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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165001
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 23/00 20060101AFI20241121BHJP
   B62J 17/10 20200101ALI20241121BHJP
【FI】
B62J23/00 A
B62J17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080800
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【弁理士】
【氏名又は名称】池見 智治
(72)【発明者】
【氏名】庄慶 優輝
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 樹一
(72)【発明者】
【氏名】俵 和史
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎也
(57)【要約】
【課題】鞍乗型車両において、乗り手の走行時の負担を低減することを目的とする。
【解決手段】鞍乗型車両10は、シート14と、前記シート14の前方に位置し、乗り手80の膝81が当たる膝当て部材と、前記膝当て部材及び前記シート14を支持する車体フレーム11と、前記車体フレーム11を車幅方向外側から覆う内側サイドカウル部材30と、前記膝当て部材よりも前方で前記内側サイドカウル部材30の一部を車幅方向外側から部分的に覆う外側サイドカウル部材50と、を備える。前記内側サイドカウル部材30と前記外側サイドカウル部材50との間に、前後方向に沿って延びるトンネル部TNが設けられ、前記トンネル部TNは、車両走行時の走行風Wを前記トンネル部TN内に導入する前方開口ENTと、前記トンネル部TN内の前記走行風Wを前記膝当て部材に向けて導出する後方開口EXTとを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、
前記シートの前方に位置し、乗り手の膝が当たる膝当て部材と、
前記膝当て部材及び前記シートを支持する車体フレームと、
前記車体フレームを車幅方向外側から覆う内側サイドカウル部材と、
前記膝当て部材よりも前方で前記内側サイドカウル部材の一部を車幅方向外側から部分的に覆う外側サイドカウル部材と、
を備え、
前記内側サイドカウル部材と前記外側サイドカウル部材との間に、前後方向に沿って延びるトンネル部が設けられ、
前記トンネル部は、車両走行時の走行風を前記トンネル部内に導入する前方開口と、前記トンネル部内の前記走行風を前記膝当て部材に向けて導出する後方開口とを有する、鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記内側サイドカウル部材は、前記トンネル部を構成する壁部であって、前記外側サイドカウル部材に対して内側に凹む凹壁を含む、鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記内側サイドカウル部材は、前記トンネル部の前記後方開口をなす部分に連続し、前記トンネル部よりも後方に延びる走行風案内面を含み、
前記走行風案内面には、車幅方向外側に凸となる凸部が設けられ、
前記凸部の前側部分は前記後方開口に向けて延びる、鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鞍乗型車両であって、
前記凸部が、熱交換器からの排風用開口の上部に位置する、鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記内側サイドカウル部材は、前記トンネル部の前記前方開口よりも前方に位置し、車幅方向内側に向かうにつれて上方に延びる傾斜壁部を含む、鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
車体前方に位置し、かつ、車幅方向外側に進むにつれて下方に向けて延びると共に後方に進むにつれて上方に傾斜する傾斜壁部と、
走行風を通す走行風通過トンネル部を形成し、前記傾斜壁部の後方かつ上方に位置する壁部と、
を備える、鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記内側サイドカウル部材は、前記前方開口の車幅方向内側に位置する内側周壁部を含み、
前記外側サイドカウル部材は、前記前方開口の車幅方向外側に位置する外側周壁部を含み、
前記外側周壁部は、同じ高さに位置する内側周壁部よりも前方に突出する前方突出部を有する、鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項7に記載の鞍乗型車両であって、
車体前方に光を照射するライトを備え、
側面視において、前記前方突出部は、前記ライトの側方を部分的に覆う、鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
車体前方に光を照射するライトを備え、
前記内側サイドカウル部材は、前記ライトの照射面の後縁に沿って延びる壁部を含み、
前記トンネル部の前記前方開口は、前記ライトと同じ高さかそれよりも下方に位置する、鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
車体前方に光を照射するライトを備え、
前記内側サイドカウル部材は、前記前方開口の車幅方向内側に位置し、前記ライトの照射面の後縁に沿って延びる内側周壁部と、前記内側周壁部よりも後方に位置し、前記ライトの光が前記トンネル部を通じて後ろに行くことを抑制する遮蔽壁部とを含む、鞍乗型車両。
【請求項11】
請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記トンネル部の前後方向中間部は前記前方開口よりも車幅方向外側に位置する、鞍乗型車両。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記内側サイドカウル部材と前記外側サイドカウル部材とは、係止部とボルト締結部との組み合わせによって取付けられ、
