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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164980
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】保持部材
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G01C15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080749
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523182153
【氏名又は名称】株式会社キムラ
(71)【出願人】
【識別番号】523180469
【氏名又は名称】有限会社松本工務所
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】石澤 一晃
(72)【発明者】
【氏名】川合 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤咲 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】木村 健一
(72)【発明者】
【氏名】松本 和美
(57)【要約】
【課題】 標尺等の対象部材を保持して自由な向きで測定対象物に取り付けることができる保持部材を提供する。
【解決手段】 本発明の保持部材は、対象部材を保持する保持部材であって、互いに反対側に位置する第1面及び第2面を有するベース部と、ベース部の第1面側に設けられ、対象部材を保持する保持部と、ベース部の第2面側に取り付けられ、第2面の法線方向を軸として取り付け姿勢が切り替え可能な状態でベース部に支持された磁石と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部材を保持する保持部材であって、
互いに反対側に位置する第1面及び第2面を有するベース部と、
前記ベース部の前記第1面側に設けられ、前記対象部材を保持する保持部と、
前記ベース部の前記第2面側に取り付けられ、前記第2面の法線方向を軸として取り付け姿勢が切り替え可能な状態で前記ベース部に支持された磁石と、を備える保持部材。
【請求項2】
前記磁石は、前記ベース部の前記第2面の法線方向から見て矩形状であり、
前記磁石は、長辺方向の向きが、前記ベース部の幅方向に対して変わるように回転可能である、請求項1に記載の保持部材。
【請求項3】
前記保持部は、前記ベース部の幅方向の両端部側から前記対象部材を挟み込んで保持する、請求項1または2に記載の保持部材。
【請求項4】
前記磁石は、磁石本体と、前記磁石本体を保持する金属のケースと、を有する、請求項1または2に記載の保持部材。
【請求項5】
前記磁石本体は、前記ベース部の前記第2面の法線方向から見て矩形状であり、
前記ケースは、前記磁石本体の長辺方向と直交する方向の端面を覆っており、かつ、長辺方向の端面を覆っていない、請求項4に記載の保持部材。
【請求項6】
前記磁石を2個以上有する、請求項1または2に記載の保持部材。
【請求項7】
前記磁石を2個有し、前記ベース部の幅方向の両端部に配置される、請求項6に記載の保持部材。
【請求項8】
前記磁石のそれぞれの長辺方向が前記ベース部の幅方向と直交した第1の状態では、前記磁石の長辺方向の端面が、前記ベース部の、幅方向と交差する方向の端面と揃っており、
前記磁石のそれぞれの長辺方向が前記ベース部の幅方向と平行となる第2の状態では、前記磁石の長辺方向の端面が、前記ベース部の幅方向の端面と揃う、請求項7に記載の保持部材。
【請求項9】
前記第1の状態では、前記磁石の短辺方向の端面が、前記ベース部の幅方向の端面よりも内側に位置する、請求項8に記載の保持部材。
【請求項10】
前記ベース部および前記保持部の少なくとも一方が金属プレートで構成されている、請求項1または2に記載の保持部材。
【請求項11】
前記対象部材が、板状の標尺である、請求項1または2に記載の保持部材。
【請求項12】
複数の前記標尺それぞれに前記保持部材が取り付けられた場合において、複数の前記標尺が互いに交差した状態で前記標尺を保持する、請求項11に記載の保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標尺等の対象部材を測定対象物に取り付ける際に用いられる保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋工事、鉄骨工事等の建築現場において、例えば、鉄筋が所定の間隔で配筋されたか否かを示すために標尺をあてた状態で撮影したり、鉄骨、コンクリートブロック等の寸法を示すために標尺をあてた状態で撮影する必要がある。
