(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164944
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】原子力発電プラント、原子力発電プラントの制御装置、並びに原子力発電プラントの制御方法
(51)【国際特許分類】
G21D 3/08 20060101AFI20241121BHJP
G21D 3/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G21D3/08 D
G21D3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080691
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】片桐 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギーが系統へと大量に接続された場合の電力需給バランス調整に活用可能な原子力発電プラント、原子力発電プラントの制御装置、並びに原子力発電プラントの制御方法を提供する。
【解決手段】原子炉で発生した蒸気が主蒸気加減弁を介して高圧タービンに与えられるとともに、原子炉で発生した蒸気の一部が調整弁を介して湿分分離加熱器に与えられて高圧タービンからの排気蒸気を加熱するようにされた原子力発電プラントであって、原子炉圧力を前記湿分分離加熱器への蒸気量で制御することを特徴とする原子力発電プラント。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉で発生した蒸気が主蒸気加減弁を介して高圧タービンに与えられるとともに、原子炉で発生した蒸気の一部が調整弁を介して湿分分離加熱器に与えられて高圧タービンからの排気蒸気を加熱するようにされた原子力発電プラントであって、
原子炉圧力を前記湿分分離加熱器への蒸気量で制御することを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項2】
請求項1に記載の原子力発電プラントであって、
前記調整弁の開度が原子炉圧力の設定値と、原子炉圧力の計測値の差に応じて開度制御されることを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項3】
原子炉で発生した蒸気が主蒸気加減弁を介して高圧タービンに与えられるとともに、原子炉で発生した蒸気の一部が調整弁を介して湿分分離加熱器に与えられて高圧タービンからの排気蒸気を加熱するようにされた原子力発電プラントの制御装置であって、
制御装置は、与えられた発電出力指令からタービン発電機出力指令と原子炉熱出力指令を求めるプラント統括制御部と、前記タービン発電機出力指令に応じて前記主蒸気加減弁の開度指令を求める主蒸気加減弁制御部と、前記原子炉熱出力指令に応じて原子炉操作指令と原子炉圧力設定値を求める原子炉制御部と、前記原子炉圧力設定値と原子炉圧力計測値の差分に応じて前記調整弁の開度を制御する圧力制御部を備えることを特徴とする原子力発電プラントの制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の原子力発電プラントの制御装置であって、
前記原子炉圧力設定値と、原子炉圧力計測値との差分が予め設定した値を超過した場合にタービン発電機出力を制御するタービンガバナの開度の変化率を制限することを特徴とする原子力発電プラントの制御装置。
【請求項5】
原子炉で発生した蒸気が主蒸気加減弁を介して高圧タービンに与えられるとともに、原子炉で発生した蒸気の一部が調整弁を介して湿分分離加熱器に与えられて高圧タービンからの排気蒸気を加熱するようにされた原子力発電プラントの制御方法であって、
与えられた発電出力指令からタービン発電機出力指令と原子炉熱出力指令を求め、前記タービン発電機出力指令に応じて前記主蒸気加減弁の開度指令を求め、前記原子炉熱出力指令に応じて原子炉操作指令と原子炉圧力設定値を求め、前記原子炉圧力設定値と原子炉圧力計測値の差分に応じて前記調整弁の開度を制御することを特徴とする原子力発電プラントの制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の原子力発電プラントの制御方法であって、
