(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164925
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】配管補修用テープ及び配管補修方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/168 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
F16L55/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080657
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】小森 敦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 学
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025EB07
3H025EC01
3H025ED01
(57)【要約】
【課題】
施工時に想定される種々の工具の落下による衝撃に耐えうるような、より高い耐衝撃性を備える配管補修用テープの提供を目的とする。
【解決手段】
本発明は、配管10の補修箇所11を封止した封止部12を覆うように巻回される配管補修用テープ1であって、テープ形状のシリコーンゴム2と、シリコーンゴム2の内部に備えられたメタルメッシュ3と、を備え、シリコーンゴム2が自己融着性シリコーンゴムであることを特徴とする、配管補修用テープ1、および配管補修用テープ1を用いて配管10を補修する配管補修方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の補修箇所を封止した封止部を覆うように巻回される配管補修用テープであって、
テープ形状のシリコーンゴムと、
前記シリコーンゴムの内部に備えられたメタルメッシュと、を備え、
前記シリコーンゴムは、自己融着性シリコーンゴムであることを特徴とする、配管補修用テープ。
【請求項2】
前記メタルメッシュがメリヤス編みであることを特徴とする、請求項1に記載の配管補修用テープ。
【請求項3】
前記メタルメッシュを前記シリコーンゴムの内部に二重に備えることを特徴とする、請求項2に記載の配管補修用テープ。
【請求項4】
前記メタルメッシュを含むテープ全体の厚みが、前記メタルメッシュの厚みより0.1mm以上厚く、かつ3.5mm以下であることを特徴とする、請求項3に記載の配管補修用テープ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の配管補修用テープを用いて配管を補修する方法であって、
前記配管の補修箇所を封止した封止部を覆うように前記配管補修用テープを巻回する配管補修用テープ巻回工程を含む、配管補修方法。
【請求項6】
前記配管補修用テープ巻回工程に先立ち、
前記封止部の上に、シリコーンゴム製の内側テープを巻回する内側テープ巻回工程を行い、
前記配管補修用テープ巻回工程は、前記内側テープの上に、前記配管補修用テープを巻回する工程であることを特徴とする、請求項5に記載の配管補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管補修用テープ及び配管補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス管等の配管に開いた穴を補修する際、パテ等で穴を封止した封止部を覆うように自己融着性シリコーンゴムテープ(以後、内側テープという。)を用いることが広く知られている(特許文献1を参照。)。また、内側テープの巻回後に、衝撃等から封止部と内側テープとを守るため、内側テープを覆うようにグラスファイバー製の外層保護材を巻回することが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業員が、補修作業後に配管上へ工具を誤って落下させてしまうことがある。上記の外層保護材は、軽い工具の落下に対して一定の耐衝撃性を有するが、モンキーレンチ等のような重い工具を落下した場合には、衝撃を吸収しきれずに内側テープを損傷させる可能性があり、更なる改善が必要であった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、施工時に想定される種々の工具の落下による衝撃に耐えうるような、より高い耐衝撃性を備える配管補修用テープの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る配管補修用テープは、配管の補修箇所を封止した封止部を覆うように巻回される配管補修用テープであって、テープ形状のシリコーンゴムと、前記シリコーンゴムの内部に備えられたメタルメッシュと、を備え、前記シリコーンゴムは、自己融着性シリコーンゴムであることを特徴とする。
(2)上記(1)の実施形態に係る配管補修用テープにおいて、好ましくは、前記メタルメッシュがメリヤス編みであることを特徴としてもよい。
(3)上記(2)の実施形態に係る配管補修用テープにおいて、好ましくは、前記メタルメッシュを前記シリコーンゴムの内部に二重に備えることを特徴としてもよい。
