(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164950
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/203 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H01P1/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080699
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤口 修平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲三
(72)【発明者】
【氏名】立松 雅大
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 敬悟
(72)【発明者】
【氏名】照井 智理
(72)【発明者】
【氏名】芦田 裕太
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HB04
5J006HB05
5J006HB15
5J006JA01
5J006JA11
5J006JA21
5J006LA03
5J006LA11
5J006MA07
5J006NA07
(57)【要約】
【課題】複数の共振器以外の構造物を利用して所望の特性を実現できるフィルタを実現する。
【解決手段】フィルタ1は、第1の端子2と、第2の端子3と、共振器11~16と、複数のスルーホールT5,T6,T7と、誘電体よりなる本体50とを備えている。複数のスルーホールT5,T6,T7は、共振器11を配置するための第1の領域R1と共振器16を配置するための第2の領域R2との間に位置し、第1の領域R1と第2の領域R2とが並ぶ方向と交差する方向に並んでいる。スルーホールT6は、第1の間隔D1を開けてスルーホールT5に隣接している。スルーホールT7は、第1の間隔D1とは異なる第2の間隔D2を開けてスルーホールT6に隣接している。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と、
第2の端子と、
回路構成上、前記第1の端子と前記第2の端子の間に設けられた第1の共振器および第2の共振器と、
前記第1の共振器を配置するための第1の領域と前記第2の共振器を配置するための第2の領域との間に位置し、前記第1の領域と前記第2の領域とが並ぶ第1の方向と交差する第2の方向に並ぶ複数のスルーホールと、
誘電体よりなり、前記第1の端子、前記第2の端子、前記第1の共振器、前記第2の共振器および前記複数のスルーホールを一体化する本体とを備え、
前記複数のスルーホールは、第1のスルーホールと、第1の間隔を開けて前記第1のスルーホールに隣接する第2のスルーホールと、前記第1の間隔とは異なる第2の間隔を開けて前記第2のスルーホールに隣接する第3のスルーホールとを含むことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
更に、前記第1の端子と前記第1の共振器とを接続する第1の伝送路と、
前記第2の端子と前記第2の共振器とを接続する第2の伝送路とを備えたことを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
前記第1の共振器は、一方向に延在する第1の導体部を含み、
前記第2の共振器は、一方向に延在する第2の導体部を含み、
前記第1の導体部の長さは、前記第1の端子から前記第1の伝送路を経由して前記第1の共振器に至る最短経路の2倍よりも小さく、
前記第2の導体部の長さは、前記第2の端子から前記第2の伝送路を経由して前記第2の共振器に至る最短経路の2倍よりも小さいことを特徴とする請求項2記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第1の伝送路は、前記第1の端子と前記第1の共振器のうちの少なくとも一方に電気的に接続され、
前記第2の伝送路は、前記第2の端子と前記第2の共振器のうちの少なくとも一方に電気的に接続されていることを特徴とする請求項2記載のフィルタ。
【請求項5】
前記第1の伝送路と前記第2の伝送路の各々は、互いに間隔を開けて配置された複数の導体層を含むことを特徴とする請求項2記載のフィルタ。
【請求項6】
前記第1の共振器と前記第2の共振器の各々は、片端短絡型共振器であることを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項7】
更に、前記第1の共振器と前記第2の共振器の各々をグランドに接続するための複数のグランド用スルーホールを備えたことを特徴とする請求項6記載のフィルタ。
【請求項8】
更に、複数の特定のスルーホールを備え、
前記第1の共振器は、第1の導体部を含み、
前記第2の共振器は、第2の導体部を含み、
前記複数の特定のスルーホールは、前記第1の導体部と前記第2の導体部を囲むように配置され、
前記第1の間隔は、前記第2の間隔よりも大きく且つ前記複数の特定のスルーホールのうちの隣接する任意の2つのスルーホールの間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項9】
更に、第1の特定のスルーホールと、
第2の特定のスルーホールとを備え、
前記第1の共振器は、前記第1の特定のスルーホールに電気的に接続され且つ前記第1の特定のスルーホールから前記第2の特定のスルーホールに向かう方向に延在する第1の導体部を含み、
前記第2の共振器は、前記第2の特定のスルーホールに電気的に接続され且つ前記第2の特定のスルーホールから前記第1の特定のスルーホールに向かう方向に延在する第2の導体部を含むことを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項10】
更に、回路構成上、前記第1の共振器と前記第2の共振器との間に設けられた複数の共振器を備えたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の共振器と複数の共振器以外の構造物とを含むフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置に用いられる電子部品の一つには、複数の共振器を備えたバンドパスフィルタがある。複数の共振器の各々は、例えば、一方向に長い導体部を有している。また、バンドパスフィルタには、周囲へ電磁波が放射されることを防止するために、複数の共振器をシールドで囲った構造のものがある。
【0003】
複数の共振器を備えたバンドパスフィルタでは、2つの共振器の間に、他の構造物が設けられる場合がある。例えば、特許文献1には、グラウンド電極に電気的に接続された複数のビアホール導体と、複数のビアホール導体に囲まれた共振器電極と、グラウンド電極に電気的に接続され且つ共振器電極の貫通孔を貫通するように設けられた貫通導体とを備えたバンドパスフィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、共振器電極の貫通孔の形状および大きさを調整することによって、共振器電極において生じる2つの共振の結合度を調整している。すなわち、特許文献1では、共振器そのものの形状を調整することによって、バンドパスフィルタの特性を調整している。一方、従来は、特許文献1の貫通電極のように、共振器以外の構造物の形状および構造によってバンドパスフィルタの特性を調整することは、十分に検討されていなかった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、複数の共振器と複数の共振器以外の構造物とを含むフィルタであって、構造物を利用して所望の特性を実現することができるフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルタは、第1の端子と、第2の端子と、回路構成上、第1の端子と第2の端子の間に設けられた第1の共振器および第2の共振器と、第1の共振器を配置するための第1の領域と第2の共振器を配置するための第2の領域との間に位置し、第1の領域と第2の領域とが並ぶ第1の方向と交差する第2の方向に並ぶ複数のスルーホールと、誘電体よりなり、第1の端子、第2の端子、第1の共振器、第2の共振器および複数のスルーホールを一体化する本体とを備えている。複数のスルーホールは、第1のスルーホールと、第1の間隔を開けて第1のスルーホールに隣接する第2のスルーホールと、第1の間隔とは異なる第2の間隔を開けて第2のスルーホールに隣接する第3のスルーホールとを含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルタでは、複数のスルーホールは、第1の領域と第2の領域とが並ぶ第1の方向と交差する第2の方向に並んでいる。