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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164960
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電子制御装置及び起動制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/445 20180101AFI20241121BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G06F9/445
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080713
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】大島 恭平
(72)【発明者】
【氏名】野村 卓司
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376AE11
5B376AE51
5B376AE61
(57)【要約】
【課題】電子制御装置において、ウェイクアップ回路のレジスタの故障が生じている場合においても、マイコンの起動制御を正常に行うことができるようにする。
【解決手段】プロセッサとメモリとを備えたコンピュータと、当該コンピュータの起動制御を行うウェイクアップ回路とを備えた電子制御装置が提供される。ウェイクアップ回路は、外部と接続された通信回線において通信が行われたことを条件としてコンピュータを起動させる第1モードと、ウェイクアップ回路が備えるレジスタに格納されたウェイクアップ識別子と一致する識別子を受信したときにのみコンピュータを起動させる第2モードとのいずれかで動作する。コンピュータは、ウェイクアップ回路のレジスタに故障が生じているか否かを識別し、レジスタに故障が生じている場合には、外部からシャットダウン命令を受信したときに、ウェイクアップ回路を第1モードに設定してからシャットダウンを行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサとメモリとを備えたコンピュータと、当該コンピュータの起動制御を行うウェイクアップ回路とを備えた電子制御装置であって、
前記ウェイクアップ回路が、外部と接続された通信回線において通信が行われたことを条件として前記コンピュータを起動させる第1モードと、前記ウェイクアップ回路が備えるレジスタに格納されたウェイクアップ識別子と一致する識別子を受信したときにのみ前記コンピュータを起動させる第2モードとのいずれかで動作し、
前記コンピュータが、前記ウェイクアップ回路の前記レジスタに故障が生じているか否かを識別し、前記レジスタに故障が生じている場合には、外部からシャットダウン命令を受信したときに、前記ウェイクアップ回路を前記第1モードに設定してからシャットダウンを行う、
電子制御装置。
【請求項2】
前記コンピュータは、前記レジスタが正常に動作している場合には、前記ウェイクアップ回路を前記第2モードに設定してからシャットダウンを行う、請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記レジスタに故障が生じている場合に、前記メモリ内の故障フラグに当該レジスタに故障が生じていることを示す値を設定し、次回の起動時に、前記故障フラグを参照して、前記レジスタに故障が生じていることを示す値が設定されているときには、外部の電子制御装置から起動要求を受信したか否かを識別し、外部から起動要求を受信しているときには現在の起動状態を継続する一方、起動要求を受信していないときにはシャットダウンを行う、請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記レジスタに故障が生じていることが識別されたときに、外部に対して当該故障の発生を通知する、請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項5】
プロセッサとメモリとを備えたコンピュータと、当該コンピュータの起動制御を行うウェイクアップ回路とを備え、当該ウェイクアップ回路が、外部と接続された通信回線において通信が行われたことを条件として前記コンピュータを起動させる第1モードと、前記ウェイクアップ回路が備えるレジスタに格納されたウェイクアップ識別子と一致する識別子を受信したときにのみ前記コンピュータを起動させる第2モードとのいずれかで動作する電子制御装置において、前記コンピュータが、
前記ウェイクアップ回路の前記レジスタに故障が生じているか否かを識別し、
前記レジスタに故障が生じていることが識別された場合には、シャットダウン命令を受信したときに、前記ウェイクアップ回路を前記第1モードに設定してからシャットダウンを行う、
