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特開2024-164971廃棄物への二酸化炭素の固定化システム及び廃棄物の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164971
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】廃棄物への二酸化炭素の固定化システム及び廃棄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20241121BHJP
   B09B 1/00 20060101ALI20241121BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241121BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20241121BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241121BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20241121BHJP
   B09B 101/45 20220101ALN20241121BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20241121BHJP
   B09B 101/55 20220101ALN20241121BHJP
【FI】
B09B3/70 ZAB
B09B1/00 A
B01D53/62
B01D53/78
B01D53/14 220
C01B32/50
B09B101:45
B09B101:30
B09B101:55
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080732
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐麻
(72)【発明者】
【氏名】河合 達司
(72)【発明者】
【氏名】篠原 智志
(72)【発明者】
【氏名】上島 裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 真弓
【テーマコード(参考)】
4D002
4D004
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA05
4D002DA66
4D002FA02
4D002GA01
4D002GB02
4D002HA05
4D004AA33
4D004AA36
4D004AA43
4D004BB03
4D004CA34
4D004CC01
4D004CC02
4D020AA03
4D020BA02
4D020BB03
4D020BC06
4D020CB01
4D020CC18
4D020DA03
4D020DB03
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC01
4G146JD02
(57)【要約】
【課題】廃棄物からのCa2+の溶出が抑制されず、二酸化炭素とカルシウムとを効率よく反応させることができる廃棄物への二酸化炭素の固定化システム及び廃棄物の処理方法を提供する。
【解決手段】固定化システム1は、廃棄物13に二酸化炭素を固定して安定化するシステムである。固定化システム1は、カルシウムを含む廃棄物13に二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体を供給するとともに、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体を供給することが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを含む廃棄物への二酸化炭素の固定化システムであって、
廃棄物に二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体を供給するとともに、
少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体を供給することが可能であることを特徴とする廃棄物への二酸化炭素の固定化システム。
【請求項2】
前記ファインバブルは、二酸化炭素25vol%以下のガスで形成されることを特徴とする請求項1記載の廃棄物への二酸化炭素の固定化システム。
【請求項3】
前記ファインバブルは空気で形成されることを特徴とする請求項1記載の廃棄物への二酸化炭素の固定化システム。
【請求項4】
前記二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体の供給と、前記ファインバブルを含む液体の供給を同時に行うことが可能であることを特徴とする請求項1記載の廃棄物への二酸化炭素の固定化システム。