(4)上記(3)の実施形態に係る配管補修用テープにおいて、好ましくは、前記メタルメッシュを含むテープ全体の厚みが、前記メタルメッシュの厚みより0.1mm以上厚く、かつ3.5mm以下であることを特徴としてもよい。
(5)上記目的を達成するための一実施形態に係る配管補修方法は、上記(1)から(4)のいずれかの実施形態に係る配管補修用テープを用いて配管を補修する方法であって、前記配管の補修箇所を封止した封止部を覆うように前記配管補修用テープを巻回する配管補修用テープ巻回工程を含む。
(6)上記(5)の実施形態に係る配管補修方法において、好ましくは、前記配管補修用テープ巻回工程に先立ち、前記封止部の上に、シリコーンゴム製の内側テープを巻回する内側テープ巻回工程を行い、前記配管補修用テープ巻回工程は、前記内側テープの上に、前記配管補修用テープを巻回する工程であることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施工時に想定される種々の工具の落下による衝撃に耐えうるような、より高い耐衝撃性を備える配管補修用テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る配管補修用テープの概略斜視図(1A)および当該斜視図中のX-X線から見た配管補修用テープの概略平面図(1B)を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る配管補修方法の概略を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態の変形例に係る配管補修方法の概略を示す。
【
図5】
図5は、実施例1,実施例2,比較例1,および比較例2の耐衝撃性試験の結果を示す。
【
図6】
図6は、実施例3,実施例4および比較例1の耐衝撃性試験の結果を示す。
【
図7】
図7は、追従性試験後の各テープの巻回後の写真と結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせのすべてが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る配管補修用テープの概略斜視図(1A)および当該斜視図中のX-X線から見た配管補修用テープの概略平面図(1B)を示す。
図2は、
図1のA-A線で切断した断面図を示す。
【0011】
この実施形態に係る配管補修用テープ1は、
図1および
図2に示すように、テープ形状のシリコーンゴム2と、シリコーンゴム2の内部に備えられたメタルメッシュ3とを備える、自己融着性テープである。配管補修用テープ1は、好ましくは、軸を中心に巻回された状態で流通される。配管補修用テープ1は、その片面に、使用時に剥がすことのできるセパレータを備えていても良い。メタルメッシュ3を含む配管補修用テープ1全体の厚みは、特に限定されないが、融着力を高める観点から、メタルメッシュ3の厚みより0.1mm以上厚く、かつ3.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以上3.5mm以下であることがより好ましく、1.3mm以上3.5mm以下であることがさらに好ましく、2.5mm以上3.5mm以下であることが特に好ましい。メタルメッシュ3の厚みについては、後述する。配管補修用テープ1全体の幅は、特に限定されないが、好ましくは15~200mm、より好ましくは25~60mmである。
【0012】
(配管補修用テープの製造工程)
配管補修用テープ1に用いられるシリコーンゴム2は、硬化性シリコーンゴム組成物をテープ形状に成形して用いる。配管補修用テープ1は、硬化性シリコーンゴム組成物の内部に埋没するようにメタルメッシュ3を配置し、成形することで製造される。成形法は、特に限定されないが、プレス加工、カレンダー成形または長手方向にエンドレスで製造ができる押出成形方法が好ましい。押出成形方法を行う際は、中間部にメタルメッシュ3を挟持可能なダイスを用いてもよい。成形後、硬化性シリコーンゴム組成物の硬化を行う。硬化性シリコーンゴム組成物の硬化方法は、特に限定されないが、常圧熱気加硫またはプレス中に熱硬化させることが好ましい。押出成形またはカレンダー成形を行う場合、硬化条件は、用いる成形方法における公知の条件でよく、好ましくは105~450℃にて2秒~10分、より好ましくは110~450℃にて3秒~60分、さらに好ましくは5秒~45分とすることができる。また、得られるシリコーンゴム2中に残存している低分子シロキサン成分の低減や、シリコーンゴム2中の有機過酸化物の分解物の除去等の目的で、ポストキュア(2次キュア)を行ってもよい。ポストキュアは、200℃以上、好ましくは200~250℃のオーブン内等で、1時間以上、好ましくは1~70時間程度、より好ましくは1~10時間程度、行うことができる。
【0013】
(硬化性シリコーンゴム組成物)
配管補修用テープ1に用いられる硬化性シリコーンゴム組成物は、硬化により重合度を増してシリコーンゴム2となる組成物である。硬化性シリコーンゴム組成物は、半固形状の組成物であり、加硫化を行うことで完全硬化する性質を持つ。硬化性シリコーンゴム組成物は、硬化後には熱安定性、耐候性、良好な耐水性、優れた可撓性を有するシール剤として用いられる。硬化性シリコーンゴム組成物は、付加硬化型、縮合硬化型、または過酸化物硬化型のものであってもよいが、熱で硬化する付加硬化型、または過酸化物硬化型のものが好ましい。