起動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置及び起動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された電子制御装置における起動処理を正常に行うための技術の一例として、電源状態や起動要件に基づいて、各アプリケーションの動作要件の判定を行い、動作要件を満たしたアプリケーションのみを起動する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-327217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、電子制御装置において、メインマイコンの起動制御を行うウェイクアップ回路が、外部ユニット等から所定のウェイクアップ識別子を受信したときに車載装置の制御処理を行うマイクロコンピュータ(マイコン)の起動制御を行う構成を有する場合がある。このような構成において、ウェイクアップ回路のレジスタの故障が生じた場合、ウェイクアップ識別子の認証が正常に行われず、起動制御ができなくなる状況が生じ得る。
【0005】
そこで、本発明の1つの態様では、電子制御装置において、ウェイクアップ回路のレジスタの故障が生じている場合においても、マイコンの起動制御を正常に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様では、プロセッサとメモリとを備えたコンピュータと、当該コンピュータの起動制御を行うウェイクアップ回路とを備えた電子制御装置であって、前記ウェイクアップ回路が、外部と接続された通信回線において通信が行われたことを条件として前記コンピュータを起動させる第1モードと、前記ウェイクアップ回路が備えるレジスタに格納されたウェイクアップ識別子と一致する識別子を受信したときにのみ前記コンピュータを起動させる第2モードとのいずれかで動作し、前記コンピュータが、前記ウェイクアップ回路の前記レジスタに故障が生じているか否かを識別し、前記レジスタに故障が生じている場合には、外部からシャットダウン命令を受信したときに、前記ウェイクアップ回路を前記第1モードに設定してからシャットダウンを行う電子制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、電子制御装置において、ウェイクアップ回路のレジスタの故障が生じている場合においても、メインマイコンの起動制御を正常に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る制御システムの一例を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態におけるウェイクアップICのレジスタの構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態におけるメインマイコンの初回起動時における処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態におけるメインマイコンの初回起動時における処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態におけるメインマイコンの初回起動時における処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態におけるメインマイコンの再起動時における処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態におけるメインマイコンの再起動時における処理を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態におけるウェイクアップIC及びメインマイコンの状態及び処理(ウェイクアップICのレジスタが正常である場合)を示すシーケンス図である。
図9】本発明の一実施形態におけるウェイクアップIC及びメインマイコンの状態及び処理(ウェイクアップICのレジスタが故障している場合)を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書に記載する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、異なる実施形態やその変形例は、適宜組み合わせることも可能である。
【0010】
[制御システムの構成]
図1は、本実施形態に係る制御システム1の一例を示す。本制御システム1は、自動車等の車両に搭載され、車両の走行等に関連する各種装置の制御を行う。制御システム1は、例えば、制御対象の車載装置の種類により、エンジン制御等のパワートレイン制御系、電動パワーステアリング、ブレーキ制御等の車両制御系、エアバッグや周辺監視等のボディ制御系、ナビゲーションシステムやGPS(Global Positioning System)等の情報系に分類され得る。制御システム1は、車載装置を制御するECU10(Electronic Control Unit)と、外部ユニット50A~50Cとを備える。
【0011】
