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2024-164927複合容器の製造方法、製造装置、及び複合容器
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  • -複合容器の製造方法、製造装置、及び複合容器 図1
  • -複合容器の製造方法、製造装置、及び複合容器 図2
  • -複合容器の製造方法、製造装置、及び複合容器 図3
  • -複合容器の製造方法、製造装置、及び複合容器 図4
  • -複合容器の製造方法、製造装置、及び複合容器 図5
  • -複合容器の製造方法、製造装置、及び複合容器 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164927
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】複合容器の製造方法、製造装置、及び複合容器
(51)【国際特許分類】
   B65C 3/14 20060101AFI20241121BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20241121BHJP
   B65D 25/34 20060101ALI20241121BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B65C3/14
B65D1/26 110
B65D25/34 A
B65D81/38 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080660
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】592035246
【氏名又は名称】株式会社山田工作所
(72)【発明者】
【氏名】前川 吉平
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
3E067
3E095
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA10
3E033BA13
3E033BB08
3E033CA08
3E033DA08
3E033EA20
3E033FA04
3E033GA02
3E062AA10
3E062AB02
3E062AC02
3E062JA01
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB01
3E062JC05
3E062JD04
3E067AA03
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA07B
3E067BA07C
3E067BB01A
3E067BB01C
3E067BB14A
3E067BB14B
3E067CA07
3E067CA17
3E067CA18
3E067EA06
3E067EA17
3E067FC03
3E067GA01
3E067GA06
3E067GA11
3E067GD08
3E095AA06
3E095BA10
3E095DA44
3E095DA47
3E095FA30
(57)【要約】
【課題】接着によらず容器本体にスリーブを定着する複合容器の製造方法を提供する。
【解決手段】シート成形した容器本体の胴部周壁に筒状のスリーブを装着した複合容器の製造方法であって、前記胴部周壁を錐状として前記容器本体をシート成形し、該成形後、小径側を上向きにして前記胴部周壁の外側に前記スリーブを挿入し、該挿入後、プレスによって前記胴部周壁の小径側端部を圧壊して前記スリーブの抜止部を形成する。また、容器本体のシート成形時に、胴部周壁の小径側端部周囲にはアンダーカット部を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート成形した容器本体の胴部周壁に筒状のスリーブを装着した複合容器の製造方法であって、
前記胴部周壁を錐状として前記容器本体をシート成形し、
該成形後、前記容器本体の小径側を上向きにして前記胴部周壁の外側に前記スリーブを落とし込んで挿入し、
該挿入後、前記胴部周壁の小径側端部をプレスによって圧壊して前記スリーブの抜止部を形成し、前記容器本体と前記スリーブを一体にしたことを特徴とする複合容器の製造方法。
【請求項2】
容器本体のシート成形には、胴部周壁の小径側端部に圧壊代を形成する雌型を用いる請求項1記載の複合容器の製造方法。
【請求項3】
容器本体のシート成形時に、胴部周壁の小径側端部周囲にアンダーカット部を形成する請求項2記載の複合容器の製造方法。
