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特開2024-165092測定装置、測定方法、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165092
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/18 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G01J3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080954
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】石原 元太郎
(72)【発明者】
【氏名】松川 弘明
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020CB02
2G020CC04
2G020CC42
2G020CC55
2G020CD04
(57)【要約】
【課題】被測定光の測定スペクトルに対してダイナミックレンジを向上させることが可能な測定装置を提供する。
【解決手段】本開示に係る測定装置1は、制御部80と、被測定光L1を通過させる開口部132aが形成されている光学素子を有する分光器10と、を備え、制御部80は、被測定光L1のビームスポットPが開口部132a内で第1位置x1にあるときの第1スペクトルS1(i)及び第2位置x2にあるときの第2スペクトルS2(i)を少なくとも合成して狭窄化した被測定光L1の合成スペクトルSr(i)を生成する第1処理を実行し、第1位置x1は、ビームスポットPの開口部132a内での基準位置x0から所定方向Dの一方側にずれた位置を含み、第2位置x2は、基準位置x0から他方側にずれた位置を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と、
被測定光を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器と、
を備え、
前記制御部は、前記被測定光のビームスポットが前記開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトル及び第2位置にあるときの第2スペクトルを少なくとも合成して狭窄化した前記被測定光の合成スペクトルを生成する第1処理を実行し、
前記第1位置は、前記ビームスポットの前記開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含み、
前記第2位置は、前記基準位置から他方側にずれた位置を含む、
測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルのうち各測定点でより低い強度を有するスペクトルを用いて前記合成スペクトルを生成する、
測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方を、前記第1処理の実行前に測定により予め決定する前処理を実行する、
測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記前処理において、前記ビームスポットの位置を前記基準位置から前記一方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第1距離範囲を算出し、前記第1距離範囲に基づいて前記第1位置を決定する、
測定装置。
【請求項5】
請求項3に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記前処理において、前記ビームスポットの位置を前記基準位置から前記他方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第2距離範囲を算出し、前記第2距離範囲に基づいて前記第2位置を決定する、
測定装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記第1処理において、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルを合成したときに前記合成スペクトルにおいて互いに隣接する一対のピークの間に局所ピークが発生しているか否かを判定する、
測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルに加え、前記ビームスポットが前記基準位置にあるときの第3スペクトルも合成して前記合成スペクトルを生成する、
測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記第1スペクトル、前記第2スペクトル、及び前記第3スペクトルのうち各測定点で最低となる強度を有するスペクトルを用いて前記合成スペクトルを生成する、
測定装置。
【請求項9】
請求項6に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記局所ピークを他の部分と異なる態様で表示させる、
測定装置。
【請求項10】
請求項6に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記局所ピークの両側のデータに基づいて補間処理を実行し、前記局所ピークでの光スペクトルデータを更新する、
測定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記合成スペクトルにおいてデータが更新された部分を他の部分と異なる態様で表示させる、
測定装置。
【請求項12】
請求項6に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記基準位置で前記被測定光の基準スペクトルを測定する第2処理に切り替える、
測定装置。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記基準位置で前記被測定光の基準スペクトルを測定する第2処理及び前記第1処理のいずれかを、ユーザの選択入力に応じて切り替えて実行する、
測定装置。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記基準位置は、前記開口部における前記所定方向の中心位置を含む、
測定装置。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記所定方向は、前記開口部の短手方向を含む、
測定装置。
【請求項16】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記基準位置から前記第1位置までの第1距離と前記基準位置から前記第2位置までの第2距離とは、互いに同一である、
測定装置。
【請求項17】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記第1位置は、前記ビームスポットの前記一方側の第1端部が前記開口部の第1縁に当たるときの前記ビームスポットの中心位置を含む、
測定装置。
【請求項18】
請求項1又は2に記載の測定装置であって、
前記第2位置は、前記ビームスポットの前記他方側の第2端部が前記開口部の第2縁に当たるときの前記ビームスポットの中心位置を含む、
測定装置。
【請求項19】
被測定光を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器を備える測定装置により実行される測定方法であって、
前記被測定光のビームスポットが前記開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトル及び第2位置にあるときの第2スペクトルを少なくとも合成して狭窄化した前記被測定光の合成スペクトルを生成する第1処理を実行するステップを含み、
前記第1位置は、前記ビームスポットの前記開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含み、
前記第2位置は、前記基準位置から他方側にずれた位置を含む、
測定方法。
【請求項20】
被測定光を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器を備える測定装置に、
前記被測定光のビームスポットが前記開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトル及び第2位置にあるときの第2スペクトルを少なくとも合成して狭窄化した前記被測定光の合成スペクトルを生成する第1処理を実行するステップを含む動作を実行させ、
前記第1位置は、前記ビームスポットの前記開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含み、
前記第2位置は、前記基準位置から他方側にずれた位置を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、測定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば波長領域において高い分解能又はシャープなフィルタ特性を得るために、被測定光を回折格子に複数回入射させると共に複数のスリットを通過させるマルチパス方式の分光器が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、マルチパス方式の分光器であって、最終の分光経路より前の分光経路にて生じた散乱光の一部が最終の分光経路での回折光と同一光路をたどる場合に生じる、分光特性上の分解能及びダイナミックレンジの悪化を抑制する分光器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-175038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、より広いダイナミックレンジでシャープな測定スペクトルを被測定光に対し得るという観点でさらなる改善の余地があった。
【0006】
本開示は、被測定光の測定スペクトルに対してダイナミックレンジを向上させることが可能な測定装置、測定方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る測定装置は、制御部と、被測定光を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器と、を備え、前記制御部は、前記被測定光のビームスポットが前記開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトル及び第2位置にあるときの第2スペクトルを少なくとも合成して狭窄化した前記被測定光の合成スペクトルを生成する第1処理を実行し、前記第1位置は、前記ビームスポットの前記開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含み、前記第2位置は、前記基準位置から他方側にずれた位置を含む。
【0008】
これにより、測定装置は、被測定光の合成スペクトルに対してダイナミックレンジを向上させることが可能である。測定装置は、第1スペクトル及び第2スペクトルを少なくとも合成して合成スペクトルを生成する第1処理を実行する。これにより、測定装置は、スリット幅が理想的なスポットサイズと同一になるような場合と同様に、広いダイナミックレンジでシャープな合成スペクトルのデータを取得することができる。
