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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165105
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】アンモニア排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20241121BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20241121BHJP
   C02F 1/74 20230101ALI20241121BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
B01D53/92 225
B01D53/92 226
C02F1/74 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080979
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴裕
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D050
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA18
3G091AB04
3G091BA14
3G091CA17
4D002AA12
4D002AC10
4D002BA06
4D002CA01
4D002DA07
4D002DA57
4D002DA66
4D002GA02
4D002GA04
4D002GB02
4D002GB05
4D050AA13
4D050AB35
4D050BB08
4D050BD03
4D050BD04
4D050BD06
(57)【要約】
【課題】排ガスの脱硝を安定して継続しつつ、アンモニア漏洩を適切に管理することができるアンモニア排水処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様であるアンモニア排水処理装置は、舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスに還元剤を混合して前記排ガスを脱硝する排ガス脱硝装置に対し、前記舶用ディーゼルエンジンのアンモニア燃料に由来するアンモニア排水を前記還元剤として供給するアンモニア排水供給系統と、前記排ガス脱硝装置に対し、アンモニア水とは異なる還元剤である非アンモニア水を前記還元剤として供給する非アンモニア水供給系統と、を備える。前記排ガス脱硝装置および前記非アンモニア水供給系統は、船舶において区画された安全エリアの内部に配置され、前記アンモニア排水供給系統は、前記船舶において前記安全エリアから隔離された管理エリアの内部に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスに還元剤を混合して前記排ガスを脱硝する排ガス脱硝装置に対し、前記舶用ディーゼルエンジンのアンモニア燃料に由来するアンモニア排水を前記還元剤として供給するアンモニア排水供給系統と、
前記排ガス脱硝装置に対し、アンモニア水とは異なる還元剤である非アンモニア水を前記還元剤として供給する非アンモニア水供給系統と、
を備え、
前記排ガス脱硝装置および前記非アンモニア水供給系統は、船舶において区画された安全エリアの内部に配置され、
前記アンモニア排水供給系統は、前記船舶において前記安全エリアから隔離された管理エリアの内部に配置される、
ことを特徴とするアンモニア排水処理装置。
【請求項2】
前記管理エリアの内部に通じ、前記アンモニア排水供給系統のうち前記管理エリアから前記安全エリアに延在するアンモニア排水供給管を覆うカバー管をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項3】
前記カバー管の内部ガスを前記管理エリアの内部へ流すように前記カバー管の内部を換気するための換気管をさらに備える、
ことを特徴とする請求項2に記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項4】
前記カバー管は、前記排ガス脱硝装置から離間した状態で配置される、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項5】
前記カバー管の内部におけるアンモニアガスの濃度を検出するガス濃度検出部と、
検出された前記アンモニアガスの濃度が所定の基準濃度を超過する場合、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給を停止するように前記アンモニア排水供給系統を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記非アンモニア水供給系統は、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給が停止している際に、前記排ガス脱硝装置に対して前記非アンモニア水を供給する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項6】
前記管理エリアの内部におけるアンモニアガスの濃度を検出するガス濃度検出部と、
検出された前記アンモニアガスの濃度が所定の基準濃度を超過する場合、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給を停止するように前記アンモニア排水供給系統を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記非アンモニア水供給系統は、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給が停止している際に、前記排ガス脱硝装置に対して前記非アンモニア水を供給する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項7】
前記アンモニア排水供給系統における前記アンモニア排水のアンモニア濃度を計測する濃度計測部と、
計測された前記アンモニア濃度が所定の上限濃度を超過する場合、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給を停止するように前記アンモニア排水供給系統を制御する制御部と、
をさらに備え、
前記非アンモニア水供給系統は、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給が停止している際に、前記排ガス脱硝装置に対して前記非アンモニア水を供給する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項8】
計測された前記アンモニア濃度が前記上限濃度を超過する場合に前記アンモニア排水を希釈するための清水を供給する清水供給部をさらに備え、
前記アンモニア排水供給系統は、
前記アンモニア排水を貯蔵するアンモニア排水タンクと、
前記アンモニア排水タンクから前記排ガス脱硝装置に通じるアンモニア排水供給管と、
を備え、
前記清水供給部は、前記アンモニア排水タンクへ前記清水を供給する、
ことを特徴とする請求項7に記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項9】
計測された前記アンモニア濃度が所定の下限濃度未満である場合に前記アンモニア排水の水分量を減らす水分量調整部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項7に記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項10】
前記還元剤を混合した後の前記排ガスの温度を検出する排ガス温度検出部と、
検出された前記排ガスの温度が所定の基準温度未満である場合、前記排ガス脱硝装置に対して供給する前記アンモニア排水の供給量を減らすように前記アンモニア排水供給系統を制御する制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、検出された前記排ガスの温度が前記基準温度未満である場合、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給を停止するように前記アンモニア排水供給系統を制御し、
前記非アンモニア水供給系統は、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給が停止している際に、前記排ガス脱硝装置に対して前記非アンモニア水を供給する、
ことを特徴とする請求項10に記載のアンモニア排水処理装置。
【請求項12】
前記排ガス脱硝装置は、
前記排ガスと前記還元剤とを混合する混合器と、
前記排ガスに含まれる窒素酸化物と前記還元剤との還元反応によって前記窒素酸化物を除去する反応器と、
を備え、
前記アンモニア排水供給系統は、前記混合器の内部へ前記アンモニア排水を噴射するアンモニア排水噴射部を備え、
前記非アンモニア水供給系統は、前記アンモニア排水噴射部よりも前記排ガスの流通方向の上流側に配置され、前記混合器の内部へ前記非アンモニア水を噴射する非アンモニア水噴射部を備える、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のアンモニア排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の分野においては、舶用ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる窒素酸化物を低減する排ガス脱硝装置が提案されている。一般に、舶用ディーゼルエンジンは、重油等の化石燃料をシリンダ内の燃焼室に噴射して燃焼させ、これによる燃焼エネルギーを利用して駆動する。排ガス脱硝装置は、上記のように駆動する舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスに、アンモニア水等の還元剤を混合し、排ガス中の窒素酸化物と還元剤との還元反応によって排ガスを脱硝する。船舶外に排出される排ガス中の窒素酸化物の含有量(すなわち窒素酸化物の排出量)は、上記排ガスの脱硝によって低減される。
【0003】
また、船舶の分野においては、近年、舶用ディーゼルエンジンから排出される二酸化炭素の排出量を削減する手法の1つとして、アンモニア混焼技術を採用した舶用ディーゼルエンジン(アンモニア燃焼エンジン)が開発されつつある。アンモニア混焼技術は、舶用燃料として採用されている従来の化石燃料と、燃焼しても二酸化炭素が発生しない燃料としてのアンモニアとを、舶用ディーゼルエンジンの燃焼室に噴射して一緒に燃焼させるものである。これにより、舶用ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる二酸化炭素の含有量(すなわち二酸化炭素の排出量)を削減することができる。
【0004】