前記原子炉圧力設定値と、原子炉圧力計測値との差分が予め設定した値を超過した場合にタービン発電機出力を制御するタービンガバナの開度の変化率を制限することを特徴とする原子力発電プラントの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子力発電プラント、原子力発電プラントの制御装置、並びに原子力発電プラントの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力発電プラントの発電機出力制御では、最初に目標発電機出力値と現在の実発電出力値との偏差に応じて原子炉出力を調整したのち、原子炉出力に応じて発生した蒸気をタービンに送気することで実発電出力を目標発電機出力値に調整している。沸騰水型の原子炉では、原子炉内の圧力の急変により冷却材内の蒸気泡(以下ボイド)の状態が変化し、ひいては原子炉出力の急変をもたらす。そのため、原子炉内の圧力が急激に変化しないよう、蒸気タービン入口に設置した流量調整弁(以下主蒸気加減弁)には開閉速度に制限を設けるなどの対策が講じられている。
【0003】
特許文献1には、原子炉を安定に運用しつつ、発電機出力を調整する出力制御装置の一例が示されている。特許文献1では、目標発電機出力値と実発電出力値との偏差に基づき、主蒸気加減弁とタービンとの間に設置して蒸気の一部を他の設備へと供給する抽気弁を制御する。また、前記抽気弁の開閉が発電機出力変化に寄与する度合を求め、発電機出力信号から前記寄与の度合を差し引いた結果(補正発電機出力)と目標発電機出力値との偏差に基づき、原子炉制御棒を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、発電機出力が目標発電機出力に一致するよう、原子炉出力および抽気弁の蒸気量を制御する。制御の起点は原子炉出力であり、原子炉出力の変化に応じた蒸気量の変化と、目標発電機出力に応じた蒸気量の変化との偏差を抽気弁の蒸気量の加減で補償する。また抽気弁の加減弁の開度に制限を与えることで原子炉圧力の急激な変化を防止している。
【0006】
そのため、特許文献1において原子炉の圧力は、抽気弁の蒸気量の加減により増減する。先にも述べた通り原子炉の圧力の急変は原子炉出力の急変をもたらすことから、原子炉圧力の安定制御、発電機出力の追従性の双方において期待される性能を得ることが難しい。
【0007】
本発明は上述した事柄に基づいてなされたものであって、その目的は、原子炉圧力を安定に制御しつつ、発電機出力を柔軟に変更する可能とすることで、再生可能エネルギーが系統へと大量に接続された場合の電力需給バランス調整に活用可能な原子力発電プラント、原子力発電プラントの制御装置、並びに原子力発電プラントの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のことから本発明においては、「原子炉で発生した蒸気が主蒸気加減弁を介して高圧タービンに与えられるとともに、原子炉で発生した蒸気の一部が調整弁を介して湿分分離加熱器に与えられて高圧タービンからの排気蒸気を加熱するようにされた原子力発電プラントであって、原子炉圧力を前記湿分分離加熱器への蒸気量で制御することを特徴とする原子力発電プラント」としたものである。
【0009】
また本発明においては、「原子炉で発生した蒸気が主蒸気加減弁を介して高圧タービンに与えられるとともに、原子炉で発生した蒸気の一部が調整弁を介して湿分分離加熱器に与えられて高圧タービンからの排気蒸気を加熱するようにされた原子力発電プラントの制御装置であって、制御装置は、与えられた発電出力指令からタービン発電機出力指令と原子炉熱出力指令を求めるプラント統括制御部と、タービン発電機出力指令に応じて主蒸気加減弁の開度指令を求める主蒸気加減弁制御部と、原子炉熱出力指令に応じて原子炉操作指令と原子炉圧力設定値を求める原子炉制御部と、原子炉圧力設定値と原子炉圧力計測値の差分に応じて調整弁の開度を制御する圧力制御部を備えることを特徴とする原子力発電プラントの制御装置」としたものである。
【0010】
また本発明においては、「原子炉で発生した蒸気が主蒸気加減弁を介して高圧タービンに与えられるとともに、原子炉で発生した蒸気の一部が調整弁を介して湿分分離加熱器に与えられて高圧タービンからの排気蒸気を加熱するようにされた原子力発電プラントの制御方法であって、与えられた発電出力指令からタービン発電機出力指令と原子炉熱出力指令を求め、タービン発電機出力指令に応じて主蒸気加減弁の開度指令を求め、原子炉熱出力指令に応じて原子炉操作指令と原子炉圧力設定値を求め、原子炉圧力設定値と原子炉圧力計測値の差分に応じて調整弁の開度を制御することを特徴とする原子力発電プラントの制御方法」としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、再生可能エネルギーが系統へと大量に接続された場合の電力需給バランス調整に活用可能な原子力発電プラント制御システム並びに原子力発電プラント制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る原子力発電プラント及び制御システムに関する概略構成図である。