【0009】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルのうち各測定点でより低い強度を有するスペクトルを用いて前記合成スペクトルを生成してもよい。これにより、測定装置は、第1スペクトル及び第2スペクトルの各々に対して狭窄化された合成スペクトルを生成可能である。
【0010】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方を、前記第1処理の実行前に測定により予め決定する前処理を実行してもよい。これにより、測定装置は、第1処理における第1スペクトル及び第2スペクトルの測定を精度良く実行することができる。
【0011】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記前処理において、前記ビームスポットの位置を前記基準位置から前記一方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第1距離範囲を算出し、前記第1距離範囲に基づいて前記第1位置を決定してもよい。これにより、測定装置は、第1位置を精度良く決定することができる。
【0012】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記前処理において、前記ビームスポットの位置を前記基準位置から前記他方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第2距離範囲を算出し、前記第2距離範囲に基づいて前記第2位置を決定してもよい。これにより、測定装置は、第2位置を精度良く決定することができる。
【0013】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記第1処理において、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルを合成したときに前記合成スペクトルにおいて互いに隣接する一対のピークの間に局所ピークが発生しているか否かを判定してもよい。これにより、測定装置は、測定対象となるレーザー光には本来含まれていないような、測定データとして望ましくない局所ピークに対処することも可能になる。例えば、測定装置は、このような局所ピークを軽減するような演算処理を実行することも可能である。
【0014】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルに加え、前記ビームスポットが前記基準位置にあるときの第3スペクトルも合成して前記合成スペクトルを生成してもよい。これにより、測定装置は、局所ピークの発生を抑制しつつ、ダイナミックレンジが広いシャープな合成スペクトルを生成することが可能である。
【0015】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記第1スペクトル、前記第2スペクトル、及び前記第3スペクトルのうち各測定点で最低となる強度を有するスペクトルを用いて前記合成スペクトルを生成してもよい。これにより、測定装置は、局所ピークの発生を抑制しつつ、第1スペクトル、第2スペクトル、及び第3スペクトルの各々に対して狭窄化された合成スペクトルを生成可能である。
【0016】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記局所ピークを他の部分と異なる態様で表示させてもよい。これにより、測定装置は、合成スペクトルにおける局所ピークの位置を、ユーザに明瞭に示すことができる。ユーザは、測定された合成スペクトルにおいてどの部分が局所ピークであるのかを容易に判別することができる。
【0017】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記局所ピークの両側のデータに基づいて補間処理を実行し、前記局所ピークでの光スペクトルデータを更新してもよい。これにより、測定装置は、第3スペクトルに関連する処理を実行したときと同様に、合成スペクトルにおける局所ピークを軽減可能である。
【0018】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記合成スペクトルにおいてデータが更新された部分を他の部分と異なる態様で表示させてもよい。これにより、測定装置は、合成スペクトルにおいてデータが更新された部分の位置を、ユーザに明瞭に示すことができる。ユーザは、測定された合成スペクトルにおいてどの部分がデータ更新されているのかを容易に判別することができる。
【0019】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記基準位置で前記被測定光の基準スペクトルを測定する第2処理に切り替えてもよい。これにより、測定装置は、局所ピークを示さない基準スペクトルに基づいて被測定光の光スペクトルデータを取得可能である。
【0020】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記基準位置で前記被測定光の基準スペクトルを測定する第2処理及び前記第1処理のいずれかを、ユーザの選択入力に応じて切り替えて実行してもよい。これにより、測定装置は、合成スペクトルによりダイナミックレンジを向上させるか、又は基準スペクトルによりダイナミックレンジが低下しても測定時間を短縮させるかをユーザに選択可能にさせる。ユーザは、ダイナミックレンジよりも測定時間の短縮を目的とする場合には、測定装置に基準スペクトルのデータを取得させ、ダイナミックレンジの向上を目的とする場合には、測定装置に合成スペクトルのデータを取得させることも可能となる。したがって、測定装置の利便性が向上する。
【0021】
一実施形態における測定装置では、前記基準位置は、前記開口部における前記所定方向の中心位置を含んでもよい。これにより、測定装置は、合成スペクトルについて波形の左右対称性を向上させることが可能である。
【0022】
一実施形態における測定装置では、前記所定方向は、前記開口部の短手方向を含んでもよい。これにより、測定装置は、当該短手方向に沿ってビームスポットの周辺に混在する迷光を光学素子により除去可能である。測定装置は、このような短手方向に混在する迷光による合成スペクトルへの影響を抑制可能である。
【0023】
一実施形態における測定装置では、前記基準位置から前記第1位置までの第1距離と前記基準位置から前記第2位置までの第2距離とは、互いに同一であってもよい。これにより、測定装置は、合成スペクトルについて波形の左右対称性を向上させることが可能である。
【0024】
一実施形態における測定装置では、前記第1位置は、前記ビームスポットの前記一方側の第1端部が前記開口部の第1縁に当たるときの前記ビームスポットの中心位置を含んでもよい。これにより、測定装置は、ビームスポットに対して所定方向の一方側に混在する迷光を、開口部を有する光学素子により最も多く除去することが可能となる。
【0025】
一実施形態における測定装置では、前記第2位置は、前記ビームスポットの前記他方側の第2端部が前記開口部の第2縁に当たるときの前記ビームスポットの中心位置を含んでもよい。これにより、測定装置は、ビームスポットに対して所定方向の他方側に混在する迷光を、開口部を有する光学素子により最も多く除去することが可能となる。
【0026】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、被測定光を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器を備える測定装置により実行される測定方法であって、前記被測定光のビームスポットが前記開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトル及び第2位置にあるときの第2スペクトルを少なくとも合成して狭窄化した前記被測定光の合成スペクトルを生成する第1処理を実行するステップを含み、前記第1位置は、前記ビームスポットの前記開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含み、前記第2位置は、前記基準位置から他方側にずれた位置を含む。
【0027】
これにより、測定装置は、被測定光の合成スペクトルに対してダイナミックレンジを向上させることが可能である。測定装置は、第1スペクトル及び第2スペクトルを少なくとも合成して合成スペクトルを生成する第1処理を実行する。これにより、測定装置は、スリット幅が理想的なスポットサイズと同一になるような場合と同様に、広いダイナミックレンジでシャープな合成スペクトルのデータを取得することができる。
【0028】
幾つかの実施形態に係るプログラムは、被測定光を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器を備える測定装置に、前記被測定光のビームスポットが前記開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトル及び第2位置にあるときの第2スペクトルを少なくとも合成して狭窄化した前記被測定光の合成スペクトルを生成する第1処理を実行するステップを含む動作を実行させ、前記第1位置は、前記ビームスポットの前記開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含み、前記第2位置は、前記基準位置から他方側にずれた位置を含む。
【0029】
これにより、測定装置は、被測定光の合成スペクトルに対してダイナミックレンジを向上させることが可能である。測定装置は、第1スペクトル及び第2スペクトルを少なくとも合成して合成スペクトルを生成する第1処理を実行する。これにより、測定装置は、スリット幅が理想的なスポットサイズと同一になるような場合と同様に、広いダイナミックレンジでシャープな合成スペクトルのデータを取得することができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、被測定光の測定スペクトルに対してダイナミックレンジを向上させることが可能な測定装置、測定方法、及びプログラムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の一実施形態に係る測定装置が有する分光器の構成の一例を示す模式図である。
図2】本開示の一実施形態に係る測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図2の測定装置の動作の第1例を説明するフローチャートである。
図4図2の測定装置の動作の一例を説明するための第1図である。
図5A図2の測定装置の動作の一例を説明するための第2図である。
図5B図2の測定装置の動作の一例を説明するための第3図である。
図5C図2の測定装置の動作の一例を説明するための第4図である。
図5D図2の測定装置の動作の一例を説明するための第5図である。
図6図2の測定装置の動作の一例を説明するための第6図である。
図7図2の測定装置の動作の一例を説明するための第7図である。
図8A図2の測定装置の動作の一例を説明するための第8図である。
図8B図2の測定装置の動作の一例を説明するための第9図である。
図8C図2の測定装置の動作の一例を説明するための第10図である。
