(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165009
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】液晶装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20241121BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241121BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
G02F1/1337 515
G02F1/13 101
G02F1/1335
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080810
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】塩野 晃宏
【テーマコード(参考)】
2H088
2H290
2H291
【Fターム(参考)】
2H088EA14
2H088EA16
2H088HA03
2H088HA08
2H088HA13
2H088HA21
2H088HA24
2H088HA28
2H088JA10
2H088KA27
2H088LA07
2H088LA09
2H088MA18
2H088MA20
2H290AA35
2H290BA22
2H290BE01
2H290BF04
2H290BF70
2H290CB02
2H290CB22
2H291FA13Y
2H291FA66Y
2H291GA05
2H291GA08
2H291GA19
2H291HA11
2H291MA13
2H291NA41
(57)【要約】
【課題】液晶装置における液晶の劣化を抑制する。
【解決手段】本発明の液晶装置は、第1基板と液晶層と、液晶層を介して第1基板と対向して配置される第2基板と、第1基板と第2基板との少なくとも一方の基板に配置される配向膜と、を備え、配向膜は、一方の基板に配置されて第1柱状構造体を有し、第1柱状構造体の延伸方向が、一方の基板に対して略垂直である第1蒸着膜と、第1蒸着膜と液晶層との間に配置され、第1柱状構造体の延伸方向に対して第1傾斜角となるように傾斜して形成される第2柱状構造体を有する第2蒸着膜と、第2蒸着膜と液晶層との間に配置され、第1柱状構造体の延伸方向に対して第2傾斜角となるように傾斜して形成される第3柱状構造体を有する第3蒸着膜と、を有する。第1傾斜角は、第2傾斜角よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
液晶層と、
前記液晶層を介して前記第1基板と対向して配置される第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との少なくとも一方の基板に配置される配向膜と、
を備え、
前記配向膜は、前記一方の基板に配置され、前記一方の基板の厚み方向と平行な第1方向に延びる第1柱状構造体を有する第1蒸着膜と、前記第1蒸着膜と前記液晶層との間に配置され、前記第1方向に対して第1傾斜角となるように傾斜して形成される第2柱状構造体を有する第2蒸着膜と、前記第2蒸着膜と前記液晶層との間に配置され、前記第1方向に対して第2傾斜角となるように傾斜して形成される第3柱状構造体を有する第3蒸着膜と、を有し、
前記第1傾斜角は、前記第2傾斜角よりも大きい、
液晶装置。
【請求項2】
前記第1方向における前記第3柱状構造体の長さは、前記第2柱状構造体の長さよりも短い、
請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記第2柱状構造体と前記第3柱状構造体とは、前記第1方向に対して互いに同方向に傾いている、
請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記配向膜は、前記第1基板及び前記第2基板に設けられている、
