(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016498
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】多方向入力装置
(51)【国際特許分類】
H01H 25/00 20060101AFI20240131BHJP
G01L 5/1627 20200101ALI20240131BHJP
G01R 17/02 20060101ALI20240131BHJP
G06F 3/0338 20130101ALI20240131BHJP
【FI】
H01H25/00 Z
G01L5/1627
G01R17/02
G06F3/0338 411
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118658
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】植嶋 朗仁
【テーマコード(参考)】
2F051
2G025
5B087
5G031
【Fターム(参考)】
2F051AA21
2F051AB09
2F051BA07
2F051DA03
2F051DB01
2G025EA00
2G025EA07
2G025EB01
2G025EC09
2G025ED00
5B087AA09
5B087AB02
5B087BC02
5B087BC13
5B087BC33
5G031AS02Z
5G031HU42
(57)【要約】
【課題】入力された力の方向を判別するための装置の構成を簡素化する。
【解決手段】多方向入力装置1が、ノブ2と、固定部33A~Dを含むベース3と、両端部が固定部33A~Dに固定された変形部41E~Hと、ノブ2を変形部41E~Hと軸方向に連結する連結部5E~Hと、変形部41E~H上に設置される8個のひずみゲージ81~88と、各固定部33A~Dを周方向に挟む2個のひずみゲージで構成される4組のひずみゲージ対80A~Dと、1組のひずみゲージ対を含むホイートストンブリッジ回路により構成されるひずみ検出回路90A~Dと、ひずみ検出回路90A~Dから出力された検出信号の組合せに基づき操作力の方向を判定する操作方向判定部95と、を備える。ひずみ検出回路90A~Dのうち少なくとも1つが、隣辺型回路91により構成される。ひずみ検出回路90A~Dのうち少なくとも1つが、対辺型回路92により構成される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作力が入力されるノブと、
周方向に間隔をおいて配置された4つの固定部を含み、軸方向において前記ノブと対向するベースと、
前記4つの固定部のうち前記周方向に隣接する2つに両端部がそれぞれ固定された4つの変形部と、
前記ノブを前記4つの変形部と前記軸方向に連結し、前記ノブに入力された前記操作力を前記4つの変形部に伝達する連結部と、
前記変形部上に設置され、前記操作力に基づく前記変形部の変形に伴い伸長または収縮する8個のひずみゲージと、
前記4つの固定部の各々を前記周方向に挟む2個のひずみゲージで1組を構成する4組のひずみゲージ対と、
前記1組を構成する前記2個のひずみゲージを含むホイートストンブリッジ回路によりそれぞれ構成され、前記ホイートストンブリッジ回路内の前記2個のひずみゲージの伸縮に応じて検出信号を出力する4つのひずみ検出回路と、
前記4つのひずみ検出回路それぞれから出力された前記検出信号の組み合わせに基づいて、前記操作力の方向を判定する操作方向判定部と、
を備え、
前記ホイートストンブリッジ回路は、前記2個のひずみゲージが当該回路の4辺のうちの対辺にそれぞれ配置された対辺型回路、または前記2個のひずみゲージが当該回路の4辺のうちの隣辺にそれぞれ配置された隣辺型回路として構成され、
前記4つのひずみ検出回路のうち少なくとも1つが、前記隣辺型回路により構成される、
多方向入力装置。
【請求項2】
前記4つのひずみ検出回路のうち少なくとも1つが、前記対辺型回路により構成される、
請求項1に記載の多方向入力装置。
【請求項3】
前記4つのひずみ検出回路が、第1径方向に対向する2組のひずみゲージ対それぞれと対応する2つのひずみ検出回路から成る第1回路群と、前記第1径方向と直交する第2径方向に対向する2組のひずみゲージ対それぞれと対応する2つのひずみ検出回路から成る第2回路群とに分けられ、
前記第1回路群および前記第2回路群の少なくとも一方において、自群を成す前記2つのひずみ検出回路のうちの一方が前記隣辺型回路により構成され、他方が前記対辺型回路により構成される、
請求項2に記載の多方向入力装置。
【請求項4】
操作力が入力されるノブと、
周方向に間隔をおいて配置された4つの固定部を含み、軸方向において前記ノブと対向するベースと、
前記4つの固定部のうち前記周方向に隣接する2つに両端部がそれぞれ固定された4つの変形部と、
前記ノブを前記4つの変形部と前記軸方向に連結し、前記ノブに入力された前記操作力を前記4つの変形部に伝達する連結部と、
前記変形部上に設置され、前記操作力に基づく前記変形部の変形に伴い伸長または収縮する8個のひずみゲージと、
前記4つの固定部の各々を前記周方向に挟む2個のひずみゲージで1組を構成する4組のひずみゲージ対と、
前記1組を構成する前記2個のひずみゲージを含むホイートストンブリッジ回路によりそれぞれ構成され、前記ホイートストンブリッジ回路内の前記2個のひずみゲージの伸縮に応じて検出信号を出力する4つのひずみ検出回路と、