【0003】
このような撮影をする場合、作業員が標尺を持ち、他の作業員が撮影を行うなど、複数の作業員が必要になるという問題があった。また、結束バンド、粘着テープ等を用いて標尺を測定対象物に固定すれば1人の作業員で撮影を行うことができるが、時間がかかるという問題があった。
【0004】
これに対して、標尺に磁石を有する金具(治具)を取り付けて、磁石を用いて鉄筋等に標尺を固定することが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、十文字状に組合わされた縦横一双の標尺片に、永久磁石片が装架されたスライド金具を、標尺片の長手方向に摺動自在に装着してなる配筋用標尺が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実全昭63-031321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の配筋用標尺では、磁石の取り付け姿勢が固定されている。そのため、測定対象物の形状等によっては、標尺を適切に取り付けることができない、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す課題を解決することを目的とする。具体的には、本発明は、従来品に比べて、標尺等の対象部材を保持した保持部材を自由な向きで測定対象物に取り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために、本発明の保持部材は、対象部材を保持する保持部材であって、互いに反対側に位置する第1面及び第2面を有するベース部と、ベース部の第1面側に設けられ、対象部材を保持する保持部と、ベース部の第2面側に取り付けられ、第2面の法線方向を軸として取り付け姿勢が切り替え可能な状態でベース部に支持された磁石と、を備えることにより解決される。
【0010】
本発明の保持部材では、対象部材を保持する保持部材が備える磁石の取り付け姿勢を切り替え可能とすることで、標尺等の対象部材を保持した保持部材を自由な向きで測定対象物に取り付けることができる。
【0011】
また、本発明の保持部材では、磁石は、ベース部の第2面の法線方向から見て矩形状であり、磁石は、長辺方向の向きが、ベース部の幅方向に対して変わるように回転可能であるとよい。
上記の構成では、簡易な構成で磁石の取り付け姿勢を切り替え可能な構成とすることができ、また、容易に磁石の取り付け姿勢を切り替えることができる。
【0012】
また、本発明の保持部材では、保持部は、ベース部の幅方向の両端部側から対象部材を挟み込んで保持するとよい。
上記の構成では、保持部材を対象部材に容易に取り付け、および、取り外しすることができる。
【0013】
また、本発明の保持部材では、磁石は、磁石本体と、磁石本体を保持する金属のケースと、を有するとよい。
【0014】
また、本発明の保持部材では、磁石本体は、ベース部の第2面の法線方向から見て矩形状であり、ケースは、磁石本体の長辺方向と直交する方向の端面を覆っており、かつ、長辺方向の端面を覆っていないとよい。
上記の構成では、磁石の側面のうち、長辺方向の2つの端面を磁力が作用する面とすることができ、磁石の端面を用いて、保持部材を測定対象物に取り付けることができる。
【0015】
また、本発明の保持部材では、磁石を2個以上有するとよい。
上記の構成では、対象部材を保持した保持部材をより確実に測定対象物に取り付けることができる。
【0016】
また、本発明の保持部材では、磁石を2個有し、ベース部の幅方向の両端部に配置されるとよい。
上記の構成では、対象部材を保持した保持部材をより一層確実に測定対象物に取り付けることができる。
【0017】
また、本発明の保持部材では、磁石のそれぞれの長辺方向がベース部の幅方向と直交した第1の状態では、磁石の長辺方向の端面が、ベース部の、幅方向と交差する方向の端面と揃っており、磁石のそれぞれの長辺方向がベース部の幅方向と平行となる第2の状態では、磁石の長辺方向の端面が、ベース部の幅方向の端面と揃うとよい。
上記の構成では、磁石の、ベース部の端面と揃った側の端面を、確実に測定対象物に取り付けることができ、また、測定対象物に取り付け可能な端面を切り替えることができる。