図8D図2の測定装置の動作の一例を説明するための第11図である。
図9図2の測定装置の動作の第2例を説明するフローチャートである。
図10A図2の測定装置の動作の一例を説明するための第12図である。
図10B図2の測定装置の動作の一例を説明するための第13図である。
図11】従来技術の問題点を説明するための第1図である。
図12】従来技術の問題点を説明するための第2図である。
図13】従来技術の問題点を説明するための第3図である。
図14】従来技術の問題点を説明するための第4図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0033】
特許文献1にも一例として開示されているように、モノクロメータなどの分光器の性能を表す分解能及びダイナミックレンジについて、高い分解能及び広いダイナミックレンジを得るために、マルチパス方式の分光器が知られている。マルチパス方式の分光器は、被測定光を回折格子に複数回入射させると共に複数のスリットを通過させる。
【0034】
特許文献1に記載のマルチパス方式の分光器は、差分散方式に基づく。差分散方式の分光器は、光入射手段から第1スリットまでの第1分光経路と、第1スリットから第2スリットまでの第2分光経路とを有する。当該分光器では、被測定光は、第1分光経路及び第2分光経路の順に通過する。
【0035】
このような構成を有するマルチパス方式の分光器によれば、第1分光経路により被測定光が分散分光され、第1分光経路により分散分光された被測定光が第2分光経路にて第2スリット上に結像し第2スリットを通過する。このとき、第2スリットの開口部に結像した被測定光のビームスポットの周辺には、分光器内部で発生した被測定光の散乱光及びその他の迷光が混在する。このような迷光は、被測定光の測定スペクトルにおいてシャープさを低減させ、ダイナミックレンジの低下を招く。
【0036】
一例として、第2スリットは、このような迷光を遮って除去し、迷光が光検出器へ入射しないようにする。したがって、被測定光の光路に2段の光学フィルタを直列に配置した場合と同様の効果が得られ、高い分解能及び広いダイナミックレンジが得られる。以上のように、第2スリットは、被測定光の測定スペクトルをシャープにしてダイナミックレンジを向上させる機能を有する。
【0037】
図11は、従来技術の問題点を説明するための第1図である。図11は、第2スリットにおける被測定光のビームスポットのスポットサイズと開口部として形成されているスリットのスリット幅との関係性を説明するための図である。
【0038】
第2スリットは、開口部の周辺部を構成するスリット板101と、スリット板101において開口部として形成されているスリット102と、を有する。スリット102は、ビームスポットとして構成される被測定光を通過させる。スリット板101のスリット102に結像したビームスポット103に関連して、スリット102のスリット幅をwと表記し、ビームスポット103のスポットサイズをsと表記する。
【0039】
従来の分光器を用いて被測定光の光スペクトルを測定するときの処理の流れについて説明する。分光器を用いて測定が開始されると、ビームスポット103に対しスリット102の位置を調整するためにモータが制御され、ビームスポット103がスリット102の中心位置に配置されるように、第2スリットの位置が調整される。例えば、分光器を有する測定装置が持ち運びされると、分光器が有するミラー及びレンズなどの光学素子のアライメントがずれて、ビームスポット103の位置が若干ずれたりする。このようなずれを解消して、ビームスポット103をスリット102の中心位置に配置するために、第2スリットにモータが取り付けられている。
【0040】
分光器の回折格子を回転させて被測定光に対し波長掃引が行われることで、被測定光の測定スペクトルS(i)のデータが取得される。これにより、分光器を用いた測定が終了する。上述した処理に基づき第2スリットの位置が中心に調整されることで、被測定光の測定スペクトルについて波形の左右対称性が向上する。
【0041】
図12は、従来技術の問題点を説明するための第2図である。図12は、従来技術を用いて測定した被測定光の光スペクトルの一例を示す。被測定光として、単一縦モードのレーザー光である波長1523nmのHeNeレーザー光が用いられている。図12のグラフにおいて、横軸が波長、縦軸が光の強度、すなわち被測定光の測定スペクトルの強度を表す。
【0042】
図13は、従来技術の問題点を説明するための第3図である。図13は、スリット幅wが互いに異なる複数の第2スリットを用意したときの、スリット幅wとスポットサイズsとの関係性を表す。図13に示される例では、スポットサイズsは10μmである。スリット幅wは、(a)12μm、(b)10μm、(c)8μmである。
【0043】
図14は、従来技術の問題点を説明するための第4図である。図14は、図13で説明した、スリット幅wが互いに異なる複数の第2スリットを用いてそれぞれ測定した被測定光の光スペクトルのデータを示す。
【0044】
図13の(a)に示される例のようにスリット幅wがスポットサイズsよりも広い場合、図14において実線のグラフで示されるように、迷光が混在して測定スペクトルが幅広となっている。被測定光の測定スペクトルにおいてシャープさが低減し、ダイナミックレンジが低下している。図13の(b)に示される例を参照すると、スリット幅wがスポットサイズsと同一である場合、図14において点線のグラフで示されるように、実線のグラフと比較して、ダイナミックレンジが広くシャープな測定スペクトルが得られている。これは、スリット幅wが狭いことで、ビームスポット103の周辺に混在する迷光が除去されるためである。
【0045】
一方で、図13の(c)に示される例のようにスリット幅wがスポットサイズsよりも狭い場合、スリット102が狭すぎるため、本来であればスリット102を通過すべき分散分光された被測定光の一部が第2スリットにより遮られてしまう。その結果、図14において破線のグラフで示されるように、測定した光スペクトルのデータにおいて光の強度が低下し、そのピーク強度が低下する。
【0046】
以上のように、第2スリットなどのスリットにより迷光を除去する場合、スリット幅wが狭い方が広い場合に比べて迷光をより除去し、ダイナミックレンジがより広いシャープな測定スペクトルが得られる。したがって、シャープな測定スペクトルを得るという観点では、スリット幅wは狭く設定するのが望ましい。しかしながら、スリット幅wがスポットサイズsよりも狭くなると、スリットを通過すべき被測定光の一部が遮られてしまい、測定スペクトルの強度が低下する。
【0047】
したがって、スリット幅wをスポットサイズsと同一とすることが、強度低下がなく、かつ、ダイナミックレンジが広いシャープな測定スペクトルを得られる条件となる。
【0048】
一般的に、分光器を構成する光学部品の性能ばらつきなどにより光学的な収差が発生し、実際の光学系ではスポットサイズsは理想的なサイズよりも若干大きくなる。分光器の量産時には、個々の分光器でスポットサイズsが若干ばらつく。したがって、スポットサイズsのばらつきの発生に対処するために、スリット幅wは、理想的なスポットサイズsに対して設定される値よりも若干大きな値に設定する必要がある。このようにスリット幅wを多少広くする必要があるため、結果的に、被測定光の測定スペクトルのシャープさが低減するという問題があった。
【0049】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、被測定光の測定スペクトルに対してダイナミックレンジを向上させることが可能な測定装置、測定方法、及びプログラムを提供することを目的とする。例えば、本開示は、スリット幅wを理想的なスポットサイズsに比べて多少広くする必要がある場合でも、スリット幅wが理想的なスポットサイズsと同一になるような場合と同様に、広いダイナミックレンジでシャープな測定スペクトルを得られるようにすることを目的とする。
【0050】
以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0051】
図1は、本開示の一実施形態に係る測定装置1が有する分光器10の構成の一例を示す模式図である。図1を参照しながら、測定装置1が有する分光器10の構成及び機能の一例について主に説明する。
【0052】
一実施形態に係る分光器10は、例えば光ファイバなどの導光部品2から出射して分光器10に入射した被測定光L1を分光する。分光器10は、回折格子11と、複数の分光系Sと、少なくとも1つの折り返し光学系Tと、を有する。一実施形態に係る分光器10は、2つの分光系Sと、1つの折り返し光学系Tと、を有する。以下では、2つの分光系Sを互いに区別する場合には、第1分光系S1及び第2分光系S2と表記する。
【0053】
回折格子11は、一定間隔で平行に延在している複数の刻線Cを有する反射板である。回折格子11は、回折格子11に入射する光を分散分光してその回折光を戻り光として出射させる。回折格子11は、任意の駆動機構により、刻線Cの延在方向Yと平行に延在する回折格子11の中央部の回転軸Rを中心にして回動可能である。回折格子11は、入射する光に対する刻線Cの見かけ上の間隔を任意に変更可能である。
【0054】
複数の分光系Sは、分光系Sに入射した光を平行光化するコリメータ12をそれぞれ有する。コリメータ12は、コリメータ12によって平行光化されて回折格子11に入射した光の回折格子11からの戻り光を集光する。コリメータ12は、分光系Sの入射側と回折格子11との間に配置されている。コリメータ12は、例えばコリメーションレンズを含む。
【0055】
複数の分光系Sは、コリメータ12によって平行光化されて回折格子11に入射した光の回折格子11からの戻り光が焦点を結ぶ位置に配置され、戻り光の少なくとも一部を通過させる光学素子13をそれぞれ有する。例えば、光学素子13は、回折格子11からの戻り光がコリメータ12によって焦点を結ぶ位置に配置されている。光学素子13は、例えばスリット、ピンホール、及びアパーチャなどの任意の光学素子を含む。
【0056】
第1分光系S1は、刻線Cの延在方向Yにおいて最も導光部品2側に配置されている。すなわち、第1分光系S1は、導光部品2から出射して分光器10に入射した被測定光L1を、複数の分光系Sの中で最初に通過させる。第1分光系S1は、第1コリメータ121と、第1光学素子131と、を有する。加えて、第1分光系S1は、導光部品2を出射した直後の被測定光L1の光路部分から、第1光学素子131までの光路を含む。
【0057】
導光部品2から出射して拡散しながら第1分光系S1に入射した被測定光L1は、第1コリメータ121によって平行光となる。第1コリメータ121によって平行光となった被測定光L1は、回折格子11に入射する。このとき、回折格子11からの戻り光として、回折光L2が、回折格子11に入射した被測定光L1に基づき発生する。回折光L2は、第1コリメータ121を通過して、第1光学素子131が配置されている位置において焦点を結ぶ。回折光L2の少なくとも一部は、第1光学素子131を通過する。
【0058】
第2分光系S2は、刻線Cの延在方向Yにおいて第1分光系S1よりも導光部品2の反対側に配置されている。第2分光系S2は、第1分光系S1及び折り返し光学系Tから出射した光L3を通過させる。第2分光系S2は、第2コリメータ122と、第2光学素子132と、を有する。加えて、第2分光系S2は、折り返し光学系Tを出射した直後の光L3の光路部分から、第2光学素子132までの光路を含む。
