(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164953
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/203 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H01P1/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080703
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤口 修平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲三
(72)【発明者】
【氏名】芦田 裕太
(72)【発明者】
【氏名】立松 雅大
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 敬悟
(72)【発明者】
【氏名】照井 智理
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HB04
5J006HB05
5J006JA01
5J006JA11
5J006JA21
5J006LA03
5J006LA21
5J006MA07
5J006NA07
(57)【要約】
【課題】小型化が可能なフィルタを実現する。
【解決手段】フィルタ1は、互いに間隔を開けて配置されたグランド導体層681およびグランド導体層521と、グランド導体層681とグランド導体層521との間に配置され、共振器12の一部を構成する共振器用導体層592と、グランド導体層681と共振器用導体層592とを接続し、共振器12の他の一部を構成するスルーホールT3と、本体50とを備えている。共振器用導体層592は、グランド導体層521には直接接続されていない。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と、
第2の端子と、
それぞれグランドに接続されると共に、互いに間隔を開けて配置された第1のグランド導体層および第2のグランド導体層と、
前記第1のグランド導体層と前記第2のグランド導体層との間に配置され、回路構成上前記第1の端子と前記第2の端子との間に設けられる第1の特定の共振器の一部を構成する第1の共振器用導体層と、
前記第1のグランド導体層と前記第1の共振器用導体層とを接続し、前記第1の特定の共振器の他の一部を構成する第1のスルーホールと、
誘電体よりなり、前記第1の端子、前記第2の端子、前記第1のグランド導体層、前記第2のグランド導体層、前記第1の共振器用導体層および前記第1のスルーホールを一体化する本体とを備え、
前記第1の共振器用導体層は、前記第2のグランド導体層には直接接続されていないことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
更に、回路構成上、前記第1の端子と前記第2の端子との間に設けられた複数の共振器を備え、
前記複数の共振器のうちの少なくとも1つは、前記第1の共振器用導体層と前記第1のスルーホールとを用いて構成されていることを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項3】
更に、前記第1のグランド導体層と前記第2のグランド導体層との間に配置され、回路構成上前記第1の端子と前記第2の端子との間に設けられる第2の特定の共振器を構成する第2の共振器用導体層と、
前記第2のグランド導体層と前記第2の共振器用導体層とを接続する少なくとも1つの第2のスルーホールとを備え、
前記複数の共振器のうちの他の少なくとも1つは、前記第2の共振器用導体層を用いて構成されていることを特徴とする請求項2記載のフィルタ。
【請求項4】
更に、前記第1のグランド導体層と前記第2の共振器用導体層とを接続する少なくとも1つの第3のスルーホールを備えたことを特徴とする請求項3記載のフィルタ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2のスルーホールと前記少なくとも1つの第3のスルーホールの少なくとも一方は複数であり、
前記少なくとも1つの第2のスルーホールの数と、前記少なくとも1つの第3のスルーホールの数は、互いに異なることを特徴とする請求項4記載のフィルタ。
【請求項6】
前記複数の共振器の各々は、片端短絡型共振器であることを特徴とする請求項2記載のフィルタ。
【請求項7】
前記複数の共振器は、回路構成上隣接する2つの共振器が電磁結合するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のフィルタ。
【請求項8】
更に、それぞれ前記第1の共振器用導体層と前記第1のスルーホールとを用いて構成された第1の共振器および第2の共振器を備えたことを特徴とする請求項1記載のフィルタ。
【請求項9】
前記第1の共振器と前記第2の共振器の各々の前記第1の共振器用導体層は、前記第1の共振器の前記第1のスルーホールと前記第2の共振器の前記第1のスルーホールとが並ぶ方向に延在していることを特徴とする請求項8記載のフィルタ。
【請求項10】
前記第1の共振器の前記第1の共振器用導体層と、前記第2の共振器の前記第1の共振器用導体層は、前記第1の共振器の前記第1のスルーホールと前記第2の共振器の前記第1のスルーホールとの間に位置し且つ前記第1の共振器の前記第1のスルーホールと前記第2の共振器の前記第1のスルーホールとが並ぶ前記方向と交差する仮想の平面を中心として、互いに対称な形状を有していることを特徴とする請求項9記載のフィルタ。
【請求項11】
前記第1の共振器用導体層は、前記第1の共振器用導体層の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有し、
前記第1のスルーホールは、前記第1の共振器用導体層の前記第1端の近傍部分に接続され、
前記第1の共振器と前記第2の共振器の一方の前記第1の共振器用導体層は、前記第1の共振器と前記第2の共振器の他方から遠ざかるまたは近づくように、前記第1端から前記第2端に向かって延在していることを特徴とする請求項9記載のフィルタ。
【請求項12】
前記本体は、被実装体に対向する第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記第1のグランド導体層は、前記第2のグランド導体層よりも前記第1の面により近い位置に配置され、
前記第2のグランド導体層は、前記第1のグランド導体層よりも前記第2の面により近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項13】
前記本体は、被実装体に対向する第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面とを有し、
前記第1のグランド導体層は、前記第2のグランド導体層よりも前記第2の面により近い位置に配置され、