【0018】
また、本発明の保持部材では、第1の状態では、磁石の短辺方向の端面が、ベース部の幅方向の端面よりも内側に位置するとよい。
上記の構成では、ベース部の端面と、磁石の短辺方向の端面との間に、他の保持部材の磁石を取り付けることができるため、複数の保持部材をより自由な組み合わせて用いることができ、測定対象物に対して、複数の対象部材を適切に取り付けることができる。
【0019】
また、本発明の保持部材では、ベース部および保持部の少なくとも一方が金属プレートで構成されているとよい。
上記の構成では、ベース部および保持部の少なくとも一方に他の保持部材の磁石を取り付けることができる。
【0020】
また、本発明の保持部材では、対象部材が、板状の標尺であるとよい。
上記の構成では、建築現場において、測定対象物の寸法を示すために測定対象物に標尺をあてた状態で撮影する際に、本発明の保持部材を有効に利用することができる。
【0021】
また、本発明の保持部材では、複数の標尺それぞれに保持部材が取り付けられた場合において、複数の前記標尺が互いに交差した状態で前記標尺を保持するとよい。
上記の構成では、測定対象物の寸法を示すために測定対象物に標尺をあてた状態で撮影する際に、測定対象物の形状等によらず、各標尺を保持した保持部材をそれぞれ自由な向きで測定対象物に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の保持部材は、従来品に比べて、標尺等の対象部材を保持した保持部材を自由な向きで測定対象物に取り付けることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の保持部材の一例を模式的に示す裏面図である。
図2図1に示す保持部材のA-A線断面図である。
図3図1に示す保持部材の正面図である。
図4図1に示す保持部材の第2の状態を示す裏面図である。
図5図4に示す第2の状態の保持部材のB-B線断面図である。
図6】本発明の保持部材を対象部材に取り付けた状態を模式的に示す正面斜視図である。
図7図6の裏面斜視図である。
図8】対象部材を保持した本発明の保持部材を測定対象物に取り付けた状態を模式的に示す斜視図である。
図9図8の裏面側の部分拡大図である。
図10】本発明の保持部材の取り付け状態の他の一例を示す図である。
図11】本発明の保持部材の取り付け状態の他の一例を示す図である。
図12】本発明の保持部材の取り付け状態の他の一例を示す図である。
図13】本発明の保持部材を複数組み合わせた状態の一例を示す図である。
図14】本発明の保持部材を複数組み合わせた状態の他の一例を示す図である。
図15】対象部材を保持した本発明の保持部材を測定対象物に取り付けた状態の他の例を模式的に示す斜視図である。
図16図15の領域Dの部分拡大図である。
図17】対象部材を保持した本発明の保持部材を測定対象物に取り付けた状態の他の例を模式的に示す斜視図である。
図18図17の領域Eの部分拡大図である。
図19図17の領域Eの部分拡大図の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、各図では、内部に隠れて外部から確認できない構造を、破線にて表している。
また、各図では、説明を分かり易くするために各部材を幾分簡略化及び模式化して図示しており、図中に示す各部材の寸法及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている場合がある。
また、以降に説明する各部材の位置、向き及び姿勢等は、特に断る場合を除き、各部材の使用されている状態にあるときの位置、向き及び姿勢等であることとする。
【0025】
また、以下の説明では、対象部材である標尺の延在方向と直交する方向を「幅方向」と呼ぶ。すなわち、対象部材を保持部材で保持した際の対象部材の幅方向を保持部材の「幅方向」と呼ぶ。
【0026】
[保持部材]
本発明に係る保持部材の構成について、図1図5を参照しながら、説明する。
【0027】
図1図3に示すように、本発明の保持部材10は、ベース部12、保持部16aおよび16b、2つの磁石14を有する。
【0028】
<ベース部>
ベース部12は、略長方形状の略板状の部材であり、互いに反対側に位置する最大面の一方を第1面13aとし、他方を第2面13bとすると、第1面13a側の幅方向(図2中、左右方向)の一方の端部に保持部16aが設けられ、他方の端部に保持部16bが設けられている。また、ベース部12の第2面13b側には、幅方向の両端部近傍それぞれに磁石14が設けられている。
【0029】