【請求項4】
胴部周壁にアンダーカット部までプラグを差し込み、前記アンダーカット部を前記プラグとプレスとで挟み込んで抜止部を形成する請求項3記載の複合容器の製造方法。
【請求項5】
容器本体のシート成形時に、胴部周壁の小径側端面を閉塞する底面を形成する請求項1記載の複合容器の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れか一項記載の製造方法に用いる複合容器の製造装置。
【請求項7】
請求項1~5のうち何れか一項記載の製造方法によって製造された複合容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート成形した容器本体の胴部周壁に紙製のスリーブを装着した複合容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーチェーン等で提供されているテイクアウトが可能な飲料用容器として、樹脂製の容器本体の胴部周壁に紙製のスリーブを腹巻き状に装着した複合容器が広く知られている(特許文献1・2等)。こうした複合容器においてスリーブは、商品名・製造者名等の各種情報を印刷したりデザインを施したパッケージ機能の他、胴部周壁の補強機能や、商品が熱い飲み物であれば火傷を防止する断熱機能を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-87033号公報
【特許文献2】特開2022-110041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した複合容器では、通常、飲料を入れる容器本体の胴部は周壁が底に向かって窄む逆円錐状であり、これに相似するスリーブを装着しているため、不用意に容器本体を持てばスリーブが抜け落ちるおそれがある。よって、スリーブを容器本体に定着することが好ましいところ、その一手段として「胴部周壁とスリーブとの接着」がある。
【0005】
しかしながら、当該接着を樹脂製容器の製造工場で行う場合、容器本体を樹脂成形する設備とは全く性質が異なる設備、即ち、胴部周壁に接着剤を塗布する設備や、スリーブを展開した扇状の原紙を胴部周壁に巻き付ける設備が必要となり、全体の製造ラインが複雑化するという課題がある。また、消費者側で容器本体とスリーブを分別して廃棄する際、接着部分でスリーブを胴部周壁から完全に剥がすことが難しくなるという課題もある。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、スリーブを接着によらず容器本体に定着する複合容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために本発明では、シート成形した容器本体の胴部周壁に筒状のスリーブを装着した複合容器の製造方法であって、前記胴部周壁を錐状として前記容器本体をシート成形し、該成形後、前記容器本体の小径側を上向きにして前記胴部周壁の外側に前記スリーブを落とし込んで挿入し、該挿入後、前記胴部周壁の小径側端部をプレスによって圧壊して前記スリーブの抜止部を形成し、前記容器本体と前記スリーブを一体にするという手段を用いた。なお、本発明において「圧壊」の用語は、「圧力を加えてつぶすこと。おしつぶすこと。」を意味する(広辞苑7版、大辞林4.0)。
【0008】
上述した手段において、まず容器本体の成形方法については、熱可塑性樹脂シートを加熱軟化し、金型に密着させる従来のシート成形法を踏襲することができ、真空成形法、圧空成形法、これらを併用した真空圧空成形法等によって容器本体を成形する。胴部周壁は、大径側を開口部とした截頭錐状に形成され、スリーブよりも両端面距離を大きく確保することで、スリーブの挿入後、該スリーブの小径側開口部から露出し、圧壊によって拡径した抜止部を形成する部分(以下、「圧壊代」という。)を小径側端部に有するように形成する。このため容器本体のシート成形には、胴部周壁の小径側端部に圧壊代を形成する雌型を用いる。つまり、この雌型は、その容器に求められる容量に見合った深さに圧壊代の高さを足した深さとなる。なお、外形については直円錐とする他、直角錐であってもよい。
【0009】
一方、スリーブについても展開時に扇状をなす紙製原紙を筒状に形成する点は従来技術を踏襲することができる。ただし、スリーブの素材は紙以外であってもよく、扇状の展開原紙からではなく、当初より円筒状に成形したものを含む。また、装着面であるスリーブの内形は胴部周壁の外形と相似する錐面を有していることが好ましいが、装着面ではないスリーブの外形や容器本体胴部周壁の内形については錐面以外の任意の形状とすることも自由である。さらに、スリーブは小径側と大径側の両端とも開口した筒状であるが、容器本体の胴部周壁についても両端とも開口した筒状のものも除外しない。容器本体のシート成形時に有底とするかどうかは本発明にとって二次的だからである。
