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  • 特開-X線管装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165012
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】X線管装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/12 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H01J35/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080813
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 利巳
(57)【要約】
【課題】製品寿命の長期化を図ることのできるX線管装置を提供する。
【解決手段】X線管装置1は、陰極15と、陽極ターゲット13と、陽極ブロック14と、保護膜25と、を備える。陰極15は、電子を放出する。陽極ターゲット13は、陰極15から放出された電子が衝突することでX線を発生する。陽極ブロック14は、外部に陽極ターゲット13が接合され、内部に冷却液が流通する流路23が形成される。保護膜25は、金と、タングステンと、コバルトまたはニッケルとを含む金三元合金によって形成され、陽極ブロック14の内面を被覆する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出する陰極と、
前記陰極から放出された電子が衝突することでX線を発生する陽極ターゲットと、
外部に前記陽極ターゲットが接合され、内部に冷却液が流通する流路が形成された陽極ブロックと、
金と、タングステンと、コバルトまたはニッケルとを含む金三元合金によって形成され、前記陽極ブロックの内面を被覆する保護膜と、
を備えることを特徴とするX線管装置。
【請求項2】
前記保護膜は、コバルトまたはニッケルの含有量が39~60wt%である
ことを特徴とする請求項1に記載のX線管装置。
【請求項3】
前記保護膜は、コバルトまたはニッケルの含有量が49~50wt%である
ことを特徴とする請求項2に記載のX線管装置。
【請求項4】
前記保護膜は、タングステンの含有量が0.2~0.5wt%である
ことを特徴とする請求項3に記載のX線管装置。
【請求項5】
前記保護膜は、三元系のアモルファス構造を有している
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一に記載のX線管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光X線分析などに使用されるX線管装置は、陰極から放出された電子を陽極ターゲットに衝突させることでX線を発生させている。電子の衝突によって熱が発生するため、陽極ターゲット、およびその陽極ターゲットを接合した陽極ブロックは、高温になる傾向がある。そのため、このようなX線管装置では、陽極ブロック内に形成された流路に冷却液を流通させることにより、陽極ターゲットおよび陽極ブロックを冷却する冷却機構を備えている。
【0003】
一方、陽極ブロック内の流路では、冷却液の沸騰、あるいは冷却液回路内の圧力差に起因して、冷却液中に気泡が発生する場合がある。このような気泡は、消滅の際に衝撃波を生じさせるため、冷却液の流路を構成する陽極ブロックの内面が浸食される原因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7187409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、製品寿命の長期化を図ることのできるX線管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態のX線管装置は、陰極と、陽極ターゲットと、陽極ブロックと、保護膜と、を備える。陰極は、電子を放出する。陽極ターゲットは、陰極から放出された電子が衝突することでX線を発生する。陽極ブロックは、外部に陽極ターゲットが接合され、内部に冷却液が流通する流路が形成される。保護膜は、金と、タングステンと、コバルトまたはニッケルとを含む金三元合金によって形成され、陽極ブロックの内面を被覆する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態を示すX線管装置の断面図である。
図2】同上X線管装置のX線管の一部の拡大断面図である。
