(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164970
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】接合装置用ブラシロール、接合装置および接合方法
(51)【国際特許分類】
B24D 13/10 20060101AFI20241121BHJP
B24B 29/00 20060101ALI20241121BHJP
B23K 11/34 20060101ALN20241121BHJP
B23K 11/06 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
B24D13/10
B24B29/00 E
B23K11/34
B23K11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080730
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】乙井 健次
(72)【発明者】
【氏名】三皷 達輝
(72)【発明者】
【氏名】光岡 良祐
(72)【発明者】
【氏名】渡部 裕二郎
【テーマコード(参考)】
3C063
3C158
【Fターム(参考)】
3C063AA07
3C063AB03
3C063AB09
3C063BA17
3C063BB01
3C063BB03
3C063BG07
3C063BH28
3C063EE26
3C158AA06
3C158AA14
3C158AB04
3C158CA04
3C158CB01
3C158CB03
(57)【要約】
【課題】圧下量変化に対するロバスト性を保ちながら、横広がりを抑え高い研削力を維持できるブラシロールを提供すること。
【解決手段】本発明のブラシロール3Aは、軸中心に回転するディスク4と、ディスク4の径方向RDの外側に設けられ、それぞれが砥材を含む複数本のブラシ糸LBを含む研削ブラシ31と、ディスク4の軸方向における研削ブラシ31の両側に設けられ、研削時におけるブラシ糸LBの弾性変形に追従して変位可能に構成された糸抑え33と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合対象に形成される表面被膜を除去するためのブラシロールであって、
前記ブラシロールの軸中心に回転するディスクと、
前記ディスクの径方向の外側に設けられ、それぞれが砥材を含む複数本のブラシ糸を含む研削ブラシと、
前記ディスクの軸方向における前記研削ブラシの両側に設けられ、研削時における前記ブラシ糸の弾性変形に追従して変位可能に構成された糸抑えと、
を備えることを特徴とする接合装置用ブラシロール。
【請求項2】
前記糸抑えは、前記ブラシ糸と同じ向きに配列される複数本の抑え糸を含む、
請求項1に記載の接合装置用ブラシロール。
【請求項3】
前記ブラシ糸は、前記抑え糸よりも前記ディスクの径方向の外側に向けた糸丈が長い、
請求項2に記載の接合装置用ブラシロール。
【請求項4】
前記ブラシ糸は、前記抑え糸よりも糸丈が12mm以上の範囲で長い、
請求項3に記載の接合装置用ブラシロール。
【請求項5】
前記ブラシ糸は、前記抑え糸よりも糸丈が32mm以下の範囲で長い、
請求項3に記載の接合装置用ブラシロール。
【請求項6】
前記抑え糸は、前記ブラシ糸と同じ糸素材から構成される、
請求項2に記載の接合装置用ブラシロール。
【請求項7】
前記ディスクは、周方向に間隔をあけてそれぞれが表裏を貫通する複数の糸通しを備え、
前記糸素材は、前記糸通しで折り返された一方が前記研削ブラシの前記ブラシ糸を構成し、他方が前記糸抑えの前記抑え糸を構成する、請求項6に記載の接合装置用ブラシロール。
【請求項8】
一対の接合対象の接合予定面のそれぞれに形成される表面被膜を除去するための請求項1乃至請求項7の何れかに記載の接合装置用ブラシロールと、
前記接合装置用ブラシロールにより前記表面被膜が除去され重ね合わされた前記接合対象を接合する接合機と、を備えることを特徴とする接合装置。
【請求項9】
一対の接合対象の接合予定面のそれぞれに形成される表面被膜を除去する第1ステップと、
前記表面被膜が除去された前記接合予定面を突き合せた状態で前記接合対象を接合する第2ステップと、を備え、
前記第1ステップにおいて、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の接合装置用ブラシロールを用いて前記表面被膜を除去する、ことを特徴とする接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマッシュシーム溶接のように二枚の金属板の端部を重ね合わせて接合するのに先立って、接合部分に形成されている表面被膜を除去するのに好適なブラシロールに関する。