上記のようなアンモニア混焼技術が採用された舶用ディーゼルエンジンにおいては、一般に、アンモニア燃料を燃焼室に噴射するためのポンプや配管、燃料噴射弁等から、アンモニア燃料を含有したドレン(以下、アンモニア含有ドレンという)が排出される。例えば、特許文献1には、舶用ディーゼルエンジンから排出されたアンモニア含有ドレン(舶用ディーゼルエンジンからの廃液)を油分とアンモニア成分とに分離し、当該アンモニア成分に水を注入して得られたアンモニア水を、排ガスを脱硝するための還元剤として選択式触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)のユニットに供給する処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6940727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したSCRのユニット等の排ガス脱硝装置に対してアンモニア水を供給する供給系統(配管やポンプ等)からアンモニア水が漏洩する等、アンモニア漏洩のトラブルが発生した場合、排ガス脱硝装置に対するアンモニア水の供給を停止して、供給系統の点検および復旧作業を行う必要がある。この場合、たとえ船舶が航行中であっても、排ガス脱硝装置による排ガスの脱硝を停止しなければならず、船舶外に排出される排ガス中の窒素酸化物の含有量が増加する可能性がある。特に、船舶が航行している海域が窒素酸化物の排出規制海域(ECA:Emission Control Area)である場合、船舶を一旦停泊する等によって排ガスの排出量を抑える必要があり、これに起因して、船舶の航行が阻害される可能性がある。
【0007】
また、上記トラブルが発生した供給系統の点検および復旧作業を行うためには、漏洩したアンモニア水やアンモニアガスを当該供給系統の設置エリアから排除して、この設置エリアの安全を確保する必要がある。しかしながら、上記漏洩したアンモニア水やアンモニアガスの排除には長時間を要するため、当該供給系統の点検および復旧作業の開始までに長時間の待機を余儀なくされる。これに起因して、排ガス脱硝装置による排ガスの脱硝を再開するまでに長時間を要することから、排ガスの脱硝を安定して継続することが困難になる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、排ガスの脱硝を安定して継続しつつ、アンモニア漏洩を適切に管理することができるアンモニア排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスに還元剤を混合して前記排ガスを脱硝する排ガス脱硝装置に対し、前記舶用ディーゼルエンジンのアンモニア燃料に由来するアンモニア排水を前記還元剤として供給するアンモニア排水供給系統と、前記排ガス脱硝装置に対し、アンモニア水とは異なる還元剤である非アンモニア水を前記還元剤として供給する非アンモニア水供給系統と、を備え、前記排ガス脱硝装置および前記非アンモニア水供給系統は、船舶において区画された安全エリアの内部に配置され、前記アンモニア排水供給系統は、前記船舶において前記安全エリアから隔離された管理エリアの内部に配置される、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、前記管理エリアの内部に通じ、前記アンモニア排水供給系統のうち前記管理エリアから前記安全エリアに延在するアンモニア排水供給管を覆うカバー管をさらに備える、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、前記カバー管の内部ガスを前記管理エリアの内部へ流すように前記カバー管の内部を換気するための換気管をさらに備える、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、前記カバー管は、前記排ガス脱硝装置から離間した状態で配置される、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、前記カバー管の内部におけるアンモニアガスの濃度を検出するガス濃度検出部と、検出された前記アンモニアガスの濃度が所定の基準濃度を超過する場合、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給を停止するように前記アンモニア排水供給系統を制御する制御部と、をさらに備え、前記非アンモニア水供給系統は、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給が停止している際に、前記排ガス脱硝装置に対して前記非アンモニア水を供給する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、前記管理エリアの内部におけるアンモニアガスの濃度を検出するガス濃度検出部と、検出された前記アンモニアガスの濃度が所定の基準濃度を超過する場合、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給を停止するように前記アンモニア排水供給系統を制御する制御部と、をさらに備え、前記非アンモニア水供給系統は、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給が停止している際に、前記排ガス脱硝装置に対して前記非アンモニア水を供給する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、前記アンモニア排水供給系統における前記アンモニア排水のアンモニア濃度を計測する濃度計測部と、計測された前記アンモニア濃度が所定の上限濃度を超過する場合、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給を停止するように前記アンモニア排水供給系統を制御する制御部と、をさらに備え、前記非アンモニア水供給系統は、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給が停止している際に、前記排ガス脱硝装置に対して前記非アンモニア水を供給する、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、計測された前記アンモニア濃度が前記上限濃度を超過する場合に前記アンモニア排水を希釈するための清水を供給する清水供給部をさらに備え、前記アンモニア排水供給系統は、前記アンモニア排水を貯蔵するアンモニア排水タンクと、前記アンモニア排水タンクから前記排ガス脱硝装置に通じるアンモニア排水供給管と、を備え、前記清水供給部は、前記アンモニア排水タンクへ前記清水を供給する、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、計測された前記アンモニア濃度が所定の下限濃度未満である場合に前記アンモニア排水の水分量を減らす水分量調整部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、前記還元剤を混合した後の前記排ガスの温度を検出する排ガス温度検出部と、検出された前記排ガスの温度が所定の基準温度未満である場合、前記排ガス脱硝装置に対して供給する前記アンモニア排水の供給量を減らすように前記アンモニア排水供給系統を制御する制御部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、検出された前記排ガスの温度が前記基準温度未満である場合、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給を停止するように前記アンモニア排水供給系統を制御し、前記非アンモニア水供給系統は、前記排ガス脱硝装置に対する前記アンモニア排水の供給が停止している際に、前記排ガス脱硝装置に対して前記非アンモニア水を供給する、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るアンモニア排水処理装置は、上記の発明において、前記排ガス脱硝装置は、前記排ガスと前記還元剤とを混合する混合器と、前記排ガスに含まれる窒素酸化物と前記還元剤との還元反応によって前記窒素酸化物を除去する反応器と、を備え、前記アンモニア排水供給系統は、前記混合器の内部へ前記アンモニア排水を噴射するアンモニア排水噴射部を備え、前記非アンモニア水供給系統は、前記アンモニア排水噴射部よりも前記排ガスの流通方向の上流側に配置され、前記混合器の内部へ前記非アンモニア水を噴射する非アンモニア水噴射部を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、排ガスの脱硝を安定して継続しつつ、アンモニア漏洩を適切に管理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置の一構成例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置のインターロック機能の一例を示すフロー図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置が排ガス脱硝装置に対して還元剤を噴射する際の処理フローの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係るアンモニア排水処理装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0024】
(アンモニア排水処理装置)
本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置の一構成例を示す模式図である。図1には、本実施形態1に係るアンモニア排水処理装置1に加え、舶用ディーゼルエンジン100と、二重管110を介してアンモニア燃料を舶用ディーゼルエンジン100へ供給するアンモニア燃料供給装置101と、二重管111を介して舶用ディーゼルエンジン100から受け入れたアンモニア含有ドレン中のアンモニア成分を除害してアンモニア排水を生成する除害装置102と、舶用ディーゼルエンジン100から排出された排ガスに還元剤を混合して当該排ガスを脱硝する排ガス脱硝装置120と、が図示されている。以下、排ガスといえば、特に説明がない限り、舶用ディーゼルエンジン100から排出された排ガスを意味する。
【0025】
アンモニア排水処理装置1は、舶用ディーゼルエンジン100から排出されたアンモニア含有ドレン中のアンモニア成分を、舶用ディーゼルエンジン100の排ガスを脱硝するための還元剤の1つであるアンモニア水として再利用(有効活用)する装置である。例えば、図1に示すように、アンモニア排水処理装置1は、排ガス脱硝装置120に対してアンモニア排水を還元剤として供給するアンモニア排水供給系統2と、排ガス脱硝装置120に対して非アンモニア水を還元剤として供給する非アンモニア水供給系統3と、を備える。また、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水供給系統2のアンモニア排水供給管22を二重構造にするためのカバー管4と、カバー管4の内部を換気するための換気管5と、アンモニア漏洩を検知するための第1ガス濃度検出部6および第2ガス濃度検出部7と、を備える。
【0026】
また、図1に示すように、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水の残量を検出する残量検出部8と、アンモニア排水のアンモニア濃度を計測する濃度計測部9と、アンモニア排水を希釈するための清水供給部10と、アンモニア排水中の水分量を調整する水分量調整部11と、還元剤を混合した後の排ガスの温度を検出する排ガス温度検出部12と、を備える。また、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水供給系統2においてアンモニア排水を貯蔵するアンモニア排水タンク21の内部圧力を調整するための呼吸弁13aおよび調圧管13bと、陸揚げ対象のアンモニア排水を貯蔵する陸揚げ用タンク14と、アンモニア排水タンク21と陸揚げ用タンク14とを連通する排出管15と、排出管15を開閉する排出弁16と、陸揚げ用タンク14の内部圧力を調整するための呼吸弁17aおよび調圧管17bと、アンモニア排水処理装置1の各動作を制御する制御部18と、を備える。