請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液晶装置を備える、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイ(FPD)を含む液晶装置では、配向膜として斜方蒸着膜が用いられている。例えば、特許文献1には、配向膜として斜方蒸着膜より厚く形成された垂直蒸着膜を備える液晶装置が開示されている。特許文献1の液晶装置では、液晶分子に対する配向規制力が小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されている液晶装置では、蒸着膜と液晶層との界面での反応を抑制するために、蒸着膜の液晶層側の最表面に空隙が少ない垂直層が形成されている。配向規制力を確保するためには、最表面の垂直層の厚みを薄くする必要があるが、その場合、下層すなわち基板側の斜方膜の柱状体同士の隙間は完全に埋まらず、柱状体同士の隙間に液晶が侵入することがあった。柱状体同士の隙間に液晶が侵入すると、液晶の劣化が生じ、配向規制力が従来よりも低下することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様の液晶装置は、第1基板と、液晶層と、液晶層を介して第1基板と対向して配置される第2基板と、第1基板と第2基板との少なくとも一方の基板に配置される配向膜と、を備える。配向膜は、一方の基板に配置され、一方の基板の厚み方向と平行な第1方向に延びる第1柱状構造体を有する第1蒸着膜と、第1蒸着膜と液晶層との間に配置され、第1方向に対して第1傾斜角となるように傾斜して形成される第2柱状構造体を有する第2蒸着膜と、第2蒸着膜と液晶層との間に配置され、第1方向に対して第2傾斜角となるように傾斜して形成される第3柱状構造体を有する第3蒸着膜と、を有する。第1傾斜角は、第2傾斜角よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態の液晶装置の概略図である。
【
図2】
図1の液晶装置のC1-C1線に沿った断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態のプロジェクターの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。各図面では、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺が変更されている場合がある。
【0008】
[液晶装置]
図1は、本発明の実施形態に係る液晶装置100の平面図である。
図2は、液晶装置100の断面図であり、
図1に示すC1-C1線で矢視した場合の図である。
図1及び
図2に示すように、液晶装置100は、第1基板10と、第2基板20と、液晶層50と、を備える。第2基板20は、厚み方向でシール材17によって第1基板10に貼り合わされている。シール材17は、平面視したときに第2基板20の外縁に沿って枠状に設けられている。液晶層50は、第1基板10と第2基板20との間でシール材17によって囲まれた領域に封入されている。液晶装置100は、例えば、透過型液晶装置である。
【0009】
第1基板10及び第2基板20の平面視形状は、矩形である。液晶装置100の平面視で矩形状の中央の領域に、表示領域12が設けられている。以下では、第1基板10の表面に平行な一軸をX軸とし、第1基板10の表面に平行且つX軸に直交する一軸をY軸とする。X軸及びY軸に直交する軸をZ軸年、Z軸に沿って見る場合を平面視と記載する場合がある。平面視において、シール材17の内周縁と表示領域12の外周縁との間には、矩形枠状の周辺領域13が設けられている。
【0010】
第1基板10は、石英やガラス等からなる透光性の素子基板19と、素子基板19の表面から第1配向膜16までの積層構造と、を有する。第1基板10の第2基板20に対向する側の表面において、表示領域12の外側には、第1基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101及び複数の端子102が形成されている。複数の端子102に沿う一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。端子102には、フレキシブル配線基板105が接続されている。第1基板10には、フレキシブル配線基板105を介して各種の電位や電気信号が入力される。
【0011】
第1基板10の一方の面10s側において、表示領域12には、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性の複数の画素電極9と、不図示のトランジスターがマトリクス状に形成されている。トランジスターは、複数の画素電極9の各々に電気的に接続されている。複数の画素電極9は、第2基板20側から、第1配向膜16に覆われている。
【0012】
第2基板20は、石英やガラス等からなる対向基板29と、対向基板29の表面から第2配向膜26までの積層構造と、を有する。第2基板20の第1基板10に対向する側の表面には、ITO膜からなる透光性の共通電極21が形成されており、共通電極21に対して第1基板10側には第2配向膜26が形成されている。共通電極21は、第2配向膜26によって覆われている。共通電極21は、第2基板20の全面に形成されている。
【0013】
