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  • 特開-ヒアルロン酸産生促進剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165047
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241121BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241121BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q19/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080867
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】507307260
【氏名又は名称】宇航人ジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】309033932
【氏名又は名称】株式会社フィネス
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦義
(72)【発明者】
【氏名】楊 建標
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 守恒
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】新規のヒアルロン酸産生促進剤を提供する。
【解決手段】サジー種子オイルを有効成分として含有する、ヒアルロン酸産生促進剤。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サジー種子オイルを有効成分として含有する、ヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項2】
前記サジー種子オイルが、サジー種子の超臨界二酸化炭素抽出物および/または亜臨界二酸化炭素抽出物である、請求項1に記載のヒアルロン酸産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸産生促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚真皮の線維芽細胞は、「ヒアルロン酸」、「コラーゲン」といった肌を構成する上で重要な成分を産生する。ヒアルロン酸は、細胞外マトリックスの主成分となっており、様々な細胞間相互作用に関与している。ヒアルロン酸は、皮膚において保湿効果、弾力性維持、美白・抗酸化作用、炎症の抑制、皮膚の再生促進など様々な役割を果たす。ヒアルロン酸は水分を保持する力が非常に高く、1グラムあたり約6リットルの水を保持することができる。ヒアルロン酸は皮膚の水分を保つために必須の要素であり、皮膚はヒアルロン酸を産生・蓄積することで、体内の水分の喪失を防ぐと共に、物理的刺激を防御していると考えられている。また、コラーゲンやエラスチンと結合して皮膚の弾力性やハリを維持する効果や、細胞と結合することで皮膚の細胞分裂を促進し、傷やシワを改善する効果があるといわれている。線維芽細胞のヒアルロン酸産生を促進することができれば、瑞々しく、ハリのある皮膚を維持することができると考えられる。ヒアルロン酸の産生を促進する物質としては、特許文献1等が知られている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-094015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規のヒアルロン酸産生促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> サジー種子オイルを有効成分として含有する、ヒアルロン酸産生促進剤。
<2> 前記サジー種子オイルが、サジー種子の超臨界二酸化炭素抽出物および/または亜臨界二酸化炭素抽出物である、前記<1>に記載のヒアルロン酸産生促進剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、新規のヒアルロン酸産生促進剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ヒアルロン酸産生試験の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0009】
本発明は、サジー種子オイルを有効成分として含有する、ヒアルロン酸産生促進剤(以下、「本発明の促進剤」と記載する場合がある。)に関するものである。本発明の促進剤を用いることで、ヒアルロン酸の産生を促進することができ、特に、線維芽細胞におけるヒアルロン酸の産生を促進することができる。
【0010】
(サジー種子オイル)
サジー種子オイルは、サジーの種子から抽出された油分(疎水性成分)である。サジー(沙棘、学名:Hippophae rhamnoides L.、英語名:Sea buckthorn)は、ユーラシア大陸原産のグミ科ヒッポファエ属の植物である。サジーの種子は、果実そのものや果実を加工した後の残渣などから取り出して用いることができる。例えば、サジー果実を圧搾や裏ごしして液やピューレなどの果汁等に加工するときに除去される残渣から種子を選別しオイルの抽出に用いることができる。残渣等から選別した種子は、適宜、水で洗浄し乾燥させてからオイルの抽出に用いることができる。
【0011】
オイルの抽出方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができ、サジーの種子を、適宜、破砕や粉砕した後、超臨界二酸化炭素抽出法や、亜臨界二酸化炭素抽出法、水蒸気蒸留法、有機溶媒抽出法、圧搾抽出法などの抽出方法により抽出し得られた抽出物をサジー種子オイルとして利用することができる。
