(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165007
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】カード及びカードの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20241121BHJP
B42D 15/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B32B3/30
B42D15/00 341C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080806
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 奏子
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB21B
4F100AK25C
4F100AK42A
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DD07C
4F100EH66B
4F100EJ91C
4F100HB31C
4F100JG06D
4F100JK14C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】金属調のカードでありながら、光の反射によるぎらつきを抑えて、より重厚感があり落ち着いた印象を与えるカードを提供する。
【解決手段】カード1は、カード基材2と、カード基材2の上面2aに順番に積層された金属蒸着層3及び保護層4と、を備える。保護層4の上面4aに関し、算術平均粗さRaが0.2μm以上、十点平均粗さRzが1.5μm以上、光沢度Gs(60°)が150以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材と、前記カード基材の上面に順番に積層された金属蒸着層及び保護層と、を備え、
前記保護層の上面に関し、算術平均粗さRaが0.2μm以上、十点平均粗さRzが1.5μm以上、光沢度Gs(60°)が150以下であるカード。
【請求項2】
前記金属蒸着層に対向する前記カード基材の上面側に配置された磁気ストライプを備える請求項1に記載のカード。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカードを製造するカードの製造方法であって、
マット加工された凹凸面を有する転写シート基材、及び、前記凹凸面に積層された前記保護層を有する保護層転写箔を用意する工程と、
前記カード基材に積層された前記金属蒸着層に対して前記保護層転写箔を重ねて、前記保護層を前記金属蒸着層と前記転写シート基材との間に介在させる工程と、
前記転写シート基材を前記保護層から剥離する工程と、
を備えるカードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード及びカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードや磁気カード等のカードは、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、会員カード等、様々な分野に用いられている。このようなカードとして、特許文献1には、カード基材上に金属蒸着層及び保護層を順番に積層した金属調のカードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の金属調のカードでは、光沢感が強く金属蒸着層が鏡面状になっているため、光の反射によるぎらつきが大きい。近年では、重厚感があり落ち着いた印象を与えるカードとして、金属の質感や鏡面の光沢感を維持しながらぎらつきを抑えることで、意匠性に優れた金属調のカードが求められている。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、金属調のカードでありながら、光の反射によるぎらつきを抑えて、重厚感があり落ち着いた印象を与えるカード及びカードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、カード基材と、前記カード基材の上面に順番に積層された金属蒸着層及び保護層と、を備えるカードである。前記保護層の上面に関し、算術平均粗さRaが0.2μm以上、十点平均粗さRzが1.5μm以上、光沢度Gs(60°)が150以下である。
【0007】