前記第2のグランド導体層は、前記第1のグランド導体層よりも前記第1の面により近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の共振器を含むフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置に用いられる電子部品の一つには、複数の共振器を備えたバンドパスフィルタがある。複数の共振器の各々は、例えば、一方向に長い導体部を有する導体層によって構成されている。特に小型の通信装置に用いられるバンドパスフィルタには、小型化が求められる。小型化に適したバンドパスフィルタとしては、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体を用いたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、複数の誘電体層を積層した構造を有するチップ本体と、チップ本体内に設けられた共振器電極とを備えたチップ型フィルタ部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、小型移動体通信機器の小型化、省スペース化が市場から要求されており、その通信機器に用いられるバンドパスフィルタの小型化も要求されている。バンドパスフィルタが複数の共振器を含んでいる場合、バンドパスフィルタが小型化すると、複数の共振器間の電磁界結合が強くなりすぎる場合がある。また、複数の共振器の各々が一方向に長い導体部を有する導体層によって構成されている場合、複数の導体層は、例えば、同一平面上に形成される。この場合、複数の導体層間の電磁界結合を抑制するためには、複数の導体層間の間隔を大きくする必要がある。これらのことから、複数の共振器を含むバンドパスフィルタを小型化することが難しかった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化が可能なフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルタは、第1の端子と、第2の端子と、それぞれグランドに接続されると共に、互いに間隔を開けて配置された第1のグランド導体層および第2のグランド導体層と、第1のグランド導体層と第2のグランド導体層との間に配置され、回路構成上第1の端子と第2の端子との間に設けられる第1の特定の共振器の一部を構成する第1の共振器用導体層と、第1のグランド導体層と第1の共振器用導体層とを接続し、第1の特定の共振器の他の一部を構成する第1のスルーホールと、誘電体よりなり、第1の端子、第2の端子、第1のグランド導体層、第2のグランド導体層、第1の共振器用導体層および第1のスルーホールを一体化する本体とを備えている。第1の共振器用導体層は、第2のグランド導体層には直接接続されていない。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフィルタでは、第1の特定の共振器の一部を構成する第1の共振器用導体層は、第1のグランド導体層と第2のグランド導体層との間に配置されている。第1の特定の共振器の他の一部を構成する第1のスルーホールは、第1のグランド導体層と第1の共振器用導体層とを接続している。第1の共振器用導体層は、第2のグランド導体層には直接接続されていない。これにより、本発明によれば、小型化が可能なフィルタを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの回路構成の一例を示す回路図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における1層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における2層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における4層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における5層目および6層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における7層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における8層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における9層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における10層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図12】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における11層目ないし17層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図13】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における18層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図14】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体における19層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図15】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体の内部を示す斜視図である。
【
図16】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体の内部を示す平面図である。
【
図17】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの本体の内部を示す平面図である。
【
図18】本発明の第1の実施の形態に係るフィルタの通過減衰特性と反射減衰特性の一例を示す特性図である。
【
図19】本発明の第2の実施の形態に係るフィルタの本体の内部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るフィルタ1の構成の概略について説明する。
図1は、本実施の形態に係るフィルタ1の回路構成を示す回路図である。フィルタ1は、第1の端子2と、第2の端子3と、複数の共振器とを備えている。第1および第2の端子2,3の各々は、信号の入力または出力のための端子である。すなわち、第1の端子2に信号が入力される場合には、第2の端子3から信号が出力される。第2の端子3に信号が入力される場合には、第1の端子2から信号が出力される。
【0011】
複数の共振器は、回路構成上、第1の端子2と第2の端子3の間に設けられている。また、複数の共振器は、回路構成上隣接する2つの共振器が電磁結合するように構成されている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0012】
図1に示したように、本実施の形態では特に、複数の共振器は、6つの共振器11,12,13,14,15,16を含んでいる。6つの共振器11,12,13,14,15,16は、回路構成上、第1の端子2側からこの順に配置されている。共振器11~16は、共振器11,12が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器12,13が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器13,14が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器14,15が回路構成上隣接して電磁結合し、共振器15,16が回路構成上隣接して電磁結合するように構成されている。また、本実施の形態では特に、回路構成上隣接する2つの共振器の間の電磁結合は、容量性である。
【0013】
また、共振器11~16は、回路構成上隣接しない特定の2つの共振器が電磁結合するように構成されている。本実施の形態では、共振器12,15の組、共振器11,13の組および共振器14,16の組が電磁結合するように構成されている。本実施の形態では特に、共振器12,15間の電磁結合、共振器11,13間の電磁結合および共振器14,16間の電磁結合は、いずれも、誘導性である。
【0014】
また、本実施の形態では特に、共振器11~16の各々は、一端が短絡され他端が開放された片端短絡型の1/4波長共振器である。
