(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016504
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】測量機および超音波モータの制御方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
G01C15/00 105R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118670
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】弥延 聡
(57)【要約】
【課題】 耐久性の高い超音波モータを備える測量機を提供する。
【解決手段】 測量機100は、回転軸6、駆動周波数に応じた回転速度で回転軸6を駆動する超音波モータ5、回転軸6の回転速度を検出するエンコーダ21、駆動信号の印加を制御する制御部40、および、速度制御プロファイル51を記憶する記憶部50、を備え、制御部40は、設定速度と現在回転速度とを比較して、設定速度が現在回転速度を基準とする許容範囲R内である場合は、速度制御プロファイル51に従って、設定速度に対応する駆動周波数の駆動信号を印加し、設定速度が許容範囲Rを超える場合は、速度制御プロファイル51に従って、許容範囲Rの限界値に対応する駆動周波数の駆動信号を印加する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸;
周波数可変の駆動信号が印加されることにより、駆動周波数に応じた回転速度で前記回転軸を駆動する超音波モータ;
前記回転速度を検出するエンコーダ;
前記駆動信号の印加を制御する制御部;および、
前記駆動周波数と前記回転速度との相関関係を示す駆動特性プロファイルに基づいて定義された速度制御プロファイルを記憶する記憶部;を備え、
前記制御部は、目標回転速度を設定速度として設定し、前記設定速度と現在回転速度とを比較して、前記設定速度が前記現在回転速度を基準とする許容範囲内である場合は、前記速度制御プロファイルに従って、前記設定速度に対応する前記駆動周波数の前記駆動信号を印加し、前記設定速度が前記許容範囲を超える場合は、前記速度制御プロファイルに従って、前記許容範囲の限界値に対応する前記駆動周波数の前記駆動信号を印加して、前記現在回転速度を監視しつつ前記設定速度を増減させ、前記現在回転速度を前記目標回転速度となるようにさせることを特徴とする測量機。
【請求項2】
温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記速度制御プロファイルは、複数の温度について定義されており、
前記制御部は、前記複数の温度について定義された前記速度制御プロファイルから、検出された温度に対応する前記速度制御プロファイルを選択し、選択された前記速度制御プロファイルに従って、前記駆動信号を印加する請求項1に記載の測量機。
【請求項3】
温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記速度制御プロファイルは、少なくとも1の温度について定義されており、
前記制御部は、前記少なくとも1の温度について定義された前記速度制御プロファイルから、検出された温度に対応する前記速度制御プロファイルを作成し、作成された前記速度制御プロファイルに従って、前記駆動信号を印加する請求項1に記載の測量機。
【請求項4】
前記速度制御プロファイルは、
前記駆動特性プロファイル上の、前記駆動周波数と前記回転速度が負の相関関係を有する領域に設定された最大設定速度および最小設定速度に対応する点を含む2以上の点の各点の前記回転速度および前記駆動周波数のテーブルと、
前記2以上の点の各点を補間する補間関数と、
の組み合わせとして前記記憶部に記憶されている請求項1または2に記載の測量機。
【請求項5】
前記制御部は、
前記2以上の点に対応する前記駆動周波数の前記駆動信号を印加したときの前記現在回転速度を取得して、前記記憶部に記憶された前記速度制御プロファイルを更新する請求項1または2に記載の測量機。
【請求項6】
前記補間関数は、前記2以上の点の各点の区分線形関数である請求項4に記載の測量機。
【請求項7】
前記補間関数は、前記2以上の点の各点の非線形補間関数である請求項4に記載の測量機。
【請求項8】
前記2以上の点は3点である請求項4に記載の測量機。
【請求項9】
周波数可変の駆動信号が印加されることにより駆動周波数に応じた回転速度で測量機の回転軸を駆動する超音波モータの制御方法であって
(a) 目標回転速度を設定速度として設定し、
(b) 前記設定速度と現在回転速度とを比較して、
前記設定速度が前記現在回転速度を基準とする許容範囲内である場合に、速度制御プロファイルに従って、前記設定速度に応じた前記駆動周波数の前記駆動信号を印加し、前記設定速度が前記許容範囲を超える場合に、前記速度制御プロファイルに従って、前記許容範囲の限界値に対応する前記駆動周波数の前記駆動信号を印加して、
(c) 前記現在回転速度を監視しつつ前記設定速度を増減させて、(b)を繰り返し、前記現在回転速度が、前記目標回転速度となるようにすることを備え、
前記速度制御プロファイルは、前記駆動周波数と前記回転速度との相関関係を示す駆動特性プロファイルに基づいて定義されていることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量機および超音波モータの制御方法に関し、より詳細には、測量機の回転軸を駆動する超音波モータの制御方法および該方法により制御される超音波モータを備える測量機に関する。