前記ボルト締結部は前記外側サイドカウル部材の内面に1つのみ設けられている、鞍乗型車両。
【請求項13】
車体前方に位置し、かつ、車幅方向外側に進むにつれて下方に向けて延びると共に後方に進むにつれて上方に傾斜する傾斜壁部を含むカウル部材と、
走行風を通す走行風通過トンネル部を形成し、前記傾斜壁部の後方かつ上方に位置する壁部と、
を備える、鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、内側サイドカウル部材と、内側サイドカウル部材の前下部を覆う外側サイドカウル部材とを備える鞍乗型車両を開示している。外側サイドカウル部材は、運転者の膝あたりに向かう走行風を外側へ逸らす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-59358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗り手は走行風に抗して走行姿勢を維持する必要がある。このため、長時間の高速走行時には、運転者は走行姿勢を維持するための疲れが生じる場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、鞍乗型車両において、乗り手の走行時の負担を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、鞍乗型車両は、シートと、前記シートの前方に位置し、乗り手の膝が当たる膝当て部材と、前記膝当て部材及び前記シートを支持する車体フレームと、前記車体フレームを車幅方向外側から覆う内側サイドカウル部材と、前記膝当て部材よりも前方で前記内側サイドカウル部材の一部を車幅方向外側から部分的に覆う外側サイドカウル部材と、を備え、前記内側サイドカウル部材と前記外側サイドカウル部材との間に、前後方向に沿って延びるトンネル部が設けられ、前記トンネル部は、車両走行時の走行風を前記トンネル部内に導入する前方開口と、前記トンネル部内の前記走行風を前記膝当て部材に向けて導出する後方開口とを有する。
【発明の効果】
【0007】
この鞍乗型車両によると、乗り手の走行時の負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る自動二輪車を示す側面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3】外側サイドカウル部材を外した状態を示す側面図である。
図4】自動二輪車を示す平面図である。
図5】自動二輪車を示す正面図である。
図6】自動二輪車を斜め前方から見た斜視図である。
図7】自動二輪車を前方左方から見た斜視図である。
図8図4の領域A1を斜め後方から見た斜視図である。
図9】リーン姿勢にある自動二輪車を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る鞍乗型車両について説明する。鞍乗型車両は、運転者がシートに跨った状態で運転する車両である。以下の実施形態では、鞍乗型車両が自動二輪車である例で説明する。鞍乗型車両は、自動二輪車の他、自動三輪車や四輪バギー等であってもよい。
【0010】
図1は、実施形態に係る自動二輪車10を示す側面図である。なお、以下の説明において、上下、前後及び左右について言及する場合、各方向は、次のように定義される。まず、自動二輪車10の前輪18及び後輪20が路面に接地する側が下であり、その反対側が上である。また、自動二輪車10が走行する際の走行方向が前であり、その反対側が後ろである。さらに、運転者として自動二輪車10に搭乗した状態で、当該運転者を基準とする左右が自動二輪車10の左右である。幅方向という場合、左右の車幅方向である。自動二輪車10の進行方向を前方と称し、進行方向と反対側を後方と称する。
【0011】
自動二輪車10は、車体フレーム11、走行用駆動ユニット12、燃料タンク13、シート14、ステアリングシャフト15、スイングアーム16、一対のフロントフォーク17、前輪18、ハンドル19、後輪20、ライト21、ステップ22、タンクカバー23、及び、カウルを備える。
【0012】
車体フレーム11は、前後方向に延びている。走行用駆動ユニット12は、一例としてエンジンであり、車体フレーム11に支持されている。燃料タンク13は、走行用駆動ユニット12の上方で、車体フレーム11に支持されている。シート14は、燃料タンク13の後方で、車体フレーム11に支持されている。ステアリングシャフト15は、上下方向に延び、車体フレーム11の前部に軸支されている。スイングアーム16の前端部は、車体フレーム11に軸支されている。これによりスイングアーム16は、上下に揺動する。なお走行用駆動ユニット12は、走行用電動モータでもよいし、内燃機関を備えるエンジン及び走行用電動モータの両方でもよい。自動二輪車10は、走行用駆動ユニット12を冷却するための図示省略の熱交換器を備える。係る熱交換器は、例えば、ラジエータなどである。熱交換器は、例えば、走行用駆動ユニット12の前方に配置される。熱交換器は、走行風を利用して排熱する。
【0013】
一対のフロントフォーク17は、ステアリングシャフト15に接続されている。前輪18は、一対のフロントフォーク17の下端部に軸支されている。ハンドル19は、ステアリングシャフト15の上端部に接続されている。後輪20は、スイングアーム16の後端部に軸支されている。ライト21は、車体の前部に支持されている。ここでは、ライト21は、ほぼ左右対称に設けられている。ライト21のレンズ面がカウルの開口に嵌まって前方に露出している。ライト21は、ヘッドライト及びポジションライトが組合わされたヘッドランプユニットであってもよい。ヘッドライトとポジションライトとが互いに別に支持されていてもよい。ステップ22は、乗り手80が運転時に足83を置く部分である。ステップ22は、シート14の下方に支持されている。シート14及びステップ22は、前後方向において同程度の位置にある。タンクカバー23は、燃料タンク13の下方に配置され、燃料タンク13の下部を車幅方向外側から覆っている。タンクカバー23は、前後方向に延びて、燃料タンク13よりも下方からシート14の前部の下方にかけての部分を車幅方向外側から覆っている。