ECU10は、ウェイクアップ回路(IC)20及びメインマイコン30を備える。ウェイクアップIC20とメインマイコン30とは、SPI(Serial Peripheral Interface)バス及びCAN(Controller Area Network)バスで接続されている。また、ウェイクアップIC20からメインマイコン30へは、インヒビット(INH)端子からウェイクアップ信号が送信される。また、ECU10はバッテリ40と接続され、バッテリ40からウェイクアップIC20及びメインマイコン30に電力が供給される。
【0012】
ウェイクアップIC20は、所定条件が満たされたときにメインマイコン30を起動させる機能を有する電子回路である。なお、所定条件については後で詳述する。ウェイクアップIC20は、制御部21、レジスタ22、及び通信インタフェース23A~23Dを備える。
【0013】
制御部21は、ウェイクアップIC20が動作する動作モードに応じて、メインマイコン30を起動させるウェイクアップ信号を、メインマイコン30に対して送信する。
レジスタ22は、制御部21の動作に用いる各種設定値が格納されるレジスタである。レジスタ22に格納されるデータの詳細については後述する。
通信インタフェース23A~23Dは、ウェイクアップIC20と外部との通信を実現する機能を有する。例えば、通信インタフェース23A及び23Bは、CAN(Controller Area Network)トランシーバ等で構成され、通信インタフェース23Aは外部ユニット50A~50CとのCAN通信を行い、通信インタフェース23Bはメインマイコン30とのCAN通信を行う。通信インタフェース23Cは、メインマイコン30とのSPI通信を行う。通信インタフェース23Dは、メインマイコン30へのウェイクアップ信号を、INH端子を介して送信する。なお、ウェイクアップIC20は、外部からウェイクアップ信号が入力されるとウェイクアップ機能が動作する端子を備えるが、本実施形態では当該端子はオープンであるものとして図示を省略している。
【0014】
メインマイコン30は、プロセッサ31、RAM32、ROM33、通信インタフェース34A~34Cを備える。これらは内部バスにより相互接続されている。
プロセッサ31は、プログラムに記述された命令セット(データの転送、演算、加工、制御、管理など)を実行するハードウェアであって、演算装置、命令や情報を格納するレジスタ、周辺回路などから構成されている。プロセッサ31は、プログラムが実行されることによってその機能が実現される。プロセッサ31において実行される処理の詳細については後述する。
【0015】
RAM32は、電源供給遮断によってデータが消失する揮発性メモリからなり、プロセッサが動作中に使用する一時的な記憶領域を提供する。
ROM33は、電気的にデータを書き換え可能な不揮発性メモリ(例えばEEPROMやフラッシュメモリ等)からなり、プロセッサ31で動作するプログラム本体や、プログラムの実行時に用いる各種データが格納される。本実施形態において、ROM33には、後述する故障フラグが格納される。
通信インタフェース34A~34Cは、メインマイコン30と外部との通信を実現する機能を有する。例えば、通信インタフェース34Aは、ウェイクアップIC20とのCAN通信を行い、通信インタフェース34BはウェイクアップIC20とのSPI通信を行う。通信インタフェース34Cは、ウェイクアップIC20から送信されたウェイクアップ信号を受信し、メインリレーによってメインマイコン30を起動させる。
【0016】
なお、本実施形態では、ウェイクアップIC20と外部ユニット50A~50Cとの間の通信方式をCANとしているが、例えば、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(登録商標)、FlexRay等の任意の通信方式を用いることができる。ウェイクアップIC20とメインマイコン30との間の通信方式も同様に、必ずしも上記の例に限定されるものではない。また、図示を省略しているが、メインマイコン30と外部ユニット50A~50Cとの通信も可能である。さらに、図示を省略しているが、ECU10は、制御対象とする車載装置とも通信可能に接続されている。
【0017】
図2は、ウェイクアップIC20のレジスタ22の記憶領域のうち、本実施形態で実行される処理に関連する領域を示している。レジスタ22には、コントロールレジスタとステータスレジスタの2種類の領域が含まれる。コントロールレジスタには、動作モードを識別する情報が設定される動作モード設定領域と、ウェイクアップ識別子の一態様であるウェイクアップCANID(詳細は後述する)が設定されるウェイクアップCANID設定領域とが含まれる。また、ステータスレジスタには、ウェイクアップIC20において不正な書き込みがなされたことを示す情報等が設定されるエラー設定領域が含まれる。
【0018】
[ウェイクアップICの動作モードと起動条件]
ここで、ウェイクアップIC20の動作モードと、ウェイクアップIC20がメインマイコン30を起動させる条件とについて説明する。
