(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164926
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ダンパー装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/14 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
F16F9/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080658
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】中屋 一正
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA41
3J069CC40
3J069DD47
3J069DD50
3J069EE01
(57)【要約】
【課題】ハウジング内に形成されている複数の個室間での流動体の漏れまたは侵入を抑えて減衰力の低下を抑制することができるダンパー装置を提供する。
【解決手段】ロータリダンパであるダンパー装置100は、ハウジング本体102に蓋体120とロータ130とが組み付けられている。ダンパー装置100は、蓋体120とハウジング101との合わせ面である第1部分(蓋体取付部104と内側面121aとの合わせ面)、ハウジング101が軸体131を回転自在に支持する第2部分(ロータ支持部115)および蓋体120が軸体131を回転自在に支持する第3部分(ロータ支持部123)における各内室111に面する部分(第1遮断部材収容部110、第2遮断部材収容部115a、第3遮断部材収容部123a)に、同内室111と前記部分との連通を遮断する第1内室遮断部材150、第2内室遮断部材160および第3内室遮断部材170を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する筒体の内部に流動体を液密的に収容する円筒状の内室および同内室内に径方向に沿う壁状に形成されて前記流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンがそれぞれ形成されたハウジングと、
前記内室を液密的に閉塞した状態で前記ハウジングに取り付けられて前記開口部を覆う蓋体と、
一方の端部が前記ハウジングに回転自在に支持されるとともに他方の端部が前記蓋体に回転自在に支持された軸体の外周部に前記内室内を仕切りつつ前記流動体を押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、
前記内室内に前記固定ベーンおよび前記可動ベーンによって形成されるとともに前記可動ベーンの回動方向によって容積が増加または減少する少なくとも2つの個室とを備えたダンパー装置において、
前記蓋体と前記ハウジングとの合わせ面である第1部分、前記ハウジングが前記軸体を回転自在に支持する第2部分および前記蓋体が前記軸体を回転自在に支持する第3部分のうちの少なくとも一つの部分における前記内室に面する部分に、同内室と前記少なくとも一つの部分との連通を遮断する内室遮断部材を備えることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
請求項1に記載したダンパー装置において、
前記内室遮断部材は、
前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分にそれぞれ設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項3】
請求項1に記載したダンパー装置において、
前記内室遮断部材は、
前記第1部分に設けられた第1内室遮断部材を有していることを特徴とするダンパー装置。
【請求項4】
請求項3に記載したダンパー装置において、
前記第1内室遮断部材は、
前記蓋体側に突出して同蓋体に嵌合する蓋体嵌合突起を有していることを特徴とするダンパー装置。
【請求項5】
請求項3に記載したダンパー装置において、
前記第1内室遮断部材は、
前記ハウジング側に突出して同ハウジングに嵌合するハウジング嵌合突起を有していることを特徴とするダンパー装置。
【請求項6】
請求項3に記載したダンパー装置において、
前記ハウジングは、
前記第1内室遮断部材の外側に環状のシール体を収容するシール収容部を有しており、
前記シール収容部は、
前記第1内室遮断部材の外周部が前記シール収容部内に露出するように形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項7】
請求項1に記載したダンパー装置において、
前記内室遮断部材は、
前記内室内に張り出して形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪または二輪の自走式車両または産業用機械器具における回動機構において運動エネルギの減衰装置として用いられるダンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、四輪または二輪の自走式車両または産業用機械器具においては、回動機構において運動エネルギの減衰装置としてダンパー装置が用いられている。例えば、下記特許文献1には、作動油室が形成されたハウジングの外表面に作動油室内の作動油の温度変化による体積変化を補償するために体積変化補償装置としての温度補償機構を備えたダンパー装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたダンパー装置においては、実際に発生させることができる減衰力を設計値(理論値または理想値)に近づけるためにハウジングについて高い液密性(気密性を含む)を確保する製造負担が大きいという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、ハウジングの液密性を確保しつつ製造負担を軽減することができるダンパー装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、開口部を有する筒体の内部に流動体を液密的に収容する円筒状の内室および同内室内に径方向に沿う壁状に形成されて流動体の周方向の流動を妨げる固定ベーンがそれぞれ形成されたハウジングと、内室を液密的に閉塞した状態でハウジングに取り付けられて開口部を覆う蓋体と、一方の端部がハウジングに回転自在に支持されるとともに他方の端部が蓋体に回転自在に支持された軸体の外周部に内室内を仕切りつつ流動体を押しながら回動する可動ベーンを有したロータと、内室内に固定ベーンおよび可動ベーンによって形成されるとともに可動ベーンの回動方向によって容積が増加または減少する少なくとも2つの個室とを備えたダンパー装置において、蓋体とハウジングとの合わせ面である第1部分、ハウジングが軸体を回転自在に支持する第2部分および蓋体が軸体を回転自在に支持する第3部分のうちの少なくとも一つの部分における内室に面する部分に、同内室と前記少なくとも一つの部分との連通を遮断する内室遮断部材を備えることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、ダンパー装置は、蓋体とハウジングとの合わせ面である第1部分、ハウジングが軸体を回転自在に支持する第2部分および蓋体が軸体を回転自在に支持する第3部分のうちの少なくとも一つの部分における内室に面する部分に、同内室と前記少なくとも一つの部分との連通を遮断する内室遮断部材を備えているため、ハウジング内に形成されている複数の個室間での液密性を確保しつつ製造負担を軽減することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、内室遮断部材は、第1部分、第2部分および第3部分にそれぞれ設けられていることにある。
【0009】
これによれば、ダンパー装置は、内室遮断部材が第1部分、第2部分および第3部分のそれぞれに設けられているため、ハウジング内に形成されている複数の個室間での流動体の漏れまたは侵入をより確実に防止して減衰力の低下を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、内室遮断部材は、第1部分に設けられた第1内室遮断部材を有していることにある。
【0011】
これによれば、ダンパー装置は、内室遮断部材が第1部分に設けられた第1内室遮断部材を有しているため、内室に対して面する長さの長い第1部分への流動体の侵入が防止されて個室間での流動体の漏れまたは侵入を抑制して減衰力の低下を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、第1内室遮断部材は、蓋体側に突出して同蓋体に嵌合する蓋体嵌合突起を有していることにある。
【0013】
これによれば、ダンパー装置は、第1内室遮断部材が蓋体側に突出して同蓋体に嵌合する蓋体嵌合突起を有しているため、容易に蓋体をハウジングに対して正確に位置決めして取り付けることができる。また、このダンパー装置によれば、蓋体をハウジングに対して正確に位置決めして取り付けることができるため、蓋体による軸体の軸受け精度を向上させることができる。また、このダンパー装置によれば、第1内室遮断部材によるラビリンス構造によって第1内室遮断部材の外側への流動体の漏出をより確実に防止することもできる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、第1内室遮断部材は、ハウジング側に突出して同ハウジングに嵌合するハウジング嵌合突起を有していることにある。
【0015】
これによれば、ダンパー装置は、第1内室遮断部材がハウジング側に突出して同ハウジングに嵌合するハウジング嵌合突起を有しているため、ハウジング上に第1内室遮断部材を設置した際における位置ズレを防止して組み付け作業の作業性および組み付け精度を向上させることができる。また、このダンパー装置によれば、第1内室遮断部材によるラビリンス構造によって第1内室遮断部材の外側への流動体の漏出をより確実に防止することもできる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、ハウジングは、第1内室遮断部材の外側に環状のシール体を収容するシール収容部を有しており、シール収容部は、第1内室遮断部材の外周部がシール収容部内に露出するように形成されていることにある。
【0017】
これによれば、ダンパー装置は、ハウジングに形成されたシール収容部が第1内室遮断部材の外周部が露出するように形成されているため、第1内室遮断部材およびシール収容部内に収容されるシール体のハウジングへの取り付け作業または取り外し作業を容易にすることができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記ダンパー装置において、内室遮断部材は、内室内に張り出して形成されていることにある。
【0019】
これによれば、ダンパー装置は、内室遮断部材が内室内に張り出して形成されているため、可動ベーンとの密着性を向上させて可動ベーンと内室の内周面との間の液密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るダンパー装置の全体構成を蓋体側から見た正面図である。
【
図2】
図1に示す2-2線から見たダンパー装置の断面図である。
【
図3】
図1に示す3-3線から見たダンパー装置の断面図である。
【
図4】
図1に示す4-4線から見たダンパー装置の断面図である。
【
図5】
図4に示す破線円5内の構成の詳細を示す部分拡大図である。
【
図6】
図5に示す破線円6内の構成の詳細を示す部分拡大図である。
【
図7】
図6に示す破線円7内の構成の詳細を示す部分拡大図である。
【
図8】
図2に示すダンパー装置における第1内室遮断部材の全体構成を示す平面図である。
【
図9】
図2に示す9-9線から見たダンパー装置の断面図である。
【
図10】
図9に示す破線円10内の構成の詳細を示す部分拡大図である。
【
図11】
図9に示すダンパー装置のロータが反時計回りに回動した作動状態を説明するためにダンパー装置の横断面の構造を模式的に示した説明図である。
【
図12】
図9に示すダンパー装置のロータが時計回りに回動した作動状態を説明するためにダンパー装置の横断面の構造を模式的に示した説明図である。
【
図13】本発明の変形例に係る第1内室遮断部材の断面形状を
図5と同じ視野で示す部分拡大図である。
【
図14】本発明の他の変形例に係る第1内室遮断部材の断面形状を
図5と同じ視野で示す部分拡大図である。
【
図15】本発明の他の変形例に係る第1内室遮断部材の断面形状を
図5と同じ視野で示す部分拡大図である。
【
図16】本発明の他の変形例に係る第1内室遮断部材の断面形状を
図5と同じ視野で示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るダンパー装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るダンパー装置100の全体構成を蓋体側から見た正面図である。また、
