(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165006
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】無機繊維製品処理システム
(51)【国際特許分類】
C03C 25/70 20060101AFI20241121BHJP
F22G 5/12 20060101ALI20241121BHJP
F27B 7/06 20060101ALI20241121BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20241121BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20241121BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20241121BHJP
B09B 3/45 20220101ALI20241121BHJP
B01D 53/38 20060101ALI20241121BHJP
F27D 21/00 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C03C25/70
F22G5/12 Z ZAB
F27B7/06
F27D7/02 A
F27D17/00 104D
F27D19/00
B09B3/45
B01D53/38 100
F27D21/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080805
(22)【出願日】2023-05-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】523180595
【氏名又は名称】是安 正博
(71)【出願人】
【識別番号】506149391
【氏名又は名称】有限会社エヌエステクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】是安 正博
【テーマコード(参考)】
4D002
4D004
4G060
4K056
4K061
4K063
【Fターム(参考)】
4D002AB02
4D002AC10
4D002BA12
4D002CA20
4D002EA02
4D002EA05
4D002GA01
4D002GA02
4D002GB03
4D002HA08
4D004AA16
4D004CA24
4D004CA27
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4D004CB36
4D004DA08
4G060BA05
4G060BB02
4G060BD01
4G060BD03
4K056AA12
4K056BA06
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4K056CA10
4K056CA14
4K056CA20
4K056DA02
4K056DA26
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4K056DB08
4K056DB26
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4K056FA08
4K056FA10
4K056FA13
4K061AA08
4K061BA00
4K061CA23
4K061DA09
4K061EA03
4K061FA06
4K061GA02
4K061GA10
4K061HA05
4K063AA05
4K063AA18
4K063BA06
4K063BA13
4K063CA03
4K063DA06
4K063DA32
(57)【要約】
【課題】無機繊維製品に含まれるバインダーを除去できる無機繊維製品処理システム及び無機繊維製品処理方法を提供する。
【解決手段】無機繊維製品処理システム10は、無機繊維製品を粉砕する粉砕装置14と、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置22と、粉砕装置14によって粉砕された無機繊維製品を過熱蒸気発生装置22から導入された過熱蒸気を用いて加熱し、処理された無機繊維製品及び排出ガスを排出する加熱炉24と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置と、
