(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165070
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】消毒用組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 31/02 20060101AFI20241121BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20241121BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241121BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241121BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20241121BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241121BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241121BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241121BHJP
A61P 31/02 20060101ALI20241121BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241121BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20241121BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20241121BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20241121BHJP
A01N 25/16 20060101ALI20241121BHJP
A01N 33/12 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
A01N31/02
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/34
A61Q17/00
A61K47/10
A61K47/34
A61K47/44
A61P31/02
A61P17/00 101
A61K9/12
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/16
A01N33/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080908
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 江利子
(72)【発明者】
【氏名】白石 晶子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD09
4C076DD37
4C076EE53
4C076FF11
4C076FF16
4C076FF52
4C083AC062
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC212
4C083AC302
4C083AC332
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC692
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB48
4C083CC22
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD47
4C083EE06
4H011AA02
4H011BA01
4H011BA05
4H011BA06
4H011BB03
4H011BB04
4H011BC03
4H011BC05
4H011BC06
4H011BC19
4H011DA18
4H011DF04
4H011DG03
4H011DH03
(57)【要約】
【課題】手になじませる時の香り立ちが心地よく認知され、かつ、乾燥後の皮膚上に強い香りが残りにくい消毒用組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル
R-O-(CH2CH2O)n-H (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、nは2以上50以下の数を示す)、又は
HLB10以上18以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.005以上5質量%以下、
(B)炭素数1以上3以下のアルコール 25以上45質量%以下、
(C)香料化合物(c-1)及び(c-2);
(c-1)clogPが3以上であり、かつ25℃における蒸気圧が1Pa以上である香料化合物 全香料中50質量%以上99質量%以下、
(c-2)clogPが4以上であり、かつ25℃における蒸気圧が1Pa未満である香料化合物 全香料中1質量%以上30質量%以下
を含み、(c-1)及び(c-2)の質量比(c-1)/(c-2)が1以上50以下である香料
を含有する消毒用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル
R-O-(CH2CH2O)n-H (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、nは2以上50以下の数を示す)、又は
HLB10以上18以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.005質量%以上5質量%以下、
(B)炭素数1以上3以下のアルコール 25質量%以上45質量%以下、
(C)香料化合物(c-1)及び(c-2);
(c-1)clogPが3以上であり、かつ25℃における蒸気圧が1Pa以上である香料化合物 全香料中50質量%以上99質量%以下、
(c-2)clogPが4以上であり、かつ25℃における蒸気圧が1Pa未満である香料化合物 全香料中1質量%以上30質量%以下
を含み、(c-1)及び(c-2)の質量比(c-1)/(c-2)が1以上50以下である香料
を含有する消毒用組成物。
【請求項2】
