(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165029
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】画像形成システム、画像形成装置、サーバー装置、診断方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G03G21/00 512
G03G21/00 396
G03G21/00 386
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080842
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義和
(72)【発明者】
【氏名】石原 康弘
(72)【発明者】
【氏名】井口 幸宣
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】江口 達也
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270KA59
2H270KA61
2H270KA62
2H270LA60
2H270LA71
2H270LD01
2H270LD08
2H270LD14
2H270MB25
2H270MB27
2H270NB07
2H270ND12
2H270ND15
2H270ND18
2H270ND22
2H270ND32
2H270QA05
2H270QA43
2H270RA27
2H270RB01
2H270RC02
2H270RC04
2H270RC07
2H270RC16
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】動作機構を駆動する駆動部の構成部品が交換された場合であっても、動作機構に異常が発生しているか否かを正確に診断できるようにする。
【解決手段】記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成システム1は、記録媒体を搬送する動作機構又は記録媒体に画像を形成する動作機構を駆動する駆動部と、駆動部の駆動状態を検知する検知部70と、検知部70による検知結果を所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて動作機構の異常を診断する診断部91と、駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて変換条件を更新する更新部96と、を備える構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成システムであって、
記録媒体を搬送する動作機構又は前記記録媒体に画像を形成する動作機構を駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動状態を検知する検知部と、
前記検知部による検知結果を所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて前記動作機構の異常を診断する診断部と、
前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新部と、
を備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記駆動部は、前記動作機構を駆動するモーターを含み、
前記診断部は、前記検知部による検知結果を前記変換条件に基づき、前記モーターのトルク値に変換することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記変換条件は、前記検知部による検知結果を前記トルク値に変換するためのトルク変換式であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記更新部は、更に前記駆動部が前記動作機構を駆動するときの制御に応じて前記トルク変換式を更新することを特徴とする請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記更新部は、交換によって取り付けられた部品の識別情報を取得し、前記識別情報に基づいて前記トルク変換式を更新することを特徴とする請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記更新部は、予め用意されている複数のトルク変換式の中から、交換によって取り付けられた部品に応じたトルク変換式を選択することを特徴とする請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記更新部は、部品の交換前に適用されていた前記トルク変換式を、交換によって取り付けられた部品に応じて変形させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記モーターが交換された場合、前記識別情報は、交換によって取り付けられたモーターに関する情報を含むことを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記モーターを駆動する駆動回路が交換された場合、前記識別情報は、交換によって取り付けられた駆動回路に関する情報を含むことを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項10】
ユーザーが操作可能な操作部、
を更に備え、
前記更新部は、前記操作部に対して入力される情報に基づき、前記識別情報を取得することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記更新部は、交換によって取り付けられた部品に搭載されている記憶部から前記識別情報を取得することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項12】
外部装置と通信を行う通信部、
を更に備え、
前記更新部は、前記通信部を介して前記外部装置から送信される前記識別情報を取得することを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項13】
前記更新部は、前記駆動部が前記動作機構を駆動するときの制御を示す制御情報を取得し、前記制御情報に基づいて前記トルク変換式を更新することを特徴とする請求項4に記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記制御情報は、前記駆動部が前記モーターを駆動するときの制御モードに関する情報を含むことを特徴とする請求項13に記載の画像形成システム。
【請求項15】
記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成装置であって、
記録媒体を搬送する動作機構又は前記記録媒体に画像を形成する動作機構を駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動状態を検知してサーバー装置へ送信する検知部と、
を備え、
前記検知部は、前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品の識別情報を前記サーバー装置へ送信することを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成装置であって、
記録媒体を搬送する動作機構又は前記記録媒体に画像を形成する動作機構を駆動する駆動部と、
前記駆動部の駆動状態を検知し、検知結果を所定の変換条件に基づいて前記駆動部の負荷を算出してサーバー装置へ送信する検知部と、
