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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024164992
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】バッチ式ロータリーキルン
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/16 20060101AFI20241121BHJP
   F27B 7/08 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F27B7/16
F27B7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080779
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】596059738
【氏名又は名称】株式会社島川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彰
【テーマコード(参考)】
4K061
【Fターム(参考)】
4K061AA08
4K061CA02
4K061CA29
4K061EA07
4K061GA02
(57)【要約】
【課題】バッチ式ロータリーキルンでは、被処理物を取り出す際に、レトルト自体を傾けるとレトルトが長い場合、重い場合は装置自体が大型化するという課題があった。
【解決手段】一端側に原料投入口が設けられ、他端側は塞がれた筒状のレトルトと、
前記レトルトの前記他端側に設けられ、前記レトルトの内壁全周から前記レトルトの中心軸に向かって所定以上の高さを有する端壁と、
前記レトルトの内壁に接続して設けられた順螺旋羽根と、
前記レトルトを外部から加熱する加熱器と、
前記レトルトを回転させる回転装置と、
前記回転装置による前記レトルトの回転方向を制御する制御器とを有するバッチ式ロータリーキルンは、螺旋羽根を逆転するだけで被処理物を取り出すことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に原料投入口が設けられ、他端側は塞がれた筒状のレトルトと、
前記レトルトの前記他端側に設けられ、前記レトルトの内壁全周から前記レトルトの中心軸に向かって所定以上の高さを有する端壁と、
前記レトルトの内壁に接続して設けられた順螺旋羽根と、
前記レトルトを外部から加熱する加熱器と、
前記レトルトを回転させる回転装置と、
前記回転装置による前記レトルトの回転方向を制御する制御器とを有するバッチ式ロータリーキルン。
【請求項2】
前記順螺旋羽根より前記レトルトの前記中心軸側に前記順螺旋羽根とは巻き方向が逆の逆螺旋羽根が設けられた請求項1に記載されたバッチ式ロータリーキルン。
【請求項3】
前記順螺旋羽根は、2枚以上設けられている請求項2に記載されたバッチ式ロータリーキルン。
【請求項4】
前記逆螺旋羽根は、2枚以上設けられている請求項2に記載されたバッチ式ロータリーキルン。
【請求項5】
前記順螺旋羽根の羽根幅は前記一端側より他端側が狭く、前記逆螺旋羽根の羽根幅は前記一端側より他端側が広い請求項2乃至4の何れか一の請求項に記載されたバッチ式ロータリーキルン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒体や粉体の熱処理を施すバッチ式ロータリーキルンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリーキルンは、レトルトと呼ばれる筒状体の中央部を外部から加熱しつつ回転させ、一端から被処理物を投入し、他端から被処理物を取り出すことで被処理物に熱処理を施す装置である。このように一端から被処理物が投入され、他端から取り出すタイプのものは流動式ロータリーキルンなどと呼ばれる。
【0003】
一方、他端は密閉若しくはそれに近い状態にし、一端から被処理物を投入し、熱処理後、同じく一端から処理後物を取り出すものは、バッチ式ロータリーキルンなどと呼ばれる。バッチ式ロータリーキルンは、内部雰囲気をより高精度に制御することができるといった特徴がある。
