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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164973
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】検査治具および検査方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/02 20060101AFI20241121BHJP
   G01B 3/14 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F22B37/02 D
G01B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080736
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂口 貴士
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 敬之
(72)【発明者】
【氏名】小寺 壮平
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】板倉 利繁
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA24
2F061AA41
2F061DD22
2F061GG01
2F061NN01
(57)【要約】
【課題】本開示は、板状部材で固定された伝熱管における膨出の有無を伝熱管の外周面の直径を180°の範囲で計測せずに、簡便に判定する検査治具および検査方法の提供を目的とする。
【解決手段】本開示に係る検査治具10は、複数の伝熱管2が並列し、隣り合う伝熱管2同士が板状部材3で接合された部材の伝熱管2を検査対象とし、検査対象における膨出の有無を判定するための検査治具10であって、本体部11と、本体部11の内方に向けて凹む凹曲部12を有し、凹曲部12は、未膨出の伝熱管2の外周面に当接させた際に、伝熱管2の頂部と、凹曲部12の底部との間に所定の隙間Gが確保される形状である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管が並列し、隣り合う前記伝熱管同士が板状部材で接合された部材の前記伝熱管を検査対象とし、該検査対象における膨出の有無を判定するための検査治具であって、
本体部と、前記本体部の内方に向けて凹む凹曲部を有し、
前記凹曲部は、未膨出の前記伝熱管の外周面に当接させた際に、前記伝熱管の頂部と、前記凹曲部の底部との間に所定の隙間が確保される形状である検査治具。
【請求項2】
前記凹曲部は、曲率半径Rの円弧面からなり、
前記凹曲部の曲率は、前記伝熱管の未膨出の状態の外周面の曲率よりも大きい請求項1に記載の検査治具。
【請求項3】
前記凹曲部の深さは、前記伝熱管の未膨出の状態の外周面の半径よりも小さい請求項2に記載の検査治具。
【請求項4】
複数の伝熱管が並列し、隣り合う前記伝熱管同士が板状部材で接合された部材の前記伝熱管を検査対象とし、
請求項1~3のいずれかに記載の検査治具を前記伝熱管に当接させ、
当接させた状態において、前記伝熱管の頂部と、前記凹曲部の底部との間の隙間の存在有無または前記隙間の大きさに基づいて、膨出の有無を判定する検査方法。
【請求項5】
当接させた状態において、前記伝熱管の頂部と、前記凹曲部の底部との間に存在する前記隙間に隙間ゲージを差込み、前記隙間の大きさを計測し、差込みの可否または計測値に基づいて前記膨出の有無を判定する請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
未膨出の検査対象の伝熱管に対して前記隙間の異なる複数の前記検査治具を用意し、
前記隙間の大きな前記検査治具から順に使用して、前記膨出の有無を段階的に判定する請求項4に記載の検査方法。
【請求項7】