前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成装置と通信可能なサーバー装置であって、
前記画像形成装置における動作機構を駆動する駆動部の駆動状態を検知した検知結果を取得する取得部と、
前記検知結果を、所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて前記動作機構の異常を診断する診断部と、
前記画像形成装置において前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新部と、
を備えることを特徴とするサーバー装置。
【請求項18】
記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成システムにおける診断方法であって、
記録媒体を搬送する動作機構又は前記記録媒体に画像を形成する動作機構を駆動する駆動部の駆動状態を検知する検知ステップと、
前記検知ステップによる検知結果を所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて前記動作機構の異常を診断する診断ステップと、
前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新ステップと、
を有することを特徴とする診断方法。
【請求項19】
記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成装置と通信可能なサーバー装置において実行されるプログラムであって、前記サーバー装置に、
前記画像形成装置における動作機構を駆動する駆動部の駆動状態を検知した検知結果を取得する取得ステップと、
前記検知結果を、所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて前記動作機構の異常を診断する診断ステップと、
前記画像形成装置において前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、画像形成装置、サーバー装置、診断方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MFP(Multifunction Peripherals)などの画像形成装置において、シート搬送方向の上流側に位置するローラーがシートを挟み込んだときに発生する負荷トルクから、下流側に位置するローラーがシートを挟み込むときに発生する負荷トルクを推定し、下流側に位置するローラーを駆動する際の駆動トルクを制御するものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、消耗品の型式に応じた残使用可能期間を予測できるようにした画像形成装置も提案されている(例えば特許文献2)。この画像形成装置は、画像形成処理に用いる消耗品の型式が、消耗品の残使用可能期間を予測する予測機構が対応する型式であるかを照合する。予測機構が対応する型式の消耗品である場合、画像形成装置は、予測機構により残使用可能期間の予測処理を行う。また、対応しない型式の消耗品である場合、画像形成装置は、予測機構を無効化し、当該消耗品の使用履歴情報を含む消耗品情報を予測サーバーへ送信する。予測サーバーは、使用履歴情報を用いて残使用可能期間の予測処理を行い、画像形成装置へ応答する。
【0004】
一般に、画像形成装置は、シートを搬送するローラーなど、複数の動作機構を備えている。画像形成装置は、それら複数の動作機構のそれぞれをモーターなどの駆動部で駆動する。動作機構は、消耗品であり、正常な動作を行うことができない状態に至ると、部品交換や清掃などメンテナンス作業の対象となる。この種の画像形成装置では、動作機構を駆動しているモーターの電流を検知し、検知した電流を負荷トルク値に換算する。その負荷トルク値が所定の閾値を超えると、画像形成装置は、動作機構に異常が発生していると判断し、メンテナンス作業を要求する。これにより、画像形成装置は、適切なタイミングでメンテナンスサービスを受けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-204796号公報
【特許文献2】特開2010-181714号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年は、BCP(Business Continuity Plan)やEOL(End Of Life)などにより、駆動部を構成する部品が正規品から代替品に変更されるケースがある。例えば、モーターやモーターを駆動する駆動回路が正規品から代替品に変更されることがある。ところが、モーターの電流値をトルク値に変換するためのトルク変換式は、正規品が使用されることを前提とした変換式である。そのため、駆動部を構成する部品が正規品から代替品に置き換えられると、トルク変換式によって算出されるトルク値の精度が低下する。その結果、動作機構に異常が発生しているか否かの判定において誤判定が生じやすくなるという問題がある。この問題は、特許文献1,2の従来技術を用いたとしても解決することができない。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するため、駆動部を構成する部品が交換された場合であっても動作機構に異常が発生しているか否かを正確に診断することができる画像形成システム、画像形成装置、サーバー装置、診断方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成システムであって、記録媒体を搬送する動作機構又は前記記録媒体に画像を形成する動作機構を駆動する駆動部と、前記駆動部の駆動状態を検知する検知部と、前記検知部による検知結果を所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて前記動作機構の異常を診断する診断部と、前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新部と、を備えることを特徴とする構成である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の画像形成システムにおいて、前記駆動部は、前記動作機構を駆動するモーターを含み、前記診断部は、前記検知部による検知結果を前記変換条件に基づき、前記モーターのトルク値に変換することを特徴とする構成である。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2の画像形成システムにおいて、前記変換条件は、前記検知部による検知結果を前記トルク値に変換するためのトルク変換式であることを特徴とする構成である。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3の画像形成システムにおいて、前記更新部は、更に前記駆動部が前記動作機構を駆動するときの制御に応じて前記トルク変換式を更新することを特徴とする構成である。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項3の画像形成システムにおいて、前記更新部は、交換によって取り付けられた部品の識別情報を取得し、前記識別情報に基づいて前記トルク変換式を更新することを特徴とする構成である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項3の画像形成システムにおいて、前記更新部は、予め用意されている複数のトルク変換式の中から、交換によって取り付けられた部品に応じたトルク変換式を選択することを特徴とする構成である。