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特開2024-16511二次電池、二次電池用電極、二次電池の製造方法、および、二次電池用電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016511
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】二次電池、二次電池用電極、二次電池の製造方法、および、二次電池用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240131BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240131BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240131BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240131BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240131BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240131BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20240131BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/058
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/64 A
H01M4/66 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118686
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】516341888
【氏名又は名称】NU-Rei株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167276
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
(72)【発明者】
【氏名】小田 修
(72)【発明者】
【氏名】ノ・ヴァン・ノン
(72)【発明者】
【氏名】ゴドゥケ・スワプニル・チェタン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ラジ・デニス・クリスティ
【テーマコード(参考)】
5H017
5H028
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS10
5H017CC01
5H017DD01
5H017EE01
5H017HH03
5H017HH04
5H028AA06
5H028BB10
5H028CC07
5H028CC11
5H028EE01
5H028HH05
5H029AJ02
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ12
5H029CJ16
5H029CJ23
5H029CJ24
5H029CJ25
5H029EJ01
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ08
5H050AA02
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA07
5H050EA10
5H050EA24
5H050FA15
5H050GA18
5H050GA23
5H050GA24
5H050GA25
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】高い電池性能を実現でき、かつ、構成が簡素で製造が容易な二次電池用の電極、および、その電極を備える二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池は、電解液で満たされた容器と、電気絶縁性とイオン伝導性とを有し、前記容器の内部空間を第1電極室と第2電極室とに区画するセパレータと、金属基板によって構成され、前記第1電極室に収容されている第1電極と、前記第2電極室に収容され、イオン化して前記第1電極に移動する金属原子を含む第2電極と、を備え、前記金属基板は、外表面に、金属粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部によって構成された微細な凹凸構造を有し、充電時に前記凸部の表面に前記金属原子が析出する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
電解液で満たされた容器と、
電気絶縁性とイオン伝導性とを有し、前記容器の内部空間を第1電極室と第2電極室とに区画するセパレータと、
金属基板によって構成され、前記第1電極室に収容されている第1電極と、
前記第2電極室に収容され、イオン化して前記第1電極に移動する金属原子を含む第2電極と、
を備え、
前記金属基板は、外表面に、金属粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部によって構成された微細な凹凸構造を有し、
充電時に前記凸部の表面に前記金属原子が析出する、二次電池。
【請求項2】
請求項1記載の二次電池であって、
前記凸部は、粒子径が0.5μm以上5.0μm以下の複数の金属粒子が密に集まって構成された突起部を含む、二次電池。
【請求項3】
請求項2記載の二次電池であって、
前記突起部は、1.0μm以上15.0μm以下の高さを有する、二次電池。
【請求項4】
請求項1記載の蓄電デバイス用電極であって、
前記凸部は、粒子径が0.5μm以上5.0μm以下であり、前記粒子径よりも大きい高さを有する縦長の粒状体を含む、二次電池。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の二次電池であって、
前記凸部を前記金属基板の厚み方向に射影した射影領域の面積は、
0.01μmより大きく、10000μm以下であり、
前記金属基板を厚み方向に射影したときの前記凸部の射影領域の密度は、
