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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165102
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】掘削攪拌機及び支持杭の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20241121BHJP
   E02D 5/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D5/20 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080976
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】390025759
【氏名又は名称】株式会社ワイビーエム
(71)【出願人】
【識別番号】509235545
【氏名又は名称】株式会社SEET
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 信明
(72)【発明者】
【氏名】古賀 翔平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠久
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 充
(72)【発明者】
【氏名】井本 隆作
(72)【発明者】
【氏名】中山 英則
(72)【発明者】
【氏名】秋山 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 由徳
【テーマコード(参考)】
2D040
2D049
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB05
2D040BA08
2D040BB01
2D040BD03
2D040BD05
2D040CA01
2D040CB03
2D040EA00
2D040EB00
2D049EA05
2D049GA12
2D049GB06
2D049GC11
2D049GD03
2D049GD09
2D049GE04
(57)【要約】
【課題】地中孔を設ける作業と地中孔に芯材を貫入する作業とを、施工機械の入れ替え作業を行うことなく実施することである。
【解決手段】リーダーに沿って移動する回転装置及び起振装置と、先端に掘削攪拌部が接続され、前記回転装置より回転力を付与されるとともに前記起振装置より振動を付与されるロッドと、を備える掘削攪拌機であって、前記リーダーに、前記回転装置及び前記起振装置と干渉しない位置で昇降する吊り上げフックを有する吊り装置が支持されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダーに沿って移動する回転装置及び起振装置と、
先端に掘削攪拌部が接続され、前記回転装置より回転力を付与されるとともに前記起振装置より振動を付与されるロッドと、を備える掘削攪拌機であって、
前記リーダーに、前記回転装置及び前記起振装置と干渉しない位置で昇降する吊り上げフックを有する吊り装置が支持されていることを特徴とする掘削攪拌機。
【請求項2】
請求項1に記載の掘削攪拌機において、
走行体に支持された上部旋回体に対して、前記リーダーが延伸方向と直交する方向に揺動自在に接続され、
前記吊り上げフックは、前記リーダーの揺動によって前記掘削攪拌部を用いて構築した地中孔の直上へ移動可能に設けられていることを特徴とする掘削攪拌機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の掘削攪拌機を用いた支持杭の構築方法において、
前記掘削攪拌部を用いて地中孔を構築する工程と、
該地中孔に、前記吊り装置を用いて芯材を貫入する工程と、
を含むことを特徴とする支持杭の構築方法。
【請求項4】
請求項3に記載の支持杭の構築方法において、
前記ロッドの先端に前記掘削攪拌部に替えて貫入補助治具を装着しておき、
前記地中孔に貫入した前記芯材を、前記吊り装置に替えて前記貫入補助治具に接続し、
前記芯材に、前記貫入補助治具を介して前記ロッドに作用する軸心まわりの回転力または振動、もしくは回転力と振動の両者を、選択的に作用させることを特徴とする支持杭の構築方法。
【請求項5】
請求項3に記載の支持杭の構築方法において、