また、複数のスルーホールは、第1のスルーホールと、第1の間隔を開けて第1のスルーホールに隣接する第2のスルーホールと、第1の間隔とは異なる第2の間隔を開けて第2のスルーホールに隣接する第3のスルーホールとを含んでいる。これにより、本発明によれば、所望の特性を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るフィルタの回路構成の一例を示す回路図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係るフィルタの外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における1層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における2層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における4層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図7】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における5層目および6層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図8】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における7層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図9】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における8層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図10】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における9層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図11】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における10層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図12】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における11層目ないし17層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図13】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における18層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図14】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体における19層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図15】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体の内部を示す斜視図である。
【
図16】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体の内部を示す平面図である。
【
図17】本発明の一実施の形態に係るフィルタの本体の内部を示す平面図である。
【
図18】第1のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【
図19】比較例のフィルタの本体の内部を示す平面図である。
【
図20】第2のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【
図21】第1の変形例のフィルタの本体の内部を示す平面図である。
【
図22】第3のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【
図23】第4および第5のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【
図24】第6および第7のモデルの通過減衰特性を示す特性図である。
【
図25】本実施の形態に係るフィルタの等価回路を示す回路図である。
【
図26】第8のモデルの通過減衰特性の一例を示す特性図である。
【
図27】第1のシミュレーションの結果を示す特性図である。
【
図28】第2のシミュレーションの結果を示す特性図である。
【
図29】第3のシミュレーションの結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1を参照して、本発明の一実施の形態に係るフィルタ1の構成の概略について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るフィルタ1の回路構成を示す回路図である。フィルタ1は、第1の端子2と、第2の端子3と、複数の共振器とを備えている。第1および第2の端子2,3の各々は、信号の入力または出力のための端子である。すなわち、第1の端子2に信号が入力される場合には、第2の端子3から信号が出力される。第2の端子3に信号が入力される場合には、第1の端子2から信号が出力される。
【0011】
複数の共振器は、回路構成上、第1の端子2と第2の端子3の間に設けられている。また、複数の共振器は、回路構成上隣接する2つの共振器が電磁結合するように構成されている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0012】
図1に示したように、本実施の形態では特に、複数の共振器は、6つの共振器11,12,13,14,15,16を含んでいる。6つの共振器11,12,13,14,15,16は、回路構成上、第1の端子2側からこの順に配置されている。共振器11~16は、共振器11,12が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器12,13が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器13,14が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器14,15が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器15,16が回路構成上隣接して電磁結合するように構成されている。また、本実施の形態では特に、回路構成上隣接する2つの共振器の間の電磁結合は、容量性である。
【0013】
また、共振器11~16は、回路構成上隣接しない特定の2つの共振器が電磁結合するように構成されている。本実施の形態では、共振器12,15の組、共振器11,13の組および共振器14,16の組が電磁結合するように構成されている。本実施の形態では特に、共振器12,15間の電磁結合、共振器11,13間の電磁結合および共振器14,16間の電磁結合は、いずれも、誘導性である。
【0014】
また、本実施の形態では特に、共振器11~16の各々は、一端が短絡され他端が開放された片端短絡型の1/4波長共振器である。
【0015】
フィルタ1は、更に、共振器11,12間の容量結合を実現するキャパシタC1と、共振器12,13間の容量結合を実現するキャパシタC2と、共振器13,14間の容量結合を実現するキャパシタC3と、共振器14,15間の容量結合を実現するキャパシタC4と、共振器15,16間の容量結合を実現するキャパシタC5とを備えている。
【0016】
共振器11,16の一方は、本発明の「第1の共振器」に対応し、共振器11,16の他方は、本発明の「第2の共振器」に対応する。
【0017】
フィルタ1は、更に、第1の端子2と共振器11とを接続する第1の伝送路4と、第2の端子3と共振器16とを接続する第2の伝送路5とを備えている。第1の伝送路4は、インダクタL1を含んでいる。インダクタL1の一端は、第1の端子2に電気的に接続されている。インダクタL1の他端は、共振器11に電気的に接続されている。すなわち、共振器11は、インダクタL1を介して、第1の端子2に電気的に接続されている。第1の伝送路4は、第1の端子2と共振器11に電気的に接続されている。
【0018】