図2に示す例では、ベース部12は、第1面13aの幅方向の複数個所で屈曲されており、図2の断面で見た形状が第1面13a側に略凸状に形成されている。
【0030】
<保持部>
保持部16aおよび16bは、対象部材を保持するための部位であり、ベース部12の第1面13aの幅方向の両端部にそれぞれ形成されている。図示例では、一方の保持部16aは、略板状の部材を断面形状が略L字形状(図2参照)となるように屈曲されてなり、ベース部12の第1面13aの幅方向の一方の端部から立設するように配置されている。これにより、保持部16aは、ベース部12とともに断面形状が略C形状をなしている。
【0031】
他方の保持部16bは、略板状の部材を、ベース部12から離間した位置で断面形状が略V字形状(図2参照)となるように屈曲されてなり、ベース部12の第1面13aの幅方向の他方の端部から立設するように配置されている。
【0032】
図6および図7に示すように、保持部16aおよび保持部16bは、間に対象部材である標尺(スケール、アルミロッド、スタッフなどとも呼ばれる)50を挟持して標尺50を保持する。具体的には、図6および図7に示すように、保持部16aは、標尺50の幅方向(標尺50の長手方向と直交する方向)の一方の端部を、断面略C形状の部位に略嵌合させて、また、保持部16bは、標尺50の幅方向の他方の端部を断面略V字形状の部位の内側(ベース部12側)にて係止して、ベース部の幅方向の両端部側から対象部材を挟み込んで保持する。
【0033】
なお、ベース部12と保持部16aおよび16bとは、一体的に形成されていてもよい。すなわち、略長方形状の略板状の部材を適宜屈曲させて、ベース部12の両端部に、保持部16aおよび16bを形成してもよい。
【0034】
また、ベース部12および保持部16a、16bの少なくとも一方は金属プレートで形成されていることが好ましく、ベース部12および保持部16a、16bは金属プレートで形成されていることがより好ましい。これにより、複数の保持部材10を用いて複数の標尺50を配置する際に、保持部材10のベース部12および/または保持部16a、16bに他の保持部材10の磁石14をつけることができ、標尺等の対象部材を保持した保持部材をより自由な配置で測定対象物に取り付けることができる。この点については、後に詳述する。
【0035】
ベース部12および保持部16a、16bの形成材料としては、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、各種プラスチック等が適宜利用可能である。磁性を有する点で、鉄、鋼、SUS430等のステンレス等が好ましい。
【0036】
また、好ましい態様として、一方の保持部には、板ばねが配置されていてもよい。具体的には、図2および図3に示すように、板ばね18は、保持部16aの断面L字形状をなす2つの平板状の部位のうち、ベース部12に接する側の部位の、保持部16bと対面する面側に、この面に垂直な方向に付勢するように配置されている。これにより、保持部16aおよび保持部16bで標尺50を保持した際に、標尺50を保持部16b側に付勢して、保持部材10の取り付け位置が標尺50の長手方向に移動すること等を抑制して、標尺50をより確実に保持することができる。
【0037】
ベース部12の幅は、対象部材の幅に合わせて適宜設定すればよい。また、保持部16a、16bの形状等も、対象部材の厚み等に合わせて適宜設定すればよい。
【0038】
<磁石>
磁石14は、ベース部12の第2面13b側に、取り付け姿勢が切り替え可能に取り付けられている。具体的には、磁石14は、ベース部12の第2面13bの法線方向を軸として回転可能に取り付けられている。好ましい態様として、磁石14は第2面13bの法線方向から見て矩形状であり、矩形の中心位置でリベット24でベース部12に回転可能に取り付けられている。そのため、磁石14は、第2面13bの法線方向を軸として回転することができ、矩形の長辺方向の向きを変えることができる。以下の説明では、磁石をベース部の第2面の法線方向から見た際の長辺方向を、単に磁石の「長辺方向」といい、ベース部の第2面の法線方向から見た際の短辺方向を、単に磁石の「短辺方向」ともいう。
【0039】
また、図1~3に示す例では、保持部材10は、磁石14を2つ有し、ベース部12の幅方向の両端部近傍にそれぞれ配置されている。2つの磁石14はそれぞれ独立に、第2面13bの法線方向を軸として回転可能にベース部12に取り付けられている。
【0040】
