(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165106
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】人物特性推定システム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06F 16/907 20190101AFI20241121BHJP
【FI】
G06F16/907
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080980
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】沼田 崇志
(72)【発明者】
【氏名】大木 佑哉
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175DA10
5B175FB02
(57)【要約】
【課題】心理特性の推定のための専用の行動を対象者が行うこと無しに対象者の心理特性を推定する。
【解決手段】システムは、一つ又は複数のセンサを有する対象者装置に、心理特性推定とは別の目的のために対象者に行動を誘う誘い情報を提供する。システムは、誘い情報に誘われ行われた行動に関わり一つ又は複数のセンサによる計測に基づく計測データを受ける。誘い情報が誘う行動は、対象者意思の指定と、対象者意思の指定を除く全て又は一部の行動である関連行動とを含む。システムは、計測データのうちの関連行動データを基に一つ又は複数の行動特徴量を算出し、当該行動特徴量を基に、対象者の心理特性を推定する。対象者の心理特性の推定に利用される一つ以上の行動特徴量の各々は、提供された提供情報の少なくとも一部の調整された情報、及び/又は、当該行動特徴量について経過時間に従いエンハンスされた行動特徴量である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ又は複数のセンサを有する装置である対象者装置に接続されたインターフェース装置と、
前記インターフェース装置に接続された演算装置と
を備え、
前記演算装置は、心理特性推定とは別の目的のために対象者に行動を誘う誘い情報を含んだ提供情報を前記対象者装置に提供し、
前記演算装置は、提供された前記誘い情報に誘われ前記対象者により行われた行動に関わり前記一つ又は複数のセンサによる計測に基づく計測データを前記対象者装置から前記インターフェース装置を通じて受け、
前記演算装置は、当該計測データを基に、対象者意思データと関連行動データとを特定し、
前記誘い情報が誘う行動は、対象者意思の指定と、前記対象者意思の指定を除く全て又は一部の行動である関連行動とを含み、
前記対象者意思データは、指定された前記対象者意思を表すデータであり、
前記関連行動データは、関連行動を表すデータであり、
前記演算装置は、一つ又は複数の関連行動の各々についての関連行動データを基に、一つ又は複数の行動特徴量を算出し、当該一つ又は複数の行動特徴量を基に、前記対象者の心理特性を推定し、
前記演算装置は、推定された当該心理特性を表すデータである推定心理特性データを出力し、
前記対象者の心理特性の推定に利用される一つ以上の行動特徴量の各々は、提供された前記提供情報の少なくとも一部の調整された情報、及び/又は、当該行動特徴量について経過時間に従いエンハンスされた行動特徴量である、
人物特性推定システム。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記一つ以上の行動特徴量の各々に関し、当該行動特徴量について経過時間に応じて、当該行動特徴量をエンハンスし、
それぞれエンハンスされた一つ以上の行動特徴量を含む一つ又は複数の行動特徴量を基に、前記対象者の心理特性を推定する、
請求項1に記載の人物特性推定システム。
【請求項3】
前記演算装置は、前記対象者の心理特性の一つ以上の心理特性成分の少なくとも一つの心理特性成分を、第1の推定モデルを用いて推定し、
前記第1の推定モデルは、経過時間毎の重回帰モデルを含み、
当該経過時間毎の重回帰モデルは、
nの行動特徴量と1:1で対応したnの説明変数と(nは1以上の整数)、
当該nの説明変数の各々について、当該経過時間によって定まる重み付け係数と
を含む、
請求項2に記載の人物特性推定システム。
【請求項4】
前記演算装置は、前記対象者の心理特性の一つ以上の心理特性成分の少なくとも一つの心理特性成分について、
前記第1の推定モデルと、第2の推定モデルとのうちのいずれかの推定モデルを、前記演算装置の演算負荷とその演算負荷の閾値との関係を含むモデル選択ポリシーに基づき選択し、
選択した推定モデルを用いて、当該心理特性成分を推定し、
前記第2の推定モデルは、nの行動特徴量に1:1で対応するnの重回帰モデルを含んだ重回帰モデルであり(nは1以上の整数)、
前記nの重回帰モデルの各々について、当該重回帰モデルは、
時間を構成するmの時間スロット(mは2以上の整数)に1:1で対応するmの重み付け係数と、
当該mの重み付け係数の各々について、当該重回帰モデルに対応する行動特徴量である説明変数と
を含む、
請求項3に記載の人物特性推定システム。
【請求項5】
前記演算装置は、前記対象者の心理特性の一つ以上の心理特性成分の少なくとも一つの心理特性成分を、重回帰モデルを用いて推定し、
前記一つ以上の心理特性成分の各々について、重回帰モデルは、nの行動特徴量に1:1で対応するnの重回帰モデルを含み(nは1以上の整数)、
前記nの重回帰モデルの各々について、当該重回帰モデルは、
時間を構成するmの時間スロット(mは2以上の整数)に1:1で対応するmの重み付け係数と、
当該mの重み付け係数の各々について、当該重回帰モデルに対応する行動特徴量である説明変数と
を含む、
請求項2に記載の人物特性推定システム。
【請求項6】
前記一つ又は複数のセンサは、カメラを含み、
前記計測データは、前記カメラにより撮影された前記対象者が映っている動画を表すデータである動画データを含み、
前記演算装置は、前記動画データを基に、一つ又は複数の関連行動の各々についての関連行動データを特定する、
請求項1に記載の人物特性推定システム。
【請求項7】
関連行動データとして、前記動画データが表す動画に映っている前記対象者について当該動画から特定されるバイタルデータがあり、
前記提供情報の少なくとも一部の前記調整された情報は、前記対象者装置に表示されるコンテンツと当該コンテンツの背景との両方の輝度が調整された情報である、
請求項6に記載の人物特性推定システム。
【請求項8】
前記演算装置は、前記動画データが表す動画のうち、相対的に大きい行動特徴量又はエンハンスされた行動特徴量に関連した時間帯の動画である行動ダイジェスト動画を取得し、当該行動ダイジェスト動画を表すデータを出力する、
請求項6に記載の人物特性推定システム。
【請求項9】
前記演算装置は、前記動画データを基に特定された関連行動データは、前記対象者の頭部の動作、前記対象者の表情、前記対象者の眼球動作、前記対象者の体勢、前記対象者の体動、前記対象者の発声の音響、前記対象者のバイタル、前記対象者による応答にかかった時間、及び、前記対象者による前記対象者装置に対する操作、のうちの少なくとも一つを表す、
請求項6に記載の人物特性推定システム。
【請求項10】
前記誘い情報は、前記対象者へのガイドを表す情報を含み、
関連行動データは、ガイドを受けた前記対象者による行動を表すデータを含む、
請求項1に記載の人物特性推定システム。
【請求項11】
前記提供情報は、前記対象者に対する一つ又は複数の質問を表す情報を含み、
前記演算装置は、前記一つ又は複数の質問に対する回答の制限時間を前記対象者に通知する、
請求項1に記載の人物特性推定システム。
【請求項12】
前記提供情報は、前記対象者に対する複数の質問を表す情報を含み、
前記複数の質問の各々は、複数のグループのうち、当該質問の属性に応じたグループに分類されており、
前記対象者意思データは、前記複数の質問の各々について、当該質問に対する回答を表すデータを含み、
前記演算装置は、
前記複数の質問の各々について、当該質問に対する回答に関わる関連行動データを、当該質問が属するグループに分類し、
前記複数のグループの各々について、当該グループに分類された関連行動データを基に、行動特徴量を算出し、
前記複数のグループの各々についての算出された行動特徴量を基に、前記対象者の心理特性を推定する、
請求項1に記載の人物特性推定システム。
【請求項13】
前記提供情報は、前記対象者に対する一つ又は複数の質問を表す情報を含み、
前記演算装置は、前記一つ又は複数の質問に対する回答を表す回答データと、前記推定心理特性データとを、回答データと心理特性データとに基づき人物を評価する機能へ出力する、
請求項1に記載の人物特性推定システム。
【請求項14】
コンピュータが、心理特性推定とは別の目的のために対象者に行動を誘う誘い情報を含んだ提供情報を、一つ又は複数のセンサを有する装置である対象者装置に提供し、
コンピュータが、提供された前記誘い情報に誘われ前記対象者により行われた行動に関わり前記一つ又は複数のセンサによる計測に基づく計測データを前記対象者装置から受け、
コンピュータが、当該計測データを基に、対象者意思データと関連行動データとを特定し、
前記誘い情報が誘う行動は、対象者意思の指定と、前記対象者意思の指定を除く全て又は一部の行動である関連行動とを含み、
前記対象者意思データは、指定された前記対象者意思を表すデータであり、
前記関連行動データは、関連行動を表すデータであり、
コンピュータが、一つ又は複数の関連行動の各々についての関連行動データを基に、一つ又は複数の行動特徴量を算出し、当該一つ又は複数の行動特徴量を基に、前記対象者の心理特性を推定し、
前記対象者の心理特性の推定に利用される一つ以上の行動特徴量の各々は、提供された前記提供情報の少なくとも一部の調整された情報、及び/又は、当該行動特徴量について経過時間に従いエンハンスされた行動特徴量であり、
コンピュータが、推定された当該心理特性を表すデータである推定心理特性データを出力する、
人物特性推定方法。
【請求項15】
心理特性推定とは別の目的のために対象者に行動を誘う誘い情報を含んだ提供情報を、一つ又は複数のセンサを有する装置である対象者装置に提供し、
提供された前記誘い情報に誘われ前記対象者により行われた行動に関わり前記一つ又は複数のセンサによる計測に基づく計測データを前記対象者装置から受け、
当該計測データを基に、対象者意思データと関連行動データとを特定し、
前記誘い情報が誘う行動は、対象者意思の指定と、前記対象者意思の指定を除く全て又は一部の行動である関連行動とを含み、
前記対象者意思データは、指定された前記対象者意思を表すデータであり、
前記関連行動データは、関連行動を表すデータであり、
一つ又は複数の関連行動の各々についての関連行動データを基に、一つ又は複数の行動特徴量を算出し、当該一つ又は複数の行動特徴量を基に、前記対象者の心理特性を推定し、
前記対象者の心理特性の推定に利用される一つ以上の行動特徴量の各々は、提供された前記提供情報の少なくとも一部の調整された情報、及び/又は、当該行動特徴量について経過時間に従いエンハンスされた行動特徴量であり、
推定された当該心理特性を表すデータである推定心理特性データを出力する、
ことをコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、人物特性の推定のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人物特性の一例として、心理特性(パーソナリティ)がある。心理特性の推定技術として、例えば、特許文献1に開示の技術が知られている。特許文献1に開示の技術は、ユーザの発話データに加えてテキストデータに基づきユーザの心理特性を推定する。
【0003】
なお、人物の心理状態を推定する技術として、特許文献2に開示の技術が知られている。特許文献2に開示の技術は、ユーザのバイタルデータを基にユーザの心理状態を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US10,957,306
【特許文献2】特開2022-179438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の技術では、対象者が、心理特性推定とは別の目的で用意された質問に回答する他に、心理特性推定のために発話等の別の行動をしなくてはならない。そのような別の行動を対象者が行ってくれるとは限らず、故に、対象者について心理特性が推定されるとは限らない。また、入力としてのテキストデータの作成に多大な時間を要するという課題も考えられる。
【0006】
特許文献2に開示の技術では、一時的な心理状態は推定されるものの、人物固有の心理特性を推定することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