【0059】
第2分光系S2に入射した光L3は、第2コリメータ122によって平行光となる。第2コリメータ122によって平行光となった光L3は、回折格子11に入射する。このとき、回折格子11からの戻り光として、回折光L4が、回折格子11に入射した光L3に基づき発生する。回折光L4は、第2コリメータ122を通過して、第2光学素子132が配置されている位置において焦点を結ぶ。回折光L4の少なくとも一部は、第2光学素子132を通過する。
【0060】
折り返し光学系Tは、隣り合う2つの分光系Sのうちの一の分光系Sにおいて発生した戻り光を、他の分光系Sに向けて折り返すように導く。折り返し光学系Tは、一の分光系Sにおいて発生した戻り光を平行光化する第1レンズ14と、第1レンズ14によって平行光化された戻り光を他の分光系Sのコリメータ12との間で集光する第2レンズ15と、を有する。
【0061】
例えば、折り返し光学系Tは、隣り合う第1分光系S1及び第2分光系S2のうちの第1分光系S1において発生した回折光L2を、第2分光系S2に向けて折り返すように導く。折り返し光学系Tでは、例えば、第1レンズ14、第1ミラー16、第2ミラー17、及び第2レンズ15が回折光L2の入射側から出射側に向けて順番に配置されている。
【0062】
第1レンズ14は、第1分光系S1において発生した回折光L2を平行光化する。第1レンズ14は、第1分光系S1が有する第1光学素子131を、第1分光系S1が有する第1コリメータ121と共に挟むように配置されている。第1ミラー16は、第1レンズ14によって平行光化された回折光L2を回折格子11の刻線Cの延在方向Yに向けて反射させる。第2ミラー17は、第1ミラー16で反射した回折光L2を回折格子11に向けて反射させ、第2レンズ15まで導く。第2レンズ15は、第1レンズ14によって平行光化された回折光L2を第2分光系S2の第2コリメータ122と第2レンズ15との間で集光する。
【0063】
回折光L2は、第1分光系S1の第1光学素子131が配置されている位置において一度焦点を結んだ後、拡散しながら第1レンズ14に入射する。回折光L2は、第1レンズ14によって平行光となり、平行光のまま第1ミラー16及び第2ミラー17で反射する。回折光L2は、第2レンズ15に入射して、第2分光系S2の第2コリメータ122と第2レンズ15との間で焦点を結ぶ。
【0064】
以上のような分光器10において、第1光学素子131は、回折格子11により分散分光された被測定光L1の少なくとも一部を通過させて波長選択の機能を実現する。一方で、第2光学素子132は、第2光学素子132に形成されている開口部に結像した回折光L4のビームスポットの周辺に混在する迷光を遮って除去し、迷光が光検出器へ入射しないようにする。第2光学素子132は、迷光を遮って、被測定光L1の測定スペクトルをシャープにし、ダイナミックレンジを向上させる機能を有する。
【0065】
以下では、例えば、第2光学素子132のように、最終的に回折光L4となった被測定光L1を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器10に対し、当該光学素子を用いて測定装置1による演算処理により被測定光L1の測定スペクトルのダイナミックレンジをさらに向上させる方法について主に説明する。
【0066】
図2は、本開示の一実施形態に係る測定装置1の構成の一例を示すブロック図である。図2を参照しながら、図1に示されるような分光器10を有する測定装置1の構成及び機能の一例について主に説明する。
【0067】
測定装置1は、光スペクトラムアナライザなどを含む。測定装置1は、レーザー発振器などから出射したレーザー光を被測定光L1として分析する装置である。より具体的には、測定装置1は、被測定光L1の波長を分析する。
【0068】
測定装置1は、図1に示されるような分光器10に加えて、光検出器20と、増幅器30と、A/D変換器40と、記憶部50と、入力部60と、出力部70と、制御部80と、を有する。分光器10は、例えば、光ファイバなどを介して入射してくる、レーザー光などの被測定光L1を受け入れて被測定光L1を分散分光する。分光器10は、被測定光L1に含まれる所望の波長成分の光を取り出して出力する。
【0069】
光検出器20は、フォトダイオードなどの受光素子を含む任意の検出器を含む。光検出器20は、受光面が分光器10と対向するように配置され、分光器10により受け入れられた被測定光L1を受光する。光検出器20は、分光器10から出射した光を受光して電気信号に変換し出力する。光検出器20によって受光可能な波長帯域は、被測定光L1が有する波長帯域を含む。光検出器20は、被測定光L1の波長で検出感度を有する。
【0070】
増幅器30は、光検出器20から出力された受光信号を増幅するアンプなどを含む。増幅器30は、光検出器20から出力された電気信号としての受光信号を増幅してA/D変換器40に出力する。
【0071】
A/D変換器40は、増幅器30によって増幅された、光検出器20からの受光信号を取得して、アナログ信号からデジタル信号へと変換する。A/D変換器40は、変換されたデジタル信号を、制御部80が接続されたバスに測定データとして出力する。
【0072】
記憶部50は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などの記憶装置を含む。記憶部50は、測定装置1の動作を実現するために必要な情報を記憶する。記憶部50は、測定装置1の動作によって得られた情報を記憶する。例えば、記憶部50は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び通信などの任意の手段で取得される各種データなどを記憶する。
【0073】
記憶部50は、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部50は、測定装置1に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートなどによって接続されている外付け型の記憶装置を含んでもよい。
【0074】
入力部60は、ユーザ入力を検出して、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。当該入力インタフェースは、物理キー、静電容量キー、出力部70のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、カメラなどの撮像モジュール、及び音声入力を受け付けるマイクロフォンなどを含む。
【0075】
出力部70は、情報を出力してユーザに通知する1つ以上の出力インタフェースを含む。当該出力インタフェースは、情報を画像で出力するディスプレイ、情報を音で出力するスピーカ、及び情報を振動で出力するバイブレータなどを含む。ディスプレイは、LCD(Liquid Crystal Display)及び有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどを含む。
【0076】
制御部80は、1つ以上のプロセッサを含む。本開示において、「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含む。制御部80は、測定装置1を構成する各構成部と通信可能に接続され、測定装置1全体の動作を制御する。制御部80は、取得された測定データに対して所定の演算処理を実行することで光スペクトルデータを取得し、出力部70に表示させる。
【0077】
図3は、図2の測定装置1の動作の第1例を説明するフローチャートである。図3を参照しながら、図2の測定装置1により実行される測定方法の第1例について主に説明する。測定装置1は、被測定光L1を通過させる開口部が形成されている、第2光学素子132のような光学素子を有する分光器10を有する。以下では、一例として、分光器10の第2光学素子132を特許請求の範囲に記載の「光学素子」に対応させて測定方法の説明を行う。
【0078】
ステップS101では、測定装置1の制御部80は、前処理を実行する。本開示において、「前処理」は、例えば、ステップS102の処理に必要となる第1位置及びステップS104の処理に必要となる第2位置の少なくとも一方を、第1処理の実行前に測定により予め決定する処理を含む。図3に示す例では、第1処理は、例えば、ステップS102からステップS106までの一連の処理を含む。
【0079】
ステップS102では、測定装置1の制御部80は、被測定光L1のビームスポットが光学素子に形成されている開口部内で第1位置に配置されるように光学素子の位置を調整する。例えば、制御部80は、光学素子に取り付けられているモータなどの駆動機構を制御して被測定光L1のビームスポットに対し光学素子を移動させることで、ビームスポットの位置を開口部内での第1位置に調整する。
【0080】
本開示において、「第1位置」は、例えば、ビームスポットの開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含む。「基準位置」は、例えば、光学素子に形成されている開口部における所定方向の中心位置を含む。「所定方向」は、例えば、光学素子に形成されている開口部の短手方向を含む。
【0081】
ステップS103では、測定装置1の制御部80は、被測定光L1のビームスポットが光学素子に形成されている開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトルを測定する。制御部80は、分光器10が有する回折格子11を回転軸R周りに回転させて波長掃引することで第1スペクトルのデータを取得する。
【0082】
ステップS104では、測定装置1の制御部80は、被測定光L1のビームスポットが光学素子に形成されている開口部内で第2位置に配置されるように光学素子の位置を調整する。例えば、制御部80は、光学素子に取り付けられているモータなどの駆動機構を制御して被測定光L1のビームスポットに対し光学素子を移動させることで、ビームスポットの位置を開口部内での第2位置に調整する。
【0083】
本開示において、「第2位置」は、例えば、ビームスポットの開口部内での基準位置から所定方向の他方側にずれた位置を含む。
【0084】
ステップS105では、測定装置1の制御部80は、被測定光L1のビームスポットが光学素子に形成されている開口部内で第2位置にあるときの第2スペクトルを測定する。制御部80は、分光器10が有する回折格子11を回転軸R周りに回転させて波長掃引することで第2スペクトルのデータを取得する。
【0085】
ステップS106では、測定装置1の制御部80は、ステップS103において測定された第1スペクトル及びステップS105において測定された第2スペクトルを合成して狭窄化した被測定光L1の合成スペクトルを生成する。合成スペクトルは、第1スペクトル及び第2スペクトルの各々に対して狭窄化されたものである。制御部80は、第1スペクトル及び第2スペクトルを合成して狭窄化した合成スペクトルのデータを取得する。
【0086】
図4は、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第1図である。図4は、光学素子に形成されている開口部132a内の被測定光L1のビームスポットPの位置と、開口部132aの位置との間の相対関係を示す。図4の(a)は、図3のフローチャートのステップS102における第1位置x1を示す図である。図4の(b)は、図3のフローチャートのステップS104における第2位置x2を示す図である。図4において、Δxは、光学素子の位置をずらした量を示す。