【0015】
フィルタ1は、更に、共振器11,12間の容量結合を実現するキャパシタC1と、共振器12,13間の容量結合を実現するキャパシタC2と、共振器13,14間の容量結合を実現するキャパシタC3と、共振器14,15間の容量結合を実現するキャパシタC4と、共振器15,16間の容量結合を実現するキャパシタC5とを備えている。
【0016】
フィルタ1は、更に、第1の端子2と共振器11とを接続する第1の伝送路4と、第2の端子3と共振器16とを接続する第2の伝送路5とを備えている。第1の伝送路4は、インダクタL1を含んでいる。インダクタL1の一端は、第1の端子2に電気的に接続されている。インダクタL1の他端は、共振器11に電気的に接続されている。すなわち、共振器11は、インダクタL1を介して、第1の端子2に電気的に接続されている。第1の伝送路4は、第1の端子2と共振器11に電気的に接続されている。
【0017】
第2の伝送路5は、インダクタL2を含んでいる。インダクタL2の一端は、第2の端子3に電気的に接続されている。インダクタL2の他端は、共振器16に電気的に接続されている。すなわち、共振器16は、インダクタL2を介して、第2の端子3に電気的に接続されている。第2の伝送路5は、第2の端子3と共振器12に電気的に接続されている。
【0018】
なお、本出願において、「電気的に接続」という表現は、金属導体(インダクタを含む)を介して電気的に接続する場合を含むが、キャパシタを介して接続する場合を含まない。
【0019】
本実施の形態では、共振器11~16、キャパシタC1~C5およびインダクタL1,L2は、フィルタ1が、所定の周波数帯域内の信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタとして機能するように構成されている。
【0020】
次に、
図2を参照して、フィルタ1のその他の構成について説明する。
図2は、フィルタ1の外観を示す斜視図である。
【0021】
フィルタ1は、更に、誘電体よりなり、第1の端子2、第2の端子3、共振器11~16、キャパシタC1~C5およびインダクタL1,L2を一体化するための本体50を備えている。本体50は、積層された複数の誘電体層と、複数の導体(複数の導体層および複数のスルーホール)とを含んでいる。共振器11~16、キャパシタC1~C5およびインダクタL1,L2は、本体50内に設けられた複数の導体によって構成されている。
【0022】
本体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する第1の面50Aおよび第2の面50Bと、第1の面50Aと第2の面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、第1の面50Aおよび第2の面50Bに対して垂直になっている。
【0023】
ここで、
図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。
【0024】
図2に示したように、第1の面50Aは、本体50における-Z方向の端に位置する。第1の面50Aは、本体50の底面でもある。第2の面50Bは、本体50におけるZ方向の端に位置する。第2の面50Bは、本体50の上面でもある。側面50Cは、本体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、本体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、本体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、本体50におけるY方向の端に位置する。
【0025】
フィルタ1は、更に、本体50の第1の面50Aに設けられた電極111,112を備えている。電極111は、側面50Cの近傍に配置されている。電極112は、側面50Dの近傍に配置されている。電極111は第1の端子2に対応し、電極112は第2の端子3に対応する。従って、第1および第2の端子2,3は、本体50の第1の面50Aに設けられている。
【0026】
フィルタ1は、更に、本体50の第1の面50Aに設けられた複数のグランド電極113を備えている。本実施の形態では特に、複数のグランド電極113は、電極111,112と側面50Eとの間に配置された複数の電極と、電極111,112と側面50Fとの間に配置された複数の電極と、電極111と電極112との間に配置された複数の電極とを含んでいる。複数のグランド電極113の各々は、グランドに接続される。
【0027】
第1の面50Aは、基板等の図示しない被実装体に対向する。第2の面50Bは、第1の面50Aとは反対側の面である。
【0028】
次に、
図3ないし
図14を参照して、本体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体の一例について説明する。この例では、本体50は、積層された19層の誘電体層を有している。以下、この19層の誘電体層を、下から順に1層目ないし19層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし19層目の誘電体層を符号51~69で表す。
【0029】
図3ないし
図12において、複数の円は複数のスルーホールを表している。誘電体層51~67の各々には、複数のスルーホールが形成されている。複数のスルーホールは、それぞれ、スルーホール用の孔に導体ペーストを充填することによって形成される。複数のスルーホールの各々は、電極、導体層または他のスルーホールに接続されている。以下の説明では、複数のスルーホールの各々と、電極、導体層または他のスルーホールとの接続関係については、1層目ないし19層目の誘電体層51~69が積層された状態における接続関係について説明している。また、
図3ないし
図12では、複数のスルーホールのうちの複数の特定のスルーホールに、それぞれ符号を付している。
【0030】
図3は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51のパターン形成面には、電極111,112と、複数のグランド電極113とが形成されている。
【0031】
図3において符号51T1,51T2を付したスルーホールは、それぞれ電極111,112に接続されている。なお、以下の説明では、符号51T1を付したスルーホールを、単にスルーホール51T1と記す。また、スルーホール51T1以外の符号を付したスルーホールについても、スルーホール51T1と同様に記す。
【0032】
図4は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52のパターン形成面には、グランド導体層521が形成されている。また、スルーホール51T1,51T2は、それぞれ、
図4に示したスルーホール52T1,52T2に接続されている。
図4に示したスルーホール52T5,52T6,52T7は、グランド導体層521に接続されている。
【0033】
図5は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。スルーホール52T1,52T2,52T5,52T6,52T7は、それぞれ、
図5に示したスルーホール53T1,53T2,53T5,53T6,53T7に接続されている。
【0034】
図6は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、インダクタ用の導体層541,542が形成されている。スルーホール53T1と
図6に示したスルーホール54T1a,54T1bは、導体層541に接続されている。スルーホール53T2と
図6に示したスルーホール54T2a,54T2bは、導体層542に接続されている。スルーホール53T5,53T6,53T7は、それぞれ、
