(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016500
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】テントのシート固定構造とシート固定方法
(51)【国際特許分類】
E04H 15/64 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
E04H15/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118664
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠樹
(72)【発明者】
【氏名】尾山 誠
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141AA01
2E141BB01
2E141CC04
2E141DD02
2E141EE11
2E141EE18
2E141GG01
(57)【要約】
【課題】屋内側シートの開口を閉塞する屋外側シートを強固に固定でき、シート同士の固定の際の手間と時間がかからない、シート固定構造とシート固定方法を提供すること。
【解決手段】パイプ製のテント70において、骨組み10を包囲するシート60が、開口61aを備えた屋内側シート61と開口61aを閉塞する屋外側シート62を備え、双方のシートが固定されるシート固定構造80であり、屋内側シート61には、縦方向に複数の第1穴63が設けられ、屋外側シート62における第1穴63に対応する位置には複数の第2穴64が設けられ、留め具50の張り出し片51が、相互に位置合わせされている第1穴63と第2穴64に対して屋内側から挿通されて屋外側へ張り出し、留め具50の係止片54が第1穴63の屋内側に係止され、屋外側シート62の上方から垂れ下がるロープ65が、引っ張られた状態で各張り出し片51に対して順次巻装されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ製のテントにおいて、骨組みを包囲するシートが、出入り用の開口を備えた屋内側シートと、該開口を閉塞して該屋内側シートに一部がラップする屋外側シートとを備え、該屋内側シートに対して該屋外側シートを取り外し自在に固定する、テントのシート固定構造であって、
前記屋内側シートには、縦方向に間隔を置いて複数の第1穴が設けられ、前記屋外側シートにおける該第1穴に対応する位置には複数の第2穴が設けられており、
係止片と張り出し片とを備える留め具の該張り出し片が、相互に位置合わせされている前記第1穴と前記第2穴に対して屋内側から挿通されて屋外側へ張り出し、該係止片が第1穴の屋内側に係止されており、
前記屋外側シートの上方から垂れ下がるロープが、引っ張られた状態で、屋外側に張り出している複数の前記張り出し片に対して順次巻装されることにより、前記屋内側シートに対して前記屋外側シートが固定され、前記開口を前記屋外側シートが閉塞していることを特徴とする、テントのシート固定構造。
【請求項2】
前記張り出し片のうち、係止片側の根本には、ナットに抜き差し自在に噛み合う噛み合い部が設けられており、
前記第1穴に前記張り出し片が挿通され、前記ナットが該張り出し片に差し込まれて前記噛み合い部に噛み合っていることを特徴とする、請求項1に記載のテントのシート固定構造。
【請求項3】
前記張り出し片には、その長手方向に間隔を置いて複数の凸部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のテントのシート固定構造。
【請求項4】
前記留め具が、鋼板の切断加工品であることを特徴とする、請求項3に記載のテントのシート固定構造。
【請求項5】
前記第1穴と前記第2穴にはいずれも、鳩目金具が取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のテントのシート固定構造。
【請求項6】
パイプ製のテントにおいて、骨組みを包囲するシートが、出入り用の開口を備えた屋内側シートと、該開口を閉塞して該屋内側シートに一部がラップする屋外側シートとを備え、該屋内側シートに対して該屋外側シートを取り外し自在に固定する、テントのシート固定方法であって、
前記屋内側シートには、縦方向に間隔を置いて複数の第1穴が設けられ、前記屋外側シートにおける該第1穴に対応する位置には複数の第2穴が設けられており、
係止片と張り出し片とを備える留め具の該張り出し片を、相互に位置合わせされている前記第1穴と前記第2穴に対して屋内側から挿通して屋外側へ張り出させ、この際に該係止片を第1穴の屋内側に係止させておき、
