(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165005
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電子装置及び電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/18 20060101AFI20241121BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H05K1/18 K
H05K1/02 C
H05K1/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080804
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 功基
(72)【発明者】
【氏名】山尾 浩
(72)【発明者】
【氏名】石本 淳
(72)【発明者】
【氏名】仲野 是克
【テーマコード(参考)】
5E336
5E338
【Fターム(参考)】
5E336AA04
5E336AA09
5E336AA16
5E336BB01
5E336BC01
5E336CC32
5E336CC42
5E336CC55
5E336DD37
5E336EE01
5E336GG03
5E336GG06
5E338AA01
5E338BB02
5E338BB05
5E338BB13
5E338BB75
5E338EE02
5E338EE51
(57)【要約】
【課題】電子部品からプリント配線板への伝熱効率の低下を抑止しつつ半田中にボイドが発生することを抑止可能とする。
【解決手段】電子部品2と、電子部品2が接合層4を介して接合されるプリント配線板3とを備える電子装置であって、電子部品2は、少なくとも一部に開口部2eが設けられると共に接合層4が接触する電極板2cを備え、プリント配線板3は、開口部2eに連通する排気貫通孔3cを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、前記電子部品が半田を介して接合されるプリント配線板とを備える電子装置であって、
前記電子部品は、少なくとも一部に開口部が設けられると共に前記半田が接触する電極層を備え、
前記プリント配線板は、前記開口部に連通する排気貫通孔を有する
ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記排気貫通孔は、前記プリント配線板の厚さ方向に直線状に延伸して前記プリント配線板を貫通していることを特徴とする請求項1記載の電子装置。
【請求項3】
前記排気貫通孔の断面積は、前記開口部の開口面積以下であることを特徴とする請求項2記載の電子装置。
【請求項4】
前記厚さ方向沿った方向から見て、前記排気貫通孔は、全体が前記開口部と重なっていることを特徴とする請求項2または3記載の電子装置。
【請求項5】
前記厚さ方向沿った方向から見て、前記排気貫通孔は円形状に形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の電子装置。
【請求項6】
前記電子部品は、パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子をモールドする封止材とを備え、
前記開口部は、前記封止材の一部を露出する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記封止材は、前記開口部に挿入される突出部を有することを特徴とする請求項6記載の電子装置。
【請求項8】
電子部品と、前記電子部品が半田を介して接合されるプリント配線板とを備える電子装置の製造方法であって、
排気貫通孔が形成されたプリント配線板を形成するプリント配線板形成工程と、
少なくとも一部に開口部が設けられた電極層を備える前記電子部品に対して、前記排気貫通孔が前記開口部に連通されるように前記プリント配線板を配置する配置工程と、
前記プリント配線板と前記電子部品とを半田を介して接合する接合工程と
を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記プリント配線板がスルーホールを備え、
前記プリント配線板形成工程にて、前記スルーホールと前記排気貫通孔とを形成する