【0010】
次に、スリーブの挿入工程では、小径側を上向きとした胴部周壁の上空から、筒状のスリーブを、大径側を下向きとして真下に落下させることによって、胴部周壁に対してスリーブを簡単に挿入することができる。ただし、容器本体をスリーブ側に押し上げて装着することであってもよい。いずれにせよ、スリーブの挿入完了後は、胴部周壁の小径側端部をスリーブの小径側開口部から突出(露出)させて圧壊代を確保する。
【0011】
そして抜止部を形成する工程では、プレスによって前記胴部周壁の小径側端部(の圧壊代)を圧壊して前記スリーブの抜止部を形成する。この抜止部は圧壊代を圧壊することによってスリーブの小径側開口部よりも大径に拡径したものであるから、抜止部を底側とする通常の使用状態において、スリーブが下にずり落ちそうになっても抜止部に引っ掛かって胴部周壁から抜け落ちることを防止することができる。
【0012】
なお、抜止部を形成した後は容器本体を金型から離型することはもちろんであり、必要に応じて胴部周壁の大径側開口部に連続するフランジをトリミングしたりバリ取りするなど、従来のシート成形で行われる最終工程を経て複合容器の製造を完了する。
【0013】
従来技術と比較すると、従来はスリーブを装着する工程では、展開したスリーブ原紙を容器本体胴部周壁に巻き付けるのに対して、本発明では予め筒状としたスリーブを落下等によって挿入するだけで済む。また、スリーブを定着させる工程についても、従来は接着剤を塗布するのに対して、本発明では容器本体の圧壊代を圧壊するだけである。このように、従来技術では容器本体のシート成形が完了し、樹脂シートが完全に硬化していることを前提として、その後にシート成形とは全く関連性のないスリーブの巻き付け工程や接着工程が必要となるのに対して、本発明では容器本体のシート成形中にスリーブの装着から定着までを一貫して行うことができる。
【0014】
なお、上述した手段に付加する具体的手段を列挙すると、容器本体のシート成形時に、胴部周壁の小径側端部周囲にアンダーカット部を形成することが好ましい。アンダーカット部によって、プレス時に圧壊代が座屈し、安定的に抜止部を形成することができるからである。
【0015】
また、胴部周壁にアンダーカット部までプラグを差し込み、前記アンダーカット部を前記プラグとプレスとで挟み込んで抜止部を形成することが好ましい。プラグが受けとなり、プレス単独よりも抜止部を確実に形成することができ、歩留まりを良くすることができるからである。
【0016】
なお、容器本体のシート成形時に、胴部周壁の小径側端面を閉塞する底面を形成することで、複合容器を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容器本体のシート成形中にスリーブの定着(抜け止め)までを一貫して行うことができるため、シート成形と本来的に無関係な接着剤やこれを塗布する設備を一切必要とせず、効率よく複合容器を製造することができるうえ、容器本体とスリーブは未接着であるから両者を確実に分別廃棄することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の製造方法によって製造した複合容器の半裁正面図
図2】本発明の製造方法の一実施形態を示す工程図
図3】同、工程(c)の詳細図(圧壊前)
図4】同、工程(c)の詳細図(圧壊後)
図5】同、容器本体の寸法を示す断面図
図6】同、アンダーカット部の寸法を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1図2図4に示した製造方法によって製造した複合容器の完成品を示したもので、容器本体1の胴部をなす胴部周壁2に紙製のスリーブ3を装着してなる。容器本体1の胴部周壁2とスリーブ3はともに、下に向かって縮径する逆截頭円錐状であり、胴部周壁2の底部(小径側端部)にはスリーブ3の抜止部4を形成している。この抜止部4はスリーブ3の底側(小径側)の開口部3aよりも大径に形成されることで、スリーブ3が抜け落ちないようにするもので、その形成方法に本発明に係る製造方法の特徴を有する。
【0020】
図2は、当該製造方法の工程を示したもので、同図(a)の工程では容器本体1のシート成形、(b)の工程ではスリーブ3の装着(挿入)、(c)の工程では抜止部4の形成をそれぞれ行う。
【0021】