【背景技術】
【0002】
二枚の金属板の端部を重ね合わせ、その重ね合わせた部分を一対の電極輪で加圧し、溶接電流を流しながら連続的に溶接をした後に、一対の加圧ロールにより重ね合わせ段差の平坦化を図る接合方法が知られている。健全な溶接を行うために、溶接される鋼板の表面に形成されている酸化膜が除去される。酸化膜を除去する手段として、ブラシロールで鋼板の表面を擦ることが知られている。特許文献1には、面長、つまり軸方向の寸法の小さな回転ディスク型のブラシロールが開示されており、このブラシロールは溶接機に組み込まれ、溶接前の鋼板の表面に形成されている酸化膜を除去する。酸化膜の他に、金属板などの接合対象物の表面にはめっき膜、塗装等の絶縁性の被膜が存在し得るが、これらの被膜も接合を阻害する要因となる。
【0003】
この種のブラシロールとしては、外周縁に多数のブラシ糸が植設されたディスクを金属製のロールシャフトに軸方向に複数重ねた状態で装着したものが知られている。ブラシ糸は、ブラシ毛、ブリッスル(bristle)などとも称される。
ブラシロールの研削ブラシを構成するブラシ糸は、酸化膜の除去を繰り返すうちに摩耗して短くなるため、ブラシ糸はある程度の初期長さが必要である。ところが、初期長さがあると、ブラシ糸の横広がりが生じ、酸化膜の除去能力が低下する。ブラシ糸の横広がりとは、酸化膜の除去のためにブラシ糸が鋼板に押し付けられると、主にブラシロールの軸方向の両側に配置されるブラシ糸の先端側が、軸方向の機械的な拘束が弱いために、軸方向の外側に弾性変形して撓むことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラシ糸の横広がりを抑えるには、ブラシ糸を機械的に拘束する、ブラシロールの軸方向の寸法を大きくして幅広化する、および、ブラシ糸の剛性を高くするなどが考えられる。
例えば、軸方向の両側に配置されるブラシ糸を軸方向の外側から機械的に拘束する例えば金属製のフランジを設置すれば、ブラシの使用当初は横広がりを抑えることができる。しかし、砥材を含む、典型的には砥粒が練り込まれているブラシ糸が用いられているブラシロールの場合、酸化膜の除去を継続している最中に、ブラシ糸に対して剛体とみなされるフランジにブラシ糸が摺接するために、フランジが摩耗してブラシ糸を拘束する効果が低下する。
また、ブラシの幅広化は、寸法が大きくなることに加え、鋼板とブラシロールの接触面積が増加し、駆動モータ容量やコストが過大になる。
また、ブラシ糸丈を短くする、ブラシ糸径を太くするなどしてブラシ糸の剛性を高めることもできるが、ブラシ特有の圧下量変化に対するロバスト性が低下してしまう。
【0006】
以上より、本発明は、溶接機に内蔵可能な面長の小さいディスク型のブラシロールにおいて、圧下量変化に対するロバスト性を保ちながら、横広がりを抑え研削能力を維持できるブラシロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
接合対象に形成される表面被膜を除去するための接合装置用ブラシロールであって、
ブラシロールの軸中心に回転するディスクと、
ディスクの径方向の外側に設けられ、それぞれが砥材を含む複数本のブラシ糸を含む研削ブラシと、
ディスクの軸方向における研削ブラシの両側に設けられ、研削時におけるブラシ糸の弾性変形に追従して変位可能に構成された糸抑えと、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の接合装置用ブラシロールにおいて、
糸抑えは、好ましくは、ブラシ糸と同じ向きに配列される複数本の抑え糸を含む。
【0009】
本発明の接合装置用ブラシロールにおいて、
ブラシ糸は、抑え糸よりもディスクの径方向の外側に向けた糸丈が長い、ブラシロール。
【0010】
本発明のブラシロールにおいて、
ブラシ糸は、抑え糸よりも糸丈が12mm以上の範囲で長いことが好ましい。
【0011】
本発明の接合装置用ブラシロールにおいて、
ブラシ糸は、抑え糸よりも糸丈が32mm以下の範囲で長いことが好ましい。
【0012】
本発明の接合装置用ブラシロールにおいて、
抑え糸は、好ましくは、ブラシ糸と同じ糸素材から構成される。
【0013】
本発明の接合装置用ブラシロールにおいて、好ましくは、
ディスクは、周方向に間隔をあけてそれぞれが表裏を貫通する複数の糸通しを備え、
糸素材は、糸通しで折り返された一方が研削ブラシのブラシ糸を構成し、他方が糸抑えの抑え糸を構成する。
【0014】
本発明の接合装置は、