ことを特徴とする請求項8記載の電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置及び電子装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電子部品とプリント配線板を備えるプリント回路板が開示されている。特許文献1に開示されたプリント回路板においてプリント配線板は、基材と、パッドとを備え、さらにパッド及び基材を貫通する貫通孔を有する。このような特許文献1に開示されたプリント回路板は、電子部品とプリント配線板とを半田接合する際に発生するボイドを、貫通孔を通じて外部に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1においては、電子部品とプリント配線板とを接合する半田がプリント配線板に形成された貫通孔にて露出される。このような半田の露出された部分に電子部品の電極の一部が接合されている場合、電子部品の熱がプリント配線板に効率的に伝わらず、電子部品からプリント配線板への伝熱効率が低下する。電子部品の熱の一部はプリント配線板を介して放熱されるため、電子部品からプリント配線板への伝熱効率が低下することで、電子部品の冷却効率が低下することになる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電子部品からプリント配線板への伝熱効率の低下を抑止しつつ半田中にボイドが発生することを抑止可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、電子部品と、上記電子部品が半田を介して接合されるプリント配線板とを備える電子装置であって、上記電子部品が、少なくとも一部に開口部が設けられると共に上記半田が接触する電極層を備え、上記プリント配線板が、上記開口部に連通する排気貫通孔を有するという構成を採用する。
【0008】
本発明の第2の態様は、電子部品と、上記電子部品が半田を介して接合されるプリント配線板とを備える電子装置の製造方法であって、排気貫通孔が形成されたプリント配線板を形成するプリント配線板形成工程と、少なくとも一部に開口部が設けられた電極層を備える上記電子部品に対して、上記排気貫通孔が上記開口部に連通されるように上記プリント配線板を配置する配置工程と、上記プリント配線板と上記電子部品とを半田を介して接合する接合工程とを有するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子部品からプリント配線板への伝熱に大きく寄与しない電極の開口部に対して、プリント配線板の排気貫通孔が接続されている。電極の開口部には半田が濡れ広がらず、開口部には排気貫通孔の有無によらず半田が接合されない。このため、排気貫通孔を設けた場合であっても、半田と電子部品または半田とプリント配線板との接触面積の減少を少なくあるいは無くすことができる。したがって、排気貫通孔を設けた場合であっても、電子部品からプリント配線板への伝熱効率の低下を抑止しできる。また、排気貫通孔を設けることで、プリント配線板と電子部品との間の気泡をプリント配線板の外部に排気することができる。よって、本発明は、電子部品からプリント配線板への伝熱効率の低下を抑止しつつ半田中にボイドが発生することを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態における電子装置の概略構成を示す模式的な断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における電子装置が備える電子部品の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における電子装置が備える電子部品の概略構成を示す下面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における電子装置の模式的な下面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における電子装置の製造工程を模式的に示す説明図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の変形例における電子装置の模式的な下面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態の変形例における電子装置の模式的な下面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態の変形例における電子装置の模式的な下面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態における電子装置の概略構成を示す模式的な断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態における電子装置の製造工程を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る電子装置及び電子装置の製造方法の一実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における電子装置1の概略構成を示す模式的な断面図である。この図に示すように、本実施形態の電子装置1は、電子部品2と、プリント配線板3と、半田からなる接合層4とを備える。