【0014】
カウルは、車体の前部及び側部を覆うように車体フレーム11に取り付けられている。カウルとして、フロントカウル24、ロアカウル26、サイドカウル28が設けられている。フロントカウル24は、車体の前方を覆っている。フロントカウル24は、ライト21の上部及び左右のライト21の間に沿う部分を有する。ロアカウル26は、車体の側方下部を覆っている。サイドカウル28は、フロントカウル24とロアカウル26との間で、車体の側方を覆っている。サイドカウル28は、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50とを含む。内側サイドカウル部材30及び外側サイドカウル部材50は、樹脂製で、別々の部材で構成されている。内側サイドカウル部材30は、車体フレーム11を車幅方向外側から覆う。外側サイドカウル部材50は、内側サイドカウル部材30の一部を車幅方向外側から部分的に覆う。
【0015】
図1には、二点鎖線で乗り手80の一例が記載されている。かかる乗り手80は、シート14に跨ると共にステップ22に足83を置いた通常の運転姿勢をとっている。図1に示すように、当該運転姿勢において、乗り手80の膝81が、乗り手80の腰82及び足83よりも前方に突出する。乗り手80は、両膝81を車体に密着させて両膝81によって車体を挟む、いわゆるニーグリップを行うことが想定される。この際、車体において、膝81が当たる部分が膝当て部材とされる。
【0016】
膝当て部材は、シート14及びステップ22よりも前方に位置する。膝当て部材において、膝81が当たる部分は、当該部分よりもハンドル19側に位置する残余部分よりも、幅狭に形成されてもよい。膝当て部材は、シート14よりも下方であって、ステップ22よりも上方に位置する。膝当て部材は、サイドカウル28の上縁よりも上方の外殻部材であってもよい。膝当て部材は、側面視において、ステアリングシャフト15又はヘッドパイプとシート14との間の領域に位置する外殻部材であってもよい。本実施形態では、タンクカバー23が膝当て部材23とされる。膝当て部材は、燃料タンク13、車体フレーム11又はサイドカウル28などであってもよい。電動車など、燃料タンク13を必要としない車両の場合、燃料タンク13の位置に代替する部分であってもよい。また膝当て部材は、パッドなどでもよい。
【0017】
自動二輪車10の走行時に、走行風が乗り手80の膝81に当たることがある。走行風の殆どが乗り手80の膝81の車幅方向外方を流れたり、膝81の車幅方向外側部分だけに局所的に当たると、乗り手80によっては走行風によって膝81が開く感じを覚えたり、疲労感を覚えやすくなったりすることがある。例えば時速100km以上の高速走行を長時間続けるなどして、走行風の風量及び当たる時間が増えることで、乗り手80は、このような膝81が開く感じ又は疲労感を感じやすくなる。本開示では、膝当て部材23よりも前方に外側サイドカウル部材50を設けることで、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50とによって、乗り手80の膝81に向かう走行風の流れを規制して、乗り手80の膝81に対して走行風を分散して流すようにしている。
【0018】
<内側サイドカウル部材及び外側サイドカウル部材>
内側サイドカウル部材30及び外側サイドカウル部材50について、図2から図8を参照してより具体的に説明する。図2は、図1の部分拡大図である。図3は、外側サイドカウル部材50を外した状態を示す側面図である。図4は、自動二輪車10を示す平面図である。図5は、自動二輪車10を示す正面図である。図6は、自動二輪車10を斜め前方から見た斜視図である。図7は自動二輪車10を前方左方から見た斜視図である。図8は、図4の領域A1を斜め後方から見た斜視図である。なお、図2及び図4には運転手の膝81及びその周辺部分が二点鎖線で描かれている。また、図3図5及び図6では、正規位置の外側サイドカウル部材50が二点鎖線で描かれている。また、一部の図では、サイドカウル28の凹凸を分かりやすくするための稜線が記載されている。
【0019】
内側サイドカウル部材30及び外側サイドカウル部材50は、左右に一対、対称形状となるように設けられる。以下の説明において、左右一対の内側サイドカウル部材30及び外側サイドカウル部材50の一方についてする説明は、特に矛盾のない限り他方についても適用される。外側サイドカウル部材50の外面は、内側サイドカウル部材30の外面よりも凹凸の少なく、滑らかな曲線に沿った形状とされている。
【0020】
内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50との間に、前後方向に沿って延びるトンネル部TNが設けられている。トンネル部TNは、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50との間に生じた空洞である。内側サイドカウル部材30がトンネル部TNの車幅方向内側の壁をなし、外側サイドカウル部材50がトンネル部TNの車幅方向外側の壁をなしている。内側サイドカウル部材30は、トンネル部TNの内壁となる部分と、トンネル部TNの内壁とならずにトンネル部TNの周辺に広がる部分とを有してもよい。外側サイドカウル部材50は、トンネル部TNの外壁となる部分と、トンネル部TNの外壁とならずにトンネル部TNの周辺に広がる部分とを有してもよい。内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50とは、互いに車幅方向に沿って重ならないことでトンネル部TNをなさない部分と、互いに車幅方向に沿って重なりつつその間の部分がトンネル部TNとして機能しない部分とを有してもよい。トンネル部TNは、前方開口ENTと後方開口EXTとを有する。
【0021】
前方開口ENTは、車両走行時の走行風をトンネル部TN内に導入するための開口である。トンネル部TNよりも車両前方において、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50とが車幅方向に沿って比較的大きく離れている部分であって、トンネル部TNに連なる部分は、概ね前方開口ENTとみなすことができる。例えば、前方開口ENTは、概ね図5及び図6において、矢符で示される範囲である。