一対の接合対象の接合予定面のそれぞれに形成される表面被膜を除去するための以上のいずれかの接合装置用ブラシロールと、
接合装置用ブラシロールにより表面被膜が除去され重ね合わされた接合対象を接合する接合機と、を備える。
【0015】
本発明の接合方法は、
一対の接合対象の接合予定面のそれぞれに形成される表面被膜を除去する第1ステップと、
表面被膜が除去された接合予定面を突き合せた状態で接合対象を接合する第2ステップと、を備え、
第1ステップにおいて、以上の何れかに記載の接合装置用ブラシロールを用いて表面被膜を除去する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、砥材入りのブラシ糸に糸抑えが追従して変位可能とされているので、ブラシ糸によって糸抑えが摩耗するのを抑制できる。したがって、本発明によれば、ブラシ糸の横広がりを抑制することができるので、研削能力を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る接合装置用ブラシロールが適用される溶接装置の一例を示す図である。
【
図2】溶接装置において酸化膜を接合装置用ブラシロールで除去する様子を示す図である。
【
図3】実施形態に係る接合装置用ブラシロールを示し、(a)は正面図、(b)は正断面図および(c)は側面図である。
【
図4】実施形態に係る接合装置用ブラシロールを用いて鋼板の表面に形成される酸化膜を研削により除去する際のブラシ糸の挙動を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図5】ブラシ糸の代替として剛体とみなし得るフランジを用いる場合のブラシ糸の挙動を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図7】好ましい接合装置用ブラシロールを示す側面図であり、(a)は表裏の一方の面から視た図、(b)は表裏の他方の面から視た図である。
【
図8】好ましい接合装置用ブラシロールの作成手順を示し、(a)は糸通しにブラシ糸を通し、(b)は糸通しを介してブラシ糸を折り返しはじめ、(c)はブラシ糸の折り返しを終え、(d)は糸丈を調整している。
【
図9】糸抑えとしてのブラシ糸を代替する第1手段に係る接合装置用ブラシロールを示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【
図10】糸抑えとしてのブラシ糸を代替する第2手段に係る接合装置用ブラシロールを示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る接合装置用ブラシロール3Aについて説明する。なお、以下では接合装置用を省き、単にブラシロール3Aなどと表記することがある。
ブラシロール3Aは、鋼板と鋼板を溶接により接続する溶接装置1に適用され、溶接の前に鋼板の溶接が予定される部位を研削する。また、ブラシロール3Aは、軸方向ADの両側を除いて設けられる研削ブラシ31と、研削ブラシ31を軸方向ADの両側から挟む一対の糸抑え33と、を備える。研削ブラシ31は相対的に糸丈の長い複数本のブラシ糸LBの集合からなり、糸抑え33は相対的に糸丈の短い複数本の抑え糸SBの集合からなる。抑え糸SBは研削ブラシ31を構成するブラシ糸LBの横広がりを抑えることができる。以下、溶接装置1の概略について説明した後に、ブラシロール3Aの説明をする。
【0019】
[溶接装置1の概略構成:
図1,
図2参照]
溶接装置1は、鋼板Sが圧延され搬送される搬送路P1の途中に備えられ、鋼板Sと鋼板Sを溶接により接続する。溶接装置1は、
図1に示すように、マッシュシーム溶接(mash seam welding,JIS Z 3001)を担う溶接部20と、溶接部20で溶接された部分を加圧する圧下部30と、を備えている。この溶接部分は、先行する鋼板Sの尾端と後続する鋼板Sの先端が重ね合わされた部分を含み、溶接部分以外に比べると肉厚な段差をなす。圧下部30はこの段差を他の部分と概ね同じ肉厚になるまで押し潰して平坦化の程度を改善する。
また、溶接装置1は、圧下部30で圧下された溶接部分に向けて噴霧水を供給する冷却部40と、噴霧水が供給された溶接部分を加熱する加熱部50と、を備えている。
さらに、溶接装置1は、溶接前に溶接対象である鋼板Sの表面の主に酸化膜を除去する被膜除去部60と、被膜除去部60により酸化膜が除去された鋼板Sの端部をせん断により切除する切断部70と、を備えている。
溶接装置1において、前方(F)および後方(R)が
図1に示されるように定義される。
【0020】
溶接装置1は、冷却部40と加熱部50を備えることで溶接部分の焼入れ及び焼戻しができるので、焼入れ及び焼戻しができる例えば高炭素鋼、TRIP鋼を溶接の対象にできる。しかし、冷却部40および加熱部50を機能させなければ、焼入れおよび焼き戻しの必要のない鋼を溶接できる。