前記地中孔に、ソイルセメント柱を築造する工程を含むことを特徴とする支持杭の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削するための掘削攪拌機、及び掘削攪拌機を用いた支持杭の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、地中にソイルセメント柱を築造する際に用いる削孔攪拌機が開示されている。削孔攪拌機は、先端に掘削ビットが接続されたロッドを備えており、回転手段によりロッドを軸周りに回転させながら、起振手段を介してロッドに上下方向の振動を付与することにより、掘削ビットで地中を削孔する。また、地中を削孔しつつ、掘削ビットの先端よりセメント系固化液を吐出することにより、削孔した孔内にソイルセメント柱を構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-252349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の削孔攪拌機によれば、ロッドを介して掘削ビットが回転しつつ上下方向に振動するため、地中に硬質層が存在しても効率よく掘削し、ソイルセメント柱を築造できる。ところで、構築したのちのソイルセメント柱に、芯材を貫入して支持杭を構築する場合には、削孔攪拌機を退出させるとともにクレーンやリフターなどの揚重装置を搬入して所定位置に据え付け、この揚重装置を利用して芯材の貫入作業を実施する。
【0005】
しかし、施工現場が狭隘である場合、施工機械の入れ替え作業に時間を要するだけでなく作業が煩雑となりやすい。また、低空頭な環境にある場合には、使用可能な揚重装置が限定されるなど、施工性に課題を生じていた。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、地中孔を設ける作業と地中孔に芯材を自重で貫入する作業とを、施工機械の入れ替え作業を行うことなく実施することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明の掘削攪拌機は、リーダーに沿って移動する回転装置及び起振装置と、先端に掘削攪拌部が接続され、前記回転装置より回転力を付与されるとともに前記起振装置より振動を付与されるロッドと、を備える掘削攪拌機であって、前記リーダーに、前記回転装置及び前記起振装置と干渉しない位置で昇降する吊り上げフックを有する吊り装置が支持されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の掘削攪拌機は、走行体に支持された上部旋回体に対して、前記リーダーが延伸方向と直交する方向に揺動自在に接続され、前記吊り上げフックは、前記リーダーの揺動によって前記掘削攪拌部を用いて構築した地中孔の直上へ移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の支持杭の構築方法は、本発明の掘削攪拌機を用いた支持杭の構築方法において、前記掘削攪拌部を用いて地中孔を構築する工程と、該地中孔に、前記吊り装置を用いて芯材を貫入する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の支持杭の構築方法は、前記ロッドの先端に前記掘削攪拌部に替えて貫入補助治具を装着しておき、前記地中孔に貫入した前記芯材を、前記吊り装置に替えて前記貫入補助治具に接続し、前記芯材に、前記貫入補助治具を介して前記ロッドに作用する軸心まわりの回転力または振動、もしくは回転力と振動の両者を、選択的に作用させることを特徴とする。
【0011】
本発明の支持杭の構築方法は、前記地中孔に、ソイルセメント柱を築造する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の掘削攪拌機及び支持杭の構築方法によれば、地中孔を設ける作業や地中にソイルセメント柱を築造する作業と地中孔に芯材を自重で貫入する作業とを、建設機械の入れ替え作業を行うことなく掘削攪拌機のみで実施できる。したがって、施工現場が狭隘な環境にある場合や、クレーンなどの揚重装置が使用できない低空頭な環境にある場合などの施工性を、大幅に向上することが可能となる。
【0013】
また、吊り装置を用いて芯材を地中孔に自重で貫入させる作業中に高止まりが生じた場合に、高止まりの状態に応じて芯材に対して、回転力または振動、もしくは回転力と振動の両者を選択的に作用させることができる。これにより、高止まりした芯材を地中孔に圧入するための装置を別途導入するといった手間を省略しつつ、芯材の貫入動作を補助して芯材を効率よく所定の深度まで到達させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、施工機械の入れ替え作業を行うことなく掘削攪拌機のみで、地中孔を設ける作業と地中孔に芯材を貫入する作業とを実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態における掘削攪拌機の側面図である。
