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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164955
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】二次電池の自己放電検査方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241121BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241121BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241121BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20241121BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20241121BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20241121BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20241121BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H01M10/44 P
H01M10/48 P
G01R31/396
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/378
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080705
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄飛
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BB09
2G216BB23
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA08
5G503EA09
5H030AA01
5H030AS20
5H030BB21
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】二次電池の良否判定の精度を向上させること。
【解決手段】二次電池の自己放電検査方法は、電池モジュールを所定容量に充電した際の複数の二次電池のそれぞれの自己放電開始時点での電圧、及び自己放電終了時点での電圧から自己放電期間中の複数の二次電池のそれぞれの電圧降下量を算出することを含む。二次電池の自己放電検査方法は、二次電池を自己放電させた際の二次電池の電圧の変動に対するSOCの変化を自己放電開始時点での電圧に対応させたマップ、及び電圧降下量に基づいて複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を直列接続した電池モジュールにおける前記複数の二次電池のそれぞれを自己放電開始時点から自己放電終了時点までの期間である自己放電期間、自己放電させることで前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行う二次電池の自己放電検査方法であって、
前記電池モジュールを所定容量に充電した際の前記複数の二次電池のそれぞれの前記自己放電開始時点での電圧、及び前記自己放電終了時点での電圧から前記自己放電期間中の前記複数の二次電池のそれぞれの電圧降下量を算出することと、
前記二次電池を自己放電させた際の前記二次電池の電圧の変動に対するSOCの変化を前記自己放電開始時点での電圧に対応させたマップ、及び前記電圧降下量に基づいて前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことと、を含む、二次電池の自己放電検査方法。
【請求項2】
前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことは、
前記マップに基づき前記電圧降下量を前記二次電池の容量低下量に変換することと、
前記容量低下量に基づき前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことと、を含む、請求項1に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項3】
前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことは、
前記マップに基づき前記自己放電終了時点で許容される電圧を導出することと、
前記電圧降下量と前記許容される電圧とに基づいて前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことと、を含む、請求項1に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項4】