【背景技術】
【0002】
測量機、例えばトータルステーションは、測定点を視準する望遠鏡と、上記望遠鏡を鉛直方向に回転可能に支持する托架部と、上記托架部を水平方向に回転可能に支持する基盤部とを備える。望遠鏡は鉛直回転軸に設けられた鉛直回転モータによって、托架部は水平回転軸に設けられた水平回転モータによって駆動される。特許文献1,2には、鉛直回転モータおよび水平回転モータとして超音波モータを用いる測量機が開示されている。
【0003】
特許文献1,2の超音波モータは、それぞれ円環状の圧電セラミック、ステータ、およびロータが、この順で同軸に配置されている。ステータにロータを加圧接触して、圧電セラミックに駆動信号を印加してステータに振動を発生させ、摩擦力を介してロータを回転させる。超音波モータの駆動信号の周波数(以下、駆動周波数という。)と回転速度には、
図4に一例として示すような関係(以下、超音波モータの駆動周波数と回転速度の相関関係を、駆動特性または駆動特性プロファイルという。)があることが知られている。超音波モータの駆動特性は、超音波モータの個体により異なる。
【0004】
このため、特許文献1の測量機では、製造時に、採用する超音波モータの駆動特性を調べ、予め制御部に定義している。そして、測量機の使用時に、制御部が、定義された超音波モータの駆動特性プロファイルに基いて、設定回転速度(以下、設定速度という。)に応じた周波数で駆動信号を出力させ、回転速度を常時監視しながら、設定速度となるようにフィードバック制御を行っている。
【0005】
また、このような超音波モータを備える測量機には、特許文献2に開示されているように、移動するターゲットを自動で追尾する自動追尾機能を有するものがある。移動するターゲットに追随するために、ターゲットが移動するたびに回転速度の設定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-161429号公報
【特許文献2】特開2017-191065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、超音波モータでは、金属等で構成されるステータに、樹脂等で構成されるロータを摩擦させるため、ロータの摩耗が耐久期間を短縮させる要因となる。ロータの摩耗は、定速で駆動する場合にも起こるが、例えばトルクの変動が激しい回転をさせた場合や、高いトルクが付与される回転をさせた場合、特に増大する。
【0008】
例えば、
図17(A)に示すように、測量機TSから比較的遠い場所で、徒歩で移動する作業者Uが保持するターゲットTを自動追尾する場合、単位時間当たりの回転角は小さく、回転速度の変化もわずかでありトルクの変動も少ない。一方、
図17(B)に示すように、近い場所で、ブルドーザBに取り付けられたターゲットTを自動追尾する場合、回転速度は速く高いトルクが付与されることになる。また、地面の凹凸による急な上下動や、アイドリング時の上下動なども、逆方向の加速度がかかり、トルクの変動が大きい。このような動作がロータの摩耗を助長する。
【0009】
しかし、従来の超音波モータの制御方法では、単に定義された超音波モータの駆動特性プロファイルに基いて設定された設定回転速度に応じた周波数で駆動信号を出力させるため、上記したような回転速度が高くなったり、トルクの変動が大きくなったりしてロータが摩耗しやすくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、係る事情を鑑みてなされたものであり、耐久性の高い超音波モータを備える測量機およびそのための超音波モータの制御方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る測量機は、以下の特徴と有する。
1.測量機は、回転軸;周波数可変の駆動信号が印加されることにより、駆動周波数に応じた回転速度で前記回転軸を駆動する超音波モータ;前記回転速度を検出するエンコーダ;前記駆動信号の印加を制御する制御部;および、前記駆動周波数と前記回転速度との相関関係を示す駆動特性プロファイルに基づいて定義された速度制御プロファイルを記憶する記憶部;を備え、前記制御部は、目標回転速度を設定速度として設定し、前記設定速度と現在回転速度とを比較して、前記設定速度が前記現在回転速度を基準とする許容範囲内である場合は、前記速度制御プロファイルに従って、前記設定速度に対応する前記駆動周波数の前記駆動信号を印加し、前記設定速度が前記許容範囲を超える場合は、前記速度制御プロファイルに従って、前記許容範囲の限界値に対応する前記駆動周波数の前記駆動信号を印加して、前記現在回転速度を監視しつつ前記設定速度を増減させ、前記現在回転速度を前記目標回転速度となるようにさせる。
【0012】
2. 1の測量機において、温度を検出する温度センサをさらに備え、前記速度制御プロファイルは、複数の温度について定義されており、前記制御部は、前記複数の温度について定義された前記速度制御プロファイルから、検出された温度に対応する前記速度制御プロファイルを選択し、選択された前記速度制御プロファイルに従って、前記駆動信号を印加することも好ましい。
【0013】
3. 1または2の測量機において、上記温度を検出する温度センサをさらに備え、前記速度制御プロファイルは、少なくとも1の温度について定義されており、前記制御部は、前記少なくとも1の温度について定義された前記速度制御プロファイルから、検出された温度に対応する前記速度制御プロファイルを作成し、作成された前記速度制御プロファイルに従って、前記駆動信号を印加することも好ましい。
【0014】