図2は、
図1に示す2-2から見たダンパー装置100の断面図である。また、
図3は、
図1に示す3-3から見たダンパー装置100の断面図である。また、
図4は、
図1に示4-4から見たダンパー装置100の断面図である。
【0022】
なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している部分がある。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。このダンパー装置100は、二輪の自走式車両(バイク)の後輪を上下動可能に支持するスイングアームの基端部に取り付けられて後輪の上下動時に運動エネルギを減衰させる減衰装置である。
【0023】
(ダンパー装置100の構成)
ダンパー装置100は、ハウジング101を備えている。ハウジング101は、後述するロータ130を回転自在に保持しつつダンパー装置100の筐体を構成する部品であり、アルミニウム材、鉄材、亜鉛材、またはポリアミド樹脂などの各種樹脂材によって構成されている。具体的には、ハウジング101は、主として、ハウジング本体102と蓋体120とで構成されている。
【0024】
ハウジング本体102は、体積変化補償装置118、ロータ130の可動ベーン136,137および流動体143をそれぞれ収容するとともにロータ130の軸体131の一方の端部を回転自在に支持する部品であり、筒体における一方端が内室111の開口部111aを介して大きく開口するとともに他方端が小さく開口する有底円筒状に形成されている。より具体的には、ハウジング本体102は、前記筒体における一方の端部である開口部111aの外側がフランジ状に張り出した蓋体取付部104が形成されるとともにこの蓋体取付部104の内側に円筒状の内室111が開口部111aによって大きく開口して形成されている。
【0025】
一方、ハウジング本体102における他方の端部には、内室111の底部111bに連通した状態でロータ支持部115が形成されている。また、ハウジング本体102の外表面には、エア抜き部103a,103bおよび補償装置収容部117がそれぞれが形成されている。エア抜き部103a,103bは、後述する個室R1,個室R4にそれぞれ個別に連通しており、個室R1,個室R4内の各空気を抜く際に使用する貫通孔である。これらの各エア抜き部103a,103bは、プラグによって着脱自在に塞がれている。
【0026】
蓋体取付部104は、蓋体120が取り付けられる部分であり、平面視で円環状に形成されている。この蓋体取付部104には、受け部104a、取付け部104b、シール収容部106および第1遮断部材収容部110がそれぞれ形成されている。
【0027】
受け部104aは、蓋体120が直接載置される部分であり、平面視で円環状の平坦面に形成されている。この受け部104aは、平面視で円環状に形成された蓋体取付部104における径方向の中央部付近に形成されている。
【0028】
取付け部104bは、蓋体120が載置されて取り付けられる部分であり、受け部104aの径方向外側に平面視で円環状に形成されている。この場合、取付け部104bは、受け部104aよりも凹んで形成されている。この取付け部104bには、蓋体120をハウジング本体102に取り付けるための取付ボルト105が締め付けられる4つの雌ネジ部が周方向に均等配置されて形成されている。
【0029】
シール収容部106は、
図5に示すように、シール体107を収容する部分であり、平面視で円環状に形成されている。この場合、シール収容部106は、受け部104aよりも径方向内側に形成されているとともに、同受け部104aよりも凹状に凹んで形成されている。シール体107は、蓋体取付部104と蓋体120との間の液密性を高めるための部品であり、ゴム材のエラストマ材を円環状に形成したOリングで構成されている。
【0030】
第1遮断部材収容部110は、
図5に示すように、後述する第1内室遮断部材150を収容する部分であり、蓋体取付部104において内室111が開口する部分に沿って延びた平面視で円環状に形成されている。この第1遮断部材収容部110は、主として、収容部本体110a、突起収容部110bおよび張出支持部110cをそれぞれ備えている。
【0031】
収容部本体110aは、第1内室遮断部材150の遮断本体部151aが載置される部分であり、内室111が開口する部分に面した部分に平面視で円環状に凹む溝状に形成されている。この場合、収容部本体110aは、受け部104aに対して本体部の厚さよりも浅い深さで形成されている。
【0032】
突起収容部110bは、第1内室遮断部材150のハウジング嵌合突起151bを収容する部分であり、収容部本体110aの径方向外側に凹状に凹む溝状に形成されている。この場合、突起収容部110bは、径方向内側の内周面110baとハウジング嵌合突起151bの径方向内側の内周面とがしまりばめの関係で嵌合するように径方向内側の内周面110baの外径がハウジング嵌合突起151bの径方向内側の内周面の内径よりも大きく形成されている。また、突起収容部110bは、ハウジング嵌合突起151bの突出量よりも深い深さで形成されている。
【0033】
張出支持部110cは、第1内室遮断部材150の張出部151dが載置される部分であり、突起収容部110bの径方向外側に平面視で円環状に形成されている。この場合、張出支持部110cは、収容部本体110aと同じ深さで形成されている。また、張出支持部110cは、張出部151dと面一でシール収容部106の径方向内側の内周面を形成するように形成されている。
【0034】
内室111は、
図4に示すように、ロータ130の可動ベーン136,137とともに流動体143を液密的に収容する空間であり、ハウジング本体102内に中央部に配置されたロータ130を介して互いに対向する2つの半円筒の空間で構成されている。これらの内室111内には、固定ベーン112,113がハウジング本体102と一体的にそれぞれ形成されている。
【0035】
固定ベーン112,113は、ロータ130とともに内室111内を仕切って個室R1~個室R4を形成する壁状の部分であり、ハウジング本体102の軸線方向に沿って内室壁面111cから内側に向かって凸状に張り出して形成されている。この場合、2つの固定ベーン112,113は、内室壁面111cの内周面における周方向上での互いに対向する位置に設けられている。これらの各固定ベーン112,113は、蓋体120およびロータ130の軸体131にそれぞれ対向する先端部分がそれぞれ凹状に凹む溝状に形成されており、これらの各溝内にシール体114が嵌め込まれている。