前記4つのひずみ検出回路それぞれから出力された前記検出信号の組み合わせに基づいて、前記操作力の方向を判定する操作方向判定部と、
を備え、
前記ホイートストンブリッジ回路は、前記2個のひずみゲージが当該回路の4辺のうちの対辺にそれぞれ配置された対辺型回路、または前記2個のひずみゲージが当該回路の4辺のうちの隣辺にそれぞれ配置された隣辺型回路として構成され、
前記4つのひずみ検出回路のうち少なくとも1つが、前記対辺型回路により構成される、
多方向入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多方向入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、8個のひずみゲージと、8個のひずみゲージそれぞれに対応する8個のホイートストンブリッジ回路とを備えた多軸力覚センサを開示している。多軸力覚センサは、ブリッジ回路から出力される信号の組み合わせに基づき、多軸力覚センサに作用している外力の成分を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のこの種の装置では、ひずみゲージがホイートストンブリッジ回路と一対一で対応している。そのため、装置の構成が複雑である。
【0005】
そこで本発明は、入力された力の方向を判別するための装置の構成を簡素化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、操作力が入力されるノブと、周方向に間隔をおいて配置された4つの固定部を含み、軸方向において前記ノブと対向するベースと、前記4つの固定部のうち前記周方向に隣接する2つに両端部がそれぞれ固定された4つの変形部と、前記ノブを前記4つの変形部と前記軸方向に連結し、前記ノブに入力された前記操作力を前記4つの変形部に伝達する連結部と、前記変形部上に設置され、前記操作力に基づく前記変形部の変形に伴い伸長または収縮する8個のひずみゲージと、前記4つの固定部の各々を前記周方向に挟む2個のひずみゲージで1組を構成する4組のひずみゲージ対と、前記1組を構成する前記2個のひずみゲージを含むホイートストンブリッジ回路によりそれぞれ構成され、前記ブリッジ回路内の前記2個のひずみゲージの伸縮に応じて検出信号を出力する4つのひずみ検出回路と、前記4つのひずみ検出回路それぞれから出力された前記検出信号の組み合わせに基づいて、前記操作力の方向を判定する操作方向判定部と、を備え、前記ホイートストンブリッジ回路は、前記2個のひずみゲージが当該回路の4辺のうちの対辺にそれぞれ配置された対辺型回路、または前記2個のひずみゲージが当該回路の4辺のうちの隣辺にそれぞれ配置された隣辺型回路として構成される、多方向入力装置を提供する。
【0007】
上記の構成によれば、8個のひずみゲージが、2個1組とされ、4組のひずみゲージ対を構成している。4組のひずみゲージ対は、4つのひずみ検出回路それぞれと対応する。各ひずみ検出回路は、対応する1組を構成している2個のひずみゲージ(および2つの固定抵抗)を含むホイートストンブリッジ回路、すなわち2ゲージ法のブリッジ回路により構成される。
【0008】
これにより、8個のひずみゲージが1ゲージ法のホイートストンブリッジ回路により構成された8つのひずみ検出回路とそれぞれ対応している従来の形態と対比して、ひずみ検出回路の個数が半減し、ホイートストンブリッジ回路で必要になる固定抵抗の個数が3分の1に減少する。したがって、装置の構成が簡素化される。また、検出信号の出力が倍化して、ひずみゲージの伸縮に対するひずみ検出回路の応答性が高くなる。よって、操作力がノブに入力されたときに、操作方向判定部が、操作力の方向を精度よく判別できる。
【0009】
ここで、操作力がノブに入力されていない非操作状態では、4つの変形部は、原形状を維持する。8個のひずみゲージは全て、伸長も収縮もしない初期状態となる。操作力が軸方向においてノブがベースに近づく側に向けられた力である場合、すなわちノブが押し操作された場合を仮想する。このような操作力が4つの変形部に伝達されると、引張荷重が各変形部の周方向両端部に作用する。8個のひずみゲージは全て、初期状態から伸長する。いずれの組のひずみゲージ対においても、2個のひずみゲージの両方が、引張荷重により伸長する。操作力が軸線周りに第1方向(例えば、時計回り)に向けられた力のモーメントである場合、すなわちノブが第1方向に回転操作された場合を仮想する。このような操作力が4つの変形部に伝達されると、引張荷重が各変形部の第1方向側の端部に作用し、圧縮荷重が各変形部の反対側の端部に作用する。ノブが軸線周りに第1方向とは反対側の第2方向(例えば、反時計回り)に回転操作された場合についても、これと同様である。いずれの組のひずみゲージ対においても、操作力の方向に関わらず、一方のひずみゲージが引張荷重により初期状態から伸長し、他方のひずみゲージが圧縮荷重により初期状態から収縮する。
【0010】
2ゲージ法のホイートストンブリッジ回路は、対辺型回路または隣辺型回路として構成される。どちらの型の回路も、2個のひずみゲージが初期状態である場合に、平衡状態となる。隣辺型回路は、ひずみゲージが両方とも伸長している場合および両方とも収縮している場合にも、平衡状態となる。対辺型回路は、一方のひずみゲージが伸長しており他方のひずみゲージが収縮している場合にも、平衡状態となる。
【0011】
