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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165110
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】機器管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0645 20230101AFI20241121BHJP
【FI】
G06Q30/0645
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080988
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000150291
【氏名又は名称】株式会社中山ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 弘志
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 美信
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB68
5L049BB68
(57)【要約】
【課題】貸し出した産業機器の使用状態を監視し、その使用状態に応じて貸出料金を算出することで、適正な価格設定でサービスを提供することが可能となる機器管理システムを提供する。
【解決手段】顧客に貸出済みの産業機器2と、当該産業機器2のログ情報を管理するクラウドサーバ3とを備える機器管理システム1であって、産業機器2は、当該産業機器2の動作を制御する制御部21と、産業機器2の動作に関するログ情報をクラウドサーバ3に送信する通信ユニット26とを備え、クラウドサーバ3は、産業機器2から送信されたログ情報から産業機器2ごとの統計情報を算出する統計処理部33aと、統計情報に基づいて、産業機器2の状態及び評価に関する機器情報を算出する機器情報算出部33bと、統計情報及び機器情報に基づいて産業機器2の貸出料金を提供情報として算出する提供情報算出部33cとを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客に貸出済みの産業機器と、当該産業機器のログ情報を管理するクラウドサーバとを備える機器管理システムであって、
前記産業機器が、
当該産業機器の動作を制御する制御手段と、
前記制御手段の制御による前記産業機器の動作に関するログ情報を前記クラウドサーバに送信する送信手段とを備え、
前記クラウドサーバが、
前記産業機器から送信された前記ログ情報を受信して記憶するログ情報記憶手段と、
前記ログ情報から前記産業機器ごとの統計情報を算出する統計手段と、
前記統計情報に基づいて、前記産業機器の状態及び評価に関する機器情報を算出する機器情報算出手段と、
前記統計情報及び前記機器情報に基づいて前記産業機器の貸出料金を提供情報として算出する提供情報算出手段とを備えることを特徴とする機器管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の機器管理システムにおいて、
前記機器情報算出手段が、前記統計情報に基づいて前記産業機器に掛かった負荷に関する情報を数値化して機器情報として算出し、前記提供情報算出手段が、数値化された前記負荷に関する情報を前記貸出料金に換算することを特徴とする機器管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機器管理システムにおいて、
前記クラウドサーバが、
前記産業機器を顧客に貸出するときに、提供する当該産業機器を駆動するためのキーとなるキー情報を生成するキー情報生成手段を備え、
前記制御手段は、前記産業機器の起動を制御する場合に、前記キー情報に設定された条件に基づいて前記産業機器を起動する起動モード、又は、起動しない停止モードにモード状態を制御することを特徴とする機器管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の機器管理システムにおいて、
前記制御手段は、前記産業機器を提供する提供者が予め設定した所定の条件を満たす場合に、前記停止モードの状態において前記産業機器の起動を可能とするプレ駆動モードにモード変更することを特徴とする機器管理システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の機器管理システムにおいて、
前記クラウドサーバが、
前記顧客から送信される入金情報を受信する入金受付手段と、
前記産業機器に対してモード変更を行う旨の指令信号を送信する信号送信手段とを備え、
前記提供情報算出手段が、前記顧客による前記産業機器の使用に応じて前記貸出料金を積算し、当該貸出料金が前記入金情報の金額を超えた場合に、前記産業機器に対して停止モードの状態にモード変更する旨の前記指令信号を生成し、前記信号送信手段が、生成された指令信号を前記産業機器に送信することを特徴とする機器管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器の貸出料金を適正に算出する機器管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械のレンタルシステムに関する技術として、例えば特許文献1に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、作業機械遠隔稼働管理システムのデータ連結処理部のウェブサービスに、作業機械遠隔稼働管理システム外部のレンタルシステムを、互換可能な同一データ形式のウェブサービスを介して接続し、レンタルシステムは、作業機械遠隔稼働管理システムより得た作業機械の日時の稼働時間情報に基づいてレンタル先顧客へのレンタル料金請求額を算出して請求書を発行するための会計処理システムでもあり、レンタルシステムは、レンタル先顧客から作業機械の雨天または休日などによる休車分に相当するレンタル料金のカット請求があったとき、そのカット料金額から稼働時間情報に基づく実働分を差し引いてレンタル料金請求額を決定するものである。
【0003】
また、車両の貸し出しサービスにおける料金算出に関する技術として、特許文献2に示す技術が開示されている。特許文献2に示す技術は、料金算出サーバにおいて、取得部は、ユーザが使用する車両に搭載された車載機器の利用状況が記録された利用状況データを取得し、利用履歴管理部は、利用状況データの履歴をユーザに対応付けて管理し、車両管理部は、車載機器が有する一の機能の利用可否を示す利用可否情報を、車載機器が搭載される車両に対応付けて記録し、料金決定部26は、ユーザが車両を新たに利用する場合、車両の貸出料金を決定し、貸し出される車両の利用可否情報が、当該車両の車載機器が有する一の機能を利用できないことを示し、かつ、利用状況データの履歴が所定条件を満たす場合、料金調整部は、貸出料金の一部を値引きするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-108108号公報
【特許文献2】特許第6490256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2には、いずれにおいても、単にレンタル期間に応じた料金をそのまま請求するのではなく、利用時間や機能制限に応じて割引料金を算出することが記載されているが、経時的な要素以外のレンタル品の使用態様まで考慮した料金の算出を行うものではない。
【0006】
特に産業機器のように、使用環境が過酷なものであったり、大きなエネルギーを必要とする機器の場合には、その使用態様により機器の消耗具合や生産性などに大きな差が出てくる。すなわち、適正な使用態様で借りている顧客は、そうではない顧客と比べて大きな不利益を被ることとなってしまう。
【0007】
本発明は、貸し出した産業機器の使用状態を監視し、その使用状態に応じて貸出料金を算出することで、適正な価格設定でサービスを提供することが可能となる機器管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る機器管理システムは、顧客に貸出済みの産業機器と、当該産業機器のログ情報を管理するクラウドサーバとを備える機器管理システムであって、前記産業機器が、当該産業機器の動作を制御する制御手段と、前記制御手段の制御による前記産業機器の動作に関するログ情報を前記クラウドサーバに送信する送信手段とを備え、前記クラウドサーバが、前記産業機器から送信された前記ログ情報を受信して記憶するログ情報記憶手段と、前記ログ情報から前記産業機器ごとの統計情報を算出する統計手段と、前記統計情報に基づいて、前記産業機器の状態及び評価に関する機器情報を算出する機器情報算出手段と、前記統計情報及び前記機器情報に基づいて前記産業機器の貸出料金を提供情報として算出する提供情報算出手段とを備えるものである。