【請求項5】
前記二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体の供給と、前記ファインバブルを含む液体の供給を交互に行うことが可能であることを特徴とする請求項1記載の廃棄物への二酸化炭素の固定化システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の廃棄物への二酸化炭素の固定化システムを用いた廃棄物の処理方法であって、
廃棄物への二酸化炭素の固定化処理を行った後に、前記廃棄物を処分場に埋め立てることを特徴とする廃棄物の処理方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の廃棄物への二酸化炭素の固定化システムを用いた廃棄物の処理方法であって、
廃棄物を処分場に埋め立てた後に、処分場において前記廃棄物への二酸化炭素の固定化処理を行うことを特徴とする廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムを含む廃棄物への二酸化炭素の固定化システム及びカルシウムを含む廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低炭素社会の実現に寄与する技術の一つとして、焼却灰などのアルカリ性の廃棄物をカルシウム源として用いた二酸化炭素固定が着目されている。特許文献1には、飽和溶解量以上の二酸化炭素を含む溶液を廃棄物に散水して浸透させ、廃棄物中に含まれるカルシウム成分を二酸化炭素と接触させることにより、Ca2+とCO 2-からCaCOを生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7108528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発明者は、廃棄物中でCaCOを生成すると、CaCOにより廃棄物の粒子が被覆され、粒子の内側からのCa2+の溶出が抑制されて、二酸化炭素固定反応が妨害されるということを見出した。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、廃棄物からのCa2+の溶出が抑制されず、二酸化炭素とカルシウムとを効率よく反応させることができる廃棄物への二酸化炭素の固定化システム及び廃棄物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための第1の発明は、カルシウムを含む廃棄物への二酸化炭素の固定システムであって、廃棄物に二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体を供給するとともに、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体を供給することが可能であることを特徴とする廃棄物への二酸化炭素の固定化システムである。
【0007】
第1の発明では、カルシウムを含む廃棄物に二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体を供給することによって廃棄物の粒子表面で生成されたCaCOの被覆を、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体を供給することによって廃棄物の粒子表面から剥離させることができる。その結果、廃棄物の粒子からのCa2+の溶出が被覆により抑制されることがなくなり、CaCOが継続して生成される。
【0008】
前記ファインバブルは、例えば、二酸化炭素25vol%以下のガスで形成される。
これにより、ファインバブルを工場からの排気ガス等で形成して、ファインバブルを含む液体を製造できる。
【0009】
前記ファインバブルは空気で形成されてもよい。
これにより、ファインバブルを含む液体を容易に製造できる。また、固定化システムにおいて、ファインバブルを含む液体を循環利用できる。
【0010】
前記二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体の供給と、前記ファインバブルを含む液体の供給とは、例えば、同時に行うことが可能である。
これにより、廃棄物の粒子表面に生成された被覆を継続的に剥離できる。
【0011】
前記二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体の供給と、前記ファインバブルを含む液体の供給とは、交互に行うことが可能であってもよい。
このとき、廃棄物からの排液や排気をモニタリングすれば、ファインバブルを含む溶液を供給するタイミングを適切に決定できる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の廃棄物への二酸化炭素の固定化システムを用いた廃棄物の処理方法であって、廃棄物への二酸化炭素の固定化処理を行った後に、前記廃棄物を処分場に埋め立てることを特徴とする廃棄物の処理方法である。