前記電池モジュールは、集電体の一方の面に設けられた正極活物質層と、前記集電体の他方の面に設けられた負極活物質層とを備えるバイポーラ電極を備える、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項5】
前記複数の二次電池のそれぞれの前記SOCが10%以下で前記自己放電を行う、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【請求項6】
前記二次電池のそれぞれは、オリビン型構造正極活物質を備える、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の二次電池の自己放電検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池の自己放電検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池モジュールは、直列接続された複数の二次電池を備える。二次電池の製造工程には、検査工程が含まれる。検査工程は、二次電池の自己放電検査を含む。特許文献1に開示されているように、二次電池の自己放電検査は、二次電池を所定時間自己放電させた際の二次電池の電圧降下量が閾値以上か否かによって二次電池の良否判定を行う検査である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-221648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池の自己放電検査を行う際には、電池モジュールを所定容量にした後に、二次電池の自己放電を行う。電池モジュールを所定容量に充電した場合、二次電池の電圧にばらつきが生じる場合がある。このため、電圧降下量が同一であっても、二次電池の容量低下量が同一とならない場合がある。結果として、二次電池の良否判定の精度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する二次電池の自己放電検査方法は、複数の二次電池を直列接続した電池モジュールにおける前記複数の二次電池のそれぞれを自己放電開始時点から自己放電終了時点までの期間である自己放電期間、自己放電させることで前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行う二次電池の自己放電検査方法であって、前記電池モジュールを所定容量に充電した際の前記複数の二次電池のそれぞれの前記自己放電開始時点での電圧、及び前記自己放電終了時点での電圧から前記自己放電期間中の前記複数の二次電池のそれぞれの電圧降下量を算出することと、前記二次電池を自己放電させた際の前記二次電池の電圧の変動に対するSOCの変化を前記自己放電開始時点での電圧に対応させたマップ、及び前記電圧降下量に基づいて前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことと、を含む。
【0006】
二次電池を自己放電させた際の二次電池の電圧の変動に対するSOCの変化を自己放電開始時点での電圧に対応させたマップを用いることで、自己放電開始時点での電圧にばらつきが生じている場合であってもSOCの変化を把握することができる。上記したマップ、及び電圧降下量に基づいて二次電池の良否判定を行うことで、二次電池の良否判定の精度を向上させることができる。
【0007】
上記二次電池の自己放電検査方法について、前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことは、前記マップに基づき前記電圧降下量を前記二次電池の容量低下量に変換することと、前記容量低下量に基づき前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことと、を含んでいてもよい。
【0008】
上記二次電池の自己放電検査方法について、前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことは、前記マップに基づき前記自己放電終了時点で許容される電圧を導出することと、前記電圧降下量と前記許容される電圧とに基づいて前記複数の二次電池のそれぞれの良否判定を行うことと、を含んでいてもよい。
【0009】
上記二次電池の自己放電検査方法について、前記電池モジュールは、集電体の一方の面に設けられた正極活物質層と、前記集電体の他方の面に設けられた負極活物質層とを備えるバイポーラ電極を備えていてもよい。
【0010】
上記二次電池の自己放電検査方法について、前記複数の二次電池のそれぞれの前記SOCが10%以下で前記自己放電を行ってもよい。
上記二次電池の自己放電検査方法について、前記二次電池のそれぞれは、オリビン型構造正極活物質を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二次電池の良否判定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は電池モジュールの断面図である。
図2図2は電池モジュール、及び二次電池の検査装置を示す回路図である。
図3図3は二次電池の自己放電検査方法を示すフローチャートである。
図4図4は電圧とSOCとの相関を示す図である。