システムは、一つ又は複数のセンサを有する装置である対象者装置に、心理特性推定とは別の目的のために対象者に行動を誘う誘い情報を含んだ提供情報を対象者装置に提供する。システムは、提供された誘い情報に誘われ対象者により行われた行動に関わり一つ又は複数のセンサによる計測に基づく計測データを対象者装置から受け、当該計測データを基に、対象者意思データと関連行動データとを特定する。誘い情報が誘う行動は、対象者意思の指定と、対象者意思の指定を除く全て又は一部の行動である関連行動とを含む。対象者意思データは、指定された対象者意思を表すデータである。関連行動データは、関連行動を表すデータである。システムは、一つ又は複数の関連行動の各々についての関連行動データを基に、一つ又は複数の行動特徴量を算出し、当該一つ又は複数の行動特徴量を基に、対象者の心理特性を推定し、推定された当該心理特性を表すデータを出力する。対象者の心理特性の推定に利用される一つ以上の行動特徴量の各々は、提供された提供情報の少なくとも一部の調整された情報、及び/又は、当該行動特徴量について経過時間に従いエンハンスされた行動特徴量である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、心理特性の推定のための専用の行動を対象者が行うこと無しに対象者の心理特性を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係るシステム全体の構成例を示す。
【
図2】第1の実施形態に係るシステム全体におけるデータと機能を示す。
【
図3】第1の実施形態で行われる処理の流れの例を示す。
【
図4A】カメラフレームにおける人物位置の例を示す。
【
図4B】カメラフレームにおける人物位置の例を示す。
【
図4C】カメラフレームにおける人物位置の例を示す。
【
図5】特徴量カテゴリ、行動特徴量及び関連行動値の関係の例を示す。
【
図7】第2の実施形態に係るシステム全体におけるデータと機能を示す。
【
図8】第3の実施形態に係るシステム全体におけるデータと機能を示す。
【
図9】第4の実施形態に係るキーワードテーブルの一例を示す。
【
図10】第1乃至第4の実施形態に係る人物特性推定システムのプラクティカルアプリケーションの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも一つでよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイスであるI/Oインターフェース装置。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザインターフェースデバイス、例えば、キーボード及びポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インターフェースデバイスである通信インターフェース装置。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0011】
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0012】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVME(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、又は、SCM(Storage Class Memory)でよい。
【0013】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0014】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部又は全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0015】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/又はインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配付計算機又は計算機が読み取り可能な記憶媒体(例えば非一時的な記憶媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0016】
また、以下の説明では、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号のうちの共通符号を使用し、同種の要素を区別する場合は、参照符号を使用することがある。
【0017】
以下、幾つかの実施形態を説明する。なお、以下の実施形態では、人物特性の一例として心理特性が採用され、心理特性が推定される。
[第1の実施形態]
【0018】
図1は、第1の実施形態に係るシステム全体の構成例を示す。
【0019】
人物特性推定システム100が通信ネットワーク170を介して対象者装置130及び管理者装置180と通信する。通信ネットワーク170は、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)又はLAN(Local Area Network)である。
【0020】
対象者装置130は、対象者101の情報処理端末、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォンのような計算機である。対象者装置130は、対象者101の行動を計測する一つ又は複数のセンサと、表示デバイス112とを有する。一つ又は複数のセンサは、例えば、カメラ102、入力デバイス111(例えば、キーボード及びポインティングデバイス)、及びマイク11である。入力デバイス111に代えて又は加えて、表示デバイス112は、タッチパネルでもよい。また、対象者101は、例えば、オンライン面接での応募者でよい。
【0021】
管理者装置180は、管理者151の情報処理端末、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォンのような計算機である。管理者装置180は、入力デバイス153と表示デバイス152とを有する。管理者151は、例えば、オンライン面接での面接官でよい。
【0022】
人物特性推定システム100は、インターフェース装置113と、記憶装置114と、それらに接続された演算装置115とを有する。