図3】同上X線管装置の保護膜のコバルトまたはニッケルの含有量に対する硬度と熱伝導率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係るX線管装置1の一例を示す断面図である。X線管装置1は、X線管2と、このX線管2を含む管容器3と、を備える。さらに、X線管装置1は、高電圧レセプタクル4、冷却パイプ5、ジョイント6、導水パイプ7、導体スプリング8、絶縁筒体9、ベローズ11などを備えている。以下では、X線管装置1の管軸TAに平行な方向を軸方向と称する。軸方向において、X線管2側である一端側を下方向(下側)と称し、下方向に対して反対方向の他端側を上方向(上側)と称する。また、管軸TAに対して垂直な方向を径方向と称する。
【0010】
高電圧レセプタクル4は、高電圧ケーブルを接続するために、上端部が開口し、かつ下端部が閉塞した、有底の円筒形状に形成されている。高電圧レセプタクル4は、管軸TAを中心軸として、管容器3内の上側に液密に設けられている。高電圧レセプタクル4は、底部を貫通する接続端子12を備えている。接続端子12は、高電圧レセプタクル4に挿入される外部電路のブッシングと、端子とを含む。接続端子12の下端は、導体スプリング8を介してジョイント6に接続されている。
【0011】
導体スプリング8は、高電圧レセプタクル4と導水パイプ7とを電気的に接続している。これにより、導水パイプ7を介して、後述する陽極ターゲット13に高電圧が供給される。
【0012】
絶縁筒体9は、略円筒形状の絶縁体で形成され、高電圧レセプタクル4の外側に設けられている。図示しないが、絶縁筒体9は、絶縁油が流通可能な構造とされている。絶縁筒体9は、例えば上端部が管容器3の内側に固定されている。
【0013】
冷却パイプ5は、冷却液、例えば、水系冷却液としての純水を流すための導管である。冷却パイプ5は、高電圧レセプタクル4と絶縁筒体9との間に螺旋状に設けられている。冷却パイプ5は、冷却液が供給される給水口5aを備える第1冷却パイプ5bと、冷却液が排出される排出口5cを備える第2冷却パイプ5dと、で構成されている。
【0014】
第1冷却パイプ5bは、給水口5aが冷却液の供給源である循環冷却装置など(図示せず)に接続され、給水口5aと反対側の端部がジョイント6に接続されている。一方、第2冷却パイプ5dは、排出口5cが循環冷却装置など(図示せず)に接続され、排出口5cと反対側の端部がジョイント6に接続されている。なお、冷却パイプ5は、高電圧レセプタクル4の外周壁に接触しないように保持された構造であればよく、螺旋状に設けられていなくともよい。
【0015】
ジョイント6は、X線管装置1の中心部、例えば管軸TA上に設けられ、導水パイプ7と冷却パイプ5とを接続している。なお、詳細は省略するが、ジョイント6には、管軸TAと垂直な方向に開口し、第1冷却パイプ5bが液密に接続された第1通路と、管軸TAと垂直な方向に開口し、第2冷却パイプ5dが液密に接続された第2通路と、管軸TAに沿って延伸し、第1通路および第2通路の双方と繋がる第3通路と、が形成されている。
【0016】
導水パイプ7は、ジョイント6の下部に接続され、管軸TAに沿って延伸している。導水パイプ7は、管軸TAを中心とした2重の円筒形状に形成されている。すなわち、導水パイプ7は、円筒形状に形成された外側パイプ7aと、外側パイプ7aの内側に設けられた円筒形状の内側パイプ7bとを含む。
【0017】
外側パイプ7aは、ジョイント6の下部と、後述する陽極ブロック14の上部とのそれぞれに液密に接合されている。外側パイプ7aは、ジョイント6を介して排水口5cに連通する第2冷却パイプ5dに接続されている。
【0018】
内側パイプ7bは、上端部がジョイント6(より具体的には、上述の第3通路)に嵌合され、下端部に先端ノズル部24を備えている。内側パイプ7bは、ジョイント6を介して給水口5aに連通する第1冷却パイプ5bに接続されている。
【0019】
また、X線管2は、管容器3内部の下側に設けられている。X線管2は、陽極ターゲット(陽極)13と、陽極ブロック14と、陰極15と、ウェネルト電極16と、第1真空外囲器17と、第2真空外囲器18と、X線放射窓(窓部)19と、を備えている。高電圧レセプタクル4に高電圧ケーブルが接続された場合、陽極ターゲット13と陰極15との間に、高電圧(管電圧)が印加される。
【0020】
陽極ブロック14は、管軸TAを中心軸とした有底の円筒形状に形成されている。陽極ブロック14の開口部側には、外側パイプ7aの下端部が固定されている。陽極ブロック14の内側には、内側パイプ7bの先端ノズル部24が配置されている。この先端ノズル部24から陽極ブロック14の底部(または、陽極ターゲット13の設置方向)に向かって、冷却液が吐出される。
【0021】
X線管装置1において、ジョイント6、導水パイプ7、および陽極ブロック14は、組み立てられることで、冷却液を流すための流路23を構成する。なお、ジョイント6、導水パイプ7、および陽極ブロック14は、夫々、別体として記載したが、冷却液を流す流路を構成すれば、全て一体に形成されていてもよいし、部分的に一体に形成されていてもよい。冷却液が、ジョイント6、導水パイプ7、および陽極ブロック14で構成された流路23と、冷却パイプ5と、を循環することで、後述する内部空間22に充填された絶縁油や陽極ターゲット13などが冷却される。