1個/mm以上、10個/mm未満である、二次電池。
【請求項6】
請求項5記載の二次電池であって、
前記金属基板は、銅又は銅合金によって構成されている、二次電池。
【請求項7】
二次電池の電極として用いられる金属基板であって、
金属粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部によって構成された微細な凹凸構造を有し、
電解液で満たされている前記二次電池の容器内に、前記凸部が前記電解液に直接的に浸漬される状態で収容される、金属基板。
【請求項8】
二次電池の製造方法であって、
金属基板の外表面に、金属の粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部が配置されている微細な凹凸構造を形成する工程と、
前記金属基板を、電解液で満たされた容器内に、前記二次電池の電極として組み付けて、前記凸部を電解液に浸漬させる工程と、
を備える、製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の製造方法であって、
前記凹凸構造を形成する工程は、前記金属基板の外表面に、電解析出により、金属粒子を析出させることによって、前記凸部を形成する工程を含む、製造方法。
【請求項10】
二次電池用の電極の製造方法であって、
前記電極を構成する金属基板の基材を準備する工程と、
前記基材を、電解浴槽の電解液に浸漬させ、電解析出により、金属粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部が配置されている微細な凹凸構造を前記基材に形成する工程と、
を備え、
前記金属基板は、前記二次電池の容器内に、前記凸部が前記電解液に直接的に浸漬される状態で収容される、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池、二次電池用電極、二次電池の製造方法、および、二次電池用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充放電可能な蓄電デバイスの一態様として、二次電池が知られている。通常、二次電池の電極には、集電体の表面に、二次電池の電池反応に関与する物質によって構成された活物質層が形成される。例えば、下記の特許文献1,2に開示されているリチウムイオン二次電池では、正極にリチウム(Li)を含む活物質層が設けられ、負極に炭素(C)によって構成された活物質層が設けられている。
【0003】
これまで、二次電池の技術分野では、電極の活物質層が電池性能に大きな影響を与えることが一般的な技術的知見とされ、二次電池の電池性能を向上させるために、様々な活物質層の研究が重ねられてきた。その研究結果の一例として、例えば、リチウムイオン二次電池では、負極の活物質層を、特許文献1のようにグラファイトで構成した場合よりも、特許文献2のようにカーボンナノウォールによって構成した方が、電池性能が向上することが見出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2668678号公報
【特許文献2】特開2010-9980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、リチウムイオン二次電池に、カーボンナノウォールの活物質層を適用したとしても、その電池性能は、依然として、二次電池に求められている高い電池性能の目標を十分に達成できてはいない。このことは、リチウムイオン二次電池以外の二次電池において、カーボンナノウォール以外の他の物質を活物質に適用した場合でも同様である。
【0006】
また、活物質層の種類によっては、二次電池用の電極の量産化を困難にする場合もある。例えば、リチウムイオン二次電池の製造工程では、カーボンナノウォールの活物質層を有する電極を運搬や保管のためにロール状に巻くなどしたときに、カーボンナノウォールが圧縮応力やせん断応力によって破壊されたり、脱落したりする場合があった。
【0007】
上述したような課題は、リチウムイオン二次電池に限らず、種々の二次電池に共通する。本願は、高い電池性能を実現でき、かつ、構成が簡素で製造が容易な二次電池用の電極、および、その電極を備える二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の発明者は、蓄電デバイス用の電極の研究を重ねるうちに、上述した活物質層についての一般的な技術的知見を覆す発見に至り、従来より簡素な構成で、製造が容易であり、電池性能を飛躍的に向上させることができる二次電池用の電極の開発に成功した。本願発明は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
本願発明の一形態は、二次電池として提供される。この形態の二次電池は、電解液で満たされた容器と、電気絶縁性とイオン伝導性とを有し、前記容器の内部空間を第1電極室と第2電極室とに区画するセパレータと、金属基板によって構成され、前記第1電極室に収容されている第1電極と、前記第2電極室に収容され、イオン化して前記第1電極に移動する金属原子を含む第2電極と、を備える。前記金属基板は、外表面に、金属粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部によって構成された微細な凹凸構造を有し、充電時に前記凸部の表面に前記金属原子が析出する。
【0010】
本願発明の発明者は、第1電極を、上記寸法の凸部を有する凹凸構造が外表面に形成されている金属基板によって構成すれば、その表面に活物質層がなくとも、活物質層がある場合よりも、二次電池の電池性能を向上させることができることを見出した。この形態の二次電池によれば、第1電極に活物質層を設けない新規な構成により、充電容量や電池性能を向上させることができる。また、この形態の二次電池によれば、第1電極に活物質層を設けなくてもよいため、その分だけ、二次電池の製造工程を容易化することができる。
【0011】
本願発明は、二次電池以外の種々の形態で実現することが可能である。本願発明は、例えば、二次電池用電極や、二次電池の製造方法、二次電池用電極の製造方法、それらの製造方法を実行する製造装置等の形態で実現することができる。また、本願発明は、二次電池の電力によって駆動する装置やシステム、二次電池を備える発電装置、発電システム等の形態で実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】二次電池の構成を示す概略図。