【0023】
インターフェース装置113は、通信ネットワーク170を介して、対象者装置130及び管理者装置180と通信する。記憶装置114は、演算装置115に実行されるコンピュータプログラム、及び、演算装置115により入出力されるデータを記憶する。演算装置115は、プロセッサであり、コンピュータプログラムを実行する。
【0024】
演算装置115は、心理特性推定とは別の目的のために対象者101に行動を誘う誘い情報を含んだ情報である提供情報を対象者装置130に提供する。誘い情報は、複数(又は一つ)の質問を含んでよい。具体的には、例えば、面接官としてのAI(Artificial Intelligence)又は他のプログラムを実行することにより音声及び/又はテキストで提供される複数(又は一つ)の質問や、それらの質問を提供するアバタのような仮想ロボットとしてのコンテンツを含んでよい。コンテンツは、質問を表すテキストや他種の情報(例えば図形)を含んでもよい。本実施形態で提供される「質問」は、面接における一般的な質問でよく、心理特性推定のために用意された質問を含まなくてよい。
【0025】
演算装置115は、提供情報の誘い情報に誘われ対象者101により行われた行動に関わり一つ又は複数のセンサによる計測に基づく計測データを一つ又は複数のセンサからインターフェース装置113を通じて受ける。
【0026】
演算装置115は、当該計測データを基に、対象者意思データと関連行動データとを特定する。「誘い情報が誘う行動」は、対象者意思の指定と、対象者意思の指定を除く全て又は一部の行動である関連行動とを含む。対象者意思の指定は、本実施形態では質問に対し回答すること(例えば質問に対する回答のタイプ入力又は音声入力)であるが、対象者意思の指定は、提供される情報によって様々でよい。関連行動は、本実施形態では質問が提供されてから質問に対し回答するまでの全ての又は一部の行動であるが、関連行動も、提供される情報に依存した対象者意思の指定によって様々でよい。対象者意思データは、指定された対象者意思を表すデータである。関連行動データは、関連行動を表すデータである。
【0027】
演算装置115は、一つ又は複数の関連行動の各々についての関連行動データを基に、一つ又は複数の行動特徴量を算出し、当該一つ又は複数の行動特徴量を基に、対象者101の心理特性を推定する。具体的には、例えば、質問の表示の都度、表示された質問に対し対象者101により回答がされ、質問と回答の組毎に、関連行動がある。複数の関連行動の各々について、関連行動データがあり、演算装置115は、複数の関連行動の関連行動データを基に、一つ又は複数の行動特徴量を算出し、当該一つ又は複数の行動特徴量を基に、対象者101の心理特性を推定する。
【0028】
演算装置115は、推定された当該心理特性を表すデータである推定心理特性データを出力する。例えば、演算装置115は、推定心理特性データを管理者装置180に送信し、管理者装置180が、表示デバイス152に、当該推定心理特性データが表す心理特性を表示する。これにより、管理者151が、対象者101の推定された心理特性を知る。
【0029】
対象者101の心理特性の推定に利用される一つ以上の行動特徴量の各々は、提供された提供情報の少なくとも一部の調整された情報、及び/又は、当該行動特徴量について経過時間に従いエンハンスされた行動特徴量である(エンハンスの例は、後に詳述する)。
【0030】
本実施形態によれば、心理特性推定とは別の目的のために用意され提供された誘い情報が誘う行動(例えば、質問に対する回答)とは別の行動を対象者101が行うこと無しに、すなわち、心理特性の推定のための専用の行動を対象者101が行うこと無しに対象者101の心理特性を推定することができる。また、本実施形態によれば、対象者101の心理特性の推定に利用される一つ以上の行動特徴量がエンハンスされるため、心理特性の推定精度の向上が期待される。
【0031】
なお、人物特性推定システム100は、
図1に例示の物理的な計算機システム(一つ以上の物理的な計算機)でもよいが、それに代えて、物理的な計算機システムに基づく論理的な計算機システム(例えば、クラウドコンピューティングサービス)でもよい。
【0032】
また、「心理特性」は、一つ以上の心理特性成分から構成されてよく、一つ以上の心理特性成分は、気質、性格、人格、信念、価値観、気分及び情動のうちの少なくとも一つを含んでよい。また、演算装置115は、心理特性の推定に、対象意思データの一部を基にしてもよい。また、演算装置115は、推定心理特性データに加えて、対象者意思データ(例えば、氏名や性別等を含んだ回答データ)を基に、対象者101の人物特性(例えば、心理特性の他に、氏名、性別、生年月日、年齢、動機、希望職種、経歴、成績及び保有スキルの少なくとも一つを含む)を推定してもよい。
【0033】
「関連行動」は、質問に対する回答(対象者意思の指定の一例)に至るまでの行動でよい。例えば、回答が同じでも、回答に至るまでの行動は、対象者101の心理特性の影響を受ける。このような行動を表す関連行動データが心理特性推定に利用されるため、心理特性推定に専用の質問や対象者行動が無くても、心理特性を精度良く推定することが期待される。
【0034】
以下、本実施形態を詳細に説明する。
【0035】
図2は、第1の実施形態に係るシステム全体におけるデータと機能を示す。なお、本実施形態において、「DB」は、データベースの略である。データは、データベースのような構造化データでなくてもよい。
【0036】
対象者装置130は、上述したように、センサ群201(一つ又は複数のセンサ)と表示デバイス112を有し、また、制御部202を有する。制御部202は、対象者装置130のプロセッサである演算装置(図示せず)にプログラム(例えば、アプリケーションプログラム)が実行されることで実現される。
【0037】
制御部202が、センサ群201における各センサの計測に基づく計測データを人物特性推定システム100に送信する。また、制御部202が、人物特性推定システム100からの提供情報を表示デバイス112及び/又はその他の出力デバイス(例えばスピーカ)に出力する。
【0038】
記憶装置114は、回答DB230、推定DB240、心理特性DB250及び提供DB260を記憶する。回答DB230は、回答データ(質問に対する回答を表すデータ)が格納されるDBである。推定DB240は、心理特性の推定に使用されるデータ(例えば、一つ又は複数の回帰式等のモデル)が格納されるDBである。心理特性DB250は、推定心理特性データ(推定された心理特性を表すデータ)が格納されるDBである。提供DB260は、提供される情報(例えば、質問等のコンテンツそれ自体)やその情報に関する情報(例えば、コンテンツの輝度等のメタデータ)が格納されるDBである。