【0013】
第2の発明では、処分場への埋め立て前に廃棄物への二酸化炭素の固定化処理を行うことで、カルシウム及びアルカリ成分の溶出に起因する処分場の集水管の目詰まり等の発生を防止できる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明の廃棄物への二酸化炭素の固定化システムを用いた廃棄物の処理方法であって、廃棄物を処分場に埋め立てた後に、処分場において前記廃棄物への二酸化炭素の固定化処理を行うことを特徴とする廃棄物の処理方法である。
【0015】
第3の発明では、処分場への埋め立て後に廃棄物への二酸化炭素の固定化処理を行うことで、廃棄物中のアルカリ成分を効率よく中和して処分場を早期に安定化できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、廃棄物からのCa2+の溶出が抑制されず、二酸化炭素とカルシウムとを効率よく反応させることができる廃棄物への二酸化炭素の固定化システム及び廃棄物の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】廃棄物への二酸化炭素の固定化システム1の装置の例を示す図。
図2】廃棄物の浸漬実験の結果を示す図。
図3】固定化システム1による廃棄物への二酸化炭素の固定効果の予想を示す図。
図4】(a)は固定化システム1aの装置の例を示す図、(b)は固定化システム1bの装置の例を示す図。
図5】固定化システム1cの装置の例を示す図。
図6】廃棄物13の処分場23を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
以下、図面に基づいて本発明の第1の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る固定化システム1の装置の例を示す図である。固定化システム1は、カルシウムを含む廃棄物13に二酸化炭素を固定化するために用いられる。
【0019】
図1に示すように、固定化システム1は、廃棄物収容部3、二酸化炭素含有液供給管5、ファインバブル液供給管7、排液管9等を有する。廃棄物収容部3は、内部の上下に2枚の仕切部11が配置され、2枚の仕切部11の間に廃棄物13が収容される。廃棄物13は、例えば、一般ごみ焼却場から採取した焼却灰である。
【0020】
二酸化炭素含有液供給管5は、廃棄物収容部3内の上側の仕切部11aの上方の空間に連通する。二酸化炭素含有液供給管5は、廃棄物13に二酸化炭素含有液を供給する。二酸化炭素含有液は二酸化炭素を含む液体であり、例えば、二酸化炭素溶解水や、二酸化炭素が気泡として分散している水である。
【0021】
ファインバブル液供給管7は、廃棄物収容部3内の上側の仕切部11aの上方の空間に連通する。ファインバブル液供給管7は、廃棄物13にファインバブル液を供給する。ファインバブル液は、例えば、二酸化炭素25vol%以下のガスで形成されるファインバブルを含む液体である。ファインバブルは直径100μm未満の気泡である。ファインバブルを形成する二酸化炭素25vol%以下のガスとしては、例えば、工場からの排気ガス等が用くいられる。すなわち、ファインバブルとしては、純粋な二酸化炭素ガスを用いて形成する必要はない。
【0022】
排液管9は、廃棄物収容部3内の下側の仕切部11bの下方の空間に連通する。排液管9は、廃棄物13中を流下してきた液体を排出する。排液管9から排出された排液は、pHモニタリングが実施される。
【0023】
固定化システム1では、二酸化炭素含有液供給管5からの二酸化炭素含有液の供給と、ファインバブル液供給管7からのファインバブル液の供給とを交互に行う。二酸化炭素含有液の供給とファインバブル液の供給との切り替えのタイミングは、例えば、排液管9からの排液のpHの値に基づいて決定される。
【0024】
ここで、ファインバブルによる廃棄物の粒子からのCaCOの剥離効果について述べる。ファインバブルによるCaCOの剥離効果の実験では、カルシウムを含む廃棄物として一般ごみ焼却場から採取した焼却灰を用い、廃棄物を充填したカラムに二酸化炭素ガスを溶解した水を通水してCaCOを生成させ、pHが8.5まで低下したら通水を終了した。そして、CaCOで被覆された廃棄物をpHが6の純水、pHが6の空気によるファインバブル水に1時間浸漬して、pHの上昇を比較した。なお、使用したファインバブル水は市販装置を用いて製造したものであり、分析により平均粒径77nmの空気のファインバブルが約3.9億個/mL含まれることが確認された。
【0025】
図2は、廃棄物の浸漬実験の結果を示す図である。図2において、実線は純水に浸漬した場合の、破線はファインバブル水に浸漬した場合の、浸漬時間とpHとの関係を示す。図2に示すように、pHが9.5まで上昇するのに要した浸漬時間は、純水の場合が1時間であるのに対し、ファインバブル水の場合は10分であった。これは、純水に浸漬した場合はCaCOで被覆された廃棄物からのアルカリ成分の溶出が抑制されるのに対し、ファインバブル水に浸漬した場合はファインバブルによって廃棄物粒子の表面からCaCO被覆が剥離除去されてアルカリ成分の溶出が早期に再開されたためである。