第2の伝送路5は、インダクタL2を含んでいる。インダクタL2の一端は、第2の端子3に電気的に接続されている。インダクタL2の他端は、共振器16に電気的に接続されている。すなわち、共振器16は、インダクタL2を介して、第2の端子3に電気的に接続されている。第2の伝送路5は、第2の端子3と共振器12に電気的に接続されている。
【0019】
なお、本出願において、「電気的に接続」という表現は、金属導体(インダクタを含む)を介して電気的に接続する場合を含むが、キャパシタを介して接続する場合を含まない。
【0020】
本実施の形態では、共振器11~16、キャパシタC1~C5およびインダクタL1,L2は、フィルタ1が、所定の周波数帯域内の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタとして機能するように構成されている。
【0021】
次に、
図2を参照して、フィルタ1のその他の構成について説明する。
図2は、フィルタ1の外観を示す斜視図である。
【0022】
フィルタ1は、更に、誘電体よりなり、第1の端子2、第2の端子3、共振器11~16、キャパシタC1~C5およびインダクタL1,L2を一体化するための本体50を備えている。本体50は、積層された複数の誘電体層と、複数の導体(複数の導体層および複数のスルーホール)とを含んでいる。共振器11~16、キャパシタC1~C5およびインダクタL1,L2は、本体50内に設けられた複数の導体によって構成されている。
【0023】
本体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する底面50Aおよび上面50Bと、底面50Aと上面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、底面50Aおよび上面50Bに対して垂直になっている。
【0024】
ここで、
図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。
【0025】
図2に示したように、底面50Aは、本体50における-Z方向の端に位置する。上面50Bは、本体50におけるZ方向の端に位置する。側面50Cは、本体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、本体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、本体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、本体50におけるY方向の端に位置する。
【0026】
フィルタ1は、更に、本体50の底面50Aに設けられた電極111,112を備えている。電極111は、側面50Cの近傍に配置されている。電極112は、側面50Dの近傍に配置されている。電極111は第1の端子2に対応し、電極112は第2の端子3に対応する。従って、第1および第2の端子2,3は、本体50の底面50Aに設けられている。
【0027】
フィルタ1は、更に、本体50の底面50Aに設けられた複数のグランド電極113を備えている。本実施の形態では特に、複数のグランド電極113は、電極111,112と側面50Eとの間に配置された複数の電極と、電極111,112と側面50Fとの間に配置された複数の電極と、電極111と電極112との間に配置された複数の電極とを含んでいる。複数のグランド電極113の各々は、グランドに接続される。
【0028】
次に、
図3ないし
図14を参照して、本体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体の一例について説明する。この例では、本体50は、積層された19層の誘電体層を有している。以下、この19層の誘電体層を、下から順に1層目ないし19層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし19層目の誘電体層を符号51~69で表す。
【0029】
図3ないし
図12において、複数の円は複数のスルーホールを表している。誘電体層51~67の各々には、複数のスルーホールが形成されている。複数のスルーホールは、それぞれ、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填することによって形成される。複数のスルーホールの各々は、電極、導体層または他のスルーホールに接続されている。以下の説明では、複数のスルーホールの各々と、電極、導体層または他のスルーホールとの接続関係については、1層目ないし19層目の誘電体層51~69が積層された状態における接続関係について説明している。また、
図3ないし
図12では、複数のスルーホールのうちの複数の特定のスルーホールに、それぞれ符号を付している。
【0030】
図3は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51のパターン形成面には、電極111,112と、複数のグランド電極113とが形成されている。
【0031】
図3において符号51T1,51T2を付したスルーホールは、それぞれ電極111,112に接続されている。なお、以下の説明では、符号51T1を付したスルーホールを、単にスルーホール51T1と記す。また、スルーホール51T1以外の符号を付したスルーホールについても、スルーホール51T1と同様に記す。
【0032】
図4は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52のパターン形成面には、導体層521が形成されている。また、スルーホール51T1,51T2は、それぞれ、
図4に示したスルーホール52T1,52T2に接続されている。
図4に示したスルーホール52T5,52T6,52T7は、導体層521に接続されている。
【0033】
図5は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。スルーホール52T1,52T2,52T5,52T6,52T7は、それぞれ、
図5に示したスルーホール53T1,53T2,53T5,53T6,53T7に接続されている。
【0034】
図6は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、インダクタ用の導体層541,542が形成されている。スルーホール53T1と
図6に示したスルーホール54T1a,54T1bは、導体層541に接続されている。スルーホール53T2と
図6に示したスルーホール54T2a,54T2bは、導体層542に接続されている。スルーホール53T5,53T6,53T7は、それぞれ、
図6に示したスルーホール54T5,54T6,54T7に接続されている。
【0035】
図7は、5層目および6層目の誘電体層55,56の各々のパターン形成面を示している。スルーホール54T1a,54T1b,54T2a,54T2b,54T5,54T6,54T7は、それぞれ、誘電体層55に形成されたスルーホール55T1a,55T1b,55T2a,55T2b,55T5,55T6,55T7に接続されている。また、誘電体層55,56では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0036】
図8は、7層目の誘電体層57のパターン形成面を示している。誘電体層57のパターン形成面には、インダクタ用の導体層571,572が形成されている。誘電体層56に形成されたスルーホール55T1a,55T1bと
図8に示したスルーホール57T1は、導体層571に接続されている。誘電体層56に形成されたスルーホール55T2a,55T2bと
図8に示したスルーホール57T2は、導体層572に接続されている。誘電体層56に形成されたスルーホール55T5,55T6,55T7は、それぞれ、
図8に示したスルーホール57T5,57T6,57T7に接続されている。
【0037】
図9は、8層目の誘電体層58のパターン形成面を示している。誘電体層58のパターン形成面には、導体層581,582が形成されている。また、スルーホール57T1,57T2,57T5,57T6,57T7は、それぞれ、
図9に示したスルーホール58T1,58T2,58T5,58T6,58T7に接続されている。
【0038】
図10は、9層目の誘電体層59のパターン形成面を示している。誘電体層59のパターン形成面には、共振器用の導体層591,592,593,594,595,596と、導体層597が形成されている。導体層591,596の各々は、一方向に延在する部分を含んでいる。導体層592~595の各々は、一方向に長い形状を有している。
【0039】
スルーホール58T1,58T2は、それぞれ、導体層591,596に接続されている。
