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  • 特開-高純度鋼の溶製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016505
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】高純度鋼の溶製方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/46 20060101AFI20240131BHJP
   C21C 7/064 20060101ALI20240131BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C21C5/46 103E
C21C7/064 Z
C21C7/04 F
C21C7/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118672
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】久志本 惇史
(72)【発明者】
【氏名】小山 達也
(72)【発明者】
【氏名】村主 樹
【テーマコード(参考)】
4K013
4K070
【Fターム(参考)】
4K013EA19
4K013EA28
4K070AB05
4K070AC24
4K070AC27
4K070CD10
(57)【要約】
【課題】脱硫効率が高く、かつノズル閉塞を防止できる高純度鋼の溶製方法を提供する。
【解決手段】溶鋼を出鋼した後に溶鋼の脱硫精錬を行って、C:0.10質量%以上、Si:0.8~2.0質量%、Al:0.01質量%以上を含有する鋼材を製造するための高純度鋼の溶製方法であって、溶鋼の出鋼中にAlおよびSi合金を投入する際に、Si:60質量%以上、C:15~30質量%、Ca:0.20質量%未満、残部が不純物であるSi合金を、出鋼中において2.0~4.0kg/tの範囲で投入する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼を出鋼した後に溶鋼の脱硫精錬を行って、C:0.10質量%以上、Si:0.8~2.0質量%、Al:0.01質量%以上を含有する鋼材を製造するための高純度鋼の溶製方法であって、
溶鋼の出鋼中にAlおよびSi合金を投入する際に、Si:60質量%以上、C:15~30質量%、Ca:0.20質量%未満、残部が不純物であるSi合金を、出鋼中において2.0~4.0kg/tの範囲で投入することを特徴とする高純度鋼の溶製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硫能の高い高純度鋼の溶製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超高張力鋼(超ハイテン)や特殊線材などSi濃度の高い高Si鋼材では、Sの低減など高純度化が求められることが多い。そこで、溶鋼脱硫において高純度化するために、スラグのFeO、MnOのような低級酸化物を低減し、スラグ改質を行うことが脱硫能向上に有効であることが知られている。
【0003】
スラグを改質して脱硫能を向上させる技術として、特許文献1には、出鋼後の取鍋スラグにAl滓とCaCO3を投入し、スラグ改質を実施する高清浄度鋼の溶製方法が開示されている。また、特許文献2には、出鋼後の取鍋スラグにAl改質剤を0.3-0.4kg/t投入する技術が開示されている。さらに、特許文献3には、極低炭・極低硫鋼の溶製方法として、焼石灰とAlを取鍋スラグに上添加し、RH真空脱ガス設備で4000Nl/min以上で環流させスラグ反応を進める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-200317号公報
【特許文献2】特開2012-77354号公報
【特許文献3】特許第3327062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、CaCO3からのCO2ガス発生による攪拌を利用しているが、CaCO3の分解熱によりスラグが冷却されたり、スラグ中にCaOが増加することによってスラグの融点が上昇したりするため、スラグ流動性を確保しながら添加できるCaCO3量には限界がある。さらに、還元剤を取鍋スラグの上面に散布しているだけであり、投入した還元剤は取鍋スラグの内部に十分巻込ませることができない。このため、発生するCO2ガスはスラグ層の攪拌に効果的なスラグ層の底部(スラグメタル界面近傍)で必ずしも発生するわけでは無く、スラグ層の攪拌に寄与しないスラグ表面近傍でも発生する。つまり、発生するCO2ガス量に対して十分にスラグ層の攪拌に寄与していない。
【0006】