図2】金属基板の凸部の第1の形態例を模式的に示す概略断面図。
図3】金属基板の凸部の第2の形態例を模式的に示す概略断面図。
図4】二次電池の製造工程を示す工程フロー図。
図5】表面処理装置の構成を示す概略図。
図6】実施例の撮影画像を示す説明図。
図7】比較例の撮影画像を示す説明図。
図8】第1の実施例の電池性能の評価試験結果を示す説明図。
図9】第2の実施例の電池性能の評価試験結果を示す説明図。
図10】第1の比較例の電池性能の評価試験結果を示す説明図。
図11】第2の比較例の電池性能の評価試験結果を示す説明図。
図12】第3の比較例の電池性能の評価試験結果を示す説明図。
図13】実施例と比較例の電池性能の評価試験結果を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、本願発明に係る二次電池、二次電池用電極、二次電池の製造方法、および、二次電池用電極の製造方法の実施形態を説明する。
【0014】
1.実施形態:
1-1.二次電池の構成:
図1は、本実施形態の二次電池10の構成を示す概略図である。本実施形態の二次電池10は、充放電にリチウム(Li)イオンが関与するリチウムイオン二次電池である。二次電池10は、容器11と、電解液12と、セパレータ15と、第1電極20と、第2電極30と、を備える。図1では、便宜上、容器11を一点鎖線で図示し、セパレータ15を破線で図示してある。
【0015】
容器11は、電解液12が満たされた内部空間を有している。容器11は、電解液12に対して反応しにくい材質の材料によって液密に構成されている。電解液12は、第1電極20と第2電極30との間で充放電に関与する金属イオンを伝達可能な性質を有する。本実施形態では、電解液12は、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた溶液によって構成され、リチウムイオンを伝達可能である。電解液12のリチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を用いることができる。また、有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)や、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を用いることができる。
【0016】
セパレータ15は、容器11の内部空間を、第1電極20が収容される第1電極室16と第2電極30が収容される第2電極室17とに区画する。セパレータ15は、例えば、多孔質構造を有する樹脂フィルムや不織布などの薄膜状部材によって構成され、電気絶縁性とイオン伝導性とを有する。セパレータ15は、第1電極20と第2電極30とを電気的に絶縁するとともに、電解液12を介して伝達される金属イオンを透過する。
【0017】
第1電極20は、本実施形態の二次電池用電極に相当する。以下の説明においては、第1電極20を、単に「電極20」とも呼ぶ。本実施形態の二次電池10では、電極20は、負極を構成する。電極20は、金属基板21によって構成される。
【0018】
本実施形態では、金属基板21は、銅(Cu)の金属箔によって構成される。Cuであれば、外表面に後述する凹凸構造を形成しやすいし、二次電池10の電池性能を高めやすい。また、Cuであれば、入手が容易であり、加工も容易である。金属基板21は、Cu合金によって構成されてもよい。なお、金属基板21は、金属箔によって構成されていなくてもよく、例えば、金属薄板によって構成されてもよい。金属基板21は、平板状に構成されていなくてもよく、例えば、筒状や波状など、様々な形状に曲げ加工されていてもよい。
【0019】
金属基板21は、電極20の集電体として機能する。従来の二次電池では、通常、集電体の表面には、充放電に関与する物質によって構成された活物質層が設けられる。これに対して、本実施形態の金属基板21の表面には、そのような活物質層は形成されていない。その代わり、本実施形態の金属基板21の外表面には微細な凹凸構造23が形成されている。凹凸構造23は、金属基板21の第1面21aと第2面21bの両方にそれぞれ設けられている。
【0020】
凹凸構造23は、幅の最大値Wmaxが0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部24を含んでいる。凸部24は、金属基板21の厚み方向に突起している部位である。後述するように、凸部24は、1つまたは複数の金属粒子によって構成される。「金属粒子」とは粒子状の形状を有する金属の塊を意味する。この金属粒子は、金属基板21を構成する金属と同種の金属によって構成される。金属粒子は、金属基板21が合金で構成されている場合には、その合金の主体となる金属と同種の金属によって構成される。
【0021】
凸部24の幅の最大値Wmaxは、例えば、走査型電子顕微鏡等によって、金属基板21の表面に正対して写した撮影画像において測定される、凸部24のあらゆる方向の幅のうちの最大値に相当する。「金属基板21の表面に正対する」方向は、金属基板21の厚み方向に相当する。「あらゆる方向」とは、金属基板21の厚み方向に直交する全ての方向に相当する。これらの定義は、以下の説明においても同様である。
【0022】
凸部24の幅の最大値Wmaxの下限は、0.6μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましい。凸部24の幅の最大値Wmaxの上限は、28.0μm以下であることが好ましく、25.0μm以下であることがより好ましい。なお、凹凸構造23には、上記の幅の最大値Wmaxの数値範囲に含まれる凸部24の他に、上記の幅の最大値Wmaxの数値範囲の下限よりも小さい幅を有する凸部が含まれていてもよい。
【0023】
上記のように、金属基板21には活物質層が形成されておらず、凹凸構造23の各凸部24は、充電前の二次電池10において電解液12に直接的に浸漬された状態となっている。ここでの「充電前」とは、製造後、1度も充電がされていない状態を意味する。後述するように、二次電池10での充電の際には、凹凸構造23の凸部24の表面に第2電極30からイオン化して移動してきた金属原子、本実施形態ではLi、が析出する。