【0026】
図3は、固定化システム1による廃棄物への二酸化炭素の固定効果を示す概念図である。図3は、カルシウムを含む廃棄物である焼却灰に二酸化炭素含有液のみを供給した場合と、固定化システム1によって二酸化炭素含有液とファインバブル液とを交互に供給した場合について、経過時間と廃棄物からの排液のpHとの関係の予測を示す。
【0027】
図3において、実線は、二酸化炭素含有液の供給のみを連続して実施した場合を示し、破線は、二酸化炭素含有液の供給とファインバブル液の供給とを交互に実施した場合を示し、図中のFBは、二酸化炭素含有液の供給を停止してファインバブル液を供給した時間帯を示す。
【0028】
廃棄物はpH12以上であるため、二酸化炭素含有液の供給開始直後の廃棄物からの排液のpHは12以上を示す。その後、二酸化炭素含有液の供給のみを実施する場合は、実線に示すように時間の経過とともにpHが少しずつ低下する。これは、二酸化炭素で中和されてアルカリ成分量が減少すると同時に、二酸化炭素の供給によって生成したCaCOで廃棄物の粒子が覆われ、粒子からアルカリ成分が溶出しにくくなるためである。
【0029】
二酸化炭素含有液の供給とファインバブル液の供給を交互に実施する場合は、破線に示すように、二酸化炭素含有液の供給中には時間の経過とともにpHが低下し、ファインバブル液の供給中には時間の経過とともにpHが上昇する。これは、二酸化炭素含有液の供給中は廃棄物の粒子がCaCOで被覆されてアルカリ成分が溶出しにくくなり、ファインバブル液の供給中は廃棄物の粒子からCaCOが剥離されてアルカリ成分が再溶出しやすくなるためである。
【0030】
二酸化炭素含有液からファインバブル液への供給の切り替えのタイミングは、例えば、廃棄物からの排液のpHが所定の値を下回った時とする。また、ファインバブル液から二酸化炭素含有液への切り替えのタイミングは、例えば、廃棄物からの排液のpHが所定の値を上回った時とする。ファインバブル液の供給を停止して二酸化炭素含有液の供給を再開すると、CaCO被覆が剥離除去されてアルカリ成分の溶出が再開されているため、二酸化炭素固定反応が効率良く進行する。
【0031】
廃棄物中で生成されたCaCOの再溶解を避けるため、二酸化炭素含有液の供給は、例えばpHが8.5程度まで低下した時点で停止される。二酸化炭素含有液の供給のみを実施する場合、時間t1で二酸化炭素含有液の供給を停止すると、実線に示すように廃棄物中の二酸化炭素が消費されるまではpHが適切な範囲に維持されるが、その後はアルカリ成分の溶出によりpHが上昇に転じる。一方、二酸化炭素含有液の供給とファインバブル液の供給を交互に行う場合、時間t2で二酸化炭素含有液(及びファインバブル液)の供給を停止すると、破線に示すように廃棄物中の二酸化炭素が消費された後もpHは上昇に転じずに適切な範囲に維持される。
【0032】
図3に示すように、固定化システム1を用いれば、二酸化炭素含有液とファインバブル液の供給によって、廃棄物からのCa2+の溶出とCaCOの生成が継続される。そのため、二酸化炭素含有液のみを供給する場合と比較して、廃棄物に含まれるアルカリ成分を二酸化炭素により効率よく中和できる。
【0033】
このように、第1の実施形態の固定化システム1では、カルシウムを含む廃棄物13に、二酸化炭素を含む液体と二酸化炭素25vol%以下のガスで形成されるファインバブルを含む液体とを交互に供給する。これにより、二酸化炭素の供給と廃棄物13からのCa2+の溶出によって廃棄物13の粒子表面で生成されたCaCOの被覆を、ファインバブルの供給によって粒子表面から剥離させることができる。その結果、廃棄物13の粒子からのCa2+の溶出が被覆により抑制されることがなくなってCaCOが継続して生成される。
【0034】
言い換えれば、固定化システム1では、二酸化炭素を含む液体を供給した際に、より効率よく二酸化炭素をカルシウムと反応させて固定化することができる。一方、従来の方法では、時間の経過とともに、二酸化炭素とカルシウムの反応量が低下するため、時間とともに、固定化されずに流出する二酸化炭素の量が増加していく。このため、二酸化炭素の固定化量が減少するとともに、二酸化炭素を固定化するための時間が増加する。
【0035】
また、固定化システム1では、二酸化炭素25vol%以下のガスで形成されるファインバブルを、工場からの排気ガス等を利用して製造できる。また、固定化システム1では、二酸化炭素含有液の供給とファインバブル液の供給とを交互に行うにあたり、排液のpHをモニタリングすることでファインバブル液を供給するタイミングを適切に決定できる。
【0036】
なお、カルシウムを含む廃棄物13は焼却灰に限らず、火力発電所からの焼却灰、鉄鋼スラグ、廃コンクリート等の場合もある。また、二酸化炭素含有液の供給とファインバブル液の供給との切り替えのタイミングは、排液のpHでなく、供給時間や排液の二酸化炭素含有量等で管理してもよい。