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項3の画像形成システムにおいて、前記更新部は、部品の交換前に適用されていた前記トルク変換式を、交換によって取り付けられた部品に応じて変形させることを特徴とする構成である。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項5の画像形成システムにおいて、前記モーターが交換された場合、前記識別情報は、交換によって取り付けられたモーターに関する情報を含むことを特徴とする構成である。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項5の画像形成システムにおいて、前記モーターを駆動する駆動回路が交換された場合、前記識別情報は、交換によって取り付けられた駆動回路に関する情報を含むことを特徴とする構成である。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項5の画像形成システムにおいて、ユーザーが操作可能な操作部、を更に備え、前記更新部は、前記操作部に対して入力される情報に基づき、前記識別情報を取得することを特徴とする構成である。
【0018】
請求項11に係る発明は、請求項5の画像形成システムにおいて、前記更新部は、交換によって取り付けられた部品に搭載されている記憶部から前記識別情報を取得することを特徴とする構成である。
【0019】
請求項12に係る発明は、請求項5の画像形成システムにおいて、外部装置と通信を行う通信部、を更に備え、前記更新部は、前記通信部を介して前記外部装置から送信される前記識別情報を取得することを特徴とする構成である。
【0020】
請求項13に係る発明は、請求項4の画像形成システムにおいて、前記更新部は、前記駆動部が前記動作機構を駆動するときの制御を示す制御情報を取得し、前記制御情報に基づいて前記トルク変換式を更新することを特徴とする構成である。
【0021】
請求項14に係る発明は、請求項13の画像形成システムにおいて、前記制御情報は、前記駆動部が前記モーターを駆動するときの制御モードに関する情報を含むことを特徴とする構成である。
【0022】
請求項15に係る発明は、記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成装置であって、記録媒体を搬送する動作機構又は前記記録媒体に画像を形成する動作機構を駆動する駆動部と、前記駆動部の駆動状態を検知してサーバー装置へ送信する検知部と、を備え、前記検知部は、前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品の識別情報を前記サーバー装置へ送信することを特徴とする構成である。
【0023】
請求項16に係る発明は、記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成装置であって、記録媒体を搬送する動作機構又は前記記録媒体に画像を形成する動作機構を駆動する駆動部と、前記駆動部の駆動状態を検知し、検知結果を所定の変換条件に基づいて前記駆動部の負荷を算出してサーバー装置へ送信する検知部と、前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新部と、を備えることを特徴とする構成である。
【0024】
請求項17に係る発明は、記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成装置と通信可能なサーバー装置であって、前記画像形成装置における動作機構を駆動する駆動部の駆動状態を検知した検知結果を取得する取得部と、前記検知結果を、所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて前記動作機構の異常を診断する診断部と、前記画像形成装置において前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新部と、を備えることを特徴とする構成である。
【0025】
請求項18に係る発明は、記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成システムにおける診断方法であって、記録媒体を搬送する動作機構又は前記記録媒体に画像を形成する動作機構を駆動する駆動部の駆動状態を検知する検知ステップと、前記検知ステップによる検知結果を所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて前記動作機構の異常を診断する診断ステップと、前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新ステップと、を有することを特徴とする構成である。
【0026】
請求項19に係る発明は、記録媒体を搬送して画像を形成する画像形成装置と通信可能なサーバー装置において実行されるプログラムであって、前記サーバー装置に、前記画像形成装置における動作機構を駆動する駆動部の駆動状態を検知した検知結果を取得する取得ステップと、前記検知結果を、所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて前記動作機構の異常を診断する診断ステップと、前記画像形成装置において前記駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合、交換によって取り付けられた部品に応じて前記変換条件を更新する更新ステップと、を実行させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、駆動部を構成する部品が交換された場合であっても動作機構に異常が発生しているか否かを正確に診断できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】画像形成システムの概念的構成例を示す図である。
【
図3】後処理ユニットの動作機構及び駆動部を例示する図である。
【
図4】第1実施形態において動作機構を駆動する駆動部の構成を示すブロック図である。
【
図5】サーバー装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】負荷算出部による処理の一例を示す図である。
【
図7】正規品から交換される代替品の例を示す図である。
【
図9】
図8とは異なる更新部の構成例を示すブロック図である。
【
図10】画像形成装置において行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】サーバー装置において行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】第2実施形態において動作機構を駆動する駆動部の構成を示すブロック図である。
【
図13】第3実施形態における画像形成システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における画像形成システム1の概念的構成例を示す図である。
図1に示すように、画像形成システム1は、画像形成装置2と、サーバー装置3とがネットワーク4を介して通信可能な構成である。ネットワーク4は、LAN(Local Area Network)などのローカルネットワークや、インターネットなどの広域ネットワークを含むネットワークである。
【0031】