本発明の第1の態様は、前記4つのひずみ検出回路のうち少なくとも1つが、前記隣辺型回路により構成される、多方向入力装置を提供する。これにより、ノブが回転操作されたときに4つのひずみ検出回路が全て平衡状態となる事態を回避できる。よって、装置の構成を簡素化すべく2ゲージ法のホイートストンブリッジ回路を採用するに際して、操作方向判定部は、検出信号の組み合わせに基づき、ノブが回転操作されているのか非操作であるのかを判別できる。
【0012】
また、本発明の第2の態様は、前記4つのひずみ検出回路のうち少なくとも1つが、前記対辺型回路により構成される、多方向入力装置を提供する。これにより、ノブが押し操作されたときに4つのひずみ検出回路が全て平衡状態となる事態を回避できる。よって、装置の構成を簡素化すべく2ゲージ法のホイートストンブリッジ回路を採用するに際して、操作方向判定部は、検出信号の組み合わせに基づき、ノブが押し操作されているのか非操作であるのかを判別できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、入力された力の方向を判別するための装置の構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る多方向入力装置の適用例を示す正面図。
【
図4】ベース、検出板、およびひずみゲージの組付状態の斜視図、且つ連結部の分解斜視図。
【
図5】
図1のV-V線に沿って切断して示す多方向入力装置の断面図
【
図6】
図5のVI-VI線に沿って切断して示す多方向入力装置の断面図。
【
図7】ひずみ検出回路および操作方向判定部の概念図。
【
図8】隣辺型回路および対辺型回路の類型を示す図。
【
図9】操作方向とひずみゲージの状態との対応関係を示す図。
【
図10】第1~第3条件を満たす場合における、操作方向と検出信号との対応関係の一例を示す図。
【
図11】ひずみゲージの伸縮に対する検出信号の応答性を説明する図。
【
図12】第1条件を満たし且つ第2および第3条件を満たさない場合における、操作方向と検出信号との対応関係の一例を示す図。
【
図13】第2条件を満たし且つ第1および第3条件を満たさない場合における、操作方向と検出信号との対応関係の一例を示す図。
【
図14A】第1および第2条件を満たし且つ第3条件を満たさない場合における、操作方向と検出信号との対応関係の一例を示す図。
【
図14B】第1および第2条件を満たし且つ第3条件を満たさない場合における、操作方向と検出信号との対応関係の別例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。全図を通じて同一のまたは対応する要素には同一の符号を付して詳細な説明の重複を省略する。
【0016】
図1を参照して、本実施形態に係る多方向入力装置1は、一例として、全体として円筒状あるいは円柱状である。多方向入力装置1の後面は、例えばディスプレイパネルの表面のような、設置対象100上に設置される。多方向入力装置1は、設置対象100から前方へ突出し、その軸線Aは前後方向に向けられている。利用者は、多方向入力装置1の前方におり、多方向入力装置1と前後方向に対峙する。
【0017】
軸方向は、軸線Aが延びる方向であり、径方向は、軸線Aに直交する方向である。前後方向は、軸方向と対応する。上下方向および左右方向は、径方向の一例であり、互いに直交する。左右方向は、多方向入力装置1と対峙している利用者から見た方向を基準とし、前から向かったときの左右方向である。上方、右方、下方、および左方の4方向をまとめて十字方向と称する場合がある。周方向は、軸線A周りの方向である。時計回りは、周方向のうち前から向かって右回りであり、反時計回りは、周方向のうち前から向かって左回りである。周方向において時計回り側を一方側、反時計回り側を他方側とする。
図1は、設置対象100が鉛直面であり軸方向が水平である場合を例示しているが、設置対象100の鉛直方向に対する傾斜に応じて、軸方向も水平方向に対して傾斜される。
【0018】
図2を参照して、多方向入力装置1は、利用者によって手動で操作されるノブ2を備える。ノブ2は、後方へ開放された円筒状である(
図4および
図5を参照)。ノブ2は、正面視で円形状の前壁21と、前壁21の周縁部から後方へ延びる周壁22とを有する。ノブ2は、利用者の操作力が一次的に入力される部材としての役割のみならず、多方向入力装置1のその他の要素を収容する部材としての役割も果たす。
【0019】
本実施形態では、利用者が、ノブ2に対して予め定められた7種の操作を行うことを許容されている。換言すると、多方向入力装置1は、利用者がノブ2を操作していない非操作状態と、利用者がノブ2に対して7種のうちいずれかの操作を行っている7種の操作状態との計8種の状態を判別可能に構成されている。7種の操作には、一例として、次の操作が含まれる。
A)ノブ2を後方へ押し込む押し操作。
B)ノブ2を右回り(時計回り)または左回り(反時計回り)に回転させる回転操作。
C)ノブ2を十字方向のいずれかにスライドさせるスライド操作。
【0020】
押し操作時には、利用者は、操作力として、後方に向けられた力をノブ2に入力する。回転操作時には、利用者は、操作力として、周方向において時計回りまたは反時計回りに向けられた力のモーメントをノブ2に入力する。スライド操作時には、利用者は、操作力として、十字方向のいずれかに向けられた力をノブ2に入力する。このような操作が行われると、ノブ2は操作力の方向に応じて僅かに変位する。操作力が解放されると、ノブ2は元の位置および姿勢に復元する。
【0021】
図3~
