水性を有していてもよいし、吸水性を有していなくてもよい。芯部12は、有機材料を含有している。有機材料としては、例えば、紙類、植物類、プラスチック類、又は有機汚泥類が挙げられる。
【0016】
紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙(紙粉)の他にも、フラッフパルプ、塩ビ壁紙由来の紙(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生する紙)、石膏ボード由来の紙(石膏ボードの製造時又は分級時に発生する紙)、又は衛生用品由来の紙(紙を含む衛生用品の製造時又は分級時に発生する紙)を用いることができる。紙を含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生用紙(ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル等)が挙げられる。
【0017】
植物類としては、例えば、木粉、大鋸屑、又は植物性残渣(茶殻、オカラ等)を用いることができる。プラスチック類としては、例えば、通常のプラスチックの他にも、塩ビ壁紙由来のプラスチック(塩ビ壁紙の製造時又は分級時に発生するプラスチック)、又は衛生用品由来のプラスチック(プラスチックを含む衛生用品の製造時又は分級時に発生するプラスチック)を用いることができる。プラスチックを含む衛生用品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、又は衛生マスクが挙げられる。有機汚泥類としては、例えば、製紙スラッジ、又はパルプスラッジを用いることができる。
【0018】
芯部12は、有機材料を主材料としている。ここで、芯部12の主材料とは、芯部12を構成する1又は2以上の材料(芯部材料)のうち、当該芯部12に占める重量割合が最大のものをいう。芯部12は、実質的に有機材料のみからなることが好ましい。「実質的に」とは、粒状体10の吸音性を阻害しない限り、防腐剤、殺菌剤等の他の材料が芯部12に添加されていてもよいという趣旨である。その場合であっても、芯部12に占める他の材料の重量割合は1%以下(すなわち、有機材料の重量割合が99%以上)であることが好ましい。
【0019】
被覆部14は、芯部12を覆っている。被覆部14は、各芯部12の表面の全体を覆っていてもよいし、各芯部12の表面の一部のみを覆っていてもよい。被覆部14の厚みは、例えば0.3mm以上3mm以下である。被覆部14は、接着性材料を含有している。接着性材料は、水分を吸収すると粘着性を発揮する。かかる接着性材料としては、例えば吸水性ポリマーが挙げられる。吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系吸水性ポリマーを用いることができる。被覆部14は、吸水性を有している。
【0020】
被覆部14は、接着性材料以外の有機材料を含有している。被覆部14は、接着性材料を主材料としてもよいし、有機材料を主材料としてもよい。ここで、被覆部14の主材料とは、被覆部14を構成する1又は2以上の材料(被覆材料)のうち、当該被覆部14に占める重量割合が最大のものをいう。また、例えば接着性材料及び有機材料の重量割合が何れも50%である場合のように、被覆部14は、接着性材料及び有機材料の双方を主材料としてもよい。
【0021】
被覆部14は、実質的に、接着性材料及び有機材料のみからなることが好ましい。例えば、被覆部14に占める接着性材料、及び有機材料の重量割合は、それぞれ、5%以上95%以下(好ましくは10%以上30%以下)、及び5%以上95%以下(好ましくは70%以上90%以下)である。被覆部14が複数の有機材料を含有する場合、それらの重量割合の合計をもって「有機材料の重量割合」とする。
【0022】
続いて、本発明による吸音材の製造方法の一実施形態として、吸音材1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、粒状体形成工程を含んでいる。粒状体形成工程は、複数の粒状体10を形成する工程である。粒状体形成工程は、芯部形成工程、及び被覆部形成工程を含んでいる。芯部形成工程は、各粒状体10を構成する芯部12を形成する工程である。芯部形成工程においては、造粒装置を用いて粉体状の芯部材料を造粒することにより、複数の芯部12を形成する。造粒は、湿式造粒であることが好ましい。湿式造粒としては、例えば押出造粒が挙げられる。押出造粒により芯部12を形成する場合、造粒装置として押出造粒機が用いられる。
【0023】