粉砕された無機繊維製品を前記過熱蒸気発生装置から導入された過熱蒸気を用いて加熱し、処理された無機繊維製品及び排出ガスを排出する加熱炉と、を備えた無機繊維製品処理システム。
【請求項2】
請求項1記載の無機繊維製品処理システムにおいて、
前記加熱炉が、回転する傾斜した筒状の炉を有するロータリーキルンである無機繊維製品処理システム。
【請求項3】
請求項2記載の無機繊維製品処理システムにおいて、
前記過熱蒸気が、前記炉の高い方の側から導入される無機繊維製品処理システム。
【請求項4】
請求項3記載の無機繊維製品処理システムにおいて、
前記ロータリーキルンに投入される無機繊維製品が予め決められた量になるように、前記搬送装置を制御する制御装置と、を更に備える無機繊維製品処理システム。
【請求項5】
請求項4記載の無機繊維製品処理システムにおいて、
過熱蒸気を用いて、前記炉から排出された排出ガスの臭気を低減する脱臭装置を更に備える無機繊維製品処理システム。
【請求項6】
請求項5記載の無機繊維製品処理システムにおいて、
前記脱臭装置から排出された排出ガスを冷却するための熱交換器を更に備え、
前記熱交換器にて排出ガスを冷却することによって加熱された少なくとも酸素を含んだ気体が、前記炉に導入される無機繊維製品処理システム。
【請求項7】
請求項6記載の無機繊維製品処理システムにおいて、
前記無機繊維製品が、グラスウール、ロックウール、セラミックウール又はグラスファイバーを少なくとも含む無機繊維製品処理システム。
【請求項8】
バインダーにて結合された無機繊維材料を含む無機繊維製品を粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程にて粉砕された無機繊維製品を過熱蒸気雰囲気にて撹拌しながら加熱する加熱工程と、を含む無機繊維製品処理方法。
【請求項9】
請求項8記載の無機繊維製品処理方法において、
前記加熱工程にて発生した排ガスの臭気を、800℃以上の過熱蒸気にて低減する脱臭工程を更に含む無機繊維製品処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維製品処理システム及び無機繊維製品処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機繊維製品は、断熱材や吸音材として使用されている。無機繊維製品に含まれる無機繊維を結合するバインダーとしては、フェノール樹脂等が一般的であったが、最近はアクリル樹脂やシュガーバインダー等の有機物のバインダーが使用されている。
プレス屑には多くの有機物のバインダーが付着しているうえ高密度になっているため、再利用するためにそのまま破砕して溶解すると溶解炉内でブリッジを形成して溶解を阻害したり、溶融の過程で気泡が溶融物に混入したりして製品品質に悪影響を与えたりすることがある。また、バインダーが熱分解すると大量の臭気が発生する。
バインダーを除去する方法の一つは、大量のエネルギーを使用し、高温の燃焼空気を上部から吹き付けて、下部から吸引することである。
しかしながら、プレス屑は高断熱構造になっており内部に熱が伝わり難く形状がバラバラであり、且つ高密度に成型された屑はこのような再利用方法では処理は難しく殆どは産業廃棄物として埋め立て処理されている。
【0003】
ここで、特許文献1には、簡便に、かつ短時間で、グラスウール、ロックウール等の無機繊維材料から、バインダーを充分に除去して良質な再生無機繊維を製造することができる再生無機繊維の製造方法が記載されている。
この再生無機繊維の製造方法は、無機繊維が有機物のバインダーで結合された無機繊維材料を過熱水蒸気に晒し、前記バインダーを除去するものであり、得られた再生無機繊維は、無機繊維製品の原料の一部とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、無機繊維製品に含まれるバインダーを除去できる無機繊維製品処理システム及び無機繊維製品処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置と、粉砕された無機繊維製品を前記過熱蒸気発生装置から導入された過熱蒸気を用いて加熱し、処理された無機繊維製品及び排出ガスを排出する加熱炉と、を備えた無機繊維製品処理システムである