図6を参照して、多方向入力装置1は、ベース3、検出板4、4つの連結部5E~5H、接着シート6、基板7、および8個のひずみゲージ81~88を更に備える。ベース3、検出板4、4つの連結部5E~5H、基板7、および8個のひずみゲージ81~88は、ノブ2の内部(すなわち、前壁21および周壁22で囲まれた空間)に収容される。ベース3、検出板4、接着シート6、および基板7は、ノブ2と同軸状であり、軸線Aを中心として90度回転対称(すなわち、4回対称)に形成されている。
【0022】
特段断らなければ、参照符号の添え字「A」、「B」、「C」、および「D」は、4回対称に配置された4つの同要素の位置を表し、上、右、下、および左とそれぞれ対応する。添え字「E」、「F」、「G」、および「H」は、4回対称に配置された4つの同要素の位置を表し、右上、右下、左下、および左上とそれぞれ対応する。
【0023】
図3および
図4を参照して、ベース3は、ノブ2(特に、その前壁21)と軸方向に対向する。ベース3は、外筒31、内筒32、および4つの固定部33A~33Dを有する。外筒31および内筒32は、両端が開口する低背円筒状である。外筒31の外径は、ノブ2の周壁21の内径よりも小さく、内筒32の外径は、外筒31の内径よりも小さい。内筒32は、外筒31と同軸状であり、外筒31の内側に配置される。固定部33A~33Dは、外筒31と内筒32との間の円環状のスペース内に周方向に等間隔をおいて配置され、外筒31を内筒32と径方向に接続する。外筒31、内筒32、および固定部33A~33Dの前面は、互いに面一である。
【0024】
図3および
図4を参照して、検出板4は、可撓性を有する円環板状であり、4つの変形部41E~41Hおよび4つの被固定部42A~42Dを有する。変形部41E~41Hと被固定部42A~42Dとは、周方向に交互に並べられている。検出板4は、外筒31と内筒32との間のスペースに配置される。4つの被固定部42A~42Dは、4つの固定部33A~33D内にそれぞれ埋没される。これにより、検出板4がベース3に支持される。
【0025】
右上変形部41Eは、上被固定部42Aと右被固定部42Bとの間に介在する。右上変形部41Eの両端部は、4つの固定部33A~33Dのうち周方向に隣接する上固定部33Aおよび右固定部33Bそれぞれによって固定される。右下変形部41F、左下変形部41G、および左上変形部41Hについても、これと同様である。
【0026】
図4および
図5を参照して、4つの連結部5E~5Hは、ノブ2を4つの変形部41E~41Hそれぞれと軸方向に連結する。ノブ2は、連結部5E~5Hを介して変形部41E~41Hに相対移動不能に連結され、連結部5E~5Hおよび変形部41E~41Hを介してベース3に支持される。
【0027】
4つの連結部5E~5Hは、4つのボルト51E~51Hと、ノブ2の前壁21の後面から軸方向に延びて周方向に等間隔をおいて配置された4つのボス23E~23Hとにより構成される。各ボス23E~23Hは、後方に開放された雌ねじ孔23aを有する。変形部41E~41Hの周方向中央部それぞれに、4つの挿通孔43E~43Hが貫通している。右上ボルト51Eは、右上挿通孔43Eに後から挿通され、右上ボス23Eの雌ねじ孔23aに螺合され、右上ボルト51Eの頭部は、右上変形部41Eの後面に係合する。これにより、右上連結部5Eが構成される。その他の連結部5F~5Hも、これと同様である。
【0028】
図3および
図5を参照して、接着シート6は、例えば両面テープである。接着シート6の表面は、ベース2の後面に貼り付けられ、接着シート6の裏面は、設置対象100に貼り付けられる。これにより、多方向入力装置1が設置対象100上に設置される。ベース3は、外筒31の後端部から内周側へ突出する外フランジ35と、内筒32の後端部から外周側へ突出する内フランジ36とを更に有する。外筒31、内筒32、固定部33A~33D、外フランジ35、および内フランジ36の後面は、互いに面一である。接着シート6は、外筒31および外フランジ35の後面に貼り付けられる外リング61、内筒32および内フランジ36の後面に貼り付けられる内リング62、および4つの固定部33A~33Dの後面それぞれに貼り付けられる4つの接続部63A~63Dを有する。外リング61と内リング62とは、接続部63A~63Dを介して径方向に接続される。
【0029】
図3、
図5および
図6を参照して、基板7は、電子部品および電気回路が実装される板状の本体部71を備える。ノブ2のボス23E~23Hとの干渉の回避や、基板7上の回路と変形部41E~41H上のひずみゲージ81~88との間の配線の取回しのため、本体部71には4つの4つの切欠き72E~72Hが設けられる。本体部71は、上下左右に突出した十字状である。基板7は、本体部71を貫通する4つの挿通孔73A~73Dそれぞれに前から挿通される4つのボルト52A~52Dにより、ベース3に固定される。ベース3は、4つの固定部33A~33Dの前面それぞれから前方に突出する4つのボス34A~34Dを有し、各ボルト52A~52Dは、ボス34A~34Dに形成された雌ねじ孔34aに螺合される。ボルト52A~52Dの頭部が、基板7の前面に係合し、基板7の後面が、ボス34A~34Dの前面上に支持される。
【0030】
図4および
図6を参照して、8個のひずみゲージ81~88は、4つの変形部41E~41Hそれぞれの周方向両端部、計8か所にそれぞれ設けられている。各ひずみゲージ81~88は、矩形シート状である。各ひずみゲージ81~88は、厚み方向が軸方向に沿った姿勢且つ長手方向が周方向に沿った姿勢で、変形部41E~41Hの前面上に貼り付けられる。
【0031】