【0087】
例えば、図4の(a)に示されるように、制御部80は、被測定光L1のビームスポットPに対し光学素子を所定方向Dの他方側、すなわち左側に移動させて、開口部132aの位置をΔxだけずらす。その結果、開口部132a内でのビームスポットPの位置は、所定方向Dの中心位置である基準位置x0から、所定方向Dの一方側、すなわち右側にずれた第1位置x1へと相対的に変位する。第1位置x1は、一例として、ビームスポットPにおける所定方向Dの一方側の第1端部E1が開口部132aの第1縁M1に当たるときのビームスポットPの中心位置を含む。
【0088】
例えば、図4の(b)に示されるように、制御部80は、被測定光L1のビームスポットPに対し光学素子を所定方向Dの一方側、すなわち右側に移動させて、開口部132aの位置をΔxだけずらす。その結果、開口部132a内でのビームスポットPの位置は、所定方向Dの中心位置である基準位置x0から、所定方向Dの他方側、すなわち左側にずれた第2位置x2へと相対的に変位する。第2位置x2は、一例として、ビームスポットPにおける所定方向Dの他方側の第2端部E2が開口部132aの第2縁M2に当たるときのビームスポットPの中心位置を含む。
【0089】
図4に示されるように、制御部80は、被測定光L1のビームスポットPに対し光学素子を所定方向Dに沿って一方側及び他方側の両側にそれぞれ同一の移動量Δxだけずらす。したがって、基準位置x0から第1位置x1までの第1距離と基準位置x0から第2位置x2までの第2距離とは、いずれも移動量Δxに相当し、互いに同一である。
【0090】
制御部80は、例えば、第1位置x1及び第2位置x2を、第1処理の実行前に測定により予め決定する。制御部80は、開口部132aの位置をずらすための移動量Δxを、光学素子を動かしても開口部132aの周辺部がビームスポットPに重ならない位置に配置されるように予め算出する。
【0091】
例えば、所定方向Dに沿った開口部132aの幅が14μmであり、ビームスポットPのサイズが円の直径で10μmである場合、ビームスポットPのサイズよりも開口部132aの幅が4μm大きい。したがって、開口部132aの位置を所定方向Dの一方側及び他方側にそれぞれ±2μm移動させても、ビームスポットPが光学素子により遮られない。したがって、被測定光L1の通過が阻まれず、被測定光L1の合成スペクトルデータのピーク強度も低下しない。この場合、制御部80は、Δx=2μmと設定することも可能である。
【0092】
制御部80は、例えば、第1処理の実行を開始する前に、最適なΔxを算出する処理を光スペクトルの強度を測定しながら実行する。制御部80は、図3のフローチャートのステップS101における前処理で、ビームスポットPの開口部132a内での位置を基準位置x0から所定方向Dの一方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第1距離範囲を算出する。制御部80は、算出された第1距離範囲に基づいて第1位置x1を決定する。
【0093】
Δxは、開口部132aを移動させても被測定光L1の光スペクトルの強度が低下しない範囲内で決定される必要がある。したがって、制御部80は、例えば、Δxを0μm、1μm、2μm・・・のように、所定方向Dの一方側に所定距離1μmずつ徐々に変化させながら、任意の光の光スペクトルを測定し、ピーク強度が低下しないΔxの範囲を第1距離範囲として算出する。一例として、制御部80は、0μm<Δx≦2μmを第1距離範囲として算出する。制御部80は、算出された第1距離範囲のうち最も大きい値である2μmをΔxとして算出し、第1位置x1を決定する。
【0094】
同様に、制御部80は、前処理において、ビームスポットPの開口部132a内での位置を基準位置x0から所定方向Dの他方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第2距離範囲を算出する。制御部80は、算出された第2距離範囲に基づいて第2位置x2を決定する。
【0095】
制御部80は、例えば、Δxを0μm、1μm、2μm・・・のように、所定方向Dの他方側に所定距離1μmずつ徐々に変化させながら、任意の光の光スペクトルを測定し、ピーク強度が低下しないΔxの範囲を第2距離範囲として算出する。一例として、制御部80は、0μm<Δx≦2μmを第2距離範囲として算出する。制御部80は、算出された第2距離範囲のうち最も大きい値である2μmをΔxとして算出し、第2位置x2を決定する。
【0096】
以下では、図5A乃至図5Dを参照しながら、従来技術を示す図13と同様に被測定光L1として単一縦モードのレーザー光である波長1523nmのHeNeレーザー光が用いられたときの例について説明する。
【0097】
図5Aは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第2図である。図5Aは、図3のフローチャートのステップS103において測定された被測定光L1の第1スペクトルS1(i)の一例を示す。iは、サンプリングされた測定点の番号を示す。図5Aにおいて、横軸は、各測定点iにおける波長を示す。縦軸は、各測定点iにおける光強度を示す。以下の各図におけるグラフについても同様である。
【0098】
制御部80は、分光器10が有する回折格子11を回転させて波長掃引し、第1スペクトルS1(i)のデータを取得する。第1スペクトルS1(i)は、図5Aに示されるように、波形が左右非対称となる。図12に示される、従来技術に基づき測定された被測定光の測定スペクトルS(i)と比較すると、第1スペクトルS1(i)は、ピークの短波長側ではダイナミックレンジが広くシャープになるが、長波長側ではダイナミックレンジが低下して幅広になる。
【0099】
これは、開口部132aの位置を他方側に移動量Δxでずらしたことに起因する。ビームスポットPの一方側では、スリット幅wを狭くしたときと同様の効果が得られ、ダイナミックレンジが向上する。一方で、ビームスポットPの他方側では、スリット幅wを広くしたときと同様の効果が得られ、ダイナミックレンジが低下する。
【0100】
図5Bは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第3図である。図5Bは、図3のフローチャートのステップS105において測定された被測定光L1の第2スペクトルS2(i)の一例を示す。
【0101】
制御部80は、分光器10が有する回折格子11を回転させて波長掃引し、第2スペクトルS2(i)のデータを取得する。第2スペクトルS2(i)は、図5Bに示されるように、波形が左右非対称となる。図12に示される、従来技術に基づき測定された被測定光の測定スペクトルS(i)と比較すると、第2スペクトルS2(i)は、ピークの短波長側ではダイナミックレンジが低下して幅広になるが、長波長側ではダイナミックレンジが広くシャープになる。
【0102】
これは、開口部132aの位置を一方側に移動量Δxでずらしたことに起因する。ビームスポットPの他方側では、スリット幅wを狭くしたときと同様の効果が得られ、ダイナミックレンジが向上する。一方で、ビームスポットPの一方側では、スリット幅wを広くしたときと同様の効果が得られ、ダイナミックレンジが低下する。
【0103】
図5Cは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第4図である。図5Cは、図3のフローチャートのステップS106における合成処理の様子を概念的に示す。
【0104】
制御部80は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)を合成し、被測定光L1の合成スペクトルを測定結果として生成する。このとき、制御部80は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)のうち各測定点iでより低い強度を有するスペクトルを用いて合成スペクトルを生成する。
【0105】
例えば、光スペクトルのピークの短波長側では、第1スペクトルS1(i)の強度が第2スペクトルS2(i)の強度よりも低くなり、第1スペクトルS1(i)が用いられる傾向にある。逆に、光スペクトルのピークの長波長側では、第2スペクトルS2(i)の強度が第1スペクトルS1(i)の強度よりも低くなり、第2スペクトルS2(i)が用いられる傾向にある。
【0106】
図5Dは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第5図である。図5Dは、図3のフローチャートのステップS106における合成処理に基づき得られた被測定光L1の合成スペクトルSr(i)と従来技術に基づく測定スペクトルS(i)とを比較して示す。
【0107】
図3のフローチャートに示す第1処理に基づいて、第1スペクトルS1(i)と第2スペクトルS2(i)とを合成した結果、合成スペクトルSr(i)が得られる。図5Dに示されるように、合成スペクトルSr(i)は、従来技術に基づく測定スペクトルS(i)と比較すると、ピーク近傍においてシャープになり、広いダイナミックレンジを示す。測定装置1の制御部80は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)に基づいて、ダイナミックレンジが広い合成スペクトルSr(i)のデータを取得する。
【0108】
以下では、図6を参照しながら、図5A乃至図5Dに示す例で用いられたレーザー光と異なる、外部共振器型の波長可変光源(TLS:Tunable Laser Source)から出射したレーザー光が被測定光L1として用いられたときの例について説明する。
【0109】
図6は、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第6図である。図6は、図3のフローチャートのステップS106における合成処理に基づき得られた被測定光L1の合成スペクトルSr(i)と従来技術に基づく測定スペクトルS(i)とを比較して示す。
【0110】
TLSから出射したレーザー光の光スペクトルは、強度の高い主モードのピークに加えて、その波長領域での両側に強度の低い複数のサイドモードのピークを有する。第1処理に基づき得られた合成スペクトルSr(i)は、従来技術に基づく測定スペクトルS(i)と比較すると、主モードのピーク近傍においてシャープになり、広いダイナミックレンジを示す。加えて、合成スペクトルSr(i)は、主モードのピークに対し短波長側に位置するサイドモードのピークに着目すると、従来技術に基づく測定スペクトルS(i)に比べて、サイドモードの山谷の形状をより鮮明に示す。
【0111】
図6に示す例からも理解されるように、一実施形態に係る測定方法に基づいて、従来技術による測定スペクトルS(i)よりもダイナミックレンジが広いシャープな合成スペクトルSr(i)のデータが得られている。
【0112】
制御部80は、図3のフローチャートに基づく以上のような処理に加えて、基準位置x0で被測定光L1の基準スペクトルを測定する第2処理及び上記の第1処理のいずれかを、入力部60を用いたユーザの選択入力に応じて切り替えて実行してもよい。被測定光L1の基準スペクトルは、例えば、ビームスポット103がスリット102の中心位置に配置されたときに測定された従来技術に基づく測定スペクトルS(i)に対応する。