また、特許文献2に記載の方法も、Al改質剤を取鍋スラグの上面に散布しているだけであり、かつガス発生物質を用いてガスによる攪拌を促進させていないことから、スラグ改質効果は不十分である。さらに、特許文献3に記載の方法は、取鍋スラグを揺動させることによりスラグの改質を促進させる技術であるが、RH真空脱ガス設備では取鍋スラグを直接攪拌させることができないため、転炉出鋼や取鍋精錬と比較してスラグ改質効果は小さい。
【0007】
さらに、Si濃度の高い高Si鋼材では、Si濃度を調整するために、溶鋼中にFeSi合金が添加される場合が多い。FeSi合金には不純物としてCaが多く含まれており、溶鋼中にCaが混入すると溶鋼中の酸素と結合し、さらに溶鋼中のAl23と結合してCaO-Al23の介在物が形成され、溶鋼中にこの介在物が混入すると、液相を介して介在物が耐火物に付着してタンディッシュなどでノズル閉塞が起こってしまう。
【0008】
本発明は前述の問題点を鑑み、脱硫効率が高く、かつノズル閉塞を防止できる高純度鋼の溶製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、スラグのFeO、MnOのような低級酸化物を低減するスラグ改質剤であって、かつノズル閉塞を防止できるものとして、SiC合金に着目した。SiC合金はFeSi合金に比べて比重が軽いため、スラグ面近傍で溶解しやすく、スラグのFeO、MnOを還元する効果が得られる点に着目した。さらに本発明者らは、SiC合金は、FeSi合金に比べてCa濃度が低いため、FeSi合金のみを添加する場合に比べ、CaO-Al23の介在物の生成を抑えることができ、ノズル閉塞のリスクを大幅に低減することができることを見出した。
【0010】
本発明は、以下のとおりである。
(1)
溶鋼を出鋼した後に溶鋼の脱硫精錬を行って、C:0.10質量%以上、Si:0.8~2.0質量%、Al:0.01質量%以上を含有する鋼材を製造するための高純度鋼の溶製方法であって、
溶鋼の出鋼中にAlおよびSi合金を投入する際に、Si:60質量%以上、C:15~30質量%、Ca:0.20質量%未満、残部が不純物であるSi合金を、出鋼中において2.0~4.0kg/tの範囲で投入することを特徴とする高純度鋼の溶製方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、脱硫効率が高く、かつノズル閉塞を防止できる高純度鋼の溶製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】Si合金が溶解するメカニズムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、C:0.10質量%以上、Si:0.8~2.0質量%、Al:0.01質量%以上の高清浄鋼を製造するための方法であり、例えば超ハイテンなどの高Si鋼などの高清浄鋼を製造する際に、高い脱硫能を実現する方法である。
【0014】
ここで、本実施形態に係る方法はAlキルド鋼を対象としており、溶鋼中のAl濃度によらず効果を発揮できる。また、Al濃度が0.01質量%未満の場合、溶鋼の脱酸が弱すぎて脱硫ができず、本発明の効果が得られない。よって、Al:0.01質量%以上を本発明の範囲とした。
【0015】
次に、本実施形態における高清浄鋼の溶製方法について説明する。本実施形態では、転炉で脱炭処理された溶鋼を取鍋に出鋼する際に、出鋼中に脱酸及び成分調整が行われる。具体的には、金属AlまたはAl合金と、Si合金が出鋼中に投入される。
【0016】
ここで、溶鋼脱硫において、スラグ中のFeO、MnOのような低級酸化物を低減するようスラグ改質を行うことが脱硫能を向上させるために有効であり、本実施形態では、Si合金としてSiC合金を用いる。
【0017】
図1は、転炉からの出鋼中にFeSiおよびSiCを投入した場合の反応を模式的に示した図である。図1(a)は、Si合金としてFeSi合金をと投入した場合の反応を示している。FeSi合金は0.5質量%以上のCaを不純物として含んでおり、図1(a)に示すように、溶鋼1の出鋼中にSi合金としてFeSiを投入した場合は、FeSi合金が浴深くまで沈み込み、SiとCaが溶解する。一方で、脱酸元素として出鋼中に投入されたAlは溶鋼中の酸素と反応してAl23が生成される。そして、溶解したCaも溶鋼中の酸素と反応してCaOが生成され、溶鋼中のAl23と結合してCaO-Al23介在物が生成される。CaO-Al23介在物が生成されると、介在物の融点が下がって微量の液相が生成され、液相を介して耐火物等に付着し、タンディッシュなどでノズル閉塞が起こるリスクが生じる。
【0018】
一方、図1(b)は、Si合金としてSiC合金をと投入した場合の反応を示している。SiC合金も不純物としてCaを含んでいるが、FeSi合金に比べて含有量が少なく、0.20質量%未満であることが一般的である。そのため、SiC合金が投入された場合も溶鋼中にCaが溶解するが、FeSi合金を投入する場合に比べてCaO-Al23介在物の生成量を低く抑えることができ、ノズル閉塞のリスクを大幅に低減させることができる。