4. 1~3のいずれかの測量機において、前記速度制御プロファイルは、前記駆動特性プロファイル上の、前記駆動周波数と前記回転速度が負の相関関係を有する領域に設定された最大設定速度および最小設定速度に対応する点を含む2以上の点の各点の回転速度および駆動周波数のテーブルと、前記2以上の点の各点を補間する補間関数と、の組み合わせとして前記記憶部に記憶されていることも好ましい。
【0015】
5. 1~4のいずれかの測量機において、前記制御部は、前記2以上の点に対応する前記駆動周波数の前記駆動信号を印加したときの前記現在回転速度を取得して、前記記憶部に記憶された前記速度制御プロファイルを更新することも好ましい。
【0016】
6. 4の測量機において、前記補間関数は、前記2以上の点の各点の区分線形関数であることも好ましい。
【0017】
7. 4の測量機において、前記補間関数は、前記2以上の点の各点の非線形補間関数であることも好ましい。
【0018】
8. 4の測量機において、前記2以上の点は3点であることも好ましい。
【0019】
また、本発明の別の態様に係る超音波モータの制御方法は、以下の特徴を有する。
9. 周波数可変の駆動信号が印加されることにより駆動周波数に応じた回転速度で測量機の回転軸を駆動する超音波モータの制御方法であって、(a)目標回転速度を設定速度として設定し、(b)前記設定速度と現在回転速度とを比較して、前記設定速度が前記現在回転速度を基準とする許容範囲内である場合に、速度制御プロファイルに従って、前記設定速度に応じた前記駆動周波数の前記駆動信号を印加し、前記設定速度が前記許容範囲を超える場合に、前記速度制御プロファイルに従って、前記許容範囲の限界値に対応する前記駆動周波数の前記駆動信号を印加して、(c)前記現在回転速度を監視しつつ前記設定速度を増減させて、(b)を繰り返し、前記現在回転速度が、前記目標回転速度となるようにすることを備え、前記速度制御プロファイルは、前記駆動周波数と前記回転速度との相関関係を示す駆動特性プロファイルに基づいて定義されている。
【発明の効果】
【0020】
上記の態様によれば、耐久性の高い超音波モータを備える測量機およびそのための超音波モータの制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る測量機の概略縦断面図である。
【
図2】同測量機の超音波モータを含む部分の断面斜視図である。
【
図4】上記超音波モータの駆動特性プロファイルを説明する図である。
【
図5A】同超音波モータを制御するための速度制御プロファイルを説明する図である。
【
図5B】同超音波モータを制御するための速度制御プロファイルを説明する図である。
【
図6】同速度制御プロファイルを定義する駆動周波数と回転速度の対応関係を示す対応テーブルの一例である。
【
図7】上記測量機における超音波モータの制御方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】上記制御方法における、設定速度と駆動周波数の関係を説明する図である。
【
図9】超音波モータの温度による駆動特性プロファイルの違いを説明する図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態に係る測量機の制御ブロック図である。
【
図11】同測量機の超音波モータの速度制御プロファイルを定義する駆動周波数と回転速度の対応テーブルである。
【
図12】同超音波モータの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図13A】速度制御プロファイルの1つの変形例を示す図である。
【
図13B】速度制御プロファイルの他の変形例を示す図である。
【
図13C】速度制御プロファイルのさらに別の例を示す図である。
【
図14】第2の実施の形態に係る速度制御プロファイルを定義する駆動周波数と回転速度の対応テーブルおよび温度による駆動周波数の変動を示すテーブルである。
【
図15】速度制御プロファイルの経年による変化を説明する図である。
【
図16】速度制御プロファイルの更新の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】従来の測量機における自動視準時の超音波モータの速度制御を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施の形態において、同一の機械構成を有する要素には、同一の名称および符号を付して重複する説明は適宜省略する
【0023】
第1の実施の形態
図1は、第1の実施の形態に係る測量機100の概略縦断面図である。
図2は測量機100の、超音波モータ5を含む部分の断面斜視図である。
【0024】
測量機100は、整準部3の上に設けられた基盤部4と、基盤部4上を水平回転軸6の周回りに水平回転する托架部7と、托架部7の凹部に鉛直回転軸11の周回りに鉛直回転するように設けられた望遠鏡9と、を備える。托架部7には、制御部40が収容されている。測量機100は、自動視準機能および自動追尾機能を有する。
【0025】
望遠鏡9には、図示しない測距光学系、追尾光学系が収容されている。測距光学系、追尾光学系の構成は、従来技術の構成と同等のものでよい。測量機100では、托架部7の水平回転と望遠鏡9の鉛直回転の協働により、望遠鏡9が測定対象物を視準、追尾可能である。
【0026】
水平回転軸6の下端部には水平回転用の超音波モータ5が設けられ、上端部には水平角検出用のエンコーダ21が設けられている。鉛直回転軸11の一方の端部には鉛直回転用の超音波モータ12が設けられ、他方の端部には鉛直角検出用のエンコーダ22が設けられている。
【0027】