【0113】
制御部80は、1回の波長掃引で測定される基準スペクトル及び2回の波長掃引で測定される合成スペクトルのいずれのデータを取得するかの切り替えを、入力部60を用いたユーザの入力操作に基づいて、ユーザが所望する測定時間に合わせて切り替え可能にしてもよい。制御部80は、従来技術に基づく測定処理及び一実施形態に係る測定方法に従った測定処理のいずれかをユーザの選択により実行するようにしてもよい。
【0114】
以下では、図7乃至図8Dを参照しながら、LD励起固体(DPSS:Diode Pumped Solid State)レーザーから出射したレーザー光が被測定光L1として用いられたときの例について説明する。
【0115】
図7は、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第7図である。図7は、DPSSレーザーからの被測定光L1の測定スペクトルS(i)を、従来技術に基づいて取得したときの測定例を示す。当該測定例では、測定スペクトルS(i)は、波長が異なる3つの大きなピークを示す。各ピークは、その裾において、隣接する他のピークとつながっており他のピークに近接する。
【0116】
図8Aは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第8図である。図8Aは、図5Aに対応し、図3のフローチャートのステップS103において測定された被測定光L1の第1スペクトルS1(i)の一例を示す。図8Aに示される第1スペクトルS1(i)についても、図5Aを用いて説明した上記の内容と同様の内容が当てはまる。
【0117】
図8Bは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第9図である。図8Bは、図5Bに対応し、図3のフローチャートのステップS105において測定された被測定光L1の第2スペクトルS2(i)の一例を示す。図8Bに示される第2スペクトルS2(i)についても、図5Bを用いて説明した上記の内容と同様の内容が当てはまる。
【0118】
図8Cは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第10図である。図8Cは、図5Cに対応し、図3のフローチャートのステップS106における合成処理の様子を概念的に示す。図8Cの例における合成処理についても、図5Cを用いて説明した上記の内容と同様の内容が当てはまる。
【0119】
図8Dは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第11図である。図8Dは、図5Dに対応し、図3のフローチャートのステップS106における合成処理に基づき得られた被測定光L1の合成スペクトルSr(i)と従来技術に基づく測定スペクトルS(i)とを比較して示す。
【0120】
図3のフローチャートに示す第1処理に基づいて、第1スペクトルS1(i)と第2スペクトルS2(i)とを合成した結果、合成スペクトルSr(i)が得られる。図8Dに示されるように、合成スペクトルSr(i)は、従来技術に基づく測定スペクトルS(i)と比較すると、ピーク近傍においてシャープになり、広いダイナミックレンジを示す。しかしながら、合成スペクトルSr(i)は、3つのピークそれぞれの谷間において、従来技術で測定された測定スペクトルS(i)には見られない局所ピークを示す。
【0121】
以上のように、ピークを1つのみ有する光スペクトルの測定時には、合成スペクトルSr(i)に局所ピークは発生しない。しかしながら、複数のピークが互いに隣接する光スペクトルの測定時には、合成スペクトルSr(i)に局所ピークが発生する場合もある。局所ピークは、測定対象となるDPSSレーザーからのレーザー光には本来含まれていないものである。したがって、局所ピークの発生は、測定データとして望ましくない。
【0122】
以下では、合成スペクトルSr(i)において発生する局所ピークに対処するための測定装置1の処理について主に説明する。
【0123】
図9は、図2の測定装置1の動作の第2例を説明するフローチャートである。図9を参照しながら、図2の測定装置1により実行される測定方法の第2例について主に説明する。図9のステップS201乃至ステップS206における処理内容は、図3のステップS101乃至ステップS106における処理内容とそれぞれ同一である。図9に示す例では、第1処理は、例えば、ステップS202からステップS210までの一連の処理を含む。
【0124】
ステップS207では、測定装置1の制御部80は、ステップS206において第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)を合成したときに合成スペクトルSr(i)において互いに隣接する一対のピークの間に局所ピークが発生しているか否かを判定する。制御部80は、局所ピークが発生していると判定するとステップS208の処理を実行する。制御部80は、局所ピークが発生していないと判定すると処理を終了する。
【0125】
ステップS208では、測定装置1の制御部80は、ステップS207において局所ピークが発生していると判定すると、被測定光L1のビームスポットPが光学素子に形成されている開口部132a内で基準位置x0に配置されるように光学素子の位置を調整する。例えば、制御部80は、光学素子に取り付けられているモータなどの駆動機構を制御して被測定光L1のビームスポットPに対し光学素子を移動させることで、ビームスポットPの開口部132a内での位置を基準位置x0に調整する。
【0126】
ステップS209では、測定装置1の制御部80は、被測定光L1のビームスポットPが光学素子に形成されている開口部132a内で基準位置x0にあるときの第3スペクトルを測定する。制御部80は、分光器10が有する回折格子11を回転軸R周りに回転させて波長掃引することで第3スペクトルのデータを取得する。
【0127】
ステップS210では、測定装置1の制御部80は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)に加え、ステップS209において測定された第3スペクトルも合成して被測定光L1の合成スペクトルSr(i)を生成する。制御部80は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)に加え、第3スペクトルも合成した被測定光L1の合成スペクトルSr(i)のデータを取得する。
【0128】
図10Aは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第12図である。図10Aは、図9のフローチャートのステップS210における合成処理の様子を概念的に示す。
【0129】
制御部80は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)に加えて、第3スペクトルS3(i)を合成し、被測定光L1の合成スペクトルSr(i)を測定結果として生成する。このとき、制御部80は、第1スペクトルS1(i)、第2スペクトルS2(i)、及び第3スペクトルS3(i)のうち各測定点iで最低となる強度を有するスペクトルを用いて合成スペクトルSr(i)を生成する。
【0130】
例えば、光スペクトルのピークの短波長側では、第1スペクトルS1(i)の強度が最も低くなり、第1スペクトルS1(i)が用いられる傾向にある。逆に、光スペクトルのピークの長波長側では、第2スペクトルS2(i)の強度が最も低くなり、第2スペクトルS2(i)が用いられる傾向にある。局所ピークに対応する波長領域では、第3スペクトルS3(i)の強度が最も低くなり、第3スペクトルS3(i)が用いられる傾向にある。
【0131】
図10Bは、図2の測定装置1の動作の一例を説明するための第13図である。図10Bは、図9のフローチャートのステップS210における合成処理に基づき得られた被測定光L1の合成スペクトルSr(i)と従来技術に基づく測定スペクトルS(i)とを比較して示す。
【0132】
図9のフローチャートに示す第1処理に基づいて、第1スペクトルS1(i)、第2スペクトルS2(i)、及び第3スペクトルS3(i)を合成した結果、合成スペクトルSr(i)が得られる。図10Bに示されるように、合成スペクトルSr(i)は、従来技術に基づく測定スペクトルS(i)と比較すると、ピーク近傍においてシャープになり、広いダイナミックレンジを示す。加えて、合成スペクトルSr(i)では、図8Dに示されるような局所ピークが軽減されている。
【0133】
以上のような一実施形態に係る測定装置1によれば、被測定光L1の合成スペクトルSr(i)に対してダイナミックレンジを向上させることが可能である。測定装置1は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)を少なくとも合成して合成スペクトルSr(i)を生成する第1処理を実行する。これにより、測定装置1は、スリット幅wが理想的なスポットサイズsと同一になるような場合と同様に、広いダイナミックレンジでシャープな合成スペクトルSr(i)のデータを取得することができる。
【0134】
加えて、測定装置1は、光学素子に形成されている開口部132aのサイズを変更しなくても、測定処理を工夫することで、ダイナミックレンジを向上させることが可能である。これにより、既に市場に出荷済みの光スペクトラムアナライザに対しても、ハードウェアを変更することなく、ファームウェアの更新によりダイナミックレンジを向上させることも可能である。
【0135】
測定装置1は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)のうち各測定点iでより低い強度を有するスペクトルを用いて合成スペクトルSr(i)を生成する。これにより、測定装置1は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)の各々に対して狭窄化された合成スペクトルSr(i)を生成可能である。
【0136】
測定装置1は、第1位置x1及び第2位置x2の少なくとも一方を、第1処理の実行前に測定により予め決定する前処理を実行する。これにより、測定装置1は、第1処理における第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)の測定を精度良く実行することができる。
【0137】
測定装置1は、前処理において、ビームスポットPの位置を基準位置x0から一方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第1距離範囲を算出し、第1距離範囲に基づいて第1位置x1を決定する。これにより、測定装置1は、第1位置x1を精度良く決定することができる。
【0138】
測定装置1は、前処理において、ビームスポットPの位置を基準位置x0から他方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第2距離範囲を算出し、第2距離範囲に基づいて第2位置x2を決定する。これにより、測定装置1は、第2位置x2を精度良く決定することができる。
【0139】
測定装置1は、第1処理において、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)を合成したときに合成スペクトルSr(i)において互いに隣接する一対のピークの間に局所ピークが発生しているか否かを判定する。これにより、測定装置1は、測定対象となるレーザー光には本来含まれていないような、測定データとして望ましくない局所ピークに対処することも可能になる。例えば、測定装置1は、このような局所ピークを軽減するような演算処理を実行することも可能である。