【0021】
溶接部20、圧下部30、冷却部40および加熱部50が共通する移動フレーム10に支持されており、移動フレーム10の前方(F)から後方(R)への移動および後方(R)から前方(F)への移動に伴って、溶接部20、圧下部30、冷却部40および加熱部50が移動できるようになっている。特に、冷却部40および加熱部50を備えることにより、溶接装置1は溶接を行った直後に、溶接部分を焼入れおよび焼戻しを可能にできる。
【0022】
[被膜除去部60:
図1,
図2参照]
ブラシロール3Aは、被膜除去部60における主たる要素である。
被膜除去部60は、鋼板Sの溶接が予定される部分の表面の酸化膜を除去する。表面の酸化膜を除去する限り、他の表面被膜を除去したとしても被膜除去部60であることに変わりはない。また、被膜除去部60は、ブラシロール3Aを用いて研削により酸化膜を除去する。研削は物質を物理的に除去することをいい、酸化膜を物理的に除去するので本実施形態では研削を用いるが、あくまで研削条件の対象は酸化膜であって、鋼板Sを積極的に研削の対象とするものではない。
被膜除去部60は、
図1(a)に示すように、上下で一対のブラシロール3Aと、ブラシロール3Aのそれぞれを回転可能に支持する支持ロッド62A,62Bと、を備える。支持ロッド62A,62Bのそれぞれには図示が省略される回転軸が設けられ、この回転軸にブラシロール3Aが支持される。溶接装置1は、
図1(b)および
図2に示すように、上下で一対のブラシロール3Aが、搬送路P1の方向に間隔をあけて二組設けられている。
図2に示すように、搬送路P1の上流側αに設けられるブラシロール3Aは、溶接の対象となる一方の鋼板Sの酸化膜を除去し、搬送路P1の下流側βに設けられるブラシロール3Aは、溶接の対象となる他方の鋼板Sの酸化膜を除去する。なお、一方の鋼板Sは、他方の鋼板Sよりも先行して溶接装置1に搬送されるので、先行鋼板S1と称され、他方の鋼板Sは、一方の鋼板Sの後に続いて溶接装置1に搬送されるので、後行鋼板S2と称される。なお、両者を区別する必要がないときは鋼板Sと総称する。
【0023】
一対のブラシロール3A,3Aは、
図1(a)に示すように、移動路P2を挟んで高さ方向Hの上下に互いに対向して配置されている。一対のブラシロール3A,3Aは、長さ方向L及び幅方向Wの位置が一致するように配置されている。
【0024】
ブラシロール3Aは、それぞれの外周面が鋼板Sの上面及び下面に接触して表面の酸化膜を削り取るなどして除去する。
移動路P2よりも上方に配置されるブラシロール3Aは、油圧シリンダ63に支持されており、移動路P2に対して昇降する。ブラシロール3Aを支持する支持ロッド62Aは、油圧シリンダ63のピストン64に繋がるピストンロッドを構成する。
ブラシロール3Aにより酸化膜を除去する際には、ブラシロール3Aを降下させることにより、ブラシロール3Aを鋼板Sに適切な圧力をもって接触させる。
移動路P2よりも下方に配置されるブラシロール3Aは、支持台12Bに固定される支持ロッド62Bに支持されており、移動路P2よりも上方に設けられるブラシロール3Aと同様に、移動路P2に対して昇降することができる。
【0025】
ブラシロール3Aは、先行鋼板S1の後端BEから所定の間隔をあけた領域を除去の対象とするとともに、後行鋼板S2の先端FEから所定の間隔をあけた領域を除去の対象とする。先行鋼板S1の除去の対象領域よりも後端側と後行鋼板S2の除去の対象領域よりも先端側とは、切断部70の切断により取り除かれる。
【0026】
[ブラシロール3A:
図3,
図4参照]
次に、ブラシロール3Aについて説明する。
ブラシロール3Aは、
図3に示されるように、複数本のブラシ糸LBにより構成される研削ブラシ31と、複数本の抑え糸SBにより構成される糸抑え33,33を備える。また、ブラシロール3Aは、研削ブラシ31と糸抑え33を外周側において支持するディスク4と、ブラシロール3Aの軸方向ADの両側からディスク4を挟持する一対のフランジ5と、を備える。研削ブラシ31および糸抑え33は、一例して、ブラシロール3Aの周方向CDの全域に亘って設けられている。本実施形態における研削ブラシ31は、ブラシロール3Aの周方向の全域に設けられることを前提としているが、周方向に間欠的に研削ブラシの部分が設けられるブラシロールも存在し、このブラシロールについても糸抑えを設けることもできる。
【0027】
[ブラシ糸LB:
図3参照]