膨出ありと判定された伝熱管について、組織観察を実施する請求項4に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査治具および検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等で使用される伝熱管は、高温高圧下に長時間曝される。この種の配管は、クリープ損傷によって徐々に膨張(膨出)する。クリープ損傷が進行するとクリープ破壊が生じ、破断に至る。そのため、クリープ損傷の進行の程度を把握することは重要である。
【0003】
クリープ損傷の進行の程度は、配管の膨張率に基づいて把握できる。膨張率は、配管の外周180°の範囲をノギスにより測定して得られた測定値から導き出される(特許文献1参照)。
【0004】
膨張(変形)していない形状が真円に近い配管について、クリープ損傷の進行の程度を評価する場合、最も膨張している方向で配管の膨出部分の外径を測定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-148477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボイラでは、複数の伝熱管が狭い間隔で並列に設置されている。このため、伝熱管の外径を複数の測定方向にて測定しようとしても、ノギスを伝熱管の周方向に回すことができない場合がある。
【0007】
特許文献1では、測定対象に接する面を湾曲させたノギス状の測定装置を用いることで、狭い間隔で並列された伝熱管の外径を測定している。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の測定装置では、ボイラの火炉壁の伝熱管に対応できない。ボイラの火炉壁は複数の伝熱管を備え、伝熱管と伝熱管との間は炉内の燃焼ガスが漏れないように板状部材(フィン)で塞がれている。伝熱管と板状部材は溶接接合されているため、ノギス状の測定装置では伝熱管の180°の範囲を正確に計測できない。
【0009】
また、伝熱管の数は多数にのぼり、検査には時間を要する。外径が大きくなっている膨出部分の存在を短時間で確認するスクリーニングと称される作業を行うことが望ましい。
【0010】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、板状部材で固定された伝熱管における膨出の有無を伝熱管の外周面の直径を180°の範囲で計測せずに、簡便に判定する検査治具および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本開示の検査治具および検査方法は以下の手段を採用する。
【0012】
本開示は、複数の伝熱管が並列し、隣り合う前記伝熱管同士が板状部材で接合された部材の前記伝熱管を検査対象とし、該検査対象における膨出の有無を判定するための検査治具であって、本体部と、前記本体部の内方に向けて凹む凹曲部を有し、前記凹曲部は、未膨出の前記伝熱管の外周面に当接させた際に、前記伝熱管の頂部と、前記凹曲部の底部との間に所定の隙間が確保される形状である検査治具を提供する。
【0013】
本開示は、複数の伝熱管が並列し、隣り合う前記伝熱管同士が板状部材で接合された部材の前記伝熱管を検査対象とし、上記開示に記載の検査治具を前記伝熱管に当接させ、当接させた状態において、前記伝熱管の頂部と、前記凹曲部の底部との間の隙間の存在有無または前記隙間の大きさに基づいて、膨出の有無を判定する検査方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
上記開示によれば、伝熱管の外周面の直径を180°の範囲で計測せずに、損傷の可能性のある伝熱管を簡便にスクリーニングできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態における検査対象の模式図である。
図2】本開示の一実施形態にかかる検査治具様の平面図である。
図3】検査治具の凹曲部の寸法例を示す図である。
図4】未膨出の伝熱管に検査治具を当接させた模式図である。
図5】膨出した伝熱管に検査治具を当接させた模式図である。
図6】検査治具の使用方法を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0017】
(検査対象)