【0013】
なお、電子装置1の設置姿勢は特に限定されるものではない。ただし、以下の説明においては、説明の便宜上、電子部品2とプリント配線板3とが配列される方向を上下方向と称する。また、この上下方向のうち、電子部品2側を上方、プリント配線板3側を下方と称する。
【0014】
図2は、電子部品2の概略構成を示す斜視図である。また、
図3は、電子部品2の概略構成を示す下面図である。電子部品2は、例えば、パワートランジスタである。
図2に示すように、本実施形態において電子部品2は、半導体素子2aと、モールド樹脂2bと、電極板2cとを備えている。
【0015】
半導体素子2aは、モールド樹脂2bの内部に封止されるように配置されたチップ部品である。半導体素子2aは、例えば大電流を扱うパワー半導体素子である。モールド樹脂2bは、半導体素子2aを覆う樹脂部材である。つまり、モールド樹脂2bは、半導体素子2aをモールドしている。
【0016】
図2に示すように、モールド樹脂2bは、直方体状に形成されている。なお、
図1及び
図2には省略しているが、電子部品2は、モールド樹脂2bの外部に延びる複数の端子が設けられている。これらの端子は、モールド樹脂2bの内部の半導体素子2aに電気的に接続されている。
【0017】
また、
図1に示すように、モールド樹脂2bは、電極板2cの後述する開口部2eに挿入される突出部2dを有する。突出部2dは、モールド樹脂2bの底部から下方に向けて突出するように設けられている。
【0018】
電極板2cは、モールド樹脂2bの底部に配置されている板状の電極である。電極板2cは、厚さ方向が上下方向と平行となるように配置されている。電極板2cは、モールド樹脂2bの内部の半導体素子2aに対して電気的に接続されている。
【0019】
電極板2cの下面は接合層4との接触面である。電極板2cは、下面が接合層4を介してプリント配線板3に接合される。このように電極板2cがプリント配線板3に接合されることで、電子部品2がプリント配線板3に実装される。
【0020】
図1及び
図2に示すように、電極板2cには、上下方向に電極板2cを貫通する開口部2eが設けられている。開口部2eは、例えば
図3に示すように、上下方向から見て長方形状に形成されている。つまり、開口部2eは、長辺と短辺とを有する矩形状に形成されている。この開口部2eは、電極板2c上に位置するモールド樹脂2bの一部を露出している。
【0021】
上述のように開口部2eには、モールド樹脂2bの突出部2dが挿入されている。開口部2eは、突出部2dによって全体が埋設されている。突出部2dの下面は、電極板2cの下面と面一となるように形成されている。このように、開口部2eに突出部2dが挿入されることで、電極板2cとモールド樹脂2bが強固に固定される。
【0022】
なお、本実施形態においては、開口部2eの形状が長方形状である。しかしながら、開口部2eの形状は長方形状に限定されない。例えば、開口部2eの形状は、円形、楕円、トラック形状、多角形形状であってもよい。
【0023】
このような本実施形態の電子部品2は、下方から見た場合には、電極板2cに形成された開口部2eからモールド樹脂2bの一部(突出部2d)が露出した状態となる。なお、モールド樹脂2bは樹脂によって形成されているため、電子部品2とプリント配線板3とを接合するときに、半田が濡れ広がらない。このため、
図1に示すように、突出部2dの下面には半田による接合層4は形成されていない。
【0024】
プリント配線板3は、電子部品2が接合層4を介して実装される基板である。プリント配線板3は、絶縁体で形成される基材3aと、導体で形成される導電層3bとを備える。
図1においては、基材3aの上面にのみ導電層3bが設けられているように省略してプリント配線板3を図示しているが、例えばプリント配線板3は多層基板である。
【0025】
このような基材3aの上面に形成された導電層3bの一部は、電子部品2が接合されるパッドとして機能する。つまり、電子部品2の電極板2cは接合層4を介して導電層3bに接続されている。このように電極板2cと導電層3bとが接合層4を介して接続されることで、電子部品2とプリント配線板3とは、電気的に接続されている。