【0012】
中でも、低温で抽出でき、熱に弱い成分も壊さずに抽出することができる超臨界二酸化炭素抽出法や亜臨界二酸化炭素抽出法を利用することが好ましく、サジー種子オイルは、サジー種子の超臨界二酸化炭素抽出物および/または亜臨界二酸化炭素抽出物であることが好ましい。具体的には、サジー種子オイルは、超臨界状態または亜臨界状態の二酸化炭素を抽出溶媒として用い、サジー種子から油分を抽出し、二酸化炭素を除去する工程を有する方法により得ることが好ましい。抽出条件は、二酸化炭素が超臨界状態または亜臨界状態となる温度、圧力であればよく、例えば、温度20~80℃、圧力10~60MPaや、温度30~80℃、圧力10~50MPa、温度31~60℃、圧力15~40MPa、温度31~40℃、圧力20~30MPaである。
【0013】
本発明の促進剤は、水溶液や乳化液、分散液、エマルジョンなどの液状;ゲル状や軟膏状、ペースト状、クリーム状などの半固形状;固形状など種々の形態で使用することができる。例えば、化粧水、化粧液、クリーム、乳液、日やけ止め、洗浄料、パック、化粧用油、ボディリンス、マッサージ料、頭皮料、洗髪料、ヘアリンス、リップケア化粧料等の任意の外用剤の形態とすることができる。外用剤の場合、1日1回~数回程度、各外用剤の形態で一般的な量を使用することができる。
【0014】
本発明の促進剤は、その形態等に応じて、サジー種子オイルのみで構成しても、サジー種子オイルに加えて、医薬品や、医薬部外品、化粧品等の技術分野で公知の基材や添加剤などの他の成分を含んでもよい。本発明の促進剤中のサジー種子オイルの含有量は、本発明の効果を達成できる範囲であれば特に限定されないが、その下限は、0.01v/v%以上や、0.05v/v%以上、0.08v/v%以上、0.1v/v%以上、0.15v/v%以上、0.2v/v%以上、0.25v/v%、0.3v/v%以上、0.35v/v%以上、0.4v/v%以上、0.45v/v%以上、0.5v/v%以上などが好ましい。本発明の促進剤中のサジー種子オイルの含有量の上限は特に限定はなく、形態等に応じて、90v/v%以下や50v/v%以下、10v/v%以下、5v/v%以下、1v/v%以下などとすることができる。
【実施例0015】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0016】
1.試験試料(サジー種子オイル)
H.rhamnoidesの果実(内モンゴル産)を用いたサジー果汁加工後の残渣(種子、果皮の一部を含む)から種子を選別し、飲用水で洗浄した。その後、乾燥させたものを粉砕し、超臨界二酸化炭素抽出(圧力24~26MPa、温度31.25℃、時間3.5時間)により油分を溶解・分離し、褐色透明の抽出液を得た。充填は無菌条件で包装・密封を行った。
【0017】
2.試験方法
(1)評価サンプル
・サジー種子オイル
終濃度:0.001v/v%、0.01v/v%、0.1v/v%、0.2v/v%、0.4v/v%、0.5v/v%
・コントロール
エタノール、終濃度:0.5v/v%
【0018】
(2)実験方法
・細胞培養
成人ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF-Ad)をモデル細胞として用いた。NHDF-Ad細胞は、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)(高グルコース)(含1v/v%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび10v/v%ウシ胎児血清(FBS))を用いて、コンフルエントになるまでφ10cmディッシュにて前培養した。その後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、培地に再懸濁後、96穴プレートに0.5×104cells/wellの濃度で播種しCO2インキュベーター(37℃,5% CO2)でオーバーナイト培養した。
【0019】
・サンプル添加
オーバーナイト培養後、サンプルを含む無血清培地(含1v/v%ペニシリン-ストレプトマイシン)に交換し、CO2インキュベーターにて72時間培養した。サンプルは上記の終濃度で添加した。
【0020】
・ヒアルロン酸産生量の測定
サンプル添加72時間後の培養上清を回収し、産生されたヒアルロン酸量をELISAキット(QnE Hyaluronic Acid Quantitative ELISA assay, Biotech Trading Partners)にて測定した。
【0021】
・MTT法による細胞生存率の測定
サンプル添加72時間後に培養上清を回収した後、96穴プレートの各ウェルにサンプルを含まない無血清培地(含1v/v%ペニシリン-ストレプトマイシン)を100μL加えた。次いで、各ウェルにMTT染色液(5mg/mL in PBS)を20μL添加し、CO2インキュベーターにて4時間静置培養した。培地を除去し、各ウェルに塩酸-イソプロパノール溶液を100μLずつ加え、ピペッティングにてホルマザンを完全に溶解させた。マイクロプレートリーダーで570nmにおける吸光度を測定し、細胞生存率を算出した。
【0022】
3.評価結果
ヒアルロン酸産生量の測定およびMTT法による細胞生存率の測定の結果より、コントロールおよびサジー種子オイル各濃度における細胞あたりのヒアルロン酸産生量を算出した。図1に、ヒアルロン酸産生試験の評価結果を示す。図1は、コントロールを100%としたときの相対比を示す図(n=3、平均値±SD.、**はp<0.01)である。図1に示すように、サジー種子オイル添加によりコントロール(0.5v/v%EtOH)と比較してヒアルロン酸産生量が増加することが確認できた。
図1