図6に示したスルーホール54T5,54T6,54T7に接続されている。
【0035】
図7は、5層目および6層目の誘電体層55,56の各々のパターン形成面を示している。スルーホール54T1a,54T1b,54T2a,54T2b,54T5,54T6,54T7は、それぞれ、誘電体層55に形成されたスルーホール55T1a,55T1b,55T2a,55T2b,55T5,55T6,55T7に接続されている。また、誘電体層55,56では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0036】
図8は、7層目の誘電体層57のパターン形成面を示している。誘電体層57のパターン形成面には、インダクタ用の導体層571,572が形成されている。誘電体層56に形成されたスルーホール55T1a,55T1bと
図8に示したスルーホール57T1は、導体層571に接続されている。誘電体層56に形成されたスルーホール55T2a,55T2bと
図8に示したスルーホール57T2は、導体層572に接続されている。誘電体層56に形成されたスルーホール55T5,55T6,55T7は、それぞれ、
図8に示したスルーホール57T5,57T6,57T7に接続されている。
【0037】
図9は、8層目の誘電体層58のパターン形成面を示している。誘電体層58のパターン形成面には、導体層581,582が形成されている。また、スルーホール57T1,57T2,57T5,57T6,57T7は、それぞれ、
図9に示したスルーホール58T1,58T2,58T5,58T6,58T7に接続されている。
【0038】
図10は、9層目の誘電体層59のパターン形成面を示している。誘電体層59のパターン形成面には、共振器用の導体層591,592,593,594,595,596と、導体層597が形成されている。導体層591,596の各々は、一方向に延在する部分を含んでいる。導体層592~595の各々は、一方向に長い形状を有している。
【0039】
スルーホール58T1,58T2は、それぞれ、導体層591,596に接続されている。
図10に示したスルーホール59T3,59T4は、それぞれ、導体層592,595に接続されている。スルーホール58T5,58T6,58T7は、それぞれ、
図10に示したスルーホール59T5,59T6,59T7に接続されている。
【0040】
図11は、10層目の誘電体層60のパターン形成面を示している。誘電体層60のパターン形成面には、導体層601,602,603が形成されている。また、スルーホール59T3,59T4,59T5,59T6,59T7は、それぞれ、
図11に示したスルーホール60T3,60T4,60T5,60T6,60T7に接続されている。
【0041】
図12は、11層目ないし17層目の誘電体層61~67の各々のパターン形成面を示している。スルーホール60T3,60T4,60T5,60T6,60T7は、それぞれ、誘電体層61に形成されたスルーホール61T3,61T4,61T5,61T6,61T7に接続されている。また、誘電体層61~67では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0042】
図13は、18層目の誘電体層68のパターン形成面を示している。誘電体層68のパターン形成面には、グランド導体層681が形成されている。誘電体層67に形成されたスルーホール61T3,61T4,61T5,61T6,61T7は、グランド導体層681に接続されている。
【0043】
図14は、19層目の誘電体層69のパターン形成面を示している。誘電体層69のパターン形成面には、マーク691が形成されている。
【0044】
図2に示した本体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が本体50の第1の面50Aになり、19層目の誘電体層69のパターン形成面が本体50の第2の面50Bになるように、1層目ないし19層目の誘電体層51~69が積層されて構成される。
【0045】
図15は、1層目ないし19層目の誘電体層51~69が積層されて構成された本体50の内部を示している。
図15に示したように、本体50の内部では、
図3ないし
図13に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。なお、
図15では、マーク691を省略している。
【0046】
以下、
図1に示したフィルタ1の構成要素と、
図2ないし
図14に示した本体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。共振器11は、共振器用の導体層591によって構成されている。共振器12は、共振器用の導体層592と、スルーホール59T3,60T3,61T3とによって構成されている。
【0047】
共振器13は、共振器用の導体層593によって構成されている。共振器14は、共振器用の導体層594によって構成されている。
【0048】
共振器15は、共振器用の導体層595と、スルーホール59T4,60T4,61T4とによって構成されている。共振器16は、共振器用の導体層596によって構成されている。
【0049】
キャパシタC1は、導体層591,592,601と、これらの導体層の間の誘電体層59とによって構成されている。キャパシタC2は、導体層581,592,593と、これらの導体層の間の誘電体層58とによって構成されている。キャパシタC3は、導体層593,594,602と、これらの導体層の間の誘電体層59とによって構成されている。キャパシタC4は、導体層582,594,595と、これらの導体層の間の誘電体層58とによって構成されている。キャパシタC5は、導体層595,596,603と、これらの導体層の間の誘電体層59とによって構成されている。
【0050】
インダクタL1は、導体層541,571と、スルーホール54T1a,54T1b,55T1a,55T1bとによって構成されている。第1の伝送路4は、インダクタL1を構成する導体層541,571およびスルーホール54T1a,54T1b,55T1a,55T1bと、スルーホール51T1,52T1,53T1,57T1,58T1によって構成されている。
【0051】
インダクタL2は、導体層542,572と、スルーホール54T2a,54T2b,55T2a,55T2bとによって構成されている。第2の伝送路5は、インダクタL2を構成する導体層542,572およびスルーホール54T2a,54T2b,55T2a,55T2bと、スルーホール51T2,52T2,53T21,57T2,58T2によって構成されている。
【0052】
次に、
図1ないし
図17を参照して、本実施の形態に係るフィルタ1の構造上の特徴について説明する。
図16および
図17は、本体50の内部を示す平面図である。
図16は、第2の面50B側から見た本体50の内部を示している。なお、
図16では、グランド導体層681およびマーク691を省略している。また、
図17は、第1の面50A側から見た本体50の内部を示している。なお、
図17では、電極111,112と、複数のグランド電極113と、グランド導体層521と、スルーホール51T1,51T2と、複数のグランド電極113に接続された複数のスルーホールとを省略している。
【0053】
図15において、符号T3は、スルーホール59T3,60T3,61T3が直列に接続されることによって構成された構造物を示している。以下、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成された構造物についても、スルーホールと言う。
【0054】
本体50は、それぞれ2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成されたスルーホールT3,T4,T5,T6,T7を含んでいる。スルーホールT3の一端は、共振器用の導体層592に接続されている。スルーホールT3の他端は、グランド導体層681に接続されている。