図2】本発明の実施の形態における掘削攪拌機の背面図である。
図3】本発明の実施の形態における掘削攪拌機のリーダーに装着されている設備の詳細を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における掘削攪拌機の回転装置、起振装置、及びロッドを示す図である。
図5】本発明の実施の形態における掘削攪拌機の上部旋回体に対してリーダーを揺動させた様子を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における掘削攪拌機を用いて支持杭を構築する様子を示す図である(その1)。
図7】本発明の実施の形態における掘削攪拌機を用いて支持杭を構築する様子を示す図である(その2)。
図8】本発明の実施の形態における掘削攪拌機のロッドに、貫入補助治具を介して芯材を接続する様子を示す図である。
図9】本発明の実施の形態における貫入補助治具の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、掘削攪拌部が装着されたロッドに、軸心まわりの回転力、または振動、もしくは回転力と振動の両者を選択的に作用させることの可能な掘削攪拌機に、吊り装置を追加装備したものである。本実施の形態では、地中にソイルセメント柱を築造するとともに、ソイルセメント柱に鋼管を貫入し、ソイルセメント造の支持杭を構築する場合を事例に挙げ、以下に、図1図9を参照しつつその詳細を説明する。
【0017】
≪≪掘削攪拌機≫≫
掘削攪拌機1は、図1の側面図及び図2の背面図で示すように、クローラ走行体2、クローラ走行体2に搭載されている上部旋回体3、起倒自在に支持されたリーダー4を備える。また、上部旋回体3を挟んだ前後にそれぞれ1対ずつ配置された合計4台のアウトリガ5、吊り装置6、駆動軸7、回転装置8、起振装置9を備える。
【0018】
≪リーダーの前面側≫
リーダー4は、図1及び図3で示すように、起立姿勢においてその前面側に上下方向に延在するガイド41が設けられているとともに、このガイド41に沿って昇降する昇降体42が取り付けられている。昇降体42には、起振装置9と、起振装置9の下部に接続された回転装置8が装備される。さらに、図3及び図4で示すように、回転装置8を貫通し基端が起振装置9に接続される駆動軸7を備え、駆動軸7には、その先端にロッド20が接続される。
【0019】
起振装置9は、偏芯重錘を回転させることで上下方向の起振力を発生させる装置であり、昇降体42を介してガイド41に沿って移動するため、リーダー4の起立時には昇降方向に移動する態様となる。なお、起振装置9は、駆動軸7に対して上下方向の成分を含む振動を伝達可能な起振力を発生できる装置であれば、いずれを採用してもよい。
【0020】
回転装置8は、昇降体42に設置されるとともに起振装置9に接続されており、起振装置9とともにリーダー4に沿って移動する。その内部には、図示しない駆動軸係止部が備えられており、駆動軸7の周面を係止して軸周りに正方向もしくは逆方向の回転力を付与する。
【0021】
駆動軸7は中空部を備える一重管よりなり、図4で示すように、その中間にスイベル継手71が装着されている。スイベル継手71は、例えば、図6(a)(c)で示すように、ベントナイト掘削液Aやセメント系固化液Bなどの流体を供給する流体供給管Pが接続されている。これにより、流体供給管Pから供給された流体を、スイベル継手71から駆動軸7を介してロッド20に供給することが可能となる。
【0022】
ロッド20は、図4で示すように、複数のロッド本体21を継ぎ足すことにより所望の長さに調整することが可能に構成されている。ロッド20の基端部は、駆動軸7に接続され、先端部は、図6(a)で示すように、掘削攪拌部10に接続されている。
【0023】
掘削攪拌部10は、図6(a)で示すように、ロッド20に接続され、中空部を備える一重管よりなる軸部11と、軸部11の先端部に取り付けられた掘削翼本体13を備える。また、掘削翼本体13から上方に離間した位置に、放射方向に延在する複数の攪拌翼12を備える。さらに、軸部11の先端には少なくとも流体吐出口及びビットが設置されている。
【0024】
掘削翼本体13及び軸部11の先端に設けられているビットは、掘削攪拌部10がロッド20の軸周りに回転した場合に、地盤を掘削可能な形状に形成されている。また、軸部11の先端に設けた流体吐出口は、流体供給管Pからスイベル継手71、駆動軸7及びロッド20を経由して軸部11に供給された流体を地盤に向けて吐出する。