【0036】
シール体114は、内室111内に形成される個室R1~個室R4の液密性を確保するための部品であり、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどの各種ゴム材などの弾性材料を側面視でL字状に形成して構成されている。このシール体114は、蓋体120の内側面121aおよびロータ130の軸体131の外周面にそれぞれ摺動自在な状態で密着するように固定ベーン112,113の各先端部から張り出して取り付けられている。
【0037】
ロータ支持部115は、ロータ130の軸体131における一方の端部を回転自在な状態で支持する円筒状の部分である。このロータ支持部115の内周面には、内室111が面する部分に第2遮断部材収容部115aが形成されている。また、ロータ支持部115の内周面には、第2遮断部材収容部115aに対してロータ支持部115の軸方向先端部側に向かってシール体116a、ベアリング116bおよびダストシール116cがそれぞれ嵌め込まれている。
【0038】
第2遮断部材収容部115aは、
図6に示すように、後述する第2内室遮断部材160を収容する部分であり、内室111の底部111bとロータ支持部115との間の境界部分であって同境界部分の内室111に面した部分に内室111の開口する部分に沿って延びた平面視で円環状に凹む溝状に形成されている。この場合、第2遮断部材収容部115aは、第2内室遮断部材160が内室111内に張り出す深さで形成されている。
【0039】
シール体116aは、内室111内の作動油がロータ支持部115を介して漏出することを阻止するための円環状の弾性体である。また、ベアリング116bは、ロータ130の軸体131を回転自在に支持する部品である。また、ダストシール116cは、ロータ支持部115内に異物の進入を阻止するための軟質ゴム製の部品である。
【0040】
補償装置収容部117は、体積変化補償装置118を収容する部分であり、ハウジング本体102の内部にハウジング本体102の軸線方向に沿って延びる有底円筒状に形成されている。この場合、補償装置収容部117は、一方の端部側が4つの個室R1~個室R4のうちの常時低圧となる個室、本実施形態においては個室R4に連通するとともに、他方の端部側が体積変化補償装置118を出し入れする開口部としてプラグによって閉塞される。
【0041】
体積変化補償装置118は、内室111内の流動体143の温度変化による膨張または収縮による体積変化を補償するための機具である。具体的には、体積変化補償装置118は、主として、シリンダ、ピストン、押圧弾性体および前記プラグによって構成されている。この体積変化補償装置118は、ハウジング本体102に対して一体的に組み付けられている。
【0042】
蓋体120は、ハウジング本体102に形成されている内室111を液密的に塞ぐための部品であり、主として、蓋体本体121とロータ支持部123とで構成されている。蓋体本体121は、内室111を液密的に塞ぐ部分であり、蓋体取付部104に対応する板状に形成されている。この場合、蓋体本体121における内側面121aには、突起収容部122および第3遮断部材収容部123aがそれぞれ形成されている。
【0043】
また、この蓋体本体121には、突起収容部122に対して径方向外側に前記取付ボルト105が貫通する4つの貫通孔が周方向に均等に配置されて形成されている。すなわち、蓋体120は、4つの取付ボルト105によって内室111が開口する蓋体取付部104に取り付けられている。これにより、蓋体120は、ハウジング本体102における内室111の開口部111aを覆って内室111を液密的に閉塞している。
【0044】
突起収容部122は、第1内室遮断部材150の蓋体嵌合突起151cを収容する部分であり、内側面121aにおいて蓋体嵌合突起151cが対向する位置に凹状に凹む溝状に形成されている。この場合、突起収容部122は、径方向内側の内周面122aと蓋体嵌合突起151cの径方向内側の内周面とがしまりばめの関係で嵌合するように径方向内側の内周面122aの外径が蓋体嵌合突起151cの径方向内側の内周面の内径よりも大きく形成されている。また、突起収容部122は、蓋体嵌合突起151cの突出量よりも深い深さで形成されている。
【0045】
ロータ支持部123は、ロータ130の軸体131における他方の端部を回転自在な状態で支持する円筒状の部分である。このロータ支持部123周面には、内室111が面する部分に第3遮断部材収容部123aが形成されている。また、ロータ支持部123の内周面には、第3遮断部材収容部123aに対してロータ支持部123の軸方向先端部側に向かってシール体124a、ベアリング124bおよびダストシール124cがそれぞれ嵌め込まれている。
【0046】
第3遮断部材収容部123aは、
図7に示すように、後述する第3内室遮断部材170を収容する部分であり、内側面121aとロータ支持部123との間の境界部分であって同境界部分の内室111に面した部分に内室111の開口する部分に沿って延びた平面視で円環状に凹む溝状に形成されている。この場合、第3遮断部材収容部123aは、第3内室遮断部材170が内室111内に張り出す深さで形成されている。
【0047】
シール体124a、ベアリング124bおよびダストシール124cは、前記したシール体116a、ベアリング116bおよびダストシール116cと同様に構成されているため、これらの説明は省略する。一方、蓋体本体121の外表面には、調整ニードル125a,125bがそれぞれ形成されている。
【0048】
調整ニードル125aは、個室R3と個室R4との間の作動油の流通量および個室R3および個室R4をそれぞれ外部に連通させるバイパス流路(図示せず)の流通量を調整するための弁である。また、調整ニードル125bは、個室R2と個室R4との間の作動油の流通量および個室R2および個室R4をそれぞれ外部に連通させるバイパス流路(図示せず)の流通量を調整するための弁である。
【0049】
ロータ130は、ハウジング101の内室111内に配置されて内室111内を4つの空間である個室R1、個室R2、個室R3および個室R4にそれぞれ仕切るとともに、この内室111内で回動することによりこれらの個室R1、個室R2、個室R3および個室R4の各個室の容積をそれぞれ増減させるための部品である。このロータ130は、主として、軸体131と可動ベーン136,137とで構成されている。