【0009】
このように、本発明に係る機器管理システムにおいては、産業機器のリースやレンタルなどの料金の算出に関して、単に契約期間だけではなく、実際に産業機器を使用したときの使用状態に応じた料金の算出が可能となり、適正な価格設定で貸し出しを行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る機器管理システムのシステム構成図である。
図2】第1の実施形態に係る機器管理システムにおける産業機器の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る機器管理システムにおけるクラウドサーバの構成を示す機能ブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る機器管理システムにおける端末装置の構成を示す機能ブロック図である。
図5】第1の実施形態に係る機器管理システムにおいて産業機器のオペレーターが提供対象情報にアクセスする場合の動作を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態に係る機器管理システムにおいて産業機器のログ情報をクラウドサーバ3に送信する場合の動作を示すフローチャートである。
図7】第1の実施形態に係る機器管理システムにおけるクラウドサーバの動作を示す第1のフローチャートである。
図8】第1の実施形態に係る機器管理システムにおけるクラウドサーバの動作を示す第2のフローチャートである。
図9】第2の実施形態に係る機器管理システムのシステム構成図である。
図10】第2の実施形態に係る機器管理システムにおけるクラウドサーバの構成を示す機能ブロック図である。
図11】第2の実施形態に係る機器管理システムを用いたリース処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る機器管理システムについて、図1ないし図8を用いて説明する。本実施形態に係る機器管理システムは、顧客に提供した産業機器の動作に関するログ情報を常時収集し、それらのログ情報から統計情報を算出し、統計情報に基づいて対応する産業機器の状態及び評価に関する機器情報を算出する。さらに、得られた統計情報や機器情報から顧客に提供するための提供情報を算出する。これらの算出された情報を顧客にフィードバックする場合に産業機器の画面を通して行うことで、顧客が確実に参照することができるものである。
【0012】
図1は、本実施形態に係る機器管理システムのシステム構成図である。本実施形態に係る機器管理システム1は、顧客に提供されて当該顧客により運用される産業機器2と、管理者により管理され、産業機器2から送られるログ情報の蓄積及び解析を行うクラウドサーバ3と、顧客により管理され、クラウドサーバ3から提供される情報やその他情報にアクセスするための端末装置4とを備える。
【0013】
産業機器2には、例えば砕石装置、建設機械、産業用ロボット、自然エネルギーの発電装置等が含まれるものであり、顧客に対して譲渡又は貸出し(レンタル、リース等)されたものを含む。各産業機器2には、当該産業機器2の駆動部(例えば、電動駆動部、油圧駆動部、エンジン、フライホイール、二次電池等のバッテリ、発電装置、表示装置等)の動作を制御するための制御部が組み込まれており、産業機器2は制御部の制御にしたがって駆動して運用されている。制御部の具体例としては、例えばPLC(Programmable Logic Controller)やマイコンが挙げられる。また、産業機器2の駆動部には当該の駆動部の動作を検出するための各種センサが設置されており、駆動部の動作情報を常時検出する。動作情報には、例えば電圧値、電流値、電力値、回転数、周波数、振動数、トルク、圧力、温度、速度、加速度、時間等の産業機器2や当該産業機器2の駆動部ごとに取得可能な様々なパラメータが含まれる。検出された上記の動作情報や制御部のログは、FTP等の通信プロトコルによりログ情報としてまとめてクラウドサーバ3に送信される。
【0014】
クラウドサーバ3は、各産業機器2から送信されたログ情報を記憶し、産業機器2の動作の統計情報を算出し、算出された統計情報に基づいて対応する産業機器2の状態や評価を示す機器情報を算出し、算出された統計情報や機器情報に基づいて顧客に提供するための提供情報を算出する。統計情報は、ログ情報から算出される情報であり、例えば所定期間ごとの計測値やその積算値、計測値の経時的な変化や変化率、所定期間における使用頻度、所定期間における使用時間、連続使用時間、停止時間、各計測値の最小値や最大値や平均値等が含まれる。これ以外にも、産業機器2で生じた不具合や注意・警告等を示すエラーコードなどの情報が含まれる。これらの統計情報に基づいて、産業機器2の状態や評価を示す機器情報が算出される。
【0015】
産業機器2の状態は、例えば、予め設定された閾値と計測値との差分に基づく計測値の妥当性、使用頻度や使用時間等に基づく消耗具合、稼働時間や停止時間に基づいた駆動部の使用率等が含まれる。また、産業機器2の評価は、例えば、産業機器2の稼働時間に対する生産性(計測値から得られる生産性)、使用電力や使用エネルギーに対する生産性、機器の摩耗具合に対する生産性などが含まれる。
【0016】
統計情報及び機器情報が算出されると、これらの情報に基づいて顧客に提供するための提供情報が算出される。提供情報は、産業機器2の運用状態を適正化したり、不具合などを解消するのに必要となるような情報が含まれる。例えば、産業機器2の部品の摩耗具合に基づいた交換時期や交換方法の情報であったり、生じた不具合に対応するためのマニュアル情報であったり、産業機器2をより適正に動作させるための設定値の情報などが含まれる。
【0017】
クラウドサーバ3は、統計情報、当該統計情報に基づいて得られる産業機器2の状態や評価に関する機器情報、及び、上記提供情報(以下、これらをまとめて提供対象情報という)を当該産業機器2を運用する顧客にフィードバックするが、このとき顧客が提供対象情報にアクセスするためのアクセス権情報を生成する。アクセス権情報については詳細を後述するが、例えばQRコード(登録商標)やURLのテキスト情報などが含まれる。生成したアクセス権情報は産業機器2に送信され、産業機器2の制御部によりこのアクセス権情報が産業機器2のディスプレイに表示される。
【0018】
端末装置4は、産業機器2を運用する顧客が使用する端末装置であり、産業機器2のディスプレイに表示されたアクセス権情報を用いて提供対象情報にアクセスし、当該提供対象情報を端末装置4のディスプレイに表示する。提供対象情報の内容によっては、そこから更にリンク先などにアクセスし、例えば部品の購入などの処理を行うことが可能となる。なお、端末装置4は、産業機器2を操作したり産業機器2に指示を送るための遠隔操作用の端末装置としても使用できるようにしてもよい。
【0019】
以下、各装置構成について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る機器管理システムにおける産業機器の構成の一例を示す機能ブロック図である。産業機器2は、機器全体の動作を制御する制御部21と、制御部21の制御に基づいて動作する駆動部22と、アナログ信号とデジタル信号との変換を行うアナログユニット23と、産業機器2の各所に設置されるセンサ部24と、駆動部22やセンサ部24から得られる情報やその他必要な情報を記憶するメモリ25と、外部機器との通信を行うための通信ユニット26と、情報の入力や出力を行うための入出力部27と、機器全体に電力を供給するための電源部28と、電力の充電及び放電を行う二次電池を有するバッテリ29とを備える。なお、図2に示す産業機器2の構成はあくまで一例であり、この構成に限られるものではない。
【0020】
駆動部24の具体例として、例えば油圧モータ、電動モータなどが挙げられる。各モータを制御するための油圧ポンプやインバータなども駆動部24に含まれる。例えば砕石装置の場合、破砕対象となる原材料の石のサイズ、硬度、砕石後のサイズなどに応じて破砕羽を動かすための各種モータの回転数などを制御することが行われる。