Z軸において、共通電極21と対向基板29との間に、複数のレンズ24が形成されている。複数のレンズ24の各々は、X軸及びY軸を含むXY面で複数の画素電極9の各々に重なり、複数の画素電極9に対応している。レンズ24は、入射する光Lを第1基板10の画素の開口領域に導く。
【0014】
レンズ24を配置するために、対向基板29の素子基板19側の面には、複数の凹曲面302が形成されている。複数の凹曲面302の各々は、XY面で複数の画素電極9の各々に重なり、複数の画素電極9に対応している。第2基板20には、複数の凹曲面302には、各々の内部を埋めるレンズ層28が設けられている。レンズ層28の対向基板29とは反対側、すなわち素子基板19側の表面28aは、平坦である。レンズ層28の表面28aには、透光層23が形成されている。透光層23の対向基板29とは反対側の面に、共通電極21が形成されている。
【0015】
レンズ層28の屈折率は、対向基板29の屈折率よりも大きい。レンズ24は、正のパワーを有する。対向基板29は、例えば、ガラス基板や石英基板で構成されている。石英基板の波長550nmでの屈折率は、1.48程度である。レンズ層28は、例えば、酸窒化シリコンによって形成されている。酸窒化シリコンの波長550nmでの屈折率は、1.58~1.68程度である。透光層23は、例えば、酸化シリコンによって形成されている。酸化シリコンの波長550nmでの屈折率は、1.48程度である。
【0016】
レンズ層28と透光層23との間に、遮光性を有する遮光層27が設けられている。具体的には、遮光層27は、平面視で周辺領域13におけるレンズ層28の表面28aに設けられ、透光層23に覆われている。遮光層27は、金属又は金属化合物等を含む。平面視したときに、遮光層27は、例えば、表示領域12の外周縁に沿って延在し、所定の幅を有して枠状に形成されている。また、遮光層27は、隣り合う画素電極9に挟まれる領域と平面視で重なる領域にブラックマトリクスとして形成されてもよい。第1基板10の周辺領域13のうち、遮光層27と平面視で重なる領域には、画素電極9と同時に形成されたダミー画素電極39が形成されている。
【0017】
第1配向膜16及び第2配向膜26は、SiOx(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al2O3等の無機化合物を含む配向膜であり、液晶層50に用いられる負の誘電率異方性を備える液晶材料を略垂直配向させている。このように配向させる場合、液晶装置100は、ノーマリブラックのVAモードの液晶装置として構成されている。第1配向膜16及び第2配向膜26は、例えば、SiOxによって形成されている。
【0018】
第1基板10には、平面視でシール材17よりも外側において第2基板20の角部と重なる領域に、電極109が形成されている。電極109は、第1基板10と第2基板20との間で基板間の電気的導通をとるために設けられている。電極109には、導電粒子を含む導通材が用いられている。第2基板20の共通電極21は、電極109を介して、第1基板10に電気的に接続されている。共通電極21には、第1基板10を介して共通電位が印加されている。
【0019】
上述の液晶装置100は、透過型液晶装置として構成されている。液晶装置100では、第1基板10及び第2基板20のうちの一方の基板から入射した光が他方の基板を透過してZ軸に沿って射出される間に変調され、画像を表示される。
図2に矢印で示すように、第2基板20の側から入射する光が第1基板10を透過し、第1基板10から射出される間に、液晶層50によって画素毎に変調され、画像が表示される。なお、液晶装置100は、反射型液晶装置として構成されてもよい。
【0020】
次に、第1配向膜16及び第2配向膜26について説明する。
図3は、第1配向膜16及び第2配向膜26を含む液晶装置100の要部の断面図である。第1配向膜16は、第1蒸着膜71と、第2蒸着膜72と、第3蒸着膜73と、を有する。
【0021】
第1蒸着膜71は、複数の第1柱状構造体171を有する。各々の第1柱状構造体171は、軸線JX171に沿った延伸方向D171に延伸している。軸線JX171及び延伸方向D171と画素電極9の表面9a、すなわち、XY面の垂線Vとがなす傾斜角度θ171は、0°であるが、例えば0°から5°までの範囲内にあってもよく、次に説明する各傾斜角度に比べて非常に小さく、0°とみなすことができる。第1柱状構造体171の軸線JX171に平行な方向の長さは、第1柱状構造体171の軸線JX171に直交する方向の幅よりも大きく、例えば、第1柱状構造体171の幅の1.5倍から3倍程度である。複数の第1柱状構造体171は、XY面内に沿って互いに間隔をあけずに配置され、XY面で互いに隣接している。