【0050】
軸体131は、可動ベーン136,137を支持する丸棒状の部分であり、アルミニウム材、鉄材、亜鉛材、またはポリアミド樹脂などの各種樹脂材によって構成されている。この軸体131は、両端部がそれぞれ筒状に形成されてハウジング本体102のロータ支持部115および蓋体120のロータ支持部123にそれぞれ回転摺動自在な状態で支持されている。
【0051】
この場合、軸体131には、可動ベーン136,137が張り出す根元部分に第2内室遮断部材160および第3内室遮断部材170の各一部を第2遮断部材収容部115aおよび第3遮断部材収容部123aとの間でそれぞれ挟み込むための遮断部材受け部132a,132bが軸体131の外表面から張り出した状態でそれぞれ形成されている。
【0052】
また、軸体131の両端部のうちの一方(
図3において上側)の端部には、ダンパー装置100が取り付けられる2つの部品間のうちの一方の部品に接続するための連結部133が軸方向に延びて形成されている。本実施形態においては、連結部133は、外表面にインボリュートセレーションが形成された棒状に形成されている。また、軸体131には、軸内双方向連通路134および軸内片方向連通路135がそれぞれ形成されている。
【0053】
軸内双方向連通路134は、可動ベーン136,137の一方への回動によって容積が同時に減少するとともに同可動ベーン136,137の他方への回動によって容積が同時に増加する2つの個室間(個室R1と個室R3との間)で相互に流動体143の流通を可能とする通路である。
【0054】
軸内片方向連通路135は、可動ベーン136,137の前記一方への回動によって容積が同時に増加するとともに同可動ベーン136,137の前記他方への回動によって容積が同時に減少する2つの個室間(個室R2と個室R4との間)で一方から他方にのみ流動体143を流通させる通路である。この場合、軸内片方向連通路135は、個室R4から個室R2にのみ流動体143が流通するように一方向弁を介して軸体131を貫通した状態で形成されている。
【0055】
可動ベーン136,137は、内室111内を複数の空間に仕切りつつこれらの各空間の容積を液密的にそれぞれ増減させるための部品であり、軸体131(内室111)の径方向に延びる板状体によってそれぞれ構成されている。この場合、これら2つの可動ベーン136,137は、軸体131を介して互いに反対方向(換言すれば仮想の同一平面上)に延びて形成されている。これらの可動ベーン136,137は、底部111b、内室壁面111cおよび蓋体120の内側面121aにそれぞれ対向するC字状(またはコ字状)の先端部分がそれぞれ凹状に凹む溝状に形成されており、これらの各溝内にシール体138が嵌め込まれている。
【0056】
シール体138は、前記シール体114と同様に、内室111内に形成される個室R1~個室R4の液密性を確保するための部品であり、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどの各種ゴム材などの弾性材料を側面視でC字状(またはコ字状)に形成して構成されている。このシール体138は、底部111b、内室壁面111cおよび蓋体120の内側面121aにそれぞれ摺動自在な状態で密着するように可動ベーン136,137の各先端部から張り出して取り付けられている。
【0057】
この場合、シール体138は、第2遮断部材収容部115a内および第3遮断部材収容部123a内にそれぞれ配置される第2内室遮断部材160および第3内室遮断部材170にそれぞれ接触して摺動する長さに形成されている。
【0058】
これらにより、可動ベーン136,137は、前記固定ベーン112,113と協働して内室111内に互いに4つの空間である個室R1、個室R2、個室R3および個室R4を互いに液密的に形成する。より具体的には、内室111内には、固定ベーン112と可動ベーン136とで個室R1が形成され、可動ベーン136と固定ベーン113とで個室R2が形成され、固定ベーン113と可動ベーン137とで個室R3が形成され、可動ベーン136と固定ベーン112とで個室R4が形成される。すなわち、個室R1、個室R2、個室R3および個室R4は、内室111内において周方向に沿って順次隣接して形成されている。これらの可動ベーン136,137には、ベーン内双方向連通路141およびベーン内片方向連通路142がそれぞれ形成されている。
【0059】
ベーン内双方向連通路141は、軸内双方向連通路134によって連通される2つの連通個室としての個室R1および個室R3のうちの個室R3と、軸内片方向連通路135によって連通される2つの片側連通個室としての個室R2および個室R4のうちの個室R4とが互いに連通するように個室R3と個室R4とを仕切る可動ベーン136に形成されている。この場合、ベーン内双方向連通路141は、個室R4側から個室R3側に流動体143を流通させるとともに個室R3側から個室R4側に流動体143を制限しつつ流通させるように構成されている。なお、流体の流動を制限しつつとは、一方向弁における流体(流動体143)の流れ易さに対して同一条件(例えば、圧力および流動体143の粘度など)下において流体が流れ難いことを意味する。
【0060】
ベーン内片方向連通路142は、ベーン内双方向連通路141が連通していない個室R1と個室R2との間で個室R2側から個室R1側にのみ流動体143を制限しつつ流通させるように個室R2と個室R1とを仕切る可動ベーン137に形成されている。
【0061】
これらの軸内双方向連通路134、軸内片方向連通路135、ベーン内双方向連通路141およびベーン内片方向連通路142によってダンパー装置100は、個室R1ないし個室R4間における流動体143の流動が制限されることでロータ130の回動に際して減衰力が発生する。すなわち、本実施形態に係るダンパー装置100は、回転運動時に減衰力を発生させるロータリダンパで構成されている。
【0062】
流動体143は、内室111内を回動する可動ベーン136,137に対して抵抗を付与することによりダンパー装置100にダンパー機能を作用させるための物質であり、内室111内に満たされている。この流動体143は、ダンパー装置100の仕様に応じた粘性を有する流動性を有する液状、ジェル状または半固体状の物質で構成されている。この場合、流動体143の粘度は、ダンパー装置100の仕様に応じて適宜選定される。本実施形態においては、流動体143は、油、例えば、鉱物油またはシリコーンオイルなどによって構成されている。なお、