【0039】
演算装置115がコンピュータプログラムを実行することにより、対象者101からの応答の解析を行う応答解析部210、及び、対象者101への応答の制御を行う応答制御部220が実現される。応答解析部210は、回答を抽出する回答抽出部211、行動特徴量を生成する行動特徴量生成部212、及び、心理特性を推定する心理特性推定部213を有する。
【0040】
以下、演算装置115により実現される機能と、本実施形態で行われる処理の例を、説明する。
【0041】
図3は、第1の実施形態で行われる処理の流れの例を示す。
【0042】
応答解析部210が、センサ群201におけるカメラ102により撮影されている動画のデータを対象者装置130の制御部202から受信している。応答解析部210が、その動画の録画を開始する(S301)。録画データ(動画データ)は、計測データの少なくとも一部でよく、応答解析部210により記憶装置114に格納される。録画開始の通知を、応答制御部220が対象者装置130の制御部202に送信し、その通知を、制御部202が、表示デバイス112又は他の出力デバイスを通じて出力してよい。
【0043】
応答制御部220が、対象者101へのガイドを行い、応答解析部210が、そのガイドを受けた対象者101をモニタリングする(S302)。具体的には、応答制御部220が対象者装置130へ送信する誘い情報が、対象者101へのガイドを表す情報を含む。ガイドは、行動特徴量のエンハンスに寄与するガイドでよい。例えば、応答解析部210が、録画データから、カメラ102の画角(フレーム)に対し対象者101の位置が適切でないと判断した場合に(又は、その位置が適切であるか否かに関わらず)、応答制御部220が、カメラ102の画角(フレーム)に対し適切な位置に対象者101の位置を重ねるためのガイドを表す情報を含んだ誘い情報を対象者装置130に送信してよい。これにより、例えば、
図4Aや
図4Bに例示の不適切な位置(カメラフレームにおける不適切な位置)にいる対象者101を、
図4Cに例示の適切な位置に移動させ、以って、以後、生成される行動特徴量の精度の向上が期待され、故に、心理特性の推定精度の向上が期待される。
【0044】
ガイドは、カメラ102の画角に対する位置のガイドに代えて又は加えて、行動特徴量のエンハンスに寄与する他のガイド、例えば、対象者101の発声を精度良く検出する確率を高めるためのガイド(例えば、マイクの設定の調整や、マイクと対象者101との距離の調整のためのガイド)を含んでもよい。
【0045】
応答解析部210は、モニタリングにおいて、そのようなガイドを表す情報を含んだ誘い情報に対する対象者101の行動(関連行動の一例)を、録画データから特定し、行動特徴量生成部212が、その行動に関する行動特徴量を生成する。生成された行動特徴量は、記憶装置114に格納されてよい。
【0046】
なお、対象者101の行動(特に関連行動)から抽出される行動特徴量は一つに限る必要はなく多様なものを統合して心理特性を推定することができる。例えば、録画データを基に行動特徴量生成部212により特定される関連行動データは、頭部動作(対象者101の頭部の動作)、表情(対象者101の表情)、眼球動作(対象者101の眼球動作)、体勢(対象者101の体勢)、体動(対象者101の体動)、音響(対象者101の発声の音響)、バイタル(対象者101のバイタル)、時間(対象者101による応答にかかった時間)、及び、装置操作(対象者101による対象者装置130に対する操作)のうちの少なくとも一つを表すデータでよい。このような関連行動データから、行動特徴量生成部212が、行動特徴量を生成してよい。これにより、様々な観点のうちの少なくとも一つの観点から、対象者101の心理特性を推定することができる。
【0047】
特徴量カテゴリ(頭部動作、表情、眼球動作、体勢、体動、音響、バイタル、時間及び装置操作)と、行動特徴量と、関連行動値との関係の例は、
図5に示す通りである。「関連行動値」とは、関連行動データから特定される値(関連行動を表す値)である。例えば、録画データから特定される関連行動データとして、頭部動作に関する関連行動データがあり、そのような関連行動データの時系列から、対象者101の頭部の速度の最大値や最小値といった関連行動値が得られる。特徴量カテゴリ毎に、一つ又は複数の行動特徴量があり、行動特徴量毎に、当該行動特徴量の算出のための要素となる一つ又は複数の関連行動値がある。行動特徴量生成部212は、一つ又は複数の関連行動値を用いた所定の生成モデル(例えば、回帰式又は他のモデル)により、行動特徴量を生成することができる。行動特徴量毎に、当該行動特徴量を生成するための生成モデルは異なっていてよい。また、行動特徴量毎の生成モデルは、記憶装置114(例えば推定DB240)に格納されていて、記憶装置114から特定されてよい。
【0048】
上述のガイドとモニタリングの後(S302の後)、応答制御部220は、提供DB260から提供対象の一つ又は複数の質問を特定し、特定された一つ又は複数の質問を表す情報を含んだ提供情報を、対象者装置130に提供する(S303)。質問は一度に提供されてもよいし、順次に(回答の都度に次の質問が)提供されてもよい。
【0049】
応答解析部210は、提供された一つ又は複数の質問に対する回答の制限時間を設定し、対象者101にその制限時間を通知してよい。例えば、回答の制限時間は必ずしも無くてもよいが、提供された一つ又は複数の質問について制限時間が提供DB260において関連付けられている場合、応答解析部210は、制限時間を設定してよい。
【0050】
例えば、応答解析部210は、制限時間内か否かを判定する(S304)。制限時間内で回答があれば(S304:YES、S305:YES)、応答解析部210の回答抽出部211が、対象者装置130からの計測データ(入力デバイス111経由で入力された回答を表すデータを含むデータ)から回答を抽出し、抽出された回答を表すデータを記憶装置114に格納する。並行して、行動特徴量生成部212が、その計測データから関連行動データを特定し、特定された関連行動データを記憶装置114に格納する(S306)。
【0051】