【0022】
陽極ターゲット13は、陽極ブロック14の外部である底部に接合されている。陽極ターゲット13は、電子が衝撃することによってX線を放射する。このとき、陽極ターゲット13は、電子が衝撃することで温度が上昇するが、陽極ブロック14の内部の流路23を流れる冷却液によって冷却される。相対的に、陽極ターゲット13には正の電圧が印加され、陰極15には負の電圧が印加される。例えば、陰極15は、電気的に接地されている。
【0023】
陰極15は、リング状のフィラメントで形成され、電子を放出する。陰極15は、陽極ターゲット13(または、陽極ブロック14)から径方向の外側に所定の間隔を空けて配置されている。陰極15から放出される電子は、ウェネルト電極16の下端部を越えて陽極ターゲット13上に衝突する。
【0024】
ウェネルト電極16は、円筒形状に形成され、陽極ターゲット13と陰極15との間に設けられている。ウェネルト電極16は、陰極15から射出された電子を陽極ターゲット13上に集束させる。
【0025】
第1真空外囲器17は、内側円筒と、外側円筒とで構成されている。第1真空外囲器17は、内側円筒と外側円筒との上端部が互いに接合されている。内側円筒および外側円筒は、それぞれ、略円筒形状で、例えば、ガラス材、またはセラミックス材で形成されている。第1真空外囲器17は、内側円筒の下端部が陽極ブロック14に真空気密に接続され、外側円筒の下端部がX線管2の壁面の一部としてX線管2の壁部に真空気密に接続されている。
【0026】
第2真空外囲器18は、有底の略円筒形状で形成されている。第2真空外囲器18は、上端部がX線管2の壁面の一部としてX線管2の壁部に真空気密に接続されている。第2真空外囲器18は、後述する管容器3ともに電気的に接地される。
【0027】
X線放射窓19は、薄板状であり、第2真空外囲器18の底部の中心付近を貫通する開口部に真空気密に接合されている。X線透過窓19は、電子が衝突した際に陽極ターゲット13から発生するX線を透過し、X線をX線管装置1の外部へ放出する。X線透過窓19は、X線を透過する部材、例えば、ベリリウム薄板で形成されている。また、X線管2は、外壁の一部に径方向の外側に突出する第1の凸部20aと、第2の凸部20bとを備えている。
【0028】
また、管容器3は、X線管装置1の各部を内部に収容する密閉された容器である。管容器3は、管軸TAを中心軸とする略円筒形状に形成されている。管容器3は、例えば、金属部材で形成されている。また、管容器3は、内壁に鉛板21が内貼りされている。管容器3(鉛板21)の内側の内部空間22には、絶縁油が充填されている。ここで、内部空間22は、例えば、管容器3の内側、X線管2および高電圧レセプタクル4の外側、かつ空盆10以外の空間である。
【0029】
ベローズ11は、管容器3の下側の所定の部分に、内部空間22と空盆10とを隔離するように備えられている。ベローズ11は、第1の凸部20aに一端部が固定され、他端部が第2の凸部20bに固定されている。ベローズ11は、樹脂性の弾性部材で形成されており、絶縁油の膨張および収縮などを空盆10で伸縮することによって吸収する。なお、ベローズ11は、伸縮自在な伸縮部材であり、例えばゴムベローズ(ゴム膜)である。
【0030】
そして、本実施形態では、X線管装置1において、冷却液は、給水口5aから第1冷却パイプ5bに取り入れられ、ジョイント6を介して内側パイプ7bに流入する。内側パイプ7bに流入した冷却液は、内側パイプ7bの先端ノズル部24から吐出され、陽極ブロック14の内側表面および外側パイプ7aの内側表面と、内側パイプ7bの外周部との間に流れ、その後、ジョイント6を介して第2冷却パイプ5dに流入し、排出口5cから取り出される。したがって、冷却液は、陽極ブロック14の内部に形成された流路23を流通し、陽極ターゲット13および陽極ブロック14を冷却する。
【0031】
次に、図2はX線管2の拡大断面図である。陽極ブロック14は、円筒形状の管部14aと、管部14aの一端側(すなわち陽極ターゲット13側)を閉塞する端部である底部14bと、を有している。陽極ブロック14は、例えば熱伝導率の高い銅によって形成されている。陽極ターゲット13は、底部14bの外面に接合されている。
【0032】
導水パイプ7の内側パイプ7bは、例えばステンレスによって形成され、陽極ブロック14の管部14aの内側および外側パイプ7aの内側に位置している。内側パイプ7bの外面は、陽極ブロック14の管部14aの内周面および底部14bの内面と面している。内側パイプ7bは、その内面によって冷却液の第1流路23aを形成しているとともに、その外面によって陽極ブロック14との間に冷却液の第2流路23bを形成している。内側パイプ7bの端部には、底部14bに向けて冷却液を吐出する吐出口23cが形成されている。図2中の矢印は、流路23を流れる冷却液の流れを示している。
【0033】