図5図5は二次電池の自己放電検査方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
二次電池の自己放電検査方法の第1実施形態について説明する。
<二次電池>
図1に示すように、電池モジュール10は、積層体11を備える。積層体11は、直列接続された複数の二次電池12を備える。複数の二次電池12は、積層されている。以下の説明において、二次電池12が積層される方向を積層方向とする。
【0014】
二次電池12は、正極13と、負極19と、セパレータ27と、を備える。
正極13は、正極集電体14と、正極活物質層17と、を備える。正極集電体14は、シート状である。正極集電体14は、第1面15と、第2面16と、を備える。第1面15と第2面16とは正極集電体14の厚み方向に互いに反対となる面である。
【0015】
正極活物質層17は、正極集電体14の第1面15に設けられている。正極活物質層17は、リチウムイオンを電荷担体として吸蔵及び放出可能である正極活物質を含む。正極活物質は、例えば、オリビン型構造を有するポリアニオン系化合物、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物である。オリビン型構造正極活物質としては、例えば、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)やオリビン型リン酸マンガン鉄リチウム(LiMnFePO)が挙げられる。本実施形態において、正極活物質は、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)である。
【0016】
負極19は、負極集電体20と、負極活物質層24と、を備える。負極集電体20は、シート状である。負極集電体20は、第1面21と、第2面22と、を備える。第1面21と第2面22とは負極集電体20の厚み方向に互いに反対となる面である。
【0017】
負極活物質層24は、負極集電体20の第1面21に設けられている。負極活物質層24は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出可能である負極活物質を含む。負極活物質は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はなく使用可能である。例えば、負極活物質としてLi、又は、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン(難黒鉛化性炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)が挙げられる。人造黒鉛としては、例えば、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズが挙げられる。リチウムと合金化可能な元素としては、例えば、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態において、負極活物質は、黒鉛である。
【0018】
積層体11は、バイポーラ電極25を備える。バイポーラ電極25は、集電体26と、集電体26の一方の面に設けられた正極活物質層17と、集電体26の他方の面に設けられた負極活物質層24と、を備える。集電体26は、互いに接する正極集電体14及び負極集電体20を一体化することによって構成されている。例えば、バイポーラ電極25においては、正極集電体14の第2面16と負極集電体20の第2面22とが重ねられた状態で正極集電体14及び負極集電体20とが接合されることで集電体26が構成されている。バイポーラ電極25は、互いに接する正極集電体14及び負極集電体20を1つの集電体26とみなすことで構成されている。
【0019】
正極13のうち積層体11の一端に設けられた正極13を、正極終端電極13Aとする。負極19のうち積層体11の他端に設けられた負極19を負極終端電極19Aとする。正極終端電極13A及び負極終端電極19Aは、複数のバイポーラ電極25を積層方向から挟んでいる。正極終端電極13Aが備える正極集電体14の第2面16は、積層体11の外面を構成する。負極終端電極19Aが備える負極集電体20の第2面22は、積層体11の外面を構成する。積層体11の一端に設けられた二次電池12は、正極終端電極13Aと、当該正極終端電極13Aに隣り合うバイポーラ電極25の負極活物質層24と、を備える。積層体11の他端に設けられた二次電池12は、負極終端電極19Aと、当該負極終端電極19Aに隣り合うバイポーラ電極25の正極活物質層17と、を備える。積層体11の一端の二次電池12と積層体11の他端の二次電池12との間に設けられた二次電池12は、互いに隣り合うバイポーラ電極25の正極活物質層17及び負極活物質層24を備える。
【0020】
セパレータ27は、正極活物質層17と負極活物質層24との間に配置されている。セパレータ27は、正極活物質層17と負極活物質層24とを隔離することで両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる。
【0021】