画像形成装置2は、MFPなどで構成され、スキャンジョブ、プリントジョブ、コピージョブなどの各種ジョブを実行する。例えば、プリントジョブの場合、画像形成装置2は、印刷用紙などのシートを搬送し、そのシートに印刷対象となる画像を形成して出力する。この画像形成装置2は、後述するように後処理ユニット14(
図2参照)を有している。画像形成装置2は、プリントジョブの実行中に後処理ユニット14を動作させることにより、画像が形成されたシートに対してパンチ孔を穿孔したり、複数枚のシートを整合させてステープルを打設したりすることができる。
【0032】
画像形成装置2は、ジョブの実行中に様々な動作機構を動作させる駆動部を備えている。画像形成装置2は、駆動部が動作機構を駆動することに伴い、駆動部の駆動状態を検知する。また、画像形成装置2は、駆動部の駆動状態を検知した検知結果をサーバー装置3へ送信する。
【0033】
サーバー装置3は、様々な拠点に設置される複数の画像形成装置2と通信可能である。サーバー装置3は、複数の画像形成装置2のそれぞれから送信される、駆動部の駆動状態を検知した検知結果を受信する。サーバー装置3は、画像形成装置2から検知結果を受信すると、その検知結果に基づき、画像形成装置2に搭載されている動作機構に異常が発生しているか否かを診断する。動作機構に異常が発生していると判断すると、サーバー装置3は、サービスマンMなどが携帯している端末装置5に異常発生を通知することにより、メンテナンスなどを行うように指示する。
【0034】
図2は、画像形成装置2の内部構成を示す図である。画像形成装置2は、プリンタ部10と、スキャナ部11と、自動原稿搬送部12と、操作パネル13と、後処理ユニット14とを備える。
【0035】
プリンタ部10は、給紙部20と、画像形成部30と、定着部27とを備える。給紙部20は、複数の給紙カセット21を有し、それら複数の給紙カセット21のうちからユーザーによって指定された給紙カセット21から印刷用紙などのシートを給紙し、所定の搬送路23に沿ってシートを搬送する。画像形成部30は、給紙部20によって搬送されるシートが所定位置を通過する際にシートに画像を形成する。定着部27は、画像形成部30によって画像が形成されたシートに加熱処理及び加圧処理を施し、画像をシートに定着させる。
【0036】
給紙部20は、各給紙カセット21からシートを給紙する給紙ローラー22と、給紙されたシートを搬送路23に沿って搬送する搬送ローラー24と、シートを画像形成部30による画像形成位置へ搬送するタイミングローラー25と、シートに画像を二次転写させる二次転写ローラー26と、シートを排出する排出ローラー28とを備える。これら各ローラーは、図示を省略するモーターなどの駆動部によって駆動される動作機構のひとつである。
【0037】
画像形成部30は、無端ベルトで構成される中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31に接してY(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色の画像を中間転写ベルト31に一次転写する複数の画像ユニット32と、各画像ユニット32の感光体を露光する露光部33とを備える。中間転写ベルト31は、駆動ローラー34と従動ローラー35とに掛け渡されている。中間転写ベルト31は、駆動ローラー34が図示を省略するモーターなどの駆動部によって駆動されることにより所定方向に循環移動する。中間転写ベルト31に一次転写された画像は、二次転写ローラー26の位置でシートの表面に二次転写される。画像ユニット32の感光体や、中間転写ベルト31は、図示を省略するモーターなどの駆動部によって駆動される動作機構のひとつである。
【0038】
スキャナ部11は、ユーザーによってセットされる原稿の画像を光学的に読み取って画像データを生成する。自動原稿搬送部12は、スキャナ部11の上部に配置され、原稿載置部12aに載置された原稿を1枚ずつ取り出し、スキャナ部11による原稿読み取り位置へ原稿を自動搬送する。自動原稿搬送部12には、原稿を搬送するための複数のローラーが搭載されている。それらローラーは、図示を省略するモーターなどの駆動部によって駆動される動作機構のひとつである。
【0039】
操作パネル13は、ユーザーが画像形成装置2を使用する際のユーザーインタフェースを提供する。例えば操作パネル13は、ユーザーが操作可能な操作画面を表示する表示部と、ユーザーの操作を受け付ける操作部とを備えている。表示部は、カラー液晶ディスプレイなどで構成される。操作部は、表示部の画面上に配置されるタッチパネルキーなどによって構成される。
【0040】
後処理ユニット14は、プリンタ部10の排出ローラー28によって排出されるシートを受け取り、画像が形成されたシートに対する後処理を施す。この後処理ユニット14は、パンチ孔処理部40と、綴じ処理部41とを備えている。パンチ孔処理部40は、プリンタ部10から排出されるシートに対してパンチ孔を穿孔する。綴じ処理部41は、プリンタ部10から排出される複数枚のシートを整合させてステープルを打設する。後処理ユニット14は、後処理を施したシートを排紙トレイ42へ排出する。このような後処理ユニット14には、複数の動作機構と、それら動作機構を駆動する複数の駆動部とが搭載されている。以下においては、後処理ユニット14を例に挙げて、動作機構と駆動部との関係を説明する。
【0041】
図3は、後処理ユニット14の動作機構及び駆動部を例示する図である。後処理ユニット14は、パンチ孔処理部40の内部に、上下方向に可動するパンチ刃40aと、パンチ受け部43と、モーター51とを備えている。パンチ刃40aは、モーター51によって上下方向に駆動され、シートにパンチ孔を形成する。そのため、パンチ刃40aは、駆動部であるモーター51によって駆動される動作機構である。
【0042】
また、後処理ユニット14は、パンチ孔処理部40から送り出されるシートを搬送するための複数のローラー44と、複数のローラー44を駆動するモーター52とを備えている。ローラー44は、駆動部であるモーター52によって駆動される動作機構である。
【0043】
また、後処理ユニット14は、ローラー44によって搬送されるシートを整合させるためのシート積載トレイ46を有している。シート積載トレイ46の上方には、パドルローラー45が配置されている。パドルローラー45は、上下方向に揺動するアームの先端に取り付けられている。ローラー44によってシートが搬送されてくると、パドルローラー45は、回転しながら下降し、シートをシート積載トレイ46に落とし込むと共に、シートの端部を綴じ処理部41によるステープルの打設位置に設けられたストッパーに突き当てて整合させる。パドルローラー45は、モーター53によって駆動される。そのため、パドルローラー45は、駆動部であるモーター53によって駆動される動作機構である。
【0044】
また、シート積載トレイ46には、シートの搬送方向に直交する方向において、積載されるシートの両端を整合させる規制板47が設けられる。規制板47は、モーター54によってシートの搬送方向に直交する方向に進退移動する。そのため、規制板47は、駆動部であるモーター54によって駆動される動作機構である。
【0045】
綴じ処理部41は、ステープルの打設を行うための駆動部であるモーター55を備えている。そのため、綴じ処理部41は、モーター55によって駆動される動作機構である。
【0046】
また、シート積載トレイ46は、その傾斜した底面にシートを排出するための搬送機構48を備えている。例えば、搬送機構48は、モーター56によって駆動される搬送ベルトを備えている。そのため、搬送機構48は、駆動部であるモーター56によって駆動される動作機構である。搬送機構48は、例えば綴じ処理部41によって複数枚のシートにステープルが打設された後に駆動され、シート束を排紙トレイへ排出する。