図1に、本実施形態における検査対象の模式図を示す。検査対象1は、複数の伝熱管2と、隣り合う伝熱管2の隙間を塞ぐよう配置された板状部材3とを備えた部材である。より具体例には、この検査対象1の伝熱管2の外形状を検査する。伝熱管2は、軸を挟んだ両側で板状部材3に固定されている。
【0018】
検査対象1の部材は、例えば、ボイラの火炉に配設される火炉壁である。ボイラの火炉は、水平断面が略長方形状であり、火炉の外周面を形成する火炉壁は内部を缶水や蒸気が流れるチューブ(伝熱管2)と伝熱管同士を接合するフィン(板状部材3)で構成されている。このようなボイラにおいて、長時間使用による材料の劣化や急激な温度上昇が発生した場合など、火炉壁に何らかの要因で変形を生じうる。フィンが接合されている部分は、拘束されているため変形しにくい。伝熱管の炉内に向く側の頂部は、特に変形しやすい。「頂部」とは、フィンで固定された2か所を結んだ面を基準面とし、該基準面から最も突き出た部分である。
【0019】
(検査治具)
本実施形態に係る検査治具は、本体部と、本体部の内方に向けて凹む凹曲部を有する。検査治具は、検査対象である伝熱管の外周面に凹曲部を当接させて使用される。凹曲部は、未膨出の伝熱管に当接させた際に、両端部が伝熱管に当接するが、凹曲部の底部と伝熱管の頂部との間には所定の隙間が確保される形状である。凹曲部は、両端が板状部材および検査対象の伝熱管の隣に並ぶ伝熱管に接触しない形状である。「未膨出の伝熱管」は、検査対象の伝熱管と同径の未使用の配管と理解してもよい。
【0020】
検査治具の素材は、純炭素鋼である。検査治具は、焼き入れして制作される。焼き入れされることで硬くなるため、耐摩耗性が向上する。
【0021】
図2に、検査治具の一態様の平面図を示す。検査治具(膨出ゲージ)10は、平板状の本体部11と、本体部の一辺を切り欠くようにして形成された凹曲部12とを有する。凹曲部12は、本体部11の内方に向けて凹んでいる。本体部11は、ワイヤーまたは紐などを通す治具落下防止(紛失防止)用の孔部13を備えていてもよい。
【0022】
本体部11は、検査治具10を使用する際に把持される把持部としての役割を有する。本体部11は、一辺に凹曲部12を設けることができ、かつ、凹曲部12を伝熱管2に当接させた際に隣の伝熱管2に接触しない大きさおよび形状である。本体部11の厚さは、2.3mm以上4.0mm以下である。本体部11が薄すぎると変形しやすく、厚すぎると重くなり操作性が低下する。
【0023】
凹曲部12は、曲率半径Rの円弧面からなる。曲率半径Rは、未膨出の伝熱管2の外周面の半径Riよりも小さい。凹曲部12の曲率は、未膨出の状態の伝熱管2の外周面の曲率よりも大きい。円弧面は、本体部11の上下面に対して垂直に配置されている。
【0024】
凹曲部12の一端から他端までの開口距離Wは、未膨出の伝熱管2の外周面の直径2Riよりも短い。開口距離Wは、√2Ri以上√3Ri以下であることが好ましい。
【0025】
凹曲部12の開口から底部までの距離(凹曲部深さ)Bは、未膨出の伝熱管2の外周面の半径Riよりも短い。凹曲部深さBは、R(凹曲部12の曲率半径)からA(曲率中心から凹曲部12の開口までの距離)を引いた値である。
【0026】
「底部」は、凹曲部で最も深く凹んだ部分である。「底部」は、凹曲部12の開口の幅方向の中心線(凹曲部中心線)上に位置する。凹曲部12は、凹曲部中心線に対して左右対称の形状である。
【0027】
凹曲部12の曲率半径Rおよび凹曲部深さBは、凹曲部12の底部と未膨出の伝熱管2の頂部との間の距離(隙間)が所定値になるよう適宜設定される。該隙間は、0.2mm以上1mm以下である。隙間を上記数値範囲とすることで組織観察による余寿命評価結果と組み合わせて、取替基準値を選定することができる。
【0028】
図3に、未膨出時の外径φ45mmの伝熱管2を検査対象とする検査治具の凹曲部12の寸法例を示す。Rは凹曲部12の曲率半径、Aは曲率中心から凹曲部12の開口までの距離、Bは凹曲部深さである。
【0029】
No.1~4に示す通り、曲率半径Rを大きくすると、隙間は小さくなる。曲率中心から凹曲部12の開口までの距離Aを大きくすると、隙間は小さくなる。凹曲部深さBを小さくすると、隙間は小さくなる。曲率半径Rおよび凹曲部深さBを調整することで、所望の大きさの隙間が形成されるような凹曲部12を備えた検査治具10を得られる。