本発明の一態様は、前記カードを製造するカードの製造方法であって、マット加工された凹凸面を有する転写シート基材、及び、前記凹凸面に積層された前記保護層を有する保護層転写箔を用意する工程と、前記カード基材に積層された前記金属蒸着層に対して前記保護層転写箔を重ねて、前記保護層を前記金属蒸着層と前記転写シート基材との間に介在させる工程と、前記転写シート基材を前記保護層から剥離する工程と、を備えるカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属調のカードでありながら、光の反射によるぎらつきを抑えて、より重厚感があり落ち着いた印象を与えるカードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカードの要部を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るカードの製造方法において、金属層転写箔をカード基材に重ねる前の状態を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るカードの製造方法において、金属層転写箔をカード基材に重ねた後の状態を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るカードの製造方法において、金属蒸着層から第一転写シート基材を除去した後、かつ、保護層転写箔を金属蒸着層に重ねる前の状態を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るカードの製造方法において、保護層転写箔を金属蒸着層に重ねた後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図5を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のカード1は、カード基材2と、金属蒸着層3と、保護層4と、を備える。
【0011】
本実施形態のカード基材2は、1層以上のコアシート21とオーバーシート22とを積層することで構成されている。
図1において、カード基材2は、1層のコアシート21及び1層のオーバーシート22によって構成されている。なお、カード基材2は、例えば1層のコアシート21の両面にオーバーシート22を設けて構成されてもよい。後述する金属蒸着層3や保護層4が積層されるカード基材2の上面2aは、オーバーシート22によって構成されている。
【0012】
コアシート21、オーバーシート22は、白色のシート又は光透過性を有するシートである。コアシート21、オーバーシート22の材料には、例えば、塩化ビニル材料、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体材料、テレフタル酸とシクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体材料、または前述の共重合体とポリカーボネート及び/又はポリアリレートとのポリマーアロイからなる非晶質ポリエステル材料、ポリエチレンテレフタレート材料、ポリブチレンテレフタレート材料、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂(ABS)材料、紙材料、含浸紙材料等を用いることができる。
【0013】
本実施形態のカード基材2の上面2a側には、磁気ストライプ5(磁気テープ)が設けられている。磁気ストライプ5は、カード1に磁気機能を持たせる。磁気ストライプ5は、カード基材2の上面2aの一部に設けられる。
図1において、磁気ストライプ5は、カード基材2の上面2aに露出するようにカード基材2に埋設されている。具体的に、磁気ストライプ5は、オーバーシート22に埋設されている。磁気読み取りの観点から磁気ストライプ5上に重なる層(例えば金属蒸着層3、保護層4など)の膜厚は総厚で10μm以下とすることが好ましい。
【0014】
金属蒸着層3及び保護層4は、カード基材2の上面2aに順番に積層される。
金属蒸着層3は、真空蒸着法などによって金属を蒸着することで形成される。本実施形態の金属蒸着層3は、金属を海島状に形成することで絶縁性を有する。金属蒸着層3は、例えば、金属を海島状に蒸着することで、あるいは、金属を蒸着した後に部分的に除去して海島状に形成することで、構成されてよい。金属蒸着層3の上面には、例えばヘアライン加工による細かい線状のラインが形成されてよい(特許第5708109号公報参照)。
【0015】
金属蒸着層3を構成する金属には、アルミニウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銀、スズ、金などの金属単体またはこれらの化合物を用いることができる。金属蒸着層3は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等の方法により形成することができる。