【0047】
排紙トレイ42は、搬送機構48によって排出されるシート束を整列させるために上下方向に昇降駆動される。すなわち、排紙トレイ42は、駆動部であるモーター57によって駆動され、上下方向に配置されたガイド部49に沿って移動する。そのため、排紙トレイ42は、駆動部であるモーター57によって昇降駆動される動作機構である。
【0048】
図4は、動作機構を駆動する駆動部の構成を示すブロック図である。駆動部は、モーター50と、制御基板60とを備えている。
図4に示すモーター50は、上述したモーター51~57の総称である。制御基板60は、CPU61と、駆動回路62と、抵抗R1と、増幅器63と、ローパスフィルタ64とを備えている。また、制御基板60には、通信インタフェース75が接続されている。通信インタフェース75は、画像形成装置2をネットワーク4に接続し、サーバー装置3と通信を行うためのものである。
【0049】
CPU61は、演算処理部65と、記憶部66と、D/A変換器67と、A/D変換器68とを含む集積回路である。演算処理部65は、所定のプログラムを実行することにより、制御部69、検知部70、及び、取得部71として機能する。記憶部66には、駆動部の構成部品であるCPU61を識別するための識別情報73bが記憶されている。すなわち、識別情報73bは、駆動部に搭載されているCPU61がどのような特性を有する製品であるかを識別することが可能な情報である。
【0050】
制御部69は、画像形成装置2においてジョブが実行されるとき、モーター50を駆動する際の制御を決定し、D/A変換器67を介して駆動回路62に制御信号CNTを出力する。駆動回路62は、制御部69から出力される制御信号CNTに基づき、モーター50に駆動電流Idを流す。これにより、モーター50が回転し、動作機構が動作する。
【0051】
駆動回路62は、記憶部72を備えている。その記憶部72には、駆動部の構成部品である駆動回路62を識別するための識別情報73aが記憶されている。すなわち、識別情報73aは、駆動部に搭載されている駆動回路62がどのような特性を有する製品であるかを識別することが可能な情報である。また、記憶部72には、制御情報74が記憶されている。制御情報74は、駆動回路62がモーター50を駆動する際の励磁制御モードなど制御モードが記録された情報である。例えば、制御情報74には、励磁制御モードが1-2相励磁モードと2-2相励磁モードとのいずれであるかの情報が記録されている。
【0052】
駆動回路62によって駆動されるモーター50に流れる電流Idは、動作機構の負荷トルクに応じて変化する。この電流Idは、抵抗R1を流れるため、抵抗R1の両端に駆動電流Idに応じた電位差が生じる。ただし、駆動電流Idの変化は微小である。そのため、増幅器63は、抵抗R1の両端の電位差を増幅することで、動作機構の負荷トルクの変化を検知しやすくしている。増幅器63によって増幅された信号は、ローパスフィルタ64に供給される。ローパスフィルタ64は、増幅器63からの出力電圧に含まれるチョッピングノイズを除去し、ノイズを除去した信号をCPU61のA/D変換器68へ出力する。
【0053】
A/D変換器68は、ローパスフィルタ64から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、演算処理部65の検知部70へ出力する。
【0054】
検知部70は、A/D変換器68から出力される信号に基づき駆動部による動作機構の駆動状態を検知する。検知部70は、駆動部による動作機構の駆動状態を検知すると、その検知結果を、通信インタフェース75を介してサーバー装置3へ送信する。尚、検知部70は、A/D変換器68から出力されるデジタル信号をそのまま通信インタフェース75を介してサーバー装置3へ送信するものであっても構わない。
【0055】
図5は、サーバー装置3の構成を示すブロック図である。サーバー装置3は、通信インタフェース80と、CPU81と、記憶部82とを備えている。通信インタフェース80は、サーバー装置3をネットワーク4に接続し、画像形成装置2又は端末装置5と通信を行うためのものである。CPU81は、記憶部82に記憶されているプログラム83を読み出して実行するハードウェアプロセッサーである。CPU81は、プログラム83を実行することにより、検知結果取得部90、診断部91、通知部94、情報取得部95、及び、更新部96として機能する。記憶部82は、ハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)などで構成される不揮発性の記憶デバイスである。
【0056】
記憶部82には、プログラム83の他に、変換条件情報84が記憶されている。変換条件情報84は、画像形成装置2の検知部70による検知結果を、動作機構の負荷に変換条件を規定した情報である。変換条件情報84には、例えば、駆動部を構成する部品が全て正規品である場合の変換条件が予め規定されている。変換条件情報84に規定される変換条件は、例えば変換式として表される。
図5に示す変換条件情報84は、変換条件としてトルク変換式85を含んでいる。このトルク変換式85は、検知部70による検知結果を、モーター50のトルク値(負荷トルク値)に変換する演算式である。ただし、変換条件情報84に規定される変換条件は、必ずしも変換式として表されるものに限られない。例えば、変換条件は、テーブル形式で表されたものであっても構わない。
【0057】
検知結果取得部90は、検知部70から出力される検知結果を取得する。検知結果取得部90は、駆動部の駆動状態を検知した検知結果を取得すると、その検知結果を診断部91へ出力する。
【0058】
診断部91は、駆動部の駆動状態を検知した検知結果に基づき、駆動部によって駆動される動作機構に異常が発生しているか否かを診断する。診断部91は、負荷算出部92と、判断部93とを備えている。
【0059】
負荷算出部92は、駆動部の駆動状態を検知した検知結果に基づき駆動部にかかる負荷を算出する。この負荷算出部92は、記憶部82から変換条件情報84を読み出し、変換条件情報84に規定されている変換条件に基づき、駆動状態の検知結果を、動作機構の負荷に変換する。
図6は、負荷算出部92による処理の一例を示す図である。
図6に示すように、負荷算出部92は、変換条件情報84のトルク変換式85に基づき、モーター50のトルク値を算出する。具体的には、負荷算出部92は、駆動状態の検知結果を、トルク変換式85に入力して演算を行うことにより、モーター50のトルク値を算出する。
【0060】
判断部93は、負荷算出部92によって算出されるトルク値を所定の閾値と比較し、モーター50によって駆動される動作機構に異常が発生しているか否かを判断する。例えば、トルク値が閾値を超えている場合、判断部93は、動作機構に異常が発生していると判断し、通知部94を機能させる。
【0061】
通知部94は、診断部91によって動作機構に異常が発生していると診断された場合に、通信インタフェース80を介して、サービスマンMなどが携帯している端末装置5に異常発生を通知する。この通知には、異常が発生している画像形成装置2及び動作機構を特定することができる情報が含まれる。そのため、サービスマンMは、端末装置5が受信するサーバー装置3からの通知を確認することにより、異常が発生している画像形成装置2及び動作機構を特定することができる。その後、サービスマンMは、異常が発生している画像形成装置2の設置場所に出向いてメンテナンス作業や清掃作業などを行うことにより、異常を解消する。
【0062】