(c-1)の香料化合物が、リモネン、α-ピネン、β-ピネン、p-サイメン、ターピノレン、γ-ターピネン、1,8-シネオール、ゲラニル=アセタート、リナリル=アセタート、イソボルニル=アセタート、β-イオノン、ジメトール及びシトロネロールから選ばれる1種以上を含む請求項1記載の消毒用組成物。
【請求項3】
(c-2)の香料化合物が、エチレンブラシレート、アセチルセドレン、シクロヘキシル=サリチラート、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2-イル)エタノン、(5E)-3-メチルシクロペンタデカ-5-エン-1-オン、16-オキサシクロヘキサデカン-1-オン、エトキシメトキシシクロドデカン及び(12E)-1-オキシクロヘキサデカ-12-エン-2-オンから選ばれる1種以上を含む請求項1又は2記載の消毒用組成物。
【請求項4】
成分(C)の含有量が、0.001質量%以上0.5質量%以下である請求項1ないし3のいずれか1項記載の消毒用組成物。
【請求項5】
成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)が、100以上10000以下である請求項1ないし4のいずれか1項記載の消毒用組成物。
【請求項6】
フォーマー容器に収容されている、請求項1ないし5のいずれか1項記載の消毒用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗い流さないタイプの消毒剤が検討されている。
例えば、特許文献1には、カルボン酸とペルオキシカルボン酸と過酸化物とバリア成分と特定の香料を含有する手指消毒用組成物が記載されている。
特許文献2には、ペルオキシカルボン酸と1~6個の炭素を有するアルコールとを活性成分として含有する手指消毒剤組成物が記載されている。
特許文献3には、少なくとも1のC1-6アルコール、抗炎症特性を有する植物化学物質、角質層の形成に役立つ酵素又は補酵素、沈着エンハンサーを含有する組成物の手指消毒剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-512882号公報
【特許文献2】特開2014-224160号公報
【特許文献3】特表2017-509634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、炭素数1~3のアルコールを含有し、塗布して乾燥させるタイプの消毒剤では、特に泡状で塗布する剤型の場合、炭素数1~3のアルコールのにおいが強く、使用時の心地よさを向上させるために香りを付与しても、手になじませる時の香り立ちを十分に知覚させることが難しく、香り立ちを強めようとすると乾燥後の皮膚上の残香も強くなってしまい、心地よさを損ねる場合があった。
そこで、手になじませる時の香り立ちを適度に付与でき、心地よく認知され、かつ、乾燥後の皮膚上に強い香りが残りにくい消毒剤が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、炭素数1~3のアルコール、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、特定の香料を含有する消毒用組成物が、泡状態で塗布した場合であっても、手になじませる時の適度な香り立ちが付与できて心地よく認知され、皮膚上の強い香りも短時間で消失するため、乾燥後に皮膚上に残香が少なく、良好な使用感が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル
R-O-(CH2CH2O)n-H (1)
(式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基を示し、nは2以上50以下の数を示す)、又は
HLB10以上18以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.005質量%以上5質量%以下、
(B)炭素数1以上3以下のアルコール 25質量%以上45質量%以下、
(C)香料化合物(c-1)及び(c-2);
(c-1)clogPが3以上であり、かつ25℃における蒸気圧が1Pa以上である香料化合物 全香料中50質量%以上99質量%以下、
(c-2)clogPが4以上であり、かつ25℃における蒸気圧が1Pa未満である香料化合物 全香料中1質量%以上30質量%以下
を含み、(c-1)及び(c-2)の質量比(c-1)/(c-2)が1以上50以下である香料
を含有する消毒用組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の消毒用組成物は、泡状態で塗布した場合であっても、手になじませる時の適度な香り立ちが良く心地よく感じられ、皮膚上の強い香りも短時間で消失するため、乾燥後に皮膚上の残香が少なく、良好な使用感が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の消毒用組成物は、医薬品、指定医薬部外品、医薬部外品、化粧品、雑品等のいずれであってもよく、本発明の組成物は、皮膚の消毒、殺菌、除菌等に用いられる。ここで「菌」は、ウイルス等の病原体を含んでよい。本発明の組成物は、殺菌作用を有する低級アルコールを含有する溶液であり、皮膚に適用される。「皮膚」とはヒトの肌の皮膚をいい、例えば、手指の皮膚である。組成物は、洗い流さない(リーブオン)タイプであり、例えば、泡の状態で手に吐出された後、手を擦り合わせる等により手指の全体に向けて伸ばして使用される。
【0009】
本発明で用いる成分(A)は、(A1)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、又は(A2)HLB10以上18以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。
(A1)は、前記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
式中、Rは炭素数8以上24以下の炭化水素基であり、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和のいずれでも良い。手になじませる時の適度な香り立ちを付与することができる観点から、直鎖アルキル基が好ましい。また、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、炭素数8以上20以下が好ましく、炭素数8以上16以下が好ましく、炭素数10以上14以下がより好ましく、炭素数10以上12以下がさらに好ましい。