【0140】
測定装置1は、局所ピークが発生していると判定すると、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)に加え、ビームスポットPが基準位置x0にあるときの第3スペクトルS3(i)も合成して合成スペクトルSr(i)を生成する。これにより、測定装置1は、局所ピークの発生を抑制しつつ、ダイナミックレンジが広いシャープな合成スペクトルSr(i)を生成することが可能である。
【0141】
測定装置1は、局所ピークが発生していないと判定すると、第3スペクトルS3(i)に関連する処理を省略することで、局所ピークが発生しないケースでは2回の波長掃引で合成スペクトルSr(i)を測定可能である。したがって、測定装置1は、測定時間を短縮することができる。
【0142】
測定装置1は、第1スペクトルS1(i)、第2スペクトルS2(i)、及び第3スペクトルS3(i)のうち各測定点iで最低となる強度を有するスペクトルを用いて合成スペクトルSr(i)を生成する。これにより、測定装置1は、局所ピークの発生を抑制しつつ、第1スペクトルS1(i)、第2スペクトルS2(i)、及び第3スペクトルS3(i)の各々に対して狭窄化された合成スペクトルSr(i)を生成可能である。
【0143】
測定装置1は、基準位置x0で被測定光L1の基準スペクトルを測定する第2処理及び第1処理のいずれかを、ユーザの選択入力に応じて切り替えて実行する。これにより、測定装置1は、合成スペクトルSr(i)によりダイナミックレンジを向上させるか、又は基準スペクトルによりダイナミックレンジが低下しても測定時間を短縮させるかをユーザに選択可能にさせる。ユーザは、ダイナミックレンジよりも測定時間の短縮を目的とする場合には、測定装置1に基準スペクトルのデータを取得させ、ダイナミックレンジの向上を目的とする場合には、測定装置1に合成スペクトルSr(i)のデータを取得させることも可能となる。したがって、測定装置1の利便性が向上する。
【0144】
測定装置1は、基準位置x0が開口部132aにおける所定方向Dの中心位置を含むことで、合成スペクトルSr(i)について波形の左右対称性を向上させることが可能である。
【0145】
測定装置1は、所定方向Dが開口部132aの短手方向を含むことで、当該短手方向に沿ってビームスポットPの周辺に混在する迷光を光学素子により除去可能である。測定装置1は、このような短手方向に混在する迷光による合成スペクトルSr(i)への影響を抑制可能である。
【0146】
測定装置1は、基準位置x0から第1位置x1までの第1距離と基準位置x0から第2位置x2までの第2距離とが互いに同一であることで、合成スペクトルSr(i)について波形の左右対称性を向上させることが可能である。
【0147】
第1位置x1は、第1端部E1が開口部132aの第1縁M1に当たるときのビームスポットPの中心位置を含む。これにより、測定装置1は、ビームスポットPに対して所定方向Dの一方側に混在する迷光を、開口部132aを有する光学素子により最も多く除去することが可能となる。
【0148】
第2位置x2は、第2端部E2が開口部132aの第2縁M2に当たるときのビームスポットPの中心位置を含む。これにより、測定装置1は、ビームスポットPに対して所定方向Dの他方側に混在する迷光を、開口部132aを有する光学素子により最も多く除去することが可能となる。
【0149】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
【0150】
例えば、上述した各構成部の形状、パターン、大きさ、配置、向き、種類、及び個数などは、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、パターン、大きさ、配置、向き、種類、及び個数などは、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。図示した測定装置1の各構成要素は機能概念的なものであり、各構成要素の具体的形態は図示のものに限定されない。
【0151】
上述した各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0152】
例えば、スマートフォン又はコンピュータなどの汎用の電子機器を、上述した一実施形態に係る測定装置1として機能させることも可能である。具体的には、一実施形態に係る測定装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、電子機器のメモリに格納し、電子機器のプロセッサにより当該プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能なプログラムとしても実現可能である。
【0153】
又は、本開示は、一実施形態に係る測定装置1などに各機能を実行させるために1つ又は複数のプロセッサにより実行可能なプログラムを記憶した非一時的なコンピュータ読取可能な媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0154】
上記実施形態では、測定装置1は、2つ又は3つのスペクトルを合成して狭窄化した被測定光L1の合成スペクトルSr(i)を生成すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、第1位置x1にあるときの第1スペクトルS1(i)及び第2位置x2にあるときの第2スペクトルS2(i)を少なくとも合成しているのであれば、4つ以上のスペクトルを合成して狭窄化した被測定光L1の合成スペクトルSr(i)を生成してもよい。
【0155】
上記実施形態では、測定装置1は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)のうち各測定点iでより低い強度を有するスペクトルを用いて合成スペクトルSr(i)を生成すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)を少なくとも合成して狭窄化した合成スペクトルSr(i)を生成可能な、任意の他の演算処理を実行してもよい。
【0156】
上記実施形態では、測定装置1は、第1位置x1及び第2位置x2の少なくとも一方を、第1処理の実行前に測定により予め決定する前処理を実行すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、ビームスポットPのサイズと開口部132aの幅とについてユーザが正確な数値を予め把握しているのであれば、入力部60を用いたユーザからの入力情報に基づいて、第1位置x1及び第2位置x2の少なくとも一方を予め決定してもよい。
【0157】
上記実施形態では、測定装置1は、算出された第1距離範囲のうち最も大きい値をΔxとして算出し、第1位置x1を決定すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、算出された第1距離範囲における任意の他の値をΔxとして算出し、第1位置x1を決定してもよい。
【0158】
上記実施形態では、測定装置1は、算出された第2距離範囲のうち最も大きい値をΔxとして算出し、第2位置x2を決定すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、算出された第2距離範囲における任意の他の値をΔxとして算出し、第2位置x2を決定してもよい。
【0159】
上記実施形態では、測定装置1は、第1処理において、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)を合成したときに合成スペクトルSr(i)において互いに隣接する一対のピークの間に局所ピークが発生しているか否かを判定すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、このような判定処理を実行しなくてもよい。例えば、測定装置1は、局所ピークの発生の有無に関わらず、第3スペクトルS3(i)に関連する処理を実行してもよいし、実行しなくてもよい。
【0160】
上記実施形態では、測定装置1は、局所ピークが発生していると判定すると、第1スペクトルS1(i)及び第2スペクトルS2(i)に加え、第3スペクトルS3(i)も合成して合成スペクトルSr(i)を生成すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、合成スペクトルSr(i)において発生する局所ピークへの対処に関して上記のような第3スペクトルS3(i)も合成するような処理に代えて、又は加えて、任意の他の処理を実行してもよい。
【0161】
例えば、測定装置1の制御部80は、局所ピークが発生していると判定すると、局所ピークを他の部分と異なる態様で表示させてもよい。例えば、制御部80は、合成スペクトルSr(i)のデータを出力部70に表示させるときに、合成スペクトルSr(i)における局所ピークを他の部分と異なる色、太さ、及び線種などで出力部70に表示させてもよい。これにより、測定装置1は、合成スペクトルSr(i)における局所ピークの位置を、ユーザに明瞭に示すことができる。ユーザは、測定された合成スペクトルSr(i)においてどの部分が局所ピークであるのかを容易に判別することができる。
【0162】
例えば、測定装置1の制御部80は、局所ピークが発生していると判定すると、局所ピークの両側のデータに基づいて補間処理を実行し、局所ピークでの光スペクトルデータを更新してもよい。補間処理は、スプライン補間及び2点間を単純に直線で結ぶ補間などを含んでもよい。これにより、測定装置1は、第3スペクトルS3(i)に関連する処理を実行したときと同様に、合成スペクトルSr(i)における局所ピークを軽減可能である。
【0163】
このとき、測定装置1の制御部80は、合成スペクトルSr(i)においてデータが更新された部分を他の部分と異なる態様で表示させてもよい。例えば、制御部80は、合成スペクトルSr(i)のデータを出力部70に表示させるときに、合成スペクトルSr(i)においてデータが更新された部分を他の部分と異なる色、太さ、及び線種などで出力部70に表示させてもよい。これにより、測定装置1は、合成スペクトルSr(i)においてデータが更新された部分の位置を、ユーザに明瞭に示すことができる。ユーザは、測定された合成スペクトルSr(i)においてどの部分がデータ更新されているのかを容易に判別することができる。
【0164】
例えば、測定装置1の制御部80は、局所ピークが発生していると判定すると、基準位置x0で被測定光L1の基準スペクトルを測定する第2処理に切り替えてもよい。制御部80は、局所ピークが発生していると判定すると、第1処理から第2処理に自動的に切り替えてもよい。これにより、測定装置1は、局所ピークを示さない基準スペクトルに基づいて被測定光L1の光スペクトルデータを取得可能である。
【0165】
上記実施形態では、測定装置1は、第1スペクトルS1(i)、第2スペクトルS2(i)、及び第3スペクトルS3(i)のうち各測定点iで最低となる強度を有するスペクトルを用いて合成スペクトルSr(i)を生成すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、第1スペクトルS1(i)、第2スペクトルS2(i)、及び第3スペクトルS3(i)を合成して狭窄化した合成スペクトルSr(i)を生成可能な、任意の他の演算処理を実行してもよい。