図10に示したスルーホール59T3,59T4は、それぞれ、導体層592,595に接続されている。スルーホール58T5,58T6,58T7は、それぞれ、
図10に示したスルーホール59T5,59T6,59T7に接続されている。
【0040】
図11は、10層目の誘電体層60のパターン形成面を示している。誘電体層60のパターン形成面には、導体層601,602,603が形成されている。また、スルーホール59T3,59T4,59T5,59T6,59T7は、それぞれ、
図11に示したスルーホール60T3,60T4,60T5,60T6,60T7に接続されている。
【0041】
図12は、11層目ないし17層目の誘電体層61~67の各々のパターン形成面を示している。スルーホール60T3,60T4,60T5,60T6,60T7は、それぞれ、誘電体層61に形成されたスルーホール61T3,61T4,61T5,61T6,61T7に接続されている。また、誘電体層61~67では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0042】
図13は、18層目の誘電体層68のパターン形成面を示している。誘電体層68のパターン形成面には、導体層681が形成されている。誘電体層67に形成されたスルーホール61T3,61T4,61T5,61T6,61T7は、導体層681に接続されている。
【0043】
図14は、19層目の誘電体層69のパターン形成面を示している。誘電体層69のパターン形成面には、マーク691が形成されている。
【0044】
図2に示した本体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が本体50の底面50Aになり、19層目の誘電体層69のパターン形成面が本体50の上面50Bになるように、1層目ないし19層目の誘電体層51~69が積層されて構成される。
【0045】
図15は、1層目ないし19層目の誘電体層51~69が積層されて構成された本体50の内部を示している。
図15に示したように、本体50の内部では、
図3ないし
図13に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。なお、
図15では、マーク691を省略している。
【0046】
以下、
図1に示したフィルタ1の構成要素と、
図2ないし
図14に示した本体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。共振器11は、共振器用の導体層591によって構成されている。共振器12は、共振器用の導体層592と、スルーホール59T3,60T3,61T3とによって構成されている。
【0047】
共振器13は、共振器用の導体層593によって構成されている。共振器14は、共振器用の導体層594によって構成されている。
【0048】
共振器15は、共振器用の導体層595と、スルーホール59T4,60T4,61T4とによって構成されている。共振器16は、共振器用の導体層596によって構成されている。
【0049】
キャパシタC1は、導体層591,592,601と、これらの導体層の間の誘電体層59とによって構成されている。キャパシタC2は、導体層581,592,593と、これらの導体層の間の誘電体層58とによって構成されている。キャパシタC3は、導体層593,594,602と、これらの導体層の間の誘電体層59とによって構成されている。キャパシタC4は、導体層582,594,595と、これらの導体層の間の誘電体層58とによって構成されている。キャパシタC5は、導体層595,596,603と、これらの導体層の間の誘電体層59とによって構成されている。
【0050】
インダクタL1は、導体層541,571と、スルーホール54T1a,54T1b,55T1a,55T1bとによって構成されている。第1の伝送路4は、インダクタL1を構成する導体層541,571およびスルーホール54T1a,54T1b,55T1a,55T1bと、スルーホール51T1,52T1,53T1,57T1,58T1によって構成されている。
【0051】
インダクタL2は、導体層542,572と、スルーホール54T2a,54T2b,55T2a,55T2bとによって構成されている。第2の伝送路5は、インダクタL2を構成する導体層542,572およびスルーホール54T2a,54T2b,55T2a,55T2bと、スルーホール51T2,52T2,53T21,57T2,58T2によって構成されている。
【0052】
次に、
図1ないし
図17を参照して、本実施の形態に係るフィルタ1の構造上の特徴について説明する。
図16および
図17は、本体50の内部を示す平面図である。
図16は、上面50B側から見た本体50の内部を示している。なお、
図16では、導体層681およびマーク691を省略している。また、
図17は、底面50A側から見た本体50の内部を示している。なお、
図17では、電極111,112と、複数のグランド電極113と、導体層521と、スルーホール51T1,51T2と、複数のグランド電極113に接続された複数のスルーホールとを省略している。
【0053】
始めに、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成された構造物に関わる特徴について説明する。
図15において、符号T3は、スルーホール59T3,60T3,61T3が直列に接続されることによって構成された構造物を示している。以下、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成された構造物についても、スルーホールと言う。
【0054】
本体50は、それぞれ2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成されたスルーホールT3,T4,T5,T6,T7を含んでいる。スルーホールT3の一端は、共振器用の導体層592に接続されている。スルーホールT3の他端は、導体層681に接続されている。共振器12は、導体層592とスルーホールT3とによって構成されている。
【0055】
スルーホールT4は、スルーホール59T4,60T4,61T4が直列に接続されることによって構成されている。スルーホールT4の一端は、共振器用の導体層595に接続されている。スルーホールT4の他端は、導体層681に接続されている。共振器15は、導体層595とスルーホールT4とによって構成されている。
【0056】
スルーホールT5は、スルーホール52T5,53T5,54T5,55T5,57T5,58T5,59T5,60T5,61T5が直列に接続されることによって構成されている。スルーホールT6は、スルーホール52T6,53T6,54T6,55T6,57T6,58T6,59T6,60T6,61T6が直列に接続されることによって構成されている。スルーホールT7は、スルーホール52T7,53T7,54T7,55T7,57T7,58T7,59T7,60T7,61T7が直列に接続されることによって構成されている。スルーホールT5~T7の各一端は、導体層521に接続されている。スルーホールT5~T7の各他端は、導体層681に接続されている。
【0057】
本体50は、更に、複数のスルーホールT8と、複数のスルーホールT9Aと、複数のスルーホールT9Bとを含んでいる。複数のスルーホールT8、複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bの各々は、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成されている。複数のスルーホールT8および複数のスルーホールT9Aの各一端は、導体層521に接続されている。複数のスルーホールT9Bの各一端は、導体層591,593,594,596,597のうちのいずれかに接続されている。複数のスルーホールT8および複数のスルーホールT9Bの各他端は、導体層681に接続されている。複数のスルーホールT9Aの各他端は、導体層591,593,594,596,597のうちのいずれかに接続されている。
【0058】
複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bのうち、導体層591に接続された複数のスルーホールは、共振器11をグランドに接続するためのスルーホールである。
図3ないし
図17に示した例では、導体層591に接続された複数のスルーホールT9Aの数は2つであり、導体層591に接続された複数のスルーホールT9Bの数は5つである。
【0059】
複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bのうち、導体層593に接続された複数のスルーホールは、共振器13をグランドに接続するためのスルーホールである。