次の質問があれば(S307:YES)、処理がS304に戻る。全ての質問に対する回答が済み次の質問が無い場合(S307:NO)、又は、制限時間が終了した場合(S304:NO)、応答解析部210が、録画を終了する(S308)。録画終了の通知を、応答制御部220が対象者装置130の制御部202に送信し、その通知を、制御部202が、表示デバイス112又は他の出力デバイスを通じて出力してよい。
【0052】
回答抽出部211が、記憶装置114に格納された回答データを取得し、取得された回答データを、回答DB230に出力(格納)する(S309)。回答抽出部211が、取得された回答データを、管理者装置180に出力してもよい。
【0053】
行動特徴量生成部212が、記憶装置114に蓄積されている関連行動毎の関連行動データから、関連行動毎の関連行動値を算出し、算出された複数(又は一つ)の関連行動値を用いて複数(又は一つ)の行動特徴量を生成する(S310)。
【0054】
心理特性推定部213が、生成された複数(又は一つ)の行動特徴量を基に、推定DB240が表すモデルを用いて対象者101の心理特性を推定し、推定心理特性データを心理特性DB250に出力(格納)する(S311)。心理特性推定部213が、S311で、又は、S311の後に、推定心理特性データを、管理者装置180に出力する。
【0055】
回答データ(対象者意思データの一例)と推定心理特性データが別々のタイミングで出力されることに代えて、それらのデータの統合データが出力されてもよい。また、回答データの出力先と推定心理特性データの出力先は同じでも異なっていてもよい。また、推定心理特性データが管理者装置180に代えて又は加えて対象者装置130に出力されてもよい。これにより、対象者101は、質問に対し回答することで対象者101の推定された心理特性を知ることができる。
【0056】
図3を参照して説明した処理において、対象者装置130からの計測データは、カメラ102により撮影された対象者101が映っている動画を表す動画データを含み、行動特徴量生成部212は、動画データ(録画データ)を基に、一つ又は複数の関連行動の各々についての関連行動データを特定する。動画データから様々な関連行動データを取得することができるため、心理特性の推定精度の向上が期待される。
【0057】
また、
図3を参照して説明した処理において、応答制御部220が、一つ又は複数の質問に対する回答の制限時間を対象者101に通知してよい。一般に、面接や調査においては管理者151(例えば、面接官、監督官又はインストラクタ)が対象者101の状況を見ながら時間調整を行い、設定された時間内で人物特性の調査が完了するように導くことができる。しかし、自動化された面接や調査においては、管理者151は不在となる(対象者101の相手はコンピュータであり管理者151ではない)。このため、質問と応答に時間制限を設けた上で進行されるのが実用的である。このような時間制限に対する性格による感度の違いが、性格に関し異なる値の行動特徴量として現れ、結果として、心理特性の推定精度の向上が期待される。
【0058】
また、
図3を参照して説明した処理において、対象者101の心理特性の推定に利用される一つ以上の行動特徴量の各々は、提供された提供情報の少なくとも一部の調整された情報、及び/又は、当該行動特徴量について経過時間に従い、エンハンスされた行動特徴量である。行動特徴量のエンハンスに、例えば、上述したガイドの提供が寄与する。より精度の良い行動特徴量の生成が期待されるためである。行動特徴量の「エンハンス」は、行動特徴量を大きくすることと小さくすることのいずれの意味を含んでもよい。
【0059】
また、行動特徴量のエンハンスの別の例として、次の例が採用されてよい。すなわち、関連行動データとして、動画データが表す動画に映っている対象者101について当該動画から特定されるバイタルデータがある。提供情報の少なくとも一部の調整された情報は、対象者装置130に表示されるコンテンツと当該コンテンツの背景との両方の輝度が調整された情報である。このような情報は、録画開始から終了までの任意のタイミング(例えば、S302及びS303の少なくとも一つ)において表示されてよい。動画データが表す対象者101の顔から、行動特徴量生成部212がバイタルデータを推定する。例えば、血流によって変化している顔面の微小な色変化を表すバイタルデータが推定される。S/N比を向上しバイタルデータの推定精度を向上させるため、言い換えると、バイタルデータに基づく行動特徴量のエンハンスのために、顔には十分な照明が当たっていることが望ましい。そこで、対象者装置130の表示デバイス112を、対象者101の顔を照らす照明として活用する。コンテンツと当該コンテンツの背景との両方の輝度が調整された情報は、予め提供DB260に用意されていてもよいし、応答制御部220により動的に調整されてもよい。画面全体において、背景の面積が、コンテンツ(例えば、質問のテキストや、質問を提供するアバタ)の面積よりも広い場合、そのようなコンテンツと背景を有する情報(画面情報)において、コンテンツ輝度よりも背景輝度の方が明るい。つまり、そのようなケースでは、表示デバイス112での表示は、
図6Aに例示の表示ではなく、
図6Bに例示の表示である。一方、画面全体において、背景の面積が、コンテンツの面積よりも狭い場合、そのようなコンテンツと背景を有する情報(画面情報)において、コンテンツ輝度よりも背景輝度の方が暗い。なお、バイタルの推定には赤から緑の領域の色変化を抽出することが一般的であるため、背景及びコンテンツのうち、より輝度が大きい(より明るい)方に、赤~緑の波長域が採用されてよい。
【0060】
行動特徴量のエンハンスのまた別の例として、以下の例が採用されてよい。
【0061】
すなわち、例えばS311において、心理特性推定部213が、一つ以上の行動特徴量の各々に関し、当該行動特徴量について経過時間に応じて、当該行動特徴量をエンハンスしてよい。心理特性推定部213が、それぞれエンハンスされた一つ以上の行動特徴量を含む一つ又は複数の行動特徴量を基に、対象者101の心理特性を推定してよい。面接や調査では、対象者101がその面接や調査の雰囲気に慣れる等の理由により、対象者101の行動の特徴が変化することがある(例えば、声がだんだん小さく又は大きくなる、呼吸数やバイタルの収束の速さが変化する、身振りや手振りが増える又は減る、表情が変化する等)。そこで、時間経過(例えば、経過時間に応じた適応度合い)に応じたエンハンスがされた行動特徴量が心理特性の推定に利用することで(例えば、経過時間における行動特徴量の変化が考慮されることで)、心理特性の推定精度の向上が期待される。また、制限時間に対する行動特徴量の表れ度合いも、心理特性の推定に反映することができ、以って、心理特性の推定精度の向上が期待される。この段落において、「一つ又は複数の行動特徴量」の一部又は全部は、エンハンスされた行動特徴量でよく、言い換えると、「一つ又は複数の行動特徴量」は、エンハンスされた行動特徴量とエンハンスされていない行動特徴量とが混在してよい。