【0030】
(検査方法)
本実施形態に係る検査方法では、検査対象である伝熱管の外周面に、上記検査治具の凹曲部を当接し、伝熱管と凹曲部との隙間の存在有無または隙間の大きさに基づいて、膨出の有無を判定する。
【0031】
使用する検査治具は、検査対象の伝熱管の未膨出時の外径(初期外径)の情報に基づき選定する。初期外径の伝熱管に凹曲部を当接した際に、伝熱管の頂部と凹曲部の底部との隙間がJISの外径の許容差以上となる検査治具を用いるとよい。
【0032】
検査治具の凹曲部を検査対象の伝熱管の外周面に当接させる。ここで、検査治具の本体部11の上下面は伝熱管の軸方向に対し垂直に配置され、本体の厚さ方向は伝熱管の軸方向に一致するよう配置される。
【0033】
検査治具を当接させた状態で、伝熱管の頂部と、検査治具の凹曲部の底部との間に隙間があるか否か確認する。隙間がない場合、膨出ありと判定する。隙間がある場合、隙間ゲージを用いて隙間距離を計測する。
【0034】
上記検査治具は、未膨出の伝熱管に凹曲部を当接させた際に、伝熱管の頂部と凹曲部の底部との間に所定の隙間(初期隙間)が生じるよう設計されている。隙間ゲージは例えば薄板状であり、複数の異なる厚さの隙間ゲージを用いてもよい。隙間ゲージを伝熱管の頂部と凹曲部の底部の隙間に差込みの可否により膨出の有無を判断してもよい。また、隙間ゲージを差込むことで隙間を計測し、計測値が初期隙間よりも小さい場合、膨出ありと判定してもよい。隙間ゲージの計測値が小さいほど、伝熱管が大きく膨出していることを意味する。よって、隙間がない場合と比較すると、膨出度合いは小さいと判定できる。
【0035】
隙間ゲージによる計測値が初期隙間と同等である場合、膨出なしと判定する。
【0036】
図4は、未膨出の伝熱管に検査治具を当接させた模式図である。伝熱管2が膨張(変形)していない箇所に検査治具10を当てた場合、凹曲部12の底部と伝熱管2の頂部との間に隙間Gの存在が確認される。
【0037】
図5は、膨張した伝熱管に検査治具を当接させた模式図である。伝熱管が膨張(変形)している箇所に検査治具10を当てた場合、凹曲部の底部と伝熱管2’の頂部との間の隙間G’はなくなるか、初期隙間(隙間G)よりも小さくなる。
【0038】
火炉壁では、伝熱管2がフィン3で固定されている。フィン3で拘束されている伝熱管2では、フィン接合部付近において変形(膨張)しにくく、フィン接合部から離れた箇所で変形しやすい。また、伝熱管2の炉内を向く側の凹曲部中心を挟んで曲率中心角±45°の範囲、特に頂部は、最も高温になるため、変形しやすい。よって、フィン3で拘束された火炉壁の伝熱管2では、炉内側の伝熱管の頂部近傍の膨出を確認することで、伝熱管2の真円の外径を測定しなくても、クリープ損傷の可能性が高い伝熱管をスクリーニングできる。
【0039】
膨出ありと判定された伝熱管2’は、組織観察による検査を合わせて行うとよい。膨出が大きそうな箇所を選んで組織観察してもよい。組織観察にはレプリカ法を用いることができる。レプリカ法は、所定の処理を施して現出させた測定対象箇所の表面の金属組織に対応する凹凸をフィルムに転写し、この転写した凹凸を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などを用いて組織観察する方法である。例えば観察されたクリープボイドを所定の面積当たりのボイドの個数として測定することで、伝熱管の損傷範囲を特定し、伝熱管の余寿命を評価できる。
【0040】
なお、初期隙間の大きさが異なる複数の検査治具(例えば、初期隙間1mm、0.5mmなど)を用いて、段階的に膨出の有無を判定してもよい。その場合、初期隙間が大きい検査治具から順に使用する。これにより、隙間ゲージを用いなくても膨出の有無を判定し、膨出の程度も把握できる。
【0041】
なお、検査治具10は、伝熱管の複数箇所に断続的に当ててもよいし、図6に示すように当接させながら、伝熱管2の長手方向Lにスライドさせてもよい。
【0042】
〈付記〉
以上説明した実施形態に記載の検査治具および検査方法は、例えば以下のように把握される。