【0024】
凸部24の構造の詳細、および、金属基板21の凹凸構造23の形成方法については後述する。
【0025】
第2電極30は、二次電池10の正極を構成する。第2電極30は、正極集電体31と、正極活物質層32と、を有する。正極集電体31は、例えば、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の金属箔によって構成される。正極集電体31は、他の金属によって構成されてもよいし、金属箔以外の形態を有していてもよい。正極集電体31は、平坦な形状で構成されていなくてもよく、筒状や波状など、様々な形状に曲げ加工されていてもよい。
【0026】
正極活物質層32は、正極集電体31の第1面31aと第2面31bのそれぞれに形成されている。正極活物質層32は、Li原子を含む正極活物質と、導電助剤と、結着剤とを含有する。正極活物質層32は、増粘剤を含んでいてもよい。正極活物質としては、例えば、三元系の物質を用いることができ、コバルト酸リチウム(LiCoO)や、マンガン酸リチウム(LMO)、ニッケル酸リチウム(NCA)を用いることができる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラックやカーボンブラックを用いることができる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やスチレンブタジエンゴム(SBR)を用いることができる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いることができる。
【0027】
図2、および、図3を参照して、金属基板21が有する凹凸構造23を構成する凸部24の構造の例を説明する。図2および図3は、厚み方向に沿った任意の切断面における金属基板21の断面構造の一部を模式的に示す概略断面図である。
【0028】
図2および図3にはそれぞれ、形状が異なる凸部24の形態の例が示されている。図2には、凸部24の第1の形態例として突起部24aが図示されている。図3には、凸部24の第2の形態例としての第1粒状体24bと、第3の形態例としての第2粒状体24cと、が図示されている。以下、凸部24の形態例について、順に説明する。
【0029】
図2を参照する。凸部24の第1の形態例である突起部24aは、粒子径Rpが0.5μm以上5.0μm以下の複数の微小な金属粒子25が密に積み重なるように集まって構成されている。突起部24aは、複数の微小な金属粒子25が房状に集まった構造を有しており、表面に微細な金属粒子25が密に配置された凹凸構造が形成され、全体として周囲から突起している構造を有している。
【0030】
本明細書において、「粒子」とは、様々な形状の微小な塊を意味する概念であり、必ずしも略球形状に限定されることはなく、表面にランダムな凹凸構造を有する異形な形状も含む概念である。また、本明細書において、「粒子径」は、例えば、走査型電子顕微鏡等を用いて金属基板21に正対して撮影した複数の画像において測定される、あらゆる方向の粒子の直径のうちの最大値を意味する。
【0031】
突起部24aにおいては、上述した凸部24の最大幅Wmaxは、金属基板21の厚み方向に直交する方向における、突起部24aを構成する複数の金属粒子25の端部間の距離のうちの最大値に相当する。突起部24aを構成する各金属粒子25の粒子径Rpの下限は、0.6μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましい。また、金属粒子25の粒子径Rpの上限は、4.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。
【0032】
突起部24aは、1.0μm以上15.0μm以下の高さHpを有する。突起部24aの高さHpは、例えば、走査電子顕微鏡によって金属基板21の厚み方向に直交する方向から撮影した撮影画像において測定される、突起部24aの最下端と最上端との間の金属基板21の厚み方向における距離に相当する。突起部24aの高さHpの下限は、2.0μm以上であることが好ましく、4.0μm以上であることがより好ましい。突起部24aの高さHpの上限は、12.0μm以下であるとしてもよく、10.0μm以下であるとしてもよい。
【0033】
図3を参照する。凸部24の第2の形態例である第1粒状体24bと第3の形態例である第2粒状体24cとは、単体として認識される金属粒子25によって構成されている点が共通しているが、寸法や形状が異なっている。第1粒状体24aと第2粒状体24bとでは、特に、その高さが異なっている。粒状体24b,24cの高さは、例えば、走査電子顕微鏡によって金属基板21の厚み方向に直交する方向から撮影した撮影画像において測定される、粒状体24b,24cの最下端と最上端との間の金属基板21の厚み方向における距離に相当する。
【0034】
第1粒状体24bの粒子径Rqは0.5μm以上5.0μm以下であり、その高さHqは、ほぼその粒子径Rq以下である。第1粒状体24bでは、その粒子径Rqが凸部24の最大幅Wmaxに相当する。第1粒状体24bの粒子径Rqの下限は、0.6μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましい。第1粒状体24bの粒子径Rqの上限は、4.5μm以下としてもよく、4.0μm以下としてもよい。
【0035】
第2粒状体24cは、縦長な形状を有している。第2粒状体24cは、粒子径Rrが0.5μm以上8.0μm以下であり、その粒子径Rrよりも大きい高さHrを有している。第2粒状体24cの粒子径Rrは、凸部24の幅の最大値Wmaxに相当する。第2粒状体24cの粒子径の下限は、0.6μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましい。第2粒状体24cの粒子径の上限は、7.0μm以下としてよく、5.0μm以下としてもよい。
【0036】
第2粒状体24cの高さHrは、例えば、1.0μm以上12.0μm以下であるとしてよい。第2粒状体24cの高さHrの下限は、2.0μm以上であるとしてもよく、3.0μm以上であるとしてもよい。また、第2粒状体24cの高さHrの上限は、10.0μm以下であるとしてもよく、8.0μm以下であるとしてもよい。