【0025】
さらに、掘削攪拌部10に設けた攪拌翼12は、掘削攪拌機1を地中削孔のみに用いる場合には必ずしも設けていなくてもよい。図6(c)で示すように、地中孔Hを構築したのち、この地中孔Hにセメント系固化液Bを供給してソイルセメント柱101を築造する場合に設けると良い。もしくは、地盤を掘削しながら流体吐出口からセメント系固化液Bを吐出しつつ撹拌し、ソイルセメント柱を築造する場合にも、攪拌翼12を設けておくと良い。
【0026】
≪リーダーの下部側≫
リーダー4の下部側には、図1及び図4で示すように、チャック機構45が設置されている。チャック機構45は、ロッド20及び掘削攪拌部10を把持可能な構成を有していれば、いずれの装置を採用してもよい。また、チャック機構45は必ずしもリーダー4に装着されていなくてもよく、さらには、掘削攪拌機1とは別体の装置を採用してもよい。
【0027】
≪リーダーの背面側≫
リーダー4の背面側には、図3で示すように、2台の伸縮装置43、44、支柱431、及び2台の揺動用伸縮装置47、48が設けられている。これらの組み合わせにより、リーダー4は、上部旋回体3の前方に接続された状態で起倒可能であるとともに、リーダー4の延在方向と直交する方向に揺動可能な構造となっている。具体的には、次に示すとおりである。
【0028】
伸縮装置43は、図1及び図3で示すように、上部旋回体3に支持されるとともにその伸縮動作により、支柱431を起倒の各姿勢に切り替える。伸縮装置44は、図3で示すように、リーダー4に沿って伸縮する姿勢で、支柱431とリーダー4との間に配置されている。シリンダ441がリーダー4の上部近傍に固定され、シリンダーチューブ442がスライド部材443を介してリーダー4の側面に接続されている。
【0029】
この伸縮装置44のシリンダーチューブ442は、伸縮装置43の支柱431と平行に配置されている。そして、2台の揺動用伸縮装置47、48が、リーダー4の延在方向と直交する方向に伸縮する姿勢で、上記の伸縮装置44のシリンダーチューブ442と支柱431を連結している。
【0030】
これにより、リーダー4は、伸縮装置43、44の各伸縮動作により、上部旋回体3に対する起倒の各姿勢と、リーダー4が起立姿勢である場合における上部旋回体3に対するリーダー4の高さ位置が自在となっている。また、リーダー4が起立姿勢である場合に、2台の揺動用伸縮装置47、48の伸縮動作により、リーダー4は、上部旋回体3の前方で左右方向に揺動自在となっている。
【0031】
さらに、リーダー4の背面側には、図3で示すように、サポート伸縮部材46が配置されている。サポート伸縮部材46は、リーダー4に沿って伸縮する姿勢で、伸縮装置44のシリンダーチューブ442における下部部に設置されている。このサポート伸縮部材46の伸縮動作により、伸縮装置44は、リーダー4が起立姿勢である場合にサポート伸縮部材46を介して接地することができる。
【0032】
≪リーダーの上部側≫
リーダー4の上部側には、図1及び図3で示すように、吊り装置6が設置されている。吊り装置6は、梁部材61、シーブ62、シーブ62に掛け回されたワイヤー63、ワイヤー63に接続された吊り上げフック64、及びワイヤー63を巻き上げる油圧ウィンチ65を備える。
【0033】
梁部材61は、下面中間部がリーダー4の上端に接続され、図5(a)の平面図で示すように、接続部分を中心点としてその延在方向が、掘削攪拌機1の中心軸Cに対して所定の角度を有するように配置されている。図5(a)では、中心軸Cに対して45度の傾きをもって配置する場合を例示しているが、その角度は何ら限定されるものではない。また、シーブ62及び吊り上げフック64は、梁部材61の前方側端部(回転装置8及び起振装置9に隣接する側の端部)に設置され、油圧ウィンチ65は、梁部材61の後方側端部(上部旋回体3に隣接する側の端部)に設置されている。
【0034】
これにより、通常時において上部旋回体3の前方(中心軸C上)には、図5(a)で示すように、回転装置8及び起振装置9がリーダー4とともに配置される。一方、2台の揺動用伸縮装置47、48が伸長もしくは伸縮稼働すると、リーダー4の揺動により回転装置8及び起振装置9が移動し、図5(b)で示すように、シーブ62及び吊り上げフック64を上部旋回体3の前方(中心軸C上)に配置することができる。
【0035】