上記のような構成において、駆動部を構成する少なくとも一部の部品が交換されることがある。このとき、BCPやEOLなどにより、駆動部を構成する部品が正規品から代替品に変更されることがある。本実施形態の画像形成システム1は、駆動部を構成する部品が正規品から代替品に変更された場合であっても、診断部91において正確な診断を行うことができるように構成される。以下、そのための具体的な構成について説明する。
【0063】
図4に示すように、画像形成装置2の駆動部に設けられたCPU61は、駆動部を構成する部品が交換されると、取得部71を機能させる。例えば、駆動部を構成する部品がサービスマンMによって交換されると、サービスマンMは操作パネル13に駆動部の部品交換を行った旨を入力する。これに伴い、演算処理部65において取得部71が機能する。取得部71は、駆動部において交換された部品の識別情報73を取得する。例えば、駆動部のモーター50が交換された場合、取得部71は、部品交換によって駆動部に新たに取り付けられたモーター50の識別情報73を取得する。また、駆動部の駆動回路62が交換された場合、取得部71は、部品交換によって駆動部に新たに取り付けられた駆動回路62の識別情報73を取得する。更に、駆動部のCPU61が交換された場合、取得部71は、部品交換によって駆動部に新たに取り付けられたCPU61の識別情報73を取得する。この他にも、例えば増幅器63やローパスフィルタ64が交換されることもある。その場合、取得部71は、部品交換によって駆動部に新たに取り付けられた増幅器63やローパスフィルタ64の識別情報73を取得する。
【0064】
取得部71は、交換された部品に記憶部が搭載されている場合、その記憶部から識別情報73を読み出して取得する。例えば、CPU61が交換された場合、取得部71は、CPU61の記憶部66に記憶されている識別情報73aを取得する。また、駆動回路62が交換された場合、取得部71は、駆動回路62の記憶部72に記憶されている識別情報73aを取得する。
【0065】
また、取得部71は、交換された部品に記憶部が搭載されていない場合、サービスマンMなどによって操作パネル13に入力される識別情報73を取得する。例えば、モーター50、増幅器63又はローパスフィルタ64が交換された場合、取得部71は、操作パネル13の操作部に対して入力される情報に基づき、交換された部品の識別情報73を取得する。
【0066】
取得部71は、駆動部において交換された部品の識別情報73を取得すると、その取得した識別情報73を、通信インタフェース75を介してサーバー装置3へ送信する。
【0067】
図5に示すように、サーバー装置3のCPU81は、情報取得部95及び更新部96として機能する。情報取得部95は、画像形成装置2から送信される識別情報73を取得する。情報取得部95は、識別情報73を取得すると、その識別情報73を更新部96へ出力する。
【0068】
更新部96は、情報取得部95によって取得された識別情報73に基づき、駆動部において交換された部品を特定する。更新部96は、識別情報73に基づき、部品交換によって新たに駆動部に取り付けられた部品が正規品ではなく、代替品である場合、記憶部82に記憶されている変換条件情報84の変換条件を代替品に応じた変換条件に更新する。例えば、本実施形態における更新部96は、変換条件情報84に含まれるトルク変換式85を、代替品に応じたトルク変換式85に更新する。
【0069】
図7は、正規品から交換される代替品の例を示す図である。
図7に示す例では、正規品であるモーター50a、駆動回路62a、CPU61a、増幅器63a、及び、ローパスフィルタ64aのそれぞれに対し、モーター50b,50c、駆動回路62b,62c、CPU61b,61c、増幅器63b,63c、及び、ローパスフィルタ64b,64cのそれぞれが代替品として設定されている。したがって、正規品が交換されるとき、2つの代替品のいずれかが駆動部に取り付けられる。駆動部の部品交換によって少なくとも1つの部品が正規品から代替品に変わると、駆動部における部品の組合せが変わる。そこで、更新部96は、駆動部の部品交換が行われると、交換された部品の識別情報73に基づき、部品交換後の部品の組合せを特定する。更新部96は、その部品の組合せに基づき、トルク変換式85を交換された部品に応じた変換式に更新する。
【0070】
図8は、更新部96の一構成例を示すブロック図である。更新部96は、部品組合せ特定部96aと、トルク変換式選択部96bとを備えている。部品組合せ特定部96aは、上述したように、交換された部品の識別情報73に基づき、部品交換後の駆動部の部品の組合せを特定する処理部である。トルク変換式選択部96bは、様々な部品の組合せに対応する複数のトルク変換式85の中から部品組合せ特定部96aによって特定された組合せに基づき、1つのトルク変換式85を選択する。トルク変換式選択部96bは、その選択したトルク変換式85で変換条件情報84のトルク変換式85を書き換えることにより、トルク変換式85を更新する。尚、様々な部品の組合せに対応する複数のトルク変換式85は、予め記憶部82に記憶されていれば良い。
【0071】
図9は、
図8とは異なる更新部96の構成例を示すブロック図である。
図9(a)に示すように、この更新部96は、部品組合せ特定部96aと、トルク変換式変形部96cとを備えている。部品組合せ特定部96aは、
図8に示したものと同様である。トルク変換式変形部96cは、変換条件情報84に含まれるトルク変換式85を変形させることにより、交換された部品に対応するトルク変換式85を生成する。例えば、
図9(b)に示すように、全ての部品が正規品である場合のトルク変換式85は、正規品であるモーター50aの要素、正規品である駆動回路62aの要素、正規品であるCPU61aの要素、正規品である増幅器63aの要素、及び、正規品であるローパスフィルタ64aの要素によって表される。トルク変換式変形部96cは、トルク変換式85に含まれる各部品の要素を、部品交換によって駆動部に取り付けられた代替品の要素に置換し、変換条件情報84に含まれるトルク変換式85を更新する。例えば、部品交換によってモーター50aがモーター50bに交換され、駆動回路62aが駆動回路62bに交換された場合、全ての部品が正規品である場合のトルク変換式85は、
図9(c)に示すようなトルク変換式に変形される。
【0072】
その後、サーバー装置3の診断部91は、更新部96によって更新された変換条件情報84を用いて駆動部の駆動状態の検知結果から負荷を算出する。すなわち、負荷算出部92は、画像形成装置2から駆動部の駆動状態を示す検知結果を取得すると、その検知結果を、更新部96によって更新されたトルク変換式85で変換することにより、モーター50のトルク値(負荷トルク値)を算出する。このとき用いられるトルク変換式85は、駆動部の部品交換が反映された変換式に更新されている。そのため、負荷算出部92は、モーター50のトルク値を高い精度で算出することができる。その結果、判断部93がモーター50によって駆動される動作機構に異常が発生しているか否かを判断するとき、誤判断を行うことがなく、動作機構の異常診断を正確に行うことが可能である。
【0073】
ところで、駆動部の部品が正規品から代替品に変わると、モーター50の制御が変わることがある。例えば、モーター50が正規品から代替品に交換されると共に、駆動回路62も正規品から代替品に交換されると、励磁制御モードなど変更されることがある。モーター50の制御が変わると、モーター50の負荷トルクも変動する。そのため、更新部96は、モーター50の制御に応じて変換条件情報84の変換条件を更新することが好ましい。そこで、画像形成装置2の取得部71は、駆動部の部品交換が行われると、駆動回路62の記憶部72から制御情報74を取得し、その制御情報74をサーバー装置3へ送信する。サーバー装置3の更新部96は、画像形成装置2から制御情報74を取得すると、その制御情報74に基づいて駆動部が動作機構を駆動するときの制御モードを特定し、その制御モードに応じて更にトルク変換式85を更新する。この場合、更新部96は、識別情報73と制御情報74との双方に基づいてトルク変換式85を更新する。これにより、モーター50の制御が変わった場合でも、動作機構の異常診断を正常に行うことが可能である。