【0027】
アンモニア排水供給系統2は、排ガス脱硝装置120に対してアンモニア排水を還元剤として供給する供給系統である。例えば、図1に示すように、アンモニア排水供給系統2は、アンモニア排水タンク21と、アンモニア排水供給管22と、アンモニア排水噴射部23と、自動閉弁24と、開閉弁25と、第1ポンプユニット26と、戻り管27と、第1ドージングユニット28と、を備える。
【0028】
アンモニア排水タンク21は、アンモニア排水を貯蔵するタンクである。例えば、図1に示すように、アンモニア排水タンク21は、アンモニア排水管112を介して除害装置102と連通している。アンモニア排水管112には、図1に示すように、アンモニア排水弁113が設けられている。アンモニア排水弁113は、例えば手動弁等によって構成され、アンモニア排水管112を開閉する。例えば、アンモニア排水弁113は、通常、開状態にされており、アンモニア漏洩のトラブル発生時またはアンモニア排水タンク21のメンテナンス時等において閉状態にされる。アンモニア排水弁113が開状態である場合、アンモニア排水タンク21は、アンモニア排水管112を介して除害装置102からアンモニア排水W1を受け入れ、受け入れたアンモニア排水W1を貯蔵する。アンモニア排水弁113が閉状態である場合、除害装置102からアンモニア排水タンク21へのアンモニア排水W1の供給が停止する。
【0029】
本実施形態において、アンモニア排水W1は、舶用ディーゼルエンジン100のアンモニア燃料に由来するアンモニア排水である。例えば、アンモニア排水W1は、舶用ディーゼルエンジン100から排出されたアンモニア含有ドレン中のアンモニア成分を除害装置102が処理することによって生成される。なお、アンモニア含有ドレンは、アンモニア燃料供給装置101から舶用ディーゼルエンジン100に供給されたアンモニア燃料を含有するドレンである。
【0030】
アンモニア排水供給管22は、アンモニア排水タンク21から排ガス脱硝装置120に通じる配管の一例である。詳細には、図1に示すように、アンモニア排水供給管22の入口端はアンモニア排水タンク21と接合され、アンモニア排水供給管22の出口端は排ガス脱硝装置120の混合器121と接合されている。このアンモニア排水供給管22の出口端には、図1に示すように、アンモニア排水噴射部23が設けられている。アンモニア排水噴射部23は、例えば、2流体ノズル等の噴射ノズルによって構成され、図1に示すように、混合器121の内部に噴射口を向けるように配置される。アンモニア排水噴射部23は、アンモニア排水供給管22を介してアンモニア排水タンク21から供給されたアンモニア排水W1を、混合器121の内部へ噴射(噴霧)する。
【0031】
また、アンモニア排水供給管22には、その入口端から出口端に向かって順に、自動閉弁24と、開閉弁25と、第1ポンプユニット26と、第1ドージングユニット28とが設けられている。すなわち、アンモニア排水供給管22は、自動閉弁24および開閉弁25を介してアンモニア排水タンク21と第1ポンプユニット26とを連通する第1供給管22aと、第1ポンプユニット26と第1ドージングユニット28とを連通する第2供給管22bと、第1ドージングユニット28と混合器121とを連通する第3供給管22cとによって構成される。このようなアンモニア排水供給管22は、アンモニア排水タンク21の内部に貯蔵されたアンモニア排水W1を、排ガスを脱硝するための還元剤として混合器121の内部へ供給する。
【0032】
自動閉弁24は、図1に示すように、第1供給管22aの中途部であって開閉弁25よりも上流側(アンモニア排水タンク21側)に設けられる。自動閉弁24は、正常な場合において、第1供給管22a内でのアンモニア排水の流通を可能とする開状態である。上記正常な場合として、例えば、アンモニア排水供給系統2からアンモニア排水W1が漏洩していない等、アンモニア漏洩のトラブルが発生していない場合が挙げられる。また、自動閉弁24は、異常な場合において、上記開状態から閉状態に自動で駆動する。これにより、自動閉弁24は、アンモニア排水供給管22内でのアンモニア排水の流通を、第1供給管22aにおいて停止させる。上記異常な場合として、例えば、アンモニア排水供給系統2からアンモニア排水W1が漏洩した等、アンモニア漏洩のトラブルが発生した場合が挙げられる。
【0033】
開閉弁25は、例えば手動弁等によって構成され、図1に示すように、第1供給管22aの中途部であって自動閉弁24よりも下流側に設けられる。開閉弁25は、上記正常な場合において、自動閉弁24と同様に開状態である。また、開閉弁25は、上記異常な場合において、作業者の操作等によって開状態から閉状態に変更される。この場合、開閉弁25は、アンモニア排水供給管22内でのアンモニア排水の流通を、第1供給管22aにおいて停止させる。
【0034】
第1ポンプユニット26は、例えばポンプおよび背圧弁等によって構成され、図1に示すように、アンモニア排水供給管22の中途部(第1供給管22aと第2供給管22bとの間)に設けられる。第1ポンプユニット26は、アンモニア排水供給管22内のアンモニア排水W1を、アンモニア排水タンク21側から混合器121側に向かって圧送する。この第1ポンプユニット26の作用により、アンモニア排水供給管22内のアンモニア排水W1の圧力は、当該アンモニア排水W1が第1ドージングユニット28を通って混合器121内へ流通するために必要な圧力に調整される。
【0035】
戻り管27は、図1に示すように、第1ポンプユニット26とアンモニア排水タンク21とを連通するように配管される。戻り管27は、アンモニア排水タンク21から第1供給管22aを介して第1ポンプユニット26へ流通するアンモニア排水W1のうち、第1ポンプユニット26の能力を超える余剰分のアンモニア排水を第1ポンプユニット26からアンモニア排水タンク21へ戻す。これにより、戻り管27は、第1ポンプユニット26の負荷を軽減する。
【0036】
第1ドージングユニット28は、アンモニア排水供給管22内を通って混合器121に還元剤として供給されるアンモニア排水W1の流量を調整するものである。詳細には、図1に示すように、第1ドージングユニット28は、アンモニア排水供給管22の中途部(第2供給管22bと第3供給管22cとの間)に設けられる。特に図示しないが、第1ドージングユニット28には、船舶内に設置された空気供給装置から配管等を通じて圧縮空気が供給される。第1ドージングユニット28は、この供給された圧縮空気とともにアンモニア排水W1を、アンモニア排水供給管22を介して混合器121内のアンモニア排水噴射部23へ供給する。
【0037】
非アンモニア水供給系統3は、排ガス脱硝装置120に対して非アンモニア水を還元剤として供給する供給系統である。例えば、図1に示すように、非アンモニア水供給系統3は、非アンモニア水タンク31と、非アンモニア水供給管32と、非アンモニア水噴射部33と、第2ポンプユニット34と、第2ドージングユニット35と、を備える。
【0038】
非アンモニア水タンク31は、排ガスの脱硝に用いられる還元剤を貯蔵する還元剤タンクの一例であり、図1に示すように、当該還元剤として非アンモニア水W2を貯蔵する。非アンモニア水W2は、アンモニア水とは異なる還元剤であって、アンモニア水に比べて毒性が少ない(好ましくは人体に対する毒性がない)ものである。このような非アンモニア水W2としては、例えば、尿素水等が挙げられる。特に図示しないが、非アンモニア水W2は、船舶内の還元剤供給源から配管を介して非アンモニア水タンク31へ適宜供給(補給)される。
【0039】
非アンモニア水供給管32は、非アンモニア水タンク31から排ガス脱硝装置120に通じる配管の一例である。詳細には、図1に示すように、非アンモニア水供給管32の入口端は非アンモニア水タンク31と接合され、非アンモニア水供給管32の出口端は排ガス脱硝装置120の混合器121と接合されている。このような非アンモニア水供給管32は、非アンモニア水タンク31の内部に貯蔵された非アンモニア水W2を、排ガスを脱硝するための還元剤として混合器121の内部へ供給する。
【0040】
また、図1に示すように、非アンモニア水供給管32には、その入口端から出口端に向かって順に、第2ポンプユニット34と、第2ドージングユニット35とが設けられている。この非アンモニア水供給管32の出口端には、図1に示すように、非アンモニア水噴射部33が設けられている。非アンモニア水噴射部33は、例えば、2流体ノズル等の噴射ノズルによって構成され、図1に示すように、混合器121の内部に噴射口を向けるように配置される。好ましくは、図1に示すように、非アンモニア水噴射部33は、アンモニア排水噴射部23よりも排ガスの流通方向の上流側に配置される。非アンモニア水噴射部33は、非アンモニア水供給管32を介して非アンモニア水タンク31から供給された非アンモニア水W2を、混合器121の内部へ噴射(噴霧)する。
【0041】
第2ポンプユニット34は、例えばポンプおよび背圧弁等によって構成され、図1に示すように、非アンモニア水供給管32の中途部に設けられる。第2ポンプユニット34は、非アンモニア水供給管32内の非アンモニア水W2を、非アンモニア水タンク31側から混合器121側に向かって圧送する。この第2ポンプユニット34の作用により、非アンモニア水供給管32内の非アンモニア水W2の圧力は、当該非アンモニア水W2が第2ドージングユニット35を通って混合器121内へ流通するために必要な圧力に調整される。
【0042】
第2ドージングユニット35は、非アンモニア水供給管32内を通って混合器121に還元剤として供給される非アンモニア水W2の流量を調整するものである。詳細には、図1に示すように、第2ドージングユニット35は、非アンモニア水供給管32の中途部(第2ポンプユニット34よりも下流側)に設けられる。特に図示しないが、第2ドージングユニット35には、船舶内に設置された空気供給装置から配管等を通じて圧縮空気が供給される。第2ドージングユニット35は、この供給された圧縮空気とともに非アンモニア水W2を、非アンモニア水供給管32を介して混合器121内の非アンモニア水噴射部33へ供給する。
【0043】
ここで、アンモニア排水処理装置1を搭載する船舶においては、図1に示すように、安全エリアR1の内部に非アンモニア水供給系統3が配置され、管理エリアR2の内部にアンモニア排水供給系統2が配置される。また、アンモニア排水処理装置1から還元剤が供給される排ガス脱硝装置120は、図1に示すように、安全エリアR1の内部に配置される。安全エリアR1は、船舶において区画された安全なエリアである。安全エリアR1内の空気中には、アンモニアガス等の有毒ガスが存在しない。管理エリアR2は、船舶において安全エリアR1から隔離されたエリアである。管理エリアR2の内部においては、たとえアンモニア排水供給系統2等からアンモニア排水やアンモニアガスの漏洩(すなわちアンモニア漏洩)が発生しても、漏洩したアンモニア排水やアンモニアガスを適切に排除し得るように、当該アンモニア漏洩を適切に管理することが可能である。本実施形態において、例えば、安全エリアR1は、舶用ディーゼルエンジン100が搭載される機関室内において区画されたエリアである。管理エリアR2は、当該機関室内において安全エリアR1から壁等によって気密に隔離されたエリアである。なお、安全エリアR1および管理エリアR2は、双方とも、作業者が出入りすることが可能な構造を有している。しかし、上記アンモニア漏洩のトラブルが管理エリアR2内において発生した場合、管理エリアR2内への作業者の立ち入りは禁止される。
