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  • 特開-スパッタ計測システム 図1
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  • 特開-スパッタ計測システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164985
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】スパッタ計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G01B11/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080762
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
(72)【発明者】
【氏名】坂元 明
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA12
2F065AA21
2F065AA53
2F065CC15
2F065FF04
2F065HH04
2F065HH14
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL59
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】スパッタの自発光量が少ない場合であっても、当該スパッタのサイズを精度よく計測する。
【解決手段】溶融部(6)を含む観察領域の画像を撮影するカメラ(30)と、カメラ(30)から視て観察領域の側面に向けてスポット光(21R,21L)を照射するスポット光源(10R、10L)と、カメラ(30)によって撮影された画像に基づいてスパッタ(7)の大きさを計測する制御装置(100)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接時に溶融する溶融部から飛散するスパッタの大きさを測定するスパッタ計測システムであって、
前記溶融部を含む観察領域の画像を撮影するカメラと、
前記カメラから視て前記観察領域の側面側から前記観察領域に向けてスポット光を照射するスポット光源と、
前記カメラによって撮影された画像に基づいて前記スパッタの大きさを計測する制御装置と、を備えるスパッタ計測システム。
【請求項2】
前記溶融部と前記カメラとの間に配置されたテレセントリックレンズをさらに備える、請求項1に記載のスパッタ計測システム。
【請求項3】
前記溶融部の位置は、前記テレセントリックレンズの被写界深度範囲に含まれており、
前記溶融部と前記スポット光源との間に配置され、前記スポット光の照射範囲を前記テレセントリックレンズの被写界深度範囲に合わせるためのスリットを有する部材をさらに備える、請求項2に記載のスパッタ計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接時に発生するスパッタを計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の溶接時には、溶接時に溶融する溶融部の表面から、液滴状の溶融金属粒(スパッタ)が飛散する現象が生じる場合がある。スパッタは溶接後の製品品質を落とす場合があるため、スパッタの発生を抑えることが望ましい。そのためには、まず、スパッタの発生を計測することが望まれる。
【0003】
スパッタの発生を計測する装置の一例として、たとえば特開2019-188421号公報(特許文献1)には、溶接時に溶接部分をカメラで撮影して得られたデータを画像処理することによって、スパッタの数を計測することができる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-188421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶融部から飛散するスパッタのなかには、自発光量の多いスパッタだけでなく、自発光量の少ないスパッタも含まれる。そのため、単純にカメラでスパッタを撮影しただけでは、溶融部から飛散するスパッタのうちの、自発光量の少ないスパッタの画像を撮影できず、当該スパッタおよびそのサイズを計測できない場合がある。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、スパッタの自発光量が少ない場合であっても、当該スパッタのサイズを精度よく計測することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第1項) 本開示によるスパッタ計測システムは、溶接時に溶融する溶融部から飛散するスパッタの大きさを測定するスパッタ計測システムであって、溶融部を含む観察領域の画像を撮影するカメラと、カメラから視て観察領域の側面側から観察領域に向けてスポット光を照射するスポット光源と、カメラによって撮影された画像に基づいてスパッタの大きさを計測する制御装置と、を備える。