エンコーダ21,22は、例えば、回転円盤、スリット、発光ダイオード、イメージセンサを有するアブソリュートエンコーダである。また、インクリメンタルエンコーダであってもよい。エンコーダ21,22が検出する水平角、鉛直角に基いて、水平回転軸6、鉛直回転軸11の回転角度が取得される。
【0028】
超音波モータ5,12は、周波数可変の駆動信号が印加されることにより、駆動周波数に応じた回転速度で水平回転軸6,鉛直回転軸11をそれぞれ駆動する。超音波モータ5,12の構成は、水平回転するか鉛直回転するかという点を除き概略同様である。したがって、主として超音波モータ5の構成を説明して、超音波モータ12の説明は適宜省略する。
【0029】
超音波モータ5は、ベース32から順に、振動を発生する圧電セラミック34、振動を増幅させるステータ35、ステータ35と干渉するロータ36、ロータ36をステータ35側へ押圧するウェーブワッシャ38を備え、それぞれがリング状の形状を有し、同軸に配置されている。圧電セラミック34にはSin電極とCos電極が付されている。Sin電極およびCos電極により交互に駆動電圧が印加されることで圧電セラミック34が超音波振動する。
【0030】
圧電セラミック34が振動すると、ステータ35に進行波が形成され、ウェーブワッシャ38の押圧による摩擦によってステータ35とロータ36が相対回転する。
図1に示すように、水平側の超音波モータ5は、モータケース25が基盤部4に固定され、ロータ36はモータケース25に固定されているので、ステータ35が回転し、ベース32を介して水平回転軸6がステータ35と一体に回転する。鉛直側の超音波モータ12は、ステータ(図示せず)がモータケース26に固定され、ロータ(図示せず)が回転し、鉛直回転軸11がロータ(図示せず)と一体に回転する。
【0031】
図3は測量機100の制御ブロック図である。鉛直回転と水平回転の制御ブロック図は同等であるので、水平回転に関して示し、鉛直回転に関しては説明を省略する。測量機100は、制御部40、記憶部50、エンコーダ21、超音波モータ5、駆動回路60、クロック信号発振部63、追尾部70、測距部80、および、温度センサ90を有する。
【0032】
制御部40は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit))と少なくとも1つのメモリ(SRAM(Static Random Access Memory),DRAM(Dynamic Random Access Memory)等)とを備える制御演算ユニットである。制御部40は、プロセッサが機能を実行するためのプログラムをメモリに読み出して実行することにより以下に説明する機能を実現する。
【0033】
制御部40の機能の少なくとも一部は、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等でハードウェア的に構成してもよい。CPLDやFPGAを用いた場合、それらの素子上に構成された回路などがその機能を実現する。
【0034】
制御部40は、クロック信号発振部63からのクロック信号に応じて、エンコーダ21の角度信号から水平回転軸6の回転速度を求める。また、超音波モータ5に対して、設定回転速度(以下、設定速度という。)ωSに応じた駆動周波数の駆動信号を出力するように駆動回路60に指示する。また、制御部は40、超音波モータ5の累計駆動時間を計測するための時計(図示せず)を備える。
【0035】
また、制御部40は、超音波モータ5の目標回転速度(以下、目標速度という。)ωTを設定速度ωSとして設定し、設定速度ωSと現在回転速度(以下、現在速度という。)ωCとを比較して、設定速度ωSが現在速度ωCを基準とする許容範囲R内である場合に、速度制御プロファイル51に従って、設定速度ωSに応じた周波数の駆動信号を印加し、設定速度ωSが許容範囲Rを超える場合に、速度制御プロファイル51に従って、許容範囲Rの限界値に対応する周波数の駆動信号を印加して、現在回転速度ωCが目標速度ωTとなるように設定速度ωSを調節することにより超音波モータ5の回転速度を制御する。
【0036】
記憶部50は、フラッシュメモリやハードディスクドライブ等のコンピュータ読取可能な記憶媒体である。記憶部50は、測量機100が測量機能および自動追尾機能を実行するためのプログラムを格納する。記憶部50は、取得される測量データや回転速度制御のため回転速度と駆動周波数のログが、取得される都度記憶されるように構成されている。
【0037】
また、記憶部50は、測量機100が、本実施の形態に係る超音波モータ5の制御方法を実行するためのプログラム、速度制御プロファイル51、および速度変化許容範囲(以下、許容範囲ともいう。)Rを格納している。
【0038】
駆動回路60は、FPGA(Field Programmable Gate Array)61とアナログ回路62を備える。FPGA61は制御部40もしくは図示を略する外部機器によって内部論理回路を定義変更可能である。FPGA61は、可変の駆動周波数及び可変の振幅で制御信号を発生させることができ、上記駆動周波数及び上記振幅を動的に変化させることができる。アナログ回路62、トランス等で構成されており、上記制御信号を増幅させる。
【0039】
駆動回路60は、制御部40からの指令を受けて、FPGA61から上記制御信号を出力し、アナログ回路62で増幅して二種類の位相の異なる駆動信号を生成し、超音波モータ5の圧電セラミック34に付されているSin電極とCos電極に対して出力する。なお、駆動回路60は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの他のPLD(Programmable Logic Device)が用いられてもよい。