ブラシ糸LBとしては、例えばポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン(ポリプロピレンなど)などの合成樹脂製であって、砥材(例えばアルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)などの粒子)を含有するモノフィラメントが例示される。その他、比較的細いモノフィラメントを複数束ねた芯糸の周面に、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂製の極細の複数のマルチフィラメントを、芯糸の先端以外に螺旋状に巻き付けまたは組紐状に組み合わせた後、合成樹脂製の接着剤で固めた複合型のブラシ糸LBも適用される。複合型のブラシ糸LBにおいても、モノフィラメントおよびマルチフィラメントの一方または双方は上述した砥粒を含む。ブラシ糸LBは、一例として直径が0.02mm~7mmの範囲から選択される。ブラシ糸LBは、真直ぐな形態を有しているが、例えば研削による負荷が加わると弾性変形により撓むことができる。それぞれのブラシ糸LBは、ブラシロール3Aまたはディスク4の径方向RDに沿い、かつ、径方向RDの外側に向けて延びる。
【0028】
[抑え糸SB:
図3参照]
抑え糸SBは、ブラシ糸LBよりも相対的に糸丈が短いが、ブラシ糸LBと同じ向きに配列される。抑え糸SBは、ブラシ糸LBと同様の材質から構成することができる。ただし、抑え糸SBは研削には関与しないので、砥材を含む必要はない。
軸方向ADの両側に一対の糸抑え33,33が設けられ、研削ブラシ31は一対の糸抑え33,33の間に設けられる。研削ブラシ31を構成する複数のブラシ糸LBのうち、軸方向ADの両端側を占めるブラシ糸LBと、糸抑え33,33を構成する抑え糸SBとが接するように研削ブラシ31と糸抑え33,33が設けられる。糸抑え33,33を構成する抑え糸SBはブラシ糸LBよりも糸丈が短いため、ブラシ糸LBが鋼板Sの表面に接して研削しているときに、抑え糸SBは鋼板Sから離れており研削には関与しない。ただし、抑え糸SBは、軸方向ADの両端部においてブラシ糸LBと接し、当該部分においてブラシ糸LBが軸方向ADの外側に向けて広がる横広がりを抑制することができる。
【0029】
ブラシ糸LBと抑え糸SBは、糸丈が相違することの他は任意である。
例えば、ブラシ糸LBと抑え糸SBとが一体をなしていてもよい。一体をなしている場合には、ブラシ糸LBと抑え糸SBとは同じ材質からなる。また、ブラシ糸LBと抑え糸SBとが別体をなしていてもよい。ブラシ糸LBと抑え糸SBとが別体をなしている場合には、ブラシ糸LBと抑え糸SBとは、同じ材質から構成されてもよいし、または、異なる材質から構成されてもよい。
【0030】
また、ブラシ糸LBと抑え糸SBは、剛性が同じであってもよいし、剛性が異なっていてもよい。剛性は、ブラシ糸LBおよび抑え糸SBの材質および直径が関係する。例えば、同じ材質であっても、直径が大きければ剛性が大きくなり、直径が小さければ剛性が小さくなる。したがって、ブラシ糸LBおよび抑え糸SBの材質および直径を選択することにより、ブラシ糸LBと抑え糸SBとを同じ剛性にしてもよいし、異なる剛性としてもよい。
【0031】
[ディスク4:
図3]
ディスク4は、所定の厚みを有する円盤状の本体41と、本体41の表裏を貫通し本体41の中心に形成される例えば円形の軸孔43と、を備える環状の部材である。軸孔43には、ブラシロール3Aを支持ロッド62A,62Bの回転軸が挿通される。
【0032】
本体41はその外周部において研削ブラシ31を構成するブラシ糸LBおよび糸抑え33を構成する抑え糸SBを支持する。ブラシロール3Aを使用している最中にブラシ糸LBが本体41から容易に離脱することがない限り、本体41がブラシ糸LBを支持する手段は任意である。例えば、本体41の外周面にブラシ糸LBの末端部分に対応する溝を形成し、この溝にブラシ糸LBの末端部分を植設するとともに、接着剤で固定することによりブラシ糸LBを固定、支持することができる。この場合、ブラシロール3Aが本体41を一つだけ備える場合には、単一のブラシロール3Aでブラシ糸LBと抑え糸SBの双方を固定、支持することができる。また、一つのブラシロール3Aが複数のディスク4を備える場合には、例えば軸方向ADの両側に配置される一対のディスク4のそれぞれが抑え糸SBを固定、保持し、両側のディスク4に挟まれる単一または複数のディスク4がブラシ糸LBを固定、保持することができる。抑え糸SBを固定、保持するディスク4とブラシ糸LBを固定、保持するディスク4とは、寸法、形状などの仕様が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
[フランジ5:
図3]