【0044】
カバー管4は、上述したアンモニア排水供給管22を適宜覆うことによって二重管を構成するための配管である。詳細には、図1に示すように、カバー管4は、管理エリアR2の内部に通じる態様で管理エリアR2から安全エリアR1に延在するように設けられ、アンモニア排水供給系統2の延在管22dを覆う。延在管22dは、図1に示すように、アンモニア排水供給系統2のうち管理エリアR2から安全エリアR1に延在するアンモニア排水供給管22の延在部である。例えば、延在管22dは、第3供給管22cの一部であって、管理エリアR2から安全エリアR1内の排ガス脱硝装置120に向かって延在し、混合器121に接合される。延在管22dの出口端は、アンモニア排水供給管22の出口端であって、図1に示すように、アンモニア排水噴射部23が設けられた状態になっている。カバー管4は、このような延在管22dを気密に覆う。これにより、延在管22dを内側管とし且つカバー管4を外側管とする二重管が構成される。カバー管4は、このように延在管22dを覆うことにより、延在管22dから漏洩したアンモニア排水およびアンモニアガス(当該アンモニア排水から揮発したアンモニアガス)が安全エリアR1へ漏洩することを防止することができる。
【0045】
また、カバー管4は、排ガス脱硝装置120に直接接合されてもよいが、図1に示すように、排ガス脱硝装置120(詳細には混合器121)から離間した状態で配置されることが好ましい。この場合、カバー管4の延在端部4aは、図1に示すように、混合器121から離間した状態となっている。延在管22dは、カバー管4の延在端部4aに形成された貫通孔(図示せず)を介して延在した態様で、混合器121に接合されている。上記カバー管4と排ガス脱硝装置120との離間により、高熱状態の混合器121からカバー管4への熱伝導を抑制することができ、この結果、漏洩したアンモニア排水の蒸発によるアンモニアガスが急激に発生する事態を防止することができる。
【0046】
換気管5は、上述したカバー管4の内部を換気するための配管である。例えば、図1に示すように、換気管5は、カバー管4から延在するようにカバー管4に接合され、このカバー管4を介して管理エリアR2の内部と連通する。カバー管4の内部を効率よく換気するという観点から、換気管5は、カバー管4の延在端部4aの近傍に接合されることが好ましい。また、換気管5の延在端部は、安全エリアR1から空気を吸入し得る吸入口となっている。この換気管5の延在端には、図1に示すように、逆止弁5aが設けられている。逆止弁5aは、安全エリアR1から換気管5の内部へのガスの流入を許容し且つ換気管5の内部から安全エリアR1へのガスの流出を阻止する。換気管5は、安全エリアR1から流入した空気により、カバー管4の内部ガスを管理エリアR2の内部へ流すようにカバー管4の内部を換気する。
【0047】
なお、管理エリアR2には、図1に示すように、換気装置40が設けられている。換気装置40は、換気ファン等によって構成され、管理エリアR2の内部ガスを順次吸引し、吸引した内部ガスを、二重管等の排気管(図示せず)を介して管理エリアR2の外部(例えばガスを貯蔵するタンク等)へ順次排出する。上述した換気管5は、この換気装置40の作用により、カバー管4の内部を換気する。
【0048】
第1ガス濃度検出部6は、図1に示すように、カバー管4に設けられ、カバー管4の内部におけるアンモニアガスの濃度を検出する。詳細には、第1ガス濃度検出部6は、カバー管4の内壁とアンモニア排水供給管22(具体的には延在管22d)の外壁との間の空間に存在する内部ガス中のアンモニアガスの濃度を検出する。第1ガス濃度検出部6は、時系列に沿って連続的または断続的に上記アンモニアガスの濃度を検出し、その都度、検出したアンモニアガスの濃度を示す検出信号を制御部18に送信する。
【0049】
第2ガス濃度検出部7は、図1に示すように、管理エリアR2の内部に設けられ、管理エリアR2の内部におけるアンモニアガスの濃度を検出する。詳細には、第2ガス濃度検出部7は、管理エリアR2の内部ガス(空気)中に含まれるアンモニアガスの濃度を検出する。第2ガス濃度検出部7は、時系列に沿って連続的または断続的に上記アンモニアガスの濃度を検出し、その都度、検出したアンモニアガスの濃度を示す検出信号を制御部18に送信する。
【0050】
残量検出部8は、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア排水の残量を検出するものである。詳細には、図1に示すように、残量検出部8は、アンモニア排水タンク21に設けられ、アンモニア排水タンク21の内部に貯蔵されたアンモニア排水W1の残量(貯蔵量)を検出する。例えば、残量検出部8は、アンモニア排水タンク21の内部におけるアンモニア排水W1の液面レベルを検出し、検出した液面レベルとアンモニア排水タンク21の内径とをもとに、アンモニア排水W1の残量を算出する。残量検出部8は、時系列に沿って連続的または断続的に上記アンモニア排水W1の残量を検出し、その都度、検出した残量を示す検出信号を制御部18に送信する。
【0051】
濃度計測部9は、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア排水のアンモニア濃度を計測するものである。詳細には、図1に示すように、濃度計測部9は、アンモニア排水タンク21に設けられ、アンモニア排水タンク21の内部に貯蔵されたアンモニア排水W1に含まれるアンモニア成分の濃度(すなわちアンモニア濃度)を計測する。濃度計測部9によるアンモニア濃度の計測手法としては、例えば、アンモニア排水W1のpH、電気伝導率、比重または温度を用いるもの、あるいは、アンモニア排水W1の密度を用いるもの、アンモニア排水W1から蒸発するアンモニアガスの濃度を用いるもの等が挙げられる。濃度計測部9は、時系列に沿って連続的または断続的に上記アンモニア濃度を計測し、その都度、計測されたアンモニア濃度を示す計測信号を制御部18に送信する。
【0052】
清水供給部10は、アンモニア排水を希釈するための清水をアンモニア排水供給系統2へ供給するものである。例えば、清水供給部10は、清水タンクおよびポンプ等(いずれも図示せず)を備え、図1に示すように、清水供給管10aを介して清水をアンモニア排水タンク21へ供給し得るように構成される。清水供給部10からアンモニア排水タンク21へ供給される清水としては、例えば、船舶外から積み込まれた清水、船舶内で造られた清水、舶用ディーゼルエンジン100から外出されるドレン水等が挙げられる。清水供給部10は、上述した濃度計測部9によって計測されたアンモニア濃度が所定の上限濃度を超過する場合に、アンモニア排水タンク21へ清水を供給する。これにより、アンモニア排水タンク21内のアンモニア排水W1のアンモニア濃度は、当該上限濃度以下の濃度に制御される。
【0053】
ここで、アンモニア排水W1のアンモニア濃度が過度に高い場合、アンモニア排水W1がアンモニア排水供給管22の内部で沸騰する、あるいは、少しの負圧によって当該アンモニア排水W1にキャビテーションが発生する可能性がある。上記アンモニア濃度の上限濃度は、これらの事態が発生しないアンモニア排水W1のアンモニア濃度の最大値に基づいて設定される。すなわち、アンモニア排水W1のアンモニア濃度が当該上限濃度以下である場合、これらの事態の発生を回避することが可能である。
【0054】
水分量調整部11は、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア排水の水分量を減らすように調整するものである。詳細には、図1に示すように、水分量調整部11は、アンモニア排水タンク21に設けられ、アンモニア排水タンク21の内部に貯蔵されたアンモニア排水W1を電気分解する等の手法により、当該アンモニア排水W1に含まれる水分の含有量(すなわち水分量)を減らす。例えば、水分量調整部11は、上述した濃度計測部9によって計測されたアンモニア濃度が所定の下限濃度未満である場合に、当該アンモニア排水W1の水分量を減らす。これにより、アンモニア排水タンク21内のアンモニア排水W1のアンモニア濃度は、当該下限濃度以上の濃度に制御される。
【0055】
ここで、アンモニア排水W1のアンモニア濃度が過度に低い場合、アンモニア排水W1の還元剤としての効力(還元力)が弱まる。このため、アンモニア排水供給系統2から排ガス脱硝装置120に供給するアンモニア排水W1の供給量を増やしても、排ガス脱硝装置120から排出された排ガス中の窒素酸化物の含有量(排出量)をECAの規制値以下に低減できない可能性がある。これに加え、排ガスと混合したアンモニア排水W1が当該排ガスの熱によって蒸発する際に当該排ガスの熱を奪い、これにより、当該排ガスの温度が脱硝に必要な温度未満に低下することから、当該排ガスの脱硝率が低下し、さらには、排ガスとともにアンモニアが排ガス脱硝装置120から漏れ出るリークアンモニアが起こる可能性がある。上記アンモニア濃度の下限濃度は、これらの事態が発生しないアンモニア排水W1のアンモニア濃度の最小値に基づいて設定される。すなわち、アンモニア排水W1のアンモニア濃度が当該下限濃度以上である場合、これらの事態の発生を回避することが可能である。
【0056】
排ガス温度検出部12は、排ガス脱硝装置120において還元剤を混合した後の排ガスの温度を検出するものである。詳細には、図1に示すように、排ガス温度検出部12は、排ガス脱硝装置120の混合器121と反応器122とを連通する送出管124に設けられ、送出管124を介して混合器121から反応器122へ送出される排ガスの温度を検出する。当該排ガスは、混合器121において還元剤を混合した後の排ガスである。当該還元剤は、アンモニア排水供給系統2から供給されたアンモニア排水W1、または非アンモニア水供給系統3から供給された非アンモニア水である。なお、排ガス温度検出部12は、混合器121にアンモニア排水W1が供給された場合のみ、上記排ガスの温度を検出してもよい。排ガス温度検出部12は、時系列に沿って連続的または断続的に上記排ガスの温度を検出し、その都度、検出された排ガスの温度を示す検出信号を制御部18に送信する。
【0057】
呼吸弁13aおよび調圧管13bは、アンモニア排水タンク21の内部圧力を調整するための装置である。詳細には、図1に示すように、調圧管13bは、アンモニア排水タンク21の内部に通じるように、アンモニア排水タンク21の所定部(例えば上端部)に接合される。特に図示しないが、調圧管13bは、アンモニア排水タンク21とは反対側において、二重管等の排気管を介して管理エリアR2の外部(例えば大気放出するための希釈装置やスクラバ等)に通じている。呼吸弁13aは、図1に示すように、調圧管13bの中途部に設けられる。アンモニア排水タンク21の内部圧力が過度に高い場合、呼吸弁13aは、調圧管13bを介してアンモニア排水タンク21から当該内部ガスを排出させる。これにより、当該内部圧力は、適度に低下する。また、アンモニア排水タンク21の内部圧力が過度に低い場合、呼吸弁13aは、調圧管13bを介してアンモニア排水タンク21の内部へ空気等のガスを流入させる。これにより、当該内部圧力は、適度に上昇する。