【0022】
後方開口EXTは、トンネル部TN内の走行風W2を膝当て部材23に向けて導出するための開口である。トンネル部TNよりも車両後方において、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50とが車幅方向に沿って比較的大きく離れている部分であって、トンネル部TNに連なる部分は、概ね後方開口EXTとみなすことができる。後方開口EXTは、概ね図5及び図6において、矢符で示される範囲である。後方開口EXTは、タンクカバー23において膝81が当たる部分と同程度の高さに位置する。なお、後方開口EXTは走行風を膝当て部材23の下部に向けて導出してもよい。
【0023】
図2において、砂地のハッチングが施された部分が、トンネル部TNの主要部である。トンネル部TNの主要部の上方及び下方において、内側サイドカウル部材30及び外側サイドカウル部材50は、互いに接しているか、トンネル部TNの主要部における間隔よりも狭い間隔となっている。トンネル部TNの主要部の上方又は下方において、前方開口ENTから後方開口EXTまでの一部又は全部において、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50とが密着しておらず、隙間が生じていてもよい。つまり、トンネル部TNの上縁及び下縁は密閉されていなくてもよい。この場合、トンネル部TNを流れる走行風W2の一部が当該隙間から漏れ得る。この場合でも、当該隙間が、後方開口EXT、及び、トンネル部TNの主要部の空洞の大きさよりも小さいことで、走行風W2の大部分は、トンネル部TNの主要部に沿って後方開口EXTまで案内されやすい。
【0024】
図2には、車体前方からの走行風W1、前方開口ENTからトンネル部TN内に入った走行風W2、及び、トンネル部TNを抜けた走行風W3のそれぞれの流れの一例が記載されている。係る走行風W1、W2、W3として、自動二輪車10の直進時の走行風を例にとり説明する。走行風W1は、前方開口ENTよりも前側の車体に沿って流れつつ、前方開口ENTからトンネル部TN内に入る。前方開口ENTからトンネル部TN内に入った走行風W2は、後方開口EXTに向けてトンネル部TNの壁に沿って流れつつ、後方開口EXTからトンネル部TNの外に出る。後方開口EXTからトンネル部TNの外に出た走行風W3は、後方開口EXTよりも後ろ側の車体に沿って流れつつ、後方の膝当て部材23に向かう。なお、図2において、走行風W2は実線で記載されているが、これは線を見やすくするためであり、実際には外側サイドカウル部材50よりも内側のトンネル部TN内を流れる。
【0025】
図4には、トンネル部TNを抜けた走行風W3、及び、トンネル部TNに入らずに外側サイドカウル部材50の車幅方向外側を通る走行風W4のそれぞれの流れの一例が記載されている。係る走行風W4も、上記走行風W1、W2、W3と同様に、自動二輪車10の直進時の走行風を例にとり説明する。走行風W3は、走行風W4よりも車幅方向内側を進む。例えば、走行風W3は、膝81から車幅方向内側に向かい、走行風W4は膝81から車幅方向外側に向かう。乗り手80がニーグリップを行う場合、通常、乗り手80の太ももから足首の間には、車体に密着する部分と、車体に密着せずに隙間が形成される部分とが生じうる。例えば、膝81の一部は車体に密着し、膝81の他の一部(脛側の部分)又は膝81よりも下の部分(脛)は車体に密着しない。膝81に向けて流れた走行風W3の一部は、車体と乗り手80の脚との間の隙間を通じて乗り手80よりも後方に流れ得る。膝81に向けて流れた走行風W3の他の一部は、乗り手80よりも車幅方向外側を通じて乗り手80よりも後方に流れ得る。
【0026】
前方開口ENTは、ライト21と同じ高さかそれよりも下方に位置する。ここでは前方開口ENTは、ライト21と同じ高さに位置する部分と、ライト21よりも下方に位置する部分とを含む。
【0027】
内側サイドカウル部材30は、内側周壁部33を含む。内側周壁部33は、前方開口ENTの車幅方向内側に位置する。内側周壁部33は、ライト21の照射面の後縁に沿って延びる。ライト21の照射面の後縁の下部は、当該後縁の上部よりも後方に位置する。外側サイドカウル部材50は、外側周壁部53を含む。外側周壁部53は、前方開口ENTの車幅方向外側に位置する。外側周壁部53は、同じ高さに位置する内側周壁部33よりも前方に突出する前方突出部54を有する。
【0028】
側面視において、前方突出部54は、ライト21の側方を部分的に覆う。図3に示すように、前方突出部54は、ライト21の後方下部の側方を覆う。側面視において、前方突出部54の前側部分は、三角形状に形成されているが、これ以外の形状であってもよい。前方突出部54は、外側サイドカウル部材50のうち前方突出部54の上部及び下部よりも、前方に突出する。ライト21に沿って流れる走行風W1を、外側サイドカウル部材50の前方突出部54で受け止めて、トンネル部TNに導くことができる。
【0029】
内側サイドカウル部材30は、遮蔽壁部34を含む。遮蔽壁部34は、内側周壁部33よりも後方に位置する。遮蔽壁部34は、ライト21の光がトンネル部TNを通じて後ろに行くことを抑制する。遮蔽壁部34として、2つのリブ34が設けられている。2つのリブ34は、ライト21の後縁よりも後方で、ライト21と同じ高さに設けられている。2つのリブ34は、上下方向に並んで、前後方向に延びる。リブ34は、内側サイドカウル部材30のベースとなる面から車幅方向外側に突出する。車幅方向に沿ったリブ34の先端面は後方に進むにつれて上方かつ車幅方向外側に延びる。2つのリブ34は、外側サイドカウル部材50に向けて突出する。車幅方向に沿ったリブ34の先端面は、外側サイドカウル部材50に接していない。このため、走行風W2は、車幅方向に沿ったリブ34の先端面と外側サイドカウル部材50の内面との間の隙間を通ることができる。リブ34は、外側サイドカウル部材50に接していてもよい。
【0030】