一対のフランジ5,5は、軸方向ADの両側からディスク4を挟み込みながら、支持ロッド62A,62Bの回転軸にディスク4を固定する。それぞれのフランジ5は、本体51と、本体51の表裏を貫通し本体51の中心に形成される例えば円形の軸孔53を備える。
【0034】
[ブラシロール3Aの作用:
図4、
図5参照]
次に、ブラシロール3Aにより鋼板Sの表面に形成される酸化膜を除去する際のブラシ糸LBおよび抑え糸SBの挙動について、
図4および
図5を参照して説明する。
図4において、ブラシロール3Aを用いて鋼板Sの酸化膜などの異物を除去する際の研削ブラシ31を構成するブラシ糸LBおよび糸抑え33を構成する抑え糸SBの挙動を模式的に示されている。
図4において、ブラシロール3Aは、軸心Cの周りに矢印Rで示される向きに回転し、かつ、矢印Mで示される向きに直線的に移動しているものとする。
【0035】
異物除去するために、ブラシ糸LBは鋼板Sに押し付けられる。したがって、ブラシ糸LBには鋼板Sから負荷を受けることで撓みが生ずる。撓みは、鋼板Sに近いブラシ糸LBの先端側が大きくなる。
【0036】
[
図4(a) 正面図参照]
軸方向ADにおいては、ブラシ糸LBが軸方向ADの外側に向けて撓むが、軸方向ADの両側に向けたブラシ糸LBの先端側の撓みが大きくなる。これがブラシ糸の横広がりである。ところが、ブラシロール3Aはブラシ糸LBの軸方向ADの両側に抑え糸SBが設けられており、抑え糸SBはブラシ糸LBを軸方向ADに機械的に拘束する。したがって、抑え糸SBは、ブラシ糸LBの横広がりを抑えることができる。
図3(a)においては、抑え糸SBが真直に描かれているが、抑え糸SBの剛性がブラシ糸LBより極端に高くない限りも抑え糸SBにも撓みが生ずる。この抑え糸SBの撓み、換言すると抑え糸SBの変位は、ブラシ糸LBの撓みに追従するものである。このように本実施形態においては、抑え糸SBをブラシ糸LBの弾性変形に追従して軸方向ADへ変位可能とすることにより、横広がりを抑える。
【0037】
[
図4(b) 側面図参照]
ブラシ糸LBは周方向CDにおいても撓む。この撓みは、ブラシ糸LBが鋼板Sに接し、かつ、ブラシロール3Aが移動Mすることによる。このブラシ糸LBの撓みはブラシロール3Aの回転Rとは逆の向きに生じ、ブラシ糸LBの先端側の撓みが大きい。ブラシ糸LBが撓むのに追従して、抑え糸SBもブラシ糸LBと同じ向きに撓む。加えて、ブラシ糸LBは軸方向ADの外側に向けて撓むのに追従して抑え糸SBも撓む。例えば、抑え糸SBの剛性がブラシ糸LBと同等であれば、抑え糸SBはブラシ糸LBに追従し、かつ、同等に撓む。したがって、ブラシ糸LBと接する抑え糸SBとブラシ糸LBとの間には摩擦が生じないか、生じたとしても微小である。なお、ブラシ糸LBは、鋼板Sの研削に関わる前は真直であるが、研削に関わっている間は撓み、研削への関りを終えると真直ぐに復帰する。
【0038】
[剛体によるブラシ糸LBの拘束:
図5]
ブラシロール3Aにおいて、ブラシ糸LBの横広がりを抑えることだけを考慮するのであれば、抑え糸SBよりも剛性の大きい部材、例えば
図5(a)に示されるようにフランジ5の径を大きくしてブラシ糸LBの撓みを抑えることができる。しかし、フランジ5はブラシ糸LBよりも剛性の大きい金属材料で作製されているために、周方向CDおよび軸方向ADへのブラシ糸LBの撓みに追従して弾性変形することができない。したがって、
図5(b)に示されるように、真直なブラシ糸LBが真直な状態から撓み、さらに真直に戻るたびに、ブラシ糸LBとフランジ5との間に摩擦が生じてしまう。ブラシロール3Aによる酸化膜除去を継続していくと、ブラシ糸LBと摩擦が生じるフランジ5の表面が摩耗してしまい、ブラシ糸LBの横広がりを抑えるという目的を達成するのが難しくなる。
【0039】
[ブラシロール3Aの効果]
以上説明したように、ブラシロール3Aは、酸化膜除去に直接的に関わるブラシ糸LBと、ブラシ糸LBの軸方向ADへの弾性変形に追従して撓み変位可能とされる抑え糸SBを備えることにより、ブラシ糸LBの横広がりを抑えることできる。しかも、ブラシロール3Aは、ブラシ糸LBの周方向CDの撓みに追従して抑え糸SBも周方向CDに撓み変位可能とされるので、ブラシ糸LBと抑え糸SBの間の摩擦は生じないか、生じたとしても微小に抑えることができるので、抑え糸SBによる横広がりの抑制効果および研磨能力を長期にわたって担保できる。
特に、抑え糸SBはブラシ糸LBの弾性変形による移動と同様の挙動を示しやすく、ブラシ糸LBにより追従し易い糸抑え33となる。したがって、抑え糸SBがブラシ糸LBによって摩耗することをより抑制し、ブラシ糸LBの横広がりを抑制することができる。
【0040】