図4においては、流動体143を破線円内に斜線ハッチングを描いて示している。
【0063】
第1内室遮断部材150は、
図8に示すように、個室R1~R4において流動体143が蓋体取付部104を介して流通することを阻止するための部品であり、平面視で円環状に形成されている。より具体的には、第1内室遮断部材150は、主として、遮断本体部151a、ハウジング嵌合突起151b、蓋体嵌合突起151cおよび張出部151dをそれぞれ備えて構成されている。この第1内室遮断部材150は、弾性変形するエラストマ材で構成されている。この場合、第1内室遮断部材150は、自由に屈曲する軟質樹脂材で構成してもよいが自由に屈曲しない硬質樹脂材で(例えば、ナイロン樹脂材またはポリアセタール樹脂材など)で構成するとよい。
【0064】
遮断本体部151aは、蓋体取付部104と蓋体120における内側面121aとが互いに対向し合う合わせ面となる第1部分(蓋体取付部104と内側面121aとの合わせ面)における内室111に面する部分(第1遮断部材収容部110)に配置されて内室111内からの流動体143の漏出を防止するための部分であり、平面視で円環状に形成されている。すなわち、遮断本体部151aは、ハウジング本体102の蓋体取付部104に形成された収容部本体110a上で蓋体120の内側面121aによって押圧された状態で配置されている。
【0065】
この場合、遮断本体部151aは、蓋体取付部104と蓋体120における内側面121aとの隙間よりも厚い厚さに形成されているため、内室111に面する端面151aaが内室111内に張り出してシール体138を押圧している。また、遮断本体部151には、
図9および
図10にそれぞれ示すように、固定ベーン112,113にそれぞれ取り付けられたシール体114に対向する部分にシール体嵌合部151abが形成されている。シール体嵌合部151abは、シール体114の先端部が嵌合することで内室111の液密性を向上させるための部分であり、遮断本体部151aの内周部を凹状に切り欠いて形成されている。
【0066】
ハウジング嵌合突起151bは、ハウジング101における突起収容部110b内に嵌合することで蓋体取付部104上での第1内室遮断部材150の取り付け位置を規定するとともに内室111からの流動体143の漏出を阻害するための部分であり、遮断本体部151aの板面に対して直交する方向に突出する平面視で円環状に形成されている。
【0067】
蓋体嵌合突起151cは、蓋体120における突起収容部122内に嵌合することで蓋体取付部104上での蓋体120の取り付け位置および向きを規定するとともに内室111からの流動体143の漏出を阻害するための部分であり、遮断本体部151aの板面に対して直交する方向であって前記ハウジング嵌合突起151bとは反対方向に突出する平面視で円環状に形成されている。
【0068】
張出部151dは、張出支持部110c上に配置されて内室111内からの流動体143の漏出を防止するための部分であり、ハウジング嵌合突起151bおよび蓋体嵌合突起151cに対して径方向外側に張り出した平面視で円環状に形成されている。また、張出部151dは、シール収容部106の径方向内側の内周面を構成してシール体107から弾性力を受けた状態で配置されている。
【0069】
第2内室遮断部材160は、ハウジング本体102が軸体131を支持する第2部分(ロータ支持部115)に配置されて内室111内からの流動体143の漏出を防止するための部品であり、平面視で円環状に形成されている。この場合、第2内室遮断部材160は、外径および内径がロータ130の軸体131の外径および第2遮断部材収容部115aの内径に対してそれぞれしまりばめの関係で嵌合する寸法関係で形成されている。また、第2内室遮断部材160は、両面のうちの一方の板面が内室111内に張り出した状態で第2遮断部材収容部115a内に設置されている。この第2内室遮断部材160は、第1内室遮断部材150と同様に、弾性変形するエラストマ材で構成されている。
【0070】
第3内室遮断部材170は、蓋体120が軸体131を支持する第3部分(ロータ支持部123)に配置されて内室111内からの流動体143の漏出を防止するための部品であり、平面視で円環状に形成されている。この場合、第3内室遮断部材170は、外径および内径がロータ130の軸体131の外径および第3遮断部材収容部123aの内径に対してそれぞれしまりばめの関係で嵌合する寸法関係で形成されている。また、第3内室遮断部材170は、両面のうちの一方の板面が内室111内に張り出した状態で第3遮断部材収容部123a内に設置されている。この第3内室遮断部材170は、第1内室遮断部材150および第2内室遮断部材160と同様に、弾性変形するエラストマ材で構成されている。
【0071】
(ダンパー装置100の作動)
次に、このように構成されたダンパー装置100の作動について説明する。この作動説明においては、内室111内におけるロータ130および流動体143の動きの理解を容易にするために内室111内を模式的に示した
図11および
図12を用いて説明する。なお、
図11および
図12は、可動ベーン136,137の動きに対する流動体143の挙動の理解を助けるために
図2の矢印Aから見たダンパー装置100の内部を模式化して示している。また、
図11および
図12においては、流動体143の圧力が他の個室に対して相対的に高い状態を濃いハッチングで示し、圧力が相対的に低い状態を薄いハッチングで示している。また、
図11および
図12においては、可動ベーン136,137の回動方向を太線の破線矢印で示すとともに、流動体143の流動方向を細線の破線矢印で示している。
【0072】
このダンパー装置100は、相対的に回動する2つの器具間に取り付けられて回動時に減衰力を発生させる。例えば、ダンパー装置100は、自走式車両の走行時にスイングアームが上下動する際にスイングアームに対して減衰力を発生させる。
【0073】
具体的には、ダンパー装置100は、
図11に示すように、スイングアームが下降した状態から自走式車両の後輪が段差などに乗り上げて上昇した場合にはロータ130が図示時計回りに回動する。すなわち、ダンパー装置100は、可動ベーン136が固定ベーン112に向かって回動するとともに可動ベーン137が固定ベーン113に向かって回動する。
【0074】
この場合、ダンパー装置100は、軸内双方向連通路134、軸内片方向連通路135、ベーン内双方向連通路141およびベーン内片方向連通路142の作用によって個室R2のみが流動体143の流出が制限されて高圧状態となるため、後述する図示反時計回り時の減衰力に比べて小さい減衰力を発生させながらロータ130が図示時計回りに回動する。