【0040】
クロック信号発振部63は、クロック信号を制御部40及びFPGA61に出力する。
【0041】
追尾部70は、制御部40に制御されて、光学系73を用いて、発光部71からの追尾光をターゲットTに照射して、その反射光を受光部72で受光して、ターゲットTを捕捉し、ターゲットTが移動した場合の追尾を自動で行う。
【0042】
具体的には、発光部71は、例えば、赤外光を発光するレーザダイオードである。受光部72は、例えばCCD(Charge-Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子である。受光部72は、第1のおよび第2の撮像素子を備える。光学系73のビームスプリッタおよび波長フィルタにより、第1の撮像素子(図示せず)で、赤外光の点灯時の画像を、第2の撮像素子(図示せず)で、赤外光の消灯時の画像を、同時に撮影する。これらの画像の差分を求めることにより、ターゲットTの像の中心が求められる。
【0043】
制御部40は、ターゲットTの像の中心が、望遠鏡の視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まる位置に入るように、視準方向を回転させるように超音波モータ5の回転速度と回転方向を設定する。また、設定した回転速度および回転方向に応じた駆動周波数および振幅の駆動信号を出力するように駆動回路60に指示する。このような追尾部70の構成は公知である。追尾部70の構成は、上記に限らず、他の公知の構成を有するものであってもよい。
【0044】
測距部80は、制御部40に制御されて、測距光をターゲットに照射して、その反射光からターゲットTを捕捉して自動視準を行う。また、手動または自動視準が完了すると測距を行う。
【0045】
温度センサ90は、制御部40に制御されて、常時、または所定の間隔で温度を検出する。温度は測距値の補正等に使用される。
【0046】
超音波モータ5の制御方法
次に、測量機100における超音波モータ5の制御方法の詳細について説明する。なお、超音波モータ5,12は、上記の通り水平回転するものであるか鉛直回転するものであるかという点を除き同等である。したがって、制御方法についても同等であるため超音波モータ12についての説明は省略する。
【0047】
図4は、超音波モータ5の駆動特性プロファイルCの一例を示す。横軸が駆動周波数[kHz]、縦軸がロータ46の回転速度[°/sec]である。駆動特性プロファイルCは、超音波モータ5の個体により異なる。
【0048】
図4の駆動特性プロファイルCを有する超音波モータ5は、駆動信号の駆動周波数を低周波数から増大させていくと、所定の周波数で共振点に達し最高速度を得る。その後、駆動周波数の増大に伴い回転速度は減少する。さらに駆動周波数を増加させ続けると、43kHzで、これを超えて周波数を上げても回転が起こらなくなる。これを超えて周波数を上げても起こらなくなる駆動周波数fに対応する回転速度ωを最小設定速度ω
MINとし、それ以上低減すると、回転速度と駆動周波数とが、負の相関関係を示す部分と正の相関関係を示す部分とを含み、回転速度に対して駆動周波数が一義的に対応しなくなる駆動周波数に対応する回転速度を最大設定速度ω
MAXとして、最小設定速度ω
MINと最大設定速度ω
MAXの間の駆動周波数fと回転速度ωが一義的に負の相関関係を有する領域が、速度制御プロファイル51を定義するために使用される。
【0049】
測量機100は、この駆動特性プロファイルCに基いて定義される速度制御プロファイル51を用いて超音波モータ5の回転速度の制御を行う。
図5A,5Bに示すように、速度制御プロファイル51は、
図4の駆動特性プロファイルC上の駆動周波数fと回転速度ωが負の相関関係を有する領域に、点P
1,P
2,P
3を設定し、各点間(点P
1P
2間,点P
2P
3間)を線形補間したものである。
【0050】
速度制御プロファイル51における一端の点P1は、最小設定速度ωMINに対応する点である。他端のP3は、最大設定速度ωMAXに対応する点である。また、中間の点P2は、最大設定速度と最小設定速度の中間の中間設定速度に対応する点である。
【0051】
速度制御プロファイル51は、
図6に示すように、例えば、各点P
1,P
2,P
3における、水平回転軸6、すなわち超音波モータ5の回転速度ω
1,ω
2,ω
3と、駆動周波数f
1,f
2,f
3との対応関係を示すテーブル(以下、対応テーブルという。)と、各点間(点P
1P
2間,点P
2P
3間)を線形補間する区分線形関数(補間関数F)として記憶部50に記憶されている。
【0052】
各点P1,P2,P3における超音波モータ5の回転速度ω1,ω2,ω3および駆動周波数f1,f2,f3は、従来の方法により、回転速度ωを監視しながら、駆動周波数fを増減させて測定することにより得られる。
【0053】
また、補間関数Fは、例えば
ω=(ω2-ω1)/(f2-f1)*f+ω1-(ω2-ω1)/(f2-f1)*f1 if f2≦f≦f1
=(ω3-ω2)/(f3-f2)*f+ω2-(ω3-ω2)/(f3-f2)*f2 if f3≦f≦f2 (式1)
の様に表すことができる。
補間関数Fは、式1の形で対応テーブルとともに、記憶部50に記憶されていてもよく、対応テーブルの値を用いて制御部40により算出されるようになっていてもよい。
【0054】
また、測量機100では、水平回転軸6の回転速度を変更する際に、現在回転速度(以下、現在速度という。)ω
Cを基準として、変化が許容される許容範囲R(ω
C-Δω≦R≦ω
C+Δω)が設定され、記憶部50に記憶されている。ただし、