電池モジュール10は、正極通電板31及び負極通電板32を備える。正極通電板31及び負極通電板32は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属材料製である。
【0022】
正極通電板31は、正極終端電極13Aが備える正極集電体14の第2面16に電気的に接続される。負極通電板32は、負極終端電極19Aが備える負極集電体20の第2面22に電気的に接続される。電池モジュール10は、正極通電板31及び負極通電板32に設けられた端子を通じて充放電を行う。
【0023】
電池モジュール10は、封止体40を備える。封止体40は、四角枠状である。封止体40は、第1部位41と、第2部位42と、を備える。第1部位41は、集電体26同士の間、正極終端電極13Aの正極集電体14と当該正極終端電極13Aに隣り合うバイポーラ電極25の集電体26との間、及び負極終端電極19Aの負極集電体20と当該負極終端電極19Aに隣り合うバイポーラ電極25の集電体26との間に位置する。第2部位42は、集電体26、正極終端電極13Aの正極集電体14、及び負極終端電極19Aの負極集電体20それぞれの周縁部よりも外側に位置する。封止体40は、積層体11を封止している。
【0024】
電池モジュール10は、電圧検出線51を備える。電圧検出線51は、例えば、長尺の箔状である。電圧検出線51は、バイポーラ電極25の集電体26、正極終端電極13Aの正極集電体14、及び負極終端電極19Aの負極集電体20のそれぞれに1つずつ設けられている。例えば、電圧検出線51は、超音波溶着によってバイポーラ電極25の集電体26、正極終端電極13Aの正極集電体14、及び負極終端電極19Aの負極集電体20のそれぞれに接合されている。これにより、積層方向に互いに隣り合う2つの電圧検出線51によって二次電池12の電圧を検出可能である。
【0025】
電圧検出線51の一部は、封止体40に被覆されている。電圧検出線51は、封止体40の外部に向けて延びている。電圧検出線51の一部は、封止体40の外部に露出している。即ち、電圧検出線51は、封止体40の外部で二次電池12の電圧を検出できるように、封止体40の外部に引き出されている。
【0026】
<二次電池12の自己放電検査>
二次電池12の製造工程は、二次電池12の検査工程を含む。二次電池12の検査工程は、二次電池12の自己放電検査を含む。二次電池12の自己放電検査は、例えば、二次電池12の微小短絡を検査するために行われる。二次電池12の自己放電検査は、二次電池12の検査装置を用いて行われる。
【0027】
図2に示すように、二次電池12の検査装置60は、自己放電検査装置61を備える。自己放電検査装置61は、電圧検出回路62を備える。電圧検出回路62は、例えば、集積回路である。電圧検出回路62は、複数のポートを備え、それぞれのポートに電圧検出線51が接続されている。電圧検出回路62は、電圧検出線51から入力される電位から二次電池12の電圧を検出する。二次電池12の自己放電検査を行う際に検出される二次電池12の電圧は、OCV(開回路電圧)である。
【0028】
自己放電検査装置61は、判定装置63を備える。判定装置63は、二次電池12に微小短絡が生じているか否かの良否判定を行う装置である。判定装置63は、プロセッサ64と、記憶部65と、を備える。プロセッサ64は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)である。記憶部65は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部65には、二次電池12の自己放電検査を行うためのプログラムが記憶されている。記憶部65は、処理をプロセッサ64に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部65、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。判定装置63は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である判定装置63は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0029】
二次電池12の検査装置60は、充電装置71と、電流センサ72と、を備える。充電装置71は、電池モジュール10に直流電圧を加えることによって電池モジュール10の充電を行う。充電装置71は、例えば、入力電圧を異なる電圧の出力電圧に変換するDC/DCコンバータを含む。電流センサ72は、電池モジュール10に直列接続されている。電流センサ72は、充電装置71から電池モジュール10に流れる電流を検出する。
【0030】
充電装置71は、電池モジュール10が所定容量となるように充電を行う。所定容量は、例えば、電池モジュール10が備える複数の二次電池12のそれぞれのSOC(State Of Charge)が10%以下となるように設定されている。充電装置71は、電流積算法によって二次電池12のSOCを認識しながら二次電池12の充電を行う。充電装置71は、電流センサ72の検出結果を取得することによって二次電池12の容量の変化量[Ah]を算出する。充電装置71は、二次電池12の容量の変化量を二次電池12の満充電容量[Ah]で除算することで二次電池12のSOCを認識する。