【0026】
また、
図1に示すように、プリント配線板3は、電極板2cの開口部2eに連通する排気貫通孔3cを有している。排気貫通孔3cは、プリント配線板3を貫通する孔部であり、上下方向(プリント配線板3の厚さ方向)に直線状に延伸してプリント配線板3を貫通している。つまり、排気貫通孔3cは、プリント配線板3の下面と上面とを接続するように形成されている。
【0027】
図4は、本実施形態の電子装置1の模式的な下面図である。この図に示すように、本実施形態において、排気貫通孔3cは、上下方向(プリント配線板3の厚さ方向に沿った方向)から見て、円形状に形成されている。本実施形態では、排気貫通孔3cは、直径が開口部2eの短辺寸法と同一に形成されている。また、上下方向から見て、排気貫通孔3cの全体が開口部2eと重なるように配置されている。さらに、上下方向から見て、排気貫通孔3cは、開口部2eの長辺に沿った方向において、開口部2eの中央部と重なるように配置されている。このような排気貫通孔3cの断面積は、開口部2eの開口面積よりも小さい。
【0028】
このような排気貫通孔3cは、電子部品2とプリント配線板3とを半田を用いて接合する場合に、電子部品2とプリント配線板3の間に存在する気泡が、プリント配線板3の下側に排気されることを可能とする。
【0029】
例えば、電子部品2とプリント配線板3の間に存在する気泡は、電子部品2とプリント配線板3とを接合する場合に加熱されることで膨張し、溶融された半田の内部を移動する。このとき、気泡は、排気貫通孔3cを介してプリント配線板3の下側に移動することができる。この結果、電子部品2とプリント配線板3との間に大きなボイドが発生することが抑制される。
【0030】
接合層4は、電子部品2とプリント配線板3との間に設けられており、半田により形成されている。このような接合層4は、電子部品2とプリント配線板3とを電気的に接続している。
図1に示すように、本実施形態においては、接合層4は、電極板2cの下面と接触するように設けられており、電極板2cの開口部2eには設けられていない。つまり、下方から見た場合には、接合層4にも電極板2cの開口部2eと同一の開口部が設けられている。
【0031】
続いて、このような本実施形態の電子装置1の製造方法について、
図5を参照して説明する。なお、
図5は、本実施形態の電子装置1の製造工程を模式的に示した説明図である。
【0032】
まず、
図5(a)に示すように、排気貫通孔3cが形成されたプリント配線板3を形成する。ここでは、例えば、ビルドアップ工法によって多層基板を形成し、この多層基板に対して排気貫通孔3cを形成する。排気貫通孔3cは、例えばレーザを用いて多層基板に貫通孔を形成する。また、多層基板の各層を形成しながら、各層に開口部を形成していくことで、排気貫通孔3cを形成してもよい。このような
図5(a)に示す工程は、排気貫通孔3cが形成されたプリント配線板3を形成するプリント配線板形成工程である。
【0033】
続いて、
図5(b)に示すように、プリント配線板3に対して電子部品2を配置する。ここでは、ソルダーペーストHを介して、プリント配線板3の導電層3b上に電子部品2を配置する。なお、ソルダーペーストHは、半田シートであってもよい。また、プリント配線板3に形成された排気貫通孔3cが電子部品2の電極板2cに形成された開口部2eに連通されるように、プリント配線板3と電子部品2とを配置する。このような
図5(b)に示す工程は、開口部2eが設けられた電極板2cを備える電子部品2に対して、排気貫通孔3cが開口部2eに連通されるようにプリント配線板を配置する配置工程である。
【0034】
続いて、
図5(c)に示すように、ソルダーペーストHを加熱する。ソルダーペーストHが加熱されることでソルダーペーストHが溶融され、プリント配線板3と電子部品2とが接合される。溶融されたソルダーペーストHが冷却されて硬化されることで、接合層4が形成される。このような
図5(c)に示す工程は、プリント配線板3と電子部品2とを半田を介して接合する接合工程である。
【0035】
以上のような本実施形態の電子装置1は、電子部品2と、プリント配線板3とを備える。プリント配線板3は、電子部品2が接合層4を介して接合される。また、電子部品2は、電極板2cを備える。電極板2cは、少なくとも一部に開口部2eが設けられると共に接合層4が接触する。また、プリント配線板3は、開口部2eに連通する排気貫通孔3cを有する。
【0036】