【0021】
アナログユニット23は、アナログ信号をデジタル信号に、デジタル信号をアナログ信号に変換する変換処理を行うものであり、センサ部24で計測されるアナログの計測値をデジタルに変換して制御部21で扱うことができる信号に変換する。それ以外にも、制御部21で扱うデジタル信号をアナログ信号に変換したり、駆動部22からのアナログ信号をデジタル信号に変換するといった処理が行われる。なお、アナログ/デジタルの信号変換機能は、各駆動部22ごとにその機能を持たせる構成であってもよい。
【0022】
センサ部24は、各駆動部22やその他各部に設置されるセンサであり、上述したような様々なパラメータの計測を行う。具体的には、インバータ制御による電動モータの場合は、電気的特性や回転数などの情報をインバータから取得できるが、インバータ制御しない電動モータの場合は、CTやVTなどのセンサで電気的特性を計測する。これ以外にも、振動数、温度、圧力などの物理パラメータを計測するセンサが含まれてもよい。
【0023】
メモリ25は、駆動部22が動作したログやセンサ部24で計測された情報を記憶する。メモリ25への情報の書き込み及び読み出しは、制御部21を介して行われる。また、メモリ25には、産業機器2を動作させるための設定値などを記憶されており、制御部21が設定値を読み出し、当該設定値に基づいて各駆動部22の動作を制御する。
【0024】
通信ユニット26は、外部機器との通信を行う処理部であり、4G回線や5G回線などを用いた通信を行うことができるSIMカードなどが含まれる。
【0025】
入出力部27は、タッチパネル等の入出力デバイス、ディスプレイ、操作パネル、キーボードなど産業機器2に対して情報を入力したり、産業機器2からの情報を出力する処理部である。
【0026】
電源部28は、外部の発電機や商用電源から供給される電力を各部に供給する。
【0027】
バッテリ29は、電源部28から供給される電力をリチウムイオン電池などの二次電池に貯蔵したり、二次電池に貯蔵された電力を各部に供給する。バッテリ29は、予備電源としての機能を有すると共に、外部電源からの電力をアシストする補助電源とし機能させることも可能である。バッテリ29における二次電池の充放電はBMS(Battery Management System)(図示しない)により制御されており、制御部21とBMSとで信号のやり取りが可能となっている。
【0028】
制御部21は、各駆動部22の動作を制御することで産業機器2全体の動作を管理する処理部であり、PLCやマイコンで構成される。各駆動部22の動作に関するログ情報やセンサ部24で計測された計測情報は、制御部21によりメモリ25に格納され、FTPなどのプロトコルにより定期的にクラウドサーバ3に送信される。また、エラーやアラートなどが発生した場合には、その内容が直ちにクラウドサーバ3に送信される。また、クラウドサーバ3から後述するアクセス権情報(例えばQRコード(登録商標)やURLのテキスト情報等)が送信された場合は、通信ユニット26を経由してメモリ25に格納され、制御部21がこのアクセス権情報を入出力部27のディスプレイに表示させる。顧客、すなわち産業機器2を操作するオペレーターは、ディスプレイに表示されるクラウドサーバ3からの通知を認知することができ、端末装置4を用いてディスプレイに表示されたアクセス権情報のアクセス先の提供対象情報を参照する。
【0029】
図3は、本実施形態に係る機器管理システムにおけるクラウドサーバの構成を示す機能ブロック図である。クラウドサーバ3は、産業機器2から送信されるログ情報を取得するログ情報取得部31と、取得したログ情報を記憶するログ情報記憶部32と、取得したログ情報に基づいた解析処理を行う解析処理部33と、解析結果を記憶する解析データ記憶部34と、解析結果にアクセスするためのアクセス権情報を生成するアクセス権生成部35と、解析結果へのアクセスやその他外部とのアクセスを制御するアクセス制御部36とを備える。解析処理部33は、ログ情報記憶部32に記憶されている産業機器2のログ情報を基に統計処理を行う統計処理部33aと、統計処理の結果に基づいて産業機器2の状態及び評価を算出する機器情報算出部33bと、算出された統計情報及び機器情報に基づいて顧客に提供する提供情報を算出する提供情報算出部33cを備える。
【0030】
ログ情報取得部31は、産業機器2から定期的又は不定期にFTPなどの通信プロトコルで送信されるログ情報を受信し、ログ情報記憶部32に書き込む処理を行う。ログ情報としては、上述したように、駆動部24が実際に駆動したときの駆動情報やそのときのセンサ部24から得られた計測情報などが含まれる。例えば、電動モータを駆動した場合はインバータ又は各種センサ部24から得られる電流、電圧、電力、周波数の値などが含まれる。これらの情報を例えば5分おきに定期的に受信し、ログ情報記憶部32にログ情報として蓄積する。また、これ以外にも、不具合や注意・警告等の緊急性が高い事象が発生した場合には、それに対応するアラートやエラーコードなどの異常情報が産業機器2から直ちに送信され、ログ情報として記憶されると共にアクセス権生成部35に送られる。
【0031】
統計処理部33aは、ログ情報記憶部32に蓄積されたログ情報から、産業機器2ごとに所定期間における平均値、中央値、最大値、最小値、変化率、代表値、最頻値などの統計的な値を算出して求める。算出された統計情報は、解析情報記憶部34に記憶される。
【0032】
統計情報は、例えば電動モータであれば、駆動開始から停止するまでの時間経過に応じた電流、電圧、電力、回転数等の値であったり、それぞれのパラメータの平均値、最大値、最小値、消費電力の積算値などの情報である。なお、これらの統計情報は、統計表示部(図3には図示しない)によりクラウドサーバ3を管理する管理者(顧客に産業機器2を提供した機器提供者に相当)や顧客に対して視覚的に確認しやすいように加工して表示できるようにしてもよい。例えば、統計情報として求めた値を顧客ごとや産業機器2ごとにグラフや図表に加工して表示できるようにしてもよい。
【0033】
機器情報算出部33bは、算出された統計情報に基づいて、予め設定されている閾値や他の顧客に提供されている産業機器2の統計情報と比較を行うことで差分を算出し、産業機器2の状態や評価を数値化した機器情報を算出する。算出した機器情報は、解析情報記憶部34に記憶される。
【0034】
産業機器2の状態に関しては、例えば、駆動部24におけるモータの電流値について、予め設定された閾値との差が所定の範囲内にあるかどうかで産業機器2の運用状態が適正かどうかを判定する。計測値と閾値との差が所定の大きさ以上である場合は、運用状態が適正ではないと判定し、その差の大きさに応じた適正度を算出する。具体的には、計測値と閾値との差分を1~0の間で正規化することで、値が小さいほど産業機器2の状態が正常状態から乖離するような適正度を数値として求める。また、例えば、砕石装置の破砕羽を動作させる電流や電圧などの波形に基づいて、原料の硬さや動作モードを算出することも可能である。具体的には、例えば電流波形のピークが鋭い場合には、硬い原料を砕石していると判断し、ピークが緩やかな場合には柔らかい原料を砕石していると判断することが可能である。また、ピークの値が大きい場合には大きい原料を砕石していると判断し、ピークの値が小さい場合には小さい原料を砕石していると判断することが可能である。つまり、電気的特性の波形の状態から産業機器2の運用状態を算出する。
【0035】
これ以外にも、例えば一の顧客が運用している場合の計測値の統計情報と、略同一又は類似の条件で他の複数の顧客が運用している場合の計測値の統計情報との差について、その差が所定の範囲を逸脱している場合には、一の顧客の運用状態の適正度が低いと判断し、適正度が低くなるように演算を行うようにしてもよい。また、適正の範囲内と判断される状態であっても、高負荷であるトータル時間や連続時間が所定の閾値を超えるような場合には、適正度が低めになるような演算を行うようにしてもよい。さらに、駆動部22の駆動状態に関する計測値は適正の範囲であっても、その周辺の温度計や振動計の計測値が高めだったり大きめである場合には、複数の要因を考慮して適正度が低めになるような演算を行うようにしてもよい。
【0036】