各工程について詳述すると、まず工程(a)は、熱可塑性樹脂シートを加熱軟化し、これをシート成形用の金型に密着させるもので、胴部周壁2の小径側端部(図面上、上端部)に周設した内方に窪むV溝状のアンダーカット部5を含めて、従来公知のシート成形方法により有底の容器本体1を成形する。この工程(a)で最低限必要なことは、胴部周壁2の高さ(両端面距離)をスリーブ3よりも一定長大きくし、胴部周壁3の底側(小径側端部)に抜止部4を形成するための圧壊代を確保することである。このため、この実施形態では、当該シート成形に用いる金型として、通常よりも圧壊代の高さ分だけ深さを大きくした雌型を用いている。なお、工程(a)の図は、説明の便宜上、半離型の状態を示している。
【0022】
次の工程(b)では、胴部周壁2の外側にスリーブ3を挿入する。ここで必要なことは、胴部周壁3のアンダーカット部5近傍から底面1aまでの一定範囲をスリーブ3の小径側開口部3aから露出(突出)させることである。このような露出部分を圧壊代として抜止部4を形成する必要があるからである。
【0023】
なお、この実施形態では、容器本体1とスリーブ3の双方を通常の使用状態とは上下逆さまとした製造工程を示している。これはスリーブ3を胴部周壁2の真上に位置させ、大径側開口部3bを下向きに落下させれば、スリーブ3の重さによってほぼ自動的に挿入が完了するため簡便だからである。また、次の工程(c)までにスリーブ3の抜けが防止できるからである。ただし、容器本体1を上昇させてスリーブ3を装着してもよいし、工程(c)までスリーブ3の挿入状態が維持できるのであれば、底を下向き(通常の使用状態)とし、スリーブ3を上昇させるか、容器本体1を下降させるなどの挿入方法も排除しない。
【0024】
そして、工程(c)では、スリーブ3の小径側開口部3aから突出する胴部周壁2の圧壊代6を圧壊して、図1で説明した抜止部4を形成する。この実施形態では、図3・4に詳しく示すように、胴部周壁2の大径側開口部から錐状のプラグ7を上向きに差し込み、その天面でアンダーカット部5を支持し、続いて上方から容器底面1aに向かって圧壊部8aを有するプレス8を下降し、両者7・8で圧壊代6を挟み込んで抜止部4を形成する。これによって、アンダーカット部5を起点に圧壊代6が座屈し、圧壊代6を確実に拡径状に圧壊することができる。なお、この実施形態では、プレス8の下面に断面ハの字の内壁を有した圧壊部8aを形成しており、前記ハの字状の内壁によって、圧壊代6を圧壊する際に拡径側に誘導可能としている。ただし、プレス8の下面は平面としてもよい。また、本実施形態では容器本体が冷却硬化した状態で圧壊代6を圧壊するが、胴部周壁を変形させない限り、完全に硬化する前のやや軟化状態で当該圧壊作業を行うことも排除せず、プラグ7または/およびプレス8をヒーター付きとすれば、圧壊代6だけを軟化させて、より速やかに圧壊作業を行うことが可能である。
【0025】
この実施形態における寸法の意義を図5に基づいて説明する。まず、胴部周壁2の全高H(両端面距離)は、スリーブ3の全高と比べて、少なくとも圧壊代6の高さH1(アンダーカット部5の近傍から底面1aまでの距離)だけ大きく設定する。そして、圧壊代6の高さH1・底面1aの直径R1・アンダーカット部5を横断する部分の直径R2は、圧壊後の抜止部4の直径がスリーブ3の小径側開口部3aよりも大きくなるように設定する。即ち、スリーブ3を基準として、これらの寸法を決定することができる。なお、抜止部4の直径の最大値については上限を規定するものではなく、より直径が大きい抜止部4とすれば、ワイングラスで言うところの「フット」や「プレート」の部分が大きくなり、本複合容器をテーブル等に置いたときの安定性が増す。
【0026】
また、圧壊代6については、図6に示すように、アンダーカット部5を逆テーパー面5aと水平面5bとで構成することで、両面の交点5cを起点として逆テーパー面5aを確実に外側に拡径した状態で座屈させることができる。また、逆テーパー面5aの長さを水平面5bよりも大きく設定することで、逆テーパー面5aが「くの字」に折れ曲がり(図4参照)、リブ作用によって容器底部の強度を増すこともできる。特に、逆テーパー面5aと底面1aの間を垂直面5dとすれば、逆テーパー面5aと垂直面5dまでを、より確実に「くの字」に折曲させることができる。
【0027】
いずれにしてもアンダーカット部5は圧壊代6が外側に折れ曲がるよう方向性を持たせるもので、これにより圧壊代6を確実に拡開変形させて抜止部4の実現性を向上している。
【符号の説明】
【0028】
1 容器本体
2 胴部周壁
3 スリーブ
3a 小径側開口部
4 抜止部
5 アンダーカット部
6 圧壊代
7 プラグ
8 プレス
図1
図2
図3
図4
図5
図6