このような電子装置1によれば、電子部品2からプリント配線板3への伝熱に大きく寄与しない電極の開口部2eに対して、プリント配線板3の排気貫通孔3cが接続されている。電極の開口部2eには溶融された半田が濡れ広がらず、開口部2eには排気貫通孔3cの有無によらず接合層4が接合されない。このため、排気貫通孔3cを設けた場合であっても、接合層4と電子部品2との接触面積、または接合層4とプリント配線板3との接触面積の減少を少なくあるいは無くすことができる。したがって、排気貫通孔3cを設けた場合であっても、電子部品2からプリント配線板3への伝熱効率の低下を抑止することができる。
【0037】
また、プリント配線板3に排気貫通孔3cを設けることで、プリント配線板3と電子部品2との間の気体(気泡)をプリント配線板3の下方に排気することができる。プリント配線板3と電子部品2との間の気体は、半田を溶融する場合の熱により膨張する。このような膨張した気体は、排気貫通孔3cからプリント配線板3の外部に排気される。このように気体が排気された状態で半田が冷却されることで、接合層4にボイドが発生することを抑止できる。
【0038】
したがって、本実施形態の電子装置1は、電子部品2からプリント配線板3への伝熱効率の低下を抑止することができ、さらに接合層4中にボイドが発生することを抑止できる。つまり、本実施形態の電子装置1は、電子部品2からプリント配線板3への伝熱効率の低下を抑止しつつ接合層4中にボイドが発生することを抑止できる。
【0039】
また、本実施形態の電子装置1において排気貫通孔3cは、プリント配線板3の厚さ方向に直線状に延伸してプリント配線板3を貫通している。このような本実施形態の電子装置1によれば、排気貫通孔3cを傾斜させたり、蛇行させたりする場合と比較して、排気貫通孔3cの長さが短くなる。したがって、容易にプリント配線板3に対して排気貫通孔3cを形成することができる。
【0040】
また、本実施形態の電子装置1において排気貫通孔3cの断面積は、開口部2eの開口面積以下である。このような本実施形態の電子装置1は、排気貫通孔3cの断面積を小さくすることができ、排気貫通孔3cを形成することによるプリント配線板3の強度低下を抑止することができる。
【0041】
また、本実施形態の電子装置1においては、上下方向から見て、排気貫通孔3cは、全体が開口部2eと重なっている。このような本実施形態の電子装置1によれば、排気貫通孔3cの全部位を接合層4の下方に配置することができ、接合層4と電子部品2との接触面積、または接合層4とプリント配線板3との接触面積の減少を無くすことが可能となる。
【0042】
また、本実施形態の電子装置1においては、上下方向から見て、排気貫通孔3cは円形状に形成されている。このような本実施形態の電子装置1によれば、レーザ加工等によって排気貫通孔3cを容易に形成することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の電子装置1において電子部品2は、半導体素子2aと、半導体素子2aをモールドするモールド樹脂2bとを備える。また、開口部2eは、モールド樹脂2bの一部を露出する。樹脂は金属と比較して、溶融した半田が濡れ広がり難い。このため、本実施形態の電子装置1によれば、半田が溶融された場合に、開口部2eに半田が広がることを抑制できる。
【0044】
また、本実施形態の電子装置1においてモールド樹脂2bは、開口部2eに挿入される突出部2dを有する。このような本実施形態の電子装置1によれば、モールド樹脂2bの突出部2dが開口部2eに挿入されることで、電極板2cとモールド樹脂2bとの接合強度を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態の電子装置1の製造方法は、電子部品2と、電子部品2が接合層4を介して接合されるプリント配線板3とを備える電子装置1の製造方法である。本実施形態の電子装置1の製造方法は、プリント配線板形成工程と、配置工程と、接合工程とを有する。プリント配線板形成工程は、排気貫通孔3cが形成されたプリント配線板3を形成する工程である。配置工程は、少なくとも一部に開口部2eが設けられた電極板2cを備える電子部品2に対して、排気貫通孔3cが開口部2eに連通されるようにプリント配線板3を配置する工程である。接合工程は、プリント配線板3と電子部品2とを接合層4を介して接合する工程である。
【0046】
このような本実施形態の電子装置1の製造方法によれば、電子部品2からプリント配線板3への伝熱に大きく寄与しない電極の開口部2eに対して、プリント配線板3の排気貫通孔3cが接続される。このため、排気貫通孔3cを設けた場合であっても、接合層4と電子部品2との接触面積、または接合層4とプリント配線板3との接触面積の減少を少なくあるいは無くすことができる。したがって、排気貫通孔3cを設けた場合であっても、電子部品2からプリント配線板3への伝熱効率の低下を抑止しできる。