ここで、本発明の保持部材10は、磁石14のそれぞれの長辺方向がベース部12の幅方向と直交した第1の状態では、磁石14の長辺方向の端面が、ベース部12の、幅方向と交差する方向の端面と揃っており、磁石14のそれぞれの長辺方向がベース部12の幅方向と平行となる第2の状態では、磁石14の長辺方向の端面が、ベース部12の幅方向の端面と揃う、のが好ましい。
【0041】
図1および図2は、保持部材10の第1の状態を示した図である。図1および図2に示すように、第1の状態において、磁石14のそれぞれの長辺方向がベース部12の幅方向と直交している。ここで、図示例においては、好ましい態様として、磁石14の長辺方向の長さは、ベース部12の幅方向と直交する方向の長さと略同じである。従って、図1に示すように、磁石14の長辺方向の両端面は、ベース部12の、幅方向と交差する方向の端面と面一に揃っている。
【0042】
また、磁石14を第2面13bの法線方向を軸として回転することで、図4および図5に示す、保持部材10の第2の状態とすることができる。第2の状態において、磁石14のそれぞれの長辺方向がベース部12の幅方向と平行になっている。ここで、図示例においては、好ましい態様として、磁石14の長辺方向の一方の端面は、ベース部12の幅方向の端面と面一に揃っている。すなわち、磁石14の回転中心から長手方向の端面までの長さ、すなわち、磁石14の長手方向の1/2の長さは、磁石14の回転中心からベース部12の幅方向の一方の端部までの距離に一致している。
【0043】
このように、本発明の保持部材10は、磁石14を回転させて、磁石14の長辺方向の端面が、ベース部12の、幅方向と交差する方向の端面と面一に揃っている第1の状態と、磁石14の長辺方向の端面が、ベース部12の幅方向の端面と面一に揃っている第2の状態とを切り替えることができるため、磁石14の、ベース部12の端面と揃った端面を、測定対象物に取り付けることができ、また、測定対象物に取り付け可能な端面を切り替えることができる。従って、標尺等の対象部材を保持した保持部材をより自由な向きで測定対象物に取り付けることができる。この点については後に詳述する。
【0044】
また、第1の状態では、磁石14の短辺方向の端面は、ベース部12の幅方向の端面よりも内側に位置する。同様に、第2の状態では、磁石14の端辺方向の端面は、ベース部12の、幅方向と交差する方向の端面よりも内側に位置する。これにより、ベース部12の端面と、磁石14の短辺方向の端面との間に、他の保持部材10の磁石14を取り付けることができるため、複数の保持部材10をより自由な組み合わせて用いることができ、測定対象物に対して、複数の対象部材を適切に取り付けることができる。この点については後に詳述する。
【0045】
なお、図示例においては、保持部材10は、2つの磁石14を有する構成としたが、これに限定はされず、保持部材10は、1つの磁石を有するものであってもよいし、3つ以上の磁石を有するものであってもよい。
【0046】
また、図示例においては、磁石14は、ベース部12の幅方向の端部近傍に配置される構成としたがこれに限定はされない。例えば、磁石14は、ベース部12の幅方向の略中央位置に配置されていてもよい。
【0047】
また、図示例においては、磁石14は、第2面13bの法線方向から見た磁石14の中心位置を軸として回転可能にベース部12に取り付けられる構成としたが、これに限定はされない。磁石14は、第2面13bの法線方向から見た磁石14の中心位置からズレた位置を軸として回転可能にベース部12に取り付けられる構成としてもよい。
【0048】
また、図示例においては、磁石14は、第2面13bの法線方向から見た形状が略矩形状としたがこれに限定はされず、正方形状、三角形状、多角形状等の種々の形状とすることができる。例えば、磁石14が正方形状の場合には、磁石14の回転軸を磁石14の中心位置からズレた位置とすることで、磁石14を回転して、磁石の取り付け姿勢を切り替え可能とすることができる。
【0049】
また、磁石14は、磁石本体と、磁石本体を保持する金属のケースと、を有することが好ましい。図示例においては、磁石14は、磁石本体20と、磁石本体20を保持するケース22と、磁石本体およびケース22をベース部12に回転可能に取り付けるリベット24と、を有する。
【0050】
磁石本体20は、好ましい態様として、ベース部12の第2面13bの法線方向から見て矩形状である。
【0051】
ケース22は、好ましい態様として、磁石本体20の、ベース部12の第2面13bの法線方向から見た長辺方向と直交する方向の端面を覆っており、かつ、長辺方向の端面を覆っていない。また、ケース22は、磁石本体20の、ベース部12側の面を覆っており、かつ、ベース部12側とは反対側の面を覆っていない。すなわち、ケース22は、長辺方向に垂直な断面が略C形状の部材である。