図3ないし
図17に示した例では、導体層593に接続された複数のスルーホールT9Aの数と、導体層593に接続された複数のスルーホールT9Bの数は、いずれも、2つである。
【0060】
複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bのうち、導体層594に接続された複数のスルーホールは、共振器14をグランドに接続するためのスルーホールである。
図3ないし
図17に示した例では、導体層594に接続された複数のスルーホールT9Aの数と、導体層594に接続された複数のスルーホールT9Bの数は、いずれも、2つである。
【0061】
複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bのうち、導体層596に接続された複数のスルーホールは、共振器16をグランドに接続するためのスルーホールである。
図3ないし
図17に示した例では、導体層596に接続された複数のスルーホールT9Aの数は2つであり、導体層596に接続された複数のスルーホールT9Bの数は5つである。
【0062】
導体層681は、スルーホールT5~T7、複数のスルーホールT8、複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bを介して導体層521に接続されている。導体層521は、複数のスルーホールを介して複数のグランド電極113に接続されている。導体層521,681は、グランドに接続されるグランド用導体層である。
【0063】
ここで、以下のように、周囲スルーホールを定義する。まず、それぞれ2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成された複数のスルーホールの各々について、本体50の側面50C~50Fのうち、そのスルーホールに最も近い側面を特定する。そして、複数のスルーホールのうち、そのスルーホールと特定された側面との間に他のスルーホールが存在しないスルーホールを、周囲スルーホールと定義する。複数の周囲スルーホールは、側面50C~50Fに沿って配置されている。複数の周囲スルーホールは、スルーホールT5と、複数のスルーホールT8のうちのいくつかと、複数のスルーホールT9Aのうちのいくつかと、複数のスルーホールT9Bのうちのいくつかとを含んでいる。
【0064】
また、以下のように、第1の領域R1と第2の領域R2を定義する。第1の領域R1は、本体50内において共振器11を配置するための領域である。
図16および
図17に示したように、第1の領域R1には、共振器用の導体層591が配置されている。第1の領域R1には、共振器11以外の共振器を構成する導体層は配置されていない。
【0065】
第2の領域R2は、本体50内において共振器16を配置するための領域である。
図16および
図17に示したように、第2の領域R2には、共振器用の導体層596が配置されている。第2の領域R2には、共振器16以外の共振器を構成する導体層は配置されていない。
【0066】
スルーホールT5,T6,T7は、第1の領域R1と第2の領域R2とが並ぶ方向と交差する方向に並んでいる。本実施の形態では特に、第1の領域R1と第2の領域R2は、X方向に平行な方向に並び、スルーホールT5,T6,T7は、Y方向に平行な方向に並んでいる。
【0067】
図16に示したように、スルーホールT6は、第1の間隔D1を開けてスルーホールT5に隣接している。スルーホールT7は、第2の間隔D2を開けてスルーホールT6に新設している。第1の間隔D1と第2の間隔D2は、互いに異なっている。本実施の形態では特に、第1の間隔D1は、第2の間隔D2よりも大きい。また、第1の間隔D1は、複数の周囲スルーホールのうちの隣接する任意の2つのスルーホールの間隔よりも大きい。
【0068】
上述のように、本実施の形態では、第1の間隔D1を比較的大きくしている。これは、共振器11に接続される第1の伝送路4と共振器16に接続される第2の伝送路5が、共第1の伝送路4と第2の伝送路5との間を伝搬するTEモードによって結合されるようにするための要件である。なお、第1の間隔D1の間隔を大きくする代わりに、第2の間隔D2を大きくしてもよい。
【0069】
次に、共振器用の導体層591,596に関わる特徴について説明する。
図16および
図17に示したように、共振器用の導体層591すなわち共振器11は、第1の導体部591Aと、第1の導体部591Aに接続された第3の導体部591Bとを含んでいる。
図16および
図17では、第1の導体部591Aと第3の導体部591Bとの境界を点線で示している。
【0070】
第1の導体部591Aは、一方向に延在している。
図15および
図16に示した例では、上記一方向は、X方向に平行な方向である。第1の導体部591Aには、第1の伝送路4を構成するスルーホール58T1が接続されている。
【0071】
第3の導体部591Bは、第1の導体部591Aと本体50の側面50Cとの間に配置されている。第3の導体部591Bには、複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bが接続されている。
【0072】
図16および
図17に示したように、共振器用の導体層596すなわち共振器16は、第2の導体部596Aと、第2の導体部596Aに接続された第4の導体部596Bとを含んでいる。
図16および
図17では、第2の導体部596Aと第4の導体部596Bとの境界を点線で示している。
【0073】
第2の導体部596Aは、一方向に延在している。
図15および
図16に示した例では、上記一方向は、X方向に平行な方向である。第2の導体部596Aには、第2の伝送路5を構成するスルーホール58T2が接続されている。
【0074】
第4の導体部596Bは、第2の導体部596Aと本体50の側面50Dとの間に配置されている。第4の導体部596Bには、複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bが接続されている。
【0075】
第1の導体部591Aは、第3の導体部591Bを介して複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bに電気的に接続されている。第2の導体部596Aは、第4の導体部596Bを介して複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bに電気的に接続されている。
【0076】
図16および
図17において、記号Lを付した直線は、第1および第2の導体部591A,596Aと交差する仮想の直線を示している。仮想の直線Lは、第1および第2の導体部591A,596Aの各々の延在方向、すなわちX方向に平行な方向に延びている。仮想の直線Lは、第1の導体部591AのY方向に平行な方向における中心と第2の導体部596AのY方向に平行な方向における中心と交差してもよい。
【0077】
スルーホールT5とスルーホールT6は、仮想の直線Lを挟むように配置されている。スルーホールT5と仮想の直線Lとの間隔は、スルーホールT6と仮想の直線Lとの間隔よりも大きくてもよい。Z方向から見たときに、スルーホールT5は、スルーホールT6よりも、本体50の外周部すなわち側面50Eにより近い位置に配置されている。
【0078】
スルーホールT5と仮想の直線Lとの間隔とスルーホールT6と仮想の直線Lとの間隔との和は、第1の間隔D1と等しい。この和は、複数の周囲スルーホールのうちの隣接する任意の2つのスルーホールの間隔よりも大きい。
【0079】
ここで、第3の導体部591Bに接続された複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bのうちの1つのスルーホールを、第1の特定のスルーホールと言う。第1の特定のスルーホールは、仮想の直線Lに最も近いまたは仮想の直線Lと交差するスルーホールであってもよい。また、第4の導体部596Bに接続された複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bのうちの1つのスルーホールを、第2の特定のスルーホールと言う。第2の特定のスルーホールは、仮想の直線Lに最も近いまたは仮想の直線Lと交差するスルーホールであってもよい。
【0080】
第1の導体部591Aは、第1の特定のスルーホールから第2の特定のスルーホールに向かう方向(
図16および
図17に示した例ではX方向)に延在している。第2の導体部596Aは、第2の特定のスルーホールから第1の特定のスルーホールに向かう方向(
図16および
図17に示した例では-X方向)に延在している。
【0081】