【0031】
SOCの算出に用いられる二次電池12の満充電容量は、設計上の規格値(理想値)が用いられる。実際には、二次電池12の製造段階における正極活物質層17及び負極活物質層24の少なくとも1つの目付量のばらつきによって、二次電池12の満充電容量にはばらつきが生じる。この満充電容量のばらつきを原因として充電装置71による充電を完了した時点での各二次電池12のSOCにはばらつきが生じることになる。
【0032】
<二次電池12の自己放電検査方法>
二次電池12の自己放電検査方法は、複数の二次電池12のそれぞれを自己放電開始時点から自己放電終了時点までの期間である自己放電期間、自己放電させた際の二次電池12の電圧降下量ΔV1から二次電池12の良否判定を行う方法である。自己放電開始時点は、二次電池12の自己放電を開始する時点である。自己放電終了時点は、自己放電開始時点から自己放電期間経過後の時点である。自己放電期間は、例えば、7日間である。自己放電期間は、4日~10日など、適宜変更してもよい。二次電池12の自己放電を行う際には、二次電池12の温度を一定温度に維持する。一定温度は、例えば、25°である。一定温度は、20°~30°など、適宜変更してもよい。二次電池12の温度の維持には、例えば、恒温室が用いられる。
【0033】
自己放電検査方法では、例えば、二次電池12に微小短絡が生じているか否かが判定される。微小短絡が生じている場合、微小短絡が生じていない場合に比べて、二次電池12を同一時間自己放電させた際の二次電池12の電圧降下量ΔV1が多くなる。二次電池12の自己放電検査方法は、判定装置63によって行われる。自己放電検査が行われている間は、二次電池12は負荷に接続されない。即ち、自己放電検査中の二次電池12の容量の低下は、自己放電を要因とするものである。
【0034】
図3に示すように、ステップS1において、判定装置63は、充電装置71によって所定容量となるように充電された電池モジュール10が備える複数の二次電池12のそれぞれの電圧を電圧検出回路62から取得する。二次電池12の電圧の取得は、自己放電開始時点、及び自己放電終了時点で行われる。二次電池12の自己放電開始時点での電圧には、満充電容量のばらつきを原因とするばらつきが生じ得る。自己放電終了時点での二次電池12の電圧は、自己放電期間中の自己放電によって自己放電開始時点よりも低下している。自己放電検査を行う際には、二次電池12のそれぞれのSOCが10%以下となるように充電が行われているため、自己放電は、複数の二次電池12のそれぞれのSOCが10%以下で行われる。判定装置63は、電圧を取得した二次電池12のそれぞれについてステップS2~ステップS4の処理を行う。即ち、判定装置63は、二次電池12をモジュール化した電池モジュール10が備える複数の二次電池12のそれぞれについて良否判定を行う。
【0035】
ステップS2において、判定装置63は、自己放電期間中の二次電池12の電圧降下量ΔV1を算出する。電圧降下量ΔV1は、自己放電開始時点の二次電池12の電圧と自己放電終了時点の二次電池12の電圧の差分である。
【0036】
次に、ステップS3において、判定装置63は、マップに基づき電圧降下量ΔV1を自己放電開始時点から自己放電終了時点までの二次電池12の容量低下量ΔCに変換する。マップは、二次電池12を自己放電させた際の二次電池12の電圧の変動に対するSOCの変化を自己放電開始時点での電圧に対応させたものである。
【0037】
図4に示すように、二次電池12の電圧とSOCには相関がある。二次電池12のSOCを推定する際には、この相関を用いる。図4には、□で示す点P1で充電過程の電圧とSOCとの相関(充電曲線)を表す。二次電池12の充電時には、この相関を用いてSOCを推定することができる。◇で示す点P2で放電過程の電圧とSOCとの相関(放電曲線)を表す。二次電池12の放電時には、この相関を用いてSOCを推定することができる。このように、充電過程と放電過程とでは、同じSOCであっても電圧にヒステリシスがあり、充電曲線と放電曲線は乖離している。
【0038】
発明者は、自己放電過程の電圧とSOCとの相関は、放電過程の電圧とSOCとの相関及び充電過程の電圧とSOCとの相関のいずれにも一致しないことを見出した。前述のヒステリシスが大きいほど、自己放電過程の電圧とSOCとの相関は、放電過程の電圧とSOCとの相関及び充電過程の電圧とSOCとの相関との乖離が大きいと推測される。
【0039】
点P3,P4は、二次電池12を自己放電させた際の二次電池12の電圧の変動に対するSOCの変化を表す。点P3と点P4では、自己放電開始時点での電圧が異なる。○で示す点P3は、自己放電開始時点での電圧が第1電圧V1である場合の二次電池12の電圧とSOCとの相関を表す。△で示す点P4は、自己放電開始時点での電圧が第2電圧V2である場合の二次電池12の電圧とSOCとの相関を表す。マップは、このように、任意の自己放電開始時点での電圧に対応させて、二次電池12の電圧とSOCとの相関を規定するものである。図4では、一例として自己放電開始電圧が第1電圧V1、及び第2電圧V2の場合を図示しているが、マップは、自己放電開始時点での電圧として第1電圧V1、及び第2電圧V2以外の電圧を含んでいてもよく、例えば、0.01[V]刻みで複数の自己放電開始時点での電圧を含むことが好ましい。マップは、自己放電開始時点での電圧としては、例えば、3.20[V]から3.25[V]の範囲を含む。