【0058】
陸揚げ用タンク14は、陸揚げの対象とするアンモニア排水を貯蔵するタンクである。例えば、図1に示すように、陸揚げ用タンク14は、排出管15を介してアンモニア排水タンク21と連通するように構成され、安全エリアR1の内部に配置される。排出管15には、図1に示すように、排出弁16が設けられている。排出弁16が開状態である場合、陸揚げ用タンク14は、排出管15を介してアンモニア排水タンク21から排出されたアンモニア排水を受け入れて貯蔵する。排出弁16が閉状態である場合、上記アンモニア排水タンク21から陸揚げ用タンク14へのアンモニア排水の排出は行われない。なお、排出弁16は、作業者の操作によって開閉する手動弁であってもよいし、アンモニア排水タンク21内のアンモニア排水W1の残量に応じて開閉する自動弁であってもよい。
【0059】
呼吸弁17aおよび調圧管17bは、陸揚げ用タンク14の内部圧力を調整するための装置である。例えば、図1に示すように、調圧管17bは、陸揚げ用タンク14の内部に通じるよう陸揚げ用タンク14に接合される。特に図示しないが、調圧管17bは、陸揚げ用タンク14とは反対側において、例えば大気放出するための希釈装置やスクラバ等の装置に通じている。呼吸弁17aは、図1に示すように、調圧管17bの中途部に設けられる。陸揚げ用タンク14の内部圧力が過度に高い場合、呼吸弁17aは、調圧管17bを介して陸揚げ用タンク14から内部ガスを排出させる。これにより、当該内部圧力は、適度に低下する。また、陸揚げ用タンク14の内部圧力が過度に低い場合、呼吸弁17aは、調圧管17bを介して陸揚げ用タンク14の内部へ空気等のガスを流入させる。これにより、当該内部圧力は、適度に上昇する。
【0060】
制御部18は、アンモニア排水処理装置1から排ガス脱硝装置120に対する還元剤の供給に関する各種動作を制御する。詳細には、制御部18は、第1ガス濃度検出部6または第2ガス濃度検出部7によるアンモニアガスの濃度検出結果に基づいて、アンモニア排水供給系統2および非アンモニア水供給系統3を制御する。また、制御部18は、アンモニア漏洩が発生した場合等、状況に応じて、アンモニア排水供給系統2から排ガス脱硝装置120へのアンモニア排水W1の供給を停止(禁止)するインターロック機能を有している。
【0061】
例えば、第1ガス濃度検出部6または第2ガス濃度検出部7によって検出されたアンモニアガスの濃度が所定の基準濃度以下である場合、制御部18は、排ガス脱硝装置120に対してアンモニア排水W1を供給するように、アンモニア排水供給系統2を制御する。また、上記検出されたアンモニアガスの濃度が上記基準濃度を超過する場合、制御部18は、上記アンモニア排水W1の供給を停止するようにアンモニア排水供給系統2を制御する。
【0062】
上記基準濃度は、アンモニア漏洩が発生した場合に検出されるアンモニアガスの濃度に基づいて設定される。すなわち、アンモニア漏洩が発生していない場合、検出されるアンモニアガスの濃度は上記基準濃度以下であり、アンモニア漏洩が発生した場合、検出されるアンモニアガスの濃度は上記基準濃度を超過する。
【0063】
また、残量検出部8によって検出されたアンモニア排水W1の残量が過度に少ない場合、制御部18は、排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給を停止するように、アンモニア排水供給系統2を制御する。濃度計測部9によって計測されたアンモニア濃度が上記の上限濃度を超過する場合、制御部18は、排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給を停止するように、アンモニア排水供給系統2を制御する。
【0064】
また、排ガス温度検出部12によって検出された排ガスの温度が所定の基準温度未満である場合、制御部18は、排ガス脱硝装置120に対して供給するアンモニア排水W1の供給量を減らす、または当該アンモニア排水W1の供給を停止するように、アンモニア排水供給系統2を制御する。
【0065】
上記基準温度は、還元剤を混合した排ガスを脱硝するために必要な温度に基づいて設定される。すなわち、当該排ガスの温度が上記基準温度以上である場合、当該排ガスを十分に脱硝することが可能であり、当該排ガスの温度が上記基準温度未満である場合、当該排ガスの脱硝を行えない可能性がある。
【0066】
また、制御部18は、排ガスの脱硝に用いる還元剤としてアンモニア排水W1または非アンモニア水W2のいずれかを排ガス脱硝装置120へ供給するように、アンモニア排水供給系統2および非アンモニア水供給系統3を制御する。例えば、非アンモニア水供給系統3は、排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給が停止している際に、排ガス脱硝装置120に対して非アンモニア水W2を供給する。また、非アンモニア水供給系統3は、排ガス脱硝装置120に対してアンモニア排水W1が供給されている際に、排ガス脱硝装置120に対する非アンモニア水W2の供給を停止する。
【0067】
(舶用ディーゼルエンジン)
舶用ディーゼルエンジン100は、プロペラ軸を介して船舶の推進用プロペラを駆動回転させる推進用の機関である。具体的には、舶用ディーゼルエンジン100は、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド型ディーゼルエンジン等に例示される2ストロークディーゼルエンジンである。特に、舶用ディーゼルエンジン100は、化石燃料およびアンモニア燃料の少なくとも1つを燃焼させることによって駆動するアンモニア燃焼エンジンである。なお、化石燃料は、ディーゼル燃料、留出油、残渣油等、原油から精製され得る燃料一般を意味する。このような舶用ディーゼルエンジン100は、図1に示すように、船舶の機関室内に区画された安全エリアR1の内部に配置される。
【0068】
特に図示しないが、舶用ディーゼルエンジン100は、燃料噴射弁、化石燃料用ポンプおよびアンモニア燃料用ポンプ等の燃料噴射系統を備えている。この燃料噴射系統において、化石燃料は、化石燃料用ポンプから配管を介して燃料噴射弁に供給される。アンモニア燃料は、アンモニア燃料供給装置101から供給されたアンモニア燃料であり、アンモニア燃料用ポンプから配管(詳細には二重管)を介して燃料噴射弁に供給される。燃料噴射弁は、供給された燃料(化石燃料およびアンモニア燃料の少なくとも1つ)をシリンダ内の燃焼室へ噴射する。
【0069】
また、舶用ディーゼルエンジン100においては、アンモニア燃料を含有するアンモニア含有ドレンが発生する。例えば、当該アンモニア含有ドレンとしては、燃料噴射弁から排出されるドレン、アンモニア燃料用ポンプから排出されるドレン、アンモニア燃料用ポンプと燃料噴射弁とを連通する二重管から排出されるドレン等が挙げられる。このようなアンモニア含有ドレンは、舶用ディーゼルエンジン100から二重管111を介して除害装置102へ送出される。二重管111は、図1に示すように、舶用ディーゼルエンジン100と除害装置102とを連通する二重構造の配管である。
【0070】
(アンモニア燃料供給装置)
アンモニア燃料供給装置101は、舶用ディーゼルエンジン100にアンモニア燃料(液体アンモニア)を供給する装置である。例えば、アンモニア燃料供給装置101は、アンモニア燃料用のタンクおよびポンプ等の装置(いずれも図示せず)を備え、図1に示すように、上記安全エリアR1から隔離された管理エリアR2の内部に配置される。アンモニア燃料供給装置101は、二重管110を介して舶用ディーゼルエンジン100にアンモニア燃料を供給する。二重管110は、図1に示すように、アンモニア燃料供給装置101と舶用ディーゼルエンジン100とを連通する二重構造の配管である。
【0071】
(除害装置)
除害装置102は、舶用ディーゼルエンジン100のアンモニア燃料に由来するアンモニア排水W1を生成する装置である。例えば、除害装置102は、アンモニア含有ドレンを処理する分離器等の装置(図示せず)や、アンモニア含有ドレン由来のアンモニア成分からアンモニア排水W1を生成する装置(図示せず)等を備え、図1に示すように、管理エリアR2の内部に配置される。除害装置102は、二重管111を介して舶用ディーゼルエンジン100からアンモニア含有ドレンを受け入れ、受け入れたアンモニア含有ドレンからアンモニアガス等のアンモニア成分を得る。ついで、除害装置102は、得られたアンモニア成分に清水を加える等の処理により、当該アンモニア成分を除害してアンモニア排水W1を生成する。生成されたアンモニア排水W1は、除害装置102からアンモニア排水管112を介してアンモニア排水タンク21に供給される。
【0072】
(排ガス脱硝装置)
排ガス脱硝装置120は、舶用ディーゼルエンジン100から排出された排ガス中の窒素酸化物を低減する(すなわち当該排ガスを脱硝する)装置である。例えば、図1に示すように、排ガス脱硝装置120は、混合器121と、反応器122と、排ガス管123、125と、送出管124とを備え、安全エリアR1の内部に配置される。
【0073】
混合器121は、排ガスと還元剤とを混合するものである。例えば、図1に示すように、混合器121の内部には、アンモニア排水供給系統2のアンモニア排水噴射部23と、非アンモニア水供給系統3の非アンモニア水噴射部33とが配置されている。混合器121は、排ガス管123を介して舶用ディーゼルエンジン100からの排ガスを受け入れ、受け入れた排ガスと還元剤とを混合する。当該還元剤は、アンモニア排水噴射部23から噴射されるアンモニア排水W1と、非アンモニア水噴射部33から噴射される非アンモニア水W2とのいずれかである。混合器121は、このように還元剤を混合した後の排ガスを、送出管124を介して反応器122へ送出する。
【0074】
反応器122は、還元剤が混合された排ガスを脱硝するものである。例えば、反応器122は、触媒層を有する触媒反応器等によって構成され、図1に示すように、混合器121の後段に配置される。反応器122は、還元剤が混合された排ガスを混合器121から受け入れ、受け入れた排ガスに含まれる窒素酸化物と当該還元剤との還元反応を触媒作用によって選択的に進行(促進)させる。これにより、反応器122は、当該排ガス中の窒素酸化物を除去(脱硝)して、当該窒素酸化物の排出量を低減する。また、反応器122の出側には、図1に示すように、排ガス管125が接続されている。排ガス管125は、船舶の煙突(図示せず)に通じる配管であり、反応器122から送出された排ガス(脱硝された排ガス)を、煙突を介して船舶の外部に排出する。
【0075】
なお、反応器122によって脱硝される排ガス中の窒素酸化物としては、例えば、化石燃料の燃焼によって発生するNOx、アンモニア燃料の燃焼によって発生するN2O等が挙げられる。
【0076】
(インターロック機能)
つぎに、アンモニア排水処理装置1のインターロック機能について説明する。アンモニア排水処理装置1において、制御部18は、アンモニア漏洩または排ガスの脱硝に関するトラブルが発生した場合に、排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給を停止(禁止)するインターロック機能を有している。図2は、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置のインターロック機能の一例を示すフロー図である。アンモニア排水処理装置1は、図2に示すステップS101~S111の各処理手順を実行することにより、排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給開始を、トラブルの有無に応じて許可または禁止する。