前記屋外側シートの上方から垂れ下がるロープを、引っ張った状態で、屋外側に張り出している複数の前記張り出し片に対して順次巻装することにより、前記屋内側シートに対して前記屋外側シートを固定し、前記開口を前記屋外側シートにて閉塞することを特徴とする、テントのシート固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テントのシート固定構造とシート固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においては、施工ヤード等にパイプ製のテントを組み立て、テント内に資機材を収容する場合が往々にしてある。パイプ製のテントは組立てや解体が比較的容易であることから、速やかに組み立てることができ、また、設置場所を移動させる場合も速やかに解体して新たな場所に組み立てることができる。さらに、骨組みを所望の大きさに組み立て、骨組みをシートにて包囲することにより、様々な大きさのテントを形成できることから、収容する資機材の規模や数等に応じた大きさのテントを施工ヤード等に設置できる。
【0003】
例えば、テントの妻部に出入り用の開口を設け、シートの一部を広げて開口を開放することにより資機材の搬出入を行うことができ、資機材を搬入した後は、開口をシートの一部により閉塞する。ここで、特許文献1には、テントを構成する骨格部材に対してテント布を取り付ける際に適用される、テント布の取り付け装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、
図1乃至
図3を参照して、従来のテントの一例について説明する。
図1は、従来のパイプ製のテントの一例の斜視図であって、妻部にあるシートの開口が閉塞している状態を示す図である。一方、
図2は、パイプ製のテントの開口が開放している状態を示す図であり、
図3は、
図1のIII部の拡大図である。
【0006】
図示するパイプ製のテント30は、複数の鋼製パイプ等が梁間方向と桁行き方向に組み立てられて形成される、骨組み10と、骨組み10を包囲するシート20(テント布)とを有する。
図2に明りょうに示すように、妻部31において、シート20は、正面視門型で中央に出入り用の開口23を備えた屋内側シート21と、屋内側シート21の外側に位置して屋内側シート21と一部がラップする屋外側シート22とを備えている。尚、図示を省略するが、図面の奥側の妻部にも同様の開閉構成が設けられてもよい。
【0007】
図2に示すように、左右に位置する屋内側シート21には、複数の輪状のロープ25が縦方向に一部ラップするようにして取り付けられている。一方、屋外側シート22のうち、各ロープ25に対応する位置には、各輪状のロープ25が遊嵌される鳩目金具26が取り付けられている。
【0008】
図1に示す開口23を屋外側シート22により閉塞する際は、
図3に示すように、上方のロープ25Aの下端を下方に位置する鳩目金具26Bに位置合わせし、当該鳩目金具26Bに対応する位置にあるロープ25Bを当該鳩目金具26Bから外側へX1方向に引き出し、さらに輪状のロープ25Aに引っ掛けるようにしてロープ25Bを下方へ引っ張り、ロープ25A,25Bを緊張させた状態で交差させる。これを、下方のロープ25C,25Dにおいても順次行っていく。
【0009】
図1に示すように、最下端にある固定部26aに最下端のロープ25を固定することにより、開口23が屋外側シート22により閉塞された、シート固定構造40が形成される。
【0010】
図示するシート固定構造40によれば、テント30の開口23を屋外側シート22により確実に閉塞でき、テント30に収容される資機材を風雨から防護できるとともに、屋内側シート21と屋外側シート22の間の僅かな隙間を介して通気性が確保されることで、テント30内に籠もり得る湿気による資機材の発錆を抑制することができる。
【0011】
しかしながら、このようなシート固定方法では、上方から下方に向かってロープ25を鳩目金具26に通しながら上下のロープ25同士を交差させ、下方へ引っ張るといった極めて面倒な作業を繰り返し行う必要があることから、開口23の閉塞に手間と時間がかかる。また、開口23を開放する際は、これと逆の方法で下方からロープ25同士の交差を解除していく必要があることから、開口23の開放にも同様に手間と時間がかかる。
【0012】
また、上下のロープ25同士を引っ張った状態で交差させる関係上、
図1に示すように上下のロープ間距離(もしくは鳩目金具間距離)を全て一定長さtで揃える必要がある。
【0013】
さらに、輪状のロープ25の下方中央位置に下方のロープ25からの引張力が集中的に作用することから、輪状のロープ25の当該下方中央位置が破断し易く、メンテナンス(取り替え)の頻度が往々にして高くなる。
【0014】
以上のように、図示例のテント30におけるシート固定構造40やシート固定方法には様々な課題が内包されることから、他の形態のシート固定方法や固定構造として、屋内側シートと屋外側シートをファスナーやマジックテープ(登録商標)等で固定する構造や方法が考えられる。
【0015】
まず、屋内側シートと屋外側シートをファスナーにより固定する構造に関し、比較的面積が広くて風圧を受け易いテントにおいては、屋内側シートと屋外側シートが風圧を受けている状態でファスナーを開閉しようとしても、風圧にて双方が緊張した状態であるが故に開閉が極めて難しいといった課題がある。
【0016】
次に、屋内側シートと屋外側シートをマジックテープにより固定する構造に関し、マジックテープにはゴミや塵埃が付着し易く、施工現場では塵埃等が特に生じ易く、付着したゴミ等によって固定強度が低下するといった課題がある。従って、ファスナーやマジックテープ等を適用したシート固定構造も好ましくない。