【0037】
また、固定化システム1では、ファインバブル自体はカルシウムとの反応に寄与する必要が無く、CaCO膜の破壊ができればよい。このため、純粋な二酸化炭素ガスを用いてファインバブルを形成する必要が無く、ファインバブル液に含有されるファインバブルは、二酸化炭素25vol%以下の低濃度の二酸化炭素ガスを使用することができる。また、ファインバブルには二酸化炭素ガスがほとんど含まれていなくてもよく、例えば、窒素で形成されてもよいし、より入手が容易な空気で形成されてもよい。空気や窒素で形成されたファインバブルを用いれば、ファインバブル液を循環利用することもできる。また、周囲の空気を用いれば、ファインバブル生成装置にガスボンベ等のガス供給部を接続する必要が無く、システムを極めて簡易に構成することができる。
【0038】
なお、固定化システム1は上記した構成に限らず、廃棄物13への二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体の供給と、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体の供給とを交互に行うことができればよい。図4は、他の固定化システム1a、1bの装置の例を示す図である。
【0039】
図4(a)に示す固定化システム1aでは、仕切部11bの下方の空間に連通する二酸化炭素ガス供給管5aから、廃棄物13に二酸化炭素ガスを供給する。また、廃棄物13中を上昇してきたガスを、仕切部11aの上方の空間に連通する排気管15から排出する。排気管15から排出された排ガスは、二酸化炭素濃度のモニタリングが実施される。
【0040】
図4(b)に示す固定化システム1bでは、仕切部11bの下方の空間に連通するファインバブル液供給管7aから、廃棄物13にファインバブル液を供給する。また、廃棄物13中を上昇してきた液体を、仕切部11aの上方の空間に連通する排液管9aから排出する。また、固定化システム1aと同様に、二酸化炭素ガス供給管5aから廃棄物13に二酸化炭素ガスを供給し、廃棄物13中を上昇してきたガスを排気管15から排出する。
【0041】
固定化システム1a、1bでは、カルシウムを含む廃棄物13に、二酸化炭素ガスと、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体とを交互に供給する。これにより、固定化システム1と同様に、二酸化炭素の供給と廃棄物13からのCa2+の溶出によって廃棄物13の粒子表面で生成されたCaCOの被覆を、ファインバブルの供給によって粒子表面から剥離させることができる。なお、二酸化炭素とカルシウムとの反応を効率よく進行させるためには、カルシウムを含む粒子の表面が濡れていることが望ましいが、ファインバブル液を供給して粒子表面を濡らしておけば、二酸化炭素ガスであっても反応を促進させることができる。このように、反応源となる二酸化炭素は、液体で供給されてもよく気体で供給されてもよい。
【0042】
固定化システム1a、1bでは、二酸化炭素ガスの供給とファインバブル液の供給とを交互に行うにあたり、排液のpHや排ガスの二酸化炭素濃度をモニタリングすることでファインバブル液を供給するタイミングを適切に決定できる。排ガスの二酸化炭素濃度をモニタリングすると、Ca2+との反応により二酸化炭素が固定されている間は排ガス中の二酸化炭素濃度が低いが、CaCOの被覆によりCa2+の溶出が抑制されると二酸化炭素が固定されなくなり排ガス中の二酸化炭素濃度が上昇する。そのため、二酸化炭素ガスの供給からファインバブル液の供給への切り替えは、排ガス中の二酸化炭素濃度が所定の値を上回った時とするのが有効である。
【0043】
以下、本発明の別の例について、第2から第4の実施形態として説明する。第2から第4の実施形態は第1の実施形態と異なる点について説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。また、第1から第4の実施形態で説明する構成は必要に応じて組み合わせることができる。
【0044】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る固定化システム1cを示す図である。
図5に示すように、固定化システム1cは、廃棄物収容部3、二酸化炭素及びファインバブル液供給管19、排液管21等を有する。
【0045】
二酸化炭素及びファインバブル液供給管19は、廃棄物収容部3内の上側の仕切部11aの上方の空間に連通する。二酸化炭素及びファインバブル液供給管19は、廃棄物13に、二酸化炭素と、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルとを含む液体を供給する。二酸化炭素は、液体に溶解していてもよいし、気泡として分散していてもよい。ファインバブルは、二酸化炭素25vol%以下のガスで形成してもよいし、空気等で形成してもよい。