内側サイドカウル部材30は、傾斜壁部31を含む。傾斜壁部31は、トンネル部TNの前方開口ENTよりも前方に位置する。傾斜壁部31は、ライト21の下部に設けられる。傾斜壁部31は、車幅方向内側に進むにつれて上方に延びると共に、後方に進むにつれて上方に延びる。
【0031】
図5及び図8に示すように、内側サイドカウル部材30は、凹壁37を含む。凹壁37は、トンネル部TNを構成する壁部である。凹壁37は、外側サイドカウル部材50に対して内側に凹む。凹壁37の上方及び下方に凸壁35、36が位置する。凸壁35、36は、外側サイドカウル部材50に向けて突出し、凹壁37よりも外側に凸となる。凹壁37は、概ね稜線L1に沿って延びる。凹壁37よりも上側の凸壁35は、概ね稜線L2に沿って延びる。凹壁37よりも下側の凸壁36は、概ね稜線L3に沿って延びる。凸壁35、36及び凹壁37が設けられることによって、トンネル部TN内に入った走行風W2は、凹壁37に沿って流れやすくなる。本実施形態では、当該凹壁37が形成された部分をトンネル部TNの主要部とみなすことができる。
【0032】
図2及び図3に示すように、稜線L1は、前方開口ENTから後方開口EXTまで延びる。稜線L1の前側部分は、ライト21よりも下側に位置する。稜線L1は後方に進むにつれて上方に延びる。稜線L1の後側部分は、ライト21の下部と同じくらいの高さに位置する。稜線L2、L3は、トンネル部TN内の大半の区間で、稜線L1に沿って延びる。
【0033】
外側サイドカウル部材50のうち凹壁37及び凸壁35、36に対向する部分は、凹壁37及び凸壁35、36における傾斜よりも緩やかな傾斜で連続している。凹壁37及び凸壁35、36が、内側サイドカウル部材30ではなく、外側サイドカウル部材50に設けられてもよい。凹壁37及び凸壁35、36が、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50との両方に設けられてもよい。
【0034】
稜線L2と外側サイドカウル部材50の上縁(後縁)とが対向する部分で、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50との隙間が十分に小さくなっている。このため、ここでは稜線L2と外側サイドカウル部材50の上縁(後縁)とが対向する部分を後方開口EXTの上縁(前縁)とみなすものとする。また、外側サイドカウル部材50の上縁であって、後方開口EXTの上縁から前側に連続する部分は、内側サイドカウル部材30との隙間が十分に小さくなっている。このため、外側サイドカウル部材50の上縁であって、後方開口EXTの縁から前側に連続する部分をトンネル部TNの状態とみなすものとする。
【0035】
一方で、稜線L2と外側サイドカウル部材50の下縁(前縁)とが対向する部分で、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50との隙間が十分に大きくなっている。このため、ここでは稜線L2と外側サイドカウル部材50の下縁(前縁)とが対向する部分を前方開口ENTの縁とはみなさないものとする。図2に示すように、外側サイドカウル部材50の前縁の上部は、ライト21よりも上方でフロントカウル24の縁に沿っている。当該部分は、隙間が小さく、前方開口ENTとはみなさないものとする。従って、ここではライト21の後方上端の後方に位置する縁が、前方開口ENTの上縁とみなすものとする。
【0036】
稜線L3に沿う部分で、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50との隙間が十分に小さくなっている。このため、ここでは稜線L3に沿う部分を前方開口ENTの下縁、トンネル部TNの下端及び後方開口EXTの下縁(後縁)とみなすものとする。
【0037】
トンネル部TNの前後方向中間部は前方開口ENTよりも車幅方向外側に位置する。凹壁37及び凸壁35、36は、前端から後方に進むにつれて車幅方向外側に延びる。また、凹壁37及び凸壁35、36は、後端から前方に進むにつれて車幅方向外側に延びる。凹壁37及び凸壁35、36は、前後方向中間部の位置で、車幅方向に沿って最も外側に張り出す。
【0038】
図5に示すように、凹壁37及び凸壁35、36の前側部分は、2つのリブ34の下方に位置する。このため、ライト21の光が凹壁37及び凸壁35、36に達することがリブ34によって抑制される。凹壁37及び凸壁35、36は、前端から後方に進むにつれて上方に延びる。凹壁37及び凸壁35、36は、後方開口EXTの位置で、リブ34と同程度の高さに位置する。前後方向においてライト21と後方開口EXTとの間にリブ34が位置する。
【0039】
内側サイドカウル部材30は、走行風案内面38を含む。走行風案内面38は、トンネル部TNの後方開口EXTをなす部分に連続し、トンネル部TNよりも後方に延びる。走行風案内面38は、サイドカウル28部材のうち主として、燃料タンク13の前縁と同程度の位置から後方にかけて図4の平面視に現れる部分である。走行風案内面38は、下側に進むにつれて車幅方向外側に延びる。走行風案内面38には、凸部39が設けられている。凸部39は、車幅方向外側に凸となる部分である。凸部39の前側部分は後方開口EXTに向けて延びる。凸部39は、走行風案内面38の後部に設けられる。
【0040】
本実施形態では、燃料タンク13の下にタンクカバー23があり、タンクカバー23の下に内側サイドカウル部材30の後部が位置する。内側サイドカウル部材30には、熱交換器の熱を自動二輪車10の周囲の大気に排熱するための排風用開口40が形成されている。排風用開口40は車幅方向に沿って内側サイドカウル部材30を貫通する貫通孔である。排風用開口40の内側には、例えば、熱交換器の一部又はエンジンの一部などが位置していてもよい。
【0041】
例えば、フロントカウル24と前輪18との間は開口している。当該開口から排熱用走行風が車体内部(左右一対のサイドカウル28との間)に入り、熱交換器に案内される。そして、排熱用走行風は熱交換器から熱を受け取り、排風用開口40から自動二輪車10の側方に排出される。外側サイドカウル部材50は、排風用開口40を塞がないように、排風用開口40よりも前側に設けられる。外側サイドカウル部材50の後方の縁部は、排風用開口40の前側の周縁部に沿って延びる。