【0040】
マップは、満充電容量が理想値であって、内部短絡がない良品の二次電池12を用いて予め作成されたものである。詳細にいえば、満充電容量が理想値である二次電池12の電圧を第1電圧V1にした後に二次電池12を自己放電させて二次電池12の電圧の変化に対する二次電池12のSOCの変化をプロットする。そして、第1電圧V1以外の電圧についても二次電池12の電圧の変化に対する二次電池12のSOCの変化をプロットすることによってマップを作成することができる。このマップは、記憶部65などの判定装置63が読み取り可能な記憶装置に記憶されている。
【0041】
判定装置63は、マップに基づき電圧降下量ΔV1を二次電池12の容量低下量ΔCに変換する。判定装置63は、良否判定の対象となる二次電池12の自己放電開始時点での電圧に対応する相関をマップから選択する。判定装置63は、マップに含まれる自己放電開始電圧のうち良否判定の対象となる二次電池12の自己放電開始時点での電圧に最も近い自己放電開始電圧に対応する相関を選択する。例えば、判定装置63は、ステップS1で取得した自己放電開始時点での電圧が、マップに含まれる自己放電開始電圧のうち第1電圧V1に最も近ければ、点P3によって表される相関を選択する。そして、判定装置63は、二次電池12の自己放電開始時点での電圧に対応する相関を用いて電圧降下量ΔV1をSOCの低下量ΔSOC1に変換する。SOCは、二次電池12の容量を百分率で表したものであるため、SOCの低下量ΔSOC1を容量低下量ΔCとみなすことができる。このため、容量低下量ΔCは、SOCの低下量ΔSOC1であってもよい。SOCから二次電池12の容量[Ah]を算出することができる。この際、二次電池12の満充電容量は理想値を用いてもよい。容量低下量ΔCは、二次電池12の容量[Ah]の低下量であってもよい。
【0042】
次に、ステップS4において、判定装置63は、ステップS3で得られた容量低下量ΔCに基づき二次電池12の良否判定を行う。判定装置63は、容量低下量ΔCが基準値未満の場合、二次電池12は良品であると判定する。判定装置63は、容量低下量ΔCが基準値以上の場合、二次電池12は不良品であると判定してもよい。二次電池12に微小短絡が生じている場合、微小短絡が生じていない場合に比べて、二次電池12を同一時間自己放電させた際の容量低下量ΔCが多くなる。二次電池12に微小短絡が生じている場合の容量低下量ΔCを予め把握しておき、この容量低下量ΔCに基づき基準値を定めればよい。電池モジュール10が備える複数の二次電池12のうち少なくとも1つについて不良品と判定された場合、電池モジュール10は廃棄される。
【0043】
[第1実施形態の作用]
二次電池12の自己放電検査を行う際には、電池モジュール10を所定容量にした後に、二次電池12の自己放電を行う。二次電池12の自己放電検査は、二次電池12を自己放電させることによって二次電池12の良否判定を行う検査である。従って、二次電池12の自己放電検査は、自己放電による容量の低下量[Ah]によって行われることが好ましい。前述したように、二次電池12の満充電容量にはばらつきが生じる。このため、自己放電による容量の低下量が同一であったとしても、電圧降下量ΔV1は同一値にならない場合がある。結果として、電圧降下量ΔV1から良否判定を行う場合、二次電池12の良否判定の精度が低下するおそれがある。第1実施形態では、マップを用いることで電圧降下量ΔV1を容量低下量ΔCに変換している。そして、容量低下量ΔCによって二次電池12の良否判定を行う。
【0044】
[第1実施形態の効果]
(1-1)マップを用いることで、自己放電開始時点での電圧にばらつきが生じている場合であっても二次電池12のSOCの変化を把握することができる。マップ、及び電圧降下量ΔV1に基づいて二次電池12の良否判定を行うことで、良否判定の精度を向上させることができる。本実施形態であれば、判定装置63は、マップに基づき、電圧降下量ΔV1を容量低下量ΔCに変換する。そして、判定装置63は、容量低下量ΔCから良否判定を行っている。自己放電による二次電池12の容量の低下量から良否判定を行うことができるため、良否判定の精度を向上させることができる。
【0045】
(1-2)二次電池のそれぞれが充放電に用いる端子を備えている場合、当該二次電池をモジュール化した電池モジュールでは、各二次電池の容量を予め計測し、各二次電池を所定のSOCに充電することができる。この場合、自己放電開始時点の電圧を各二次電池で同一にすることができるため、電圧降下量ΔV1から良否判定を行うことができる。
【0046】
これに対し、バイポーラ電極25を用いた電池モジュール10は、封止体40の内部で複数の二次電池12同士を接続してモジュール化されている。バイポーラ電極25を用いた二次電池12の場合、封止体40の外部に露出する端子が二次電池12毎に設けられていないため、二次電池12毎に個別に充電を行うことが困難である。バイポーラ電極25を用いた二次電池12の場合、モジュール化された全ての二次電池12が同一の充電電流によって充電される。結果として、複数の二次電池12同士のSOCを同一にすることができず、電圧降下量ΔV1から良否判定を行いにくい。