【0055】
スルーホールT4は、スルーホール59T4,60T4,61T4が直列に接続されることによって構成されている。スルーホールT4の一端は、共振器用の導体層595に接続されている。スルーホールT4の他端は、グランド導体層681に接続されている。
【0056】
スルーホールT5は、スルーホール52T5,53T5,54T5,55T5,57T5,58T5,59T5,60T5,61T5が直列に接続されることによって構成されている。スルーホールT6は、スルーホール52T6,53T6,54T6,55T6,57T6,58T6,59T6,60T6,61T6が直列に接続されることによって構成されている。スルーホールT7は、スルーホール52T7,53T7,54T7,55T7,57T7,58T7,59T7,60T7,61T7が直列に接続されることによって構成されている。スルーホールT5~T7の各一端は、グランド導体層521に接続されている。スルーホールT5~T7の各他端は、グランド導体層681に接続されている。
【0057】
本体50は、更に、複数のスルーホールT8と、複数のスルーホールT9Aと、複数のスルーホールT9Bとを含んでいる。複数のスルーホールT8、複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bの各々は、2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成されている。複数のスルーホールT8および複数のスルーホールT9Aの各一端は、グランド導体層521に接続されている。複数のスルーホールT9Bの各一端は、導体層591,593,594,596,597のうちのいずれかに接続されている。複数のスルーホールT8および複数のスルーホールT9Bの各他端は、グランド導体層681に接続されている。複数のスルーホールT9Aの各他端は、導体層591,593,594,596,597のうちのいずれかに接続されている。
【0058】
複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bのうち、導体層591に接続された複数のスルーホールは、共振器11をグランドに接続するためのスルーホールである。
図3ないし
図17に示した例では、導体層591に接続された複数のスルーホールT9Aの数は2つであり、導体層591に接続された複数のスルーホールT9Bの数は5つである。2つのスルーホールT9Aは、グランド導体層521と導体層591とを接続している。5つのスルーホールT9Bは、グランド導体層681と導体層591とを接続している。
【0059】
複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bのうち、導体層593に接続された複数のスルーホールは、共振器13をグランドに接続するためのスルーホールである。
図3ないし
図17に示した例では、導体層593に接続された複数のスルーホールT9Aの数と、導体層593に接続された複数のスルーホールT9Bの数は、いずれも、2つである。2つのスルーホールT9Aは、グランド導体層521と導体層593とを接続している。2つのスルーホールT9Bは、グランド導体層681と導体層593とを接続している。
【0060】
複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bのうち、導体層594に接続された複数のスルーホールは、共振器14をグランドに接続するためのスルーホールである。
図3ないし
図17に示した例では、導体層594に接続された複数のスルーホールT9Aの数と、導体層594に接続された複数のスルーホールT9Bの数は、いずれも、2つである。2つのスルーホールT9Aは、グランド導体層521と導体層594とを接続している。5つのスルーホールT9Bは、グランド導体層681と導体層594とを接続している。
【0061】
複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bのうち、導体層596に接続された複数のスルーホールは、共振器16をグランドに接続するためのスルーホールである。
図3ないし
図17に示した例では、導体層596に接続された複数のスルーホールT9Aの数は2つであり、導体層596に接続された複数のスルーホールT9Bの数は5つである。2つのスルーホールT9Aは、グランド導体層521と導体層596とを接続している。5つのスルーホールT9Bは、グランド導体層681と導体層596とを接続している。
【0062】
グランド導体層681は、スルーホールT5~T7、複数のスルーホールT8、複数のスルーホールT9Aおよび複数のスルーホールT9Bを介してグランド導体層521に接続されている。グランド導体層521は、複数のスルーホールを介して複数のグランド電極113に接続されている。従って、グランド導体層521,681は、複数のグランド電極113を介してグランドに接続されている。
【0063】
ここで、以下のように、周囲スルーホールを定義する。まず、それぞれ2つ以上のスルーホールが直列に接続されることによって構成された複数のスルーホールの各々について、本体50の側面50C~50Fのうち、そのスルーホールに最も近い側面を特定する。そして、複数のスルーホールのうち、そのスルーホールと特定された側面との間に他のスルーホールが存在しないスルーホールを、周囲スルーホールと定義する。複数の周囲スルーホールは、側面50C~50Fに沿って配置されている。複数の周囲スルーホールは、スルーホールT5と、複数のスルーホールT8のうちのいくつかと、複数のスルーホールT9Aのうちのいくつかと、複数のスルーホールT9Bのうちのいくつかとを含んでいる。
【0064】
次に、共振器12,15に関わる特徴について説明する。共振器12は、共振器用の導体層592とスルーホールT3とによって構成されている。共振器15は、共振器用の導体層595とスルーホールT4とによって構成されている。導体層592,595は、本体50内において互いに間隔を開けて配置されたグランド導体層521とグランド導体層681との間に配置されている。スルーホールT3は、グランド導体層681と導体層592とを接続している。スルーホールT4は、グランド導体層681と導体層595とを接続している。導体層592,595は、グランド導体層521には直接接続されていない。
【0065】
導体層592,595は、本発明の「第1の共振器用導体層」に対応する。スルーホールT3,T4は、本発明の「第1のスルーホール」に対応する。従って、本実施の形態に係るフィルタ1は、複数の第1の共振器用導体層と、複数の第1のスルーホールとを備えている。
【0066】
導体層592,595の各々は、スルーホールT3とスルーホールT4とが並ぶ方向すなわちX方向に平行な方向に延在している。また、導体層592と導体層595は、スルーホールT3とスルーホールT4との間に位置し、スルーホールT3とスルーホールT4とが並ぶ方向すなわちX方向に平行な方向と交差する仮想の平面を中心として、互いに対称な形状を有している。仮想の平面は、YZ平面に平行な平面であってもよい。
【0067】
導体層592は、導体層592の長手方向の両端に位置する第1端592aおよび第2端592bを有している。スルーホールT3は、導体層592の第1端592aの近傍部分に接続されている。導体層592は、導体層595から遠ざかるように、第1端592aから第2端592bに向かって延在している。
【0068】
導体層595は、導体層595の長手方向の両端に位置する第1端595aおよび第2端595bを有している。スルーホールT4は、導体層595の第1端595aの近傍部分に接続されている。導体層595は、導体層592から遠ざかるように、第1端595aから第2端595bに向かって延在している。