ブラシ糸LBが抑え糸SBよりも糸丈が相対的に長いため、抑え糸SBは酸化膜の除去の際に、鋼板Sに接することがない。したがって、鋼板Sにより抑え糸SBが軸方向の外側に押し広げられることがないので、抑え糸SBがより強くブラシ糸LBを抑えることができ、ブラシ糸の横広がりを抑制することができる。
【0041】
[ブラシ糸LBおよび抑え糸SBの仕様例:
図6]
次に、研削により鋼板の表面の酸化膜を除去するのに好ましいブラシ糸LBおよび抑え糸SBの仕様について行った検討結果を説明する。検討の手順は、以下の通りである。
手順1:研削良好となる横広がりにより生ずる荷重の特定
手順2:研削不良が生ずる横広がり限界の特定
手順3:横広がり限界以下に抑えるためのブラシ糸LBと抑え糸SBの寸法の特定
【0042】
<手順1:研削良好となる横広がりにより生ずる荷重の特定>
以下の仕様のブラシロールを用意して、以下の研削条件により酸化膜が表面に形成されている鋼板を研削した。その結果、片側で1mmの横広がり(w)で溶接に支障のない程度に酸化膜が除去され、良好な研削状態が得られた。なお、超過寸法ΔLは、ブラシ糸LBが抑え糸SBよりも径方向RDの外側にはみ出している寸法をいう。なお、
図6(a)にブラシ幅Wなどの仕様Aの定義が示されている。
【0043】
ブラシロール仕様:仕様A
ブラシ幅W=26mm
糸丈 ブラシ糸LB(LL)=25mm 抑え糸SB(LS)=3mm
超過寸法ΔL=LL-LS=22mm
研削条件:
圧下量=3mm , 移動速度=10mpm , 回転数=1856mpm
ブラシ接触幅CW=28mm
【0044】
良好な研削状態が得られたときの横広がり(w)を用いて、横広がりしているブラシ糸LBの先端に作用する荷重Pを求めた。なお、荷重Pは、ブラシ糸LBが片持ち梁をなしているものとし、かつ、
図6(a)に示すようにブラシ糸LBの先端に集中荷重(P)が作用しているものとして、以下の式(1)を用いて算出した。その結果、集中荷重Pは0.028Nである。なお、ブラシ糸LBの直径dは1mmである。なお、集中荷重Pは、手順3で用いられる。
【0045】
δ=PL3/3EI 式(1)
δ:ブラシ糸LBの先端におけるたわみ(w=1mm)
P:ブラシ糸LBの先端に作用する集中荷重(0.028N)
L=ΔL=22mm
E:ブラシ糸LBのヤング率(2000MPa)
I:ブラシ糸LBの断面二次モーメント(0.05)
【0046】
<手順2:研削不良を生じさせない横広がり上限(wmax)の特定:
図6(b)>
次に、以下の仕様のブラシロールを用意し、かつ、以下の研削条件により酸化膜が表面に形成されている鋼板を研削した。その結果、移動速度が10mpmの場合に、横広がりwが片側で3mmとなり、酸化膜を除去しきれなかった。移動速度が2mpmだと良好な研削状態が得られた。以上の結果より、酸化膜除去のサイクルタイムを短くすることを想定して、研削不良を生じさせない横広がり上限を3mmと設定する。
【0047】
ブラシロール仕様:仕様B
ブラシ幅W=20mm
糸丈 ブラシ糸LB(LL)=25mm 抑え糸SB(LS)=3mm
超過寸法ΔL=LL-LS=22mm
研削条件:
圧下量=3mm 移動速度=2mpm,10mpm 回転数=1800mpm
ブラシ接触幅CW=26mm
【0048】
<手順3:ブラシ糸LBと抑え糸SBの寸法の特定:
図6(b),(c)>
ブラシ糸LBに横広がり方向に集中荷重P(0.028N)が作用し、かつ、横広がり(たわみδ)が3mm以下となる、超過寸法ΔLを式(1)に基づいて求めた。その結果、超過寸法ΔLが32mmのときに横広がりが約3mmである。したがって、良好な研削状態を得るためには、ブラシ糸LBの超過寸法ΔLの上限(ΔLmax)を32mmとすることが好ましい。
【0049】
一方で、現実的なブラシロールの交換の基準となるブラシ糸LBの超過寸法ΔLは16mm程度である。これは、超過寸法ΔLが短くなると、ブラシロールの駆動モータの負荷(トルク)が大きくなるためである。研削に供される前の初期における典型的な超過寸法ΔLを25mmとすると、ブラシ糸LBの摩耗は9mmまで許容される。そして、典型的な圧下量が3mmであることを前提とすれば、ブラシ糸LBの超過寸法ΔLの下限(ΔLmin)を12mm(3mm+9mm)とすることが好ましい。
【0050】
ここまで好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0051】
[ディスクの変形例:
図7,
図8参照]
次に、好ましいディスク4について説明する。
このディスク4は、
図7に示されるように、ディスク4の表裏を貫通し、ブラシ糸LBが挿通される複数の糸通し45が周方向に均等な間隔を隔てて形成されている。