【0047】
第1実施形態の二次電池12の自己放電検査方法であれば、複数の二次電池12同士にSOCのばらつきがあっても、良否判定を精度良く行うことができる。このため、バイポーラ電極25を用いた二次電池12であっても、良否判定を精度良く行うことができる。
【0048】
(1-3)電池モジュール10の自己放電検査方法は、二次電池12のSOCが10%以下で二次電池12の自己放電を行う。正極にオリビン型リン酸鉄リチウムやオリビン型リン酸マンガン鉄リチウムといった鉄含有オリビンを用い、負極を組み合わせた二次電池12はプラトー領域を備える。プラトー領域は、SOCの変化に対するOCVの変化が略一定であるため、プラトー領域で二次電池12の自己放電を行った場合、電圧降下量ΔV1が少ないことで良否判定を行いにくい。非プラトー領域である、SOCが15%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは9%以下の領域で二次電池12の自己放電をすることで、SOC変化に対する電圧降下量ΔV1が大きくなり、より正確に二次電池12の容量低下量ΔCを算出することができる。
【0049】
(1-4)二次電池12は、オリビン型構造正極活物質を備える。二次電池12では、充電過程と放電過程とで電圧にヒステリシスが生じる。材料によってヒステリシスの程度は異なるが、リチウムイオン二次電池、特に、オリビン型構造正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池ではヒステリシスが大きい。このような二次電池12に対してマップを用いて自己放電検査を行うことによって、良否判定の精度を向上させることができる。
【0050】
[第2実施形態]
二次電池の自己放電検査方法の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、判定装置の行う処理が第1実施形態とは異なる。
【0051】
図5に示すように、判定装置63は、第1実施形態のステップS3に代えてステップS11の処理を行う。ステップS11において、判定装置63は、マップに基づき自己放電終了時点で許容される電圧を導出する。例えば、自己放電期間中に許容されるSOCの低下量ΔSOC2が予め定められているとする。SOCの低下量ΔSOC2は、二次電池12に微小短絡が生じている場合のSOCの低下量を予め把握しておき、この低下量よりも小さい値を設定すればよい。判定装置63は、良否判定の対象となる二次電池12の自己放電開始時点での電圧に対応する相関をマップから選択する。一例として、点P3で表される相関が選択された場合について説明する。
【0052】
図4に示すように、判定装置63は、自己放電開始時点の二次電池12の電圧に対応するSOCから自己放電期間中に許容されるSOCの低下量ΔSOC2を減算するとともに、減算により得られたSOCに対応する電圧V3を相関から導出する。この電圧V3は、二次電池12の自己放電終了時点で許容される電圧である。
【0053】
ステップS12において、判定装置63は、電圧降下量ΔV1と許容される電圧V3とに基づいて二次電池12の良否判定を行う。判定装置63は、自己放電開始時点の電圧から電圧降下量ΔV1を減算した値、即ち、自己放電終了時点の電圧が許容される電圧V3以上の場合、二次電池12は良品であると判定する。判定装置63は、自己放電終了時点の電圧が許容される電圧V3未満の場合、二次電池12は不良品であると判定する。
【0054】
[第2実施形態の効果]
(2-1)判定装置63は、マップに基づき自己放電終了時点で許容される電圧V3を導出することができる。そして、判定装置63は、この電圧V3によって良否判定を行うことができる。これにより、良否判定の精度を向上させることができる。
【0055】
[変更例]
各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
○各実施形態において、二次電池12は、集電体の両面に同一極性の活物質層が設けられた電極を備えたものであってもよい。この場合、複数の二次電池12のそれぞれは、充放電に用いる端子を備える。
【0057】
○各実施形態において、二次電池12の良否判定は、人が行ってもよい。
○第1実施形態において、判定装置63は、容量低下量ΔCが基準値から所定範囲内の場合に、二次電池12は良品であると判定してもよい。判定装置63は、容量低下量ΔCが基準値から所定範囲外の場合、二次電池12は不良品であると判定してもよい。基準値は、例えば、電池モジュール10が備える複数の二次電池12の容量低下量ΔCの中央値である。所定範囲は、例えば、2σ~4σに相当する値を設定する。σは、標準偏差である。
【0058】
○第2実施形態において、ステップS11はステップS1とステップS2の間でも良い。また、ステップS11とステップS2は同時でも良い。
【符号の説明】
【0059】
10…電池モジュール、12…二次電池、17…正極活物質層、24…負極活物質層、25…バイポーラ電極、26…集電体。
図1
図2
図3
図4
図5