【0069】
グランド導体層521は、グランド導体層681よりも、本体50の第1の面50Aにより近い位置に配置されている。グランド導体層681は、グランド導体層521よりも、本体50の第2の面50Bにより近い位置に配置されている。本実施の形態では、グランド導体層521は、本発明の「第2のグランド導体層」に対応する。グランド導体層681は、本発明の「第1のグランド導体層」に対応する。
【0070】
次に、共振器11,16に関わる特徴について説明する。共振器11を構成する共振器用の導体層591と、共振器16を構成する共振器用の導体層596は、グランド導体層521とグランド導体層681との間に配置されている。
【0071】
図16および
図17に示したように、共振器11を構成する共振器用の導体層591は、第1の導体部591Aと、第1の導体部591Aに接続された第3の導体部591Bとを含んでいる。
図16および
図17では、第1の導体部591Aと第3の導体部591Bとの境界を点線で示している。
【0072】
第1の導体部591Aには、第1の伝送路4を構成するスルーホール58T1が接続されている。第3の導体部591Bは、第1の導体部591Aと本体50の側面50Cとの間に配置されている。複数のスルーホールT9Aのうちの2つのスルーホールT9Aは、グランド導体層521と第3の導体部591Bとを接続している。複数のスルーホールT9Bのうちの5つのスルーホールT9Bは、グランド導体層681と第3の導体部591Bとを接続している。
【0073】
図16および
図17に示したように、共振器16を構成する共振器用の導体層596は、第2の導体部596Aと、第2の導体部596Aに接続された第4の導体部596Bとを含んでいる。
図16および
図17では、第2の導体部596Aと第4の導体部596Bとの境界を点線で示している。
【0074】
第2の導体部596Aには、第2の伝送路5を構成するスルーホール58T2が接続されている。第4の導体部596Bは、第2の導体部596Aと本体50の側面50Dとの間に配置されている。複数のスルーホールT9Aのうちの他の2つのスルーホールT9Aは、グランド導体層521と第4の導体部596Bとを接続している。複数のスルーホールT9Bのうちの他の5つのスルーホールT9Bは、グランド導体層681と第4の導体部596Bとを接続している。
【0075】
第1の導体部591Aは、第3の導体部591Bを介して複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bに電気的に接続されている。第2の導体部596Aは、第4の導体部596Bを介して複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bに電気的に接続されている。
【0076】
周囲スルーホールは、第1の導体部591Aと第2の導体部596Aとを囲むが、第3の導体部591Bと第4の導体部596Bとを囲まないように配置されている。周囲スルーホールは、更に、共振器用の導体層592~595を囲むように配置されている。周囲スルーホールは、グランド導体層521とグランド導体層681とを接続している。グランド導体層521,681および周囲スルーホールは、共振器11~16から周囲へ電磁波が放射されることを防止するシールドとして機能する。
【0077】
導体層591,596は、本発明の「第2の共振器用導体層」に対応する。複数のスルーホールT9Aは、本発明の「第2のスルーホール」に対応する。複数のスルーホールT9Bは、本発明の「第3のスルーホール」に対応する。従って、本実施の形態に係るフィルタ1は、複数の第2の共振器用導体層と、複数の第2のスルーホールと、複数の第3のスルーホールとを備えている。
【0078】
前述のように、本実施の形態では、導体層591に接続された複数のスルーホールT9A(第2のスルーホール)の数と、導体層591に接続された複数のスルーホールT9B(第3のスルーホール)の数は、互いに異なっている。また、導体層596に接続された複数のスルーホールT9A(第2のスルーホール)の数と、導体層596に接続された複数のスルーホールT9B(第3のスルーホール)の数は、互いに異なっている。
【0079】
第1の導体部591Aと第2の導体部596Aの各々は、X方向に平行な方向に延在している。また、第1の導体部591Aと第2の導体部596Aは、第1の導体部591Aと第2の導体部596Aとの間に位置し、X方向に平行な方向と交差する仮想の平面を中心として、互いに対称な形状を有している。仮想の平面は、YZ平面に平行な平面であってもよい。
【0080】
第1の導体部591Aは、第1の導体部591Aの長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。第3の導体部591Bは、第1の導体部591Aの第1端の近傍部分に接続されている。第1の導体部591Aは、第2の導体部596Aに近づくように、第1端から第2端に向かって延在している。
【0081】
第2の導体部596Aは、第2の導体部596Aの長手方向の両端に位置する第3端および第4端を有している。第4の導体部596Bは、第2の導体部596Aの第3端の近傍部分に接続されている。第2の導体部596Aは、第1の導体部591Aに近づくように、第3端から第4端に向かって延在している。
【0082】
次に、共振器13,14に関わる特徴について説明する。共振器13を構成する導体層593と、共振器14を構成する導体層594は、グランド導体層521とグランド導体層681との間に配置されている。
【0083】
複数のスルーホールT9Aのうちの2つのスルーホールT9Aは、グランド導体層521と導体層593とを接続している。複数のスルーホールT9Aのうちの他の2つのスルーホールT9Aは、グランド導体層521と導体層594とを接続している。
【0084】
複数のスルーホールT9Bのうちの2つのスルーホールT9Bは、グランド導体層681と導体層593とを接続している。複数のスルーホールT9Bのうちの他の2つのスルーホールT9Bは、グランド導体層681と導体層594とを接続している。
【0085】
導体層593,594の各々は、X方向に平行な方向に延在している。また、導体層593と導体層594は、導体層593と導体層594との間に位置し、X方向に平行な方向と交差する仮想の平面を中心として、互いに対称な形状を有している。仮想の平面は、YZ平面に平行な平面であってもよい。
【0086】
導体層593は、導体層593の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有している。2つのスルーホールT9Aと2つのスルーホールT9Bは、導体層593の第1端の近傍部分に接続されている。導体層593は、導体層594に近づくように、第1端から第2端に向かって延在している。
【0087】
導体層594は、導体層594の長手方向の両端に位置する第3端および第4端を有している。他の2つのスルーホールT9Aと他の2つのスルーホールT9Bは、導体層594の第3端の近傍部分に接続されている。導体層594は、導体層593に近づくように、第3端から第4端に向かって延在している。
【0088】
次に、本実施の形態に係るフィルタ1の作用および効果について説明する。本実施の形態に係るフィルタ1は、第1の端子2と、第2の端子3と、グランド導体層521,681と、グランド導体層521とグランド導体層681との間に配置された共振器用の導体層592,595と、導体層592とグランド導体層681とを接続するスルーホールT3と、導体層595とグランド導体層681とを接続するスルーホールT4とを備えている。導体層592は、回路構成上第1の端子2と第2の端子3との間に設けられる共振器12の一部を構成する。導体層595は、回路構成上第1の端子2と第2の端子3との間に設けられる共振器15の一部を構成する。スルーホールT3は、共振器12の他の一部を構成する。スルーホールT4は、共振器15の他の一部を構成する。導体層592,595の各々は、グランド導体層521には直接接続されていない。