【0074】
次に、画像形成装置2の具体的な動作の一例について説明する。
図10は、画像形成装置2において行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、上述したCPU61の演算処理部65が所定のプログラムを実行することによって行われる処理である。画像形成装置2は、この処理を開始すると、駆動部の部品交換が行われたか否かを判断する(ステップS10)。駆動部の部品交換が行われた場合(ステップS10でYES)、画像形成装置2は、交換された部品を特定し(ステップS11)、部品交換によって駆動部に新たに取り付けられた部品の識別情報73を取得する(ステップS12)。
【0075】
次に、画像形成装置2は、モーター50の制御が変更されたか否かを判断する(ステップS13)。モーター50の制御が変更された場合(ステップS13でYES)、画像形成装置2は、制御情報74を取得する(ステップS14)。尚、部品交換の前後でモーター50の制御が変わっていない場合(ステップS13でNO)、ステップS14の処理はスキップする。その後、画像形成装置2は、ステップS12で取得した識別情報73と、ステップS14で取得した制御情報74とをサーバー装置3へ送信する(ステップS15)。尚、駆動部の部品交換が行われていない場合(ステップS10でNO)、ステップS11~S15の処理はスキップする。
【0076】
次に、画像形成装置2は、ジョブの実行が指示されたか否かを判断する(ステップS16)。ジョブの実行が指示された場合(ステップS16でYES)、画像形成装置2は、駆動部を動作させ、動作機構の駆動を開始する(ステップS17)。動作機構の駆動を開始すると、画像形成装置2は、駆動部の駆動状態を検知する(ステップS18)。その後、画像形成装置2は、駆動部の駆動状態を示す検知結果をサーバー装置3へ送信する(ステップS19)。尚、ジョブの実行が指示されていない場合、ステップS17~S19の処理はスキップする。
【0077】
画像形成装置2は、上記のような処理を繰り返し実行する。そのため、画像形成装置2は、駆動部の部品が交換されると、交換された部品の識別情報73をサーバー装置3へ送信し、その部品交換によってモーター50の制御が変わっていればモーター50の制御を示す制御情報74をサーバー装置3へ送信する。また、画像形成装置2は、ジョブの実行を開始することに伴い、駆動部の駆動状態を示す検知結果をサーバー装置3へ送信する。
【0078】
次に、サーバー装置3の具体的な動作の一例について説明する。
図11は、サーバー装置3において行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、上述したCPU81がプログラム83を実行することによって行われる処理である。サーバー装置3は、この処理を開始すると、画像形成装置2から識別情報73を受信したか否かを判断する(ステップS20)。画像形成装置2から識別情報73を受信している場合(ステップS20でYES)、サーバー装置3は、受信した識別情報73を取得する(ステップS21)。次にサーバー装置3は、画像形成装置2から制御情報74を受信したか否かを判断する(ステップS22)。制御情報74を受信している場合(ステップS22でYES)、サーバー装置3は、受信した制御情報74を取得する(ステップS23)。尚、制御情報74を受信していない場合(ステップS22でNO)、ステップS23の処理はスキップする。続いて、サーバー装置3は、画像形成装置2から受信した情報に基づき、変換条件情報84において規定されている変換条件を更新する(ステップS24)。これにより、記憶部82の変換条件情報84が更新される。尚、画像形成装置2から識別情報73を受信していない場合(ステップS20でNO)、ステップS21~S24の処理はスキップする。
【0079】
次に、サーバー装置3は、画像形成装置2においてジョブが実行されているときに検知部70による検知結果を受信したか否かを判断する(ステップS25)。検知結果を受信している場合(ステップS25でYES)、サーバー装置3は、記憶部82から変換条件情報84の変換条件を読み出し(ステップS26)、その変換条件に基づき、検知部70による検知結果を駆動部の負荷に変換する(ステップS27)。サーバー装置3は、その負荷を所定の閾値と比較する判断処理を行い(ステップS28)、動作機構に異常が発生しているか否かを判断する(ステップS29)。その結果、動作機構に異常が発生していると判断すると(ステップS29でYES)、サーバー装置3は、サービスマンMの端末装置5に対してメンテナンス通知を送信する(ステップS30)。尚、動作機構に異常が発生しないと判断した場合、ステップS30の処理はスキップする。また、検知部70による検知結果を受信していない場合(ステップS25でNO)、ステップS26~S30の処理はスキップする。
【0080】
サーバー装置3は、上記のような処理を繰り返し実行する。そのため、サーバー装置3は、画像形成装置2から識別情報73を受信すると、その識別情報73に基づいて変換条件情報84の変換条件を更新する。また、サーバー装置3は、制御情報74に基づいて変換条件を更新することもできる。サーバー装置3は、変換条件を更新した後、画像形成装置2から検知部70による検知結果を受信すると、更新した変換条件に基づいて検知結果を変換することができる。
【0081】
このように本実施形態の画像形成システム1は、シートを搬送する動作機構又はシートに画像を形成する動作機構を駆動する駆動部と、その駆動部の駆動状態を検知する検知部70と、検知部70による検知結果を所定の変換条件に基づいて変換した負荷に基づいて動作機構の異常を診断する診断部91と、駆動部の少なくとも一部の部品が交換された場合に、交換によって取り付けられた部品に応じて変換条件を更新する更新部96と、を備えている。そのため、本実施形態の画像形成システム1は、駆動部を構成する部品が正規品から代替品に置き換えられたとしても、変換条件を更新することにより、検知部70による検知結果を正確な負荷に変換することが可能であり、動作機構に異常が発生しているか否かの判定において誤判定が生じない。また、本実施形態の画像形成システム1は、変換条件として、検知部70による検知結果をトルク値に変換するためのトルク変換式85を用いている。そのため、本実施形態の画像形成システム1は、駆動部を構成する部品が正規品から代替品に置き換えられたとしても、トルク変換式85を更新することにより、検知部70による検知結果から正確なトルク値を算出することが可能である。
【0082】
また、本実施形態の画像形成システム1において、更新部96は、駆動部が動作機構を駆動するときの制御に応じてトルク変換式を更新する。そのため、駆動部を構成する部品が正規品から代替品に置き換えられることにより、駆動部が動作機構を駆動するときの制御が変わったとしても、画像形成システム1は、検知部70による検知結果から正確なトルク値を算出することが可能である。