図5Bに示すように、許容範囲Rの上限は最大設定速度ω
MAXであり、下限は最小設定速度ω
MINである。すなわち、ω
C+Δωが最大設定速度ω
MAXよりも大きい場合には、許容範囲Rの上限は最大設定速度ω
MAXであり、ω
C-Δωが最小設定速度ω
MINよりも小さい場合には、許容範囲Rの下限は最小設定速度ω
MNである。
【0055】
図7、
図8を参照して、測量機100における、超音波モータ5の制御方法の処理の一例を説明する。下記の例では、自動追尾中の回転速度の制御方法として説明する。しかし、自動追尾中に限らず、作業者の操作により超音波モータ5を駆動して、望遠鏡9を回転させる場合にも同様の方法で回転速度の制御がされていてもよい。
【0056】
自動追尾を開始すると、制御部40は、駆動回路60を介して超音波モータ5を駆動する。また、エンコーダ21の角度信号を取得して、水平回転軸6、すなわち超音波モータの回転速度ωを算出する。以後、制御部40は、リアルタイムで超音波モータの回転速度ωを監視する。また、制御部40は、超音波モータ5の回転速度ωの制御を開始する。
【0057】
処理が開始すると、ステップS01で、制御部40が、目標速度ωTを設定速度ωTに設定する。具体的には、制御部40は、第1の撮像素子の点灯画像と、第2の撮像素子の消灯画像との差分の画像から、ターゲットTの位置を特定し、ターゲットTを視準光軸に合致するように、自動追尾するための目標速度ωTを算出し、目標速度ωTを設定速度ωSとして設定する。
【0058】
次に、ステップS02で、制御部40は、設定速度ω
Sが現在速度ω
Cに対して許容範囲R内であるかどうかを判定する。許容範囲R内である場合(Yes)、ステップS03で、制御部40は、速度制御プロファイル51を参照し、
図8の左図に示すように、設定速度ω
Sに対応する駆動周波数f
Sで駆動信号を出力するように、駆動回路60に指示する。駆動回路60は超音波モータ5に、駆動周波数f
Sの駆動信号を印加する。
【0059】
一方、ステップS02で、設定速度ω
Sが現在速度ω
Cに対する許容範囲Rを超える場合(No)、ステップS04で、制御部40は、速度制御プロファイル51に従って、許容範囲R内となる限界値であるに対応する駆動周波数の駆動信号を出力するように、駆動回路60に指示する。駆動回路60は、指示された駆動周波数の駆動信号を、超音波モータ5に印加する。具体的には、
図8の右図に示すように、設定速度ω
Sが、許容範囲Rの上限値ω
C+Δωよりも大きい場合には、回転速度ω
C+Δωに対応する駆動周波数f
C+Δfの駆動信号を出力するように、駆動回路60に指示する。同様に、設定速度ω
Sが、許容範囲Rの下限値ω
C-Δωよりも小さい場合には、回転速度ω
C-Δωに対応する駆動周波数f
C-Δfの駆動信号を出力するように、駆動回路60に指示する。
【0060】
次に、ステップS05では、制御部40は、駆動信号を印加した結果、現在速度ωCが目標速度ωTとなったかどうかを判定する。
【0061】
現在速度ωCが目標速度ωTになっていない場合(No)、ステップS06で、制御部40が、現在速度ωCを監視しながら設定速度ωSを調節し、フィードバックしながら、現在速度ωCが目標速度ωTになるまで、ステップS02~S05を繰り返す。
【0062】
具体的には、現在速度ωCが、目標速度ωTよりも大きい場合には、設定速度ωSをわずかに増大させ、ステップS02~S05を繰り返し、現在速度ωCが、目標速度ωTよりも小さい場合には、設定速度ωSをわずかに減少させ、ステップS02~S05を繰り返す。このようにして、ステップS06で現在回転速度ωCと目標回転速度ωTとの差がなくなる方向に制御する。
【0063】
そして、ステップS05で、現在速度ωCが目標速度ωTになると(Yes)、処理を終了する。
【0064】
このように、本実施の形態では、駆動周波数fと回転速度ωとの相関関係を示す駆動特性プロファイルCに基づいて定義された速度制御プロファイル51に従って、設定速度ωSに応じた駆動周波数の駆動信号を印加して、現在速度ωCが目標速度ωTとなるように制御する際に、現在速度ωCからの速度変化に許容範囲Rを設け、設定速度ωSが許容範囲Rを超える場合には、許容範囲Rの限界値に対応する駆動周波数で駆動とするように構成した。この結果、許容範囲Rを超えるような急な速度変化、すなわち、急激なトルクの変動を防止することができ、ロータの摩耗を低減することが可能となる。この結果、超音波モータ5の耐久性が向上する。
【0065】
また、本実施の形態では、速度制御プロファイル51は、超音波モータ5の駆動特性プロファイルCにおいて駆動周波数fと回転速度ωとが負の相関関係を有する領域に設定される3つの点の各点P1,P2,P3における駆動周波数f1,f2,f3および回転速度ω1,ω2,ω3と、各点間を線形補間する補間関数Fにより定義される。これにより、また、工場出荷時には、回転速度ω1,ω2,ω3に対応する点P1,P2,Pを設定し、3点についての駆動周波数f1,f2,f3を測定し、補間関数Fを求めて、記憶部50に登録するだけでよい。駆動特性プロファイルC全体を測定し、記憶させていた従来の測量機に比べて、速度制御のためのデータの容量を削減することが可能になる。
【0066】
また、このように、速度制御プロファイル51を登録する際の作業の簡便化は、後述するように、速度制御プロファイル51の更新の際にも有利である。なお、以下に説明するように、速度制御プロファイル51を定義する点は、3点に限らず、少なくとも2点あればよく、4点以上であってもよい。しかし、3点であることは、工場出荷時のデータ容量の低減および関数の単純さと近似精度との兼合いの観点から有利である。
【0067】