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の無機繊維製品処理システムにおいて、前記加熱炉が、回転する傾斜した筒状の炉を有するロータリーキルンである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の無機繊維製品処理システムにおいて、前記過熱蒸気が、前記炉の高い方の側から導入される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の無機繊維製品処理システムにおいて、前記ロータリーキルンに投入される無機繊維製品が予め決められた量になるように、前記搬送装置を制御する制御装置と、を更に備える。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の無機繊維製品処理システムにおいて、過熱蒸気を用いて、前記炉から排出された排出ガスの臭気を低減する脱臭装置を更に備える。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の無機繊維製品処理システムにおいて、前記脱臭装置から排出された排出ガスを冷却するための熱交換器を更に備え、前記熱交換器にて排出ガスを冷却することによって加熱された少なくとも酸素を含んだ気体が、前記炉に導入される。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の無機繊維製品処理システムにおいて、前記無機繊維製品が、グラスウール、ロックウール、セラミックウール又はグラスファイバーを少なくとも含む。
【0013】
請求項8に記載の発明は、バインダーにて結合された無機繊維材料を含む無機繊維製品を粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程にて粉砕された無機繊維製品を過熱蒸気雰囲気にて撹拌しながら加熱する加熱工程と、を含む無機繊維製品処理方法。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8記載の無機繊維製品処理方法において、前記加熱工程にて発生した排ガスの臭気を、800℃以上の過熱蒸気にて低減する脱臭工程を更に含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無機繊維製品に含まれるバインダーを除去できる無機繊維製品処理システム及び無機繊維製品処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る無機繊維製品処理システムの構成を示す説明図である。
【
図2】同無機繊維製品処理システムが備える受け入れバンカーに投入されるプレス屑の写真である。
【
図3】同無機繊維製品処理システムが備えるフレットミルにて粉砕されたプレス屑の写真である。
【
図4】同無機繊維製品処理システムが備えるロータリーキルンから排出されたプレス屑の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る無機繊維製品処理システム10は、被処理物であるグラスウール製品(無機繊維製品の一例)のプレス屑(以下、単に「プレス屑」という)からバインダーを除去し、再び無機繊維製品の原料として再生できる。
なお、グラスウール製品のプレス屑は、例えば、車両用の防音板をプレス成形する過程で生じる端材であり、建材用断熱材として使用されるロール品よりも高密度である。
【0019】
ただし、被処理物は、グラスウールがバインダーにて結合されたグラスウール製品に限定されるものではなく、無機繊維材料がバインダーにて結合された任意の無機繊維製品であればよい。グラスウール以外の無機繊維材料として、例えば、ロックウール、セラミックウール及びグラスファイバーが挙げられる。バインダーは、例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂、シュガーバインダー及びスタッチその他の有機物のバインダーである。
すなわち、被処理物である無機繊維製品は、例えば、グラスウール、ロックウール、セラミックウール又はグラスファイバーを少なくとも含み、バインダーにて結合されていればよい。
また、被処理物である無機繊維製品は、プレス屑に限定されるものではなく、任意の端材であってもよい。
【0020】
無機繊維製品処理システム10は、