陽極ブロック14の内面は、保護膜25によって被覆されている。保護膜25は、底部14bの内面と、管部14aの内周面とに亘って連続的に被覆している。図2の例では、保護膜25は、底部14bの内面および管部14aの内周面の全体に亘って設けられているが、少なくとも底部14bの内面全体、および管部14aの内周面のうち底部14bと管部14aとの境界近傍の領域を被覆していればよい。なお、底部14bの内面に形成される保護膜25の厚さが、管部14aの内周面に形成される保護膜25の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0034】
陽極ブロック14の内部の流路23を流通する冷却液内には、冷却液の沸騰や、冷却液回路内での冷却液の圧力差により、気泡が発生する場合がある。この気泡が消滅する際、衝撃波を生じさせる。陽極ブロック14の内面を被覆する保護膜25が軟質金で形成されている場合、保護膜25に対して衝突する気泡が消滅する際の衝撃波を繰り返し受けることにより、保護膜25が腐食し、浸食が発生しやすい。場合によっては、陽極ブロック14や陽極ターゲット13まで浸食が進むおそれがある。
【0035】
本実施形態では、保護膜25の耐浸食性能を向上させるために、保護膜25の硬度をより向上させている。保護膜25は、金(Au)と、タングステン(W)と、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)とを含む硬質金である金三元合金によって形成されている。この保護膜25は、一例では、めっき法によって形成される。金三元合金によって形成される保護膜25は、結晶構造を持たない三元系のアモルファス(非晶質)構造を有している。
【0036】
図3は、保護膜25のコバルトまたはニッケルの含有量に対する硬度と熱伝導率の関係を示すグラフであって、金-タングステン中のコバルトまたはニッケルの含有量に対する保護膜25の硬度および熱伝導率を実験により求めた結果を示す。グラフでは、複数のプロットに示すように含有量を変えて硬度および熱伝導率を求め、硬度および熱伝導率の回帰直線を引いている。保護膜25におけるタングステンの含有量は、重量比で0.2~0.5wt%である。
【0037】
一般的に金属の硬度に関しては、次のHall-Petchの式が知られている。
【0038】
H=H+kd-1/2
(H:硬度、d:結晶粒の直径、H,k:定数)
金中に添加剤としてタングステンとコバルトまたはニッケルを入れた金三元合金とすることで、例えばめっき法で形成する際に、結晶の成長が妨げられて粒径が微細化し、三元系のアモルファス構造となるため、硬度が高まる。
【0039】
そして、図3に示すように、保護膜25におけるコバルトまたはニッケルの含有量が増加すると、硬度が高まり、耐食抵抗(耐腐食性)が向上する。
【0040】
一方、保護膜25におけるコバルトまたはニッケルの含有量が増加すると、保護膜25の熱伝導率が低下する。保護膜25の熱伝導率が低下すると、冷却液による陽極ブロック14および陽極ターゲット13の冷却効率が低下し、陽極ターゲット13の表面(ターゲット面)が劣化しやすくなる。この結果、X線管装置1の製品寿命が短くなったり、信頼性の低下を招いたりするおそれがある。
【0041】
このことから、保護膜25に対するコバルトまたはニッケルの含有量は、重量比で49~50wt%の範囲が、保護膜25の硬度と熱伝導率とのバランスが最も好ましい。この範囲では、コバルトまたはニッケルの含有量が0wt%の場合と比較して、十分な熱伝導率が確保されたうえで、硬度が3倍以上となる。そのため、耐食抵抗が3倍以上となり、保護膜25に対して衝突する気泡が消滅する際の衝撃波を繰り返し受けても、保護膜25の浸食を低減できる。
【0042】
このように、保護膜25におけるコバルトまたはニッケルの含有量は、49~50wt%の範囲が好ましい。さらに、49~50wt%の範囲の±10%の39~60wt%の範囲でも、保護膜25の硬度と熱伝導率とのバランスが確保されるため、好ましい範囲である。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、陽極ブロック14の内面を被覆する保護膜25が、金と、タングステンと、コバルトまたはニッケルとを含む硬質金である金三元合金によって形成されるため、保護膜25の硬度を高め、耐浸食性能を向上させることができ、製品寿命の長期化を図ることができる。
【0044】
この金三元合金によって形成される保護膜25は、結晶構造を持たない三元系のアモルファス(非晶質)構造を有するものであって、保護膜25の硬度を高め、耐浸食性能を向上させることができる。
【0045】
保護膜25におけるコバルトまたはニッケルの含有量は、39~60wt%の範囲、より好ましくは49~50wt%の範囲であるため、保護膜25の硬度と熱伝導率とのバランスを最適化できる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 X線管装置
13 陽極ターゲット
14 陽極ブロック
15 陰極
23 流路
25 保護膜
図1
図2
図3