産業機器2の評価に関しては、例えば、駆動部24におけるモータの電力値について、消費電力に対する生産量の割合などから単位電力あたりの生産量を数値化して算出する。生産量については、例えば生産物が保管される保管領域に設置されている重量センサの計測値を用いたり、生産物をベルトコンベアなどで運搬する際に消費した電流、電圧、電力などの電気的特性の変化(生産量が多く重量が重いほど駆動部24に掛かる負荷が大きくなる)から求めることも可能である。これ以外にも、単位時間あたりの生産量、稼働時間あたりの生産量、異常停止などすることなく連続して正常稼働した時間なども評価に含めることが可能である。
【0037】
なお、産業機器2の状態及び評価に関する情報を算出する場合に、顧客ごとに個々の事情で優先するパラメータが異なる場合がある。例えば、産業機器2の摩耗や劣化が早くなっても生産性を重視したい顧客や、生産性はそこそこで産業機器2が長持ちすることを重視したい顧客や、全て平均的に運用したい顧客や、消費エネルギーを最小限に抑えたい顧客など様々が考えられる。そこで、産業機器2の状態や評価を算出する場合の指標となる閾値や基準値などを顧客ごとに設定できるようにしてもよい。
【0038】
提供情報算出部33cは、機器情報算出部33bで得られた機器情報に基づいて、顧客に提供するための提供情報を算出する。算出された提供情報は、解析情報記憶部34に記憶される。
【0039】
提供情報は、産業機器2に精通する技術者が上記の状態及び評価に関する情報に基づいて必要な対応を検討した結果情報であってもよいし、産業機器2の状態及び評価ごとに予めパターン化されて解析データ記憶部34に登録された提供情報を抽出するようにしてもよいし、上記技術者が検討した結果の情報や実際の運用において収集されたデータを学習したAIにより提供情報を作成するようにしてもよい。具体的には、例えばモータの状態について負荷が大きいと判断される場合は、これまでの使用時間や経過年数を集計して交換を推奨するかどうかを判定する。このとき、メーカーが推奨する交換時期で判断してもよいが、実際に使用した使用時間や使用状態(計測された情報から長時間の使用や高負荷での使用が認められる)を考慮することで、メーカーが推奨する交換時期が来ていなくても交換時期であると判定するようにしてもよい。交換を推奨する場合は、その旨の情報(交換を促す旨の情報)と共に、交換に必要な見積情報であったり、交換をする場合にそのまま注文処理に進むためのリンク先情報などが含まれてもよい。交換を推奨しない場合は、おおよその交換の目安時期などを算出して提供するようにしてもよい。
【0040】
これ以外にも、状態の適正度が低かったり、評価が低い産業機器2やその部品等に関して、当該産業機器2や部品のマニュアルにアクセスするためのリンク情報などが含まれてもよい。特に、産業機器2の運用効率が良くないと判断された場合には、運用効率が良くなるような適正値の情報を含むようにしてもよい。運用効率を良くするための適正値の情報は、予め登録されている情報でもよいし、技術者の判断で入力してもよいし、運用効率が良い他の顧客の設定値を参考にして得られる値(例えば、同一の産業機器2を取り扱う複数の他の顧客の設定値の平均等)を含むようにしてもよい。なお、算出された提供情報に関連性が高い統計情報や機器情報を対応付けておくことで、当該提供情報と共に統計情報や機器情報を顧客に提供することが可能となり、より高品質なサービスを提供することが可能となる。このとき、提供情報と統計情報や機器情報との対応付けは、例えば産業機器2の機器ごとの識別番号、統計時期などの共通項に基づいて行われるようにしてもよい。
【0041】
なお、提供情報の作成についてAIを用いることが可能であることを示したが、統計情報や機器情報を算出する場合もAIを用いるようにしてもよい。この場合、提供情報の場合と同様に、様々なパターンの統計情報や機器情報の算出工程を収集し、それらを学習させることで解析AIとして成長させることが可能である。
【0042】
アクセス権生成部35は、顧客が上記の統計情報、機器情報及び/又は提供情報(すなわち、提供対象情報)にアクセスするためのアクセス権を生成する。提供対象情報には、統計情報、機器情報又は提供情報のいずれかの情報が含まれるが、顧客に対して未提供の提供情報が新たに算出された場合は、提供対象情報に当該新たな提供情報が必ず含まれるようにすることが望ましい。典型的なアクセス権情報はQRコード(登録商標)であり、提供対象情報にアクセスするためのURLが登録されたQRコード(登録商標)を生成する。このとき、QRコード(登録商標)によるリンク先の提供対象情報を参照するために予め顧客ごとに登録しているパスワードの入力を求めるようにしてもよい。QRコード(登録商標)以外にも、提供対象情報にアクセスするURLのテキスト情報を生成するだけでもよい。
【0043】
一方で、ログ情報取得部31が産業機器2から上記の異常情報を受信した場合は、直ちに顧客に知らせる必要があるため、異常が発生している旨の送信用の電子メールやショートメールを作成する。電子メールやショートメールの宛先は、産業機器2を管理している顧客の担当者やオペレーターのメールアドレスや電話番号とするのが望ましい。また、電子メールを産業機器2に送信し、産業機器2の制御部21が専用のアプリで当該電子メールを受信できる構成としてもよい。電子メールやショートメールには、上記のアクセス権情報が記載されており、オペレーターがリンク先にアクセスすることで、提供対象情報に含まれる不具合の種別やその対応に必要となるマニュアルなどを参照することが可能となっている。
【0044】
アクセス制御部36は、アクセス権生成部35が生成したアクセス権情報を産業機器2に送信したり、当該アクセス権情報に基づいた端末装置4からアクセス要求を受信したり、アクセス要求が正当なものである場合に端末装置4に対して解析データ記憶部34の該当する提供対象情報を読み出して提供する処理を行う。また、アクセス権生成部35が電子メールやショートメールの送信情報を作成している場合は、それらの宛先に対して電子メールやショートメールを送信する処理も行う。
【0045】
図4は、本実施形態に係る機器管理システムにおける端末装置の構成を示す機能ブロック図である。端末装置4は、クラウドサーバ3から産業機器2に送信され、当該産業機器2の入出力部27のディスプレイに表示されているアクセス権情報を撮像するカメラ41と、撮像したアクセス権情報をディスプレイ43に表示すると共に、クラウドサーバ3からの提供対象情報をディスプレイ43に表示する表示制御部42と、読み取ったアクセス権情報を解析するアクセス解析部44と、解析したアクセス権情報にしたがってクラウドサーバ3にアクセスすると共に、クラウドサーバ3から送信される提供対象情報を受信する通信部45とを備える。
【0046】
カメラ41は、産業機器2に表示されているアクセス権情報を撮像する。具体的には、アクセス権情報は上述したように、QRコード(登録商標)や提供対象情報のリンク先のURLであり、QRコード(登録商標)の図柄やURLのテキストが撮像される。なお、URLのテキスト情報は暗号化されていてもよい。カメラ41で撮像された画像はディスプレイ43に表示され、アクセス解析部44により撮像したアクセス権情報の解読が行われる。QRコード(登録商標)の場合は、専用のアプリやカメラ41に付属する機能を用いて図柄の情報を解読してアクセス先のURLを導出する。URLのテキストの場合は、同様に専用のアプリやカメラ41に付属する機能を用いて文字認識を行い、当該文字が示すURLのリンクを導出する。URLが暗号化されている場合は、専用の復号化アプリなどを端末装置4にインストールし、当該専用のアプリの機能を用いて復号化してURLを導出する。端末装置4の利用者であるオペレーターが所定の操作(読み取ったURLの選択等)を行うことで、通信部45がクラウドサーバ3のURLのリンク先にアクセスし、提供対象情報を取得する。取得された提供対象情報は、通信部45で受信され、表示制御部42がディスプレイ43に表示する。
【0047】
上記のアクセスにより、産業機器2を提供されたオペレーターは、端末装置4から提供対象情報を参照することができる。提供対象情報には、上述したように、産業機器2の運用についての統計的な情報、状態に関する情報、評価に関する情報、対応策に関する情報、適正な運用の参考となる情報などが含まれているため、産業機器2の運用を改善することに役立てることが可能となる。
【0048】