【0042】
走行風案内面38は排風用開口40よりも上方に位置する。内側サイドカウル部材30の後方上部はタンクカバー23との接続部から下方に進むにつれて車幅方向外側に延びる。内側サイドカウル部材30の後部は後方に行くにつれて下方に延びる。凸部39は内側サイドカウル部材30の後部の延在方向に沿って延在する。凸部39が、熱交換器からの排風用開口40の上部に位置する。凸部39は、排風用開口40と乗り手80の膝81との間に位置する。凸部39は熱交換器からの熱が乗り手80に伝わるのを遮る遮熱壁を兼ねる。燃料タンク13のうち図4の平面視において車幅方向に沿って最も外側に張り出す部分の下方に凸部39が位置する。内側サイドカウル部材30のうち図4の平面視において車幅方向に沿って最も外側に張り出す部分が凸部39に設けられている。当該最も外側に凸の部分は、前後方向において、排風用開口40の後端と同程度の位置に設けられる。
【0043】
図3に示すように、本実施形態では、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50とは、係止部とボルト締結部68との組み合わせによって取付けられる。かかるボルト締結部68は外側サイドカウル部材50の内面に1つのみ設けられている。車体フレーム11に内側サイドカウル部材30が取付けられた状態で、内側サイドカウル部材30に対して外側サイドカウル部材50を着脱可能である。
【0044】
本実施形態では、係止部として、係止態様が互いに異なる第1係止部60と第2係止部64とが設けられている。第1係止部60は、係止爪61及び係止凹部62を有する。第2係止部64は、係止ピン65及び係止孔66を有する。係止爪61及び係止ピン65が外側サイドカウル部材50に設けられている。係止爪61及び係止ピン65は外側サイドカウル部材50の車幅方向内側を向く内面から内側に突出する。係止凹部62及び係止孔66が内側サイドカウル部材30に設けられている。係止凹部62は、内側サイドカウル部材30を貫通する孔又は外縁に設けられた凹みである。係止孔66は例えばゴムなどの弾性部材のカラーに形成された孔である。例えば、係止爪61は、車幅方向と交差する方向に沿って係止凹部62に挿入され、係止ピン65は、車幅方向に沿って係止孔66に挿入される。
【0045】
ボルト締結部68は外側サイドカウル部材50の上部の内面に設けられている。ボルトBの締結方向は、例えば係止孔66への係止ピン65の挿入方向と交差する方向である。ここではボルトBの締結方向は、上下方向から若干傾斜した方向である。ボルト締結部68は、内側サイドカウル部材30に締結されてもよいし、フロントカウル24など内側サイドカウル部材30以外の部材に締結されてもよい。
【0046】
3組の第1係止部60は外側サイドカウル部材50の前縁部に沿って上下方向に並んで設けられている。3組の第2係止部64は外側サイドカウル部材50の後縁部に沿って上下方向に並んで設けられている。2組の第1係止部60及び3組の第2係止部64は、トンネル部TNの後方に設けられる。1組の第1係止部60及びボルト締結部68はトンネル部TNの前方に設けられる。1組の第1係止部60及びボルト締結部68は外側サイドカウル部材50のうちフロントカウル24に沿う縁部の周辺に設けられている。これにより、外側サイドカウル部材50が、フロントカウル24に沿った状態に保たれやすい。
【0047】
内側サイドカウル部材30には車体フレーム11に締結されるための締結部が設けられてもよい。締結部は内側サイドカウル部材30のうち外側サイドカウル部材50に覆われる部分に設けられてもよい。これにより、内側サイドカウル部材30の締結部を外側サイドカウル部材50によって見えにくくすることができる。
【0048】
外側サイドカウル部材50には、内側サイドカウル部材30への取付けに供しないボルト締結部が設けられてもよい。例えば、外側サイドカウル部材50の後方下部には内側サイドカウル部材30とは別の部材であるロアカウル26が接続される。外側サイドカウル部材50には当該ロアカウル26を取付けるためのボルト締結部が設けられてもよい。
【0049】
<リーン姿勢>
図9は、リーン姿勢にある自動二輪車10を示す正面図である。
【0050】
上述したように、自動二輪車10には傾斜壁部31が形成されている。自動二輪車10がコーナリングの際などに、リーン姿勢をとると、図9に示すように、左右一対の傾斜壁部31のうち一方(一対の傾斜壁部31のうち地面から遠い方)の傾斜壁部31が水平又は水平に近い姿勢となる。これにより、当該傾斜壁部31に沿って進む走行風W5が車体の上部に案内されやすくなり、当該走行風W5によってダウンフォースが得られやすくなる。
【0051】
この際、傾斜壁部31の後方かつ上方にトンネル部TNが位置すると、一部の走行風W5がトンネル部TNに入り得る。これにより、走行風W5が車体から離れることをトンネル部TNの外側の壁によって抑制できる。このため、走行風W5によってダウンフォースがより得られやすくなる。
【0052】
<効果等>
以上のように構成された自動二輪車10によると、図4に示すように、外側サイドカウル部材50の車幅方向外側面に沿って流れる走行風W4は、乗り手80の膝81の外側を流れる。また、図4に示すように、トンネル部TNを通過した走行風W3は、乗り手80の膝81に衝突する。この走行風W3は、乗り手80の膝81と膝当て部材23との間、言い換えると膝81の車幅方向内側に流れる。このようにトンネル部TNによって、乗り手80の膝81に対して、走行風W3、W4を分散して流すことができる。したがって、乗り手80の膝81部に局所的に走行風W3、W4が当たることを抑制でき、乗り手80の走行時の負担を低減することができる。たとえばトンネル部TNを通過した走行風W3の一部を乗り手80の膝81の内側を通過させることで、膝81を挟む車幅方向内外のそれぞれの空間の流速差を抑えることができる。これによって膝81を外側に移動させる外力を抑えて乗り手80の負担を減らしやすい。
【0053】
また、内側サイドカウル部材30が凹壁37を含んでいると、トンネル部TNを通過する走行風W2を内側サイドカウル部材30に沿わせて後方開口EXTまで導きやすい。