【0089】
本実施の形態では、共振器12の一部が積層方向Tに直交する方向に延在し、共振器12の他の一部が積層方向Tに延在している。また、本実施の形態では、共振器15の一部が積層方向Tに直交する方向に延在し、共振器15の他の一部が積層方向Tに延在している。これらのことから、本実施の形態によれば、共振器12,15の各々の全体が積層方向Tに直交する方向に延在している場合に比べて、フィルタ1の本体の平面形状(Z方向から見た形状)を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、フィルタ1を小型化することができる。
【0090】
また、本実施の形態によれば、導体層592,595の各々がグランド導体層521とグランド導体層681の両方に直接接続されている場合に比べて、フィルタ1を小型化することができる。以下、この効果について詳しく説明する。一例では、導体層592とスルーホールT3の各々の寸法をある大きさにしたときの、共振器12の共振周波数は、29.95GHzである。また、導体層592とスルーホールT3の各々の寸法を同じにしながら、導体層592をグランド導体層521,681に直接接続した場合の第1の比較例の共振器の共振周波数は、43.51GHzである。第1の比較例の共振器において、共振周波数を29.95GHzにするためには、導体層592の寸法を大きくする必要がある。すなわち、本実施の形態によれば、所望の共振周波数を実現するための導体層592の寸法を、第1の比較例の共振器に比べて小さくすることができる。
【0091】
上記の共振器12の共振周波数についての説明は、共振器15の共振周波数にも当てはまる。従って、本実施の形態によれば、導体層592,595の各々がグランド導体層521,681に直接接続されている場合に比べて、導体層592,595の各々の寸法を小さくすることができる。その結果、本実施の形態によれば、フィルタ1を小型化することができる。
【0092】
また、本実施の形態では、共振器11と共振器12は、回路構成上隣接している。共振器11を構成する導体層591と、共振器12の一部を構成する導体層592は、積層方向Tに直交する方向に延在している。また、共振器12の他の一部を構成するスルーホールT3は、積層方向Tに延在している。このように、本実施の形態では、共振器12の一部を、共振器11を構成する導体層の延在方向に対して直交させている。すなわち、本実施の形態では、共振器12の一部から発生される電磁界を、共振器11から発生される電磁界に対して直交させている。これにより、本実施の形態によれば、共振器12の全体が積層方向Tに直交する方向に延在している場合に比べて、共振器11と共振器12との間の電磁結合の強さを抑制することができる。すなわち、本実施の形態によれば、共振器11と共振器12との間の電磁結合が強くなりすぎることを防止しながら、フィルタ1を小型化することができる。
【0093】
同様に、本実施の形態によれば、共振器12と共振器13との間の電磁結合の強さと、共振器14と共振器15との間の電磁結合の強さと、共振器15と共振器16との間の電磁結合の強さを、それぞれ抑制することができる。これにより、本実施の形態によれば、複数の共振器間の電磁結合が強くなりすぎることを防止しながら、フィルタ1を小型化することができる。
【0094】
ここで、複数の共振器間の電磁結合の強さを求めたシミュレーションの結果について説明する。シミュレーションでは、比較例のモデルと第1の実施例のモデルと第2の実施例のモデルを用いた。比較例のモデルは、共振器12の代わりに、第2の比較例の共振器を含むフィルタ1のモデルである。第2の比較例の共振器は、その全体が積層方向Tに延在するスルーホールによって構成されている。
【0095】
第1の実施例のモデルと第2の実施例のモデルの各々は、本実施の形態に係るフィルタ1のモデルである。第2の実施例のモデルでは、スルーホールT3の直径を、第1の実施例のモデルの1.5倍にしている。
【0096】
シミュレーションでは、第2の比較例の共振器と共振器12の共振周波数をほぼ同じ大きさにしながら、共振器11と共振器12との間の結合係数と、共振器12と共振器13との間の結合係数を求めた。第2の比較例の共振器の共振周波数は、29.93GHzである。第1の実施例のモデルでは、共振器12の共振周波数は、29.95GHzである。第2の実施例のモデルでは、共振器12の共振周波数は、29.96GHzである。
【0097】
また、比較例のモデル、第1の実施例のモデルおよび第2の実施例のモデルの各々において、共振器11の共振周波数は27.53GHzであり、共振器13の共振周波数は29.51GHzである。
【0098】
以下、シミュレーションの結果について説明する。比較例のモデルでは、共振器11と共振器12との間の結合係数は0であり、共振器12と共振器13との間の結合係数は0.009である。第1の実施例のモデルでは、共振器11と共振器12との間の結合係数は0.065であり、共振器12と共振器13との間の結合係数は0.046である。第2の実施例のモデルでは、共振器11と共振器12との間の結合係数は0.076であり、共振器12と共振器13との間の結合係数は0.051である。
【0099】
比較例のモデルの結果と第1の実施例のモデルの結果から、共振器12を積層方向Tに延在させると、結合係数を小さくできることが分かる。すなわち、これらの結果から、共振器12を積層方向Tに延在させると、共振器11と共振器12との間の電磁結合の強さと共振器12と共振器13との間の電磁結合の強さを抑制できることが分かる。なお、比較例のモデルのように、共振器12の全体を積層方向Tに延在させると、結合係数が小さくなりすぎる。そのため、共振器12の一部のみを、積層方向Tに延在させることが好ましい。
【0100】
第1の実施例のモデルの結果と第2の実施例のモデルの結果から、スルーホールT3の直径を小さくすると、結合係数を小さくできることが分かる。スルーホールT3の長さを同じにして比較すると、スルーホールT3の直径が小さくなるに従って、スルーホールT3のインダクタンスの値が大きくなる。そのため、スルーホールT3の直径を小さくしながら同じ共振周波数を実現しようとすると、導体層592の長さが短くなる。これにより、導体層592と導体層591または導体層593との間の電磁結合の強さを抑制することができる。
【0101】
次に、本実施の形態におけるその他の効果について説明する。本実施の形態では、共振器12の一部を構成する導体層592は、共振器15の一部を構成する導体層595から遠ざかるように、第1端592aから第2端592bに向かって延在している。また、導体層595は、導体層592から遠ざかるように、第1端595aから第2端595bに向かって延在している。スルーホールT3は、導体層592の第1端592aの近傍部分に接続されている。スルーホールT4は、導体層595の第1端595aの近傍部分に接続されている。製造ばらつきに起因して導体層592,595またはスルーホールT3,T4がX方向に平行な方向にずれた場合、導体層592,595の一方は長くなり、他方は短くなる。これにより、本実施の形態によれば、導体層592,595の長さの変化に起因する共振器12,15の特性の変化を相殺することができる。
【0102】
上記の共振器12,15の組についての説明は、共振器11,16の組および共振器13,14の組にも当てはまる。これらのことから、本実施の形態によれば、その結果、製造ばらつきに起因するフィルタ1の特性の変化を抑制することができる。
【0103】