金属蒸着層3の厚みは、例えば10nm~100nmの範囲であることが好ましい。金属蒸着層3の厚みが10nm未満である場合には、金属光沢の効果がなくなってしまう。また、金属蒸着層3の厚みが100nmを超える場合には、金属蒸着層3の形成に長い時間がかかってしまう上に、膜厚のむらが大きくなってしまう、また、金属蒸着層3が海島状にならず絶縁性を確保することが難しい。
【0016】
本実施形態のカード1において、金属蒸着層3と後述する保護層4との間には、剥離保護層32が介在する。剥離保護層32は金属蒸着層3の上面2aに接している。剥離保護層32は、後述するカード1の製造方法において、金属蒸着層3から転写シート基材31(
図2、
図3参照)を剥離させる役割を有する。剥離保護層32は透明である。これにより、剥離保護層32側から金属蒸着層3を透かして見ることができる。
剥離保護層32の材料には、例えばウレタン樹脂、メラミン樹脂、繊維素系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂などを用いることができる。また、剥離保護層32の材料には、必要に応じてワックス等を使用することもできる。剥離保護層32の厚みは、1μm~3μmの範囲であることが好ましい。
上記した金属蒸着層3及び剥離保護層32の合計厚さは、例えば6.0μm以下であってよい。
【0017】
金属蒸着層3上に積層される保護層4は、透明である。これにより、保護層4側から金属蒸着層3を透かして見ることができる。保護層4に用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができる。当該樹脂の具体例として、例えば塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポジビニルアルコール、ポジエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂やそれらの共重合体、ポリマーアロイや、ポジエステル系ポジオールにイツシアネートを添加したアクリルUV樹脂等があげられるがこの限りではない。
【0018】
金属蒸着層3上に重ねられた保護層4の上面4aは凹凸面となっている。これにより、保護層4の上面4aがマット調になる。具体的に、凹凸面41aとされた保護層4の上面4aでは、算術平均粗さRaが0.2μm以上、十点平均粗さRzが1.5μm以上、光沢度Gs(60°)が150以下となっている。
【0019】
本実施形態のカード1において、金属蒸着層3と保護層4との間には、印刷層42が介在する。印刷層42は保護層4に接している。印刷層42は、オフセット印刷やスクリーン印刷等、公知の印刷方法で設けることができる。
印刷層42に用いるインキは任意であってよい。ただし、印刷層42には、印刷層42側から金属蒸着層3を透かして見ることができるような隠蔽性の低いインキを使用することがより好ましい。また、印刷層42の厚みは、0.5μm~1.0μmであることが好ましい。これにより、金属蒸着層3の光沢感や質感を活かしつつ、任意の色に着色することができる。印刷層42は、無色透明であってもよいが、例えば有色透明であってもよい。また、印刷層42は、文字、記号、絵柄などを含んでもよい。
上記した保護層4及び印刷層42の合計厚さは、1.5μm~3.0μmであってよい。
【0020】
次に、
図2~
図5を参照して、本実施形態のカード1の製造方法の一例について説明する。
図1に示すカード1の製造に際しては、はじめに
図2に示すカード基材2及び金属層転写箔30、並びに、
図4に示す保護層転写箔40を用意する。
【0021】
図2に示すように、カード基材2は、コアシート21の上面(片面)に、磁気ストライプ5を埋め込んだオーバーシート22を積層することで形成される。この状態において、磁気ストライプ5は、オーバーシート22からなるカード基材2の上面2aに露出する。
【0022】
金属層転写箔30は、転写シート基材31(以下、第一転写シート基材31と呼ぶ。)に剥離保護層32及び金属蒸着層3を順番に積層して形成される。第一転写シート基材31としては、ポジエテレンテレフタレート(PET)や、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ポリイミドのフィルムを用いることができる。金属蒸着層3は、金属が海島状に形成されるように第一転写シート基材31上に形成される。剥離保護層32及び金属蒸着層3の材料や厚みなどは、前述したとおりである。
【0023】
図4に示すように、保護層転写箔40は、転写シート基材41(以下、第二転写シート基材41と呼ぶ。)に保護層4及び印刷層42を順番に積層して形成される。第二転写シート基材41としては、例えば前述した金属層転写箔30の第一転写シート基材31において例示したフィルムを用いることができる。保護層4及び印刷層42の材料や厚みなどは、前述したとおりである。