【0077】
詳細には、図2に示すように、アンモニア排水処理装置1は、安全装置が作動中であるか否かを判断する(ステップS101)。ステップS101において、安全装置は、アンモニア漏洩の検知または管理エリアR2の清浄化等に関する装置である。例えば、当該安全装置として、第1ガス濃度検出部6、第2ガス濃度検出部7および換気装置40等が挙げられる。制御部18は、当該安全装置から動作状態を示す電気信号を受信し、受信した電気信号をもとに、当該安全装置が正常に作動中であるか否かを判断する。
【0078】
ステップS101において安全装置が正常に作動中である場合(ステップS101、Yes)、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア漏洩の有無を判断する(ステップS102)。
【0079】
ステップS102において、制御部18は、第1ガス濃度検出部6から検出信号を受信し、受信した検出信号をもとに、カバー管4の内部におけるアンモニアガスの濃度を取得する。制御部18は、この取得したアンモニアガスの濃度(検出値)が上述した基準濃度を超過する場合、カバー管4の内部においてアンモニア漏洩が発生した(アンモニア漏洩あり)と判断する。また、制御部18は、この取得したアンモニアガスの濃度が上述した基準濃度以下である場合、カバー管4の内部においてアンモニア漏洩が発生していない(アンモニア漏洩なし)と判断する。
【0080】
これに並行して、制御部18は、第2ガス濃度検出部7から検出信号を受信し、受信した検出信号をもとに、管理エリアR2の内部におけるアンモニアガスの濃度を取得する。制御部18は、この取得したアンモニアガスの濃度(検出値)が上述した基準濃度を超過する場合、管理エリアR2の内部においてアンモニア漏洩ありと判断する。また、制御部18は、この取得したアンモニアガスの濃度が上述した基準濃度以下である場合、管理エリアR2の内部においてアンモニア漏洩なしと判断する。
【0081】
ステップS102においてアンモニア漏洩なしの場合(ステップS102、No)、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア排水W1の残量を検出する(ステップS103)。ステップS103において、残量検出部8は、アンモニア排水タンク21の内部に貯蔵されているアンモニア排水W1の残量を検出し、この検出した残量を示す検出信号を制御部18に送信する。
【0082】
上述したステップS103を実行後、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア排水W1の残量が所定の基準残量以上である否かを判断する(ステップS104)。
【0083】
ステップS104において、制御部18は、残量検出部8から検出信号を受信し、受信した検出信号をもとに、ステップS103で検出されたアンモニア排水W1の残量を取得する。制御部18は、この取得したアンモニア排水W1の残量と上記基準残量とを比較し、これらの比較結果をもとに、アンモニア排水W1の残量が基準残量以上である否かを判断する。上記基準残量は、排ガスの脱硝に必要なアンモニア排水W1の供給量を確保するために、アンモニア排水タンク21の内部に貯蔵すべきアンモニア排水W1の下限残量に基づいて設定される。すなわち、アンモニア排水W1の残量が基準残量以上であれば、アンモニア排水供給系統2は、排ガスの脱硝に必要な量のアンモニア排水W1を排ガス脱硝装置120の混合器121へ供給し続けることが可能となる。
【0084】
アンモニア排水W1の残量が基準残量以上である場合(ステップS104、Yes)、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア排水W1のアンモニア濃度を計測する(ステップS105)。ステップS105において、濃度計測部9は、アンモニア排水タンク21の内部に貯蔵されているアンモニア排水W1のアンモニア濃度を計測し、この計測したアンモニア濃度を示す計測信号を制御部18に送信する。
【0085】
上述したステップS105を実行後、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア排水W1のアンモニア濃度が上限濃度以下である否かを判断する(ステップS106)。ステップS106において、制御部18は、濃度計測部9から計測信号を受信し、受信した計測信号をもとに、ステップS105で計測されたアンモニア排水W1のアンモニア濃度を取得する。制御部18は、この取得したアンモニア排水W1のアンモニア濃度と上述した上限濃度とを比較し、これらの比較結果をもとに、アンモニア排水W1のアンモニア濃度が上限濃度以下である否かを判断する。
【0086】
アンモニア排水W1のアンモニア濃度が上限濃度以下である場合(ステップS106、Yes)、アンモニア排水処理装置1は、舶用ディーゼルエンジン100のエンジン負荷を取得する(ステップS107)。ステップS107において、制御部18は、舶用ディーゼルエンジン100からエンジン負荷を示す電気信号を受信し、この受信した電気信号をもとに、舶用ディーゼルエンジン100の現在のエンジン負荷を取得する。
【0087】
上述したステップS107を実行後、アンモニア排水処理装置1は、舶用ディーゼルエンジン100のエンジン負荷が所定の基準負荷以上である否かを判断する(ステップS108)。ステップS108において、制御部18は、ステップS107で取得したエンジン負荷と所定の基準負荷とを比較し、これらの比較結果をもとに、現在のエンジン負荷が基準負荷以上である否かを判断する。例えば、上記基準負荷は、排ガス脱硝装置120による排ガスの脱硝が必要となるエンジン負荷の最小値に基づいて設定される。
【0088】
エンジン負荷が基準負荷以上である場合(ステップS108、Yes)、アンモニア排水処理装置1は、排ガス脱硝装置120に対する非アンモニア水W2の供給が停止中であるか否かを判断する(ステップS109)。ステップS109において、制御部18は、非アンモニア水タンク31の内部に貯蔵された非アンモニア水W2の残量変化率、非アンモニア水供給管32内における非アンモニア水W2の流量、第2ポンプユニット34の動作状態または第2ドージングユニット35の動作状態等をもとに、非アンモニア水W2の供給が停止中であるか否かを判断する。
【0089】
非アンモニア水W2の供給が停止中である場合(ステップS109、Yes)、アンモニア排水処理装置1は、排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の噴射開始を許可する(ステップS110)。その後、アンモニア排水処理装置1は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理手順を繰り返し実行する。
【0090】
ステップS110において、制御部18は、アンモニア排水供給系統2の第1ポンプユニット26および第1ドージングユニット28の各々に対し、動作禁止を解除する制御信号を送信する。これにより、制御部18は、第1ポンプユニット26および第1ドージングユニット28によるアンモニア排水W1の供給に必要な各動作を許可して、アンモニア排水噴射部23から混合器121の内部へのアンモニア排水W1の噴射開始を許可する。また、自動閉弁24が閉状態である場合、制御部18は、自動閉弁24を開状態にするよう制御する。
【0091】
一方、上述した安全装置が正常に作動していない場合(ステップS101、No)、アンモニア漏洩ありの場合(ステップS102、Yes)、アンモニア排水W1の残量が基準残量未満である場合(ステップS104、No)、アンモニア排水W1のアンモニア濃度が上限濃度を超過する場合(ステップS106、No)、エンジン負荷が基準負荷未満である場合(ステップS108、No)、非アンモニア水W2の噴射が実行中である場合(ステップS109、No)、アンモニア排水処理装置1は、排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の噴射開始を禁止する(ステップS111)。その後、アンモニア排水処理装置1は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理手順を繰り返し実行する。
【0092】
ステップS111において、制御部18は、アンモニア排水供給系統2の第1ポンプユニット26および第1ドージングユニット28の各々に対し、動作を禁止する制御信号を送信する。これにより、制御部18は、第1ポンプユニット26および第1ドージングユニット28の各動作を禁止して、アンモニア排水噴射部23から混合器121の内部へのアンモニア排水W1の噴射開始を禁止する。
【0093】
また、アンモニア排水供給系統2においてアンモニア漏洩が発生した場合、制御部18は、自動閉弁24を閉状態にするよう制御する。そして、漏洩したアンモニア排水W1およびアンモニアガスが、換気装置40の作用等によって管理エリアR2から排除される。これに並行して、第1ガス濃度検出部6および第2ガス濃度検出部7の各検出結果をもとに、アンモニア漏洩の発生箇所が特定される。その後、アンモニア排水供給系統2の点検および復旧作業が行われる。この結果、アンモニア漏洩のトラブルが解消される。
【0094】
また、アンモニア排水W1の残量不足は、除害装置102からアンモニア排水タンク21へのアンモニア排水W1の供給(補給)によって解消される。アンモニア排水W1のアンモニア濃度は、清水供給部10からアンモニア排水タンク21への清水の供給によって解消される。また、上述したアンモニア排水W1に関するトラブル(アンモニア漏洩等)が全て解消された後、制御部18は、排ガス脱硝装置120に対する非アンモニア水W2の供給を停止するように非アンモニア水供給系統3を制御する。これにより、混合器121内への非アンモニア水W2の噴射が停止する。
【0095】
(還元剤の噴射)
つぎに、アンモニア排水処理装置1から排ガス脱硝装置120に対する還元剤の噴射について説明する。図3は、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置が排ガス脱硝装置に対して還元剤を噴射する際の処理フローの一例を示すフロー図である。上述したインターロック機能(図2参照)においてアンモニア排水W1の噴射開始が許可された場合、アンモニア排水処理装置1は、図3に示すステップS201~S208の各処理手順を実行する。これにより、アンモニア排水処理装置1は、排ガス脱硝装置120の混合器121の内部に対して還元剤としてのアンモニア排水W1または非アンモニア水W2を噴射する。
【0096】
詳細には、図3に示すように、アンモニア排水処理装置1は、上述したインターロック機能が正常であるか否かを判断する(ステップS201)。上述したインターロック機能(図2のステップS101~S111の各処理)は、本処理と並行して実行されている。ステップS201において、制御部18は、上述したインターロック機能が誤動作なく正常に機能している場合に正常と判断し、上述したインターロック機能が正常に機能していない場合に正常ではないと判断する。
【0097】