押出造粒機は、芯部材料を通過させる複数の貫通孔が設けられたダイスを有する。押出造粒機においては、ダイスの表面側に供給された芯部材料がローラー等により貫通孔に押し込まれる。当該芯部材料は、貫通孔を通過してダイスの裏面側に押し出された後、カッター等により適宜の長さに切断される。これにより、柱状の芯部12が形成される。造粒に先立って、芯部材料には、粉砕、混錬、加水等の前処理が必要に応じて行われる。
【0024】
被覆部形成工程は、被覆部14を形成する工程である。被覆部形成工程においては、コーティング装置等を用いて、各芯部12の表面に粉体状の被覆材料を付着させることにより、被覆部14を形成する。被覆材料の付着は、例えば、散布又は噴霧により行うことができる。その後、篩分け(分粒)、乾燥等の後処理が必要に応じて行われる。以上により、複数の粒状体10からなる吸音材1が得られる。
【0025】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、被覆部14を有する粒状体10が形成される。被覆部14には、水分を吸収すると粘着性を発揮する接着性材料が含有されている。このため、被覆部14を水で濡らすことにより、複数の粒状体10を相互に接着させることができる。これにより、各粒状体10が自由に移動できなくなるため、粒状体10が偏在しにくいようにすることができる。したがって、粒状体10が偏在しにくい吸音材1、及びその製造方法が実現されている。
【0026】
このように、吸音材1によれば、接着剤等を別途用意しなくても、複数の粒状体10どうしを接着させることができる。また、吸音材1においては、被覆部14を水で濡らす前、複数の粒状体10は相互に接着していない。このため、複数の粒状体10どうしが予め接着している場合に比して、施工の自由度を高めることができる。例えば、複数の粒状体10を所定の場所(壁の中等)に配設した後に、霧吹き等を用いて粒状体10に水をかけることにより、施工時に粒状体10どうしを接着させることができる。
【0027】
接着性材料の含有量を多くした方が、複数の粒状体10どうしを強固に接着するのに有利である。かかる観点から、被覆部14に占める接着性材料の重量割合は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
【0028】
吸水性ポリマーは、水分を吸収すると膨潤する性質を有している。このため、接着性材料として吸水性ポリマーを用いた場合、被覆部14を水で濡らすと、粒状体10の表面の広範囲に接着性材料(吸水性ポリマー)が露出する。このことも、複数の粒状体10どうしを強固に接着するのに有利となる。
【0029】
被覆部14は、接着性材料以外の有機材料を含有している。このため、粒状体10は、焼却処分することが可能である。このことは、使用済みの吸音材1の処分の便宜に資する。
【0030】
被覆部14が実質的に接着性材料及び有機材料のみからなる場合、粒状体10の偏在を抑制しつつ、粒状体10の焼却処分への適合性を高めるのに有利である。
【0031】
紙類は、吸水性の高い材料である。このため、被覆部14が有機材料として紙類を含有する場合、被覆部14を濡らしたときに水分を接着性材料まで円滑に導くことができる。
【0032】
芯部12は、粉体状の材料(芯部材料)が押し固められた造粒物からなる。かかる造粒物の表面や内部には、多数の空隙が不規則に存在する。これにより、粒状体10に入射した音のエネルギーが減衰されやすくなるため、粒状体10の吸音性を高めることができる。
【0033】
押出造粒により芯部12を形成する場合、粉体状の材料が押し固められた造粒物である芯部12を短時間で大量に形成することができる。
【0034】
粒状体10が有機物のみからなる場合、焼却処分に特に適した粒状体10を得ることができる。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、被覆部14が有機材料を含有する場合を例示した。しかし、被覆部14は、有機材料を含有しなくてもよい。例えば、被覆部14は、接着性材料のみからなってもよいし、接着性材料及び無機材料のみからなってもよい。無機材料としては、例えば珪藻土が挙げられる。
【0036】
上記実施形態においては、芯部12が有機材料を主材料とする場合を例示した。しかし、芯部12は、無機材料を主材料としてもよい。その場合、芯部12は、無機材料及び有機材料からなってもよいし、無機材料のみからなってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 吸音材
10 粒状体
12 芯部
14 被覆部