周囲スルーホールは、第1の導体部591Aと第2の導体部596Aとを囲むが、第3の導体部591Bと第4の導体部596Bとを囲まないように配置されている。周囲スルーホールは、更に、共振器用の導体層592~595を囲むように配置されている。周囲スルーホールは、導体層521と導体層681とを接続している。導体層521,681および周囲スルーホールは、共振器11~16から周囲へ電磁波が放射されることを防止するシールドとして機能する。
【0082】
次に、第1の伝送路4と第2の伝送路5に関わる特徴について説明する。共振器用の導体層591の第1の導体部591Aの長さは、第1の端子2すなわち電極111から、第1の伝送路4を経由して、共振器11すなわち導体層591に至る最短経路の2倍よりも小さい。共振器用の導体層596の第2の導体部596Aの長さは、第2の端子3すなわち電極112から、第2の伝送路5を経由して、共振器16すなわち導体層596に至る最短経路の2倍よりも小さい。
【0083】
第1の伝送路4は、積層方向Tにおいて互いに間隔を開けて配置された導体層541,571を含んでいる。第2の伝送路5は、積層方向Tにおいて互いに間隔を開けて配置された導体層542,572を含んでいる。
【0084】
次に、複数のシミュレーションの結果を参照して、フィルタ1の構造とフィルタ1の特性との関係について説明する。始めに、第1のモデルのシミュレーション結果について説明する。第1のモデルは、
図2ないし
図17に示した構造を有するフィルタ1のモデルである。シミュレーションでは、第1のモデルについて、第1の端子2と第2の端子3との間の通過減衰特性と、第1の端子2における反射減衰特性を調べた。
【0085】
図18は、第1のモデルの通過減衰特性と反射減衰特性を示す特性図である。
図18において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図18において、符号81を付した曲線は通過減衰特性を示し、符号82を付した曲線は反射減衰特性を示している。
図18から、第1のモデルすなわち本実施の形態に係るフィルタ1は、バンドパスフィルタとして、実用上、十分な特性を有することが分かる。
【0086】
次に、第2のモデルのシミュレーションの結果について説明する。第2のモデルは、比較例のフィルタ101のモデルである。
図19は、比較例のフィルタ101の本体50の内部を示す平面図である。なお、
図19は、比較例のフィルタ101の本体50の上面50B側から見た本体50の内部を示している。比較例のフィルタ101では、スルーホールT5とスルーホールT6との間隔である第1の間隔D1と、スルーホールT6とスルーホールT7との間隔である第2の間隔D2は、互いに等しい。比較例のフィルタ101におけるその他の構成は、本実施の形態に係るフィルタ1の構成と同じである。
【0087】
図20は、第2のモデルの通過減衰特性、すなわち比較例のフィルタ101の第1の端子2と第2の端子3との間の通過減衰特性を示す特性図である。
図20において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図20において、実線の曲線は、第2のモデルの通過減衰特性を示している。また、
図20において、破線の曲線は、
図18に示した第1のモデルの通過減衰特性を示している。
【0088】
図20から理解されるように、第2のモデルすなわち比較例のフィルタ101では、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極の周波数が、第1のモデルすなわち本実施の形態に係るフィルタ1よりも高くなると共に、減衰極の減衰量の絶対値が、本実施の形態に係るフィルタ1よりも小さくなる。第1のモデルのシミュレーションの結果と第2のモデルのシミュレーションの結果は、スルーホールT5,T6,T7の配置によって、フィルタ1の特性を調整できることを示している。また、これらのシミュレーションの結果は、本実施の形態に係るフィルタ1によれば、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極の減衰量の絶対値を大きくすることができることを示している。
【0089】
次に、第3のモデルのシミュレーションの結果について説明する。第3のモデルは、第1の変形例のフィルタ102モデルである。
図21は、第1の変形例のフィルタ102の本体50の内部を示す平面図である。なお、
図21は、第1の変形例のフィルタ102の本体50の底面50A側から見た本体50の内部を示している。第1の変形例のフィルタ102では、インダクタ用の導体層541,542,571,572の各々の長さは、本実施の形態に係るフィルタ1における導体層541,542,571,572の各々の長さよりも大きい。これにより、第1の変形例のフィルタ102では、第1の端子2すなわち電極111から、第1の伝送路4を経由して、共振器11すなわち導体層591に至る最短経路は、本実施の形態に係るフィルタ1よりも長くなる。同様に、第1の変形例のフィルタ102では、第2の端子3すなわち電極112から、第2の伝送路5を経由して、共振器16すなわち導体層596に至る最短経路は、本実施の形態に係るフィルタ1よりも長くなる。第1の変形例のフィルタ102におけるその他の構成は、本実施の形態に係るフィルタ1の構成と同じである。
【0090】
図22は、第2のモデルの通過減衰特性、すなわち第1の変形例のフィルタ102の第1の端子2と第2の端子3との間の通過減衰特性を示す特性図である。
図22において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図22において、実線の曲線は、第2のモデルの通過減衰特性を示している。また、
図22において、破線の曲線は、
図18に示した第1のモデルの通過減衰特性を示している。
【0091】
図22から理解されるように、第3のモデルすなわち第1の変形例のフィルタ102では、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極の減衰量の絶対値が、第1のモデルすなわち本実施の形態に係るフィルタ1よりも小さくなる。第1のモデルのシミュレーション結果と第3のモデルのシミュレーションの結果は、第1の端子2から共振器11に至る最短経路の長さと、第2の端子3から共振器16に至る最短経路の長さによって、フィルタ1の特性を調整できることを示している。また、これらのシミュレーションの結果は、本実施の形態に係るフィルタ1によれば、第1の端子2から共振器11に至る最短経路の長さと、第2の端子3から共振器16に至る最短経路の長さをある程度短くすることによって、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極の減衰量の絶対値を大きくすることができることを示している。
【0092】
次に、第4および第5のモデルのシミュレーションの結果について説明する。第4のモデルと第5のモデルは、いずれも、本実施の形態に係るフィルタ1を実装基板に搭載したモデルである。第4のモデルと第5のモデルのいずれにおいても、フィルタ1の複数のグランド電極113と実装基板のグランドパターンは、例えばはんだバンプ等の複数の接続導体によって互いに接続されている。第5のモデルでは、更に、複数の接続導体の間の空間が埋まるように、複数の接続導体を導体によって互いに接続している。
【0093】
図23は、第4および第5のモデルの通過減衰特性、すなわちフィルタ1の第1の端子2と第2の端子3との間の通過減衰特性を示す特性図である。
図23において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図23において、実線の曲線は第4のモデルの通過減衰特性を示し、破線の曲線は第5のモデルの通過減衰特性を示している。
図23では、第4のモデルの通過減衰特性と第5のモデルの通過減衰特性は、ほとんど重なっている。
【0094】
図23から理解されるように、本実施の形態に係るフィルタ1の特性は、フィルタ1と実装基板との接続の態様が異なっていても、ほとんど変化しない。すなわち、本実施の形態に係るフィルタ1の特性は、フィルタ1の評価系が異なっていても、ほとんど変化しない。
【0095】
次に、第6および第7のモデルのシミュレーションの結果について説明する。第6のモデルは、第2の変形例のフィルタのモデルである。第7のモデルは、第3の変形例のフィルタのモデルである。第2の変形例のフィルタと第3の変形例のフィルタの各々は、本実施の形態におけるインダクタ用の導体層541,542,571,572およびスルーホール52T1,52T2,53T1,53T2,54T1a,54T1b,54T2a,54T2b,55T1a,55T1b,55T2a,55T2b,57T1,57T2,58T1,58T2の代わりに、インダクタ用の第1の導体層と、インダクタ用の第2の導体層と、第1の導体層とスルーホール51T1とを接続する複数のスルーホールと、第1の導体層と共振器用の導体層591とを接続する複数のスルーホールと、第2の導体層とスルーホール51T2とを接続する複数のスルーホールと、第2の導体層と共振器用の導体層596とを接続する複数のスルーホールとを含んでいる。