【0022】
第2蒸着膜72は、第1蒸着膜71の第1柱状構造体171における液晶層50側の端面171aに設けられ、複数の第2柱状構造体172を有する。複数の第2柱状構造体172は、複数の第1柱状構造体171の端面171aでXY面に沿って間隔をあけて配置されている。各々の第2柱状構造体172は、軸線JX172に沿った延伸方向D172を有する。軸線JX172と垂線Vとがなす傾斜角度θ172は、少なくとも傾斜角度θ171よりも大きく、例えば50°から70°までの範囲内である。
【0023】
第2柱状構造体172の軸線JX172及び延伸方向D172が第1柱状構造体171の軸線JX171及び延伸方向D171にたいしてなす第1傾斜角θ1は、第1柱状構造体171の軸線JX171及び延伸方向D171がZ軸に略平行であるため、傾斜角度θ172と同等であり、例えば50°から70°までの範囲内である。
【0024】
XY面内で第2柱状構造体172の基端から先端に延伸する方向を、T2方向とする。T2方向に並ぶ2つの第2柱状構造体172を、第2柱状構造体172A、第2柱状構造体172Bとする。第2柱状構造体172Aの画素電極9側の側面172sの液晶層側の基端172bpが第2柱状構造体172Bの液晶層側の基端172bpよりもT2方向側に配置された場合に、第2柱状構造体172Bの画素電極9側の側面172sの先端172fpは、第2柱状構造体172Aの液晶層50側の側面172sの基端172bpよりもT2方向側に位置する。具体的には、第2柱状構造体172Bの画素電極9側の側面172sの先端172fpは、第2柱状構造体172Aの液晶層50側の側面172sの基端172bpと画素電極9側の側面172sの基端172bpとの間に位置する。第2柱状構造体172の軸線JX172に沿った長さ及び傾斜角度θ172は、前述のようにT2方向で隣り合う2つの第2柱状構造体172のうちのT2方向とは反対方向に位置する第2柱状構造体172Bの先端172fp,172fpとT2方向側に配置された第2柱状構造体172Aの画素電極側の基端172bp,液晶層側の基端172bpとの相対位置関係をふまえて適切に設定されている。
【0025】
第2柱状構造体172の軸線JX172に平行な方向の長さは、第2柱状構造体172の軸線JX172に直交する方向の幅よりも大きく、例えば、第2柱状構造体172の幅の1.5倍から3倍程度である。第2柱状構造体172の幅は、第1柱状構造体171の幅と同等である、或いは第1柱状構造体171の幅よりも小さく、例えば第1柱状構造体171の幅の75%から100%の範囲内である。
【0026】
第3蒸着膜73は、第1蒸着膜71の第1柱状構造体171における液晶層50側の端面171a或いは第2蒸着膜72の第2柱状構造体172において液晶層50側に向いている側面172sに亘って設けられ、複数の第3柱状構造体173を有する。複数の第3柱状構造体173は、XY面に沿って間隔をあけて配置されている。
【0027】
各々の第3柱状構造体173は、軸線JX173に沿った延伸方向D173に延伸している。軸線JX173及び延伸方向D173と垂線Vとがなす傾斜角度θ173は、少なくとも傾斜角度θ171よりも大きい。傾斜角度θ173は、傾斜角度θ172よりも小さく、例えば20°から40°までの範囲内である。
【0028】
第3柱状構造体173の軸線JX173及び延伸方向D173が第1柱状構造体171の軸線JX171及び延伸方向D171にたいしてなす第2傾斜角θ2は、第1傾斜角θ1よりも小さい。第2傾斜角θ2は、傾斜角度θ173と同等であり、例えば20°から40°までの範囲内である。
【0029】
XY面内で第3柱状構造体173の基端から先端に延伸する方向を、T3方向とする。T3方向は、例えば、T2方向と同じ方向である。各々の第3柱状構造体173は、T2,T3方向において、互いに隣り合う2つの第2柱状構造体172の間に配置されている。すなわち、T2,T3方向において、第2柱状構造体172と、第2柱状構造体172よりもZ軸及び垂線Vに対して傾斜角度θ173が傾斜角度θ172よりも小さい第3柱状構造体173とが、交互に形成されている。第3柱状構造体173の液晶層50側の側面173sの先端173fp、及び画素電極9側の側面173sの先端173fpは、T2,T3方向に並ぶ2つの第2柱状構造体を第2柱状構造体172A、第2柱状構造体172Bとすると、第2柱状構造体172Aの液晶層50側の側面172sの先端172fpと、第2柱状構造体172Bの液晶層50側の側面172sの先端172fpとの間に配置されている。なお、第3柱状構造体173の画素電極9側の側面173sは、T3方向側の側面173sである。第3柱状構造体173の液晶層50側の側面173sは、T3方向とは反対方向側の側面173sである。