【0046】
排液管21は、廃棄物収容部3内の下側の仕切部11bの下方の空間に連通する。排液管21は、廃棄物13中を流下してきた液体を排出する。排液管9から排出された液体は、pHモニタリングが実施される。
【0047】
固定化システム1cでは、同一の二酸化炭素及びファインバブル液供給管19から、二酸化炭素の供給と、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体の供給とを同時に行う。
【0048】
このように、第2の実施形態の固定化システム1cでは、カルシウムを含む廃棄物13に、二酸化炭素と、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブル含む液体とを同時に供給する。これにより、第1の実施形態の固定化システム1と同様に、二酸化炭素の供給と廃棄物13からのCa2+の溶出によって廃棄物13の粒子表面で生成されたCaCOの被覆を、ファインバブルの供給によって粒子表面から継続的に剥離させることができる。
【0049】
[第3の実施形態]
図6は、廃棄物13の処分場23を示す図である。第3の実施形態では、廃棄物13を仮置き場25に搬入する前や、廃棄物13を仮置き場25に仮置した状態で、固定化システムを用いて廃棄物13への二酸化炭素の固定化処理を行う。固定化システムは、廃棄物13に二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体を供給するとともに、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体を供給することが可能である。廃棄物13は、二酸化炭素の固定化処理を行った後、処分場23に埋め立てられる。
【0050】
廃棄物13を仮置き場25に搬入する前に二酸化炭素の固定化処理を行う場合は、例えば、図1、4、5に示した固定化システムを模した装置を用いる。廃棄物13を仮置き場25に仮置きした状態で二酸化炭素の固定化処理を行う場合は、例えば、廃棄物13に対して、二酸化炭素を含む液体と、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体とを直接散水して供給する。また、二酸化炭素を含む液体の代わりに二酸化炭素ガスを供給してもよい。二酸化炭素とファインバブルの供給のタイミングは、同時でもよいし交互でもよい。
【0051】
第3の実施形態では、処分場23への埋め立て前に廃棄物13への二酸化炭素の固定化処理を行うことで、カルシウム及びアルカリ成分の溶出に起因する処分場23の集水管の目詰まり等の発生を防止できる。
【0052】
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、廃棄物13を処分場23に埋め立てた後に、処分場23において、廃棄物13に二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体を供給するとともに、少なくとも純二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体を供給することが可能である固定化システムを用いて、廃棄物13への二酸化炭素の固定化処理を行う。
【0053】
処分場23において廃棄物13への二酸化炭素の固定化処理を行う場合、例えば、処分場23を図1、4、5の固定化システムを模した構成とする。すなわち、処分場23に、二酸化炭素ガス又は二酸化炭素を含む液体の供給管、少なくとも二酸化炭素ガスを除くガスによるファインバブルを含む液体の供給管、排ガスや排液を排出するための排出管等を適宜設ける。二酸化炭素とファインバブルの供給のタイミングは、同時でもよいし交互でもよい。
【0054】
第4の実施形態では、埋め立てが完了している廃棄物13への二酸化炭素の固定化処理を行うことで、処分場23を早期に安定化できる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、固定化システム1では、二酸化炭素含有液供給管5からの供給とファインバブル液供給管7からの供給を同時に行ってもよい。固定化システム1a、1bでは、二酸化炭素ガス供給管5aからの供給とファインバブル液供給管7、7aからの供給を同時に行ってもよい。また、固定化システムでは、廃棄物のスラリーを機械的に攪拌しつつ二酸化炭素やファインバブルを供給してもよい。また、生成されたCaCOは定期的に、又は処理終了後に回収してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、1a、1b、1c………固定化システム
3………廃棄物収容部
5、5a………二酸化炭素含有液供給管
7、7a………ファインバブル液供給管
9、9a、21………排液管
11、11a、11b………仕切板
13………廃棄物
15………排気管
19………二酸化炭素及びファインバブル液供給管
23………処分場
25………仮置き場
図1
図2
図3
図4
図5
図6