また、式中、nはエチレンオキサイドの平均付加モル数であり、2以上50以下の数を示し、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、2以上47以下が好ましく、2以上30以下がさらに好ましい。
【0010】
成分(A1)として、具体的には、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(21)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(47)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(13)セチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(13)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オクチルドデシルエーテル等が挙げられる。
成分(A1)としては、例えば、エマルゲン103、108、109P、121、150、409PV、420(以上、花王社製)、EMALEX 2420、OD-20(以上、日本エマルジョン社製)等を用いることができる。
【0011】
成分(A1)としては、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、一般式(1)におけるRが炭素数8以上12以下のものが、成分(A1)の全体に対して60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、成分(A1)の全体に対して、Rが炭素数8以上12以下のものが60質量%以上79質量%以下であり、かつRが炭素数13以上のものが21質量%以上の場合は、nが20以上であることが好ましい。
【0012】
また、成分(A1)は、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、HLBが10以上18以下であり、12以上がより好ましく、14以上がさらに好ましく、15以上がさらに好ましく、また、18以下がより好ましく、17.5以下がさらに好ましく、17以下がよりさらに好ましい。
本発明において、HLBは、グリフィン(Griffin)の式により求められる。2種以上の非イオン界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLB(混合HLB)は、各非イオン界面活性剤のHLB値をその質量比率に基づいて相加算平均することにより求められる。
【0013】
成分(A1)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、組成物中に0.001質量%以上であるのが好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましい。また、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以下がよりさらに好ましい。
また、成分(A1)の含有量は、組成物中に0.005質量%以上2質量%であるのが好ましく、0.01質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.6質量%以下がさらに好ましく、0.15質量%以上0.3質量%以下がよりさらに好ましい。
【0014】
(A2)は、HLB10以上18以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。
成分(A2)は、HLB10以上18以下の精製されたポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。
精製されたポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、原料に由来する12-ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物、具体的には、12-ヒドロキシステアリン酸の重合体(ポリヒドロキシステアリン酸)を実質的に含まない。このような重合体としては、12-ヒドロキシステアリン酸の2量体が挙げられる。本発明の組成物中には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に由来する12-ヒドロキシステアリン酸の重合体が、実質的に含まれない。
【0015】
任意のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に上記重合体が実質的に含まれるか否かを確認するには、このポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を5質量%含む35質量%エタノール水溶液(30g)を5℃で1週間保存した後、遠心分離し(5℃,18000rpm,10min)、固体の沈殿物の有無を目視で観察すればよい。沈殿物が観察されれば、このポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に上記重合体が含まれていると判断でき、沈殿物が観察されなければ、このポリオキシエチレン硬化ヒマシ油に上記重合体が(実質的に)含まれていないと判断できる。
組成物中に上記重合体が実質的に含まれるか否かを確認するには、この組成物をLC-MSで解析し、上記重合体の標準サンプルに該当するピークの有無を確認すればよい。該当するピークがあれば、この組成物に上記重合体が含まれていると判断でき、該当ピークが確認されなければ、この組成物に上記重合体が(実質的に)含まれていないと判断できる。
なお、組成物中に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外の成分に由来する上記重合体が含まれないことが明らかである場合は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油についての上記確認方法と同じく、この組成物を低温保存後に遠心分離し、沈殿物の有無を目視で観察することで、この組成物中に上記重合体が含まれるか否かを確認してもよい。
【0016】
成分(A2)としては、例えば、NIKKOL HCO-40、50、60(医薬品用)(以上、日光ケミカルズ社製)を用いることができる。
【0017】