【0062】
推定DB240に格納される推定モデルとして、下記第1~第3の推定モデルの少なくとも一つが格納されていてよい。いずれの推定モデルも、重回帰式モデルであるが、推定DB240に格納される推定モデルは、第1~第3の推定モデルの少なくとも一つに代えて又は加えて、他のモデルでもよい。
・第1の推定モデル:y=∫(a(t)+b1(t)x1(t)+b2(t)x2(t)+b3(t)x3(t)+・・・+bn(t)xn(t))dt
・第2の推定モデル:y=a+b1x1+b2x2+b3x3+・・・+bnxn、且つ、bpxp=f(cp1[T1]xp[T1],cp2[T2]xp[T2],・・・,cpm[Tm]xp[Tm])
・第3の推定モデル:y=a+b1x1+b2x2+b3x3+・・・+bnxn
【0063】
なお、上記推定の変数は、下記の通りである。
・yは、心理特性成分(被説明変数)である。
・aは、定数である。
・bxは、説明変数である。
・x(例えば、x1,x2,・・・,xnの各々)は、行動特徴量である。
・b(例えば、b1,b2,・・・,bnの各々)及びc(例えば、cp1,cp2,・・・,cpmの各々)は、それぞれ、重み付け係数である。
・n及びmは、それぞれ、1以上の整数である。n及びmのいずれも、心理特性成分によって異なってよい。例えば、或る心理特性成分では、n=5でよく、別の心理特性成分では、n=3といったように、nは、心理特性成分によって異なってよい。mについても同様でよい。
・tは、経過時間である。
・T(T1,T2,・・・,Tm)は、時間スロット(経過時間の一例)である。
・pは、1~nのうちの任意の整数である。
【0064】
第1~第3の推定モデルの各々が、心理特性成分毎に用意されていてよい。複数の心理特性成分の全てに同一の推定モデルが使用されてもよいし(説明変数に代入される値は心理特性成分によって異なってよい)、或る心理特性成分によっては、第1~第3の推定モデルのいずれかが使用され、別の心理特性成分によっては、第1~第3の推定モデルの別のいずれかが使用されてよい。
【0065】
心理特性推定部213が、少なくとも一つの心理特性成分を、第1の推定モデルを用いて推定してよい。第1の推定モデルは、経過時間毎の重回帰モデルを含む。当該経過時間毎の重回帰モデルは、nの行動特徴量と1:1で対応したnの説明変数と(nは1以上の整数であり、当該重回帰モデルに対応する心理特性成分に対応の値)、当該nの説明変数の各々について、当該経過時間によって定まる重み付け係数とを含む。第1の推定モデルによれば、時間経過に対して重み係数を常に変化させつつ面接時間枠の全体から心理特性を推定すること、つまり、精度の高い心理特性推定が期待できる。なお、例えば、第1の経過時間は、或る行動特徴量のために面接開始から第1の時刻までの第1の時間範囲でよく、第2の経過時間は、別の行動特徴量のために面接開始のk分後から第2の時刻までの第2の時間範囲でよい。第1の経過時間の時刻間と、第2の経過時間の時刻間は、連続していてもよいし離散していてもよいし重複していてもよい。個々の経過時間について、開始と終了は、行動特徴量又はその他を基に動的に決定されてよい。また、経過時間は典型的には動的であるため、或る心理特性成分の推定に第1の推定モデルが使用された場合と、別の心理特性成分の推定に第1の推定モデルが使用された場合とでは、経過時間の長さや経過時間の数は異なってよい。
【0066】
心理特性推定部213が、少なくとも一つの心理特性成分を、第2の推定モデルを用いて推定してよい。第2の推定モデルは、nの行動特徴量に1:1で対応するnの重回帰モデルを含む(nは1以上の整数)。nの重回帰モデルの各々について、当該重回帰モデルは、時間(例えば、面接時間のように評価対象の時間)を構成するmの時間スロット(mは2以上の整数)に1:1で対応するmの重み付け係数と、当該mの重み付け係数の各々について、当該重回帰モデルに対応する行動特徴量である説明変数とを含む。これにより、第1の推定モデルに比べて少ない計算リソースで(演算装置115にとって小さい演算負荷で)、経過時間を考慮した心理特性推定が可能である。なお、例えば、一つの心理特性成分について、mの時間スロットの長さは同じでもよいし異なっていてもよい。また、mの時間スロットの各々の長さは、全ての心理特性成分に共通でもよいし、心理特性成分によって異なっていてもよい(後者の場合、各時間スロットの長さは、被説明変数としての行動特徴量によって適切な長さであることが望ましい)。また、或る心理特性成分について第2の推定モデルを用いた推定では、或る説明変数は、bpxp=cp1[T1]xp[T1]+cp2[T2]xp[T2]+・・・+cpm[Tm]xp[Tm]でよく、別の説明変数は、異なる式でもよい。
【0067】
心理特性推定部213は、経過時間を考慮することが好ましい少なくとも一つの心理特性成分の推定について、第1の推定モデルと第2の推定モデルのいずれを使用するかを、演算装置115の演算負荷(例えばプロセッサ使用率)とその演算負荷の閾値との関係(典型的には大小関係)を含むモデル選択ポリシー(例えば、演算負荷と推定精度のどちらを優先するか)に基づき選択してよい。例えば、心理特性推定部213は、演算装置115の演算負荷が閾値未満の場合、計算リソースをより多く必要とするがより高い推定精度が期待される第1の推定モデルを選択し、第1の推定モデルを用いて心理特性成分の推定を行ってよい。一方、心理特性推定部213は、演算装置115の演算負荷が閾値以上の場合、必要とされる計算リソースがより少なくて済む第2の推定モデルを選択し、第2の推定モデルを用いて心理特性成分の推定を行ってよい。このように、演算状況に応じて最適な推定モデルを選択でき、以って、演算状況に応じた推定の実施が期待される。
【0068】
以上が、第1の実施形態の説明である。なお、第1の実施形態では、下記のうちの少なくとも一つが採用されてよい。