【0054】
また、内側サイドカウル部材30の走行風案内面38に凸部39が設けられていると、後方開口EXTから出た走行風W3は凸部39の上側を通って乗り手80の膝81の車幅方向内側に導かれやすくなる。
【0055】
また、凸部39が熱交換器からの排風用開口40の上部に位置すると、凸部39によって、熱交換器の排熱が乗り手80に伝わるのを抑制できる。
【0056】
また、内側サイドカウル部材30が傾斜壁部31を含んでいると、車体リーン時に傾斜壁部31が水平又は水平に近い姿勢となることによって、ダウンフォースを得やすくなる。係る構成は、例えば自動二輪車10が、排気量が400CC以上(例えば、600ccなど)の大型二輪車であり、トップスピード時のダウンフォースよりもコーナリング時のダウンフォースを重視したい稼ぎたい場合などに好適である。
【0057】
また、外側周壁部53が、同じ高さに位置する内側周壁部33よりも前方に突出する前方突出部54を有していると、前方突出部54によって走行風W1を前方開口ENTに導きやすくなり、自動二輪車10において、トンネル部TNを通過する走行風W2を増やしやすい。
【0058】
また、側面視において、前方突出部54がライト21の側方を部分的に覆っていると、ライト21の側方を通過する走行風W1をトンネル部TN内に導きやすくなる。
【0059】
また、内側サイドカウル部材30は、ライト21の照射面の後縁に沿って延びる壁部を含み、トンネル部TNの前方開口ENTがライト21と同じ高さかそれよりも下方に位置すると、トンネル部TNが設けられた場合でも、ライト21の光がトンネル部TNに入りにくくなり、ライト21の光がトンネル部TNを通じて後方に漏れることを抑制できる。
【0060】
また、内側サイドカウル部材30が内側周壁部33と遮蔽壁部34とを含んでいると、トンネル部TNが設けられた場合でも、ライト21の光がトンネル部TNを通じて後方に漏れることを抑制できる。
【0061】
また、トンネル部TNの前後方向中間部が前方開口ENTよりも車幅方向外側に位置すると、自動二輪車10の正面視においてトンネル部TNを見たときに、トンネル部TNの出口が見えなくなり、車両前方の光がトンネル部TNを通じて車両後方に抜けることを抑制できる。
【0062】
また、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50とは、係止部とボルト締結部68との組み合わせによって取付けられ、ボルト締結部68は外側サイドカウル部材50の内面に1つのみ設けられている。この場合、ボルト締結部68が少ないことによって内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50との取付けが容易となる。また、ボルト締結部68が外側サイドカウル部材50の内面にあることによってボルト締結部68の露出を抑制できる。
【0063】
<変形例>
これまで、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50との間にトンネル部TNが設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。傾斜壁部31を備える鞍乗型車両10において、傾斜壁部31の後方かつ上方に走行風W5を通す走行風通過トンネル部が、内側サイドカウル部材30と外側サイドカウル部材50との間以外の位置に設けられていてもよい。つまり、自動二輪車10は、車体前方に位置し、かつ、車幅方向外側に進むにつれて下方に向けて延びると共に後方に進むにつれて上方に傾斜する傾斜壁部31と、走行風を通す走行風通過トンネル部を形成し、傾斜壁部31の後方かつ上方に位置する壁部と、を備えてもよい。この場合でも、リーン姿勢時に傾斜壁部31が水平又は水平に近い姿勢となることによって、走行風通過トンネル部に向けて傾斜壁部31に沿って進む走行風W5によって、ダウンフォースを得やすくなる。
【0064】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【0065】
本明細書及び図面は、下記の各態様を開示する。
【0066】
第1の態様に係る鞍乗型車両は、シートと、前記シートの前方に位置し、乗り手の膝が当たる膝当て部材と、前記膝当て部材及び前記シートを支持する車体フレームと、前記車体フレームを車幅方向外側から覆う内側サイドカウル部材と、前記膝当て部材よりも前方で前記内側サイドカウル部材の一部を車幅方向外側から部分的に覆う外側サイドカウル部材と、を備え、前記内側サイドカウル部材と前記外側サイドカウル部材との間に、前後方向に沿って延びるトンネル部が設けられ、前記トンネル部は、車両走行時の走行風を前記トンネル部内に導入する前方開口と、前記トンネル部内の前記走行風を前記膝当て部材に向けて導出する後方開口とを有する、鞍乗型車両である。
【0067】
第1の態様によると、外側サイドカウル部材の車幅方向外側面に沿って流れる走行風は、乗り手の膝の外側を流れる。またトンネル部を通過した走行風は、乗り手の膝に衝突する。この走行風は、乗り手の膝と膝当て部材との間、言い換えると膝の車幅方向内側に流れる。このようにトンネル部によって、乗り手の膝に対して、走行風を分散して流すことができる。したがって、乗り手の膝に局所的に走行風が当たることを抑制でき、乗り手の走行時の負担を低減することができる。たとえばトンネル部を通過した走行風の一部を乗り手の膝の内側を通過させることで、膝を挟む車幅方向内外のそれぞれの空間の流速差を抑えることができる。これによって膝を外側に移動させる外力を抑えて乗り手の負担を減らしやすい。
【0068】
第2の態様は、第1の態様に係る鞍乗型車両であって、前記内側サイドカウル部材は、前記トンネル部を構成する壁部であって、前記外側サイドカウル部材に対して内側に凹む凹壁を含む、鞍乗型車両である。これにより、トンネルを通過する走行風を内側サイドカウル部材に沿わせて後方開口まで導きやすい。