8個のひずみゲージ81~88は、2個1組を成し、4組のひずみゲージ対80A~80Dを構成する。各組のひずみゲージ対80A~80Dは、固定部33A~33Dの各々を周方向に挟む2個のひずみゲージで構成される。
【0032】
上ひずみゲージ対80Aは、左上変形部41Hの一端部(上端部)上のひずみゲージ81と、右上変形部41Eの他端部(上端部)上のひずみゲージ82とで構成される。これら2個のひずみゲージ81,82は、上固定部33Aを周方向に挟む。上固定部33Aから見たときには、ひずみゲージ81が周方向他方側に配置され、ひずみゲージ82が周方向一方側に配置される。
【0033】
その他のひずみゲージ対80B~80Dについても、これと同様である。右ひずみゲージ対80Bは、右上変形部41Eの一端部(右端部)上のひずみゲージ83と、右下変形部41Fの他端部(右端部)上のひずみゲージ84とで構成され、これら2個のひずみゲージ83,84は、右固定部33Bを周方向に挟む。下ひずみゲージ対80Cは、右下変形部41Fの一端部(下端部)上のひずみゲージ85と、左下変形部41Gの他端部(下端部)上のひずみゲージ86とで構成され、これら2個のひずみゲージ85,86は、下固定部33Cを周方向に挟む。左ひずみゲージ対80Dは、左下変形部41Gの一端部(左端部)上のひずみゲージ87と、左上変形部41Hの他端部(左端部)上のひずみゲージ88とで構成され、これら2個のひずみゲージ87,88は、左固定部33Dを周方向に挟む。
【0034】
図7を参照して、多方向入力装置1は、ひずみゲージ対80A~80Dそれぞれと対応する4つのひずみ検出回路90A~90Dを備える。各ひずみ検出回路90A~90Dは、対応する1組のひずみゲージ対80A~80Dを成す2個のひずみゲージを含むホイートストンブリッジ回路により構成される。このホイートストンブリッジ回路は、いわゆる「2ゲージ法」である。上ひずみ検出回路90Aは、上ひずみゲージ対80Aを成す2個のひずみゲージ81,82を含む2ゲージ法のホイートストンブリッジ回路により構成される。右ひずみ検出回路90B、下ひずみ検出回路90C、および左ひずみ検出回路90Dについても、これと同様である。各ひずみ検出回路90A~90Dは、2個のひずみゲージの伸縮に応じて検出信号を出力する。
【0035】
ひずみ検出回路90A~90Dは、ひずみゲージ対80A~80Dを除き、基板7上に実装されており、基板7上でのレイアウトは特に限定されない。ひずみ検出回路の参照符号に付された添え字「A」、「B」、「C」、および「D」は、必ずしもひずみ検出回路の基板7上での配置そのものを表しておらず、ひずみゲージ対80A~80Dとの対応を示すために用いられている。
【0036】
図8を参照して、ホイートストンブリッジ回路は、4つの節点(入力節点a、グランド節点b、第1中間節点c、および第2中間節点d)と、4つの枝(2節点a,c間の第1上流枝ac、2節点c,b間の第1下流枝cb、2節点a,d間の第2上流枝ad、および2節点d,b間の第2下流枝db)とを有する。入力節点aは、第1枝ac,cbおよび第2枝ad,dbを介してグランド節点bに接続される。入力電圧Vinが入力節点aに印加され、グランド節点bはグランドに接続される。入力電圧Vinに相当する電位差が、第1枝ac,cbおよび第2枝ad,dbの双方に生じる。出力される検出信号の電圧は、第1中間節点cでの第1電位V1と第2中間節点dでの第2電位V2との電位差(V1-V2)である。ひずみゲージ8の抵抗値の変化に応じて、第1電位V1および第2電位V2が変化する。
【0037】
2ゲージ法では、4つの抵抗素子、つまり2つの固定抵抗Rおよび2個のひずみゲージ8が、4つの枝ac,cb,ad,dbにそれぞれ分かれて接続される。変形部41E~41Hに変形が生じていなければ、ひずみゲージ8は、伸長も収縮もしない初期状態にあり、固定抵抗Rの抵抗値と等しい初期抵抗値を有する。ひずみゲージ8が初期状態から伸長すると、ひずみゲージ8の抵抗値が、初期抵抗値から上昇する。ひずみゲージ8が初期状態から収縮すると、ひずみゲージ8の抵抗値が、初期抵抗値から低下する。
【0038】
2ゲージ法のホイートストンブリッジ回路には、いわゆる隣辺型回路91と、いわゆる対辺型回路92とがある。ここで、ホイートストンブリッジ回路が菱形に描画され、4節点a~dが菱形の4つの頂点を成し、4枝ac,cb,ad,dbが菱形の4つの辺を成すものとする。
【0039】
隣辺型回路91では、4辺のうち隣り合う2辺それぞれに、2個のひずみゲージ8が接続される。隣辺型回路91には、ひずみゲージ8が下流枝cb,dbに設けられた第1隣辺型91P、ひずみゲージ8が第1枝ac,cbに設けられた第2隣辺型91Q、ひずみゲージ8が第2枝ad,dbに設けられた第3隣辺型91R、およびひずみゲージ8が上流枝ac,adに設けられた第4隣辺型91Sの4類型がある。
【0040】
対辺型回路92では、4辺のうち対辺それぞれに、2個のひずみゲージ8が接続される。対辺型回路92には、ひずみゲージ8が第1上流枝acおよび第2下流枝dbに設けられた第1対辺型92P、およびひずみゲージ8が第2上流枝adおよび第1下流枝cbに設けられた第2対辺型92Qの2類型がある。
【0041】
隣辺型回路91も対辺型回路92も、2つのひずみゲージ8が初期状態であれば、平衡状態となる。すなわち、検出信号の電圧がゼロ値となる。更に、隣辺型回路91は、2つのひずみゲージ8の伸長量が同じ場合および収縮量が同じ場合に平衡状態となる。また、対辺型回路92は、一方のひずみゲージ8の伸長量と他方のひずみゲージ8の収縮量が同じ場合に平衡状態となる。