【0030】
第2柱状構造体172と、第2柱状構造体172よりもT2,T3方向側に設けられた第3柱状構造体173と、は、第2柱状構造体172の液晶層50側の側面172sの先端172fpと第3柱状構造体173のT3方向側の側面173sの先端173fpとのZ軸での間隔は、液晶層50に含まれる液晶分子52の長軸方向の大きさの50%から150%までの範囲内であることが好ましい。第2柱状構造体172に対する第3柱状構造体173の傾斜角度θ173と高さ、すなわち第3柱状構造体173の軸線JX173に沿った長さは、前述の相対関係が満たされるように適切に設定されることが好ましい。
【0031】
第3柱状構造体173の軸線JX173に平行な方向の長さは、第3柱状構造体173の軸線JX173に直交する幅よりも大きく、例えば、第3柱状構造体173の幅の1.5倍から2倍程度である。第3柱状構造体173の幅は、第1柱状構造体171の幅と同等である、或いは、第1柱状構造体171の幅よりも小さく、例えば、第1柱状構造体171の幅の85%から110%の範囲内である。第3柱状構造体173の軸線JX173に平行な方向の長さは、第2柱状構造体172の軸線JX172に平行な方向の長さと同等である、或いは第2柱状構造体172の長さよりも小さく、例えば、第2柱状構造体172の長さの80%から100%の範囲内である。
【0032】
第1柱状構造体171の延伸方向D171、すなわちZ軸において、2つの第2柱状構造体172の間から液晶層50に突出する第3柱状構造体173の長さLT173は、第2柱状構造体172の長さLT172よりも短い。長さLT173は、例えば、長さLT172の50%から80%までの範囲内にあることが好ましい。上述の各設定によって、T2,T3方向で互いに隣り合う第2柱状構造体172と第3柱状構造体173との間への液晶分子52の過度の侵入が抑えられる。
【0033】
第2配向膜26は、第1配向膜16と同様の構成を備え、第1蒸着膜71と、第2蒸着膜72と、第3蒸着膜73と、を有する。第2配向膜26の第1蒸着膜71、第2蒸着膜72、及び第3蒸着膜73に関しては、第1配向膜16の第1蒸着膜71、第2蒸着膜72、及び第3蒸着膜73に関する説明において、素子基板19を対向基板29に置き換えればよい。第2配向膜26の第1蒸着膜71は、共通電極21の液晶層50側の表面に設けられている。
【0034】
液晶装置100の製造工程において、第1配向膜16を形成する際には、画素電極9の表面9aに対し、適切な条件で複数の第1柱状構造体171を垂直蒸着し、第1蒸着膜71を形成する。その後、複数の第1柱状構造体171の画素電極9側とは反対側の表面に対し、適切な条件及び傾斜角度θ172で複数の第2柱状構造体172を斜方蒸着し、第2蒸着膜72を形成する。続いて、複数の第2柱状構造体172の画素電極9側とは反対側の表面及び側面172sに対し、適切な条件及び傾斜角度θ173で複数の第3柱状構造体173を斜方蒸着し、第3蒸着膜73を形成する。
【0035】
以上説明した本実施形態の液晶装置100は、第1基板10の素子基板19と、液晶層50と、第2基板20の対向基板29と、第1基板10の画素電極9を覆うように配置される第1配向膜16と、を備える。第1配向膜16は、第1基板10と第2基板20との少なくとも一方の基板に配置される配向膜に相当する。第1配向膜16は、第1基板10に配置され、第1蒸着膜71と、第2蒸着膜72と、第3蒸着膜73と、を有する。第1蒸着膜71は、素子基板19に配置され、第1柱状構造体171を有する。第1柱状構造体171は、素子基板19の厚み方向と平行な第1方向に延びる。素子基板19の厚み方向及び第1方向は、Z軸に平行な方向である。第1柱状構造体171の延伸方向D171は、第1基板10の素子基板19の表面及び画素電極9の表面9aすなわちXY面に略垂直である。「略垂直である」とは、第1柱状構造体171の延伸方向D171がXY面に垂直なZ軸及び垂線Vに対してなす傾斜角度θ171が0°である場合、及び傾斜角度θ171が0°から5°までの範囲内で、液晶層50に含まれる液晶分子52に対する第1配向膜16の配向規制力を鑑みたときに傾斜角度θ171が0°であるとみなせる範囲内であることを意味する。第1柱状構造体171の延伸方向D171は、第1方向に相当する。第2蒸着膜72は、Z軸において、第1蒸着膜71と液晶層50との間に配置されている。第2蒸着膜72は、第1柱状構造体171の延伸方向D171に対して第1傾斜角となるように傾斜している第2柱状構造体172を有する。前述のように第1柱状構造体171の延伸方向D171が第1基板10の素子基板19の表面に略垂直であるため、第1傾斜角は、傾斜角度θ172と同等であるが、詳しくは(θ172-θ171)である。第3蒸着膜73は、Z軸において、第2蒸着膜72と液晶層50との間に配置されている。第3蒸着膜73は、第1柱状構造体171の延伸方向D171に対して第2傾斜角となるように傾斜している第2柱状構造体172を有する。前述のように第1柱状構造体171の延伸方向D171が第1基板10の素子基板19の表面に略垂直であるため、第2傾斜角は、傾斜角度θ173と同等であるが、詳しくは(θ173-θ171)である。第1傾斜角θ1は、第2傾斜角θ2よりも大きい。