【0019】
また、図1(b)に示すように、SiC合金はFeSi合金に比べて比重が小さいことから、SiC合金を溶鋼1の出鋼中に投入した場合、一時的に浴深くまで沈んでも溶解する前に浮上し、取鍋上のスラグ2の近傍で溶解する。スラグ2の近傍でSiC合金が溶解すると、スラグ2中のFeO、MnOが、溶解したSi、Cと以下の反応により還元される。
Si+2FeO(又はMnO)=SiO2+2Fe(又はMn) ・・・(1)
C+FeO(又はMnO)=CO↑+Fe(又はMn) ・・・(2)
【0020】
以上の反応によりスラグ中のFeOおよびMnOが還元され、その後取鍋にて溶鋼脱硫を行う際には、高い脱硫能を実現することができる。また、反応式(2)からわかるとおり、SiC合金を投入すると、低級酸化物の還元によりCOガスも併せて発生するため、スラグをCOガスで攪拌することができ、反応効率をより促進させることができる。また、反応式(2)の反応はスラグと溶鋼との界面で生じるため、生成したCOガスの気泡はほぼスラグの内部を通過し、ほぼ全ての気泡がスラグの攪拌に寄与する。したが従って、特許文献1に記載の方法のようなCaCO3を取鍋スラグの上面に散布する場合と比較してガスによるスラグ攪拌効率は高くなる。
【0021】
次に、Si合金として投入するSiC合金の成分について詳細に説明する。上述した効果を得るためには、SiC合金としてSi:60質量%以上、C:15~30質量%、Ca:0.20質量%未満、残部が不可避的不純物であるSi合金を用いる。
【0022】
Siが60質量%未満であると、Siによる脱酸力が弱くなり、スラグ還元能が得られなくなるため、高い脱硫能を実現できなくなる。したがって、Siは60質量%以上とする。
【0023】
また、Cが15質量%未満であると、上記反応式(2)によるCOガスの発生が弱くなり、十分にスラグを攪拌させることができず、反応効率が低下してしまう。その結果、高い脱硫能を実現できなくなる。一方、Cが30質量%を超えると、合金の比重が小さくなり過ぎ、合金が溶鋼中に沈み込まず未反応のままスラグに取込まれてしまう。そのため、同様に高い脱硫能を実現できなくなる。以上より、Cは15~30質量%とする。
【0024】
また、Caが0.20質量%以上であると、その分CaO-Al23介在物が生成され、ノズル閉塞が生じるリスクが増大する。したがって、Caは0.20質量%未満とする。
【0025】
次に、上述した組成のSiC合金の投入タイミングおよび投入量について説明する。上述した組成のSiC合金は、出鋼流による攪拌効果が得られる出鋼中に投入するものとする。出鋼中の溶鋼は、直前の酸素吹錬により溶存酸素濃度が非常に高く、SiC合金からのCaが酸化除去されるため、介在物のCaO-Al23化が生じにくい。
【0026】
これに対し、上述した組成のSiC合金を出鋼後の取鍋精錬で投入すると、静止したスラグ上面から比重の小さいSiC合金を投入することになり、溶鋼中に侵入させることができない。そのため、SiC合金が溶解せず、高い脱硫能を実現できなくなる。また、取鍋精錬ではガス攪拌を付与して脱硫処理が行われるが、その際に、スラグに取り込まれたSi合金が攪拌により遅れて溶鋼中に溶解する。しかしながら、取鍋精錬時点ではある程度脱酸が進行しており、溶鋼中の介在物や溶存酸素の量が少ないため、遅れて溶解したSiC合金からのCaが溶鋼中のAl23などの介在物と高い歩留で反応してしまい、CaO-Al23介在物が生成しやすくなる。そのため、ノズル閉塞が起こるリスクが大きくなってしまう。以上の理由から、上述した組成のSi合金は、出鋼中に投入するものとする。
【0027】
また、上述した組成のSiC合金の投入量は、2.0~4.0kg/tの範囲とする。Si合金全体の投入量は目標とする組成によって異なるが、上述した組成のSiC合金の投入量を超える分は、Si合金としてFeSi合金を投入する。したがって、上述した組成のSiC合金の投入量を増やす場合には、その分FeSi合金の投入量を削減し、Si裕度を確保することとなる。
【0028】
上述した組成のSiC合金の投入量が2.0kg/t未満では、上述したスラグの改質効果が十分に得られない。また、相対的にFeSi合金の投入量の割合が高くなるため、CaO-Al23介在物の生成を抑制する効果が十分に得られない。一方、投入量が4.0kg/tを超えると、COガスが過剰に発生し、出鋼中のスラグフォーミングによるスラグ溢れのトラブルが発生してしまう。以上の理由から、上述した組成のSiC合金の投入量は、2.0~4.0kg/tの範囲とする。
【0029】
以上のように上述した組成のSiC合金の投入量が4.0kg/tを超えない範囲で、Si合金全体の中で可能な限り上述した組成のSiC合金の投入量の割合を大きくすることが好ましい。
【実施例0030】