図1に示すように、受け入れバンカー12、フレットミル14、切り出しホッパー16、計量ホッパー18、過熱蒸気発生装置22及びロータリーキルン24を備えている。
【0021】
受け入れバンカー12は、外部から搬入されたプレス屑を受け入れ、貯蔵することができる容器である。受け入れられるプレス屑は、例えば、
図2に示すような状態である。
【0022】
フレットミル(粉砕装置の一例)14は、受け入れバンカー12からスクリューコンベア30によって断続的に投入されたプレス屑を粉砕できる。粉砕されたプレス屑は、例えば、
図3に示すような状態となる。
フレットミル14に投入されるプレス屑は、前処理として嵩比重が0.2〔ton/m
3〕以上となるように破砕されていることが好ましい。
また、フレットミル14により処理されたプレス屑は、粒径が0.3mm以下に粉砕されることが好ましく、平均粒径が0.1mm以下に粉砕されることが更に好ましい。
更に、後述するロータリーキルン24にて十分に撹拌されることに加え、ロータリーキルン24の容積が低減できるため、フレットミル14により処理されたプレス屑の嵩比重は、0.5〔ton/m
3〕以上となることが好ましい。
なお、破砕装置は、フレットミル14に限定されるものではない。
【0023】
切り出しホッパー16は、フレックスコンベア32によってフレットミル14から搬送されたプレス屑を貯蔵できる。
【0024】
計量ホッパー18は、切り出しホッパー16からバケットコンベア34によって搬送されたプレス屑が投入される。計量ホッパー18は、ロードセル式の計量器36を有し、予め決められた量のプレス屑が、スクリューフィーダー38により搬送され、ロータリーキルン24に投入される。
【0025】
過熱蒸気発生装置22は、ボイラー20を利用して過熱蒸気を発生できる。発生する過熱蒸気の温度は、例えば、500~900℃であり、600~800℃であることが好ましい。
【0026】
ロータリーキルン(加熱炉の一例)24は、回転する筒状の炉242を有している。炉242は、モータ244により駆動され回転する。炉242は傾斜して配置され、プレス屑が投入される投入側の位置が、加熱後のプレス屑が排出される排出側の位置よりも高くなっている。炉242には、内部温度を測定するための複数の温度計TM24a~TM24cが設けられている。
【0027】
炉242の投入側には、それぞれ端部が炉242の内部に位置するように配置された過熱蒸気供給管L1及び空気供給管L2が設けられている。過熱蒸気供給管L1からは過熱蒸気発生装置22が発生した過熱蒸気が供給され、空気供給管L2からは、外部からの空気(少なくとも酸素を含んだ気体の一例)が供給される。なお、この空気は、少なくとも酸素を含んだ気体であれば任意でよく、酸素のみであってもよい。
過熱蒸気供給管L1から噴出する過熱蒸気は、炉242の内部に投入されたプレス屑を飛散させないように、その噴出速度が抑制された状態で供給される。プレス屑は、この過熱蒸気によって、例えば400~600℃に加熱される。
【0028】
炉242の排出側には、下部にロータリーバルブ246が、上部に排ガスダクト248が設けられている。
ロータリーバルブ246からは、炉242の内部にて処理されたプレス屑が排出される。排出されたプレス屑は、例えば、
図4に示すような状態となる。
排ガスダクト248からは、炉242の内部にてプレス屑のバインダーが熱分解し、酸素と反応することにより発生した臭気分を含むガスが排ガスとして排出される。
【0029】
ロータリーキルン24により、プレス屑が炉242の内部にて撹拌されながら予め決められた時間T1の間滞留した後に、加熱されたプレス屑が排出される。この予め決められた時間T1は、バインダーが熱分解し、酸素と反応する時間を考慮して、例えば、20~30分であることが好ましい。
従って、プレス屑は、撹拌されずに加熱される場合と比較して、より均一に加熱される。
【0030】
無機繊維製品処理システム10は、更に、脱臭装置50、過熱蒸気発生装置52、ファン54、熱交換器56、ブロワー58、熱交換器60、フィルター式集塵機62及び制御装置70を備えている。
【0031】
脱臭装置50は、過熱蒸気を用いて排ガスダクト248から排出された排ガスの臭気を低減できる。
脱臭装置50の内部には脱臭室が設けられ、脱臭室に導入された排ガスに対して過熱蒸気が吹き付けられる。脱臭室には、内部温度を測定するための温度計TM50が設けられている。
【0032】