成分(A2)は、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、HLB10以上18以下であり、11以上が好ましく、12以上がより好ましく、また16以下が好ましく、15以下がより好ましく、14以下がさらに好ましい。
【0018】
成分(A2)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、組成物中に0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.15質量%以上がよりさらに好ましい。手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、組成物中に5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以下がよりさらに好ましい。また、成分(A2)の含有量は、組成物中に0.01質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、0.02質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がさらに好ましく、0.15質量%以上0.5質量%以下がよりさらに好ましく、0.15質量%以上0.3質量%以下がよりさらに好ましい。
【0019】
本発明において、成分(A)の含有量は、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、組成物中に0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上がより好ましく、また、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下がよりさらに好ましく、0.5質量%以下がよりさらに好ましい。
【0020】
本発明で用いる成分(B)は、炭素数1以上3以下のアルコールであり、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらのうち、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点、乾燥後に皮膚上の残香が少なくする観点から、エチルアルコールが好ましい。
成分(B)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、組成物中に25質量%以上であり、30質量%以上が好ましく、33質量%以上がより好ましく、45質量%以下であり、40質量%以下が好ましく、38質量%以下がより好ましい。また、成分(B)の刺激臭を緩和して手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、成分(B)の含有量は、組成物中に25質量%以上45質量%以下であり、30質量%以上40質量%以下が好ましく、33質量%以上38質量%以下がより好ましい。
【0021】
成分(C)の香料は、香料化合物(c-1)及び(c-2);
(c-1)clogPが3以上であり、かつ25℃における蒸気圧が1Pa以上である香料化合物 全香料中50質量%以上99質量%以下、
(c-2)clogPが4以上であり、かつ25℃における蒸気圧が1Pa未満である香料化合物 全香料中1質量%以上30質量%以下
を含み、(c-1)及び(c-2)の質量比(c-1)/(c-2)が1以上50以下であるものである。
【0022】
本発明において用いられる香料化合物に関し、logP値とは、有機化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の二液相からなる溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んで分配平衡に到達した際の、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。今日では、化合物分子を構成する原子の数及び化学結合のタイプによって決められる原子団のフラグメント値を用いた計算プログラムによって算出される、“計算logP(clogP)”の値が広く用いられており、本発明においても、化合物の選択に際して、clogPの値を用いる。
本発明においては、clogPの値として、米国環境保護庁とSyracuse社が共同開発したソフトウェアEPI Suite(登録商標;The Estimations Programs Interface for Windows version 4.11)におけるlogPの予測モデルであるKOWWIN(version 1.68)を用いて算出された値を用いる。
【0023】
また、香料化合物の25℃における蒸気圧Vpとしては、米国環境保護庁とSyracuse社が共同開発したソフトウェアEPI Suite(登録商標;The Estimations Programs Interface for Windows version 4.11)における蒸気圧の予測モデルであるMPBPVP(version 1.43)を用いて算出された値(Antoine & Grain methodsによる値)を用いる。
【0024】
成分(c-1)の香料化合物は、手に消毒用組成物をなじませる時の香り立ちをよくする。
成分(c-1)の香料化合物のclogPは、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、3以上であり、また、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5.5以下がさらに好ましく、5以下がよりさらに好ましい。
また、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、25℃における蒸気圧Vpが1以上であり、また、3100Pa以下が好ましく、1500Pa以下がより好ましく、1000Pa以下がさらに好ましく、600Pa以下がよりさらに好ましい。
成分(c-1)の香料化合物としては、リモネン、α-ピネン、β-ピネン、p-サイメン、ターピノレン、γ-ターピネン、1,8-シネオール、ゲラニル=アセタート、リナリル=アセタート、イソボルニル=アセタート、β-イオノン、ジメトール、シトロネロールから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、リモネン、α-ピネン、β-ピネン、p-サイメン、ターピノレン、γ-ターピネン、1,8-シネオール、ゲラニル=アセタート、β-イオノン、ジメトール、イソボルニル=アセタートから選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましい。