【0052】
磁石本体20の一部の面をケース22で覆うことで、磁力の作用を低減できるため、磁石14のある面では、磁力が作用し、他の面では磁力が弱いものとすることができる。これにより、磁石14の側面のうち、磁力が作用する面(長辺方向の2つの端面)を用いて、保持部材を測定対象物に取り付けることができる。他方、磁石14の側面のうち、磁力が作用しない面は、この面、あるいは、この面に近い位置のベース部12に対して、他の保持部材の磁石をつける際に、磁石同士が反発してしまうことを防止できる。従って、複数の保持部材10をより自由な組み合わせて用いることができ、測定対象物に対して、複数の対象部材を適切に取り付けることができる。この点については後に詳述する。
【0053】
また、磁石本体20の磁力は、対象部材を保持した保持部材を測定対象物に取り付けた際に、保持部材(対象部材)の姿勢を維持するのに十分な磁力を有し、かつ、保持部材を測定対象物から取り外すことが容易な程度の磁力であることが望ましい。
【0054】
[本発明の保持部材の使用形態の例]
以下、本発明の保持部材の使用形態の例について、図8図19を用いて説明する。
【0055】
図8は、本発明の保持部材を鉄筋工事の配筋検査に用いる際の例である。
図8に示すように、複数の鉄筋100が、図8中の上下方向、および左右方向に間隔をあけて配筋されている。図8は、この配筋された鉄筋100同士の間隔が所定の間隔であるか否かを示すために、薄板状の標尺(スケール)を検査対象の鉄筋100にあてた状態で、その鉄筋100と標尺を撮影する様子を示している。この図に示すように、本発明の保持部材10で標尺50を保持し、保持部材10は、磁石14によって鉄筋100に取り付けられている。
【0056】
図6および図7に示すように、保持部材10で標尺50を保持し、保持部材10の第2面13b側、すなわち、磁石14側を鉄筋100に向けて、磁石14で鉄筋100に取り付ける。図8に示す例では、2つの標尺50を2つの保持部材10を用いてそれぞれ鉄筋100に取り付けている。2つの標尺50は、それぞれ、配筋された鉄筋100の間隔が標尺50によって特定できるように、長手方向が鉄筋100の配列方向と略平行になるように取り付けられる。すなわち、一方の標尺50は、長手方向が図8中、左右方向に平行になるように取り付けられている。この場合、保持部材10は、その幅方向が図8中の上下方向に向いているため、図8中の上下方向に延在する鉄筋100に取り付けられている。また、他方の標尺50は、長手方向が図8中上下方向に平行になるように取り付けられている。この場合、保持部材10は、その幅方向が図8中の左右方向に向いているため、図8中の左右方向に延在する鉄筋100に取り付けられている。保持部材10を用いることで、標尺50を測定対象物に容易に取り付け取り外しすることができ、また、標尺50の転倒等を防止できる。また、標尺50の目盛りゼロの位置を測定対象物の端部に合わせて容易に配置することができる。
【0057】
図9に、図8の保持部材10の取り付け位置を第2面側から見た図を示す。
図9に示すように、細長い鉄筋100に保持部材10を取り付ける際には、磁石14の長手方向の向きを、鉄筋100の延在方向と一致するように回転して、この状態(第2の状態)で鉄筋100に取り付ける。これにより、磁石14と鉄筋100との接触面積を増やすことができるため、標尺50を保持した保持部材10を、より確実に鉄筋100に取り付けることができる。
【0058】
また、図8および図9に示す例では、鉄筋100が、その延在方向と直交する方向に配筋されていたが、例えば、鉄筋100の延在方向と、配筋方向とが直交関係にない場合には、図10に示すように、標尺50の長手方向を鉄筋100の配筋方向(図10中、上下方向)と略平行にして、磁石14の長手方向を鉄筋100の延在方向(図10中、左下から右上方向)と略平行にすればよい。すなわち、保持部材10は、上述した第1の状態および第2の状態で用いる構成に限定はされず、磁石14の長手方向が、ベース部12の幅方向に対して平行でなく、かつ、直交していない状態で用いてもよい。
【0059】
また、図8図10に示す例では、磁石14のベース部12と対面する面とは反対側の面を、測定対象物(鉄筋)に取り付ける構成としたがこれに限定はされない。磁石14の端面(ベース部12と対面する面と接する面)を測定対象物(鉄筋等)に取り付ける構成としてもよい。