【0008】
(第2項) 第1項に記載のスパッタ計測システムにおいて、溶融部とカメラとの間に配置されたテレセントリックレンズをさらに備える。
【0009】
(第3項) 第2項に記載のスパッタ計測システムにおいて、溶融部の位置は、テレセントリックレンズの被写界深度範囲に含まれており、溶融部とスポット光源との間に配置され、スポット光の照射範囲をテレセントリックレンズの被写界深度範囲に合わせるためのスリットを有する部材をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、スパッタの自発光量が少ない場合であっても、当該スパッタのサイズを精度よく計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】スパッタ計測システムの全体構成の一例を概略的に示す図である。
図2】スパッタの計測原理を模式的に示す図(その1)である。
図3】カメラによって撮影される観察領域の画像の一例を示す図である。
図4】スパッタの計測原理を模式的に示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[システム構成]
図1は、本実施の形態によるスパッタ計測システム1の全体構成の一例を概略的に示す図である。金属製の母材2,3は、図示しないレーザ発生装置から発せられる加工用のレーザ光5によって溶接される。溶接時にレーザ光5が照射される箇所は、溶融して溶融部6となる。レーザ発生装置を溶接進行方向(図中のY方向)に移動させることによって、図中のY方向に延在する溶接ビードが形成される。なお、図中、Y方向は上述の溶接進行方向を示し、Z方向は母材2,3の法線方向を示し、X方向はY方向およびZ方向に直交する方向を示す。
【0013】
母材2,3の溶接時には、溶融部6からスパッタ7が飛散する場合がある。スパッタ7は、溶接後の製品の品質を落とす場合がある。たとえば、蓄電池のセル端子とバスバーとを配線するための溶接である場合、スパッタ7が飛散すると、周辺に配置された配線を覆う樹脂被膜材をスパッタ7が侵して配線を短絡あるいは断線させたり、周辺に配置された基板の溶接ピン間にスパッタ7が付着して基板の回路を短絡させたりする要因となり得る。そのため、スパッタ7自体の発生を抑える、あるいは、スパッタ7が発生しても問題とならないことを確認しておくことが望ましい。そのためには、まず、スパッタの発生を計測することが望まれる。
【0014】
このような点に鑑み、本実施の形態によるスパッタ計測システム1は、溶融部6から飛散するスパッタ7の大きさ(寸法)を計測するように構成される。具体的には、スパッタ計測システム1は、スポット光源10R,10Lと、カメラ30と、テレセントリックレンズ40と、制御装置100とを備える。
【0015】
カメラ30は、レーザ光5によって溶融する溶融部6を含む観察領域の画像を高速撮影する。カメラ30は、撮影によって得られた画像データを制御装置100に出力する。なお、カメラ30から視て観察領域の背面側には、光を反射しない暗幕4が配置されている。
【0016】
テレセントリックレンズ40は、溶融部6とカメラ30との間の光路に配置される。テレセントリックレンズ40は、通常のレンズとは異なり、主光軸がレンズの光軸に対して平行な光を作り出すことができる特殊なレンズである。テレセントリックレンズ40は、その光学特性上、カメラ30と被写体との距離が変化しても被写体画像の大きさが変化しない領域(以下「被写界深度領域R1」とも称する)を有する。そのため、テレセントリックレンズ40を介してカメラ30で被写体であるスパッタ7を撮影することで、スパッタ7がテレセントリックレンズ40の被写界深度領域R1に含まれる限り、スパッタ7の位置に関係なく(スパッタ7の位置が飛散によって焦点位置からずれても)スパッタ7の画像の大きさは変化せず、また、視差による画像の歪みも生じない。