過熱蒸気発生装置52は、ボイラー20を利用して脱臭装置50に導入される過熱蒸気を発生できる。発生する過熱蒸気の温度は、例えば、800~1200℃である。
【0033】
ファン54は、脱臭装置50から排出された排ガスに対して外部からの空気を供給できる。空気が供給されることにより、排ガスの温度が低減される。
【0034】
熱交換器56は、脱臭装置50の排ガスの流路の下流側に接続されている。熱交換器56は、排ガスの熱を用いて空気供給管L2を流れる空気を予熱することで、排熱を回収できる。熱交換器56は、例えばレキュペレーターである。
【0035】
ブロワー58は、空気供給管L2に空気を送り込み、ロータリーキルン24の炉242の内部に空気(少なくとも酸素を含んだ気体の一例)を供給できる。
【0036】
熱交換器60は、熱交換器56の排ガスの流路の下流側に接続されている。熱交換器60は、クーリングタワー64に接続されており、熱交換器56を通った排ガスを更に冷却することができる。
【0037】
フィルター式集塵機62は、熱交換器60の排ガスの流路の下流側に接続されている。フィルター式集塵機62は、排ガスに含まれるダストを除去できる浄化装置である。浄化された排ガスは、排ガスファン66によって、サイレンサー682が設けられた煙突68から排出される。
浄化装置は、フィルター式集塵機62に限定されるものではなく、排ガス中のダストを除去できるのであれば任意の装置でよい。
【0038】
制御装置70は、無機繊維製品処理システム10を構成する各部を制御できる。制御装置70は、特に、フィードバック制御による次の制御機能を有する。
(1)ロータリーキルン24へのプレス屑の投入量制御
制御装置70は、計量器36の測定値に基づいて、スクリューフィーダー38の搬送速度を修正することにより、予め決められた量のプレス屑が連続してロータリーキルン24の内部に投入されるようにフィードバック制御できる。単位時間あたりに予め決められた量のプレス屑が安定的にロータリーキルン24に投入されることにより、炉242の内部の温度を制御する上での外乱となる水分量やバインダーの量の変動が抑制され、ロータリーキルン24から排出される処理後のプレス屑の品質のばらつきが低減される。
【0039】
(2)ロータリーキルン24の炉242の内部の温度制御
炉242の内部に導入される過熱蒸気の量及び温度並びに炉242の内部に導入される空気の量は、プレス屑の投入量、バインダーの付着量及び水分量に基づいて、予め設定されている。
制御装置70は、過熱水蒸気の温度を修正し、炉242の内部の温度が予め決められた温度になるようにフィードバック制御できる。
炉242の内部の温度が制御されることにより、バインダーが十分に除去されなかったり、過燃焼によりプレス屑が溶着したりすることが抑制される。
【0040】
(3)脱臭装置50の脱臭室内の温度制御
制御装置70は、脱臭装置50の脱臭室に設けられた温度計TM50の測定値に基づいて、過熱蒸気発生装置52が発生する過熱蒸気の温度を修正し、脱臭室内の排ガスの温度が例えば800~900℃になるようにフィードバック制御できる。
【0041】
次に、無機繊維製品処理システム10の動作について説明する。無機繊維製品処理システム10は、以下のように動作する。
【0042】
外部から搬入されたプレス屑は、受け入れバンカー12に受け入れられ、フレットミル14にて粉砕される。
フレットミル14にて粉砕されたプレス屑は、切り出しホッパー16を経て計量ホッパー18に搬送され、計量ホッパー18から予め決められた量のプレス屑がロータリーキルン24に投入される。
一方で、ロータリーキルン24の炉242の内部には、炉242の位置が高い方の側となる投入側から、過熱蒸気供給管L1及び空気供給管L2を通ってそれぞれ過熱蒸気及び空気が導入されている。
【0043】
ロータリーキルン24に投入されたプレス屑は、炉242の回転に伴って、過熱蒸気雰囲気にて撹拌されながら加熱されるとともに、供給された空気より、プレス屑に含まれるバインダーが熱分解し、燃焼する。なお、供給される空気の量は、バインダーの理論燃焼空気量の1.0~1.3倍であることが好ましい。供給される空気の量が、バインダーの理論燃焼空気量の1.0倍未満であるとプレス屑が異変し、1.3倍を超えて過剰であると、炉242の内部の温度を低下させたり、プレス屑を飛散させたりする要因となりうる。
【0044】