【0083】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、駆動部の駆動状態を検知した検知結果に基づき駆動部にかかる負荷を算出する負荷算出部92がサーバー装置3に設けられる例を説明した。しかし、上述した負荷算出部92は、画像形成装置2に設けることもできる。そこで、本実施形態では、駆動部の駆動状態を検知した検知結果に基づき駆動部にかかる負荷を画像形成装置2において算出する形態を説明する。
【0084】
図12は、本実施形態における画像形成装置2の構成、より具体的には動作機構を駆動する駆動部の構成を示すブロック図である。
図12に示す駆動部の構成が第1実施形態で説明した駆動部の構成(
図4)と異なる点は、検知部70が上述した負荷算出部92の機能を有する点と、更新部76を備えている点である。
【0085】
本実施形態の検知部70は、A/D変換器68から出力される信号に基づき駆動部による動作機構の駆動状態を検知し、その検知結果に基づき駆動部にかかる負荷を算出する。本実施形態では、第1実施形態で説明した変換条件情報84がCPU61の記憶部66に記憶される。検知部70は、その変換条件情報84を記憶部66から読み出し、駆動部による動作機構の駆動状態を検知し、その検知結果に基づき駆動部にかかる負荷を算出する。そして、検知部70は、駆動部にかかる負荷をサーバー装置3へ送信する。例えば、変換条件情報84にトルク変換式85が含まれる場合、検知部70は、駆動部の駆動状態を検知した結果に基づき、モーター50のトルク値を算出し、そのトルク値をサーバー装置3へ送信する。サーバー装置3は、画像形成装置2から受信する負荷に基づき動作機構に異常が発生しているか否かを診断する。
【0086】
駆動部の部品が交換されると、演算処理部65において取得部71と更新部76とが機能する。取得部71は、駆動部において交換された部品の識別情報73を取得する。また、取得部71は、制御情報74を取得する。取得部71は、識別情報73及び制御情報74を取得すると、それらを更新部76へ出力する。
【0087】
更新部76は、取得部71によって取得される情報に基づき、変換条件情報84において規定されている変換条件を更新する。すなわち、更新部76は、部品交換によって駆動部に取り付けられた部品を特定し、その部品に応じた変換条件に更新する。また、部品交換によってモーター50の制御が変わった場合、更新部76は、制御情報74に基づき、部品交換後のモーター50の制御に基づき、変換条件を更新する。変換条件情報84にトルク変換式85が含まれる場合、更新部76は、そのトルク変換式85を更新する。
【0088】
部品交換後、画像形成装置2においてジョブが実行されると、検知部70は、更新部76によって更新された変換条件を適用し、駆動部にかかる負荷を検出する。したがって、サーバー装置3は、駆動部の部品交換が行われた場合であっても、動作機構に異常が発生しているか否かを正確に診断することが可能である。
【0089】
尚、上記以外の構成及び動作については、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0090】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。上記第1実施形態では、サーバー装置3が画像形成装置2から識別情報73及び制御情報74を取得する例について説明した。本実施形態では、サーバー装置3が画像形成装置2とは異なる外部装置から識別情報73及び制御情報74を取得する形態について説明する。
【0091】
図13は、第3実施形態における画像形成システム1を示す図である。モーター50などの駆動部の部品を交換する作業は、サービスマンMなどによって行われる。そのため、部品交換後にサービスマンMが自身の端末装置5に対して交換した部品の識別情報73や部品交換後のモーター50の制御を示す制御情報74を入力することができる。端末装置5は、サービスマンMによって識別情報73や制御情報74が入力されると、それらの情報をサーバー装置3へ送信する。したがって、サーバー装置3は、サービスマンMが携行している端末装置5から識別情報73及び制御情報74を取得することができ、交換された部品に応じて変換条件を更新することができる。
【0092】
尚、上記以外の構成及び動作については、第1実施形態又は第2実施形態で説明したものと同様である。
【0093】
(変形例)
以上、本発明に関する好ましいいくつかの実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記各実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態の画像形成システム1は、画像形成装置2とサーバー装置3とを備えている。しかし、本発明の画像形成システム1は、そのような構成に限定されるものではない。例えば、本発明の画像形成システム1は、上述した画像形成装置2とサーバー装置3とを一体化した1つの装置で構成しても構わない。
【0095】
また、上記実施形態では、駆動部の部品が交換される例として、モーター50、CPU61、駆動回路62、増幅器63、及び、ローパスフィルタ64を説明した。しかし、駆動部の交換対象部品は、これらに限られるものではない。例えば、駆動部において制御基板60の全体が交換されることもある。その場合、画像形成システム1は、制御基板60の識別情報73及び制御情報74を取得して変換条件情報84の変換条件を更新することにより、駆動部にかかる負荷を適切に検知することができる。
【0096】
また、上記実施形態では、後処理ユニット14を例示して駆動部が動作機構を駆動する例を説明した。しかし、画像形成装置2には、後処理ユニット14以外にも様々な動作機構が搭載されている。本発明は、後処理ユニット14以外の動作機構を駆動する駆動部の部品が交換された場合であっても適用可能であり、部品交換後の駆動部にかかる負荷を適切に検知することができる。
【0097】
また、上記実施形態では、画像形成装置2が、シートを搬送し、そのシートに印刷対象となる画像を形成して出力する例を説明した。しかし、画像形成装置2が画像形成を行う対象は、必ずしもシートに限られない。例えば、画像形成装置2は、シートのような可撓性を有する媒体だけでなく、CD-ROMのような可撓性を有さない媒体にも画像形成を行うこともある。そのため、画像形成装置2によって搬送され、画像形成される媒体は、シート以外の記録媒体であっても構わない。
【0098】
また、上記実施形態で説明したプログラム83は、サーバー装置3の記憶部82に予め記憶されているものに限られない。例えば、プログラム83は、それ単体で取引の対象となるものであっても構わない。この場合、プログラム83は、インターネットなどのネットワークを介してダウンロード可能な態様で提供されるものであっても良いし、またCD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録された状態で提供されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0099】
1 画像形成システム
2 画像形成装置
3 サーバー装置
5 端末装置(外部装置)
13 操作パネル(操作部)
14 後処理ユニット
50(51~57) モーター(駆動部)
60 制御基板(駆動部)
61 CPU(駆動部)
62 駆動回路(駆動部)
63 増幅器(駆動部)
64 ローパスフィルタ(駆動部)
69 制御部
70 検知部
71 取得部
73(73a,73b) 識別情報
74 制御情報
76 更新部
83 プログラム
84 変換条件情報
85 トルク変換式
91 診断部
92 負荷算出部
93 判断部
94 通知部
96 更新部
96a 部品組合せ特定部
96b トルク変換式選択部
96c トルク変換式変形部