【0096】
第2の変形例のフィルタでは、第1および第2の導体層は、6層目の誘電体層56のパターン形成面に形成されている。第3の変形例のフィルタでは、第1および第2の導体層は、5層目の誘電体層55のパターン形成面に形成されている。第2の変形例のフィルタと第3の変形例のフィルタでは、第1の伝送路4のインダクタL1は、第1の導体層によって構成され、第2の伝送路5のインダクタL2は、第2の導体層によって構成されている。第2の変形例のフィルタと第3の変形例のフィルタの各々におけるその他の構成は、本実施の形態に係るフィルタ1の構成と同じである。
【0097】
図24は、第6および第7のモデルの通過減衰特性、すなわち第2の変形例のフィルタの第1の端子2と第2の端子3との間の通過減衰特性と第3の変形例のフィルタの第1の端子2と第2の端子3との間の通過減衰特性を示す特性図である。
図24において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図24において、符号83を付した曲線は、
図18に示した第1のモデルの通過減衰特性を示している。また、
図24において、符号84を付した曲線は第6のモデルの通過減衰特性を示し、符号85を付した曲線は第7のモデルの通過減衰特性を示している。
【0098】
図24から理解されるように、第6のモデルすなわち第2の変形例のフィルタと第7のモデルすなわち第3の変形例のフィルタでは、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極の周波数が、第1のモデルすなわち本実施の形態に係るフィルタ1よりも低くなると共に、減衰極の減衰量の絶対値が、本実施の形態に係るフィルタ1よりも小さくなる。第1のモデルのシミュレーションの結果と、第6のモデルのシミュレーションの結果と、第7のモデルのシミュレーションの結果は、インダクタL1,L2の構造によって、フィルタ1の特性を調整できることを示している。また、これらのシミュレーションの結果は、本実施の形態に係るフィルタ1によれば、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極の減衰量の絶対値を大きくすることができることを示している。
【0099】
次に、第8のモデルの複数のシミュレーションの結果について説明する。第8のモデルは、本実施の形態に係るフィルタ1の等価回路を用いたモデルである。
図25は、本実施の形態に係るフィルタ1の等価回路201を示す回路図である。
図25に示した等価回路201は、フィルタ1の共振器11~16と、フィルタ1の第1の伝送路4のインダクタL1と、フィルタ1の第2の伝送路5のインダクタL2と、第1の伝送路4と第2の伝送路5との間を伝搬するTEモードによる第1の伝送路4と第2の伝送路5との間の結合とをモデル化した回路である。
【0100】
図25に示したように、等価回路201は、共振器211,212,213,214,215,216を含んでいる。共振器211,212,213,214,215,216は、それぞれ、フィルタ1の共振器11,12,13,14,15,16に対応している。等価回路201では、共振器211~216の各々を、インダクタと抵抗器とキャパシタとが並列接続された共振器で表している。
【0101】
等価回路201は、更に、第1の端子202と、第2の端子203と、インダクタ204と、インダクタ205と、インダクタ206とを含んでいる。第1の端子202と第2の端子203は、それぞれ、フィルタ1の第1の端子2と第2の端子3に対応している。インダクタ204は、フィルタ1の第1の伝送路4のインダクタL1に対応している。インダクタ205は、フィルタ1の第2の伝送路5のインダクタL2に対応している。インダクタ206は、第1の伝送路4と第2の伝送路5との間を伝搬するTEモードによる第1の伝送路4と第2の伝送路5との間の結合に対応している。
【0102】
第8のモデルは、更に、6つの共振器211~216の間の結合を表す図示しない結合行列のモデルを用いている。第8のモデルの複数のシミュレーションでは、
図25に示した等価回路201のモデルと図示しない結合行列のモデルとを用いて、第1の端子202と第2の端子203との間の通過減衰特性を求めた。
【0103】
図26は、第8のモデルの通過減衰特性の一例を示す特性図である。
図26において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図26において、実線の曲線は、第8のモデルの通過減衰特性を示している。また、
図26において、破線の曲線は、
図18に示した第1のモデルの通過減衰特性を示している。
【0104】
図26は、主に、第8のモデルの通過帯域が第1のモデルと一致し、第8のモデルの通過帯域よりも高域側に発生する減衰極の周波数と減衰量が第1のモデルと一致するように、複数のパラメータを設定することによって得られた通過減衰特性である。以下、
図26に示す通過減衰特性を実現する複数のパラメータを、基準パラメータと言う。
【0105】
図26から、第8のモデルでは、特に、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極の周波数と減衰量について、第1のモデルを再現できることが分かる。なお、図示しないが、第8のモデルでは、スミスチャートについても、第1のモデルを再現することができる。
【0106】
次に、第8のモデルを用いた第1のシミュレーションについて説明する。第1のシミュレーションでは、
図25に示した等価回路201のインダクタ204,205の各々の長さを変えながら、第1の端子202と第2の端子203との間の通過減衰特性を求めた。具体的には、インダクタ204,205の各々の長さを基準パラメータの0.45倍にした第1の場合の通過減衰特性と、インダクタ204,205の各々の長さを基準パラメータの1.79倍にした第2の場合の通過減衰特性を求めた。
【0107】
図27は、第1のシミュレーションの結果を示す特性図である。
図27において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図27において、符号92を付した曲線は第1の場合の通過減衰特性を示し、符号93を付した曲線は第2の場合の通過減衰特性を示している。なお、
図27では、
図26に示した第8のモデル、すなわち基準パラメータを用いた場合の第8のモデルの通過減衰特性を、符号91を付した曲線で示している。
【0108】
図27から理解されるように、インダクタ204,205の各々の長さを変えると、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極が変化する。また、第1および第2の場合には、
図27に示した周波数の範囲内では、通過帯域の高域側に減衰極が存在しない。また、第2の場合(符号93)では、通過帯域の低域側の減衰量の絶対値が、第1の場合(符号92)よりも小さくなる。
【0109】
ここで、第1の端子2から第1の伝送路4を経由して共振器11に至る最短経路の長さを第1の長さと言い、第2の端子3から第2の伝送路5を経由して共振器16に至る最短経路の長さを第2の長さと言う。インダクタ204の長さは第1の長さに対応し、インダクタ205の長さは第2の長さに対応する。第1の長さは、共振器用の導体層591の第1の導体部591Aの長さを基準にして設定することが好ましく、第2の長さは、共振器用の導体層596の第2の導体部596Aの長さを基準にして設定することが好ましい。
【0110】
第1の長さと第2の長さは、ある程度大きいことが好ましい。具体的には、第1の長さは、第1の導体部591Aの長さの1/2よりも大きいことが好ましく、第2の長さは、第2の導体部596Aの長さの1/2よりも大きいことが好ましい。言い換えると、第1の導体部591Aの長さは、第1の長さの2倍より小さいことが好ましく、第2の導体部596Aの長さは、第2の長さの2倍より小さいことが好ましい。なお、基準パラメータでは、インダクタ204,205の各々の長さは、第1および第2の導体部591A,596Aの各々の長さの0.7倍に相当する。
【0111】
次に、第8のモデルを用いた第2のシミュレーションについて説明する。第2のシミュレーションでは、