【0036】
液晶装置100では、Z軸において液晶層50と素子基板19との間に設けられる第1配向膜16は、素子基板19側から、垂直蒸着膜である第1蒸着膜71、第1斜方蒸着膜である第2蒸着膜72、第2斜方蒸着膜である第3蒸着膜73によって構成されている。素子基板19の表面に垂直な垂直方向に対する第2蒸着膜72の第2柱状構造体172の傾斜角度θ172は、同じく垂直方向に対する第3蒸着膜73の第3柱状構造体173の傾斜角度θ173よりも大きい。第1斜方蒸着膜と第2斜方蒸着膜との空隙が互いに傾斜角度が異なる斜方蒸着膜同士の境界面で不連続になるため、斜方蒸着膜の深部、すなわち第2蒸着膜72と第3蒸着膜73との間の素子基板19側の領域まで液晶分子52が入り込み難い。液晶装置100によれば、製造工程数の増大を抑え、液晶層50の液晶分子52と斜方蒸着膜とが互いに接する表面積を減少させ、液晶層50に対する配向規制力を維持し、液晶の劣化を抑制するとともに液晶の耐光性を高めることができる。
【0037】
図4は、従来の液晶装置の断面図であり、
図1に示すC1-C1線で矢視した場合に対応する図である。
図4に示すように、従来の液晶装置では、最表面の垂直層である第3柱状構造体173の厚みを薄くする必要があった。その場合、第2柱状構造体172同士、すなわち基板側の斜方蒸着膜同士の隙間が完全に埋まらず、斜方蒸着膜同士の基板側の隙間に液晶が侵入する。その場合、液晶が劣化し、配向規制力が低下する。
【0038】
本実施形態の液晶装置100では、第1柱状構造体171の延伸方向D171、すなわちZ軸における第3柱状構造体173の長さLT173は、第2柱状構造体172の長さLT172よりも短い。ここで、Z軸における第3柱状構造体173の長さLT173は、T2,T3方向で隣り合う第2柱状構造体172同士の間から液晶層50側及び対向基板29側に突出する部分のZ軸での高さを意味する。
【0039】
液晶装置100によれば、T3方向において、互いに隣り合う第3柱状構造体173同士の空隙を深くせず、液晶層50の液晶分子52と斜方蒸着膜とが互いに接する表面積を減少させることができる。
【0040】
本実施形態の液晶装置100では、第2柱状構造体172と第3柱状構造体173とは、第1柱状構造体171の延伸方向に対して同方向に傾いている。
【0041】
液晶装置100によれば、第2柱状構造体172の延伸方向D172と第3柱状構造体173の延伸方向D173は、第1柱状構造体171の延伸方向D171、すなわちZ軸に対して、XY面で互いに同じD2方向及びD3方向に重なるため、液晶層50の液晶分子52と斜方蒸着膜、すなわち第2蒸着膜72の第2柱状構造体172及び第3蒸着膜73の第3柱状構造体173とが互いに接する表面積を減少させることができる。
【0042】
なお、本実施形態の液晶装置では、第3柱状構造体173が上述説明した各寸法及び相対関係を満たしてXY面内で互いに隣り合う第2柱状構造体172同士の間に配置されていれば、D3方向がD2方向とは異なる方向で第1柱状構造体171の軸線JX171及び延伸方向D171、すなわちZ軸に対して傾斜していてもよい。
【0043】
本実施形態の液晶装置100では、配向膜は、第1基板10及び第2基板20に設けられている。すなわち、第1基板10の素子基板19に第1配向膜16が設けられ、第2基板20の対向基板29に第2配向膜26が設けられている。第2配向膜26は、第1基板10と第2基板20との少なくとも一方の基板に配置される配向膜に相当する。第2配向膜26は、第1配向膜16と同様に、第1柱状構造体171を有する第1蒸着膜71と、第2柱状構造体172を有する第2蒸着膜72と、第3柱状構造体173を有する第3蒸着膜73と、を備える。
【0044】
液晶装置100によれば、第1基板10に設けられる第1配向膜16及び第2基板20に設けられる第2配向膜26の双方において、第1斜方蒸着膜と第2斜方蒸着膜との空隙が互いに傾斜角度が異なる斜方蒸着膜同士の境界面で不連続になるため、斜方蒸着膜の深部、すなわち第2蒸着膜72と第3蒸着膜73との間の素子基板19側及び対向基板29側の領域まで液晶分子52が入り込み難い。液晶装置100によれば、液晶層50の液晶分子52と斜方蒸着膜とが互いに接する表面積を減少させ、液晶層50に対する配向規制力を維持し、液晶の劣化をさらに抑制することができる。