【0017】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、施工ヤード等において資機材を収容するパイプ製のテントに関し、開口を備えた屋内側シートと開口を閉塞する屋外側シートを強固に固定でき、かつシート同士の固定の際の手間と時間がかからない、シート固定構造とシート固定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成すべく、本発明によるテントのシート固定構造の一態様は、
パイプ製のテントにおいて、骨組みを包囲するシートが、出入り用の開口を備えた屋内側シートと、該開口を閉塞して該屋内側シートに一部がラップする屋外側シートとを備え、該屋内側シートに対して該屋外側シートを取り外し自在に固定する、テントのシート固定構造であって、
前記屋内側シートには、縦方向に間隔を置いて複数の第1穴が設けられ、前記屋外側シートにおける該第1穴に対応する位置には複数の第2穴が設けられており、
係止片と張り出し片とを備える留め具の該張り出し片が、相互に位置合わせされている前記第1穴と前記第2穴に対して屋内側から挿通されて屋外側へ張り出し、該係止片が第1穴の屋内側に係止されており、
前記屋外側シートの上方から垂れ下がるロープが、引っ張られた状態で、屋外側に張り出している複数の前記張り出し片に対して順次巻装されることにより、前記屋内側シートに対して前記屋外側シートが固定され、前記開口を前記屋外側シートが閉塞していることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、相互に位置合わせされた、屋内側シートの複数の第1穴と屋外側シートの複数の第2穴に対して、留め具の張り出し片が屋内側から挿通され、留め具の係止片が第1穴の屋内側に係止された状態で、屋外側シートの上方から垂れ下がるロープが、引っ張られた状態で各張り出し片に対して順次巻装されて、屋内側シートと屋外側シートが固定されることにより、双方のシートを強固に固定することができ、かつ、シート同士の固定の際の手間と時間を低減することができる。
【0020】
また、この固定構造では、固定解除においても手間と時間を低減することができる。そして、
図1乃至
図3を用いて説明した従来のシート固定構造40やシート固定方法における全ての課題を解消することができる。
【0021】
また、本発明によるシート固定構造の他の態様において、
前記張り出し片のうち、係止片側の根本には、ナットに抜き差し自在に噛み合う噛み合い部が設けられており、
前記第1穴に前記張り出し片が挿通され、前記ナットが該張り出し片に差し込まれて前記噛み合い部に噛み合っていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、張り出し片における係止片側の根本に噛み合い部が設けられ、第1穴から張り出している張り出し片にナットが差し込まれて噛み合い部に噛み合っていることにより、屋内側シートの第1穴に対して留め具をスムーズかつ強固に取り付けることができる。
【0023】
また、本発明によるシート固定構造の他の態様において、
前記張り出し片には、その長手方向に間隔を置いて複数の凸部が設けられていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、張り出し片がその長手方向に間隔を置いて複数の凸部を備えていることにより、ロープを引っ張りながら張り出し片に巻装する際の引っ張り力を凸部に預けることができ、さらには、引っ張られた状態の巻装姿勢を保持することができる。また、凸部が2以上あることで、張り出し片の先端側にある凸部を第2穴から張り出させ、作業員が手で屋外側シートを屋内側シート側へ押し込んで2つ目以降の凸部を張り出させ、根本側にある凸部にロープを引っ掛けて巻装することができるため、例えば強風環境下においても、屋内側シートに対する屋外側シートのスムーズかつ確実な固定を図ることが可能になる。
【0025】
また、本発明によるシート固定構造の他の態様は、
前記留め具が、鋼板の切断加工品であることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、留め具が鋼板の切断加工品であることにより、複数の凸部を備えた張り出し片と係止片とを有する留め具の製作手間を抑制することができ、可及的安価に留め具を製作することができる。
【0027】
また、本発明によるシート固定構造の他の態様において、
前記第1穴と前記第2穴にはいずれも、鳩目金具が取り付けられていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、第1穴と第2穴の双方に鳩目金具が取り付けられていることにより、シートの第1穴と第2穴の周囲が補強されて穴の一部から破れ等が生じることが防止され、シートの耐久性を高くすることができるとともに、相互に位置合わせされた第1穴と第2穴に対して、スムーズに留め具の張り出し片を差し込むことができる。