【0047】
また、プリント配線板3に排気貫通孔3cを設けることで、プリント配線板3と電子部品2との間の気体(気泡)をプリント配線板3の下方に排気することができる。したがって、本実施形態の電子装置1の製造方法は、電子部品2からプリント配線板3への伝熱効率の低下を抑止することができ、さらに接合層4中にボイドが発生することを抑止できる。つまり、本実施形態の電子装置1の製造方法は、電子部品2からプリント配線板3への伝熱効率の低下を抑止しつつ接合層4中にボイドが発生することを抑止できる。
【0048】
なお、本実施形態においては、排気貫通孔3cの直径が開口部2eの短辺寸法と同一である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図6に示すように、排気貫通孔3cを直径が開口部2eの短辺寸法よりも小さい形状に形成してもよい。また、例えば、
図7に示すように、排気貫通孔3cを直径が開口部2eの短辺寸法よりも大きい形状に形成してもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、排気貫通孔3cの断面形状が円形である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図8に示すように、排気貫通孔3cの断面形状を開口部2eと同一形状としてもよい。また、排気貫通孔3cの断面形状は、開口部2eよりも面積が大きな、または開口部2eよりも面積が小さな形状であってもよい。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図9及び
図10を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0051】
図9は、本発明の第2実施形態における電子装置1Aの概略構成を示す模式的な断面図である。この図に示すように、本実施形態の電子装置1Aは、スルーホール3dが設けられたプリント配線板3を備える。つまり、本実施形態の電子装置1Aにおいては、プリント配線板3は、スルーホール3dを備える。
【0052】
スルーホール3dは、
図9に示すように、プリント配線板3を上下方向に貫通する貫通孔である。スルーホール3dは、断面形状が円形に形成されており、プリント配線板3の各層同士を接続する。例えば、スルーホール3dの内壁面には、各層の導電層を電気的に接続する金属膜が設けられている。
【0053】
続いて、このような本実施形態の電子装置1Aの製造方法について、
図10を参照して説明する。なお、
図10は、本実施形態の電子装置1Aの製造工程を模式的に示す説明図である。
【0054】
まず、
図10(a)に示すように、排気貫通孔3cが形成されたプリント配線板3を形成する。ここでは、例えば、ビルドアップ工法によって多層基板を形成し、この多層基板に対して排気貫通孔3cを形成する。排気貫通孔3cは、例えばレーザを用いて多層基板に貫通孔を形成する。また、多層基板の各層を形成しながら、各層に開口部を形成していくことで、排気貫通孔3cを形成してもよい。
【0055】
さらに、本実施形態においては、排気貫通孔3cの形成工程と同一行程でスルーホール3dを形成する。例えば、排気貫通孔3cとスルーホール3dとをレーザを用いて形成する。このような
図10(a)に示す工程は、排気貫通孔3cが形成されたプリント配線板3を形成するプリント配線板形成工程である。
【0056】
このように、本実施形態においては、プリント配線板形成工程にて、排気貫通孔3cとスルーホール3dとを形成する。つまり、排気貫通孔3cとスルーホール3dとは、同一工程にて形成される。
【0057】
続いて、
図10(b)に示すように、プリント配線板3に対して電子部品2を配置する。ここでは、ソルダーペーストHを介して、プリント配線板3の導電層3b上に電子部品2を配置する。また、プリント配線板3に形成された排気貫通孔3cが電子部品2の電極板2cに形成された開口部2eに連通されるように、プリント配線板3と電子部品2とを配置する。このような
図10(b)に示す工程は、開口部2eが設けられた電極板2cを備える電子部品2に対して、排気貫通孔3cが開口部2eに連通されるようにプリント配線板を配置する配置工程である。
【0058】
続いて、
図10(c)に示すように、ソルダーペーストHを加熱する。ソルダーペーストHが加熱されることでソルダーペーストHが溶融され、プリント配線板3と電子部品2とが接合される。溶融されたソルダーペーストHが冷却されて硬化されることで、接合層4が形成される。このような