【0037】
凹凸構造23は、例えば、突起部24aが、金属基板21の表面に密に配置された構成を有していてもよい。凹凸構造23は、突起部24aの間に第1粒状体24bや第2粒状体24cが配置された構成を有していてもよい。凹凸構造23は、第1粒状体24b、または、第2粒状体24cが、金属基板21の表面全体にわたって分布している構成であってもよい。凹凸構造23は、金属基板21の表面全体にわたって配置された第1粒状体24bの間に、突起部24aや第2粒状体24cが配置されている構成を有していてもよい。凹凸構造23は、突起部24aと、第1粒状体24bと、第2粒状体24cとが混在している構成を有していてもよい。凹凸構造23は、凸部24に加えて、第1粒状体24bや第2粒状体24cよりも小さい粒子状の凸部を含んでいる構成であってもよい。
【0038】
上述した突起部24aや粒状体24b,24cを含む凸部24を金属基板21の厚み方向に射影した射影領域の面積は、0.01μmより大きく、10000μm以下である。また、金属基板21を厚み方向に射影したときの凸部24の射影領域の密度は、1個/mm以上、10個/mm未満である。こうした寸法の凸部24は、金属基板21の基材に対する電解析出による表面処理によって容易に形成することができる。
【0039】
1-2.二次電池での電池反応:
二次電池10での充放電の際の化学反応は、例えば、以下のような反応式により表すことができる。正極物質がLiCoOである場合、正極である第2電極30での反応式は、下記の式(1)で表される。xは、反応する原子の割合を表し、0より大きく1未満の実数である。
Li1-xCoO + xLi + xe- ⇔ LiCoO …(1)
【0040】
これに対して、負極である電極20での反応式は、下記の式(2)で表される。式(2)が示しているように、二次電池10での充電の際には、電極20の凸部24の表面にLiが析出する。
Li + e ⇔ Li …(2)
【0041】
上記の式(2)で示されているように、本実施形態の二次電池10によれば、理論的には、電極20においてLiを析出させることができる限り、充電が可能であり、高い充電容量を得ることができる。
【0042】
ここで、本願発明の発明者は、電極20を構成する金属基板21の外表面に、上述した寸法の凸部24を有する凹凸構造23が形成されていると、金属基板21の表面へのLiの析出が促進されることを見出した。このように、Liの析出が促進される理由は、核生成理論に基づく考察によれば、凹凸構造23の凸部24が起点となってLiが析出しやすくなるためであると推察される。
【0043】
このように、本実施形態の二次電池10によれば、電極20に活物質層がなくとも、金属基板21の凹凸構造23の凸部24の存在によって、金属基板21の表面におけるLiの析出が促進されるため、充電容量や比容量等の電池性能が高められる。また、本実施形態の二次電池10によれば、電極20の表面の活物質層を省略できる分だけ、二次電池10の構成が簡素化されており、二次電池10の製造に使用される材料が低減されている。
【0044】
加えて、本実施形態の二次電池10によれば、金属基板21の表面に凹凸構造23の凸部24が一様に分布していることにより、Liを、金属基板21の表面に一様に析出させることができる。よって、電極20においてデンドライトが生成されることを抑制でき、デンドライトによる二次電池10の損傷・劣化を抑制することができる。
【0045】
ここで、例えば、カーボンナノウォールの活物質層を有する従来の二次電池の製造工程では、その活物質層が形成されている電極を、運搬や保管等のためにロール状に丸めた場合に、カーボンナノウォールの一部が損傷したり、脱落したりする場合があった。これに対して、本実施形態の電極20によれば、二次電池10の製造工程において、ロール状に丸められて運搬や保管がされたとしても、そうした活物質層の劣化や脱落という問題が発生することはない。よって、本実施形態の電極20によれば、その取り回しが容易であるため、電極20の量産化が容易になる。
【0046】
1-3.二次電池の製造方法:
図4は、二次電池10の製造工程を示す工程フロー図である。工程P1,P2は、電極20の製造工程である。
【0047】
工程P1では、金属基板21の基材BMが準備される。基材BMは、例えば、金属箔や金属薄板であり、平坦な表面を有している。本実施形態では、基材BMは、銅箔である。工程P2では、基材BMに対して電解析出による表面処理をおこなうことによって、上述した凹凸構造23が両面に形成される。
【0048】
図5は、工程P2で用いられる表面処理装置50の構成を示す概略図である。表面処理装置50は、基材BMの搬送部として、処理前の基材BMが巻き取られている送出ローラ51と、基材BMの搬送をガイドする複数の案内ローラ52と、表面処理後の基材BMを巻き取る巻取ローラ53と、を備える。また、表面処理装置50は、さらに、電解析出の実行部として、電解液56で満たされている電解浴槽55と、電解浴槽55に設置された電極板58と、を備える。また、図示は省略するが、表面処理装置50は、電極板58および基材BMに通電する電源部を備える。
【0049】
基材BMは、送出ローラ51から繰り出され、複数の案内ローラ52によってガイドされて、巻取ローラ53へと搬送される。案内ローラ52のうちの一つは、電解浴槽55内に設置されている。これにより、基材BMは電解浴槽55内に搬送されて、電解浴槽55内の電解液56に浸漬された後、電解浴槽55内で折り返して、電解浴槽55の外へと搬送される。基材BMが電解浴槽55の電解液56の中を通過する間に、以下に説明する電解析出による表面処理が基材BM表面に施される。
【0050】
電解浴槽55内の電解液56は、基材BMを構成する金属と同種の金属原子が溶解可能な溶液であり、例えば、硫酸(HSO)を用いることができる。電解液56は、例えば、0.5~2.0M(体積モル濃度mol/L)程度の濃度でよい。
【0051】
電解浴槽55内の電極板58は、基材BMを構成する金属と同種の金属原子を含む。本実施形態では、電極板58は粗銅によって構成されている。電極板58は、電解浴槽55内を搬送されていく基材BMの表面と面するように設置されている。電極板58は、基材BMの表面に対してほぼ平行に設置されていることが好ましい。電極板58と基材BMとの間の距離は、例えば、2.0~6.0cm程度でよい。
【0052】