【0029】
また、本発明によるテントのシート固定方法の一態様は、
パイプ製のテントにおいて、骨組みを包囲するシートが、出入り用の開口を備えた屋内側シートと、該開口を閉塞して該屋内側シートに一部がラップする屋外側シートとを備え、該屋内側シートに対して該屋外側シートを取り外し自在に固定する、テントのシート固定方法であって、
前記屋内側シートには、縦方向に間隔を置いて複数の第1穴が設けられ、前記屋外側シートにおける該第1穴に対応する位置には複数の第2穴が設けられており、
係止片と張り出し片とを備える留め具の該張り出し片を、相互に位置合わせされている前記第1穴と前記第2穴に対して屋内側から挿通して屋外側へ張り出させ、この際に該係止片を第1穴の屋内側に係止させておき、
前記屋外側シートの上方から垂れ下がるロープを、引っ張った状態で、屋外側に張り出している複数の前記張り出し片に対して順次巻装することにより、前記屋内側シートに対して前記屋外側シートを固定し、前記開口を前記屋外側シートにて閉塞することを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、相互に位置合わせされた、屋内側シートの複数の第1穴と屋外側シートの複数の第2穴に対して、留め具の張り出し片を屋内側から挿通し、留め具の係止片を第1穴の屋内側に係止させた状態で、屋外側シートの上方から垂れ下がるロープを、引っ張った状態で各張り出し片に対して順次巻装して、屋内側シートと屋外側シートを固定することにより、双方のシートを強固に固定することができ、かつ、シート同士の固定の際の手間と時間を低減することができる。また、シート同士の固定解除においても、手間と時間を低減することができる。ここで、シート同士の固定解除は、固定方法と逆の要領で、下方の留め具から順にロープの巻装を解いていき、各留め具のナットを取り外してテント内に引き込んで留め具を取り外すことにより行う。
【発明の効果】
【0031】
以上の説明から理解できるように、本発明のテントのシート固定構造とシート固定方法によれば、施工ヤード等において資機材を収容するパイプ製のテントに関し、開口を備えた屋内側シートと開口を閉塞する屋外側シートを強固に固定でき、かつシート同士の固定の際の手間と時間がかからない、シート固定構造とシート固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】従来のパイプ製のテントの一例の斜視図であって、妻部にあるシートの開口が閉塞している状態を示す図である。
【
図2】従来のパイプ製のテントの開口が開放している状態を示す図である。
【
図4】実施形態に係るシート固定方法にて適用される、留め具の一例の斜視図である。
【
図5】実施形態に係るシート固定方法を説明する工程図である。
【
図6】
図5に続いて、実施形態に係るシート固定方法を説明する工程図である。
【
図7】
図6に続いて、実施形態に係るシート固定方法を説明する工程図である。
【
図8】
図7に続いて、実施形態に係るシート固定方法を説明する工程図である。
【
図9】
図8に続いて、実施形態に係るシート固定方法を説明する工程図である。
【
図10】
図9に続いて、実施形態に係るシート固定方法を説明する工程図であって、かつ実施形態に係るシート固定構造の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施形態に係るテントのシート固定構造とシート固定方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0034】
[実施形態に係るテントのシート固定構造とシート固定方法]
図4乃至
図10を参照して、実施形態に係るテントのシート固定構造とシート固定方法の一例について説明する。ここで、
図4は、実施形態に係るシート固定方法にて適用される、留め具の一例の斜視図である。また、
図5乃至
図10は順に、実施形態に係るシート固定方法を説明する工程図であり、
図10はさらに、実施形態に係るシート固定構造の一例の斜視図である。
【0035】
図4に示すように、テントのシート固定方法に適用される留め具50は、係止片54と張り出し片51とを備え、張り出し片51には、その長手方向に複数(図示例は3つ(3組))の凸部52を上下に備え、張り出し片51における係止片側の根本には噛み合い部53が設けられている。
【0036】
ナット56と座金57は、それぞれの螺合穴56aと穴57aが位置合わせされた状態で溶接にて一体とされており、張り出し片51に差し込まれた後、ナット56の螺合穴56aが噛み合い部53に噛み合うようになっている。
【0037】
留め具50は、SUS等の鋼板の切断加工品(レーザー切断加工品)である。従って、図示例のように、複数の凸部52と噛み合い部53を備えた張り出し片51と、係止片54とを有する比較的複雑な形状を呈している部材であるものの、その製作手間を抑制することができ、可及的安価に製作することができる。
【0038】
以下、留め具50を適用したシート固定方法と、このシート固定方法により形成されるシート固定構造について説明する。
【0039】