【0045】
なお、本実施形態の液晶装置では、液晶層50に対する配向規制力を維持することができれば、第1基板10に第1配向膜16が設けられ、第2基板20に従来と同様の配向膜が設けられていてもよい。同様に、液晶装置として、液晶層50に対する配向規制力を維持することができれば、第1基板10に従来と同様の配向膜が設けられ、第2基板20に第2配向膜26が設けられていてもよい。
【0046】
[電子機器]
本実施形態では、液晶装置100を備えた電子機器として、プロジェクター1000を例に挙げて説明する。
図5は、プロジェクター1000の概略図である。
図5に示すように、プロジェクター1000は、光源装置1001と、ダイクロイックミラー1011,1012と、液晶装置100B,100G,100Rと、反射ミラー1111,1112,1113と、リレーレンズ1121,1122,1123と、クロスダイクロイックプリズム1130と、投射レンズ1140と、を備える。
【0047】
光源装置1001は、白色光Wを射出する。光源装置1001は、例えば、放電型のランプユニットであるが、発光ダイオード、レーザー等であってもよく、青色光を射出する発光体と発光体から発せられる青色光の一部を黄色光に変換して射出する蛍光体とを組み合わせた装置であってもよく、特定の光源装置に限定されない。
【0048】
光源装置1001から射出される白色光Wは、2個のダイクロイックミラー1011,1012によって、互いに異なる波長域の3色の色光に分離される。3色の色光は、赤色光Rと、緑色光Gと、青色光Bと、を含む。ダイクロイックミラー1011は、赤色光Rを透過し、赤色光Rよりも波長が短い緑色光G及び青色光Bを反射する。ダイクロイックミラー1011を透過する赤色光Rは、反射ミラー1111で反射され、液晶装置100Rに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射される緑色光Gは、ダイクロイックミラー1012によって反射された後、液晶装置100Gに入射する。ダイクロイックミラー1011で反射される青色光Bは、ダイクロイックミラー1012を透過し、リレーレンズ系1120へ射出される。
【0049】
リレーレンズ系1120は、リレーレンズ1121,1122,1123と、反射ミラー1112,1113と、を有する。ダイクロイックミラー1011から液晶装置100Bまでの青色光Bの光路は、ダイクロイックミラー1011から液晶装置100Gまでの緑色光Gの光路や、ダイクロイックミラー1011から液晶装置100Rまでの赤色光Rの光路と比べて長い。そのため、青色光Bの光束は、緑色光Gや赤色光Rの光束よりも大きくなり易い。リレーレンズ1122が用いられることによって、青色光Bの光束の拡大が抑えられている。リレーレンズ系1120に入射する青色光Bは、反射ミラー1112で反射され、リレーレンズ1121によってリレーレンズ1122の近傍で収束する。青色光Bは、反射ミラー1113及びリレーレンズ1123を経て、液晶装置100Bに入射する。
【0050】
液晶装置100R,100G,100Bは、プロジェクター1000における光変調装置である。液晶装置100R,100G,100Bには、上述した電気光学装置としての液晶装置100が適用されている。
【0051】
液晶装置100R,100G,100Bのそれぞれは、プロジェクター1000の外部制御装置に電気的に接続されている。赤色光R、緑色光G、青色光Bのそれぞれの階調レベルを指定する画像信号は、それぞれの色光の外部制御装置から供給され、液晶装置100R,100G,100Bのそれぞれに付属する集積回路で処理される。液晶装置100R,100G,100Bは、それぞれの集積回路から受信する画像信号に従って駆動される。液晶装置100Rは、入射する赤色光Rを変調する。液晶装置100Gは、入射する緑色光Gを変調する。液晶装置100Bは、入射する青色光Bを変調する。
【0052】
液晶装置100R,100G,100Bによって変調された赤色光R、緑色光G、青色光Bは、クロスダイクロイックプリズム1130に3方向から入射する。クロスダイクロイックプリズム1130は、プロジェクター1000における色合成光学系であり、入射する赤色光R、緑色光G、青色光Bを合成する。クロスダイクロイックプリズム1130において、赤色光R及び青色光Bはそれぞれの入射方向に対して90度反射され、緑色光Gは透過する。その結果、互いに合成される赤色光R、緑色光G、青色光Bは、同じ方向に射出される。赤色光R、緑色光G、青色光Bは、カラー画像を表示する表示光として合成され、クロスダイクロイックプリズム1130から投射レンズ1140に向かって射出される。