【0042】
図7に戻り、4つのひずみ検出回路90A~90Dのうち、少なくとも1つは隣辺型回路91で構成される(以下、「第1条件」という)。なお、隣辺型回路91であればどの類型が採用されてもよい。4つのひずみ検出回路90A~90Dのうち、少なくとも1つは対辺型回路92で構成される(以下、「第2条件」という)。なお、対辺型回路92であればどの類型が採用されてもよい。本実施形態では、上ひずみ検出回路90Aおよび右ひずみ検出回路90Bが隣辺型回路91で構成され、第1条件を満たす。下ひずみ検出回路90Cおよび左ひずみ検出回路90Dが対辺型回路92で構成され、第2条件を満たす。
【0043】
4つのひずみ検出回路90A~90Dは、第1回路群と第2回路群とに分けられる。第1回路群は、第1径方向(例えば、上下方向)に対向する2組のひずみゲージ対80A,80Cそれぞれと対応する2つのひずみ検出回路90A,90Cから成る。第2回路群は、第1径方向と直交する第2径方向(例えば、左右方向)に対向する2組のひずみゲージ対80B,80Dそれぞれと対応する2つのひずみ検出回路90B,90Dから成る。第1回路群および第2回路群の少なくとも一方においては、自群を成す2つのひずみ検出回路のうちの一方が隣辺型回路91で構成され、他方が対辺型回路92で構成される(以下、「第3条件」という)。なお、第1および第2条件と同様、隣辺型回路91および対辺型回路92には、どの類型が採用されてもよい。
【0044】
本実施形態では、第1回路群に関し、上ひずみ検出回路90Aが隣辺型回路91で構成されて下ひずみ検出回路90Cが対辺型回路92で構成されており、第3条件を満たす。なお、第2回路群に関しても、右ひずみ検出回路90Bが隣辺型回路91で構成されて左ひずみ検出回路90Dが対辺型回路92で構成されており、第3条件を満たす。
【0045】
単なる一例として、上ひずみ検出回路90Aは、第1隣辺型91Pであり、右ひずみ検出回路90Bは、第2隣辺型91Qである。下ひずみ検出回路90Cは、第1対辺型92Pであり、左ひずみ検出回路90Dは、第2対辺型92Qである。
【0046】
多方向入力装置1は、4つのひずみ検出回路90A~90Dそれぞれから出力された検出信号の組合せに基づいて、ノブ2に入力された操作力の方向を判定する操作方向判定部95を備えている。操作方向判定部95は、例えば、基板7上に実装された演算回路(図示せず)によって実現される。操作方向判定部95は、検出信号の組合せと操作方向との対応関係を定義するテーブル(
図10を参照)を参照し、操作力の方向を判定する。テーブルは、基板7上に実装されたメモリ(図示せず)に予め記憶されている。
【0047】
4つのひずみ検出回路90A~90Dそれぞれから出力された4つの検出信号の電圧は、大略的に言って、平衡帯域、正帯域、負帯域の3帯域に分類されることができる。「検出信号の組合せ」とは、4つの検出信号の電圧帯域の組み合わせである。操作方向判定部95は、出力されている検出信号の各々が、3帯域のうちいずれに属しているのか判断する。操作方向判定部95は、この判断結果に応じてテーブルを参照して操作方向を判別する。平衡帯域とは、正値の第1電圧閾値Vth1(
図10を参照)と負値の第2電圧閾値Vth2(
図10を参照)との間の帯域であり、ゼロ値が含まれる。正帯域とは、第1電圧閾値Vth1以上の帯域であり、負帯域とは、第2電圧閾値Vth2以下の帯域である。操作方向判定部95は、検出信号の電圧が完全にゼロ値のときだけを平衡であると判断せず、平衡帯域は不感帯として機能する。電圧閾値Vth1,Vth2(すなわち、平衡帯域の幅)を調整することで、操作に対する応答性の確保と誤判別の抑制とを両立できる。
【0048】
図9および
図10を参照して、ノブ2が非操作状態であれば、変形部41E~41Hは変形を生じない。8個のひずみゲージ81~88の全てが初期状態である。よって、4つのひずみ検出回路90A~90Dの全てが、平衡状態となる。操作力がノブ2に入力されると、操作力が連結部5E~5Hを介して4つの変形部41E~41Hに伝達される。変形部41E~41Hは、ノブ2に対して相対変位不能であって固定部33A~33Dにそれぞれ固定されている。そのため、圧縮荷重または引張荷重が、4つの変形部41E~41Hの両端部に作用し、8個のひずみゲージ81~88が、変形部41E~41Hと共に伸長または収縮する。
【0049】
連結部5E~5Hは、周方向に等間隔をおいて設けられ、各連結部5E~5Hは、対応する変形部41E~41Hの周方向中央部に設けられる。この対称性により、操作力は、4つの変形部41E~41Hに同等に伝達される。ノブ2に操作力が入力されると、その操作力の方向および大きさに関わらず、8個のひずみゲージ81~88の伸長量または収縮量の絶対値は、互いに概ね等しくなる。そのため、平衡帯域(不感帯)を狭くしても誤判別を抑制できるようになり、応答性を確保しやすい。
【0050】
ノブ2が押し操作されると、後方への操作力が連結部5E~5Hを介して変形部41E~41Hに伝達される。変形部41E~41Hの全てが後方へ撓む。いずれの変形部41E~41Hにおいても、引張荷重が両端部に作用する。8個のひずみゲージ81~88の全てが伸長する。いずれのひずみ検出回路90A~90Dにおいても、2個のひずみゲージの抵抗値が上昇する。隣辺型回路91によって構成された上ひずみ検出回路90Aおよび右ひずみ検出回路90Bは、平衡状態となる。本例では、下ひずみ検出回路90Cは、負電圧の検出信号を出力し、左ひずみ検出回路90Dは、正電圧の検出信号を出力する。