【0075】
一方、ダンパー装置100は、
図12に示すように、自走式車両の後輪が段差を乗り越えてスイングアームが上昇した状態から下降した場合にはロータ130が図示反時計回りに回動する。すなわち、ダンパー装置100は、可動ベーン136が固定ベーン113に向かって回動するとともに可動ベーン137が固定ベーン112に向かって回動する。
【0076】
この場合、ダンパー装置100は、軸内双方向連通路134、軸内片方向連通路135、ベーン内双方向連通路141およびベーン内片方向連通路142の作用によって個室R1および個室R3が流動体143の流出が制限されてそれぞれ高圧状態となるため、前記した図示時計回り時の減衰力に比べて大きな減衰力を発生させながらロータ130が図示時計回りに回動する。また、体積変化補償装置118は、前記したロータ130の回動運動に拘らず流動体143の温度変化に基づく体積変化を補償する。
【0077】
このようなダンパー装置100の作動状態においては、内室111を形成する複数の部品間の合わせ目部分である第1部分(蓋体取付部104と内側面121aとの合わせ面)、第2部分(ロータ支持部115)および第3部分(ロータ支持部123)がそれぞれ第1内室遮断部材150、第2内室遮断部材160および第3内室遮断部材170によって塞がれている。これにより、ダンパー装置100は、各個室R1~R4間において第1部分(蓋体取付部104と内側面121aとの合わせ面)、第2部分(ロータ支持部115)および第3部分(ロータ支持部123)をそれぞれ介した流動体143の流通が阻止される。
【0078】
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ダンパー装置100は、蓋体120とハウジング101との合わせ面である第1部分(蓋体取付部104と内側面121aとの合わせ面)、ハウジング101が軸体131を回転自在に支持する第2部分(ロータ支持部115)および蓋体120が軸体131を回転自在に支持する第3部分(ロータ支持部123)における各内室111に面する部分(第1遮断部材収容部110、第2遮断部材収容部115a、第3遮断部材収容部123a)に、同内室111と前記部分との連通を遮断する第1内室遮断部材150、第2内室遮断部材160および第3内室遮断部材170をそれぞれ備えている。これにより、ダンパー装置100は、ハウジング101内に形成されている複数の個室R1~R4間での流動体143の漏れまたは侵入を抑えて減衰力の低下を抑制することができる。すなわち、ダンパー装置100は、ハウジング101の液密性を確保しつつ製造負担を軽減することができる。
【0079】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
【0080】
例えば、上記実施形態においては、ダンパー装置100は、蓋体120とハウジング101との合わせ面である第1部分(蓋体取付部104と内側面121aとの合わせ面)、ハウジング101が軸体131を回転自在に支持する第2部分(ロータ支持部115)および蓋体120が軸体131を回転自在に支持する第3部分(ロータ支持部123)における各内室111に面する部分(第1遮断部材収容部110、第2遮断部材収容部115a、第3遮断部材収容部123a)に、それぞれ第1内室遮断部材150、第2内室遮断部材160および第3内室遮断部材170をそれぞれ備えて構成した。
【0081】
しかし、ダンパー装置100は、蓋体120とハウジング101との合わせ面である第1部分(蓋体取付部104と内側面121aとの合わせ面)、ハウジング101が軸体131を回転自在に支持する第2部分(ロータ支持部115)および蓋体120が軸体131を回転自在に支持する第3部分(ロータ支持部123)における各内室111に面する部分(第1遮断部材収容部110、第2遮断部材収容部115a、第3遮断部材収容部123a)のうちの少なくとも1つの面する部分(第1遮断部材収容部110、第2遮断部材収容部115a、第3遮断部材収容部123a)に第1内室遮断部材150、第2内室遮断部材160または第3内室遮断部材170が設けられていればよい。
【0082】
また、上記実施形態においては、第1内室遮断部材150は、ハウジング本体102における蓋体取付部104に第1遮断部材収容部110を設けて配置するように構成した。しかし、第1内室遮断部材150は、蓋体120における内側面121aに第1遮断部材収容部110を設けて配置するように構成することもできる。
【0083】
また、上記実施形態においては、第1内室遮断部材150は、円環状に突出するハウジング嵌合突起151bを備えて構成した。これにより、ダンパー装置100は、ハウジング101上に第1内室遮断部材150を設置した際における位置ズレを防止して組み付け作業の作業性および組み付け精度を向上させることができる。また、このダンパー装置100によれば、第1内室遮断部材150によるラビリンス構造によって第1内室遮断部材150の径方向外側への流動体143の漏出をより確実に防止することもできる。
【0084】
しかし、第1内室遮断部材150は、
図13に示すように、ハウジング嵌合突起151bを省略して構成することもできる。また、第1内室遮断部材150は、ハウジング嵌合突起151bを円環状以外の形状、例えば、周方向に断続的な円環状の形状または周方向に断続的に起立するピン状の形状で構成することもできる。また、ハウジング嵌合突起151bは、突起収容部110bの径方向内側の内周面110baとの間でしまりばめの関係で嵌合するように形成されている。しかし、ハウジング嵌合突起151bは、突起収容部110b全体でしまりばめの関係で嵌合するように形成することもできる。
【0085】
また、上記実施形態においては、第1内室遮断部材150は、円環状に突出する蓋体嵌合突起151cを備えて構成した。これにより、ダンパー装置100は、容易に蓋体120をハウジング101に対して正確に位置決めして取り付けることができる。すなわち、ダンパー装置100を組み立てる作業者は、ハウジング本体102の蓋体取付部104における第1遮断部材収容部110に第1内室遮断部材150を嵌め込んだ状態で蓋体120を被せることにより、蓋体嵌合突起151cが突起収容部122に嵌合することで蓋体120を容易に位置決めすることができるとともに、蓋体120の姿勢が規定されることでロータ支持部123による軸体131の軸受け精度を向上させることができる。また、このダンパー装置100によれば、第1内室遮断部材150によるラビリンス構造によって第1内室遮断部材150の径方向外側への流動体143の漏出をより確実に防止することもできる。