それぞれの糸通し45に
図8(a)に示されるように複数のブラシ糸LBを挿通し、
図8(b)に示されるようにU字状に折り返される。そうすると、ブラシ糸LBはディスク4の表裏の両側においてディスク4の径方向RDに沿って配列される。折り返されて表裏に重なる部分を金属線などにより緊締47とすることで、多数のブラシ糸LBがディスク4の外周縁に固定される。なお、
図7においては、一つの糸通し45にだけブラシ糸LBが設けられている例が示されているが、表裏の一方の側にはブラシ糸LBが設けられ(
図7(a))、表裏の他方の側には抑え糸SBが設けられている(
図7(b))。ただし、ブラシ糸LBの一部が抑え糸SBとして機能する。ブラシ糸LBと抑え糸SBは仕様が同じである。
【0052】
図8(a)に示されるように、挿通される複数のブラシ糸LBの長さが等しい場合、
図8(c)に示されるように、ブラシ糸LBを折り返して形成されるブラシ糸LBおよび抑え糸SBのそれぞれの長さが不均等になる。そこで、
図8(d)に示されるように、必要な長さのところで切断し、ブラシ糸LBおよび抑え糸SBのそれぞれの糸丈を揃える。
【0053】
ブラシ糸を折り返して、一方の側を糸抑え33の抑え糸SBとし、他方の側を研削ブラシ31のブラシ糸LBとすることで、両者が一体化してディスク4に固定された簡易な構造で、抑え糸SBの摩耗とブラシ糸LBの横広がりを抑制することができる。
【0054】
[抑え糸SBの代替手段]
ブラシ糸LBの横広がりを抑える抑え糸SBを代替する手段について、
図9および
図10を参照して説明する。以下、第1手段、第2手段の順に説明する。
【0055】
<第1手段:
図9参照>
第1手段に係るブラシロール3Bは、剛体とみなされるフランジ5を用いてブラシ糸LBの横広がりを防ぐ。ただし、ブラシ糸LBとの摩擦が生じないか、生じたとしても微小となるように、フランジ5を駆動軸に対して回転が自在とされる。
【0056】
図9に示されるように、ブラシロール3Bは、図示が省略される回転電機などの駆動源により回転される駆動軸9に、フランジ5が軸受6を介して装着される。したがって、フランジ5は駆動軸9の回転駆動に追従することなく空転することができる。一方で、ブラシ糸LBを備えるディスク4は、駆動軸9に固定されている。ブラシロール3Bが酸化膜除去をする際に、ブラシ糸LBが周方向CDに撓んだとする。フランジ5は最外層のブラシ糸LBと接しているので、フランジ5はブラシ糸LBの周方向CDの撓みに追従して微小角度だけ空転し、変位する。最外層のブラシ糸LBは軸方向ADの外側に向けて撓んで横広がりしようとするが、フランジ5の特に径方向RDの先端側が横広がりを抑えることができる。つまり、フランジ5,5は、その先端側が糸抑え33,33を構成する。
【0057】
以上のように、ブラシロール3Bは、酸化膜除去に関わるブラシ糸LBが周方向CDに撓み部分的に移動したとしても、フランジ5が空転するので、ブラシ糸LBとフランジ5の間には摩擦が生じないか、生じたとしても微小であるため、フランジ5の摩耗は抑えられる。
なお、酸化膜除去に関わらない領域のブラシ糸LBは撓まないために、フランジ5が空転すると摩擦が生じ得る。しかし、当該領域のブラシ糸LBは横広がりをしないため、フランジ5との摩擦は微小であり、フランジ5の摩耗は生じないか、生じたとしても微小である。
【0058】
<第2手段:
図10>
第2手段に係るブラシロール3Cは、例えばブラシ糸LBの弾性変形に追従して弾性変形できる材料から全体が構成されるフランジ5を用いてブラシ糸LBの横広がりを防ぐ。このブラシロール3Cにおけるフランジ5もその先端側が糸抑え33を構成する。フランジ5の先端側の糸抑え33は、複数本の抑え糸SBがあたかも一体化され、かつ、フランジ5に一体化されたものとみなすことができる。したがって、ブラシロール3Cにおいても、ブラシロール3Aと同様の効果を得ることができる。
ここでは、フランジ5の全体をブラシ糸LBに追従して弾性変形できる材料から構成される例を示したが、糸抑え33を構成する部分だけを当該弾性材料から構成し、それ以外の部分は金属材料から構成することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 溶接装置
3A,3B,3C ブラシロール
4 ディスク
41 本体
43 軸孔
45 糸通し
47 緊締
5 フランジ
51 本体
53 軸孔
6 軸受
9 駆動軸
10 移動フレーム
12B 支持台
20 溶接部
30 圧下部
31 研削ブラシ
33 糸抑え
40 冷却部
50 加熱部
60 被膜除去部
62A,62B 支持ロッド
63 油圧シリンダ
64 ピストン
70 切断部
LB ブラシ糸
SB 抑え糸