図25に示した等価回路201のインダクタ206のインピーダンスを変えながら、第1の端子202と第2の端子203との間の通過減衰特性を求めた。具体的には、インダクタ206のインピーダンスを基準パラメータの0.5倍にした第3の場合の通過減衰特性と、インダクタ206のインピーダンスを無限大にした第4の場合の通過減衰特性を求めた。第4の場合は、第1の伝送路4と第2の伝送路5との間を伝搬するTEモードによる第1の伝送路4と第2の伝送路5との間の結合が存在しない場合に対応する。
【0112】
図28は、第2のシミュレーションの結果を示す特性図である。
図28において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図28において、符号94を付した曲線は第3の場合の通過減衰特性を示し、符号95を付した曲線は第4の場合の通過減衰特性を示している。なお、
図28では、
図27と同様に、基準パラメータを用いた場合の第8のモデルの通過減衰特性を、符号91を付した曲線で示している。
【0113】
図28から理解されるように、インダクタ206のインピーダンスを変えると、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極が変化する。また、第3の場合(符号94)は、通過帯域の高域側の減衰極の周波数が、基準パラメータを用いた場合(符号91)よりも低くなると共に、通過帯域の高域側の減衰極の絶対値が、基準パラメータが設定された場合よりも小さくなる。また、第4の場合(符号95)には、
図28に示した周波数の範囲内では、通過帯域の高域側に減衰極が存在しない。第2のシミュレーションの結果は、本実施の形態に係るフィルタ1によれば、第1の伝送路4と第2の伝送路5との間を伝搬するTEモードによる第1の伝送路4と第2の伝送路5との間の結合によって、通過帯域の高域側に減衰極を発生させることができることを示している。
【0114】
次に、第8のモデルを用いた第3のシミュレーションについて説明する。第3のシミュレーションでは、共振器211と共振器216の磁気結合係数k16を変えながら、第1の端子202と第2の端子203との間の通過減衰特性を求めた。具体的には、磁気結合係数k16を0にした第5の場合の通過減衰特性と、磁気結合係数k16を基準パラメータの2倍にした第6の場合の通過減衰特性を求めた。
【0115】
図29は、第3のシミュレーションの結果を示す特性図である。
図29において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図29において、符号96を付した曲線は第5の場合の通過減衰特性を示し、符号97を付した曲線は第6の場合の通過減衰特性を示している。なお、
図29では、
図27と同様に、基準パラメータを用いた場合の第8のモデルの通過減衰特性を、符号91を付した曲線で示している。
【0116】
図29から理解されるように、共振器211と共振器216の磁気結合係数k16を変えると、通過帯域よりも高域側に発生する減衰極が変化する。第5の場合(符号96)は、通過帯域の高域側の減衰極の周波数が、基準パラメータを用いた場合(符号91)よりも低くなる。第6の場合(符号97)は、通過帯域の高域側の減衰極の周波数が、基準パラメータを用いた場合(符号91)よりも高くなる。第3のシミュレーションの結果は、共振器そのものを利用することによって、フィルタ1の特性を調整できることを示している。
【0117】
以上説明したように、本実施の形態によれば、共振器11~16以外のフィルタ1の構造物を利用して、所望の特性を実現することが可能である。
【0118】
次に、本実施の形態におけるその他の効果について説明する。本実施の形態では、共振器用の導体層591の第1の導体部591Aは、第1の特定のスルーホールから第2の特定のスルーホールに向かう方向、具体的にはX方向に延在している。共振器用の導体層596の第2の導体部596Aは、第2の特定のスルーホールから第1の特定のスルーホールに向かう方向、具体的には-X方向に延在している。第1および第2の特定のスルーホールの各々は、グランドに接続される。製造ばらつきに起因して第1および第2の導体部591A,596Aまたは第1および第2の特定のスルーホールがX方向に平行な方向にずれた場合、第1および第2の導体部591A,596Aの一方は長くなり、他方は短くなる。これにより、本実施の形態によれば、第1および第2の導体部591A,596Aの長さの変化に起因する共振器11,16の特性の変化を相殺することができる。その結果、本実施の形態によれば、製造ばらつきに起因するフィルタ1の特性の変化を抑制することができる。
【0119】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明のフィルタは、バンドパスフィルタに限らず、複数の共振器を備えたバンドパスフィルタ以外のフィルタであってもよい。
【0120】
また、第1の領域R1と第2の領域R2とが並ぶ方向と交差する方向に並ぶスルーホールの数は、3つに限らず、4つ以上であってもよい。
【0121】
また、複数の共振器の数は、6つに限らず、5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。
【0122】
以上説明したように、本発明のフィルタは、第1の端子と、第2の端子と、回路構成上、第1の端子と第2の端子の間に設けられた第1の共振器および第2の共振器と、第1の共振器を配置するための第1の領域と第2の共振器を配置するための第2の領域との間に位置し、第1の領域と第2の領域とが並ぶ第1の方向と交差する第2の方向に並ぶ複数のスルーホールと、誘電体よりなり、第1の端子、第2の端子、第1の共振器、第2の共振器および複数のスルーホールを一体化する本体とを備えている。複数のスルーホールは、第1のスルーホールと、第1の間隔を開けて第1のスルーホールに隣接する第2のスルーホールと、第1の間隔とは異なる第2の間隔を開けて第2のスルーホールに隣接する第3のスルーホールとを含んでいる。
【0123】
本発明のフィルタは、更に、第1の端子と第1の共振器とを接続する第1の伝送路と、第2の端子と第2の共振器とを接続する第2の伝送路とを備えていてもよい。第1の共振器は、一方向に延在する第1の導体部を含んでいてもよい。第2の共振器は、一方向に延在する第2の導体部を含んでいてもよい。第1の導体部の長さは、第1の端子から第1の伝送路を経由して第1の共振器に至る最短経路の2倍よりも小さくてもよい。第2の導体部の長さは、第2の端子から第2の伝送路を経由して第2の共振器に至る最短経路の2倍よりも小さくてもよい。第1の伝送路は、第1の端子と第1の共振器のうちの少なくとも一方に電気的に接続されていてもよい。第2の伝送路は、第2の端子と第2の共振器のうちの少なくとも一方に電気的に接続されていてもよい。第1の伝送路と第2の伝送路の各々は、互いに間隔を開けて配置された複数の導体層を含んでいてもよい。
【0124】
また、本発明のフィルタにおいて、第1の共振器と第2の共振器の各々は、片端短絡型共振器であってもよい。この場合、本発明のフィルタは、更に、第1の共振器と第2の共振器の各々をグランドに接続するための複数のグランド用スルーホールを備えていてもよい。
【0125】
また、本発明のフィルタは、更に、複数の特定のスルーホールを備えていてもよい。第1の共振器は、第1の導体部を含んでいてもよい。第2の共振器は、第2の導体部を含んでいてもよい。複数の特定のスルーホールは、第1の導体部と第2の導体部を囲むように配置されていてもよい。第1の間隔は、第2の間隔よりも大きく且つ複数の特定のスルーホールのうちの隣接する任意の2つのスルーホールの間隔よりも大きくてもよい。
【0126】
また、本発明のフィルタは、更に、第1の特定のスルーホールと、第2の特定のスルーホールとを備えていてもよい。第1の共振器は、第1の特定のスルーホールに電気的に接続され且つ第1の特定のスルーホールから第2の特定のスルーホールに向かう方向に延在する第1の導体部を含んでいてもよい。第2の共振器は、第2の特定のスルーホールに電気的に接続され且つ第2の特定のスルーホールから第1の特定のスルーホールに向かう方向に延在する第2の導体部を含んでいてもよい。
【0127】
また、本発明のフィルタは、更に、回路構成上、第1の共振器と第2の共振器との間に設けられた複数の共振器を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1…フィルタ、2…第1の端子、3…第2の端子、4…第1の伝送路、5…第2の伝送路、11,12,13,14,15,16…共振器、50…本体、51~69…誘電体層、591,592,593,594,595,596…共振器用の導体層、591A…第1の導体部、596A…第2の導体部、D1…第1の間隔、D2…第2の間隔、R1…第1の領域、R2…第2の領域、T3,T4,T5,T6,T7,T8,T9A,T9B…スルーホール。