インターロック機能が正常である場合(ステップS201、Yes)、アンモニア排水処理装置1は、上述したように許可されたアンモニア排水W1の噴射を開始する(ステップS202)。ステップS202において、制御部18は、アンモニア排水タンク21からアンモニア排水供給管22およびアンモニア排水噴射部23を介して混合器121の内部へアンモニア排水W1を供給するように、第1ポンプユニット26および第1ドージングユニット28を制御する。これにより、第1ポンプユニット26は、アンモニア排水供給管22内のアンモニア排水W1を混合器121の内部に向けて圧送する。アンモニア排水噴射部23は、この圧送されたアンモニア排水W1を混合器121の内部へ噴射する。噴射されたアンモニア排水W1は、混合器121の内部において排ガスと混合される。
【0098】
また、ステップS202において、第1ドージングユニット28は、上記のようにアンモニア排水供給管22を介して混合器121の内部へ供給されるアンモニア排水W1の供給量、すなわち、アンモニア排水噴射部23からのアンモニア排水W1の噴射量を調整する。例えば、第1ドージングユニット28は、アンモニア排水W1の噴射量を、所定の下限噴射量以上、上限噴射量以下の範囲内に調整する。
【0099】
当該下限噴射量は、第1ドージングユニット28の機器としての最小値(仕様上の最小噴射量)または排ガスの脱硝に必要な還元剤としてのアンモニア排水W1の噴射量の最小値に基づいて設定される。また、当該上限噴射量は、アンモニア排水W1を混合した後の排ガスの温度低下代が所定の条件を満足し得るアンモニア排水W1の噴射量の最大値に基づいて設定される。アンモニア排水W1の噴射量が一定である場合、アンモニア排水W1のアンモニア濃度が低い(すなわち水分量が多い)方が、アンモニア排水W1中の水分の蒸発により、排ガスの温度がより低下する。このため、アンモニア排水W1の噴射量が過度に多くなれば、排ガスの脱硝に必要な温度を維持し難くなる可能性がある。上記排ガスの温度低下代に関する所定の条件としては、例えば、上記アンモニア排水W1を混合した後の排ガスの温度低下代が、尿素水等の非アンモニア水W2を混合した場合の排ガスの温度低下代と同等またはそれより少なくなる、という条件が挙げられる。
【0100】
上述したステップS202を実行後、アンモニア排水処理装置1は、上述したインターロック機能に基づいてアンモニア排水W1の噴射を停止するか否かを判断する(ステップS203)。ステップS203において、制御部18は、上述したインターロック機能によってアンモニア排水W1の噴射開始が許可される場合(図2のステップS110参照)、ステップS202で開始したアンモニア排水W1の噴射を停止せず継続すると判断する。また、制御部18は、上述したインターロック機能によってアンモニア排水W1の噴射開始が禁止される場合(図2のステップS111参照)、ステップS202で開始したアンモニア排水W1の噴射を停止すると判断する。
【0101】
アンモニア排水W1の噴射を停止せず継続すると判断した場合(ステップS203、No)、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水噴射時の排ガス温度を検出する(ステップS204)。ステップS204において、排ガス温度検出部12は、混合器121から送出管124の内部へ排出された排ガスの温度、すなわち、還元剤を混合した後の排ガスの温度を検出する。このステップS204において、当該還元剤はアンモニア排水W1である。排ガス温度検出部12は、検出した排ガスの温度を示す検出信号を制御部18に送信する。
【0102】
上述したステップS204を実行後、アンモニア排水処理装置1は、排ガス温度が基準温度以上であるか否かを判断する(ステップS205)。ステップS205において、制御部18は、排ガス温度検出部12から検出信号を受信し、受信した検出信号をもとに、ステップS204で検出された排ガスの温度を取得する。制御部18は、この取得した排ガスの温度(アンモニア排水W1を混合した後の排ガスの温度)と上記基準温度とを比較し、これらの比較結果をもとに、当該排ガスの温度が基準温度以上である否かを判断する。当該排ガスの温度が基準温度以上である場合、排ガスの脱硝に必要な温度が確保されている。当該排ガスの温度が基準温度未満である場合、排ガスの脱硝に必要な温度が確保されていない。なお、上記基準温度は、脱硝に必要な排ガスの温度に基づいて調整可能に設定される値であってもよい。あるいは、上記基準温度は、混合器121の上流側の配管(例えば図1に示す排ガス管123)に、排ガス温度検出部12とは別に排ガス温度検出部(図示せず)を設け、当該排ガス温度検出部によって検出された排ガス温度(還元剤を混合する前の排ガスの温度)に基づいて設定(推定)される値であってもよい。
【0103】
排ガスの温度が基準温度以上である場合(ステップS205、Yes)、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水W1の噴射を継続しつつ、上述したステップS203に戻り、このステップS203以降の処理を繰り返し実行する。
【0104】
また、排ガスの温度が基準温度未満である場合(ステップS205、No)、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水W1の噴射量を減量する(ステップS206)。ステップS206において、制御部18は、アンモニア排水W1の噴射量を減らすように第1ドージングユニット28を制御する。この際、第1ドージングユニット28は、上述した下限噴射量を下限として、混合器121の内部に対するアンモニア排水W1の供給量を減らし、これにより、アンモニア排水W1の噴射量を減らす。
【0105】
上述したステップS206を実行後、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水W1の水分量を減量する(ステップS207)。その後、アンモニア排水処理装置1は、上述したステップS203に戻り、このステップS203以降の処理手順を繰り返し実行する。
【0106】
ステップS207において、制御部18は、アンモニア排水W1の水分量を減らすように水分量調整部11を制御する。この際、水分量調整部11は、アンモニア排水タンク21内のアンモニア排水W1に含まれる水分を分解除去することにより、当該アンモニア排水W1の水分量を減らす。これにより、当該アンモニア排水W1のアンモニア濃度が増える。
【0107】
一方、上述したステップS203においてアンモニア排水W1の噴射を停止すると判断した場合(ステップS203、Yes)、アンモニア排水処理装置1は、アンモニア排水W1の噴射を停止する(ステップS208)。ステップS208において、制御部18は、アンモニア排水供給系統2の第1ポンプユニット26および第1ドージングユニット28の各々に対し、動作を停止する制御信号を送信する。これにより、制御部18は、アンモニア排水噴射部23から混合器121の内部へのアンモニア排水W1の噴射(供給)を停止させる。
【0108】
上述したステップS208を実行後、アンモニア排水処理装置1は、非アンモニア水W2の噴射を開始し(ステップS209)、本処理を終了する。ステップS209において、制御部18は、非アンモニア水供給系統3の第2ポンプユニット34および第2ドージングユニット35の各々に対し、動作を開始する制御信号を送信する。これにより、制御部18は、上述したアンモニア排水W1の代わりに、非アンモニア水噴射部33から混合器121の内部へ非アンモニア水W2を噴射させる。
【0109】
また、上述したステップS201においてインターロック機能が正常ではない場合(ステップS201、No)、アンモニア排水処理装置1は、上述したステップS209に進み、ステップS209を実行後、本処理を終了する。
【0110】
なお、非アンモニア水供給系統3から混合器121の内部に対する非アンモニア水W2の供給(噴射)は、アンモニア排水W1の噴射を停止している期間、適宜継続して行われる。例えば、アンモニア排水W1に関するトラブル(アンモニア漏洩等)が解消してアンモニア排水供給系統2が復旧された場合、非アンモニア水供給系統3は、制御部18の制御に基づいて、非アンモニア水W2の噴射を停止する。上述したステップS201~S209の各処理は、インターロック機能によってアンモニア排水W1の噴射開始が許可される都度、繰り返し実行される。
【0111】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1は、舶用ディーゼルエンジン100のアンモニア燃料に由来するアンモニア排水W1を還元剤として排ガス脱硝装置120に供給するアンモニア排水供給系統2と、アンモニア水とは異なる還元剤である非アンモニア水W2を還元剤として排ガス脱硝装置120に供給する非アンモニア水供給系統3と、を備える。このアンモニア排水処理装置1において、非アンモニア水供給系統3は、船舶において区画された安全エリアR1の内部に配置され、アンモニア排水供給系統2は、当該船舶において安全エリアR1から隔離された管理エリアR2の内部に配置されている。
【0112】
上記の構成により、アンモニア排水供給系統2から漏洩したアンモニア排水W1およびアンモニアガスが安全エリアR1へ漏れ出る事態を防止するとともに、アンモニア漏洩のトラブル発生に対応して、アンモニア排水供給系統2から排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給を停止しても、当該アンモニア排水W1の代わりに、非アンモニア水供給系統3から排ガス脱硝装置120に対して非アンモニア水W2を供給することができる。これにより、排ガス脱硝装置120に対し、排ガスの脱硝に必要な還元剤を必要に応じて安定的に供給しつつ、管理エリアR2の清浄化や、アンモニア排水供給系統2の点検および復旧作業等、アンモニア漏洩に対して迅速かつ適切に対処することができる。このため、排ガスの脱硝を安定して継続しつつ、アンモニア漏洩を適切に管理することができる。
【0113】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、アンモニア排水供給系統2のうち、管理エリアR2から安全エリアR1に延在するアンモニア排水供給管22の延在管22dを、管理エリアR2の内部に通じるカバー管4によって覆うようにしている。このため、管理エリアR2から安全エリアR1へ延在して排ガス脱硝装置120の混合器121に通じる延在管22dを内側管とし、この延在管22dを覆うカバー管4を外側管とする二重管を構成することができる。これにより、延在管22dからアンモニア排水W1およびアンモニアガスが漏洩しても、この漏洩したアンモニア排水W1およびアンモニアガスが安全エリアR1に漏れ出る事態をカバー管4によって防止することができる。
【0114】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、上述したカバー管4に換気管5を設け、換気管5に流入した空気により、カバー管4の内部ガスを管理エリアR2の内部へ流すようにカバー管4の内部を換気している。このため、カバー管4から安全エリアR1へアンモニア排水W1およびアンモニアガスが漏れ出ることなく、このカバー管4の内部を換気することができる。
【0115】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、上述したカバー管4を、排ガス脱硝装置120の混合器121から離間した状態で配置している。このため、高温の熱源となる混合器121からカバー管4への熱伝導を抑制することができ、これにより、カバー管4の内部に存在(漏洩)するアンモニア排水W1からアンモニアガスが急激に蒸発する事態を防止することができる。