次に、本実施形態に係る機器管理システムの動作について説明する。図5は、本実施形態に係る機器管理システムにおいて産業機器のオペレーターが提供対象情報にアクセスする場合の動作を示すフローチャートである。まず、オペレーターの操作により産業機器2が起動する(S1)。産業機器2が起動され、入出力部27のディスプレイに通知が表示されていない場合は、そのまま通常運用で産業機器2を稼働させる(S2)。ディスプレイに通知が表示されている場合は、オペレーターの操作により端末装置のカメラ41が産業機器2のディスプレイに表示された通知(=アクセス権情報)を撮像する(S3)。表示制御部42が、カメラ41が撮像したアクセス権情報をディスプレイ43に表示すると共に(S4)、アクセス解析部44がディスプレイ43に表示されたアクセス権情報を解析してアクセス先のURLを取得する(S5)。通信部45は、取得されたURLのリンク先にアクセスし、クラウドサーバ3から提供対象情報を取得する(S6)。提供対象情報を参照したオペレーターの操作により、産業機器2が適正な運用となるように再設定等がなされる(S7)。再設定された状態で産業機器2が稼働し(S8)、一日の作業が終了したらオペレータの操作により産業機器2が停止する(S9)。翌日、S1に戻って処理が再開される。
【0049】
図6は、本実施形態に係る機器管理システムにおいて産業機器のログ情報をクラウドサーバ3に送信する場合の動作を示すフローチャートである。オペレーターの操作により産業機器2が起動すると(S1)、電源部28が産業機器2に電力供給を開始する(S2)。制御部21は、クラウドサーバ3からアクセス権情報が送信されてメモリ25内に格納されているかどうかを判定し(S3)、メモリ25内に未対応のアクセス権情報が格納されている場合は、入出力部27のディスプレイにアクセス権情報を表示する(S4)。なお、オペレーターの端末装置4からアクセス権情報のURLが示す提供対象情報にアクセスがあった場合は、クラウドサーバ3がその旨の情報を産業機器2に送信するようにしてもよい。そうすることで、産業機器2の制御部21は、当該アクセス権情報に関してはアクセス済み(すなわち、対応済み)のアクセス権情報としてメモリ25を更新し、以降新たなアクセス権情報の受信を待つ状態となるようにしてもよい。そして、ディスプレイに表示されたアクセス権情報のリンク先が示す提供対象情報に基づいて、オペレーターの操作で再設定がなされる(S5)。
【0050】
S3でアクセス権情報が送信されていない場合、又は、S5で再設定がなされた後は、制御部21が産業機器2を制御して通常運用を開始する(S6)。制御部21は、産業機器2の稼働状態を制御しながら、駆動部22が実際に動作したログ情報やセンサ部24で計測された計測情報を収集し(S7)、メモリ25に格納する(S8)。通信ユニット26が、定期的にメモリ25に格納されたログ情報をクラウドサーバ3に送信する(S9)。制御部21は、産業機器2が稼働しているかどうかを判定し(S10)、稼働している間はS3~S8が繰り返して行われ、産業機器2が停止したら処理を終了する。なお、産業機器2が停止したという情報も含めてクラウドサーバ3に送信されることが望ましいため、産業機器2の停止時には、機器の電力供給が完全に遮断される直前に産業機器2の停止情報を含めたログ情報がクラウドサーバ3に送信されるようにしてもよい。
【0051】
図7は、本実施形態に係る機器管理システムにおけるクラウドサーバの動作を示す第1のフローチャートである。図7に示すフローチャートは、産業機器2から送信されたログ情報に基づいて当該産業機器2の解析を行い、得られた提供情報にアクセスするためのアクセス権情報を産業機器2に送信する処理を示すフローチャートである。
【0052】
産業機器2からログ情報が送信されると、ログ情報取得部31がログ情報を受信し、ログ情報記憶部32に格納する(S1)。ログ情報取得部31は、ログ情報にエラーコードが含まれているかどうかを判定し(S2)、エラーコードが含まれている場合は、アクセス権情報生成部35が、解析データ記憶部34に予め登録されているエラーコードに対応する提供情報(例えば、エラーコードに対応するマニュアル等のリンク先情報)にアクセスするためのアクセス権情報を生成する(S3)。エラーコードが含まれていない場合は、統計処理部33aがログ情報記憶部32のログ情報について統計処理を行い、得られた統計情報を解析データ記憶部34に格納する(S4)。なお、統計処理は上述したような演算が行われるが、例えば1日ごと、1週間ごと、1か月ごと、1年ごとなど予め設定された所定の期間ごとに統計処理が実施されるようにしてもよい。
【0053】
統計処理によりある程度(例えば、産業機器2の状態を算出する場合に関しては数分~数ヵ月分、機器の評価を算出する場合に関しては数時間~数年分等)の統計情報が蓄積されると、機器情報算出部33bが、上述したような産業機器2の状態や評価を示す機器情報を算出し、解析データ記憶部34に格納する(S5)。機器情報が算出されると、提供情報算出部33cが、上述したような提供情報を算出し、解析データ記憶部34に格納する(S6)。アクセス権情報生成部35は、算出された提供情報を含む提供対象情報にアクセスするためのURLをQRコード(登録商標)などのアクセス権情報に変換して生成する(S7)。アクセス制御部36が、S3やS7で生成されたアクセス権情報を産業機器2に送信する(S8)。産業機器2から新たなログ情報が送信されるまで待機し(S9)、新たなログ情報が送信されたらS1~S8の処理が繰り返して行われる。
【0054】
図8は、本実施形態に係る機器管理システムにおけるクラウドサーバの動作を示す第2のフローチャートである。図8に示すフローチャートは、端末装置4から提供対象情報へのアクセスがあった場合に、端末装置4に対して提供対象情報を提供する処理を示すフローチャートである。
【0055】
端末装置4が産業機器2のディスプレイに表示されたアクセス権情報を解析してアクセス処理がなされると、アクセス制御部36が、アクセス権情報が示す提供対象情報を抽出する(S1)。アクセス制御部36は、抽出した提供対象情報を端末装置4に送信する(S2)。アクセス制御部36は同時に、アクセス権情報に対応する提供対象情報を送信済みであることを示す情報を産業機器2に送信し(S3)、処理を終了する。
【0056】
ここで、クラウドサーバ3で算出される統計情報、機器情報及び提供情報について、具体例を以下に示す。まず、産業機器2に搭載される二次電池(例えばリチウムイオン電池)などのバッテリのログ情報に基づいた統計情報、機器情報及び提供情報がある。二次電池は、BMSなどにより非常に複雑な制御がなされると共に、安全性を考慮したきめ細かい対策がなされている。このような二次電池に関しては、BMSが様々な情報(例えば、電池電圧、温度、電池残量、充電時間、放電時間等の一般的にBMSで取得可能な電池に関する情報)を取得することが可能であるため、BMSが取得可能な情報をログ情報としてクラウドサーバ3に送信することで、充放電制御や電圧制御を適正化することで電池の長寿命化及びエネルギー効率の向上を図ることが可能となる。
【0057】
具体的には、砕石装置に搭載されたバッテリの場合は、ログ情報として送信された実際の計測値について、原料となる石の大きさ、硬さ、目的とする石の大きさなどの情報に基づいて得られる最適な設定値又は理論値(最適な設定値又は理論値は、予め登録された値でもよいし、原料となる石の大きさ、硬さ、目的とする石の大きさなどの情報を基に十分に学習されたAIにより算出される値でもよい)との差分を算出し、最適な設定値や理論値に近づくように再設定する旨の情報を提供情報として算出することができる。また、破砕羽を駆動するモータやフライホールの状態を解析し、負荷に対してエネルギーが不足していると判断されるような運用の場合は、バッテリの電力をアシストとして利用できるような設定値を提供できるようにしてもよい。
【0058】
また、産業機器2を駆動する環境(天候、気温、季節、時間帯など)に応じた最適な設定値又は理論値を提供情報として算出するようにしてもよい。この場合も、最適な設定値又は理論値は予め登録された値でもよいし、十分に学習がなされたAIにより算出された値でもよい。
【0059】
さらに、産業機器2を駆動する場合に暖気運転(アイドリング)が必要である場合は、作業開始時間に応じた適正な暖機運転開始時刻を提供情報として算出するようにしてもよい。この暖気運転開始時刻については、予め登録されている産業機器2の稼働スケジュール(カレンダー機能などによる稼働スケジュール)の情報から、そのときの気温や天気などの情報を考慮した適正な暖機運転開始時刻を提供情報として算出する。この提供情報は、当該暖機運転開始時刻よりも所定時間前に通知されることが望ましいため、当該提供情報にアクセスするためのアクセス権情報を暖機運転開始時刻よりも所定時間前に作成し、オペレーターのメールアドレスや電話番号に送信されることが望ましい。