【
図2】プラント統括制御手段101の概略構成例を示す図。
【
図3】主蒸気加減弁制御部102の概略構成例を示す図。
【
図4】原子炉制御手段103の概略構成例を示す図。
【
図6】原子力発電プラントで発電出力を制御した場合のプラントの運転特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例0014】
本発明における原子力発電プラントならびにプラント制御装置の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1の原子力発電プラント1は、プラント制御装置100により制御される。
【0015】
図1の原子力発電プラント1は、原子炉2、蒸気タービン(高圧タービン3、低圧タービン5)、発電機7を主たる構成機器として構成されており、原子炉2で発生した蒸気を、主蒸気加減弁8を介して高圧タービン3に与えてこれを回転駆動し、また蒸気の一部が調整弁9を介して湿分分離加熱器4に与えられることで、高圧タービン3から排出された蒸気を再加熱して低圧タービンに与えてこれを回転駆動している。また蒸気タービン(高圧タービン3、低圧タービン5)と発電機7が駆動軸6により結合されることで、発電機を回転させ、発電を行う。この構成によれば、原子炉出力が一定であっても、主蒸気加減弁8と調整弁9に流れる蒸気量が変更制御されることで、発電機出力を可変に運用可能である。あるいは、原子炉出力が変更されても、発電出力を一定に運用可能である。
【0016】
まず、
図1の原子力発電プラント1における主たる構成機器である原子炉2について説明する。図における原子炉2は一例として沸騰水型軽水炉を表している。沸騰水型軽水炉は内部に燃料体(燃料棒)を装荷し、冷却水(原子炉給水51)を一定水位まで満たした圧力容器である。原子炉2には燃料体の核分裂を制御するための制御棒が装荷されており、制御棒の位置によって核分裂の速度が決まる。制御棒を引き抜くことで核分裂反応が進行し、発生した熱によって原子炉内冷却水が沸騰、原子炉上部より蒸気が得られる。
【0017】
また、本図には図示していないが、原子炉冷却水の一部を原子炉2より引抜き、原子炉下部へと再循環する方法においても原子炉2の熱出力を制御可能である。
【0018】
原子炉2で発生した蒸気は、主蒸気加減弁8を通過した後、高圧タービン3を駆動する。また、高圧タービン3の排気蒸気は、湿分分離加熱器4で原子炉2からの蒸気の一部で再加熱され、低圧タービン5を駆動する。
【0019】
湿分分離加熱器4における蒸気の再熱源として、原子炉2からの蒸気の一部を用いる。この蒸気は主蒸気加減弁8の上流から分岐したもので、調整弁9によって流量を調整した後、湿分分離加熱器4へと供給する。加熱に用いられた蒸気は凝縮、ドレン化して原子炉給水51の一部となる。
【0020】
高圧タービン3及び低圧タービン5の駆動力は駆動軸6を経て発電機7を回転し、電力を得る。また低圧タービン5を駆動したあとのタービン排気9は復水器(図示せず)にて復水され、原子炉給水51として原子炉2へと再投入される。
【0021】
以上に述べた原子力発電プラント1は、プラント制御装置100により制御される。本実施例のプラント制御装置100は、発電出力指令10を中央給電指令所からの指令として得て、原子力圧力計測値17、発電機出力計測値13を帰還信号とする制御系を構成している。
【0022】
またプラント制御装置100は、発電出力指令10に基づいて原子力発電プラント1の全体をバランスさせるべく制御する上位制御系としてのプラント統括制御部101と、プラント統括制御部101の出力に応じて原子力発電プラント1の各部を制御する下位制御系としての主蒸気加減弁制御部102、原子炉制御部103を備える。またさらに原子炉制御部103の上位制御系として圧力制御部104を備える。
【0023】