【0004】
その反面、バッチ式ロータリーキルンは、他端がほぼ密閉状態にあるので、被処理物は、投入されたのと同じ一端から取り出す必要がある。
【0005】
被処理物の取り出し方法に関して、特許文献1には、内部を真空にできるバッチ式ロータリーキルンが開示されている。これは、レトルト中央部が軸で支えられており、ハンドルを回転させることでレトルト全体が傾き、一端を下にすることで処理物を取り出すことができる。
【0006】
特許文献2には、周知のバーナー直熱バッチ式ロータリーキルンをバーナー側を上にして傾斜して設置し、排気側垂直壁を厚くし、その中にキルン内壁に沿って螺旋状の処理品排出穴を、半周くらいで垂直壁の外面に出るように設け、レトルトを逆回転させることで処理品排出穴から被処理物を取り出す方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02-309181号公報
【特許文献2】特開2001-108373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のように、レトルト自体を傾けて、被処理物を取り出すのは、レトルト自体が短い場合は有効であるが、レトルト自体が長くなったり、重くなってしまうと、現実的ではなくなる。
【0009】
また、特許文献2のように、取り出し側の蓋を分厚くしたり、取り出し側に予め傾けてレトルトを配置させるのは、装置自体の載置バランスが悪くなるといった課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、レトルトは、水平に置いたまま被処理物を一端から他端に向かって移送させることができ、また一端側から排出させることができるバッチ式ロータリーキルンを提供する。
【0011】
より具体的に本発明に係るバッチ式ロータリーキルンは、
一端側に原料投入口が設けられ、他端側は塞がれた筒状のレトルトと、
前記レトルトの前記他端側に設けられ、前記レトルトの内壁全周から前記レトルトの中心軸に向かって所定以上の高さを有する端壁と、
前記レトルトの内壁に接続して設けられた順螺旋羽根と、
前記レトルトを外部から加熱する加熱器と、
前記レトルトを回転させる回転装置と、
前記回転装置による前記レトルトの回転方向を制御する制御器とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るバッチ式ロータリーキルンは、レトルトの内壁に螺旋羽根を設けたので、レトルトを回転させることで、一端側から投入した被処理物をレトルト内部に移送させることができ、レトルトを逆回転させると被処理物を一端側から取り出すことができる。この際レトルトは、水平に載置しておくことができるので、装置自体を安定に載置することができる。
【0013】
また螺旋羽根の内側に逆螺旋羽根を設けたので、レトルトの奥まで到達した被処理物は、その一部が逆螺旋羽根によって、入口側(一端側)に戻されるので、被処理物はほどよく攪拌されながら熱処理を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るバッチ式ロータリーキルンの構成を示す図である。
図2】レトルト内に配置する螺旋羽根の斜視図(図2(a))とレトルト内に配置した際の透視図(図2(b))である。
図3】レトルト内の詳細図である。
図4】レトルトが回転した際の螺旋羽根の動きを示す図である。図4(a)は第一螺旋羽根だけの場合、図4(b)は逆螺旋羽根が加わった際の動き、図4(c)は、第一螺旋羽根と逆螺旋羽根がすれ違った際の状態を示す図である。
図5】被処理物がある場合にレトルトが回転した際の螺旋羽根の動きを示す図である。図5(a)は第一螺旋羽根だけの場合、図5(b)は逆螺旋羽根が加わった際の動き、図5(c)は、第一螺旋羽根と逆螺旋羽根がすれ違い、第一螺旋羽根より上に盛り上がった被処理物を手前側に戻した状態を示す図である。
図6】第二螺旋羽根を加えた際の図である。図6(a)は斜視図、図6(b)は側面図、図6(c)は第一螺旋羽根と逆螺旋羽根だけの場合の再掲、図6(d)は図6(c)の側面図である。
図7】さらに第三螺旋羽根を加えた図である。図7(a)は第三螺旋羽根を、図7(b)は第二螺旋羽根を、図7(c)は第一螺旋羽根を黒く表示したものである。