なお、吊り装置6は、図7(b)で示すように、リーダー4を揺動させた際に掘削攪拌部10を用いて構築した地中孔Hの直上へ吊り上げフック64が移動可能となるよう、梁部材61の長さを調整している。また、2台の揺動用伸縮装置47、48を稼働させてリーダー4を図5(b)とは逆方向に揺動し、上部旋回体3の前方(中心軸C上)に何もない状態、つまり、回転装置8及び起振装置9と、シーブ62及び吊り上げフック64のいずれもが存在しない状態を作り出すこともできる。
【0036】
≪≪ソイルセメント造の支持杭の構築方法≫≫
上記の構成を有する掘削攪拌機1を用いて、例えば地中にソイルセメント柱を築造し、図7(c)で示すようなソイルセメント造の支持杭100を構築する手順は、次のとおりである。
【0037】
まず、図6(a)~(b)で示すように、所定位置に掘削攪拌機1を据え付け、上部旋回体3の前方であって支持杭100の構築予定位置の直上に、回転装置8、起振装置9、及び先端部に掘削攪拌部10を接続したロッド20を配置する。
【0038】
これらを利用して、ベントナイト掘削液Aを供給しつつ地中を削孔し、ベントナイト掘削液Aと掘削土の混じった充填物Mで満たされた地中孔Hを構築したのち、図6(c)で示すように、セメント系固化液Bを供給しつつ地中孔H内を攪拌し、地中にソイルセメント柱101を構築する。また、図7(a)で示すように、掘削攪拌機1を利用して、ソイルセメント柱101の先端に、セメント系固化液Bを注入し根固め部102を設ける。
【0039】
こののち、掘削攪拌機1を据え付けた状態のまま、ソイルセメント柱101から掘削攪拌部10を引き抜くとともに、2台の揺動用伸縮装置47、48を伸長もしくは伸縮稼働させて、リーダー4を揺動させる。
【0040】
こうして、図7(b)で示すように、上部旋回体3の前方であってソイルセメント柱101の直上に、鋼管103を吊持した吊り装置6の吊り上げフック64を配置する。また、図2を参照して説明したように、サポート伸縮部材46を伸長させ、下端を接地させる。この状態で、ソイルセメント柱101及び根固め部102が硬化する前に、吊り装置6を利用して鋼管103を吊り下ろし、自重で貫入していく。
【0041】
このように、リーダー4の上部近傍に吊り装置6を設けるとともに、2台の揺動用伸縮装置47、48の伸縮動作により、リーダー4を揺動することで、ソイルセメント柱101を築造するために用いる掘削攪拌機1を、鋼管103の吊り下ろし作業に用いることができる。このとき、吊り装置6の吊り上げフック64で吊り下げた鋼管103の荷重は、サポート伸縮部材46を伸長させて下端を接地させることで、伸縮装置44及びサポート伸縮部材46で支持することができる。
【0042】
上記のとおり、本発明によれば、地中孔Hを構築する作業と地中孔Hに鋼管103を貫入する作業とを、建設機械の入れ替え作業を行うことなく掘削攪拌機1のみで実施できる。したがって、施工現場が狭隘な環境にある場合や、クレーンなどの揚重装置が使用できない低空頭な環境にある場合の、施工性を大幅に向上することが可能となる。
【0043】
本発明の掘削攪拌機及び支持杭の構築方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、図7(b)で示すように、ソイルセメント柱101に自重で貫入させた鋼管103が、根固め部102に到達する前に高止まりを生じた場合には、掘削攪拌機1を利用して、鋼管103に回転力や振動などの外力を作用させ、貫入を補助することができる。鋼管103に外力を付与する手順は、次のとおりである。
【0045】
まず、掘削攪拌機1を据え付けた状態のまま、鋼管103から吊り上げフック64を取り外し、鋼管103をいずれかの手段により仮支持する。この状態で、2台の揺動用伸縮装置47、48を伸縮もしくは伸長稼働させて、リーダー4を揺動させる。こうして、図7(c)で示すように、上部旋回体3の前方であって鋼管103の直上に、回転装置8、起振装置9、及び掘削攪拌部10を取り外したロッド20を配置する。
【0046】
これらの作業と前後して、図8(a)で示すように、ロッド20の先端には、抑えバンド60を介してアタッチメント式の貫入補助治具50を接続しておき、鋼管103には、その内周面から軸心に向けて突出する突状部材104を設けておく。
【0047】
≪≪貫入補助治具≫≫
上記の貫入補助治具50は、図8(a)及び図9で示すように、ロッド接続具30とガイドブロック40とを備える。
【0048】
≪ロッド接続具≫
ロッド接続具30は、図8(b)で示すように、ロッド20と鋼管103とを連結し、ロッド20に作用された回転力や振動などの外力を、鋼管103に伝達するための伝達部材として機能する。その構造は、図9で示すように、接続具本体31とオス金具32とにより構成されている。
【0049】