【0086】
しかし、第1内室遮断部材150は、
図13に示すように、蓋体嵌合突起151cを省略して構成することもできる。また、第1内室遮断部材150は、蓋体嵌合突起151cを円環状以外の形状、例えば、周方向に断続的な円環状の形状または周方向に断続的に起立するピン状の形状で構成することもできる。また、蓋体嵌合突起151cは、突起収容部122の径方向内側の内周面122aとの間でしまりばめの関係で嵌合するように形成されている。しかし、蓋体嵌合突起151cは、突起収容部122全体でしまりばめの関係で嵌合するように形成することもできる。
【0087】
また、第1内室遮断部材150は、ハウジング嵌合突起151bおよび蓋体嵌合突起151cをそれぞれ省略して構成した場合、
図14に示すように、遮断本体部151aに張出部151dを設けて構成することもできる。また、上記実施形態においては、第1内室遮断部材150は、径方向外側に円環状に突出する張出部151dを備えて構成した。しかし、第1内室遮断部材150は、
図15に示すように、張出部151dを省略して構成することもできる。
【0088】
また、上記実施形態においては、第1内室遮断部材150は、シール収容部106の内周部の一部を構成するように構成した。これにより、ダンパー装置100は、第1内室遮断部材150およびシール収容部106内に収容されるシール体107のハウジング本体102への取り付け作業または取り外し作業を容易にすることができる。つまり、この場合、ダンパー装置100は、シール収容部106と第1遮断部材収容部110とが繋がって形成されることで大きな凹状部分を形成することができるため、第1内室遮断部材150およびシール体107を出し入れする作業性を向上させることができる。しかし、第1内室遮断部材150は、
図16に示すように、シール収容部106の内周部の一部を構成しないように構成、すなわち、シール収容部106と第1遮断部材収容部110とが互いに繋がらずにそれぞれ独立した凹状形状に形成することもできる。
【0089】
また、上記実施形態においては、第1内室遮断部材150、第2内室遮断部材160および第3内室遮断部材170は、内室111内に張り出すように構成した。この場合、第1内室遮断部材150は、ハウジング本体102の収容部本体110aと蓋体120の内側面121aとで挟んで押圧することで遮断本体部151aの端面151aaが内室111側に膨出するように構成した。これにより、ダンパー装置100は、可動ベーン136,137との密着性を向上させて可動ベーン136,137と内室111の内室壁面111cとの間の液密性を向上させることができる。なお、第1内室遮断部材150は、ハウジング本体102の収容部本体110aと蓋体120の内側面121aとで挟んで押圧する前の状態で既に遮断本体部151aの端面151aaが内室111側に膨出するように構成できることは当然である。
【0090】
しかし、第1内室遮断部材150、第2内室遮断部材160および第3内室遮断部材170は、内室111内に張り出さないように構成することもできる。具体的には、第1内室遮断部材150、第2内室遮断部材160および第3内室遮断部材170は、各端面が内室111の内室壁面111cに対して面一(
図14参照)に構成することができる。
【0091】
また、上記実施形態においては、ダンパー装置100は、1つの内室111内を固定ベーン112,113および可動ベーン136,137によって4つの個室R1~R4に仕切った。しかし、ダンパー装置100は、1つの内室111内を少なくとも2つの個室で仕切って構成すればよい。
【0092】
また、上記実施形態においては、ダンパー装置100は、ハウジング101を固定側としロータ130を可動側とした。しかし、ダンパー装置100におけるハウジング101に対するロータ130の回動は相対的なものである。したがって、ダンパー装置100は、ハウジング101を可動側としロータ130を固定側とすることもできることは当然である。
【0093】
また、上記実施形態においては、ベーン内双方向連通路141およびベーン内片方向連通路142は、可動ベーン136,137にそれぞれ設けた。しかし、ベーン内双方向連通路141およびベーン内片方向連通路142は、固定ベーン112,113に設けることもできる。
【0094】
また、上記実施形態においては、ダンパー装置100は、二輪自走式車両のスイングアームに取り付け場合について説明した。しかし、ダンパー装置100は、二輪自走式車両におけるスイングアーム以外の場所(例えば、シートの開閉機構)、二輪自走式車両以外の車両(四輪自走式車両におけるサスペンション機構、シート機構または開閉扉)または自走式車両以外の機械装置、電機装置または器具に取り付けて用いることができる。
【符号の説明】
【0095】
R1~R4…個室、
100…ダンパー装置、101…ハウジング、102…ハウジング本体、103a,103b…エア抜き部、104…蓋体取付部、104a…受け部、104b…取付け部、105…取付ボルト、106…シール収容部、107…シール体、
110…第1遮断部材収容部、110a…収容部本体、110b…突起収容部、110ba…内周面、110c…張出支持部、111…内室、111a…開口部、111b…底部、111c…内室壁面、112,113…固定ベーン、114…シール体、115…ロータ支持部、115a…第2遮断部材収容部、116a…シール体、116b…ベアリング、116c…ダストシール、117…補償装置収容部、118…体積変化補償装置、
120…蓋体、121…蓋体本体、121a…内側面、122…突起収容部、122a…内周面、123…ロータ支持部、123a…第3遮断部材収容部、124a…シール体、124b…ベアリング、124c…ダストシール、125a,125b…調整ニードル、
130…ロータ、131…軸体、132a,132b…遮断部材受け部、133…連結部、134…軸内双方向連通路、135…軸内片方向連通路、136,137…可動ベーン、138…シール体、
141…ベーン内双方向連通路、142…ベーン内片方向連通路、143…流動体、
150…第1内室遮断部材、151a…遮断本体部、151aa…端面、151ab…シール体嵌合部、151b…ハウジング嵌合突起、151c…蓋体嵌合突起、151d…張出部、
160…第2内室遮断部材、
170…第3内室遮断部材。