なお、導入される空気や過熱蒸気により炉242の内部に生じる気流の速さは、投入されたプレス屑を飛散させてしまうことを抑制するために、2.0m/sec以下であることが好ましく、1.0m/sec以下であることがより好ましい。
【0045】
ロータリーキルン24にて予め決められた時間T1の間処理されたプレス屑は、ロータリーバルブ246より排出される。
排出された処理済みのプレス屑である無機繊維材料は、例えばフレキシブルコンテナバック80に袋詰されることにより回収され、再利用される。
【0046】
なお、無機繊維製品処理システム10と、グラスウールの溶解炉(不図示)と、を備えたグラスウール製品を製造するための製造システム(不図示)を構成し、無機繊維製品処理システム10が有するロータリーキルン24から排出された処理済みのプレス屑が、スクリューコンベア(不図示)を介してグラスウールの溶解炉に投入されることで、無機繊維製品処理システム10に投入されたプレス屑が再度グラスウール製品となるように再生処理することができる。
【0047】
このようなグラスウール製品の製造システムによれば、無機繊維製品処理システム10にてバインダーが除去されているとともに粉砕されているプレス屑が、加熱処理されたエネルギーを保有したまま溶解炉に投入されるため、グラスウール製品を製造するために必要なエネルギーが低減される。
【0048】
一方で、プレス屑の処理に伴い、バインダーが熱分解し、燃焼することによるガスが発生する。発生したガスは、排ガスダクト248から排ガスとして排出される。排ガスの温度は、例えば、600~700℃である。
排ガスは、脱臭装置50の脱臭室の内部にて過熱蒸気に晒された状態で滞留する。脱臭室には、例えば800℃以上の過熱蒸気が導入され、内部の温度が例えば800~900℃に維持されているため、臭気が低減される。
【0049】
脱臭装置50にて脱臭された排ガスは、ファン54により送られた外部からの空気と混合され熱交換器56へと導入される。
熱交換器56に導入された排ガスは、ブロワー58によって空気供給管L2から供給される空気と熱交換して冷却され、下流側の熱交換器60へと導入される。
熱交換器60に導入された排ガスは、更に冷却され、フィルター式集塵機62に導入される。
フィルター式集塵機62に導入された排ガスは浄化され、煙突68から排出される。なお、除去されたダストは、フレキシブルコンテナバック85によって回収される。
【0050】
このように、本実施の形態に係る無機繊維製品処理システム10によれば、グラスウール製品に含まれるバインダーが除去される。
また、無機繊維製品処理システム10によれば、処理に伴い生じる排ガスの臭気も抑制される。
【実施例0051】
次に、無機繊維製品処理システム10が処理に伴って発生した排ガス量及び排蒸気量の測定結果を示し、無機繊維製品処理システム10の効果についてより具体的に説明する。
発明者らは、1)無機繊維製品処理システム10が備えるロータリーキルン24において過熱蒸気を使用した場合と、2)ロータリーキルン24とは異なる外熱式ロータリーキルンにおいて加熱した空気を使用した場合と、において、プレス屑を1kg処理するために発生した排ガス量及び排蒸気量をそれぞれ測定した。
【0052】
過熱蒸気による処理(以下、「過熱蒸気式処理」という)においては、ロータリーキルン24に、粉状のプレス屑を投入し、必要な過熱蒸気及び空気を吹き込み、バインダーを1質量%以下のIg lossになるように除去し、更に脱臭処理を行った。
発明者らは、その際のプレス屑1kg当りの排ガス量〔kg/kg屑〕及び排蒸気量〔kg/kg屑〕をそれぞれ測定した。また、プレス屑の処理量は、12kg/hrであった。
【0053】
加熱した空気による処理(以下、「加熱空気式処理」という)においては、ロータリーキルン24とは異なる、LPG(Liquefied Petroleum Gas)による外熱式ロータリーキルン内に、破砕したプレス屑とバインダー燃焼用の空気と対流伝熱用の空気を吹込み、バインダーを1質量%以下のIg lossになるように除去し、その排ガスをLPG燃焼式による脱臭処理を行った。
発明者らは、その際のプレス屑1kg当りの排ガス量〔kg/kg屑〕及び排蒸気量〔kg/kg屑〕をそれぞれ測定した。プレス屑の処理量は、850kg/hrであった。なお、対流空気により粉状のプレス屑は飛散してしまうため、破砕したプレス屑を使用して試験した。
測定結果は、表1に示すとおりとなった。
【0054】