図8】奥側の第一螺旋羽根の羽根幅が小さくなる場合の例を示す図である。
図9】手前側から奥側に向かって第一螺旋羽根の羽根幅が徐々に狭くなる場合を示す図である。図9(a)は斜視図、図9(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係るバッチ式ロータリーキルンについて図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0016】
図1に本発明に係るバッチ式ロータリーキルン1の構成を示す。バッチ式ロータリーキルン1は、レトルト10、回転装置40、加熱器30および制御器50を有する。レトルト10は断面円形の筒形状で、一端は開放されており、他端は閉じられている。以降開放されている一端側を「手前側」、閉じられた他端側を「奥側」とも呼ぶ。
【0017】
レトルト10は、その下方を回転装置40で支持されている。回転装置40は、手前側支持ロール38、奥側支持ロール32、モータ36で構成されている。手前側支持ロール38と奥側支持ロール32が直接レトルト10を支持している。図1では、奥側支持ロール32は2連になっており、レトルト10の奥側に設けられた嵌合用突起10aを挟むように支持し、レトルト10が手前側若しくは奥側に移動しすぎないようにしている。
【0018】
奥側支持ロール32の回転軸にはギア32aが設けられている。そして、支持台42内に配置されたモータ36の軸に設けられたギア36aと奥側支持ロール32の回転軸のギア32aの間がチェーン34を介して連結されている。なお、ギア36a、ギア32a、チェーン34も回転装置40に含めてよい。回転装置40は、外部からの制御信号によって、レトルト10の回転方向や回転速度を制御することができる。なお、回転装置40は、レトルト10を回転および逆回転させることができれば、他の構成であってもよい。
【0019】
加熱器30は、レトルト10の外面に設けられ、レトルト10を加熱する。加熱器30は、外部からの制御信号によって、加熱のON/OFFが制御できる。加熱器30は、レトルト10に近接するように、支持台42に対して固定して設けてもよいし、レトルト10と一緒に回転するように設けてもよい。加熱器30にはレトルト10内部の温度を測定若しくは推定できる温度センサ30aが設けられる。なお、温度センサ30aは、レトルト10内部に直接設けてもよい。
【0020】
また、加熱器30はレトルト10の全長に亘って設けなくてもよい。ただし、加熱器30はレトルト10の奥側は必ず覆うように設けられる。被処理物はレトルト10の奥側で攪拌されながら熱処理を受けるからである。なお、加熱器30が設けられた領域を「加熱領域」、手前側で加熱器30が設けられなった領域を「投入領域」と呼ぶ。
【0021】
レトルト10の手前側には被処理物を投入・回収する投入回収部60が備えらえている。投入回収部60は、レトルト10の手前側を気密に覆う。投入回収部60には、投入口62と回収器64と、排気管66が備えられている。投入口62を開くことで、被処理物をレトルト10の投入領域に投入する。また、レトルト10の一端から吐出される熱処理された被処理物を回収器64で回収する。
【0022】
排気管66は、レトルト10の他端(奥側)に設けられた通気管68から処理中に流される雰囲気ガスを排気する。若しくは、熱処理中に被処理物から放出される放出ガスを排気する。もちろん、熱処理中および熱処理後のレトルト10内部の圧力と大気圧の圧力調整のために用いてもよい。
【0023】
制御器50は、MPU(Micro Processor Unit)とメモリおよび入出力装置で構成されたコンピュータが好適に用いることができる。しかし、その他の構成(例えばシーケンサー)であってもよい。制御器50は少なくともモータ36と加熱器30と温度センサ30aに接続され、温度センサ30aからの信号でレトルト10内の温度を検知(推定を含む)でき、モータ36の回転方向および回転速度の制御と、加熱器30のON/OFFにより温度を制御する。
【0024】
<レトルト>