第2の実施の形態
ところで、
図9に示すように、超音波モータの駆動特性プロファイルCは、温度に応じて変化することが知られている。そこで、第2の実施の形態に係る測量機では、温度に応じて、速度制御プロファイル251を変更するように構成されている。
【0068】
図10は、第2の実施の形態に係る測量機200の制御ブロック図である。測量機200は、測量機100と同じ機械構成を備える。一方、下記の点で異なる。
【0069】
記憶部250は、速度制御プロファイル51に代えて、速度制御プロファイル251を備える。速度制御プロファイル251は、複数の温度に対する速度制御プロファイルである。具体的には、速度制御プロファイル251は、
図11に示すような、複数の温度、例えば0℃、20℃、40℃において取得された、それぞれ回転速度ω
1(ω
1-0,ω
1-20,ω
1-40),ω
2(ω
2-0,ω
2-20,ω
2-40),ω
3(ω
3-0,ω
3-20,ω
3-40)と駆動周波数f
1(f
1-0,f
1-20,f
1-40),f
2(f
2-0,f
2-20,f
2-40),f
3(f
3-0,f
3-20,f
3-40)の対応テーブルと、各点間を線形補間する補間関数により定義される。また、制御部240は以下の処理を実行する。
【0070】
図12は、制御部240の処理のフローチャートである。第1の実施の形態における説明と同様に、自動追尾において、超音波モータ5を駆動し、回転速度ωの制御を開始すると、制御部240は、ステップS01~S07の処理に先立って以下の処理を実行する。
【0071】
すなわち、処理を開始すると、ステップS11において、制御部40は、温度センサ90により、測量機100の温度を取得する。
【0072】
次に、ステップS12では、制御部240が、記憶部250に記憶された、温度毎の速度制御プロファイル251から、ステップS11での検出温度に応じた速度制御プロファイル251を選択し、設定する。その後、処理は
図7のステップS01に進み、設定された速度制御プロファイル251を用いて、ステップS01~S06の処理を実行する。
【0073】
温度に応じた速度制御プロファイル251の選択は、以下の様に実行されてもよい。
【0074】
例えば、検出温度に最も近い温度の速度制御プロファイル251を選択するようにしてもよい。具体的には、
図12の例において、検出温度が12℃の場合に、12℃に最も近い20℃の速度制御プロファイル251を選択する。
【0075】
あるいは、温度に応じた速度制御プロファイル251についての適用温度範囲を設定しておき、設定された適応温度範囲に従って選択する。具体的には、
図12の例において、0℃の速度制御プロファイル251の適用範囲を-10℃~+13℃、20℃の速度制御プロファイル251の適用範囲を13℃~25℃、40℃の速度制御プロファイル251適用範囲を25℃~50℃と設定しておく。この場合、検出温度が12℃の場合、制御部40は、0℃の速度制御プロファイル251を選択する。
【0076】
このように、本実施の形態では、温度に応じて駆動特性プロファイルCが変動することを反映して、複数の温度について速度制御プロファイル151を選択または作成し、これを参照して、駆動周波数fを設定することとした。これにより、速度制御プロファイル151を、より実際の環境に応じた的確なものとすることができる。この結果、第1の実施の形態の効果に加えて、ステップS04,S05における駆動周波数の印加により的確に目標回転速度ωTに近づけることができるので、ステップS02~S06のフィードバックによる調節を素早く行うことが可能となるという更なる効果を奏することが可能となる。
【0077】
変形例1
図13Aは、速度制御プロファイル51の1つの変形例である、速度制御プロファイル51Aを示す。速度制御プロファイル51Aを定義するための点の数は、最小設定速度ω
MIN(ω
1),最大設定速度ω
MAx(ω
3)に対応する点P
1,P
3の2つであり、点P
1P
3間が直線で補間されていてもよい。このようにすると、工場出荷時の速度制御プロファイル51Aの登録の際に、該2点に関して駆動周波数f
1,f
3を測定するだけでよく、補間関数も最も簡単に算出することが可能となり、登録時の作業が簡便である。このような変形は、第1の実施の形態だけでなく第2の実施の形態についても適用することができる。
【0078】
変形例2
図13Bは、速度制御プロファイル51の別の変形例である、速度制御プロファイル51Bを示す。速度制御プロファイル51Bを定義するための点は、最小設定速度ω
MIN(ω
1),最大設定速度ω
MAx(ω
3)に対応する点P
1,P
3を含む、4点P
1,P
4,P
2,P
3であり、点P
1P
2,点P
2P
4,点P
4P
3間が線形補間されていてもよい。このようにすると、工場出荷時においての作業は、速度制御プロファイル51Aの場合と比べて若干煩雑にはなるものの、近似の精度が向上し、よりきめ細かい制御が可能となる。このような変形は、第1の実施の形態だけでなく第2の実施の形態についても適用することができる。
【0079】
変形例3
図13Cは、速度制御プロファイル51のさらに別の変形例に係る、速度制御プロファイル51Cを示す。
図13Cでは、速度制御プロファイル51Cを定義する点の数は、速度制御プロファイル51と同様に3点であるが、各点間の補間関数Fは、速度制御プロファイル51,51A、51Bに示す区分線形関数ではなく、例えば以下の式2で示される2次関数である。
ω=af
2+bf+c (式2)
(ここで、ωは回転速度、fは駆動周波数、a,b,cは係数である。)
【0080】