【0060】
具体的には、例えば、磁石14の長辺方向がベース部12の幅方向と平行となる第2の状態で、磁石14の長辺方向の端面が、ベース部12の幅方向の端面と面一に揃っている場合には、図11に示すように、保持部材10の磁石14の長辺方向の端面を測定対象物102(例えば、鋼製の柱材等)に取り付けることで、標尺50を測定対象物の取り付け面に対して略垂直に立てた状態で保持することができる。
【0061】
また、例えば、磁石14の長辺方向がベース部12の幅方向と直交となる第1の状態で、磁石14の長辺方向の端面が、ベース部12の幅方向と交差する方向の端面と面一に揃っている場合には、図12に示すように、標尺50の端部を保持部材10で保持して、保持部材10の磁石14の長辺方向の端面を測定対象物104(例えば、金属製の額縁状部材)に取り付けることで、標尺50を測定対象物の取り付け面に対して略垂直に立てた状態で保持することができる。
【0062】
また、図12に示す例では、測定対象物104が額縁状部材で内側の角部を構成する略直交する2つの面を有しており、このうちの一面に磁石14の長辺方向の端面を取り付け、磁石14を取り付けた面と接する面に標尺50の長手方向が沿うように配置されている。
【0063】
また、本発明の保持部材を複数用いて、複数の標尺のそれぞれに保持部材を一つずつ取り付け、複数の標尺が互いに交差した状態で、各保持部材により標尺を保持してもよい。すなわち、複数の保持部材10を用いて、各保持部材10が標尺50を保持して、標尺50を互いに交差した状態で保持するように、複数の保持部材10を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
例えば、図13に示すように、2つの保持部材のうちの一方の保持部材10aの磁石14aを長辺方向がベース部12aの幅方向と直交した第1の状態とし、他方の保持部材10bの磁石14bを長辺方向がベース部12bの幅方向と平行な第2の状態として、保持部材10aの一方の磁石14aとベース部12aの幅方向の端辺との間の領域に、他方の保持部材10bの一方の磁石14bの長辺方向の端面を取り付けて用いてもよい。
図13は、2つの保持部材10a、10bを組み合わせて用いた例を示し、標尺の延在方向から2つの保持部材10a、10bを見た図である。なお、図13においては、標尺の図示は省略している。
【0065】
また、例えば、図14に示すように、2つの保持部材のうちの一方の保持部材10aの磁石14aを長辺方向がベース部12aの幅方向と直交した第1の状態とし、他方の保持部材10bの磁石14bを長辺方向がベース部12bの幅方向と平行な第2の状態として、保持部材10bの磁石14bとベース部12bの幅方向と直交する方向の端辺との間の領域に、他方の保持部材10aの磁石14aの長辺方向の端面を取り付けて用いてもよい。これにより、2つの標尺50aおよび50bを交差させた状態で保持することができる。
図14は、2つの保持部材10a、10bを組み合わせて用いた例を示す図、その使用例を示す斜視図である。
【0066】
また、クロスロッドの一方の標尺と、クロスロッドとは別の標尺とをそれぞれ別の保持部材で保持して2つの標尺を交差させた状態で保持する構成としてもよい。これにより、3つの標尺の長手方向を互いに直交する3方向それぞれに向けて保持することができるため、標尺を3次元的に測定対象物にあてた状態に保持することができ、測定対象物の3方向の寸法を1枚の写真に収めることができる。クロスロッドとは、2つの標尺を長手方向が略直交した状態で金具52で保持した従来公知のものである。
【0067】
図15に、対象部材を保持した本発明の保持部材を測定対象物に取り付けた状態を模式的に示す斜視図を示す。図16に、図15の破線で囲んだ領域Dの部分拡大図を示す。
【0068】
例えば、図15に示す例は、鉄筋工事の配筋検査に用いる際の例である。
図15に示す例は、図中、X方向に延在する鉄筋100が、Y方向およびZ方向に配筋され、Y方向に延在する鉄筋100が、X方向およびZ方向に配筋され、Z方向に延在する鉄筋100がX方向およびY方向に配筋されており、X方向、Y方向、および、Z方向それぞれにおける鉄筋100の間隔が適切か否かを標尺を当てた状態で撮影する場合の例である。なお、図15においては、表面に配筋される鉄筋100のみを図示している。
【0069】