【0014】
(シリコーンゴム)
テープ形状のシリコーンゴム2は、自己融着性シリコーンゴムである。自己融着性シリコーンゴムを用いる配管補修用テープ1は、シリコーンゴム2同士の自己融着により、補修施工時に配管10や内側テープ13との接着工程を不要とし、巻回された直後から保護機能を発揮可能である。
【0015】
(自己融着性シリコーンゴム)
自己融着性シリコーンゴムは、以下の化学式(I)で示されるジオルガノポリシロキサンと、ホウ酸化合物と、を含有する硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させた硬化物である。
【0016】
【化1】
(式(I)におけるR
1は、炭素数1~10の炭化水素基である。式(I)中のnは、1.98~2.02である。)
【0017】
式(I)におけるR1としては、炭素数1~10、好ましくは1~8の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等が挙げられる。また、R1としては、前記炭化水素基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基等で置換された基でもよい。上記シリコーン組成物を硬化させる際に、後述の有機過酸化物で硬化を促進させる場合には、R1がアルケニル基又はアルケニル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基で置換された基であるのが好ましい。式(I)におけるnは、1.98~2.02である。nがこの範囲内にあると、より良い自己融着性が得られる。
【0018】
ジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、100~100,000,000cStであることが好ましく、100,000~10,000,000cStであることがより好ましい。ジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が前記範囲内であれば、硬化前の取り扱い性と硬化後の機械的物性に優れる。
【0019】
ホウ酸化合物としては、ホウ酸、無水ホウ酸の誘導体等が挙げられる。ホウ酸としては、例えば、無水ホウ酸、ピロホウ酸、オルトホウ酸等が挙げられる。無水ホウ酸の誘導体としては、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、トリメトキシボロキシン等が挙げられる。また、ホウ酸化合物として、ジメチルジメトキシシラン又はジメチルジエトキシシラン等のオルガノアルコキシシランと無水ホウ酸とを縮合させて得たポリオルガノボロシロキサンを用いることもできる。ホウ酸化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
硬化性シリコーンゴム組成物におけるホウ酸化合物の含有割合は、ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、0.5~30質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。ホウ酸化合物の含有割合が前記下限値以上であれば、充分な自己融着性を確保でき、前記上限値以下であれば、機械的物性の低下を抑制することができる。
【0021】
硬化性シリコーンゴム組成物は、当該組成物の硬化を促進するために、架橋剤として有機過酸化物を含んでもよい。有機過酸化物としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。このうち、ジアシルパーオキサイドが好ましい。これら有機過酸化物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
硬化性シリコーンゴム組成物における有機過酸化物の含有割合は、ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.06~8質量部であることがより好ましい。有機過酸化物の配合量が、下限値より少ないと、加硫反応が十分に進行せず、硬度低下やゴム強度不足等の物性悪化を生じることがあり、上限値より多いと、経済的に不利であるばかりでなく、他の物性に悪影響を生じることがある。
【0023】
(メタルメッシュ)
メタルメッシュ3は、金属製のメッシュである。メタルメッシュ3は、配管補修用テープ1の追従性の観点から、メリヤス編みで編み込まれたものが好ましい。メリヤス編みのメタルメッシュ3は、網目の伸縮が可能であるため、配管補修用テープ1の追従性をより向上させる。追従性に優れた配管補修用テープ1は、巻回時に端部に隙間を生じにくく、配管10に密着するため、巻回箇所をより強固に保護可能である。メタルメッシュ3は、
図2に示すように、その全部または一部を、テープ形状のシリコーンゴム2の内部に埋没している。また、メタルメッシュ3は、シリコーンゴム2の内部に、好ましくは二重に重ねて備えられている。メタルメッシュ3は、一重の状態または三重以上に重ねてシリコーンゴム2の内部に備えられても良い。この実施形態において、メタルメッシュ3はシリコーンゴム2の内部に二重で重ねられた状態で存在する。