【0166】
上記実施形態では、測定装置1は、基準位置x0で被測定光L1の基準スペクトルを測定する第2処理及び第1処理のいずれかを、ユーザの選択入力に応じて切り替えて実行すると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、第2処理を実行せず第1処理のみを実行し、このような選択を可能にしなくてもよい。
【0167】
上記実施形態では、基準位置x0は、開口部132aにおける所定方向Dの中心位置を含むと説明したが、これに限定されない。基準位置x0は、開口部132aにおける所定方向Dの任意の他の位置を含んでもよい。
【0168】
上記実施形態では、所定方向Dは、開口部132aの短手方向を含むと説明したが、これに限定されない。所定方向Dは、開口部132aの長手方向及び斜め方向など、任意の他の方向を含んでもよい。
【0169】
上記実施形態では、基準位置x0から第1位置x1までの第1距離と基準位置x0から第2位置x2までの第2距離とは、互いに同一であると説明したが、これに限定されない。第1距離と第2距離とは、互いに異なっていてもよい。
【0170】
上記実施形態では、第1位置x1は、ビームスポットPの一方側の第1端部E1が開口部132aの第1縁M1に当たるときのビームスポットPの中心位置を含むと説明したが、これに限定されない。第1位置x1は、第1端部E1が第1縁M1と離間しているときのビームスポットPの中心位置を含んでもよい。
【0171】
上記実施形態では、第2位置x2は、ビームスポットPの他方側の第2端部E2が開口部132aの第2縁M2に当たるときのビームスポットPの中心位置を含むと説明したが、これに限定されない。第2位置x2は、第2端部E2が第2縁M2と離間しているときのビームスポットPの中心位置を含んでもよい。
【0172】
上記実施形態では、分光器10は、2段のマルチパス方式に基づいて構成されているが、これに限定されない。分光器10は、3段以上のマルチパス方式に基づいて構成されてもよい。これに伴い、特許請求の範囲に記載の「光学素子」は、第2光学素子132に限定されず、迷光を遮蔽するために分光器10内で任意の位置に配置されている他の光学素子に対応してもよい。
【0173】
上記実施形態では、測定装置1は、開口部132a内でのビームスポットPの位置を示す基準位置x0、第1位置x1、及び第2位置x2への位置調整を実行するにあたり、光学素子を移動させると説明したが、これに限定されない。測定装置1は、光学素子を固定した状態でビームスポットPを移動させて位置調整を実行してもよいし、光学素子及びビームスポットPの両方を移動させて位置調整を実行してもよい。
【0174】
以下に本開示の実施形態の一部について例示する。しかしながら、本開示の実施形態はこれらに限定されない点に留意されたい。
[付記1]
制御部と、
被測定光を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器と、
を備え、
前記制御部は、前記被測定光のビームスポットが前記開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトル及び第2位置にあるときの第2スペクトルを少なくとも合成して狭窄化した前記被測定光の合成スペクトルを生成する第1処理を実行し、
前記第1位置は、前記ビームスポットの前記開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含み、
前記第2位置は、前記基準位置から他方側にずれた位置を含む、
測定装置。
[付記2]
付記1に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルのうち各測定点でより低い強度を有するスペクトルを用いて前記合成スペクトルを生成する、
測定装置。
[付記3]
付記1又は2に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方を、前記第1処理の実行前に測定により予め決定する前処理を実行する、
測定装置。
[付記4]
付記3に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記前処理において、前記ビームスポットの位置を前記基準位置から前記一方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第1距離範囲を算出し、前記第1距離範囲に基づいて前記第1位置を決定する、
測定装置。
[付記5]
付記3又は4に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記前処理において、前記ビームスポットの位置を前記基準位置から前記他方側に所定距離ごとにずらして光スペクトルの強度が維持される第2距離範囲を算出し、前記第2距離範囲に基づいて前記第2位置を決定する、
測定装置。
[付記6]
付記1乃至5のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記第1処理において、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルを合成したときに前記合成スペクトルにおいて互いに隣接する一対のピークの間に局所ピークが発生しているか否かを判定する、
測定装置。
[付記7]
付記6に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記第1スペクトル及び前記第2スペクトルに加え、前記ビームスポットが前記基準位置にあるときの第3スペクトルも合成して前記合成スペクトルを生成する、
測定装置。
[付記8]
付記7に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記第1スペクトル、前記第2スペクトル、及び前記第3スペクトルのうち各測定点で最低となる強度を有するスペクトルを用いて前記合成スペクトルを生成する、
測定装置。
[付記9]
付記6乃至8のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記局所ピークを他の部分と異なる態様で表示させる、
測定装置。
[付記10]
付記6乃至9のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記局所ピークの両側のデータに基づいて補間処理を実行し、前記局所ピークでの光スペクトルデータを更新する、
測定装置。
[付記11]
付記10に記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記合成スペクトルにおいてデータが更新された部分を他の部分と異なる態様で表示させる、
測定装置。
[付記12]
付記6乃至11のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記局所ピークが発生していると判定すると、前記基準位置で前記被測定光の基準スペクトルを測定する第2処理に切り替える、
測定装置。
[付記13]
付記1乃至12のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記制御部は、前記基準位置で前記被測定光の基準スペクトルを測定する第2処理及び前記第1処理のいずれかを、ユーザの選択入力に応じて切り替えて実行する、
測定装置。
[付記14]
付記1乃至13のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記基準位置は、前記開口部における前記所定方向の中心位置を含む、
測定装置。
[付記15]
付記1乃至14のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記所定方向は、前記開口部の短手方向を含む、
測定装置。
[付記16]
付記1乃至15のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記基準位置から前記第1位置までの第1距離と前記基準位置から前記第2位置までの第2距離とは、互いに同一である、
測定装置。
[付記17]
付記1乃至16のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記第1位置は、前記ビームスポットの前記一方側の第1端部が前記開口部の第1縁に当たるときの前記ビームスポットの中心位置を含む、
測定装置。
[付記18]
付記1乃至17のいずれか1つに記載の測定装置であって、
前記第2位置は、前記ビームスポットの前記他方側の第2端部が前記開口部の第2縁に当たるときの前記ビームスポットの中心位置を含む、
測定装置。
[付記19]
被測定光を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器を備える測定装置により実行される測定方法であって、
前記被測定光のビームスポットが前記開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトル及び第2位置にあるときの第2スペクトルを少なくとも合成して狭窄化した前記被測定光の合成スペクトルを生成する第1処理を実行するステップを含み、
前記第1位置は、前記ビームスポットの前記開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含み、
前記第2位置は、前記基準位置から他方側にずれた位置を含む、
測定方法。
[付記20]
被測定光を通過させる開口部が形成されている光学素子を有する分光器を備える測定装置に、
前記被測定光のビームスポットが前記開口部内で第1位置にあるときの第1スペクトル及び第2位置にあるときの第2スペクトルを少なくとも合成して狭窄化した前記被測定光の合成スペクトルを生成する第1処理を実行するステップを含む動作を実行させ、
前記第1位置は、前記ビームスポットの前記開口部内での基準位置から所定方向の一方側にずれた位置を含み、
前記第2位置は、前記基準位置から他方側にずれた位置を含む、
プログラム。
【符号の説明】
【0175】
1 測定装置
10 分光器
11 回折格子
12 コリメータ
121 第1コリメータ
122 第2コリメータ
13 光学素子
131 第1光学素子
132 第2光学素子
132a 開口部
14 第1レンズ
15 第2レンズ
16 第1ミラー
17 第2ミラー
2 導光部品
20 光検出器
30 増幅器
40 A/D変換器
50 記憶部
60 入力部
70 出力部
80 制御部
C 刻線
D 所定方向
E1 第1端部
E2 第2端部
L1 被測定光
L2 回折光
L3 光
L4 回折光
M1 第1縁
M2 第2縁
P ビームスポット
R 回転軸
S 分光系
S1 第1分光系
S2 第2分光系
T 折り返し光学系
x0 基準位置
x1 第1位置
x2 第2位置
Y 延在方向
S1(i) 第1スペクトル
S2(i) 第2スペクトル
S3(i) 第3スペクトル
Sr(i) 合成スペクトル
S(i) 測定スペクトル
s スポットサイズ
w スリット幅
101 スリット板
102 スリット
103 ビームスポット
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14