図15に示すように、クロスロッドを構成する2つの標尺のうち、長手方向がZ方向となるように取り付けられる標尺50cに保持部材10cを取り付けて、また、クロスロッドとは別の標尺50eに保持部材10eを取り付けて、図16に示すように、保持部材10eの磁石14eを保持部材10cに取り付けることで、3つの標尺50c、標尺50dおよび50eを互いに交差させた状態で保持して、標尺50dをX方向に、標尺50cをZ方向に、標尺50eをY方向に沿わせて保持することができる。なお、図16における保持部材10cと保持部材10eとの取付状態は図14に示す例と同様である。
【0070】
なお、図15に示す例では、クロスロッドを構成する2つの標尺をそれぞれX方向およびZ方向に配置する構成としたがこれに限定はされず、クロスロッドを構成する2つの標尺をそれぞれX方向およびY方向に配置する構成としてもよく、あるいは、クロスロッドを構成する2つの標尺をそれぞれY方向およびZ方向に配置する構成としてもよい。
【0071】
また、図15に示す例では、クロスロッドを構成する2つの標尺のうち、長手方向がZ方向となるように取り付けられる標尺50cに保持部材10cを取り付けて、この保持部材10cに、別の標尺50eを保持する保持部材10eを取り付ける構成としたがこれに限定はされない。
【0072】
図17に示す例は、クロスロッドを構成する2つの標尺のうち、長手方向がX方向となるように取り付けられる標尺50dに保持部材10dを取り付けて、この保持部材10dに、別の標尺50eを保持する保持部材10eを取り付けた例である。
【0073】
図17に示す例も、鉄筋工事の配筋検査に用いる際の例であり、図中、X方向に延在する鉄筋100が、Y方向およびZ方向に配筋され、Y方向に延在する鉄筋100が、X方向およびZ方向に配筋され、Z方向に延在する鉄筋100がX方向およびY方向に配筋されており、X方向、Y方向、および、Z方向それぞれにおける鉄筋100の間隔が適切か否かを標尺を当てた状態で撮影する場合の例である。
【0074】
図17に示すように、クロスロッドを構成する2つの標尺のうち、一方の標尺50cは、長手方向がZ方向となるように取り付けられており、他方の標尺50dは、長手方向がX方向となるように取り付けられている。また、別の標尺50eは、長手方向がY方向となるように取り付けられている。
【0075】
X方向に配置される標尺50dには保持部材10dが取り付けられており、また、Y方向に配置される標尺50eには保持部材10eが取り付けられており、保持部材10dと保持部材10eとが磁石14eにより取り付けられている。
【0076】
図18および図19に、図17における保持部材同士の取付位置(図17の領域E)の部分拡大図を示す。
図18に示すように、保持部材10eの磁石14eを上述した第1の状態とし、保持部材10dの磁石とベース部の幅方向の端辺との間の領域に、保持部材10eの磁石14eの長辺方向の端面を取り付ける構成とすればよい。
【0077】
あるいは、図19に示すように、保持部材10eの磁石14eを、保持部材10dのベース部の幅方向の端面(保持部)に取り付ける構成としてもよい。
【0078】
図15および図17に示す例では、3本の標尺を、本発明の保持部材、および、クロスロッド用の金具を用いて互いに取り付ける構成としたがこれに限定はされず、4本以上の標尺を、本発明の保持部材、および、クロスロッド用の金具を用いて互いに取り付ける構成としてもよい。
【0079】
また、図15および図17に示す例では、3本の標尺を長手方向がそれぞれ、X方向、Y方向、および、Z方向になるように配置するものとしたがこれに限定はされず、各標尺の長手方向の向きはそれぞれ所望の方向とすることができる。すなわち、各標尺は長手方向が互いに直交するように配置される構成に限定はされず、標尺の長手方向同士が成す角度が90°未満となるように配置してもよい。
【0080】
また、図15および図17に示す例では、測定対象物が配筋された鉄筋の例を示したが、前述のとおり、測定対象物はこれに限定はされず、鉄骨、コンクリートブロック等であってもよい。測定対象部材がコンクリートブロックである場合には、コンクリートブロックの表面に表出している鉄筋、あるいは、フカシ筋等に保持部材の磁石を取り付けることでより安定して取り付けることができる。
【符号の説明】
【0081】
10、10a~10e 保持部材
12、12a、12b ベース部
13a 第1面
13b 第2面
14、14a、14b、14e 磁石
16、16a、16b 保持部
18 板ばね
20 磁石本体
22 ケース
24 リベット
50、50a~50e 標尺(対象部材)
100 鉄筋(測定対象物)
102、104 測定対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19