【0060】
さらにまた、例えば砕石装置において、破砕羽等の摩耗の状態をセット値(破砕した石を通過させる隙間の値)に基づいて算出するようにしてもよい。例えば、大きめの石を生成する場合はセット値を大きい値に設定し、小さめの石を生成する場合はセット値を小さい値に設定するが、同じ大きさの石を生成するにも関わらず(生成する石のサイズはオペレーターの入力情報から取得可能)、セット値を小さく変更しているような場合は、破砕羽や摩耗して隙間が大きくなったためであると推定することができる。そのため、セット値の変更後の値から破砕羽の摩耗度合いを数値化して算出することが可能となる。
【0061】
なお、アクセス権生成部35が生成するアクセス権は、提供対象情報の種別及び/又は内容に応じてセキュリティの内容を異ならせてもよい。例えば、顧客にとって産業機器2を運用する上で機密となる事項が含まれる、又は、含まれると判断される場合は、QRコード(登録商標)で提供対象情報にアクセスする際に予め登録されているパスワードや時間・回数に制限がある一時パスワードの正確な入力をアクセス要件として含める等のセキュリティとしてもよい。逆に、一般的に公開されているようなマニュアル情報を提供対象情報とするような場合は、セキュリティが不要であるため、マニュアル情報にアクセスするためのURLをそのままアクセス権情報としてもよい。これ以外にも、予め設定されている機密事項のレベルに応じて、アクセス権情報のセキュリティレベルを異ならせることが望ましい。すなわち、機密事項のレベルが高い場合には、提供対象情報にアクセスするまでに複数回の復号処理を必要とし、機密事項のレベルが下がるにしたがって復号処理の回数を低減するといったセキュリティレベルの可変が可能である。
【0062】
また、アクセス制御部36は、提供対象情報の種別及び/又は内容に応じて、アクセス権情報の送信方法及び送信先を異ならせてもよい。例えば、上述したように、ログ情報にエラーコードが含まれる場合は、できるだけ早くオペレーターにその旨を知らせる必要があるため、オペレーターが所持している端末装置4に電子メールやショートメールが送られるように送信方法及び送信先を決定する。すなわち、産業機器2に異常が発生している場合や、対応すべき時刻が決まっているような場合(例えば、上記に示したような暖機運転開始の場合)には、アクセス制御部36は、オペレーターが直ちに提供対象情報を参照できるように、オペレーターが所持している端末装置4に設定されているメールアドレスや電話番号に対してアクセス権情報を送信することで、オペレーターに対して提供対象情報をリアルタイムに通知することが可能となる。このとき、同時に産業機器2にも提供対象情報へのアクセス権情報が送信されてもよい。
【0063】
さらに、機器情報算出部33bによる産業機器2の状態及び評価を算出する処理について、ログ情報や統計情報を元に作成された波形やグラフをAIで画像認識することで算出するようにしてもよい。すなわち、様々なパラメータの様々なパターンの波形やグラフを予め学習したAI(例えば、様々なグラフや波形の形状により産業機器2の状態が良い/悪いを判定しているデータや、評価が良い/悪いを判定しているデータを学習済みのAI)を用意し、ログ情報又は統計情報として得られた波形やグラフをこのAIに入力することで、産業機器2の状態及び評価が出力されるようにしてもよい。こうすることで、AIが比較的得意とする画像認識を用いた機器情報の算出が可能となる。
【0064】
このように、本実施形態に係る機器管理システム1においては、顧客が産業機器をどのような運用しているかを把握することが可能となり、顧客に対して、例えば運用状態の良し悪し、注意事項、警告事項、改善事項等を含めた機器情報を提示することができる。つまり、顧客はこれらの情報に基づいて、現場での作業の効率化を図ることが可能になる。
【0065】
また、提供対象情報にアクセスするためのアクセス情報が少なくとも産業機器の駆動時や停止時に産業機器の画面に表示されることでオペレーターに提示され、提供対象情報を現場に確実に通知することができる。
【0066】
さらに、必要に応じて、産業機器2を構成する部品のうち劣化もしくは摩耗している部品、又は、交換時期が所定の期間内にある部品を産業機器2の状態に基づいて抽出し、当該部品を交換した場合の見積りに関する情報を提供対象情報として顧客に提供することで、部品メーカーが推奨する部品交換の目安時期ではなく、産業機器2を実際に使用した状態に応じた部品交換等の適正なタイミングを顧客に通知することが可能となり、また同時に見積りに関する情報を提示することで部品交換に要する手間を簡略化して、顧客の現場における作業効率の向上に役立てることができる。
【0067】
さらにまた、必要に応じて、産業機器2に不具合が生じた場合の当該産業機器2の状態に関する情報に基づいて、不具合が生じた状態又は場所に関連するマニュアル情報にアクセスするためのマニュアル情報を提供情報に含めて作成することで、何か不具合等が生じた場合にその解決策となる情報に直ちにアクセスすることが可能となり、不具合対応の場合の作業効率を格段に向上させることが可能となる。
【0068】
さらにまた、必要に応じて、提供対象情報の種別及び/又は内容に応じて、アクセス権情報のセキュリティ内容を異ならせることで、顧客の機密情報を機密レベルに応じて確実に保護しつつ、必要な情報への効率が良いアクセスが可能となる。
【0069】
さらにまた、必要に応じて、提供対象情報の種別及び/又は内容に応じて、アクセス権情報の送信方法及び送信先を異ならせることで、緊急の場合とそうではない場合とによってアクセス権情報の送信方法及び送信先を区別したり、リアルタイムでの通知が好ましい場合とそうではない場合とによってアクセス権情報の送信方法及び送信先を区別することができる。特に、アクセス権情報が産業機器2に送信されることを原則とし、緊急の場合やリアルタイムでの通知が好ましい場合などの例外においてオペレーターの端末装置4にもアクセス権情報が送信されるようにすることで、オペレーターにとって例外の通知を敏感にすることが可能となり、迅速且つ確実に提供対象情報へのアクセスを促すことが可能となる。
【0070】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る機器管理システムについて、図9ないし図11を用いて説明する。本実施形態に係る機器管理システムは、前記第1の実施形態において説明した機器管理システムを産業機器のリースに適用するものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0071】
様々な機器に関して、レンタルやリース(以下、単にリースという)などのサービスが一般的に広まっているが、その料金体系はリース期間に応じたものである。すなわち、リース期間が長くなるほど料金が高くなるのが一般的である。しかしながら、このような料金体系では、使用頻度が少ないにも関わらず、長期間リースするような場合には料金が高くなり、逆に使用頻度が極めて高いにも関わらず、短期間リースするような場合には料金が安くなるため、バランスが非常に悪いものとなっている。また、リース期間が同じであれば機器に対して高負荷を掛けた場合、すなわちメンテナンス作業に多くの手間を要する場合でも、低負荷を掛けた場合、すなわちメンテナンス作業にさほど手間を要しない場合でも同じ料金となることから、上記同様にバランスが良くない。
【0072】
そのため、本実施形態に係る機器管理システムにおいては、統計情報や産業機器2の状態及び評価の情報となる機器情報に基づいたリース料金を算出することで、実際の使用状態に応じた適正な料金請求を可能とする。
【0073】
図9は、本実施形態に係る機器管理システムのシステム構成図である。本実施形態に係る機器管理システム1は、顧客に貸し出されて当該顧客により運用される産業機器2と、管理者により管理され、産業機器2から送られるログ情報の蓄積及び解析を行うと共に、産業機器2のリースに関する管理を行うクラウドサーバ3とを備える。なお、図1に示した端末装置4については、必須の構成としなくてもよいし、後述するようにリース料金の確認等に利用する装置として備えてもよい。
【0074】