ウェイクアップIC20は、バッテリ40から電源が供給されたときにスタンバイモードになり、メインマイコン30の起動命令を受信すると、メインマイコン30を起動させるとともに、ノーマルモードに遷移する。また、ウェイクアップIC20は、メインマイコン30がシャットダウンするときに、ノーマルモードからスリープモードへと遷移する。一方で、メインマイコン30の起動命令を受信したときには、再度メインマイコン30を起動させ、ノーマルモードに遷移する。このノーマルモードとスリープモードとの間の遷移は、メインマイコン30からSPI通信によって受信した制御信号に基づいて行われる。具体的には、メインマイコン30が、レジスタ22の動作モード設定領域にウェイクアップIC20の動作モードを識別する情報を設定する信号を送信する。ウェイクアップIC20は、レジスタ22の動作モード設定領域に設定された当該情報に基づいた動作モードで動作する。
【0019】
さらに、ウェイクアップIC20のスリープモードには、2系統の種類がある。
第1モードは、特定のCANIDを受信したときにメインマイコン30を起動する(WUF:Wake Up Frame)、セレクティブスリープモードである。このセレクティブスリープモードの場合、ウェイクアップIC20は、外部から受信したウェイクアップCANIDがレジスタ22のウェイクアップCANID設定領域に設定されたものと一致するときに、メインマイコン30に対して起動命令を送信する。換言すれば、レジスタ22のウェイクアップCANID設定領域に設定されたCANID以外のCANIDを受信したときには、メインマイコン30を起動させない。なお、ウェイクアップCANID設定領域へのCANIDの設定は、メインマイコン30が起動時に行う。
【0020】
第2モードは、特定のCANIDを受信したときのみならず、CANバスが動作したこと、すなわちCANバスにおいて電圧変化があったことを条件として、メインマイコン30を起動する(WUP:Wake Up Pattern)、スリープウェイクアップモードである(WUP)。なお、CANバスが動作したことは、外部と接続された通信回線において通信が行われたことの一態様である。
【0021】
なお、前述したように、本実施形態では、外部からウェイクアップ信号が入力されるとウェイクアップ機能が動作するパターン(LWU:Local Wake Up)については、入力端子がオープンであり無効である。また、セレクティブスリープモードでの動作中にウェイクアップCANID設定領域に不正な書き込みがなされた場合には、レジスタ22のエラー設定領域にエラーを示す情報が設定される。この場合、ウェイクアップIC20は、動作モード設定領域に設定されたモードにかかわらず、次に説明するスリープウェイクアップモードに遷移する。
【0022】
ここで、これらのウェイクアップIC20の動作モードに関連する技術的課題について説明する。通常、メインマイコン30がシャットダウンされた状態であるとき、ウェイクアップIC20はセレクティブスリープモードで動作する。しかし、レジスタ22において固着等の何らかの故障が発生している場合、メインマイコン30からレジスタ22のウェイクアップCANID設定領域に対してウェイクアップCANIDを設定できない場合がある。この場合、外部から受信したウェイクアップCANIDがレジスタ22のウェイクアップCANID設定領域に設定されたものと一致するか否かの判定を正常に行うことができない。そうすると、ウェイクアップIC20は、メインマイコン30の起動要求を受信しているにも関わらず、メインマイコン30を起動させることができない状況が発生し得る。本実施形態の制御システム1では、以下に説明する処理を実行することにより、このような状況が発生することを抑制することが可能となる。
【0023】
[ウェイクアップIC及びメインマイコンの処理]
ウェイクアップIC20及びメインマイコン30で実行される処理について、図3図7に示すフローチャート及び図8図9に示すシーケンス図を参照しつつ説明する。
図3図5は、ウェイクアップIC20及びメインマイコン30にバッテリ40が接続されて電力が供給された際の初回起動時におけるメインマイコン30の処理を示している。また、図8及び図9は、当該初回起動時における、ウェイクアップIC20及びメインマイコン30の動作を示すシーケンス図である。図8がウェイクアップIC20のレジスタ22が正常である場合、図9がウェイクアップIC20のレジスタ22に故障が生じている場合の動作を示している。
【0024】
ステップ101(図ではS101と表記している。以下同様)で、メインマイコン30は、スタートアップモード(Smode)に遷移する。
ステップ102で、メインマイコン30は、起動時の初期処理を行う。ここでの初期処理とは、例えば、RAM32の初期化等である。
ステップ103で、メインマイコン30は、電気的にデータを書き換え可能な不揮発性メモリであるROM33に格納されている故障フラグの値を読み出す。この故障フラグは、後述するステップ109やステップ112で設定される値である。
【0025】
ステップ104で、メインマイコン30は、SPI通信を行い、ウェイクアップIC20のレジスタ22に設定値を書き込む。例えば、メインマイコン30は、セレクティブスリープモードにおいてメインマイコン30を起動するか否かの判定に用いるためのウェイクアップCANIDを、ウェイクアップCANID設定領域に書き込む。
ステップ105で、メインマイコン30は、SPI通信を行い、ステップ104で書き込んだウェイクアップIC20のレジスタ22の設定値を読み出す。