【0053】
投射レンズ1140は、プロジェクター1000の外側を向いて配置されている。表示光は、投射レンズ1140を介して拡大されて射出され、投射対象であるスクリーンSCRに投射される。
【0054】
以上説明した本実施形態のプロジェクター1000は、光変調装置として上述の液晶装置100を備える。本実施形態のプロジェクター1000では、液晶装置100の第1基板10及び第2基板20の少なくとも一方に設けられる配向膜において、第1斜方蒸着膜と第2斜方蒸着膜との空隙が互いに傾斜角度が異なる斜方蒸着膜同士の境界面で不連続になる。そのため、斜方蒸着膜の深部、すなわち第2蒸着膜72と第3蒸着膜73との間の素子基板19側及び対向基板29側の少なくとも一方の基板側の領域まで液晶分子52が入り込み難い。プロジェクター1000によれば、液晶装置100の液晶層50に対する配向規制力を維持し、液晶の劣化を抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態の液晶装置100を備える電子機器は、プロジェクター1000に限定されず、例えば、3次元プリンター等であってもよい。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、電気光学装置としての液晶装置100として、透過型の液晶装置を例示したが、液晶装置100としては、反射型の液晶装置又はLCOS(Liquid crystal on silicon)型の液晶装置としてもよい。
【0058】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
(付記1)第1基板と、液晶層と、前記液晶層を介して前記第1基板と対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との少なくとも一方の基板に配置される配向膜と、を備え、前記配向膜は、前記一方の基板に配置され、前記一方の基板の厚み方向と平行な第1方向に延びる第1柱状構造体を有する第1蒸着膜と、前記第1蒸着膜と前記液晶層との間に配置され、前記第1方向に対して第1傾斜角となるように傾斜して形成される第2柱状構造体を有する第2蒸着膜と、前記第2蒸着膜と前記液晶層との間に配置され、前記第1方向に対して第2傾斜角となるように傾斜して形成される第3柱状構造体を有する第3蒸着膜と、を有し、前記第1傾斜角は、前記第2傾斜角よりも大きい、液晶装置。
【0059】
付記1の構成により、製造工程数の増大を抑え、液晶層と斜方蒸着膜、すなわち液晶層と第2蒸着層及び第3蒸着層とが互いに接する表面積を減少させ、液晶層に対する配向規制力を維持し、液晶の劣化を抑制するとともに液晶の耐光性を高めることができる。
【0060】
(付記2)前記第1方向における前記第3柱状構造体の長さは、前記第2柱状構造体の長さよりも短い、付記1の液晶装置。
【0061】
付記2の構成により、斜方蒸着膜同士の隙間、すなわち第1基板の素子基板或いは第2基板の対向基板の各基板の表面に平行な方向において、第2柱状構造体と第3柱状構造体との空隙が深くなり過ぎず、液晶層と斜方蒸着膜とが互いに接する表面積を減少させ、液晶層に対する配向規制力を維持し、液晶の劣化を抑制することができる。
【0062】
(付記3)前記第2柱状構造体と前記第3柱状構造体とは、前記第1方向に対して同方向に傾いている、付記1又は付記2の液晶装置。
【0063】
付記3の構成により、液晶層と斜方蒸着膜、すなわち液晶層と第2柱状構造体及び第3柱状構造体とが互いに接する表面積を減少させ、液晶層に対する配向規制力を維持し、液晶の劣化を抑制することができる。
【0064】
(付記4)前記配向膜は、前記第1基板及び前記第2基板に設けられている、付記1から付記3の何れかの液晶装置。
【0065】
付記4の構成により、第1基板及び第2基板の双方に設けられる配向膜において、液晶層に対する配向規制力を維持し、液晶の劣化を抑制することができる。
【0066】
(付記5)付記1から付記4の何れかの液晶装置を備える、電子機器。
【0067】
付記5の構成により、電子機器における液晶装置の液晶層に対する配向規制力を維持し、液晶の劣化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…第1基板、16…第1配向膜、20…第2基板、26…第2配向膜、50…液晶層、71…第1蒸着膜、72…第2蒸着膜、73…第3蒸着膜、100…液晶装置、171…第1柱状構造体、172…第2柱状構造体、173…第3柱状構造体、1000…プロジェクター(電子機器)、θ1…第1傾斜角、θ2…第2傾斜角。