【0017】
溶融部6から飛散するスパッタのなかには、自発光量の多いスパッタだけでなく、自発光量の少ないスパッタも含まれる。そのため、単純にカメラ30でスパッタ7を撮影しただけでは、溶融部6から飛散するスパッタ7のうちの、自発光量の少ないスパッタの画像を撮影できず、当該スパッタおよびそのサイズを計測できない場合がある。
【0018】
このような点に鑑み、本実施の形態によるスパッタ計測システム1には、スポット光源10R,10Lが備えられている。スポット光源10R,10Lは、スパッタ観測用の照明光として、円錐状に広がるスポット光を発する。スポット光源10R,10Lは、溶融部6を挟んで互いに向き合う位置に配置される。
【0019】
スポット光源10Rは、カメラ30から視て、溶融部6を含む観察領域の右の側面に向けてスポット光を発する。具体的には、スポット光源10Rは、制御装置100からの指令によって高輝度の光を発生する光源11Rと、光源11Rが発生する光をスポット光にして溶融部6に向けて発する光源用レンズ12Rとを含む。光源用レンズ12Rの光軸は、カメラ30の光軸と直交する。
【0020】
スポット光源10Lは、カメラ30から視て、溶融部6を含む観察領域の左の側面に向けてスポット光を発する。具体的には、スポット光源10Lは、制御装置100からの指令によって高輝度の光を発生する光源11Lと、光源11Lが発生する光をスポット光にして溶融部6に向けて発する光源用レンズ12Lとを含む。光源用レンズ12Lの光軸は、カメラ30の光軸と直交する。
【0021】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のメモリとを含む。制御装置100は、母材2,3の溶接時に、スポット光源10R,10Lを作動させて溶融部6を含む観察領域を側面からスポット光で照らし、その状態でカメラ30によって撮影された画像データに基づいて、溶融部6から飛散するスパッタ7の大きさを計測する。
【0022】
図2は、スパッタ計測システム1によるスパッタ7の計測原理を模式的に示す図である。スパッタ7の計測は、母材2,3の溶接中にインプロセスで行なわれる。
【0023】
カメラ30によって撮影される観察領域には、テレセントリックレンズ40の被写界深度領域R1と、被写界深度領域R1よりもカメラ30から遠い遠隔領域R2と、被写界深度領域R1よりもカメラ30に近い近接領域R3とが含まれる。なお、被写界深度領域R1は、焦点位置から数mm以内の範囲である。
【0024】
スパッタ7の計測中においては、溶融部6がテレセントリックレンズ40の被写界深度領域R1に含まれるように、溶融部6とテレセントリックレンズ40とのY方向の相対位置が調整される。さらに、スポット光21R、21Lが溶融部6を含む観察領域を照らすように、溶融部6と光源用レンズ12R,12LとのY方向の相対位置が調整される。さらに、本実施の形態においては、スポット光21R、21Lの照射範囲が被写界深度領域R1にほぼ合致するように、溶融部6と光源用レンズ12R,12LとのX方向の相対位置、あるいはスポット光21R、21Lの照射角度(広がり)が調整される。
【0025】
観察領域にスパッタ7が存在しない場合、スポット光21R、21Lによって照らされる対象物が観察領域に存在せずカメラ30によって暗幕4のみが撮影されるため、観察領域の画像全体が暗点となる。
【0026】
一方、テレセントリックレンズ40の被写界深度領域R1にスパッタ7が存在する場合、スパッタ7の左右の側面にスポット光21R、21Lがそれぞれ照射される。これにより、スパッタ7の左右の側面に拡散光(散乱光)が発生し、その拡散光のうちのテレセントリックレンズ40を通過する平行光がカメラ30で撮影される。そのため、スパッタ7の左右の側面形状が輝点として撮影される。すなわち、本実施の形態では、計測対象であるスパッタ7の側面にスポット光21R,21Lを照らすことで、スパッタ7の左右の側面形状をカメラ30で撮像する。制御装置100は、カメラ30で撮影されたスパッタ7の側面形状から、スパッタ7の大きさを計測する。その結果、スパッタ7の自発光量が少ない場合であっても、当該スパッタ7およびそのサイズを精度よく計測することができる。
【0027】
図3は、カメラ30によって撮影される観察領域の画像の一例を示す図である。観察領域の画像に含まれる輝点部7R,7Lは、被写界深度領域R1内に存在するスパッタ7の右側および左側のエッジ形状の画像である。制御装置100は、輝点部7R,7Lの形状からスパッタ7全体の形状を推定し、推定された全体形状からスパッタ7の大きさ(寸法)を計測する。