【0024】
メタルメッシュ3を構成する材料は、特に限定されないが、好ましくは、鉄、ステンレススチール、銅またはアルミニウムであり、より好ましくはステンレススチールである。また、メタルメッシュ3の線径は、特に限定されないが、好ましくは0.18mm以上、より好ましくは0.2mm以上である。
【0025】
メタルメッシュ3の厚みは、特に限定されないが、0.020mm以上1.0mm以下であることが好ましく、0.045mm以上0.60mm以下であることがより好ましく、0.1mm以上0.3mm以下が特に好ましい。また、メタルメッシュ3の幅は、特に限定されないが、好ましくは10~190mmであり、より好ましくは20~55mmである。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係る配管補修方法の概略を示す。
【0027】
この実施形態に係る配管補修方法は、配管10の補修箇所11を封止した封止部12を覆うように配管補修用テープ1を巻回する配管補修用テープ巻回工程を含む。以下、図面を参照しながら、配管補修方法について説明する。
【0028】
(配管補修用テープ巻回工程)
この工程は、配管10に開いた穴などの補修箇所11を封止した封止部12に対して、当該封止部12を覆うように配管補修用テープ1を巻回する工程である。巻回は、配管補修用テープ1を封止部12に一周巻回後、前周の配管補修用テープ1の幅の半分を覆うように行っていく、いわゆるハーフラップの形が好ましい。配管補修用テープ1を巻回する回数は、特に限定されないが、好ましくは3回以上である。この実施形態では、巻回の回数を3回としているが、巻回の回数を1回、2回または4回以上としても良い。巻回を3回以上行う場合は、補修箇所11を中心として、封止部12の一端から1回目を行い、その終端部から2回目を同様に行って封止部12を覆った後、補修箇所11上の配管補修用テープ1を覆うように3回目以降を更に行うことが好ましい。補修箇所11上の配管補修用テープ1が厚くなるため、耐衝撃性をより向上させることができる。
【0029】
図4は、
図3に示す配管補修方法と別の方法の概略を示す。
【0030】
図4に示す配管補修方法は、先に説明した配管補修用テープ巻回工程の前に、封止部12の上に、シリコーンゴム2製の内側テープ13を巻回する内側テープ巻回工程を含む。この方法の場合は、既に巻回された内側テープ13を覆うように配管補修用テープ1を巻回する。
【0031】
(内側テープ巻回工程)
この工程は、配管10に開いた穴などの補修箇所11を封止した封止部12に対して、当該封止部12の上から内側テープ13を巻回する工程である。内側テープ13の種類は、特に限定されないが、自己融着性テープが好ましく、自己融着性シリコーンゴムテープがより好ましい。巻回は、内側テープ13の幅が元の半分程度になるまで、引っ張るなどして伸ばし、上述した配管補修用テープ1と同様にハーフラップで行うのが好ましい。内側テープ13の巻回回数は、好ましくは3回であるが、3回に限定されず、1回、2回または4回以上でも良い。巻回を3回以上行う場合は、上述した配管補修用テープ1と同様に行うのが好ましい。
【実施例0032】
次に、本発明の実施例について、比較例と比較をしながら説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
1.原料
(1)硬化性シリコーンゴム組成物
テープ形状のシリコーンゴムの原料としては、過酸化物硬化型の硬化性シリコーンゴム組成物を用いた。
(2)メタルメッシュ
配管補修用テープ内のメタルメッシュには、曙金網産業株式会社製および株式会社ベスト製のメリヤス編みメッシュ(ステンレススチール(SUS304)製、線径0.2mm)を用いた。メタルメッシュ自体の厚みは、0.2mmのものを用いた。
【0034】
2.配管補修用テープの製造
硬化性シリコーンゴム組成物の中心にメタルメッシュを設置後、さらに上からメタルメッシュが埋没するように硬化性シリコーンゴム組成物を加えた。プレス加工でテープ形状に成形し、プレス内で硬化性シリコーンゴム組成物をシリコーンゴムに熱硬化させることで、配管補修用テープを製造した。硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させるため、有機過酸化物架橋剤として、パラメチルベンゾイルパーオキサイドを用いた。有機過酸化物架橋剤は、ジオルガノポリシロキサン100質量部に対して、1.2質量部となるように加えた。後述する配管補修用テープ全体の厚みは、プレス前の硬化性シリコーンゴム組成物の添加量を変えることで調整した。
【0035】
3.耐衝撃性比較試験