【0055】
ここで、表1中、「バインダー燃焼排ガス量」は、プレス屑中のバインダーが熱分解し、吹き込まれた空気中の酸素と反応した際に発生した排ガスの量であって、H2O及びCO2を除いたN2,NO,NOX,O2等のガス量である。なお、加熱空気式処理の値の方が過熱蒸気式処理の値よりも大きい理由は、対流用空気の吹き込み等により過剰な空気を取り込んだためである。
「バインダー燃焼排CO2ガス量」は、前述の「バインダー燃焼排ガス量」から除かれたCO2の量である。
【0056】
「脱臭装置排ガス量」は、ロータリーキルンから排出された排ガスの臭気を脱臭するために、燃料となるLPGを燃焼させた際に発生した燃焼排ガスの量であって、H2O及びCO2を除いたガス量である。
「脱臭装置排CO2ガス量」は、前述の「脱臭装置排ガス量」から除かれたCO2の量の理論値である。
【0057】
「LPG 排ガス量」は、過熱蒸気式処理においては、100℃の飽和水蒸気を発生させるためLPGを燃料として燃焼した際に発生したH2O及びCO2以外のガス量であり、加熱空気式処理においては、ロータリーキルンの外熱用のLPGを燃料として燃焼した際に発生したH2O及びCO2以外のガス量である。
【0058】
「LPG 排CO2ガス量」は、過熱蒸気式処理においては、100℃の飽和水蒸気を発生させるためLPGを燃料として燃焼した際に発生したCO2の量であり、加熱空気式処理においては、ロータリーキルンの外熱用のLPGを燃料として燃焼した際に発生したCO2の量である。
【0059】
過熱蒸気式処理においては、バインダー燃焼に必要な空気(少なくとも酸素を含んだ気体の一例)を投入すればよい。
一方で、加熱空気式処理においては、対流空気の流れを作る必要があり、更に嵩比重の小さい破砕屑(例えば、0.04~0.05〔ton/m3〕)の処理となるため、ロータリーキルンの内径が大きくなる。また、一定の対流速を維持するためには投入空気量を多くする必要があり、その結果、排ガス量も多くなり脱臭処理のエネルギーが大きくなる傾向にある。
その結果、加熱した空気による処理と比較すると、過熱蒸気による処理、すなわち、無機繊維製品処理システム10による総排ガス量及び総排蒸気量の合計は、1/2.5になることが明らかとなった。
次に、発明者らは、無機繊維製品処理システム10における、処理に要するエネルギーの測定結果を示し、無機繊維製品処理システム10の効果についてより具体的に説明する。
発明者らは、1)無機繊維製品処理システム10が備えるロータリーキルン24において過熱蒸気を使用した場合と、2)ロータリーキルン24とは異なる外熱式ロータリーキルンにおいて加熱した空気を使用した場合と、において、プレス屑を1kg処理するために使用したエネルギーをそれぞれ測定した。
測定結果は、表2に示すとおりとなった。
ここで、表2中、「ロータリーキルン加熱用」は、過熱蒸気式処理においては、12kg/hrのプレス屑を処理するために、20kg/hrの100℃の飽和蒸気を700℃に過熱した過熱水蒸気を生成するためのエネルギーであり、加熱空気式処理においては、内部温度を500℃に維持するための外熱用LPGの使用エネルギーである。
「排ガス脱臭用」は、過熱蒸気式処理においては、ロータリーキルンからの排ガスを脱臭処理するために、5kg/hrの100℃の飽和蒸気を1200℃に過熱した過熱水蒸気を生成するためのエネルギーであり、加熱空気式処理においては、排ガスをLPG燃焼により脱臭する際のLPGの使用エネルギーである。
「ボイラー用」は、過熱蒸気式処理においては、ロータリーキルン加熱用および排ガス脱臭用の飽和蒸気を発生させるに必要なボイラー燃焼用のLPGの使用に基づくエネルギーであり、加熱空気式処理においては、ゼロとなる。
過熱蒸気により処理した場合は、飽和蒸気を製造するボイラーのエネルギーが必要となるが、排ガス量が、加熱空気により処理した場合と比較して少ないので、脱臭処理エネルギーが極めて少ないことが分かった。また、総エネルギー使用量は空気加熱式に比較して約65%になることが分かった。
付言すると、本測定試験において、過熱蒸気による処理(過熱蒸気式処理)の場合の処理能力(無機繊維製品処理システム10の処理能力)は、加熱した空気による処理(加熱空気式処理)の場合の約1/70の規模であった。一般的には相似形のシステムであれば規模が大きい方が、エネルギーが低減される傾向があるので、処理エネルギーの差は更に大きくなるものと考えられる。