【0028】
スパッタ7がテレセントリックレンズ40の被写界深度領域R1内に存在する場合、スパッタの計測サイズは、スパッタの遠近に関係なくほぼ一定となる。したがって、スパッタ7が被写界深度領域R1に存在する限り、スパッタ7が飛散によって移動しても、スパッタ7の大きさ(寸法)を精度よく計測することができる。
【0029】
図2に戻って、スパッタが遠隔領域R2内あるいは近接領域R3内に存在する場合、スパッタの画像の大きさは、スパッタの遠近(カメラ30までの距離)によって変化してしまい、スパッタの大きさを正確に計測することが難しくなる。
【0030】
この点に鑑み、本実施の形態においては、上述のように、スポット光21R、21Lの照射範囲が被写界深度領域R1にほぼ合致するように調整されている。そのため、遠隔領域R2および近接領域R3にあるスパッタは、スポット光21R、21Lによって照らされないため、観察領域の画像には映らない。これにより、遠近によって画像の大きさが変化する遠隔領域R2および近接領域R3に存在するスパッタ7は、寸法計測の対象から除外される。そのため、スパッタ7の計測精度が低下することが抑制される。
【0031】
以上のように、本実施の形態によるスパッタ計測システム1においては、スパッタ7の側面にスポット光21R,21Lを照射してスパッタ7の側面に拡散光(散乱光)を発生させ、その拡散光をカメラ30で撮影することで、スパッタ7の側面形状を計測し、計測されたスパッタの側面形状からスパッタの大きさを計測する。その結果、スパッタ7の自発光量が少ない場合であっても、当該スパッタ7のサイズを計測できる。
【0032】
さらに、本実施の形態によるスパッタ計測システム1においては、溶融部6とカメラ30との間に、テレセントリックレンズ40が配置される。そのため、スパッタの遠近に関係なく、スパッタの大きさを精度よく計測できる。
【0033】
[変形例1]
上述の実施の形態においては、溶融部6と光源用レンズ12R,12LとのX方向の相対位置あるいはスポット光21R、21Lの照射角度を調整することによって、スポット光21R、21Lの照射範囲を被写界深度領域R1に合致させている。しかしながら、スポット光21R、21Lの照射範囲を被写界深度領域R1に合致させる手法は、このような手法に限定されない。
【0034】
図4は、本変形例1によるスパッタ計測システム1Aによるスパッタ7の計測原理を模式的に示す図である。スパッタ計測システム1Aは、上述の図1に示すスパッタ計測システム1に対して、スリット板50R,50Lを追加したものである。
【0035】
スリット板50Rは、溶融部6と光源用レンズ12Rとの間に配置され、スポット光21Rの照射範囲をテレセントリックレンズ40の被写界深度領域R1に合わせるためのスリット51Rを有する。
【0036】
スリット板50Lは、溶融部6と光源用レンズ12Lの間に配置され、スポット光21Lの照射範囲をテレセントリックレンズ40の被写界深度領域R1に合わせるためのスリット51Lを有する。
【0037】
このように、溶融部6と光源用レンズ12R,12Lとの間にスリット板50R,50Lを配置することによって、スポット光21R、21Lの照射範囲を被写界深度領域R1に合致させるようにしてもよい。
【0038】
[変形例2]
上述の実施の形態においては左右の2つのスポット光源10R,10Lでスパッタの左右の側面を照らしたが、1つのスポット光源でスパッタの左右のどちらか一方の側面を照らすようにしてもよい。このようにしても、スパッタの左右のどちらか一方の側面の形状を計測し、計測された側面形状からスパッタ7全体の形状を推定し、推定された全体形状からスパッタ7の大きさを計測することができる。
【0039】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0040】
1,1A スパッタ計測システム、2,3 母材、4 暗幕、5 レーザ光、6 溶融部、7 スパッタ、7L,7R 輝点部、10L,10R スポット光源、11L,11R 光源、12L,12R 光源用レンズ、21L,21R スポット光、30 カメラ、40 テレセントリックレンズ、50L,50R スリット板、51L,51R スリット、100 制御装置、R1 被写界深度領域、R2 遠隔領域、R3 近接領域。
図1
図2
図3
図4