次にレトルト10について詳説する。レトルト10は、筒状に形成されており、一端は開放、他端は封鎖されている。すなわち、他端側の所定の箇所で、レトルト10の内壁全周からレトルト10の中心軸に向かって一定の高さ12hを有する端壁12が形成されている。端壁12が設けられる箇所は、レトルト10の他端であってもよいし、他端より一端側で加熱器30で覆われる点であってもよい。ここでは他端も含め他端側と記す。
【0025】
端壁12の高さ12hは、レトルト10の内壁面から中心軸まであってもよい。端壁12の高さ12hがレトルト10の内壁面から中心軸まであれば、端壁12は、レトルトの他端側に設けられた孔の無い蓋となる。また、端壁12の高さ12hがレトルト10の内壁から中心軸までなければ、端壁12は、レトルト10の他端側に設けられた中央に孔の空いた蓋となる。図1では、この中央の孔に通気管68が接続されている場合を示している。なお、この通気管68は無くてもよい。
【0026】
レトルト10の内壁には、少なくとも2つの螺旋羽根が設けられている。レトルト10の内壁に直接固定されている螺旋羽根を順螺旋羽根と呼ぶ。また、順螺旋羽根の内側に固定され、順螺旋羽根と巻き方向が逆の螺旋羽根を逆螺旋羽根と呼ぶ。図1では、順螺旋羽根は第一螺旋羽根18であり、第一螺旋羽根18の内側に固定されている逆螺旋羽根を逆螺旋羽根24と呼ぶ。また、レトルト10内に設けられた螺旋羽根を螺旋羽根セットと呼ぶ。螺旋羽根は途中で途切れがない状態で1枚、2枚と数える。図1では、第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24の2枚の螺旋羽根で螺旋羽根セットが構成される。
【0027】
なお、螺旋羽根セットは、第一螺旋羽根18(順螺旋羽根)だけであってもよい。つまり、本発明は逆螺旋羽根24がない場合を含んでよい。また、後述するように順螺旋羽根は複数の場合が有あってもよく、逆螺旋羽根が複数あってもよい。
【0028】
図2に第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24の斜視図((図2(a))と、それをレトルト10内に固定した状態の透視図((図2(b))を示す。図2(a)を参照して、第一螺旋羽根18の外縁18OEは、レトルト10の内壁に接合される。逆螺旋羽根24の外縁24OEは第一螺旋羽根18の内縁18IEに接するように固定される。例えば、第一螺旋羽根18の内縁18IEと逆螺旋羽根24の外縁24OEが接する点(例えば接続点CP)で互いを溶接固定させる等の方法が考えられる。
【0029】
第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24は互いに巻き方向が逆に形成される。以降回転方向の説明は手前側から奥側を見た時の回転方向で説明する。例えば。図2の場合は、第一螺旋羽根18は右回り(螺旋上の手前側面を奥側に向かって進行する際に常に右手が中心を向いている)の巻き方向であり、逆螺旋羽根24は左回り(螺旋上の手前側面を奥側に向かって進行する際に常に左手が中心を向いている)の巻き方向である。もちろん、第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24の巻き方向はそれぞれ逆であってもよい。
【0030】
螺旋羽根の外縁OEと内縁IEとの距離を羽根幅と呼ぶ。第一螺旋羽根18の羽根幅は羽根幅18hとする。また、同一螺旋羽根上において、螺旋羽根を360°(2π)だけ進んだ点同士の距離を「ピッチ」と呼ぶ。例えば、第一螺旋羽根18のピッチはピッチλ18である。同様に逆螺旋羽根24においても、内縁24IEと外縁24OEから羽根幅24hとピッチλ24が定義される。第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24のピッチλ18とピッチλ24は同じである。
【0031】
また、螺旋羽根の開始地点(以後「始点」と呼ぶ)が異なる螺旋羽根同士は「位相」が異なるといい、始点同士の距離を位相差Dpと呼ぶ(図6で説明する。)。なお、図2では第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24の始点は同一地点になっており、第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24は同じ位相であるといってよい。
【0032】