この制御系の構成は、要するにプラント統括制御部101において、原子力発電プラント1の入力に相当する原子炉熱出力指令12と、原子力発電プラント1の出力に相当するタービン発電機出力指令11を定め、原子炉制御部103が原子炉熱出力指令12に応じて原子炉操作指令15と原子炉圧力設定値16を定め、主蒸気加減弁制御部102がタービン発電機出力指令11に応じて主蒸気加減弁開度指令14を定めたものである。さらに圧力制御部104が原子炉圧力設定値16に応じて圧力調整弁開度指令18を定めたものである。
【0024】
以下各制御部の動作について詳細に説明する。まずプラント統括制御部101の概略構成例を
図2に示す。プラント統括制御部101は、発電出力指令10に基づきタービン発電機出力指令11および原子炉熱出力指令12を出力する。
【0025】
プラント統括制御部101では、最初に発電出力制御手段110において、発電出力指令10に対してタービン発電機7が追従可能な指令となるよう圧力制限前タービン発電機出力指令19を求める。
【0026】
次に、加減弁開度補正手段111において圧力調整弁制御部104より原子力圧力偏差21を入力し、原子炉圧力偏差が一定範囲外となった場合には前記圧力制限前タービン発電機出力指令19の変化率を制限したものをタービン発電機出力指令11として出力する。原子力圧力偏差21は詳細を後述する圧力制御部104の出力である。
【0027】
さらに、熱出力制御手段112において、発電出力指令10に対して原子炉熱出力が追従可能な指令となるよう発電出力指令10から原子炉熱出力指令12を求める。
【0028】
主蒸気加減弁制御部102の概略構成例を
図3に示す。主蒸気加減弁制御部102は、タービン発電機出力指令11と発電機出力計測値13を入力し、主蒸気加減弁開度指令14を出力する。
【0029】
図3の主蒸気加減弁制御部102では、タービン発電機出力指令11と発電機出力計測値13の差から、発電出力偏差20を求める。また加減弁制御手段113においてこの発電出力偏差20がゼロとなる、すなわち発電機出力指令と出力計測値が一致するように、主蒸気加減弁開度指令14を計算し、出力する。
【0030】
原子炉制御部103の概略構成例を
図4に示す。原子炉制御部103は、原子炉熱出力指令12を入力し、原子炉操作指令15および原子炉圧力設定値16を出力する。
【0031】
原子炉制御部103では、制御棒制御手段114において原子炉熱出力指令12に対して原子炉熱出力が追従する原子炉操作指令15を求める。また、圧力目標値設定手段115において原子炉熱出力指令12から原子炉圧力設定値16を求める。
【0032】
圧力制御部104の概略構成例を
図5に示す。圧力制御部104は、原子炉圧力設定値16と原子炉圧力計測値17を入力し、圧力調整弁開度指令18を出力する。
【0033】
圧力制御部104では、圧力調整弁制御手段116において前記原子炉圧力偏差21がゼロとなるよう圧力調整弁開度指令18を計算、出力する。本実施例において圧力調整弁開度指令18は、湿分分離加熱器4への蒸気流量を調整する調整弁9の制御に用いる。
【0034】
なお、原子力圧力偏差21はプラント統括制御部101にてタービン発電機出力指令の制限に用いる。
【0035】
先にも述べた通り、従来原子力発電プラントで発電出力を制御する場合の操作の起点は原子炉であり、原子炉の熱出力の増加に応じて主蒸気加減弁を増加する。これに対して本発明のプラント制御装置では、中央給電指令所の発電出力指令10に対して主蒸気加減弁8と原子炉2の両者を操作の起点とし、これらを同時に制御する。また、制御の結果生じたタービンでの蒸気消費量と、原子炉2での蒸気発生量との差異を圧力調整弁9にて調整する。圧力調整弁9を通過する蒸気流量は湿分分離加熱器4において蒸気の再加熱に用いられており、負荷制御においてこの蒸気流量が増減することとなる。
【0036】
次に、原子力発電プラントで発電出力を制御した場合のプラントの運転特性について、
図6を用いて説明する。本図は、中央給電指令所からの発電出力指令の増減に応じて原子炉2、タービン発電機および調整弁を制御した場合のプラント内の各部運転特性を時系列グラフにて示したものである。図の横軸はいずれも時間を表し、時刻T1に出力降下、時刻T2に出力上昇を実施している。また、縦軸aからgはプラント内の各部運転特性を表し、定格運転状態を100%に正規化して図示している。
【0037】
図6において、軸aは発電出力を表し、発電出力指令および発電機出力をそれぞれ図示している。なお
図6のaでは、発電出力指令が先行的に変化し、これに遅れて発電機出力が同じ方向に追従変化していることを表している。