また、成分(c-1)の香料化合物は、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、全香料中に50質量%以上含有され、60質量%以上含有されるのが好ましく、70質量%以上含有されるのがより好ましく、75質量%含有されるのがさらに好ましい。また、99質量%以下含有され、98質量%以下含有されるのが好ましい。
【0025】
成分(c-2)の香料化合物は、手に消毒用組成物をなじませる時の成分(c-1)の香り立ちを増強させて、適度に心地よく感じさせることができる。
成分(c-2)の香料化合物は、手になじませる時の成分(c-1)の香り立ちを増強させ、適度な香り立ちを付与する観点から、clogPが4以上であり、また、7以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6以下であるのがさらに好ましい。
また、25℃における蒸気圧Vpが、手になじませる時の成分(c-1)の香り立ちを増強させ、適度な香り立ちを付与する観点から、0.000005Pa以上が好ましく、また、1未満であり、0.8Pa以下であるのが好ましく、0.7Pa以下がより好ましく、0.6Pa以下がさらに好ましく、0.5Pa以下がよりさらに好ましい。
成分(c-2)の香料化合物としては、エチレンブラシレート、アセチルセドレン、シクロヘキシル=サリチラート、1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2-イル)エタノン、(5E)-3-メチルシクロペンタデカ-5-エン-1-オン、16-オキサシクロヘキサデカン-1-オン、エトキシメトキシシクロドデカン、(12E)-1-オキシクロヘキサデカ-12-エン-2-オンから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましい。
また、成分(c-2)の香料化合物は、手になじませる時の成分(c-1)の香り立ちを増強させ、適度な香り立ちを付与する観点から、全香料中に1質量%以上含有され、1.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、また、乾燥後の皮膚上の残香が少なくなる観点から、30質量%以下で含有され、27質量%以下であるのが好ましく、26質量%以下であるのがより好ましく、25質量%以下であるのがさらに好ましい。25質量%以下であると、手になじませる時の成分(c-1)の香り立ちの増強に寄与するとともに、皮膚上の強い香りも短時間で消失するため、乾燥後の皮膚上の残香が少なくできるので、より好ましい。
【0026】
成分(C)の香料において、(c-1)及び(c-2)の質量比(c-1)/(c-2)は、乾燥後の皮膚上の残香が少なくなる観点から、1以上であり、2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上がさらに好ましく、また、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、50以下であり、45以下が好ましく、40以下がより好ましく、35以下がさらに好ましい。
【0027】
成分(C)の香料は、香料化合物(c-1)及び(c-2)以外の香料化合物を含有することができる。
成分(C)の含有量は、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、全組成中に0.001質量%以上であるのが好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.007質量%以上がさらに好ましく、0.008質量%以上がよりさらに好ましく、また乾燥後の皮膚上の残香が少なくなる観点から、0.5質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.07質量%以下がさらに好ましく、0.06質量%以下がよりさらに好ましく、0.05質量%以下がよりさらに好ましい。
【0028】
本発明において、成分(C)に対する成分(A)の質量割合(A)/(C)は、乾燥後に皮膚上の残香の少なさの観点から、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、6以上がよりさらに好ましく、また、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、30以下であるのが好ましく、27以下がより好ましく、26以下がさらに好ましく、25以下がよりさらに好ましい。
【0029】
本発明において、成分(C)に対する成分(B)の質量割合(B)/(C)は、乾燥後に皮膚上の残香が少なさの観点からの観点から、100以上が好ましく、500以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましく、1150以上がよりさらに好ましく、また、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、10000以下であるのが好ましく、5000以下がより好ましく、4000以下がさらに好ましく、3600以下がよりさらに好ましい。
【0030】
本発明の消毒用組成物は、さらに、カチオン性殺菌剤を含有することができ、殺菌性能をより高めることができる。
カチオン性殺菌剤としては、通常の皮膚清浄剤等に用いられるもので、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン等の第四級アンモニウム化合物が挙げられる。これらのうち、手指消毒剤へ配合のしやすさの観点から、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが好ましく、塩化ベンザルコニウムがより好ましい。
【0031】
カチオン性殺菌剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、殺菌性能の観点から、組成物中に0.01質量%以上であるのが好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましく、また1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明において、水の含有量は、組成物中に55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、62質量%以上がさらに好ましく、また、75質量%以下であるのが好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