ここでは、産業機器2のリース契約がなされた場合を例として説明する。すなわち、図9における産業機器2は、クラウドサーバ3を管理する管理者から顧客に対してリースされたものとする。産業機器2は、第1の実施形態において説明したように、使用状態に関するログ情報を定期的にクラウドサーバ3に送信し、クラウドサーバ3は、産業機器2から送信されるログ情報に基づいて、統計情報の算出、産業機器2の状態や評価を示す機器情報の算出、統計情報や機器情報に基づいたリース料金を含む提供情報の算出等が行われる。これ以外にも、産業機器2とクラウドサーバ3とを連携させて、後述するようなキー情報を利用した駆動モード/停止モード/プレ駆動モードなどのモード状態を制御する。
【0075】
リース料金の算出について、上述したように、リース期間に応じた料金の算出だけではなく、例えば、産業機器2の駆動時間(連続駆動時間や総駆動時間)、駆動頻度、駆動日数、高負荷/低負荷の負荷状態、部品の摩耗度(メンテナンスの必要性)、生産性など、産業機器2を駆動した場合に得られる情報に基づいて算出された状態や評価をリース料金に換算する。
【0076】
また、第1の実施形態におけるクラウドサーバ3は、アクセス権生成部35が提供対象情報にアクセスするためのアクセス権情報を生成し、アクセス制御部36がアクセス制御を行うが、本実施形態においても同様の処理を行うものである。ただし、本実施形態においては、第1の実施形態の場合と同様に、産業機器2のディスプレイにアクセス権情報を表示した上で端末装置4から提供対象情報にアクセスするようにしてもよいが、アクセス権情報を電子メールやショートメールを用いて端末装置4に直接通知する方が好ましい。
【0077】
以下、各装置構成について詳細に説明する。産業機器2の構成は、第1の実施形態における図2に示した機能ブロック図と同じであるが、本実施形態においては、産業機器2の起動制御に関して新たな機能が追加されている。上述したように、リースされた産業機器2は、オペレーターの操作による起動が不可能となっている停止モード、通常通り起動可能となる駆動モード、停止モード中であるが予め設定された所定の条件を満たした場合にのみ起動が可能となるプレ駆動モードの3つのモード状態を有している。
【0078】
駆動モード/停止モードの切り替えに関して、産業機器2のリース期間の開始前及びリース期間の終了後は停止モードとなっており、リース期間中は駆動モードとなっている。また、プレ駆動モードは、停止モード中の例外的なモードであるが、例えば産業機器2を作業現場に運搬する場合に、産業機器2を起動して自走により移動させることがある。これ以外にも、初期設定や動作確認のためにリース期間外に起動が必要な場合もある。このような場合に、モード状態がプレ駆動モードに制御される。
【0079】
上記モード状態の制御は、産業機器2の制御部21により行われるが、予め生成されているキー情報にしたがってモード切り替えが行われる。以下、キー情報を用いたモード切り替えの処理について説明する。詳細は後述するが、キー情報は予めクラウドサーバ3にて生成される。このキー情報には、モード切り替えの条件などが含まれており、例えばリース期間の日付やプレ駆動モードの条件(駆動時間(数分~数時間)、駆動機能(移動、初期設定、動作確認に必要な最低限の機能))が含まれる。これ以外にもキー情報には産業機器2の駆動に必要となるトリガー情報が含まれる。キー情報が生成されると、これらのキー情報を取得(ダウンロード)するための管理プログラムを例えばUSBメモリスティックに記憶し、当該USBメモリスティックを予めリース先の顧客の元に輸送しておく。
【0080】
USBメモリスティックを輸送にて受け取った顧客は、当該USBメモリスティックをパソコンなどに挿入し、管理プログラムを起動する。管理プログラムが起動した場合は、管理画面からクラウドサーバ3にアクセスして上記のキー情報が入手可能となる。つまり、キー情報は管理プログラムを通じてしか入手することができないようにすることで、セキュリティを強固なものにすることができる。入手したキー情報はUSBメモリスティックにダウンロードされる。顧客は、このUSBメモリスティックを後から輸送される産業機器2に挿入することで、産業機器2のモード状態の制御が可能となる。
【0081】
キー情報がダウンロードされたUSBメモリスティックが挿入された産業機器2においては、入出力部27でキー情報が入力され、制御部21がキー情報をメモリ25にコピーする。以降、メモリ25内のキー情報にしたがって制御部21がモード状態を制御する。制御部21は、キー情報に含まれるリース期間の日付とタイムスタンプとを比較することでモード状態を停止モード又は駆動モードに切り替える。また、停止モードの状態においては、プレ駆動モードの条件を満たす範囲で産業機器2の起動を行う。例えば、停止モードにおいてキー情報で定められた駆動時間内であれば自由に起動できるように制御したり、停止モードにおいてキー情報で定められた機能に関与する駆動部22のみを駆動できるように制御する。駆動モード及びプレ駆動モードの場合は、制御部21がキー情報に含まれるトリガー情報を読み出すことで産業機器2の起動を可能とする。つまり、トリガー情報を読み出せない限りは産業機器2を起動することはできない。
【0082】
このようなキー情報を用いてモード状態を制御することで、産業機器2の起動状態を厳密に管理すると共に、駆動に関するセキュリティを強固にしてリース契約者のみが産業機器2を使用できるように制御することが可能となる。
【0083】
なお、ここでは、キー情報の取得をハードウェアであるUSBメモリースティックを用いて行う場合について説明したが、例えば顧客が所有するデバイスに対して電子キーとして送信するようにしてもよい。また、キー情報の取得を省略したい場合には、産業機器2のメモリ25に予めキー情報を書き込んでおくか、又は、クラウドサーバ3から産業機器2にキー情報を送信し、受信したキー情報をメモリ25に記憶するようにしてもよい。
【0084】
本実施形態に係る産業機器2は、上記モード状態の制御以外に関しては、前記第1の実施形態の場合と同じ構成及び機能を有するものである。
【0085】
図10は、本実施形態に係る機器管理システムにおけるクラウドサーバの構成を示す機能ブロック図である。第1の実施形態における図3と異なるのは、提供情報算出部33cが統計情報及び/又は機器情報に基づいてリース料金を算出し、提供情報として解析データ記憶部34に格納することである。これ以外に、産業機器2のリース契約が締結された後に当該産業機器2のモード状態を制御するための条件情報、及び、産業機器2を駆動するために必要となるトリガー情報を有するキー情報を、外部から入力されるリース情報100に基づいて生成するキー管理部101を備える。生成されたキー情報はキー情報記憶部102に記憶される。キー管理部101はキー情報の生成以外にも、顧客の管理プログラム103からの問い合わせに応じて、対応するキー情報をキー情報記憶部102から読み出して管理プログラム103に返信したり、キー情報の内容変更の操作があった場合には、キー情報記憶部102に対して対応するキー情報の更新等を行う。
【0086】
提供情報算出部33cによるリース料金の算出は、上述したように、単に産業機器2のリース期間に応じて算出するものではなく、実際の使用状態を考慮した上で料金が算出される。具体的には、例えば、産業機器2の起動開始時刻から停止時刻までの時間を積算し、総駆動時間に応じた料金を算出する。このとき、連続運転時間が所定の長さ以上(例えば5時間以上の連続運転等)である場合には、料金が加算されるようにしてもよい。また、例えば産業機器2の駆動状態において駆動部22であるモータの電流、回転数、トルク等が所定の値以上となった時間を積算し、所定の時間を超えた場合には料金を加算するようにしてもよい。さらに、産業機器2が駆動状態であっても、モード状態がプレ駆動モードの場合は(産業機器2から送信されるログ情報にはモード状態の情報が含まれている)、リース料金算出のための駆動時間に加算しない。
【0087】
これ以外にも、例えば気温が高い日や雨や雪の日の使用は産業機器2への負荷が大きくなるため料金を加算したり、設定値が異常になっている状態で不具合やエラー等が生じた場合には、オペレーターの使用態様が良くないと判断することができ、その回数に応じて料金を加算するといった算出も可能である。
【0088】
キー管理部101が生成するキー情報は、上述したように、産業機器2のモード切り替えの条件に関する情報と産業機器2を駆動するためのトリガー情報とが含まれる。リース期間の日付やプレ駆動モードの条件がリース情報100として入力されると、当該リース情報100を元にキー管理部101がキー情報を生成してキー情報記憶部102に保存する。このとき、キー管理部101は、個々の産業機器2ごとに対応するトリガー情報をキー情報に含めて生成する。トリガー情報は、例えばランダムな複数の文字列情報でよく、この文字列情報が対応する産業機器2に正確に入力された場合にのみ当該産業機器2が起動可能となっている。