【0038】
因みに、時刻T1に発電出力指令が降下した場合、軸bに示す主蒸気加減弁開度を絞ることで軸cの主蒸気加減弁を通過する蒸気流量が減少し、軸aの発電機出力が降下する。他方、原子炉においても熱出力を降下すべく制御棒の位置を軸dに示すとおり増加(すなわち炉心へと挿入)することで炉心での反応を抑制する。その結果、軸eに示す原子炉蒸気発生量は時間遅れをともなって減少する。
【0039】
本発明では、発電出力指令の降下に際して軸fに示す調整弁の開度を従来の運転時(点線にて示す)に比べて高く維持する。その結果、軸gに示す原子炉圧力は一時的には上昇するものの炉心の反応に影響を及ぼさない程度に抑えられる。軸bに示す主蒸気加減弁開度が発電機出力指令に比して一時的に低く推移する(行き過ぎる)のは、軸gに示す原子炉圧力の一時的な上昇にともなう主蒸気加減弁蒸気流量の増加、すなわち発電機出力の上昇を抑制したものである。
【0040】
同じく
図6を用いて、時刻T2に発電出力が上昇した場合のプラントの運転特性を説明する。
【0041】
時刻T2に発電出力指令が上昇した場合、軸bに示す主蒸気加減弁開度を開くことで軸cの主蒸気加減弁を通過する蒸気流量が増加し、軸aの発電機出力が上昇する。他方、原子炉においても熱出力を増加すべく制御棒の位置を軸dに示すとおり下げる(すなわち炉心から引き抜く)ことで炉心での反応を促進する。その結果、軸eに示す原子炉蒸気発生量は時間遅れをともなって増加する。
【0042】
本発明では、発電出力指令の上昇に際して軸fに示す調整弁の開度を従来の運転時(点線にて示す)に比べて低く維持する。その結果、軸gに示す原子炉圧力は一時的には降下するものの炉心の反応に影響を及ぼさない程度に抑えられる。軸bに示す主蒸気加減弁開度が発電機出力指令に比して一時的に高く推移する(行き過ぎる)のは、軸gに示す原子炉圧力の一時的な低下にともなう主蒸気加減弁蒸気流量の減少、すなわち発電機出力の減少を補償したものである。
【0043】
なお、本発明による発電出力の調整幅(すなわち負荷変化性能)は、湿分分離加熱器へ供給可能な蒸気供給量の変動幅によることから、一般的な石炭火力やガス火力に見られる急速かつ大幅な負荷変化ではなく、電力需給バランスの微調整に適用する。本発明により湿分分離加熱器における蒸気の再加熱量は変動するが、上記用途の範囲内で出力調整する場合には低圧タービン入口における蒸気温度の変動は寡少であり、発電出力への影響もまた小さい。
【0044】
本発明における原子力発電プラントならびにプラント制御装置は、既に実用化されている原子力発電プラントの設備構成に大幅な変更を必要とせず、制御装置の改修のみによって実現することが可能である。そのため、既に稼働中の原子力発電プラントを出力調整の用として活用することが可能となる。
【0045】
また、本発明の原子力発電プラントならびにプラント制御装置は、湿分分離加熱器への蒸気流量を以て原子炉の圧力を制御することにより、出力調整のみならず、原子炉、タービン双方に起因する圧力変動要因に対しても原子炉圧力を安定に制御することが可能である。そのため発電機出力変更時だけでなく、一定出力運転時においても原子炉を安定に運用することが可能となる。
【0046】
以上に述べた本発明になる原子力発電プラントのプラント制御装置によれば、プラント統括制御手段において、中給からの発電出力指令に応じてタービン発電機の出力指令ならびに原子炉の熱出力指令を決定する。タービン発電機は前記タービン発電機の出力指令に従い、また原子炉は前記原子炉熱出力指令に従いそれぞれを制御する。原子炉の熱出力の変化によって原子炉からの蒸気発生量が、タービン発電機の出力指令の変化によってタービンでの蒸気消費量がそれぞれ変化することで、原子炉とタービン発電機の間での蒸気量にアンマッチが生じる。このアンマッチは原子炉上部の圧力の変化として現れる。そこで、原子炉の圧力の計測値を、原子炉の圧力目標値に一致するよう原子炉圧力調整弁の開度を加減することで、原子炉の急激な圧力変化を抑制して原子炉を安定に稼働することが可能となる。
【0047】
また、本発明になる原子力発電プラントのプラント制御装置によれば、原子炉圧力調整弁の開度の加減により原子炉の急激な圧力変化を抑制する。そのため、タービンへと流入する蒸気量の予期しない変動を抑制し、発電出力指令に追従する、高品質な電力を得ることが可能となる。
本発明は原子力発電プラント、なかでも原子炉で発生した主蒸気をタービンへと送出、発電する沸騰水型原子力発電プラントおよびプラント出力制御装置に利用可能である。