【0026】
ステップ106で、メインマイコン30は、ステップ103で読み出した故障フラグの値に基づき、ウェイクアップIC20において前回に故障履歴があるか否かを判定する。故障履歴がある場合にはステップ107に進み(Yes)、そうでない場合にはステップ110に進む(No)。
ステップ107で、メインマイコン30は、制御システム1の他の制御装置、すなわち外部ユニット50A~50CからウェイクアップIC20に対して起動要求が送信されたか否かを識別する。具体的には、メインマイコン30は、外部ユニット50A~50Cに対し、ウェイクアップCANIDをウェイクアップIC20に対して送信したかを確認するための通信を行うことにより、起動要求の有無を識別する。
【0027】
ステップ108で、メインマイコン30は、ステップ107における確認処理の結果に基づき、他のECUから起動要求が送信されたか否かを判定する。送信された場合にはステップ109に進み(Yes)、そうでない場合にはステップ114に進む(No)。
ステップ109で、メインマイコン30は、RAM32において、故障フラグに「0(故障なし)」を設定する。
【0028】
ステップ110で、メインマイコン30は、エコーバック診断を行い、ウェイクアップIC20のレジスタ22に故障が生じているか否かを識別する。具体的には、メインマイコン30は、ステップ104でウェイクアップIC20のレジスタ22に書き込んだ設定値が、ステップ105で正常に読み出せているか否かを確認することによって、故障の有無を識別する。
ステップ111で、メインマイコン30は、エコーバック診断の結果が異常であるか、すなわち、ステップ105でウェイクアップIC20のレジスタ22に書き込んだ設定値がステップ106で正常に読み出せなかったかを判定する。結果が異常である場合、すなわち、レジスタ22に故障が生じている場合にはステップ112に進み(Yes)、そうでない場合にはステップ113に進む(No)。
【0029】
ステップ112で、メインマイコン30は、RAM32において、故障フラグに「1(故障あり)」を設定する。なお、メインマイコン30は、エコーバック診断の結果が異常である場合には、時間が許容する範囲内において、レジスタ22への書き込み及び読み出しをリトライすることも可能である。
【0030】
ステップ113で、メインマイコン30は、シャットダウン命令を受信したか否かを判定する。当該シャットダウン命令は、例えば、ウェイクアップIC20が外部ユニット50A~50Cから受信し、メインマイコン30に送信される。シャットダウン命令を受信した場合には、ステップ114に進み(Yes)、受信していない場合には、継続して通常動作を行う(No)。
ステップ114で、メインマイコン30は、シャットダウンモード(Umode)に遷移する。
【0031】
ステップ115で、メインマイコン30は、RAM32の故障フラグの設定値が「1(故障あり)」であるか否かを判定する。故障フラグの設定値が「1」である場合にはステップ116に進み(Yes)、そうでない場合にはステップ118に進む(No)。
ステップ116で、メインマイコン30は、ウェイクアップIC20がセレクティブスリープモードに遷移することを禁止する。
ステップ117で、メインマイコン30は、外部ユニット50A~50Cに対して、ウェイクアップIC20のレジスタ22に故障が生じていることを通知する。これにより、外部ユニット50A~50Cは、意図しないCANIDによってECU10のメインマイコン30が起動し得ることを識別することができる。また、このとき、メインマイコン30は、ウェイクアップIC20のレジスタ22が正常に修復したときに備え、正しいウェイクアップCANIDを通知しておいてもよい。
【0032】
ステップ118で、メインマイコン30は、SPI通信により、ウェイクアップIC20に対し、スリープモードへの遷移命令を送信する。このとき、メインマイコン30は、セレクティブスリープモードへの遷移が禁止されていない場合には、セレクティブスリープモードに遷移するように制御信号を送信する。換言すれば、メインマイコン30は、ウェイクアップIC20を、セレクティブスリープモードに設定する。一方、メインマイコン30は、ステップ116でセレクティブスリープモードへの遷移が禁止された場合には、CANバスが動作したときにメインマイコン30を起動するスリープウェイクアップモードに遷移するように制御信号を送信する。換言すれば、メインマイコン30は、ウェイクアップIC20を、スリープウェイクアップモードに設定する。
【0033】
ステップ119で、メインマイコン30は、RAM32に設定された故障フラグの値を、電気的にデータを書き換え可能な不揮発性メモリであるROM33に書き込む。これにより、シャットダウン後においても、故障フラグの値が消去されることなく保持される。
ステップ120で、メインマイコン30は、シャットダウン処理を行う。
【0034】
図6及び図7は、メインマイコン30が上記のステップ113~117の処理によってシャットダウンされた状態から再起動されるときに、ウェイクアップIC20において実行される処理を示している。