【0051】
ノブ2が右回りに回転操作されると、時計回りの力のモーメントが連結部5E~5Hを介して変形部41E~41Hに伝達される。いずれの変形部41E~41Hにおいても、引張荷重が一端部に作用し、圧縮荷重が他端部に作用する。各固定部33A~33Dを基準とすれば、他方側で引張荷重が作用し、一方側で引張荷重が作用する。そのため、いずれのひずみ検出回路90A~90Dにおいても、対応する固定部33A~33Dから見て周方向他方側のひずみゲージの抵抗値が低下し、周方向一方側の抵抗値が上昇する。対辺型回路92によって構成された下ひずみ検出回路90Cおよび左ひずみ検出回路90Dは、平衡状態となる。本例では、上ひずみ検出回路90Aは、正電圧の検出信号を出力し、右ひずみ検出回路90Bは、負電圧の検出信号を出力する。
【0052】
ノブ2が左回りに回転操作されると、反時計回りの力のモーメントが連結部5E~5Hを介して変形部41E~41Hに伝達される。いずれの変形部41E~41Hにおいても、引張荷重が他端部に作用し、圧縮荷重が一端部に作用する。いずれのひずみ検出回路90A~90Dにおいても、対応する固定部33A~33Dから見て周方向一方側のひずみゲージの抵抗値が低下し、周方向他方側の抵抗値が上昇する。対辺型回路92によって構成された下ひずみ検出回路90Cおよび左ひずみ検出回路90Dは、平衡状態となる。本例では、上ひずみ検出回路90Aは、負電圧の検出信号を出力し、右ひずみ検出回路90Bは、正電圧の検出信号を出力する。
【0053】
ノブ2が上方にスライド操作されると、上方への操作力が連結部5E~5Hを介して変形部41E~41Hに伝達される。右上変形部41Eおよび左上変形部41H上に設置された上側4個のひずみゲージ81,82,83,88が伸長し、右下変形部41Fおよび左下変形部41G上に設置された下側4個のひずみゲージ84,85,86,87が収縮する。本例では、上ひずみ検出回路90Aおよび左ひずみ検出回路90Dは、平衡状態となり、右ひずみ検出回路90Bは、負電圧の検出信号を出力し、下ひずみ検出回路90Cは、正電圧の検出信号を出力する。
【0054】
ノブ2が下方にスライド操作されると、下方への操作力が連結部5E~5Hを介して変形部41E~41Hに伝達される。右下変形部41Fおよび左下変形部41G上に設置された下側4個のひずみゲージ84,85,86,87が伸長し、右上変形部41Eおよび左上変形部41H上に設置された上側4個のひずみゲージ81,82,83,88が収縮する。上ひずみ検出回路90Aおよび左ひずみ検出回路90Dは、上方スライド時と同様、平衡状態となる。右ひずみ検出回路90Bおよび下ひずみ検出回路90Cにおいては、検出信号の正負が上方スライド時と逆となる。
【0055】
ノブ2が右方にスライド操作されると、右方への操作力が連結部5E~5Hを介して変形部41E~41Hに伝達される。右上変形部41Eおよび右下変形部41F上に設置された右側4個のひずみゲージ82,83,84,85が伸長し、左下変形部41Gおよび左上変形部41H上に設置された左側4個のひずみゲージ81,86,87,88が収縮する。本例では、右ひずみ検出回路90Bおよび下ひずみ検出回路90Cは、平衡状態となり、上ひずみ検出回路90Aは、負電圧を出力し、左ひずみ検出回路90Dは、負電圧を出力する。
【0056】
ノブ2が左方にスライド操作されると、左方への操作力が連結部5E~5Hを介して変形部41E~41Hに伝達される。左下変形部41Gおよび左上変形部41H上に設置された左側4個のひずみゲージ81,86,87,88が伸長し、右上変形部41Eおよび右下変形部41F上に設置された右側4個のひずみゲージ82,83,84,85が収縮する。右ひずみ検出回路90Bおよび下ひずみ検出回路90Cは、右方スライド時と同様、平衡状態となる。上ひずみ検出回路90Aおよび左ひずみ検出回路90Dにおいては、検出信号の正負が右方スライド時と逆となる。
【0057】
このように、本実施形態においては、第1~第3条件を全て満たすため、非操作状態と7種の操作状態の8種の状態において、検出信号の組み合わせのパターンを互いに異ならせることができる。したがって、操作方向判定部95は、検出信号の組み合わせに基づいて8種の状態を判別することができる。
【0058】
ひずみ検出回路90A~90Dが、2ゲージ法のホイートストンブリッジ回路により構成される。1ゲージ法のホイートストンブリッジ回路を採用する従来の形態と対比して、回路数が半減し、固定抵抗Rの個数が3分の1に減少する。基板7に実装される回路パターンおよび部品点数を大幅に削減でき、多方向入力装置1の構成が簡素化する。
【0059】
図11を参照して、2つのひずみゲージ8a,8bが2つの1ゲージ法のホイートストンブリッジ回路にそれぞれ組み込まれている参考例において、2つのひずみゲージ8a,8bが同量伸長したときに、どちらの回路も-ΔVの電圧で検出信号を出力したと仮定する。2つのひずみゲージ8a,8bが1つの2ゲージ法のホイートストンブリッジ回路(例えば、対辺型)に組み込まれる本例においては、2つのひずみゲージ8a,8bが参考例と同量伸長した場合に、-2ΔVの電圧で検出信号を出力可能である。このように、2ゲージ法においては、ひずみに対する検出信号の出力が倍化する。そのため、平衡帯域(不感帯)を広くしても応答性を確保でき、誤判別を抑制しやすい。操作方向判定部95が、操作力の方向を精度よく判別できるようになる。
【0060】
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜変更可能である。