図10(c)に示す工程は、プリント配線板3と電子部品2とを半田を介して接合する接合工程である。
【0059】
このような本実施形態の電子装置1Aは、プリント配線板3がスルーホール3dを備える。また、本実施形態の電子装置1Aの製造方法は、プリント配線板形成工程にて、スルーホール3dと排気貫通孔3cとを形成する。このため、本実施形態の電子装置1Aの製造方法は、スルーホール3dを形成する工程と排気貫通孔3cとを形成する工程とを別工程とする必要がなく、製造工程を短縮することが可能となる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、上下方向に直線状に延伸する排気貫通孔3cを備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、例えば、上下方向に対して傾斜した排気貫通孔や蛇行した排気貫通孔を備えてもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、開口部2eに対して1つの排気貫通孔3cが連通された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。1つの開口部2eに対して複数の排気貫通孔3cが連通された構成を採用することも可能である。このとき、1つの排気貫通孔3cに連通される複数の排気貫通孔3cの互いの形状は同一である必要はない。
【0063】
また、上記実施形態においては、プリント配線板3に対して1つの電子部品2が実装された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プリント配線板3に対して複数の電子部品2が実装された構成を採用することも可能である。
【0064】
なお、上記実施形態については、例えば以下の付記のようにも記載できる。
【0065】
(付記1)
電子部品と、前記電子部品が半田を介して接合されるプリント配線板とを備える電子装置であって、
前記電子部品は、少なくとも一部に開口部が設けられると共に前記半田が接触する電極層を備え、
前記プリント配線板は、前記開口部に連通する排気貫通孔を有する
ことを特徴とする電子装置。
【0066】
(付記2)
前記排気貫通孔は、前記プリント配線板の厚さ方向に直線状に延伸して前記プリント配線板を貫通していることを特徴とする付記1記載の電子装置。
【0067】
(付記3)
前記排気貫通孔の断面積は、前記開口部の開口面積以下であることを特徴とする付記2記載の電子装置。
【0068】
(付記4)
前記厚さ方向沿った方向から見て、前記排気貫通孔は、全体が前記開口部と重なっていることを特徴とする付記2または3記載の電子装置。
【0069】
(付記5)
前記厚さ方向沿った方向から見て、前記排気貫通孔は円形状に形成されていることを特徴とする付記2~4のいずれか一つに記載の電子装置。
【0070】
(付記6)
前記電子部品は、パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子をモールドする封止材とを備え、
前記開口部は、前記封止材の一部を露出する
ことを特徴とする付記1~5のいずれか一つに記載の電子装置。
【0071】
(付記7)
前記封止材は、前記開口部に挿入される突出部を有することを特徴とする付記6記載の電子装置。
【0072】
(付記8)
電子部品と、前記電子部品が半田を介して接合されるプリント配線板とを備える電子装置の製造方法であって、
排気貫通孔が形成されたプリント配線板を形成するプリント配線板形成工程と、
少なくとも一部に開口部が設けられた電極層を備える前記電子部品に対して、前記排気貫通孔が前記開口部に連通されるように前記プリント配線板を配置する配置工程と、
前記プリント配線板と前記電子部品とを半田を介して接合する接合工程と
を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0073】
(付記9)
前記プリント配線板がスルーホールを備え、
前記プリント配線板形成工程にて、前記スルーホールと前記排気貫通孔とを形成する
ことを特徴とする付記8記載の電子装置の製造方法。
【符号の説明】
【0074】
1……電子装置、1A……電子装置、2……電子部品、2a……半導体素子(パワー半導体素子)、2b……モールド樹脂(封止材)、2c……電極板(電極層)、2d……突出部、2e……開口部、3……プリント配線板、3a……基材、3b……導電層、3c……排気貫通孔、3d……スルーホール、4……接合層(半田)、H……ソルダーペースト