・動画データを基に生成される行動特徴量は、目の動作、眉の動作、口の動作、鼻の動作、及び、顔色の変化、のうちの少なくとも一つでよい。
・動画データを基に生成される行動特徴量は、瞳孔の変動、視線の変動、注視の度合い、及び、固視微動、のうちの少なくとも一つでよい。
・動画データを基に生成される行動特徴量は、頭の動作、身体の動作、肩の動作、腕の動作、手の動作、及び、カメラ102の画角に対する対象者101の位置、のうちの少なくとも一つでよい。
・動画データを基に生成される行動特徴量は、動画データにおける映像フレーム間の顔色の変化から推定した脈拍数、ストレス度合い、及び、呼吸数、のうちの少なくとも一つでよい。
[第2の実施形態]
【0069】
第2の実施形態を説明する。その際、第1の実施形態との相違点を主に説明し、第1の実施形態との共通点については説明を省略又は簡略する(この点は、第3及び第4の実施形態についても同様である)。
【0070】
図7は、第2の実施形態に係るシステム全体におけるデータと機能を示す。
【0071】
対象者101に対する複数の質問の各々は、複数のグループのうち、当該質問の属性に応じたグループに分類されていてよい。質問とグループの関係を表すデータは、提供DB260に保存されていてよい。
【0072】
応答解析部210が、グループ分類部700を備える。例えば、グループ毎に、推定モデルが、推定DB240に格納されていてよい。
【0073】
グループ分類部700が、複数の質問の各々について、当該質問に対する回答に関わる関連行動データを、当該質問が属するグループに分類する。行動特徴量生成部212が、複数のグループの各々について、当該グループに分類された関連行動データを基に、行動特徴量を生成する。例えば、行動特徴量生成部212が、グループ毎に、行動関連値を集約(例えば平均値を算出)し、集約された行動関連値から行動特徴量を算出してよい。心理特性推定部213が、複数のグループの各々についての算出された行動特徴量を基に、対象者101の心理特性を推定する。これにより、効率的に精度良く心理特性推定を行うことが期待される。
[第3の実施形態]
【0074】
図8は、第3の実施形態に係るシステム全体におけるデータと機能を示す。
【0075】
応答解析部210が、ダイジェスト生成部800を備える。記憶装置114が、ダイジェストデータが格納されるダイジェストDB810を記憶する。
【0076】
ダイジェスト生成部800は、動画データが表す動画のうち、相対的に大きい行動特徴量又はエンハンスされた行動特徴量に関連した時間帯の動画である行動ダイジェスト動画を取得し、当該行動ダイジェスト動画を表すデータを出力(例えばダイジェストDB810に格納)する。例えば、ダイジェスト生成部800は、ダイジェスト生成が予め指定された一つ以上の質問の各々に対する回答シーンで構成された回答ダイジェスト動画を録画データから構成し、構成された回答ダイジェスト動画のデータをダイジェストDB810に格納してよい。また、ダイジェスト生成部800は、心理特性を推定する際の主要な行動特徴シーンで構成された行動ダイジェスト動画を録画データから構成し、構成された行動ダイジェスト動画のデータをダイジェストDB810に格納してよい。
【0077】
このように、自動で行われた面接の要点を確認するためのダイジェスト動画のデータが自動で構成され保存されるため、後日、要点の確認や、推定された心理特性の妥当性を確認をするのに、管理者151にとって便利である。
[第4の実施形態]
【0078】
図9は、第4の実施形態に係るキーワードテーブルの一例を示す。
【0079】
複数の質問が、心理特性成分に属する質問を含んでよい。「心理特性成分に属する質問」とは、例えば、心理特性成分に属するキーワードを含んだ質問である。具体的には、例えば、
図9に示すように、心理特性を構成する複数の心理特性成分として、神経症傾向、開放性、誠実性、外向性及び調和性といった成分が採用され、心理特性成分毎に、質問の一つ以上のキーワードが関連付けられていてよい。
【0080】
心理特性成分毎にキーワードが登録されたキーワードテーブル、つまり、
図9に例示のキーワードテーブルが、例えば、推定DB240に予め格納されてよい。キーワードテーブルは、心理特性に関するキーワードを表すデータの一例でよい。心理特性推定部213は、対象者101の心理特性の推定において、心理特性に関するキーワードを含んだ質問の重みを、心理特性に関するキーワードを含まない質問よりも相対的に高くしてよい。例えば、心理特性推定部213は、心理特性の推定に、心理特性に関するキーワードを含んだ質問に対する回答に関わる関連行動データから生成された行動特徴量を使用し、心理特性に関するキーワードを含まない質問に対する回答に関わる関連行動データから生成された行動特徴量を使用しないでよい。これにより、心理特性を精度良く推定することが期待される。
【0081】
以上、幾つかの実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。
【0082】
例えば、上述した複数の実施形態のうちの任意の二つ以上の実施形態を組み合わせることができる。
【0083】
また、いずれの実施形態においても、面接等の限られた時間の中で変化する対象者101の関連行動データから行動特徴量を生成し、生成された行動特徴量を基に心理特性を推定することで、限られた時間で客観的且つ高精度な心理特性推定の自動化を実現することができる。
【0084】
また、第1乃至第4の実施形態の少なくとも一つにおいて、
図10に例示のプラクティカルアプリケーションが採用されてよい。すなわち、人物評価システムが存在してよい。人物評価システムは、対象者の回答データと、対象者の推定心理特性データとを基に、対象者の人物評価(例えば、採用か否かの決定)を行う。人物評価システムは、人物特性推定システム100内の機能でもよいし、人物特性推定システム100外の機能(例えば、物理的な計算機システム、又は、クラウドコンピューティングサービスのような論理的な計算機システム)でもよい。人物特性推定システム100が、対象者毎に、質問に対する回答毎の関連行動データを計測データから抽出し、各質問の回答を表す回答データと、回答毎の関連行動データを基に推定された心理特性を表す推定心理特性データとを、人物評価システムに出力してよい。このようなプラクティカルアプリケーションによれば、各対象者の人物評価の自動化の実現可能性を、人物特性推定システム100という技術的手段により高めることができる。
【符号の説明】
【0085】
100:人物特性推定システム