次に、本発明の実施例について説明するが、この条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一条件例であり、本発明は、この実施例の記載に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する種々の手段にて実施することができる。
【0031】
高炉から出銑された溶銑を転炉吹錬にて処理し、340t規模の溶鋼を取鍋に出鋼した。出鋼時には、脱酸用の金属Alと、FeSi合金、SiC合金等のSi合金をはじめとした成分調整用の合金とを投入した。出鋼後の溶鋼に対しては、ガス攪拌を付与して取鍋精錬を行い、その後、真空脱ガス工程を経由し、連続鋳造にて溶鋼を鋳造して鋼材を得た。なお、SiC合金の投入量を増加させる水準では、Si濃度の増加分だけFeSi合金の投入量を削減した。また、SiC合金の投入によるC濃度の増加分は、Mn合金等の銘柄を変更することで調整した。一方、取鍋精錬における脱硫では、キャリアガスにArガスを用い、インジェクションランスより脱硫材である粉体を吹込む手法を採用し、脱硫材の投入量は1000~1500kgの範囲内で揃えた。
【0032】
本試験では、脱硫精錬として取鍋精錬を採用し、取鍋精錬における脱硫率と、ノズル閉塞の有無と、出鋼時のスラグフォーミングによるスラグ溢れの発生有無とを評価した。脱硫率については、出鋼時および鋳造前の溶鋼サンプリングにより溶鋼中S濃度を分析し、以下の式(3)で定義される脱硫率が70%以上であった場合は〇とし、70%未満であった場合は×とした。なお、式(3)中の[S]出鋼時は、出鋼時の溶鋼中S濃度を表し、[S]鋳造前は真空脱ガス工程後の鋳造前の溶鋼中S濃度を表す。
脱硫率=100×([S]出鋼時-[S]鋳造前)/[S]出鋼時・・・(3)
【0033】
ノズル閉塞の有無については、1ch分の溶鋼を完鋳できた場合はノズル閉塞が起こらなかったものとして〇と評価し、1ch分の溶鋼を完鋳できなかった場合はノズル閉塞が起こったものとして×と評価した。スラグ溢れの発生については、スラグ溢れが発生しなかった場合を〇とし、スラグ溢れが発生した場合を×とした。そして、これら3つの評価が全て良好であった場合は発明の効果が得られたものと判断し、これら3つの評価のうち、1つでも良好でなかった場合は、発明の効果が得られなかったものと判断した。表1にその結果を示す。なお、表1には、鋳造前の溶鋼の成分を示しているが、最終的に得られた鋼材も同じ含有量であった。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例であるNo.1~No.3については、脱硫率が良好でノズル閉塞も起こらず、出鋼時にスラグ溢れも起こらなかった。
【0036】
一方、比較例であるNo.4はSiC合金中のSi濃度が低すぎた例である。Si脱酸力が不足し、スラグの改質効果が十分に得られなかったため、脱硫率が低かった。
比較例であるNo.5はSiC合金中のC濃度が低すぎた例である。COガスの発生量が少なかったことからスラグの攪拌効果が低水準となり、スラグの改質効果が不十分となり、脱硫率が低かった。
比較例であるNo.6はSiC合金中のC濃度が高すぎた例である。C濃度が高い分SiC合金の比重が小さすぎたことから、SiC合金の多くが未反応のままスラグに取込まれてしまった。その結果、スラグの改質効果が得られず、脱硫率が低かった。
【0037】
比較例であるNo.7はSiC合金中のCa濃度が高すぎた例である。不純物であるCaが多く含まれていたことから、CaO-Al23介在物が多量に生成し、ノズル閉塞が起こってしまった。
比較例であるNo.8はSiC合金を出鋼後の静止したスラグに投入した例である。静止したスラグ上面から比重の小さいSiC合金を投入したことからSiC合金が溶解せず、スラグ改質効果が得られなかったため、脱硫率が低かった。また、脱硫時にガス攪拌によって溶鋼へSiC合金が溶解したが、この段階では溶存酸素が少なかったため、SiC合金中のCaが溶鋼中のAl23などの介在物と高い歩留で反応してしまい、CaO-Al23介在物が多く生成し、ノズル閉塞が起こってしまった。
【0038】
比較例であるNo.9はSiC合金の投入量が少なすぎた例である。SiC合金が少なかった分、スラグ改質効果が十分に得られなかったため、脱硫率が低かった。また、SiC合金の投入量が少ない分、FeSi合金の投入量を起こする必要があったことから、CaO-Al23介在物が多量に生成し、ノズル閉塞が起こってしまった。
比較例であるNo.10はSiC合金の投入量が多かった例である。SiCの投入量が多すぎたため、出鋼中にCOガスが多量に発生してしまい、スラグフォーミングによるスラグ溢れのトラブルが発生した。
【0039】
比較例であるNo.11は溶鋼のAl濃度が0.01質量%未満であった例である。Al濃度が不足した分、溶鋼の脱酸力が不足し、脱硫が極めて困難な状態であったため、脱硫率は非常に低かった。
【符号の説明】
【0040】
1 溶鋼
2 スラグ
図1