図5に示すように、パイプ製のテント70は、複数の鋼製パイプ等が梁間方向と桁行き方向に組み立てられて形成される、骨組み10と、骨組み10を包囲するシート60とを有する。テント70の妻部71において、シート60は、正面視門型で中央に出入り用の開口61aを備えた屋内側シート61と、屋内側シート61の外側に位置して屋内側シート61と一部がラップする屋外側シート62とを備えている。
【0040】
屋外側シート62の左右位置には、縦方向に間隔を置いて複数(図示例は6つ)の第2穴64が設けられており、各第2穴64には鳩目金具が取り付けられている。また、
図5では視認できないが、屋内側シート61における各第2穴64に対応する位置には、第1穴63(
図6参照)が設けられており、各第1穴63にも鳩目金具が取り付けられている。
【0041】
以下で説明するように、相互に位置合わせされた第1穴63と第2穴64に対して順に留め具50の張り出し片51が挿入されるが、双方の穴に鳩目金具が取り付けられていることにより、表面に丸みを帯びた鳩目金具によって張り出し片51の先端が当該鳩目金具の内部に案内されることになり、スムーズな張り出し片51の挿入を図ることができる。さらに、鳩目金具によって屋内側シート61の第1穴63の周囲と屋外側シート62の第2穴64の周囲が補強され、各シートの耐久性を向上させることができる。
【0042】
屋外側シート62における左右の各第2穴64の近傍には、留め材65aにて屋外側シート62に上端が留め付けられているロープ65が垂れ下がっている。
【0043】
図5に示す状態は、屋内側シート61と屋外側シート62の固定が解除された状態であり、例えば資機材をテント70内に収容したり、逆にテント70から資機材を取り出す際の状態である。テント70の妻部71において、屋外側シート62の一部を開くことにより、屋内側シート61の中央にある開口61aが開放される。ここで、テント70の反対側の妻部(図示せず)にも、同様の出入り用の開口と開口を閉塞する屋外側シートが設けられていてもよい。
【0044】
図6に示すように、屋内側シート61の第1穴63に対して、テント70の屋内側から留め具50の張り出し片51を挿通して屋外側へX2方向に張り出させ、この際に係止片54を第1穴63の屋内側に係止させる。
【0045】
次に、
図7に示すように、張り出し片51の先端側から座金57が固定されたナット56をX3方向に差し込み、張り出し片51の根本にある噛み合い部53に対してナット56を噛み合わせることにより、屋内側シート61に対する留め具50の取り付け(固定)を図ることができる。
【0046】
次に、
図8に示すように、屋外側シート62の第2穴64を張り出し片51に差し込み、張り出し片51を屋外側シート62の外側へX4方向に張り出させる。この張り出しの際は、張り出し片51の先端側にある凸部52Aを第2穴64から張り出させた後、作業員が手で屋外側シート62を屋内側シート側へ圧力Pで押し込んで2つ目以降の凸部52B,52Cを張り出させる。
【0047】
張り出し片51における根本側の凸部52Cが屋外側シート62の外側に張り出した後、
図9に示すように、作業員は圧力Pを屋外側シート62に付与した状態で横に垂れ下がっているロープ65を下方へ引っ張り、その際の引っ張り力Qを凸部52Cに預けながら張り出し片51の周囲にX5方向に巻装する。この方法により、例えば強風環境下においても、屋内側シート61に対する屋外側シート62のスムーズかつ確実な固定を図ることが可能になる。
【0048】
例えば、
図6及び
図7に示す各第1穴63への留め具50の固定を順次行った後、上方の留め具50から順に、
図8及び
図9に示すロープ65を引っ張りながらの巻装を行うことにより、
図10に示すシート固定構造80が形成される。
【0049】
図示するテント70は、施工現場における施工ヤード等において、資機材を収容するパイプ製のテントであり、シート固定構造80により、テント70の内部と外部との間の通気性を確保しながら、出入り用の開口61aが確実に閉塞される。
【0050】
図示するシート固定方法によれば、屋内側シート61と屋外側シート62を強固に固定することができ、かつ、シート同士の固定の際の手間と時間を低減することができる。
【0051】
尚、屋内側シート61と屋外側シート62の固定を解除して
図5の状態にする際は、固定方法と逆の要領で、下方の留め具50から順にロープ65の巻装を解いていき、各留め具50のナット56を取り外してテント70内に引き込んで留め具50を取り外すことにより行う。そのため、シート同士の固定解除においても、手間と時間を低減することができる。
【0052】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0053】
10:骨組み
50:留め具
51:張り出し片
52,52A,52B,52C:凸部
53:噛み合い部
54:係止片
56:ナット
56a:螺合穴
57:座金
57a:穴
60:シート
61:屋内側シート
61a:開口
62:屋外側シート
63:第1穴(鳩目金具)
64:第2穴(鳩目金具)
65:ロープ
65a:留め材
70:テント
71:妻部
80:シート固定構造