【0116】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、カバー管4の内部におけるアンモニアガスの濃度を検出し、検出したアンモニアガスの濃度が所定の基準濃度を超過する場合、アンモニア排水供給系統2から排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給を停止し、非アンモニア水供給系統3から排ガス脱硝装置に対して非アンモニア水W2を供給している。このため、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア漏洩の発生箇所をカバー管4の内部に特定するとともに、排ガス脱硝装置120に対する還元剤の供給を継続することができる。これにより、排ガスの脱硝を安定して継続しつつ、アンモニア漏洩に対して効率よく且つ適切に対処することができる。
【0117】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、管理エリアR2の内部におけるアンモニアガスの濃度を検出し、検出したアンモニアガスの濃度が所定の基準濃度を超過する場合、アンモニア排水供給系統2から排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給を停止し、非アンモニア水供給系統3から排ガス脱硝装置に対して非アンモニア水W2を供給している。このため、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア漏洩の発生箇所を管理エリアR2の内部に特定するとともに、排ガス脱硝装置120に対する還元剤の供給を継続することができる。これにより、排ガスの脱硝を安定して継続しつつ、アンモニア漏洩に対して安全且つ適切に対処することができる。
【0118】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア排水W1のアンモニア濃度を計測し、計測したアンモニア濃度が所定の上限濃度を超過する場合、アンモニア排水供給系統2から排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給を停止し、非アンモニア水供給系統3から排ガス脱硝装置に対して非アンモニア水W2を供給している。このため、アンモニア濃度が過度に高いアンモニア排水W1を排ガス脱硝装置120に対して供給する事態を防止するとともに、排ガス脱硝装置120に対する還元剤の供給を継続することができる。これにより、排ガスの脱硝を安定して継続しつつ、アンモニア排水W1の供給時における沸騰およびキャビテーションの発生を抑制することができる。
【0119】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、上述したように計測したアンモニア濃度が上限濃度を超過する場合、アンモニア排水供給管22を介して排ガス脱硝装置120に通じるアンモニア排水タンク21に清水を供給し、このアンモニア排水タンク21の内部に貯蔵されているアンモニア排水W1を希釈している。このため、アンモニア排水W1の過度に高いアンモニア濃度を適度に低下させることができる。
【0120】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、上述したように計測したアンモニア濃度が所定の下限濃度未満である場合、水分量調整部11の作用により、アンモニア排水W1の水分量を減らすようにしている。このため、アンモニア排水W1のアンモニア濃度を、排ガスの脱硝に用いられる還元剤として適したアンモニア濃度に制御することができる。
【0121】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、還元剤を混合した後の排ガスの温度を検出し、検出した排ガスの温度が所定の基準温度未満である場合、アンモニア排水供給系統2から排ガス脱硝装置120に対して供給するアンモニア排水W1の供給量を減らすようにしている。このため、排ガスの温度低下の原因となる、アンモニア濃度が過度に低いアンモニア排水W1(すなわち含水量が過度に多いアンモニア排水W1)の供給量を減らすことができ、これにより、排ガスの温度低下を抑制することができる。
【0122】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、上述したように検出した排ガスの温度が上記基準温度未満である場合、アンモニア排水供給系統2から排ガス脱硝装置120に対するアンモニア排水W1の供給を停止し、非アンモニア水供給系統3から排ガス脱硝装置に対して非アンモニア水W2を供給している。このため、排ガスの温度低下に対して適切に対処しつつ、排ガス脱硝装置120に対する還元剤の供給を継続することができる。
【0123】
また、本発明の実施形態に係るアンモニア排水処理装置1では、排ガス脱硝装置120が、排ガスと還元剤とを混合する混合器121と、還元剤を混合した排ガス中の窒素酸化物を除去する反応器122と、を備え、この混合器121の内部において、非アンモニア水W2を噴射する非アンモニア水噴射部33が、アンモニア排水W1を噴射するアンモニア排水噴射部23よりも排ガスの流通方向の上流側に配置されている。このため、混合器121の内部に噴射した非アンモニア水W2がアンモニアガスに変化するに十分な時間を確保することができ、これにより、たとえアンモニア排水W1に比べてアンモニアガスに変化するまでに要する時間が長い尿素水等の非アンモニア水W2を還元剤として噴射しても、排ガスを十分に脱硝することができる。
【0124】
なお、上述した実施形態では、アンモニア排水供給系統2におけるアンモニア排水W1のアンモニア濃度として、アンモニア排水タンク21の内部に貯蔵されているアンモニア排水W1のアンモニア濃度を濃度計測部9によって計測していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、濃度計測部9をアンモニア排水供給管22、第1ポンプユニット26、戻り管27または第1ドージングユニット28に設け、アンモニア排水供給管22、第1ポンプユニット26、戻り管27または第1ドージングユニット28のいずれかの内部におけるアンモニア排水W1のアンモニア濃度を計測してもよい。
【0125】
また、上述した実施形態では、アンモニア排水処理装置1の各動作を1つの制御部18によって制御していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、アンモニア排水処理装置1の各動作は、複数の制御部によって各々制御されてもよい。
【0126】
また、上述した実施形態では、舶用ディーゼルエンジン100から排出されたアンモニア含有ドレン中のアンモニア成分を除害処理して、アンモニア排水タンク21へ供給するアンモニア排水W1を生成していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、アンモニア排水W1は、アンモニア燃料供給装置101から排出されたアンモニア燃料のドレンを除害処理して生成されてもよいし、上記アンモニア含有ドレン中のアンモニア成分から生成されたアンモニア排水と上記アンモニア燃料のドレンから生成されたアンモニア排水とを組み合わせたものでもよい。
【0127】
また、上述した実施形態では、アンモニア排水W1を希釈するための清水を清水供給部10からアンモニア排水タンク21へ供給していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、アンモニア成分に清水を加えてアンモニア排水W1を生成する除害装置102からアンモニア排水タンク21へ、アンモニア排水W1を希釈するための清水を供給してもよい。
【0128】
また、上述した実施形態では、アンモニア排水W1を混合した後の排ガスの温度が基準温度未満である場合、図3に示すステップS206において、アンモニア排水W1の噴射量を減らしていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記排ガスの温度が基準温度未満である場合、図3に示すステップS208に進み、アンモニア排水W1の噴射を停止してもよい。この場合、アンモニア排水W1の噴射を停止した後に、図3に示すステップS207と同様にアンモニア排水W1の水分量を減らしてもよい。
【0129】
また、上述した実施形態では、図3のステップS201、S202に例示されるように、上述したインターロック機能が正常である場合、当該インターロック機能によって既に許可されたアンモニア排水W1の噴射を開始するように、制御部18がアンモニア排水供給系統2を自動制御していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上述したインターロック機能が正常である場合、この正常であることを示す情報を表示部(図示せず)に表示し、この表示された情報に基づき、作業者が、上記許可されたアンモニア排水W1の噴射を開始するか否かを操作部(図示せず)の操作によって手動で選択してもよい。
【0130】
また、上述した実施形態では、図3のステップS201、S208、S209に例示されるように、上述したインターロック機能が正常ではない場合または当該インターロック機能に基づいてアンモニア排水W1の噴射を停止する場合、非アンモニア水W2の噴射を開始するように、制御部18が非アンモニア水供給系統3を自動制御していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上述したインターロック機能が正常ではない場合に当該正常ではないことを示す情報を表示部(図示せず)に表示し、または、当該インターロック機能に基づいてアンモニア排水W1の噴射を停止する場合に当該噴射の停止を示す情報を当該表示部に表示し、上記表示された情報に基づき、作業者が、非アンモニア水W2の噴射を開始するか否かを操作部(図示せず)の操作によって手動で選択してもよい。
【0131】
また、上述した実施形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0132】
1 アンモニア排水処理装置
2 アンモニア排水供給系統
3 非アンモニア水供給系統
4 カバー管
4a 延在端部
5 換気管
5a 逆止弁
6 第1ガス濃度検出部
7 第2ガス濃度検出部
8 残量検出部
9 濃度計測部
10 清水供給部
10a 清水供給管
11 水分量調整部
12 排ガス温度検出部
13a 呼吸弁
13b 調圧管
14 陸揚げ用タンク
15 排出管
16 排出弁
17a 呼吸弁
17b 調圧管
18 制御部
21 アンモニア排水タンク
22 アンモニア排水供給管
22a 第1供給管
22b 第2供給管
22c 第3供給管
22d 延在管
23 アンモニア排水噴射部
24 自動閉弁
25 開閉弁
26 第1ポンプユニット
27 戻り管
28 第1ドージングユニット
31 非アンモニア水タンク
32 非アンモニア水供給管
33 非アンモニア水噴射部
34 第2ポンプユニット
35 第2ドージングユニット
40 換気装置
100 舶用ディーゼルエンジン
101 アンモニア燃料供給装置
102 除害装置
110、111 二重管
112 アンモニア排水管
113 アンモニア排水弁
120 排ガス脱硝装置
121 混合器
122 反応器
123、125 排ガス管
124 送出管
R1 安全エリア
R2 管理エリア
W1 アンモニア排水
W2 非アンモニア水
図1
図2
図3