基材BMの搬送中に、電源部により、電極板58を陽極とし、基材BMを陰極として電圧が印加され、電流が流される。印加電圧は、例えば、0.5~2.0V程度でよい。電流は、例えば、80.0~200.0mA程度でよく、電流密度は、15.0~30.0mA/cm程度でよい。また、環境温度としては、室温でよく、10~30℃の範囲内の温度としてもよい。表面処理装置50での電解液56の種類や濃度、通電電圧、基材BMの搬送速度などの処理条件は、上述したサイズの凸部24が形成されるように、適宜、調整される。
【0053】
表面処理装置50での電解析出では、電極板58のCuは、酸化されて電解液56中にCuイオンとして溶出し、基材BMの方へ移動して、基材BMの表面で還元されて析出する。基材BM表面には、析出したCuの粒子によって凸部24が次々に形成される。凸部24は、基材BM表面全体にわたって分布するように形成される。
【0054】
なお、表面処理装置50は、1つの電解浴槽55に複数の案内ローラ52が配置されていることにより、1つの電解浴槽55に対して、基材BMの電解液56中への浸漬が複数回繰り返されるように構成されていてもよい。あるいは、表面処理装置50は、複数の電解浴槽55を備え、それぞれの電解浴槽55内に案内ローラ52が配置され、基材BMが各電解浴槽55の電解液56への浸漬を繰り返すように搬送される多段構成を有していてもよい。この場合にも、各電解浴槽55での電解液56の種類や濃度、通電電圧、基材BMの搬送速度などの処理条件は、上述したサイズの凸部24が形成されるように、適宜、調整される。
【0055】
工程P2の表面処理は、基材BMの両面に対して実施されることが好ましい。表面処理装置50では、一方の面が表面処理された基材BMが巻き取られた巻取ローラ53を送出ローラ51として付け替え、再度、基材BMを電解浴槽55内に搬送させることにより、他方の面の表面処理が実行される。これにより、両面に微細な凹凸構造23を有する金属基板21が完成する。
【0056】
図4を参照する。続く工程P3では、正極となる第2電極30が製造される。工程P4では、図1に示すように、第1電極20と第2電極30とが、電解液12が満たされた容器11に組付けられる。第1電極20を構成する金属基板21は、凹凸構造23の凸部24が電解液12に直接的に浸漬された状態で容器11内に収容される。以上の工程により、二次電池10が完成する。
【0057】
以上のように、本実施形態の二次電池10の製造工程によれば、電解析出による表面処理により、凹凸構造23を両面に有する金属基板21を効率よく製造することができる。また、金属基板21に活物質層を設けなくてもよいため、その分だけ、工程数を低減させることができ、二次電池10の製造コストの低威が可能である。
【0058】
工程P1,P2で準備された電極20は、上述したように、ロール状に丸めて搬送したとしても、活物質層の損傷や脱落という問題が発生することがないため、取り回しが容易である。よって、電極20の量産性が高められ、電極20を用いた二次電池10の製造が容易化される。
【実施例0059】
図6、および、図7を参照して、本実施形態の電極20の実施例E1,E2とその比較例C1,C2,C3とを説明する。
【0060】
図8(a),(b)にはそれぞれ、実施例E1の金属基板21の凹凸構造23の撮影画像が示されている。また、図8(c),(d)にはそれぞれ、実施例E2の凹凸構造23の表面の撮影画像が示されている。図8(a)および図8(c)は、走査電子顕微鏡によって金属基板21の厚み方向に直交する方向から見たときの凸部24を撮影した画像である。図8(b)および図8(d)は、走査電子顕微鏡によって金属基板21の表面を金属基板21の厚み方向に撮影した画像である。図8(b)および図8(d)の画像は、凸部24を金属基板21の厚み方向に射影した射影領域の画像に相当する。
【0061】
実施例E1,E2の金属基板21は、基材として銅箔を用いて、上述した電解析出による表面処理を施すことにより作製された。実施例E2の電解析出では、電解液として、1.5MのHSO溶液を用い、基材にその電解液中で1.0Vの直流電圧を印加し、128maの電流を流した。基材と電極との間の距離は、3.5cmであった。この電解析出は、室温環境下で実行された。電解液中での基材の搬送速度は、事前の実験結果に基づき、凸部24の目標寸法に応じて、適宜、調整した。
【0062】
図8(a),(b)に示すように、実施例E1の凹凸構造23は、凸部24として、金属粒子25が密に集まることによって構成された複数の突起部24aを有していた。実施例E1では、複数の突起部24aが、互いに隣接する状態で金属基板21の表面全体にわたって分布していた。各突起部24aの幅の最大値Wmaxは、概ね、1.0~30.0μmの範囲内であった。各突起部24aの高さHpは、概ね、1.0~15.0μmの範囲内であった。突起部24aを構成する金属粒子25の粒子径Rpは、概ね、0.5~5.0μmの範囲内であった。
【0063】
図8(c),(d)に示すように、実施例E2の凹凸構造23は、凸部24として、第1粒状体24bと、第2粒状体24cとを有していた。実施例E2では、金属基板21の表面全体にわたって分布している第1粒状体24bの中に、第2粒状体24cが混在していた。
【0064】
第1粒状体24bの粒子径Rqは、概ね、0.5~5.0μmの範囲内であった。第1粒状体24bの高さHqは、概ね、0.1~5.0μmの範囲内であった。
【0065】
第2粒状体24cの粒子径Rrは、概ね、0.5~8.0μmの範囲内であった。また、第2粒状体24cの高さHrは、概ね、1.0~15.0μmの範囲内であった。第2粒状体24cは、縦長な楕円球形状を有するものが多く存在した。
【0066】
実施例E1,E2ではいずれも、凸部24を金属基板21の厚み方向に射影した射影領域の面積は、0.01μmより大きく、10000μm以下の範囲内であった。また、金属基板21を厚み方向に射影したときの凸部24の射影領域の密度は、1個/mm以上、10個/mm未満の範囲内であった。
【0067】
図7(a),(b)にはそれぞれ、比較例C1の電極を構成する金属基板の表面の撮影画像が示されている。図7(a)は、走査電子顕微鏡によって比較例C1の金属基板の表面に正対して撮影した画像である。図7(b)は、図7(a)の撮影画像よりも高い倍率で撮影した画像である。
【0068】