【0043】
本開示の第1の態様に係る検査治具(10)は、複数の伝熱管(2)が並列し、隣り合う前記伝熱管同士が板状部材(3)で接合された部材の前記伝熱管を検査対象(1)とし、該検査対象における膨出の有無を判定するための検査治具であって、本体部(11)と、前記本体部の内方に向けて凹む凹曲部(12)を有し、前記凹曲部は、未膨出の前記伝熱管の外周面に当接させた際に、前記伝熱管の頂部と、前記凹曲部の底部との間に所定の隙間(G)が確保される形状である。
【0044】
上記検査対象における伝熱管は、板状部材により固定されている。このような伝熱管では、固定箇所から最も離れた伝熱管の頂部が最も膨出しやすい箇所となる。伝熱管が未膨出の状態で当接した際に、膨出しやすい箇所に予め所定の隙間を設けておくことで、隙間の大きさの変化に基づいて膨出の有無を判定できる。膨出している場合、隙間が小さくなる方向に変化する。減肉している場合、隙間は大きくなる方向に変化する。伝熱管の形状が変わらない場合、隙間の大きさも変化しない。隙間の大きさの変化を観察することにより、伝熱管の頂部の物理的な変化量を簡便に確認できる。
【0045】
上記態様によれば、伝熱管の頂部に着目しているため、伝熱管の外周面の直径を180°の範囲で計測せずに、損傷の可能性のある伝熱管をスクリーニングできる。
【0046】
本開示の第2の態様に係る検査治具は、前記第1の態様において、前記凹曲部は、曲率半径Rの円弧面からなり、前記凹曲部の曲率は、前記伝熱管の未膨出の状態の外周面の曲率よりも大きい。
【0047】
凹曲部の円弧面は左右対称であり、凹曲部の底部は円弧面の中央に位置する。凹曲部の曲率が伝熱管の未膨出の状態の外周面の曲率よりも大きい。そのような検査治具を未膨出の状態の伝熱管に当接すると、伝熱管の頂部と、凹曲部の底部との間に隙間が生じる。
【0048】
本開示の第3の態様に係る検査治具は、前記第2の態様において、前記凹曲部の深さ(B)は、前記伝熱管の未膨出の状態の外周面の半径(Ri)よりも小さい。
【0049】
上記態様によれば、検査治具は、伝熱管の外周面の半径を覆わないため、板状部材に接触しない形状になり得る。
【0050】
本開示の第4の態様に係る検査方法は、複数の伝熱管が並列し、隣り合う前記伝熱管同士が板状部材で接合された部材の前記伝熱管を検査対象とし、前記第1~3の態様のいずれかに記載の検査治具を前記伝熱管に当接させ、当接させた状態において、前記伝熱管の頂部と、前記凹曲部の底部との間の隙間の存在有無または前記隙間の大きさに基づいて、膨出の有無を判定する。
【0051】
上記態様によれば、第1の態様と同様、伝熱管の頂部に着目しているため、伝熱管の外周面の直径を180°の範囲で計測せずに、損傷の可能性のある伝熱管を簡便にスクリーニングできる。
【0052】
本開示の第5の態様に係る検査方法は、前記第4の態様において、当接させた状態において、前記伝熱管の頂部と、前記凹曲部の底部との間に存在する前記隙間に隙間ゲージ(不図示)を差込み、前記隙間の大きさを計測し、差込みの可否または計測値に基づいて前記膨出の有無を判定する。
【0053】
上記態様によれば、隙間ゲージを用いて隙間の大きさを計測することで、膨出の程度をより詳細に確認できる。
【0054】
本開示の第6の態様に係る検査方法は、前記第4の態様において、未膨出の検査対象の伝熱管に対して前記隙間の異なる複数の前記検査治具を用意し、前記隙間の大きな前記検査治具から順に使用して、前記膨出の有無を段階的に判定する。
【0055】
上記態様によれば、隙間ゲージを用いずに、膨出の程度をより詳細に確認できる。
【0056】
本開示の第7の態様に係る検査方法は、前記第4~6のいずれかの態様において、膨出ありと判定された伝熱管について、組織観察を実施する。
【0057】
膨出の有無に加え、組織観察を合わせて実施することで、損傷位置を確認できるとともに、伝熱管の余寿命も評価できる。
【符号の説明】
【0058】
1 検査対象
2 伝熱管(未膨出の伝熱管)
3 板状部材(フィン)
10 検査治具
11 本体部
12 凹曲部
13 孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6