【0061】
図12は、第1条件を満たし且つ第2および第3条件を満たさない場合の例を示す。4つのひずみ検出回路90A~90Dを全て隣辺型回路91によって構成すると、押し操作時に全てのひずみ検出回路90A~90Dが平衡状態となる。そのため、操作方向判定部95は、非操作状態と押し操作とを判別不能となる。ただし、周方向両方の回転操作および十字方向のスライド操作の6種の操作状態と、非操作状態との7種の状態を判別することは可能である。よって、この例においても、多方向の操作力を判別可能な装置を簡素に構成できる。
【0062】
図13は、第2条件を満たし且つ第1および第3条件を満たさない場合の例を示す。4つのひずみ検出回路90A~90Dを全て対辺型回路92によって構成すると、回転操作時に、全てのひずみ検出回路90A~90Dが平衡状態となる。そのため、操作方向判定部95は、非操作状態と回転操作とを判別不能となる。ただし、後方への押し操作および十字方向のスライド操作の5種の操作状態と、非操作状態との6種の状態を判別することは可能である。よって、この例においても、多方向の操作力を判別可能な装置を簡素に構成できる。
【0063】
図14Aおよび
図14Bは、第1および第2条件を満たし且つ第3条件を満たさない場合の例を示す。
図14Aに示す例では、第1回路群を成す2つのひずみ検出回路90A,90Cがどちらも隣辺型回路91であり、第2回路群を成す2つのひずみ検出回路90B,90Dがどちらも対辺型回路92である。
図14Bに示す例では、第1回路群を成す2つのひずみ検出回路90A,90Cがどちらも対辺型回路92であり、第2回路群を成す2つのひずみ検出回路90B,90Dがどちらも隣辺型回路91である。
【0064】
2例とも第1および第2条件を満たしているため、後方への押し操作および周方向両方の回転操作の3種の操作状態と、非操作状態との少なくとも4種の状態を判別可能である。第3条件を満たさない場合には、十字方向のスライド操作のうち2つにおいて、全てのひずみ検出回路90A~90Dが平衡状態となる。そのため、非操作状態と当該2つのスライド操作とを判別不能になる。ただし、上述の4種の状態に残り2つのスライド操作を加えた6種の状態を判別することは可能である。よって、これら2例においても、多方向の操作力を判別可能な装置を簡素に構成できる。
【0065】
図10に示された例では、2つの隣辺型回路91と2つの対辺型回路92とが採用されているが、1つの隣辺型回路91と3つの対辺型回路92、もしくは1つの対辺型回路92と3つの隣辺型回路91が採用されてもよい。この場合においても、第1~第3条件を全て満たし、操作方向判定部95は8種の状態を判別可能になる。
【0066】
図10、
図12~
図14Bに示された例において、隣辺型回路91は、いずれの類型に変更されてもよい。場合により、非平衡状態での検出信号の電圧の正負が逆転するだけであり、操作方向判定部95において判別可能な状態の数に変わりはない。対辺型回路92も、いずれの類型に変更されてもよい。場合により、非平衡状態での検出信号の電圧の正負が逆転するだけであり、操作方向判定部95において判別可能な状態の数に変わりはない。隣辺型回路91または対辺型回路92から1つの類型を選択した際に、2個のひずみゲージは、候補の2辺のどちらに接続されてもよい。接続される辺を入れ替えても、非平衡状態での検出信号の電圧の正負が逆転するだけであり、操作方向判定部95において判別可能な状態の数に変わりはない。
【0067】
4つの変形部41E~41Hは、4つの被固定部42A~42Dを介して単一部品の検出板4として一体化されているが、4つの変形部41E~41Hは、4つの部品それぞれによって別個に構成されていてもよい。多方向入力装置1の設置対象100への設置手段は、接着シート6に限定されない。設置対象100は、ディスプレイパネルの表面に限定されない。
【0068】
基板7はノブ2外に配置されていてもよい。この場合、ノブ2の前壁21の中央部が、アクリル樹脂等の可視光透過性を有する材料から成形された透明板で構成されてもよい。ベース3の内筒32が前後方向に貫通しており且つ接着シート6の内リング62が内筒32に対して内周側へ突出していないため、利用者は、ノブ2の前方外部から透明板を介して設置対象100を見通すことができる。設置対象100がディスプレイパネルの表面である場合には、利用者は、ディスプレイパネルのうち多方向入力装置1で覆われた領域を視認できる。当該領域の表示制御を多方向入力装置1の動作と連動させる等することにより、使い勝手がよいマンマシンインターフェースを提供できる。
【符号の説明】
【0069】
1 多方向入力装置
2 ノブ
21 前壁
22 周壁
23E~H ボス
23a 雌ねじ孔
3 ベース
31 外筒
32 内筒
33A~D 固定部
34A~D ボス
34a 雌ねじ孔
35 外フランジ
36 内フランジ
4 検出板
41E~H 変形部
42A~D 被固定部
43E~H 挿通孔
5E~H 連結部
51E~H ボルト
52A~D ボルト
6 接着シート
61 外リング
62 内リング
63A~D 接続部
7 基板
71 本体部
72E~H 切欠き
73A~D 挿通孔
8,8a,8b,81~88 ひずみゲージ
80A~D ひずみゲージ対
90A~D ひずみ検出回路
91 隣辺型回路
92 対辺型回路
95 操作方向判定部
100 設置対象
A 軸線
R 固定抵抗
Vin 入力電圧
V1 第1電位
V2 第2電位
Vth1,Vth2 電圧閾値
a~d 節点
ac,cb,ad,db 枝