次に、本実施の形態に係るフィルタ1の特性の一例について説明する。
図18は、フィルタ1の通過減衰特性と反射減衰特性の一例を示す特性図である。
図18において、横軸は周波数を示し、縦軸は減衰量を示している。また、
図18において、符号81を付した曲線は、第1の端子2と第2の端子3との間の通過減衰特性を示し、符号82を付した曲線は、第1の端子2における反射減衰特性を示している。
図18から、本実施の形態に係るフィルタ1は、バンドパスフィルタとして、実用上、十分な特性を有することが分かる。
【0104】
[第2の実施の形態]
次に、
図19を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図19は、本実施の形態に係るフィルタ1の本体50の内部を示す斜視図である。
【0105】
本実施の形態に係るフィルタ1は、第1の実施の形態におけるスルーホールT3の代わりに、スルーホールT13を備えている。本実施の形態では、共振器12は、共振器用の導体層592とスルーホールT13とによって構成されている。スルーホールT13は、グランド導体層521と導体層592とを接続している。また、スルーホールT13は、導体層592の第1端592a(
図16および
図17参照)の近傍部分に接続されている。導体層592は、グランド導体層681には直接接続されていない。
【0106】
また、本実施の形態に係るフィルタ1は、第1の実施の形態におけるスルーホールT4の代わりに、スルーホールT14を備えている。本実施の形態では、共振器15は、共振器用の導体層595とスルーホールT14とによって構成されている。スルーホールT14は、グランド導体層521と導体層595とを接続している。また、スルーホールT4は、導体層595の第1端595a(
図16および
図17参照)の近傍部分に接続されている。導体層595は、グランド導体層681には直接接続されていない。
【0107】
本実施の形態では、グランド導体層521は、本発明の「第1のグランド導体層」に対応する。グランド導体層681は、本発明の「第2のグランド導体層」に対応する。
【0108】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0109】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明のフィルタは、バンドパスフィルタに限らず、複数の共振器を備えたバンドパスフィルタ以外のフィルタであってもよい。また、複数の共振器の数は、6つに限らず、5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。
【0110】
また、共振器11を構成する共振器用の導体層591には、複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bのうちの一方のみが接続されていてもよい。同様に、共振器13を構成する共振器用の導体層593には、複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bのうちの一方のみが接続されていてもよい。同様に、共振器14を構成する共振器用の導体層594には、複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bのうちの一方のみが接続されていてもよい。同様に、共振器16を構成する共振器用の導体層596には、複数のスルーホールT9Aと複数のスルーホールT9Bのうちの一方のみが接続されていてもよい。
【0111】
以上説明したように、本発明のフィルタは、第1の端子と、第2の端子と、それぞれグランドに接続されると共に、互いに間隔を開けて配置された第1のグランド導体層および第2のグランド導体層と、第1のグランド導体層と第2のグランド導体層との間に配置され、回路構成上第1の端子と第2の端子との間に設けられる第1の特定の共振器の一部を構成する第1の共振器用導体層と、第1のグランド導体層と第1の共振器用導体層とを接続し、第1の特定の共振器の他の一部を構成する第1のスルーホールと、誘電体よりなり、第1の端子、第2の端子、第1のグランド導体層、第2のグランド導体層、第1の共振器用導体層および第1のスルーホールを一体化する本体とを備えている。第1の共振器用導体層は、第2のグランド導体層には直接接続されていない。
【0112】
本発明のフィルタは、更に、回路構成上、第1の端子と第2の端子との間に設けられた複数の共振器を備えていてもよい。複数の共振器のうちの少なくとも1つは、第1の共振器用導体層と第1のスルーホールとを用いて構成されていてもよい。また、本発明のフィルタは、更に、第1のグランド導体層と第2のグランド導体層との間に配置され、回路構成上第1の端子と第2の端子との間に設けられる第2の特定の共振器を構成する第2の共振器用導体層と、第2のグランド導体層と第2の共振器用導体層とを接続する少なくとも1つの第2のスルーホールとを備えていてもよい。複数の共振器のうちの他の少なくとも1つは、第2の共振器用導体層を用いて構成されていてもよい。また、本発明のフィルタは、更に、第1のグランド導体層と第2の共振器用導体層とを接続する少なくとも1つの第3のスルーホールを備えていてもよい。少なくとも1つの第2のスルーホールと少なくとも1つの第3のスルーホールの少なくとも一方は複数であってもよい。少なくとも1つの第2のスルーホールの数と、少なくとも1つの第3のスルーホールの数は、互いに異なっていてもよい。
【0113】
複数の共振器の各々は、片端短絡型共振器であってもよい。複数の共振器は、回路構成上隣接する2つの共振器が電磁結合するように構成されていてもよい。
【0114】
また、本発明のフィルタは、更に、それぞれ第1の共振器用導体層と第1のスルーホールとを用いて構成された第1の共振器および第2の共振器を備えていてもよい。第1の共振器と第2の共振器の各々の第1の共振器用導体層は、第1の共振器の第1のスルーホールと第2の共振器の第1のスルーホールとが並ぶ方向に延在していてもよい。第1の共振器の第1の共振器用導体層と、第2の共振器の第1の共振器用導体層は、第1の共振器の第1のスルーホールと第2の共振器の第1のスルーホールとの間に位置し且つ第1の共振器の第1のスルーホールと第2の共振器の第1のスルーホールとが並ぶ方向と交差する仮想の平面を中心として、互いに対称な形状を有していてもよい。第1の共振器用導体層は、第1の共振器用導体層の長手方向の両端に位置する第1端および第2端を有していてもよい。第1のスルーホールは、第1の共振器用導体層の第1端の近傍部分に接続されていてもよい。第1の共振器と第2の共振器の一方の第1の共振器用導体層は、第1の共振器と第2の共振器の他方から遠ざかるまたは近づくように、第1端から第2端に向かって延在していてもよい。
【0115】
また、本発明のフィルタにおいて、本体は、被実装体に対向する第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを有していてもよい。第1のグランド導体層は、第2のグランド導体層よりも第1の面により近い位置に配置されていてもよい。この場合、第2のグランド導体層は、第1のグランド導体層よりも第2の面により近い位置に配置されていてもよい。あるいは、第1のグランド導体層は、第2のグランド導体層よりも第2の面により近い位置に配置されていてもよい。この場合、第2のグランド導体層は、第1のグランド導体層よりも第1の面により近い位置に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…フィルタ、2…第1の端子、3…第2の端子、4…第1の伝送路、5…第2の伝送路、11~16…共振器、50…本体、51~69…誘電体層、521…グランド導体層、591~596…共振器用の導体層、681…グランド導体層、T3~T8,T9A,T9B…スルーホール。