図3には、図1のレトルト10の部分を示す。なお、レトルト10の内側底部を底辺10Dと呼ぶ。底辺10Dには被処理物Mが貯留し、レトルト10の回転によって、奥側に移送され、また手前側に移送される。
【0033】
図2に示したように、第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24が配置されているのは、レトルト10の加熱領域である。投入領域には逆螺旋羽根24は配置されていなくてよい。投入領域には、第一螺旋羽根18と同じ巻き方向で第一螺旋羽根18から連続する投入螺旋羽根14aと投入螺旋羽根14bが設けられている。投入螺旋羽根14aと投入螺旋羽根14bは、共にレトルト10の内壁に接合されている。
【0034】
手前側に配置された投入螺旋羽根14bの羽根幅14bhは、奥側に配置された投入螺旋羽根14aの羽根幅14ahより低く設定される。レトルト10への被処理物の投入を容易にするために、レトルト10の実質的な開口径10ihを大きく取るためである。
【0035】
投入螺旋羽根14bの奥に投入螺旋羽根14aが設けられる。投入螺旋羽根14aの羽根幅14ahは、被処理物が確実に奥に送り込まれるように、高く設定されている。
【0036】
このため、図3のように、投入螺旋羽根14aのピッチλ14aと投入螺旋羽根14bのピッチλ14bは異なっていてよい。
【0037】
第一螺旋羽根18の羽根幅18hと、逆螺旋羽根24の羽根幅24hはほぼ同じに設定されるが、後述するように、同じでなくてもよい。第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24の羽根幅の合計は端壁12のレトルト10の内壁からの高さ12h(図1参照)よりも低く設定される。
【0038】
このようなレトルト10を回転させると、第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24は巻き方向が異なるため互いの羽根の進行方向は逆になる。
【0039】
図4にこの様子を示す。図4はレトルト10の下辺の断面での螺旋羽根を模式的に示したものである。第一螺旋羽根18が右回りの巻き方向であったとして、レトルト10を手前側から見て左回転させると第一螺旋羽根18は、底辺10D上で見ると、手前側から奥側(端壁12に向かって)に進む(図4(a)参照)。
【0040】
図4(b)には逆螺旋羽根24がある場合を示す。レトルト10を左回転させると左回りの巻き方向の逆螺旋羽根24は、第一螺旋羽根18とは逆に奥側から手前側に向かって進む。この第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24は図2の接続点CPがレトルト10の下辺の位置に来たときに、ちょうど重なる。
【0041】
図4(c)は、その直後の状態を示し、第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24はすれ違う。この動きは、レトルト10の回転方向を変えると逆になる。より具体的には第一螺旋羽根18が奥側から手前側に移動し、逆螺旋羽根24は手前側から奥側に移動する。
【0042】
図5は、被処理物Mがある場合の様子を示す。図5(a)を参照する。図4の場合と同様にレトルト10を手前側から見て左回転させると第一螺旋羽根18は、手前側から奥側に向かって進行する。その際被処理物Mを奥側の端壁12に向かって移送させる。このように次々と第一螺旋羽根18によって端壁12に移送される被処理物Mは、端壁12で行き場を無くし、端壁12に沿って積み上がりながら、レトルト10の回転方向に崩れる。このような動作を繰り返すことで、被処理物Mは攪拌されながら熱処理が施される。
【0043】
一方、レトルト10を逆回転(手前側から見て右回転)せると、第一螺旋羽根18は奥側から手前側に向かって進行する。この際被処理物Mを手前側に向かって移送させる。レトルト10の回転を続けると、被処理物Mは手前側の加熱領域から投入領域に移送され、レトルト10の開放端(一端)から吐出され、回収器64で回収される。
【0044】