図6は、ウェイクアップIC20のレジスタ22が正常である場合、すなわち、ウェイクアップIC20がセレクティブスリープモードに設定された状態における処理を示している。
【0035】
ステップ121で、ウェイクアップIC20は、セレクティブスリープモードであるため、ウェイクアップCANIDの認証を行う。すなわち、ウェイクアップIC20は、ウェイクアップCANIDを受信したか否かを判定する。受信した場合にはステップ122に進み(Yes)、そうでない場合にはそのまま待機する(No)。
ステップ122で、ウェイクアップIC20は、メインマイコン30の初回起動の処理と同様の処理を行う。すなわち、メインマイコン30に起動要求を送信し、その結果、メインマイコン30において、前述したステップ101~120の処理と同様の処理が実行され、メインマイコン30が起動する。
【0036】
図7は、ウェイクアップIC20のレジスタ22に故障が生じている場合、すなわち、ウェイクアップIC20がスリープウェイクアップモードに設定された状態における処理を示している。
ステップ131で、ウェイクアップIC20が、スリープウェイクアップモードであるため、CANバスが動作しているか否かを判定する。動作している場合にはステップ132に進み(Yes)、そうでない場合にはそのまま待機する(No)。
ステップ132で、ウェイクアップIC20は、メインマイコン30の初回起動の処理と同様の処理を行う。すなわち、メインマイコン30に起動要求を送信し、その結果、メインマイコン30において、前述したステップ101~120の処理と同様の処理が実行され、メインマイコン30が起動する。
【0037】
[本実施形態による効果等]
本実施形態によれば、レジスタ22に故障が生じている場合に、メインマイコン30が、ウェイクアップIC20の動作モードをスリープウェイクアップモードに設定してからシャットダウンする。このため、メインマイコン30の起動要求を再度受信したときに、レジスタ22の故障によりウェイクアップCANIDがレジスタ22に正しく設定されず、ウェイクアップCANIDの認証が正しく行われない場合であっても、CAN通信が動作していることを条件にメインマイコン30が起動される。したがって、ハードウェア面における変更を必要とせずに、レジスタ22の故障に起因してメインマイコン30の起動が失敗することを抑制することができる。
【0038】
また、一方で、本実施形態によれば、ウェイクアップIC20のレジスタ22に故障が生じていない場合には、ウェイクアップIC20がセレクティブスリープモードに設定される。これにより、起動要求を示すウェイクアップCANIDを受信したときにのみ、メインマイコン30を起動させることができる。
【0039】
ここで、本実施形態では、前述したように、レジスタ22の故障が生じているときは、ウェイクアップIC20がスリープウェイクアップモードに設定される。このため、CAN通信が動作したことを条件としてメインマイコン30が起動される。したがって、メインマイコン30の起動を意図しないCANIDを有する通信が行われた場合でも、メインマイコン30が起動されることも考え得る。この点について、本実施形態では、ウェイクアップIC20のレジスタ22に故障が生じているか否かを示す故障フラグが設定され、次回に起動するときに、この故障フラグに基づいて、レジスタ22の故障の有無が確認する。そして、レジスタ22の故障が生じているときは、外部ユニット50A~50Cに対して、起動要求を送信したか否かの確認を行い、起動要求が送信されていなければ、再度シャットダウンを行う。したがって、メインマイコン30の起動を意図しないCANIDを有する通信に起因してメインマイコン30が起動しその後も動作し続けることによって、不要な処理負荷が生じたり電力が消費されたりすること等を、抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、レジスタ22の故障が生じているときに、外部ユニット50A~50Cに対して当該故障が通知される。これにより、外部ユニット50A~50C側においても、不要な通信を行うことによってメインマイコン30を意図せず起動させてしまうことを抑制し得る。
【0041】
[その他]
以上に説明した本発明の実施形態は、本発明の技術的範囲で考え得る実施態様の一部に過ぎず、本発明の例示として開示されるものであって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。また、各実施形態における機能的構成及び物理的構成は、前述の態様に限定されるものではなく、例えば、各機能や物理的資源を統合して実装したり、逆に、さらに分散して実装したり、さらには、構成の一部について他の構成の追加、削除、置換等をすることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…制御システム、10…ECU、20…ウェイクアップIC、21…制御部、22…レジスタ、30…メインマイコン、31…プロセッサ、32…RAM、33…ROM、40…バッテリ、50A~50C…外部ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9