オス金具32は、掘削攪拌機1のロッド20に設けられているメス金具(図示せず)に対応する形状に形成されている。図9では、六角継手を採用する場合を事例に挙げている。このような形状のオス金具32は、接続具本体31に上向きで設けられている。
【0050】
接続具本体31は、略長方形のベース板311と、このベース板311の短辺各々から立ち上がる一対の壁部312を備えている。ベース板311にはその中央部に、前述のオス金具32が設置されている。
【0051】
一対の壁部312は、その外周面が鋼管103の内周面に沿う円弧に形成され、その下方側には、略T字型の切欠き部313が形成されている。この切欠き部313は、鋼管103に設けた突状部材104が、下方から上方に向けて挿入され、さらに横方向に相対移動すると、突状部材104を係止できる大きさ及び形状に形成されている。
【0052】
また、一対の壁部312には、その略中央部の上面から外周面に続く略鉤型の凹部314が形成されている。この凹部314に、ガイドブロック40が設置される。
【0053】
≪ガイドブロック≫
ガイドブロック40は、貫入補助治具50を鋼管103に挿入する際のガイドとして機能する。また、ロッド接続具30と鋼管103の内周面との間に生じる隙間を最小にする、隙間調整機能を有する。その形状は、略鉤型形状をなし、取付片401と隙間調整片402とにより構成されている。取付片401は、平面視で略長方形に形成され、ボルト孔が設けられている。隙間調整片402は、取付片401の下面から垂れ下がり、下端外面側の出隅部が面取りされている。
【0054】
このような形状のガイドブロック40は、接続具本体31の凹部314に篏合する。つまり、ガイドブロック40の取付片401が、凹部314の上面側に篏合し、隙間調整片402が凹部314の側面側に篏合する。そして、ガイドブロック40と凹部314が形成されている接続具本体31とは、ボルト接合される。
【0055】
凹部314は、接続具本体31を構成する一対の壁部312各々に設けられているから、各々にガイドブロック40が取り付けられることとなる。こうして、貫入補助治具50は、図8(a)で示すように、ロッド接続具30と一対のガイドブロック40とにより組立てられる。
【0056】
上記の構造を有する貫入補助治具50をロッド20の先端に取り付け、図8(b)で示すように、鋼管103の内方に挿入し、鋼管103の突状部材104に貫入補助治具50を係止させる。この状態で、図7(c)で示すように、掘削攪拌機1の回転装置8もしくは起振装置9を作動させる、または、回転装置18と起振装置14の両者を作動させる。こうすると、ロッド20に接続された貫入補助治具50を介して、回転力もしくは振動、または回転力と振動の両者が、鋼管103に付与されるため、鋼管103とソイルセメント柱101との付着が切れる。
【0057】
すると、自重貫入できず高止まりした鋼管103は、ソイルセメント柱101内で回転もしくは振動しながら自沈していく。このように、貫入補助治具50を用いると、ソイルセメント柱101を築造するために用いる掘削攪拌機1を、鋼管103の貫入作業にも用いることができる。したがって、高止まりした鋼管103を圧入するための装置を、別途導入するといった手間を省略しつつ鋼管103の貫入動作を補助し、鋼管103を効率よく所定の深度まで到達させることが可能となる。
【0058】
本実施の形態では、芯材に鋼管103を採用する場合を事例に挙げたが、これに限定するものではない。例えば、大型H形鋼などを芯材として採用することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 掘削攪拌機
2 クローラ走行体
3 上部旋回体
4 リーダー
41 ガイド
42 昇降体
43 伸縮装置
431 支柱
44 伸縮装置
45 チャック機構
46 サポート伸縮部材
47 揺動用伸縮装置
48 揺動用伸縮装置
5 アウトリガ
6 吊り装置
61 梁部材
62 シーブ
63 ワイヤー
64 吊り上げフック
65 油圧ウィンチ
7 駆動軸
71 スイベル継手
8 回転装置
9 起振装置
10 掘削攪拌部
11 軸部
12 攪拌翼
13 掘削翼本体
20 ロッド
21 ロッド本体
30 ロッド接続具
31 接続具本体
311 ベース板
312 壁部
313 切欠き部
314 凹部
32 オス金具
33 抑えバンド
40 ガイドブロック
401 取付片
402 隙間調整片
50 貫入補助治具
60 抑えバンド
100 支持杭
101 ソイルセメント柱
102 根固め部
103 鋼管(芯材)
104 突状部材
A ベントナイト掘削液
B セメント系固化液
C 中心軸
H 地中孔
M 充填物
P 流体供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9