第二転写シート基材41は、マット加工された凹凸面41aを有する。保護層4は、第二転写シート基材41の凹凸面41aに積層される。これにより、第二転写シート基材41側に向く保護層4の面(上面4a)にマット加工が施される。そして、マット加工が施された保護層4の面(上面4a)では、算術平均粗さRaが0.2μm以上、十点平均粗さRzが1.5μm以上とされる。
【0024】
図2に示すようにカード基材2及び金属層転写箔30を用意した後には、金属蒸着層3をカード基材2に転写する。金属蒸着層3を転写する際には、はじめに
図3に示すように、金属層転写箔30をカード基材2上に重ねて、金属蒸着層3をカード基材2と第一転写シート基材31との間に介在させる。具体的には、金属蒸着層3を磁気ストライプ5が露出するカード基材2の上面2aに重ねる。次いで、
図4に示すように、第一転写シート基材31を金属蒸着層3から剥離する。具体的に、第一転写シート基材31は剥離保護層32から剥離し、剥離保護層32は金属蒸着層3側に残る。これにより、金属蒸着層3のカード基材2への転写が完了する。
【0025】
金属蒸着層3をカード基材2に転写し、また、保護層転写箔40を用意した後には、保護層4及び印刷層42を金属蒸着層3上に転写する。保護層4及び印刷層42を転写する際には、はじめに
図5に示すように、保護層転写箔40を金属蒸着層3上に重ねて、保護層4及び印刷層42を金属蒸着層3と第二転写シート基材41との間に介在させる。具体的には、保護層転写箔40を金属蒸着層3上の剥離保護層32に重ねる。また、剥離保護層32から第二転写シート基材41に向けて印刷層42と保護層4とを順番に並べる。次いで、
図1に示すように、第二転写シート基材41を保護層4から剥離する。これにより、保護層4及び印刷層42の金属蒸着層3上への転写が完了する。
以上により、本実施形態のカード1の製造方法が完了する。
【0026】
製造後のカード1における保護層4の上面4aでは、算術平均粗さRaが0.2μm以上、十点平均粗さRzが1.5μm以上であり、光沢度Gs(60°)が150以下である。
【0027】
本実施形態のカード1では、保護層4の上面4aの光沢度Gs(60°)が150以下であることで、金属蒸着層3が鏡面状になっていても、光の反射によるぎらつきを抑制することができる。これにより、金属蒸着層3による金属調の質感、鏡面の光沢感を維持しながらも、重厚感があり落ち着いた印象を与えるカード1を提供することができる。
【0028】
また、本実施形態のカード1は、金属蒸着層3に対向するカード基材2の上面2a側に配置された磁気ストライプ5をさらに備えているものの、保護層4の上面4aの光沢度Gs(60°)が150以下となっている。これにより、磁気ストライプ5が保護層4の上面4a側から見えることを効果的に抑制することができる。したがって、より意匠性に優れたカード1を提供することができる。
【0029】
また、本実施形態のカード1の製造方法では、第二転写シート基材41の凹凸面41aに保護層4を積層するだけで第二転写シート基材41側に向く保護層4の上面4aにマット加工が施される。このため、第二転写シート基材41を保護層4から剥離した後の状態では、第二転写シート基材41が接触していた保護層4の上面4aに、第二転写シート基材41の凹凸面41aに対応する凹凸が現れる。これにより、保護層4を金属蒸着層3上に転写した後に保護層4の上面4aにマット加工を施して凹凸面41aを形成する場合と比較して、少ない工数で保護層4の上面4aを所望の表面粗さの凹凸面に形成することができる。したがって、カード1を効率よく製造することが可能となる。
【実施例0030】
以下、上記した実施形態のカード1について、実施例1、実施例2及び比較例1を示してさらに説明する。本発明の技術的範囲は、以下に示す実施例1、実施例2及び比較例1の具体的内容により何ら限定されるものではない。
【0031】
<実施例1>
厚み600μmの白色PET-G基材からなるコアシート21の両面に、磁気ストライプ5を埋め込んだ厚み100μmの透明PET-G基材からなるオーバーシート22を、磁気ストライプ5が外側に位置するように積層してカード基材2を得た。
カード基材2の上面2aをなす一方のオーバーシート22に、下記の金属層転写箔30を用いて金属蒸着層3及び剥離保護層32を転写形成することで、カード基材2の上面2aに金属蒸着層3と剥離保護層32とを順番に積層した。さらに、下記の保護層転写箔40を用いて印刷層42及び保護層4を剥離保護層32上に転写形成することで、剥離保護層32上に印刷層42と保護層4とを順番に積層した。以上により、実施例1のカードを得た。
【0032】
(金属層転写箔)