外径101.6mm(呼び径90A)のガス用配管に、内側テープ(長さ300mm)を3回巻回した。さらに、硬化した内側テープの上から、衝撃耐性を有する配管補修用テープまたは外層保護材(以後、外側テープという。)を巻回した。外側テープの巻回回数は2~5回のいずれかとした。巻回後、23℃、湿度40%の条件下で60分放置した。なお、本願発明に係る配管補修用テープは、自己融着性のシリコーンゴムテープであるため、本来であれば硬化のための放置時間を必要とせず、巻回直後から保護機能を発揮する。本試験では条件を統一するため、配管補修用テープについても、同様の条件で巻回後の放置を行った。60分経過後、配管を本発明者ら独自の試験装置にセットし、種々の工具を試験装置上に取り付けた。その後、配管の外側テープ巻回部分に向けて、高さ1.5mから工具を鉛直方向に自然落下させた。落下後に、工具の落下箇所に巻回されていた外側テープを剥がし、当該外側テープの直下に巻回された内側テープの傷の有無を評価した。試験に用いた工具を、以下の表1に示す。
【0036】
【0037】
図5は、実施例1,実施例2,比較例1,および比較例2の耐衝撃性試験の結果を示す。
図6は、実施例3,実施例4および比較例1の耐衝撃性試験の結果を示す。
図5および
図6の「巻き数」は、外側テープの巻回回数を示す。各写真は、外側テープの巻き数を2回とし、モンキーレンチを落下させた後の内側テープの外観を撮影したものである。各工具の試験結果は、内側テープが切れていた場合を×、切れていなかった場合を○と表記した。
【0038】
(実施例1)
内側テープとして、信越ポリマー株式会社製のポリママルチテープ(登録商標)Strong(厚み1.3mm、幅50mm)を用い、その上から外側テープとして本実施形態に係る配管補修用テープ(全体の厚み1.3mm、メタルメッシュ一重)を巻回し、外側テープ上に各工具を落下させた。メタルメッシュは曙金網産業株式会社製のものを用いた。
【0039】
(実施例2)
配管補修用テープ内部のメタルメッシュを二重としたほか、メタルメッシュは株式会社ベスト製のものを用いた。それ以外は実施例1と同じ条件で試験を行った。
【0040】
(実施例3)
配管補修用テープ全体の厚みを2.5mmとした以外は、実施例2と同じ条件で試験を行った。
【0041】
(実施例4)
配管補修用テープ全体の厚みを3.5mmとした以外は、実施例2と同じ条件で試験を行った。
【0042】
(比較例1)
内側テープとして、GTG ENGINEERING社製のLLFA(登録商標)テープ(厚み1.0mm、幅50mm)を用い、その上から外側テープとしてGTG ENGINEERING社製の外層保護材である、Fiberarmour(登録商標)(厚み1.0mm)を巻回した。巻回後、23℃、湿度40%で60分放置し、外側テープの硬化を行った。硬化後、外側テープ上に各種工具を落下させた。
【0043】
(比較例2)
外側テープとして、内部のメタルメッシュをガラスクロス#8((株)ニットー製)に変更した外層保護材(全体の厚み2.0mm)を用いた。それ以外は実施例1と同じ条件で試験を行った。
【0044】
(結果)
実施例1~4に用いた各配管補修用テープは、2回巻回した時点で、すべての工具の落下に対して内側テープの切れを抑制した。特にモンキーレンチを落下させた場合は、実施例1~4の各配管補修用テープのみ内側テープの切れを2回の巻回で抑制可能であった。このことから、本願発明に係る配管補修用テープは、モンキーレンチのような重い工具を含む種々の工具の落下に対して、より高い耐衝撃性を備えていると考えられる。
【0045】
4.追従性試験
本発明に係る配管補修用テープについて、追従性試験を行った。後述する種々の内部素材を硬化性シリコーンゴム組成物に埋め込んでプレス加工及び熱硬化を行い、厚み1.3mm又は2mmの外側テープを製造した。それぞれの外側テープを、長さ100mm、幅50mmにカットし、上記の耐衝撃性試験と同条件で内側テープを巻回した配管に巻き数を2回として巻回した。各外側テープについて、当該巻回時の追従性を定性的に評価した。
【0046】
図7は、追従性試験後の各外側テープの巻回後の写真と結果を示す。追従性の評価は、配管等に隙間なく巻回可能であったものを最良好とし、表中では○と表記した。同様に、配管等に全く密着せず、隙間が生じたものを最不良として×、隙間が生じた箇所はあるもののある程度配管等に密着したものをそれらの中間として△とそれぞれ表記した。
【0047】
(実施例5)
外側テープは、厚みを2mmとした以外は、実施例2に記載の配管補修用テープを用いた。内部素材のメタルメッシュはベスト社製のものを使用した。
【0048】
(比較例3)
外側テープは、厚みを1.3mmとした以外は、比較例2に記載のものを用いた。
【0049】
(比較例4)
外側テープの内部素材として、メリヤス編みでない通常の#40メッシュ(曙金網社製、ステンレススチール(SUS)製、線径0.21mm)を用い、厚み1.3mmの外側テープを作成した。
【0050】
(比較例5)
厚みを2mmとした以外は、比較例4と同様の条件で作成した。
【0051】
(比較例6)
外側テープの内部素材として、メリヤス編みでない通常の#70メッシュ(曙金網社製、ステンレススチール(SUS)製、線径0.12mm)を用い、厚み1.3mmの外側テープを作成した。
【0052】
(比較例7)
厚みを2mmとした以外は、比較例6と同様の条件で作成した。
【0053】
(結果)
実施例2および5に係る本願発明の配管補修用テープは、各比較例の外側テープと比較して、配管だけでなく配管補修用テープ同士が重なった箇所でも隙間なく密着していた。また、テープ全体の厚みを変更しても同様に隙間なく密着可能であった。このことから、本願発明に係る配管補修用テープは、より優れた追従性を備えていると考えられる。