【0089】
キー管理部101は、顧客のパソコンなどで動作している管理プログラム103からアクセスがあると、アクセス制御部36を介して問い合わせ情報を受信する。問い合わせ情報がキー情報の取得である場合は、キー情報記憶部102から該当するキー情報を読み出して管理プログラム103に返信する。これにより、顧客はキー情報を取得することができる。キー情報を取得した顧客は、上述したように、産業機器2をモード状態を制御しながら駆動することが可能となる。
【0090】
なお、提供情報算出部33cは、リース料金の算出を行うが、同時に請求書及び明細の作成を行い、これらを提供情報として格納してもよい。そうすることで、顧客は、提供対象情報に含まれる請求書及び明細にしたがった支払い処理を行うことが可能となり、会計処理を簡素化することができる。
【0091】
また、クラウドサーバ3は顧客が入金(チャージ)した入金情報を受け付ける入金受付部(図示しない)を備える構成とし、この入金された金額の合計が提供情報算出部33cにより算出されたリース料金の範囲内である間は産業機器2のモード状態を維持し、入金された金額の合計がリース料金を下回った場合には産業機器2のモード状態を停止モードに切り替える指令信号を提供情報算出部33cが生成し、当該指令信号を産業機器2に送信する信号送信部(図示しない)を備える構成としてもよい。
【0092】
さらに、顧客がリース期間の延長を希望する場合は、管理プログラム103からクラウドサーバ3にアクセスして延長手続きを実行できるようにしてもよい。この場合、クラウドサーバ3内で延長の許諾処理が完了するとキー情報のリース期間が更新され、それと同時に更新されたキー情報が管理プログラム103に返信され、顧客のUSBメモリスティックにダウンロードされる。顧客は、更新されたキー情報で産業機器2のモード状態を制御することでリース期間を延長することが可能となる。
【0093】
端末装置4の構成は、第1の実施形態における図4に示した機能ブロック図と同じである。そして、必要に応じて、端末装置4のディスプレイ43で提供対象情報に含まれるリース料金やその請求書等の情報を参照することが可能となっている。上述したように、本実施形態においてリース料金を参照する場合は、クラウドサーバ3から送信される電子メールやショートメールに記載されているアクセス権情報に基づいて提供対象情報にアクセスするのが好ましいが、産業機器2のディスプレイに表示されたアクセス権情報に基づいて提供対象情報にアクセスしてもよい。
【0094】
次に、一連のリースに関する処理工程を説明する。図11は、本実施形態に係る機器管理システムを用いたリース処理のフローチャートである。顧客のデバイス(端末装置4でもよいし、顧客が所有する他のデバイスでもよい)からクラウドサーバ3にアクセスされ、リースしたい産業機器2の配送場所、産業機器2の種類、リース期間が入力されることで発注手続きを受け付ける(S1)。クラウドサーバ3は、S1で入力された情報をリース情報100として取得する(S2)。キー管理部101が、リース情報100に基づいてキー情報を生成しキー情報記憶部102に保存する(S3)。キー管理部101は、生成したキー情報と対応付けの設定がなされた管理プログラム103を外部のUSBメモリスティックに書き込む(S4)。管理プログラム103が書き込まれたUSBメモリスティックは顧客の元に輸送される。
【0095】
USBメモリスティックを受け取った顧客は、顧客のデバイスにUSBメモリスティックを挿入し、顧客の操作に応じて保存されている管理プログラム103が起動する(S5)。管理プログラム103からクラウドサーバ3にアクセスし、当該管理プログラム103に対応付けられているキー情報をキー管理部101を介してキー情報記憶部102からUSBメモリスティックにダウンロードする(S6)。USBメモリスティックを後から輸送される産業機器2に挿入し、当該産業機器2を運用する(S7)。
【0096】
なお、キー情報の入手にUSBメモリスティックを用いない場合は、予めキー情報を産業機器2のメモリ25に書き込んだ状態で産業機器2を顧客の元に輸送するようにしてもよい。また、産業機器2とクラウドサーバ3とを常時通信可能状態にし、クラウドサーバ3のキー情報を産業機器2からリアルタイムで参照できるようにしてもよい。
【0097】
以降は、前記第1の実施形態における図5図8の処理が実行されることで、提供対象情報がオペレーター(顧客)に提供される。本実施形態においては、上述したように、提供情報算出部33cが統計情報及び機器情報に基づいてリース料金を提供情報として算出する機能が追加されている。
【0098】
このように、本実施形態に係る機器管理システムにおいては、顧客に貸出済みの産業機器2と、当該産業機器2のログ情報を管理するクラウドサーバ3とを備える機器管理システム1であって、産業機器2が、当該産業機器2の動作を制御する制御部21と、制御部21の制御による産業機器2の動作に関するログ情報をクラウドサーバ3に送信する通信ユニット26とを備え、クラウドサーバ3が、産業機器2から送信されたログ情報を受信して記憶するログ情報記憶部32と、ログ情報から産業機器2ごとの統計情報を算出する統計処理部33aと、統計情報に基づいて、産業機器2の状態及び評価に関する機器情報を算出する機器情報算出部33bと、機器情報で得られた情報を貸出料金に換算して提供情報として算出する提供情報算出部33cとを備えるため、産業機器2のリースやレンタルなどの料金の算出に関して、単に契約期間だけではなく、実際に産業機器2を使用したときの使用状態に応じた料金の算出が可能となり、適正な価格設定で貸し出しを行うことができる。
【0099】
また、機器情報算出部33bが、統計情報に基づいて産業機器2に掛かった負荷に関する情報を数値化して機器情報として算出し、提供情報算出部33cが、数値化された負荷に関する情報をリース料金に換算するため、産業機器2に高い負荷を掛けて使用した場合などは、部品の消耗などを考慮して料金を加算するといった処理が可能となり、適正なリース料金でサービスを行うことができる。
【0100】
さらに、クラウドサーバ3が、産業機器2を顧客に貸出するときに、提供する当該産業機器2を駆動するためのキーとなるキー情報を生成するキー管理部101を備え、産業機器2の制御部21は、産業機器2の起動を制御する場合に、キー情報に設定された条件に基づいて産業機器2を起動する起動モード、又は、起動しない停止モードにモード状態を制御するため、産業機器2の起動管理を提供者側で厳密に行うことが可能になる。
【0101】
さらにまた、産業機器2の制御部21は、産業機器2を提供する提供者が予め設定した所定の条件を満たす場合に、停止モードの状態において産業機器2の起動を可能とするプレ駆動モードにモード変更するため、産業機器2が必要以上に稼働しないように起動管理を厳密に行いつつ、産業機器2を実際に稼働させる前後の輸送時や初期設定、動作確認などを可能とすることで、満足度が高いサービスを提供することが可能となる。
【0102】
さらにまた、クラウドサーバ3が、顧客から送信される入金情報を受信する入金受付部と、産業機器2に対してモード変更を行う旨の指令信号を送信する信号送信部とを備え、提供情報算出部22が、顧客による産業機器2の使用に応じてリース料金を積算し、当該リース料金が入金情報の金額を超えた場合に、産業機器2に対して停止モードの状態にモード変更する旨の指令信号を生成し、信号送信部が、生成された指令信号を産業機器2に送信するため、顧客は、予めチャージされた金額分のみ産業機器2を稼働することができ、予算を考慮しながらリースを行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
1 機器管理システム
2 産業機器
3 クラウドサーバ
4 端末装置
21 制御部
22 駆動部
23 アナログユニット
24 センサ部
25 メモリ
26 通信ユニット
27 入出力部
28 電源部
29 バッテリ
31 ログ情報取得部
32 ログ情報記憶部
33 解析処理部
33a 統計処理部
33b 機器情報算出部
33c 提供情報算出部
34 解析データ記憶部
35 アクセス権生成部
36 アクセス制御部
41 カメラ
42 表示制御部
43 ディスプレイ
44 アクセス解析部
45 通信部
図1
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