PETからなる第一転写シート基材31上に、アクリル系樹脂を主成分とする厚み2μmの剥離保護層32、及び、厚み40nmの金属蒸着層3を順次積層して金属層転写箔30を作製した。金属蒸着層3は、真空蒸着法によってスズ(Sn)を海島状に形成することで、絶縁性とした。
【0033】
(保護層転写箔)
厚み100μmのPETからなる第二転写シート基材41のうち保護層4が接する側の面にマット目となる凹凸加工(マット加工)を施した。その後、第二転写シート基材41上に、アクリル系樹脂を主成分とする厚み1.4μmの保護層4、及び、無色透明のアクリル系樹脂からなる厚み1.5μmの印刷層42を順次積層して保護層転写箔40を作製した。
【0034】
(表面粗さと光沢度)
実施例1のカードについて、表面粗さ測定装置を用いて、保護層4の上面4a側における算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzを測定した。また、光沢計(日本電色工業株式会社製 ハンディ型光沢計 PG-II)を用いて、保護層4の上面4aの光沢度を測定した。光沢度の測定時における光の入射角は、汎用性の高い60°で測定した。
実施例1のカードでは、保護層4の上面4aに関し、算術平均粗さRaが0.28μm、十点平均粗さRzが2.02μm、光沢度Gs(60°)が137.5であった。実施例1のカードは、カード券面が金属調でありながら、光の反射によるぎらつきが抑えられたカードとなった。
【0035】
<実施例2>
実施例1と同様の手法で、実施例2のカードを得た。ただし、実施例2のカードでは、保護層転写箔40の作製に際して、第二転写シート基材41のうち保護層4が接する側の面に、実施例1と比較してマット目の粗さが大きい凹凸加工を施した。
【0036】
(表面粗さと光沢度)
実施例2のカードについて、実施例1と同じ表面粗さ測定装置を用いて、保護層4の上面4a側における算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzを測定した。また、実施例1と同じ光沢計を用いて、光の入射角を60°として保護層4の上面4aの光沢度を測定した。
実施例2のカードでは、保護層4の上面4aに関し、算術平均粗さRaが0.52μm、十点平均粗さRzが3.16μm、光沢度Gs(60°)が54.8であった。実施例2のカードは、カード券面が金属調でありながら、光の反射によるぎらつきがほとんどないカードとなった。
【0037】
<比較例1>
実施例1と同様の手法で、比較例1のカードを得た。ただし、比較例1のカードでは、保護層転写箔40の作製に際して、第二転写シート基材41に実施例1,2のような凹凸加工を施さずに、第二転写シート基材41上に、保護層4及び印刷層42を順次積層した。
【0038】
(表面粗さと光沢度)
比較例1のカードについて、実施例1と同じ表面粗さ測定装置を用いて、保護層4の上面4a側における算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzを測定した。また、実施例1と同じ光沢計を用いて、光の入射角を60°として保護層4の上面4aの光沢度を測定した。
比較例1のカードでは、保護層4の上面4aに関し、算術平均粗さRaが0.11μm、十点平均粗さRzが0.64μm、光沢度Gs(60°)が193.6であった。比較例1のカードは、カード券面に映り込みが生じる程度に鏡面光沢感の強い金属調のカードとなった。
【0039】
<比較結果>
マット加工を施した実施例1、実施例2のカード券面と比較例1のカード券面とを比較すると、実施例1、実施例2の光沢度は、比較例1の光沢度よりも低くなった。また、実施例1よりもマット目の粗さが大きいマット加工を施した実施例2のカード券面では、実施例1のカード券面と比較して、光沢度がさらに低くなった。
実施例1及び実施例2のカード券面は、光沢度が低くなったことで反射によるぎらつきが抑えられ、金属調の鏡面光沢感を維持しながらも重厚感のある落ち着いた印象を与えるカードとなった。さらに、比較例1については磁気ストライプ5が浮き上がって見えたが、実施例1と実施例2については磁気ストライプ5が目立ちにくくカード券面に馴染んで見えた。
【0040】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0041】
本発明において、カード基材2は、例えば単層のコアシート21のみによって構成されてもよい。
【0042】
本発明のカードは、例えば磁気ストライプ5を備えなくてもよい。
【0043】
本発明のカードは、例えば剥離保護層32を備えなくてもよい。この場合、金属層転写箔30の第一転写シート基材31自体が剥離性を有していればよい。これにより、上記実施形態の場合と同様に、カードの製造に際して金属蒸着層3を第一転写シート基材31から剥離させることができる。
【0044】
本発明のカードは、例えば印刷層42を備えなくてもよい。