このように、速度制御プロファイル51Cの各点間を補間する補間関数Fは、区分線形関数に限らず、非線形の補間関数でもよい。また、これに限らず、各点を通る種々の多項式近似関数を使用することができる。非線形補間関数を使用することで、駆動特性プロファイルCとの近似精度が向上し、よりきめ細かい制御が可能となる。
【0081】
なお、非線形補間関数を使用する場合であっても、速度制御プロファイル51Cを定義する点の数は、3点に限らず、2点以上であればよく、例えば4点以上であってもよい。このような変形は、第1の実施の形態だけでなく、第2の実施の形態についても適用することができる。
【0082】
変形例4
第2の実施の形態の変形例として、予め記憶された複数の温度の速度制御プロファイル151から検出温度に応じて選択するのに代えて、検出温度に応じた速度制御プロファイル151Aを以下の様に作成するようにしてもよい。
【0083】
駆動特性プロファイルCは、超音波モータ5の個体による違いが大きいが、温度の変化に応じてどの程度駆動周波数fが変化するかということについて個体による違いが小さく、個体が違っても同様の挙動を示す。
【0084】
具体的には、例えば、50°/secという回転速度ωに対しては、5℃温度が下げれば対応する駆動周波数が0.4kHz小さくなるということであれば、どの個体も同程度に駆動周波数が0.4kHz小さくなる。
【0085】
そこで、本変形例では、速度制御プロファイル251を定義する対応テーブルに代えて、
図14に示すように、速度制御プロファイル251Aを定義するデータとして、ある温度(例えば25℃)における3点P
1,P
2,P
3での対応テーブルと、温度が変化した場合の、各回転速度ω
1,ω
2,ω
3に対応する駆動周波数の変動dを、テーブルとして記憶部250に記憶している。
【0086】
そして、ステップS12で、制御部240が、温度センサ90の検出温度に応じた速度制御プロファイル251を選択するのに代えて、
図14の3点P
1,P
2,P
3での対応テーブルと、各回転速度ω
1,ω
2,ω
3に対応する駆動周波数の変動dのテーブルを用いて、検出温度に応じた速度制御プロファイル251Aを作成し、作成された速度制御プロファイル251Aを用いて、ステップS01~S06の処理を実行する。
【0087】
上記構成により、予め複数の温度の回転速度と駆動周波数の対応関係を測定して記憶部250に記憶させなくても、1の温度について回転速度と駆動周波数の対応関係を測定し、各回転速度ω1,ω2,ω3に対応する駆動周波数の変動dとともに記憶部250に記憶させるだけで、実際の環境に応じた適切な速度制御プロファイル251Aとすることができる。また、上記の通り、各回転速度ω1,ω2,ω3に対応する駆動周波数の変動dは、個体差が小さいため、各回転速度ω1,ω2,ω3に対応する駆動周波数の変動dのテーブルを各個体毎に用意する必要がなく、1の個体に対して作成したテーブルを、汎用的に使用することができるので、工場出荷時の登録の作業が簡単になる。
【0088】
変形例5
ところで、超音波モータ5の駆動特性プロファイルCは、経年により変化することが知られている。
図15は、例えば、駆動時間が0時間(工場出荷時),500時間、1000時間における駆動特性プロファイルCを模式的に示す。そこで、第1の実施の形態および第2の実施の形態において、速度制御プロファイル51,251を更新するように変形してもよい。
【0089】
図16を参照して、上記変形を、第1の実施の形態に係る測量機100に適用した場合の処理を説明する。処理を開始すると、ステップS31で、制御部40は、速度制御プロファイル51の更新契機であるかどうかを判定する。
【0090】
更新契機は、例えば、工場でのメンテナンス・修理時等における作業者による更新指示の入力の有無で判定されてもよい。また、超音波モータ5の交換を行ったという情報が、制御部40に入力された際に、更新契機であると判定されてもよい。あるいは、累積駆動時間が、例えば500時間、1000時間等、所定の時間経過したときに、更新契機であると判定されてもよい。また、速度制御プロファイル51を定義する対応テーブルの各点における、駆動周波数fに対する回転速度ωの実測値と、記憶された値との差が、所定の閾値を超えた場合に、更新契機であると判定されてもよい。
【0091】
ステップS31で、更新契機である場合(Yes)、制御部40は、ステップS32で、超音波モータ5を駆動して、駆動特性プロファイルを計測し、対応テーブルの各点P1,P2,P3の回転速度ω1,ω2,ω3について、新たに駆動周波数f1,f2,f3を取得する。更新契機でない場合(No)、処理は終了する。
【0092】
次に、ステップS33で、制御部40は、取得した値を用いて、記憶部50に記憶された対応テーブルを更新する。
次に、ステップS34で、取得した値を用いて、補間関数Fを算出し、補間関数Fを更新し、処理を終了する。
【0093】
このように、速度制御プロファイル51を更新可能に構成することで、駆動特性プロファイルCが経年により変化しても、超音波モータ5の現在の状態に適応した速度の制御が可能となる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これに限定されない。また、各実施の形態および変形例は、当業者の技術常識に基いて、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
5,12 :超音波モータ
21,22 :エンコーダ
40,240 :制御部
50,250 :記憶部
51,51A,51B,51C,151,151A,251,251A :速度制御プロファイル
90 :温度センサ
100,200 :測量機