このように、一端を開放し、他端を閉じたレトルト10中に第一螺旋羽根18を設けると、被処理物Mをレトルト10の加熱領域である奥側に移送し、攪拌させながら熱処理を施すことができ、レトルト10を逆回転させると被処理物Mを取り出すことができる。このような構成であれば、比較的大きなバッチ式ロータリーキルンであっても、レトルト10を傾斜させることなく被処理物Mを取り出すことができる。レトルト10の回転方向は制御器50が制御する。つまり、被処理物Mの処理および回収は制御器50が行えると言える。
【0045】
次に図5(b)を参照する。図5(b)では、逆螺旋羽根24の動きも加わる。レトルト10を左回転させると、第一螺旋羽根18は奥側に向かって進行し、逆螺旋羽根24は奥側から手前側に向かって進行する。そして、第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24がすれ違うと、第一螺旋羽根18が押し上げていた被処理物Mの第一螺旋羽根18より高い部分が手前側に戻される。
【0046】
このように、逆螺旋羽根24を設けると、レトルト10の端壁12付近にだけ集中される被処理物Mを手前側に戻す効果を得られ、より均一に被処理物Mを攪拌することができる。
【0047】
図6には、第一螺旋羽根18と同じ巻き方向の第二螺旋羽根20を設けた例を示す。図5で示したように、基本的に被処理物Mの攪拌は第一螺旋羽根18が被処理物Mを端壁12に押し付け、端壁12にそって積み上げながら、レトルト10の回転によってそれが崩れることで行われる。言い換えると、第一螺旋羽根18の被処理物Mに対する移送力に依存する。
【0048】
第一螺旋羽根18の移送力を大きくするには、第一螺旋羽根18のピッチλ18を長くすればよい。しかし、ピッチλ18を大きくすると、レトルト10の底辺10Dでの第一螺旋羽根18の数が減る。そこで、第一螺旋羽根18と同じピッチの第二螺旋羽根20を、位相をずらして配置させる。
【0049】
図6には、第二螺旋羽根20を黒で示した螺旋羽根セットを示す。図6(a)は斜視図であり、図6(b)は側面図である。なお、図6(c)および図6(d)は、第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24の組み合わせの螺旋羽根セットを再掲したものである。
【0050】
図6(b)を参照して、側面から見ると、第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24は同一位相であるので、重なって見えるが、図6(c)のように、巻き方向が逆である。一方、第二螺旋羽根20は第一螺旋羽根18に対して180°(π)だけずれて配置される。第二螺旋羽根20のピッチλ20は、第一螺旋羽根18のピッチλ18と同じである。また、位相差Dpは、第二螺旋羽根20と第一螺旋羽根18の位相差であり、上述したように180°(π)となる。
【0051】
「位相」は螺旋羽根の始点の違いであり、始点から同一回転した対応する箇所(同一位相箇所)同士の距離に等しい。図6(b)では第一螺旋羽根18の始点は符号18sで第二螺旋羽根20の始点は符号20sの地点である。始点18sと始点20sの距離の差が位相差Dpとなる。
【0052】
このように第二螺旋羽根20を設けることで、レトルト10の内壁に直接接続される螺旋羽根のピッチを広げても、レトルト10の底辺10Dにおける羽根に数を維持することができる。また、それぞれの螺旋羽根のピッチを広げることで被処理物Mの移送力が増し、被処理物Mのより均一な攪拌状況で熱処理を行うことができる。
【0053】
図7には、レトルト10の内壁に直接固定される順螺旋羽根をさらに増やした螺旋羽根セットを示す。これは第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24に対して、第一螺旋羽根18と同じピッチの第二螺旋羽根20および第三螺旋羽根22を、第一螺旋羽根18に対して異なる位相で加えたものである。図7(a)は、第三螺旋羽根22を、図7(b)は第二螺旋羽根20を、図7(c)は第一螺旋羽根18をそれぞれ黒色の羽根で表したものである。
【0054】