【0069】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る鞍乗型車両であって、前記内側サイドカウル部材は、前記トンネル部の前記後方開口をなす部分に連続し、前記トンネル部よりも後方に延びる走行風案内面を含み、前記走行風案内面には、車幅方向外側に凸となる凸部が設けられ、前記凸部の前側部分は前記後方開口に向けて延びる、鞍乗型車両である。これにより、後方開口から出た走行風は凸部の上側を通って乗り手の膝部の車幅方向内側に導かれやすくなる。
【0070】
第4の態様は、第3の態様に係る鞍乗型車両であって、前記凸部が、熱交換器からの排風用開口の上部に位置する、鞍乗型車両である。この場合、凸部によって、熱交換器の排熱が乗り手に伝わるのを抑制できる。
【0071】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両であって、前記内側サイドカウル部材は、前記トンネル部の前記前方開口よりも前方に位置し、車幅方向内側に向かうにつれて上方に延びる傾斜壁部を含む、鞍乗型車両である。この場合、車体リーン時に傾斜壁部が水平又は水平に近い姿勢となることによって、ダウンフォースを得やすくなる。
【0072】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両であって、車体前方に位置し、かつ、車幅方向外側に進むにつれて下方に向けて延びると共に後方に進むにつれて上方に傾斜する傾斜壁部と、走行風を通す走行風通過トンネル部を形成し、前記傾斜壁部の後方かつ上方に位置する壁部と、を備える、鞍乗型車両である。これにより、車体リーン時に傾斜壁部が水平又は水平に近い姿勢となることによって、傾斜壁部に沿って進みトンネル部を通過する走行風によってダウンフォースを得やすくなる。
【0073】
第7の態様は、第1から第6のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両であって、前記内側サイドカウル部材は、前記前方開口の車幅方向内側に位置する内側周壁部を含み、前記外側サイドカウル部材は、前記前方開口の車幅方向外側に位置する外側周壁部を含み、前記外側周壁部は、同じ高さに位置する内側周壁部よりも前方に突出する前方突出部を有する、鞍乗型車両である。この場合、前方突出部によって走行風を前方開口に導きやすくなり、鞍乗型車両において、トンネル部を通過する走行風を増やしやすい。
【0074】
第8の態様は、第7の態様に係る鞍乗型車両であって、車体前方に光を照射するライトを備え、側面視において、前記前方突出部は、前記ライトの側方を部分的に覆う、鞍乗型車両である。この場合、ライトの側方を通過する走行風をトンネル部内に導きやすくなる。
【0075】
第9の態様は、第1から第8のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両であって、車体前方に光を照射するライトを備え、前記内側サイドカウル部材は、前記ライトの照射面の後縁に沿って延びる壁部を含み、前記トンネル部の前記前方開口は、前記ライトと同じ高さかそれよりも下方に位置する、鞍乗型車両である。この場合、トンネル部が設けられた場合でも、ライトの光がトンネル部に入りにくくなり、ライトの光がトンネル部を通じて後方に漏れることを抑制できる。
【0076】
第10の態様は、第1から第9のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両であって、車体前方に光を照射するライトを備え、前記内側サイドカウル部材は、前記前方開口の車幅方向内側に位置し、前記ライトの照射面の後縁に沿って延びる内側周壁部と、前記内側周壁部よりも後方に位置し、前記ライトの光が前記トンネル部を通じて後ろに行くことを抑制する遮蔽壁部とを含む、鞍乗型車両である。この場合、トンネル部が設けられた場合でも、ライトの光がトンネル部を通じて後方に漏れることを抑制できる。
【0077】
第11の態様は、第1から第10のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両であって、前記トンネル部の前後方向中間部は前記前方開口よりも車幅方向外側に位置する、鞍乗型車両である。この場合、鞍乗型車両の正面視においてトンネル部を見たときに、トンネル部の出口が見えなくなり、車両前方の光がトンネル部を通じて車両後方に抜けることを抑制できる。
【0078】
第12の態様は、第1から第11のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両であって、前記内側サイドカウル部材と前記外側サイドカウル部材とは、係止部とボルト締結部との組み合わせによって取付けられ、前記ボルト締結部は前記外側サイドカウル部材の内面に1つのみ設けられている、鞍乗型車両である。この場合、ボルト締結部が少ないことによって内側サイドカウル部材と外側サイドカウル部材との取付けが容易となる。また、ボルト締結部が外側サイドカウル部材の内面にあることによってボルト締結部の露出を抑制できる。
【0079】
第13の態様は、車体前方に位置し、かつ、車幅方向外側に進むにつれて下方に向けて延びると共に後方に進むにつれて上方に傾斜する傾斜壁部を含むカウル部材と、走行風を通す走行風通過トンネル部を形成し、前記傾斜壁部の後方かつ上方に位置する壁部と、を備える、鞍乗型車両である。この場合、車体リーン時に傾斜壁部が水平又は水平に近い姿勢となることによって、傾斜壁部に沿って進み走行風通過トンネル部を通過する走行風によってダウンフォースを得やすくなる。
【0080】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0081】
10 自動二輪車(鞍乗型車両)
11 車体フレーム
13 燃料タンク
14 シート
21 ライト
22 ステップ
23 タンクカバー(膝当て部材)
30 内側サイドカウル部材
31 傾斜壁部
33 内側周壁部
34 リブ(遮蔽壁部)
35、36 凸壁
37 凹壁
38 走行風案内面
39 凸部
40 排風用開口
50 外側サイドカウル部材
53 外側周壁部
54 前方突出部
60、64 係止部
68 締結部
80 乗り手
81 膝
ENT 前方開口
EXT 後方開口
TN トンネル部
W1、W2、W3、W4、W5 走行風
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9