比較例C1の電極は、実施例E1,E2と同様に活物質層を有しておらず、集電体を構成する金属基板によって構成した。比較例C1の金属基板は、実施例E1,E2のような電解析出による表面処理を行わなかった点以外は、実施例E1,E2の金属基板とほぼ同じ構成を有していた。図7(a),(b)の画像に示されているように、比較例C1の金属基板は、凹凸がほとんどない平坦な面を有していた。
【0069】
図7(c)には、比較例C2の電極の撮影画像が示されている。図7(c)は、走査電子顕微鏡によって、比較例C2の活物質層の表面に正対して撮影した画像である。比較例C2の電極は、比較例C1と同様な平坦面を有する金属基板の表面にグラファイトの活物質層を設けた構成とした。図7(c)には、その活物質層を構成するグラファイトの粒子が写っている。
【0070】
図7(d),(e)には、比較例C3の電極の撮影画像が示されている。図7(d)は、走査電子顕微鏡によって比較例C1の電極の厚み方向に直交する方向から電極の表層を撮影した画像である。図7(e)は、走査電子顕微鏡によって、比較例C1の電極の表面に正対して撮影した画像である。
【0071】
比較例C3の電極は、比較例C1と同様な平坦面を有する金属基板の表面に、活物質層としてカーボンナノウォールを設けた構成とした。図7(d)の画像における、ひだ状の白い像、および、図7(e)の画像における、網目状の白い筋状の像がカーボンナノウォールである。カーボンナノウォールは、CVD法によって、約1.0μmのほぼ一様な高さで、金属基板の表面の全体にわたってランダムな網目状に形成された。
【0072】
図8図13は、上記の実施例E1,E2および比較例C1,C2,C3の電極を負極とする二次電池の電池性能の評価試験結果を示す説明図である。図8および図9にはそれぞれ、実施例E1,E2の電極を用いた二次電池において得られたグラフが示されている。また、図10図11、および、図12にはそれぞれ、比較例C1,C2,C3の電極を用いた二次電池において得られたグラフが示されている。図8図12では、二次電池の電圧と充電容量との関係が、充電時については実線のグラフで、放電時については一点鎖線のグラフで示されている。図13には、実施例E1および比較例C2,C3を用いた二次電池の充電容量および比容量がそれぞれ棒グラフで示されている。本評価試験では、充電電流および放電電流はいずれも0.5mAとした。
【0073】
実施例E1,E2および比較例C1,C2,C3を用いた二次電池は、リチウムイオン二次電池であり、下記の表1に示す構成で作製した。
【0074】
【表1】
【0075】
図10に示すように、比較例C1の平坦面を有する金属基板のみで構成した電極を負極とした二次電池では、充放電をすることができなかった。この結果から、外表面に凹凸構造を有していない金属基板では二次電池の電極として機能しないことがわかる。
【0076】
図11図13に示すように、グラファイトの活物質層を有する比較例C2を用いた二次電池によれば、充電容量が4.0[mAh]であり、比容量が2.0[mAh/cm]であった。また、図12図13に示すように、一様な厚みのカーボンナノウォールの活物質層を有する比較例C3を用いた二次電池によれば、充電容量が12.6[mAh]であり、比容量が9.4[mAh/cm]であった。
【0077】
比較例C1,C2,C3の結果から、平坦な金属基板に活物質層を設けることにより、二次電池の電極としての機能が発揮されることがわかる。また、カーボンナノウォールを負極の活物質層に適用した方が、グラファイトを活物質層に適用した場合よりも著しく二次電池の電池性能を向上させることができることがわかる。
【0078】
ところが、図8および図9に示すように、実施例E1,E2を用いた二次電池ではいずれも、充電容量がほぼ14.0[mAh]であった。また、図13に示すように、実施例E1を用いた二次電池では、比容量が10.5[mAh/cm]であった。図13では図示は省略されているが、実施例E2を用いた二次電池においても同等な比容量が実現されていた。
【0079】
このように、実施例E1,E2のいずれについても、活物質層を有する比較例C2,C3を用いた二次電池よりも明らかに電池性能が著しく向上していた。このような結果になったのは、実施例E1,E2の金属基板21に形成された凹凸構造23の凸部24が、活物質層よりもLiの析出を促進させることができたためであると考えられる。この結果は、二次電池の電極には活物質層が必要であるとする従来の一般的な知見を覆すものと言える。また、活物質層がない方がかえって電池性能が向上するというのは、そうした従来の技術常識からは容易には想到できない新たな発見であると言える。
【0080】
以上のように、本願発明に係る二次電池用電極およびそれを用いた二次電池によれば、二次電池の電池性能を著しく向上させることができる。また、本願発明に係る二次電池用電極によれば、活物質層を有していない簡素な構成を有しているため、二次電池用電極の製造および二次電池の製造が容易化される。
【0081】
2.他の実施形態:
本願発明は、上述の実施形態や実施例の構成に限定されることはなく、例えば、以下のような形態で実現することもできる。以下において、他の実施形態として説明する構成はいずれも、上記の実施形態や、上記実施形態中で他の実施形態として説明した構成、実施例と同様に、本願発明を実施するための一形態例として位置づけられる。
【0082】
2-1.他の実施形態1:
上記実施形態の金属基板21は、Cu以外の金属によって構成されてもよい。金属基板21は、例えば、Cu合金や、Al、Al合金のうちのいずれかによって構成されてもよい。
【0083】
2-2.他の実施形態2:
上記実施形態の電極20を用いた二次電池は、リチウムイオン以外の金属イオンを充放電に関与させる構成であってもよい。上記実施形態の電極20を用いた二次電池は、例えば、ナトリウム(Na)イオンや、カリウム(K)イオン、マグネシウム(Mg)イオン等を充放電に関与させる構成であってもよい。
【0084】
2-3.他の実施形態3:
凹凸構造23の凸部24は、突起部24aや粒状体24b,24cとは異なる構造を有していてもよい。凹凸構造23の凸部24は、例えば、略半円形状や略円錐形状の形状で構成されていてもよい。
【0085】
2-4.他の実施形態4:
上記実施形態で説明した二次電池10の製造方法において、工程P2では、電解析出以外の方法で金属基板21の基材BMに凹凸構造23が形成されてもよい。金属基板21の凹凸構造23は、例えば、CVD法による表面処理や、金属基板の酸化処理等によって形成されてもよい。
【0086】
3.形態例:
本願発明は、以下のような形態によって実現することが可能である。
【0087】
[第1形態]第1形態は、二次電池として提供される。第1形態の二次電池は、電解液で満たされた容器と、電気絶縁性とイオン伝導性とを有し、前記容器の内部空間を第1電極室と第2電極室とに区画するセパレータと、金属基板によって構成され、前記第1電極室に収容されている第1電極と、前記第2電極室に収容され、イオン化して前記第1電極に移動する金属原子を含む第2電極と、を備える。前記金属基板は、外表面に、金属粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部によって構成された微細な凹凸構造を有し、充電時に前記凸部の表面に前記金属原子が析出する。
第1形態の二次電池によれば、金属基板に金属粒子で構成された凸部を含む凹凸構造を設け、第1電極に活物質層を設けない新規で簡素な構成により、充電容量や電池性能を向上させることができる。また、第1形態の二次電池によれば、第1電極に活物質層を設けなくてもよいため、その分だけ、二次電池の製造工程を容易化することができ、二次電池の製造コストを低減することができる。
【0088】
[第2形態]上記第1形態の二次電池において、前記凸部は、粒子径が0.5μm以上5.0μm以下の複数の金属粒子が密に集まって構成された突起部を含んでよい。
この第2形態の二次電池によれば、微小金属粒子が密に集まって構成された突起部によって凸部を容易に構成することができ、電池性能をより向上させることができる。
【0089】
[第3形態]上記第2形態の二次電池において、前記突起部は、1.0μm以上15.0μm以下の高さを有していてよい。
この第3形態の二次電池によれば、突起部によって、電池反応に関与する金属原子の第1電極での析出をより一層促進させることができるため、電池性能をさらに向上させることができる。
【0090】
[第4形態]上記第1形態、第2形態、および、第3形態のいずれか1つに記載の二次電池において、前記凸部は、粒子径が0.5μm以上5.0μm以下であり、前記粒子径よりも大きい高さを有する縦長の粒状体を含んでいてもよい。
この第4形態の二次電池によれば、凸部を構成する粒状体を有することにより、電池性能をより向上させることができる。
【0091】
[第5形態]上記第1形態、第2形態、第3形態、および、第4形態のいずれか1つに記載の二次電池において、前記凸部を前記金属基板の厚み方向に射影した射影領域の面積は、0.01μmより大きく、10000μm以下であり、前記金属基板を厚み方向に射影したときの前記凸部の射影領域の密度は、1個/mm以上、10個/mm未満であってよい。
この第5形態の二次電池によれば、電極表面に多数の凸部を存在させることができるため、電池性能をより向上させることができる。
【0092】
[第6形態]上記第1形態、第2形態、第3形態、第4形態、および、第5形態のいずれか1つに記載の二次電池において、前記金属基板は、銅又は銅合金によって構成されていてよい。
この第6形態の二次電池によれば、金属基板の外表面に凹凸構造を形成しやすく、電池性能を簡易に向上させることができる。
【0093】
[第7形態]第7形態は、二次電池の電極として用いられる金属基板として提供される。第7形態の金属基板は、金属粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部によって構成された微細な凹凸構造を有し、電解液で満たされている前記二次電池の容器内に、前記凸部が前記電解液に直接的に浸漬される状態で収容される。
この第7形態の金属基板によれば、外表面に活物質層が設けられていない二次電池用電極として用いることができ、二次電池に高い電池性能を実現させることができる。
【0094】
[第8形態]第8形態は、二次電池の製造方法として提供される。第8形態の製造方法は、金属基板の表面に、金属粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部が配置されている微細な凹凸構造を形成する工程と、前記金属基板を、電解液で満たされた容器内に、前記二次電池の電極として組み付けて、前記凸部を電解液に浸漬させる工程と、を備える。
この第8形態の製造方法によれば、金属基板の外表面に活物質層を設ける工程がない簡易な製造工程によって、高い電池性能を有する二次電池を得ることができる。
【0095】
[第9形態]上記第8形態の製造方法であって、前記凹凸構造を形成する工程は、前記金属基板の外表面に、電解析出により、金属粒子を析出させることによって、前記凸部を形成する工程を含んでよい。
この第9形態の製造方法によれば、金属基板の両面に、二次電池の充放電に寄与する凹凸構造を容易に形成することができる。よって、高い電池性能を有する二次電池をより容易に製造することができる。
【0096】
[第10形態]第10形態は、二次電池用の電極の製造方法であって、前記電極を構成する金属基板の基材を準備する工程と、前記基材を、電解浴槽の電解液に浸漬させ、電解析出により、金属粒子によって構成され、幅の最大値が0.5μm以上30.0μm以下である複数の凸部が配置されている微細な凹凸構造を前記基材に形成する工程と、を備え、前記金属基板は、前記二次電池の容器内に、前記凸部が前記電解液に直接的に浸漬される状態で収容される。
この第10形態の製造方法によれば、金属基板の外表面に、二次電池の充放電に寄与する凹凸構造を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0097】
10…二次電池、11…容器、12…電解液、15…セパレータ、16…第1電極室、17…第2電極室、20…電極(第1電極)、21…金属基板、21a…第1面、21b…第2面、23…凹凸構造、24…凸部、24a…突起部、24b…第1粒状体、24c…第2粒状体、25…金属粒子、30…第2電極、31…正極集電体、32…正極活物質層、50…表面処理装置、51…送出ローラ、52…案内ローラ、53…巻取ローラ、55…電解浴槽、56…電解液、58…電極板、BM…基材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13