それぞれのピッチであるλ22とλ20とλ18は同じである。一方、第一螺旋羽根18と第二螺旋羽根20との位相差Dp1と、第二螺旋羽根20と第三螺旋羽根22の位相差Dp2はそれぞれ120°(2/3π)に設定する。図6図7に示す様にレトルト10に直接固定される順螺旋羽根の数を増やすことで、底辺10Dでの順螺旋羽根の羽密度を変えることなく、それぞれの螺旋羽根のピッチを長く取ることができ、被処理物Mの移送速度と位相量を両立させることができ、より均一な攪拌状態で熱処理を行うことができる。
【0055】
また第一螺旋羽根18に第二螺旋羽根20、第三螺旋羽根22を加えた構成と同等に逆螺旋羽根24を第一逆螺旋羽根として、さらに第二逆螺旋羽根、第三逆螺旋羽根を加えることもでき、より均一な攪拌状態で熱処理を行うことができる。つまり、順螺旋羽根と逆螺旋羽根は複数あってもよい。より具体的には順螺旋羽根は少なくとも1枚以上、逆螺旋羽根は順螺旋羽根が1枚以上あることを条件に少なくとも1枚以上あってもよい。
【0056】
図8には第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24の羽根幅が同じでない場合の例を示す。図8図3で示したレトルト10と同じ図であるが、奥側に設けたGゾーンで第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24の羽根幅が非対称となる。より具体的には、加熱領域でGゾーンより手前側では、第一螺旋羽根18の羽根幅18hと逆螺旋羽根24の羽根幅24hは同じであったが、そこから奥側の羽根幅18h1と羽根幅24h1では、羽根幅24h1の方が幅広となり、さらに羽根幅18h2と羽根幅24h2では、その差がより大きくなる。
【0057】
しかし、第一螺旋羽根18の羽根幅18hと逆螺旋羽根24の羽根幅24hの合計は一定である。即ち以下の式が成り立っている。
【0058】
【数1】
【0059】
言い換えると、Gゾーンでは、第一螺旋羽根18の羽根幅18hが、逆螺旋羽根24の羽根幅24hとの合計を一定にしたまま、奥側に行くほど狭くなると言える。
【0060】
このようにすることで、奥側では被処理物Mの移送量が減り、手前側への戻し量が増える。このようにすることで、レトルト10の加熱領域をより広く使いながら、被処理物Mをあまり積み上げることなく熱処理を行うことができる。
【0061】
図9は、手前側から奥側に向かって第一螺旋羽根18の羽根幅18hが連続的に減少するような螺旋羽根セットを示す。手前側の第一螺旋羽根18の羽根幅18FRよりも奥側の第一螺旋羽根18の羽根幅18BKの方が狭い。それに応じて逆螺旋羽根24の羽根幅24も手前の羽根幅24FRよりも奥側の羽根幅24BKは広くなっている。
【0062】
このように、レトルト10に直接接続される螺旋羽根の羽根幅を変化させることで、被処理物Mの攪拌状態を変えることができ、被処理物Mの物性に応じた熱処理を行えるバッチ式ロータリーキルンを得ることができる。なお、図8および図9では、螺旋羽根セットとして第一螺旋羽根18と逆螺旋羽根24との組み合わせを説明したが、図6および図7で示した第二螺旋羽根20や第三螺旋羽根22を用いた螺旋羽根セットとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るバッチ式ロータリーキルンは粒状触媒の製造やリチウムイオン電池の正極用活物質の製造にも好適に利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 バッチ式ロータリーキルン
10 レトルト
10a 嵌合用突起
10D 底辺
10ih 開口径
12 端壁
12h 高さ
14a 投入螺旋羽根
14ah 羽根幅
λ14a ピッチ
14b 投入螺旋羽根
14bh 羽根幅
λ14b ピッチ
18 第一螺旋羽根
18OE 外縁
18IE 内縁
18h 羽根幅
λ18 ピッチ
20 第二螺旋羽根
22 第三螺旋羽根
24 逆螺旋羽根
24OE 外縁
24IE 内縁
24h 羽根幅
λ24 ピッチ
30 加熱器
30a 温度センサ
32 奥側支持ロール
32a ギア
34 チェーン
36 モータ
36a ギア
38 手前側支持ロール
40 回転装置
42 支持台
50 制御器
60 投入回収部
62 投入口
64 回収器
66 排気管
68 通気管
CP 接続点
M 被処理物
Dp 位相差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9