本発明の消毒用組成物は、前記以外に、通常の消毒用組成物に用いられる成分、例えば、上記以外の界面活性剤、多価アルコール、水溶性高分子、粉体、カチオン性殺菌剤以外の殺菌剤、抗炎症剤、保湿剤、pH調整剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、着色剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0034】
本発明の消毒用組成物は、配合成分を混合することにより調製され、30℃で液体状のものである。手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、30℃における組成物の粘度が、30mPa・s以下であるのが好ましく、20mPa・s以下であるのがより好ましく、10mPa・s以下であるのがさらに好ましい。
本発明において、粘度は、温度条件30℃で、回転粘度計(東機産業社製、BM型式)を用い、No.1ローター回転数60rpmにより測定する。
【0035】
本発明の消毒用組成物は、フォーマー容器に収容して使用することができる。
フォーマー容器としては、組成物を空気と混合して泡として吐出できるものであればいずれのものでも用いることができるが、例えば、ポンプヘッドを押すことで吐出するポンプフォーマー容器や、胴体部分を押すことで吐出するスクイズフォーマー容器が挙げられ、具体的には、吉野工業所社製、大和製罐社製、Rieke社製のフォーマー容器等が挙げられる。また、例えば、特開平7-315463号公報、特開平8-230961号公報、特開2005-193972号公報等に記載されたフォーマー容器を使用することもできる。
なかでも、組成物を使用する環境における利便性の観点から、ポンプヘッドを押すことで吐出するポンプフォーマー容器が好ましく、泡質をさらに良好にし、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、吐出流路に多孔質膜フィルターを備えるポンプフォーマー容器がより好ましい。このような多孔質膜フィルターは、さらにキメの細かく良好な泡質を得、手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、90メッシュ以上400メッシュ以下のフィルターが好ましく、200メッシュ以上400メッシュ以下のフィルターがより好ましく、200メッシュ以上305メッシュ以下のフィルターがさらに好ましい。かかる多孔質フィルターは吐出流路に1枚以上3枚以下配置されていることが好ましい。また、このようなフィルターのメッシュの材質として好ましいものとしては、ナイロンやポリエステルなどが挙げられる。
ポンプフォーマー容器における組成物と空気の混合比については、例えば、吐出される泡の密度(液体洗浄剤の質量/空気の体積)が、良好な泡量と泡質と手になじませる時の適度な香り立ちを付与する観点から、0.03g/cm3以上0.14g/cm3以下であるのが好ましく、0.05g/cm3以上0.11g/cm3以下がより好ましい。
【0036】
本発明の消毒用組成物は、液体状の組成物がフォーマー容器に収容されたものであるのが好ましく、容器から泡で吐出され、洗い流さないで使用される。例えば、フォーマー容器から吐出させた泡を手に取り、そのまま手を擦り合わせて使用することができ、手指消毒剤として好適である。
【実施例0037】
実施例1~14、比較例1~2
表1に示す組成の消毒用組成物を、各成分を混合し、溶解することにより製造した。得られた消毒用組成物について、手になじませる時の適度な香り立ちの良さ、乾燥後の皮膚上の残香の少なさを評価した。
得られた組成物は、フォーマー容器(吉野工業所社製ポンプフォーマー容器。ノズルX-1960、ネジキャップX-1961。吐出経路に200メッシュの多孔質膜フィルターが2枚設けられている)に充填して、評価を行った。
結果を表1に併せて示す。
なお、実施例及び比較例で用いた香料組成物(1)~(4)は、表2に示すものである。表2中、clogPと、25℃における蒸気圧Vpは、EPI suite(登録商標)ver.4.11(米国環境保護庁のホームページから無料でダウンロードできるフリーウェア)を用いて、clogPは段落「0022」記載の方法で、25℃における蒸気圧Vpは段落「0023」記載の方法で計算して求めた。
【0038】
(評価方法)
専門パネル5名(男性1名、女性4名)の評価者が、自らの両手を40℃の水道水で10秒濡らした後、花王社製CurelボディウォッシュBaを1g塗布し、20秒洗浄した後40℃の水道水で10秒ですすぎ流した後、ペーパータオル(日本製紙クレシア社製、キムタオルワイパーストロングホワイト3枚重ね)で水気を取り、1分間静置させ乾燥させた後に、以下の項目について評価を行った。なお、評価は温度20℃、相対湿度60%RHの条件下で行った。
【0039】
(1)手になじませる時の適度な香り立ちの良さの評価:
フォーマー容器に充填した各消毒用組成物を、片方の手のひらに1プッシュし(1回の吐出量:約0.75g)、両手を胸元のあたりの高さで両手にもみこむように15秒間なじませている時に鼻で感じる匂いを、以下の評価尺度で匂い強度を5段階で評価し、スコアの平均を評価値とした。なお、その評価基準では、実施例1を評価3とした。数値が3に近いほど手になじませる時に組成物が適度な香り立ちであることを意味する。
(手になじませる時の香り立ちの強さの評価尺度)
1:実施例1より香り立ちが弱い。
2:実施例1よりも香り立ちがやや弱いが許容範囲。
3:実施例1と同等の適度な香り立ち。
4:実施例1よりも香り立ちがやや強いが許容範囲。
5:実施例1よりも香り立ちが強すぎる。
【0040】
(2)乾燥後の皮膚上の残香の少なさの評価:
各消毒用組成物を手になじませてから2分後に、手のひらから約5cmの距離に鼻を近づけて手の匂いを嗅ぎ、以下の評価尺度で匂い強度を5段階で評価し、スコアの平均を評価値とした。なお、その評価基準では、実施例1を評価3としたが、これは、ごくわずかに香りがする程度の不快ではないレベルであり、数値が低く、1に近いほど乾燥後の手のひらの組成物の香りのなさに優れることを意味する。
(乾燥後の香りのなさの評価尺度)
1:無臭。
2:実施例1よりも手に残る香りがやや少ない。
3:実施例1と同等。
4:実施例1よりも手に残る香りがやや強いが、許容範囲。
5:実施例1よりも手に残る香りが強すぎる。
【0041】
【0042】