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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165118
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/30 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080999
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】良波 梨紗
(72)【発明者】
【氏名】桜井 玲子
(72)【発明者】
【氏名】西根 祥太
(72)【発明者】
【氏名】西垣 亮介
(72)【発明者】
【氏名】中村 晴香
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA19
4F100AA20
4F100AK07
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21D
4F100DD01A
4F100DE01
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ53
4F100EJ54
4F100EJ55
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB81
4F100HB00D
4F100HB01
4F100JK09
4F100JK14A
4F100JL06
4F100JL10E
4F100JN21
4F100JN21A
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】積層体の表面の凹凸形状により光沢を抑制しながら、積層体の表面に指紋を付着しにくくする。
【解決手段】積層体10は、第1面11と、第1面11の反対側の第2面12と、を有する。積層体10は、第1面11から第2面12に向かって、基材20と、表面層40と、を順に備える。表面層40は、第1層41と、第1層41に対して第1面11より第2面12の近くに設けられた第2層42と、を含む。第2層42は、所定のパターンで設けられている。第2面12には、凹凸形状13が形成されている。第2面12の表面積に対する、第2面12の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合は、10%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する積層体であって、
前記第1面から前記第2面に向かって、基材と、表面層と、を順に備え、
前記表面層は、第1層と、前記第1層に対して前記第1面より前記第2面の近くに設けられた第2層と、を含み、
前記第2層は、所定のパターンで設けられており、
前記第2面には、凹凸形状が形成されており、
前記第2面の表面積に対する、前記第2面の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合は、10%以下である、積層体。
【請求項2】
前記第2面のJIS B0601:2013に規定される最大高さ粗さRzは、12.5μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記凹凸形状は、不規則なシワ構造を有している、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記凹凸形状は、線状凸部と、前記線状凸部の間の凹部と、によって形成されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1層の厚みは、1μm以上20μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記第2層の厚みは、0.1μm以上5μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記第2面におけるJIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度は、10.0以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
前記基材と前記表面層との間に配置された意匠層と、を備え、
前記意匠層は、着色層と、前記着色層に対して前記第1面より前記第2面の近くに設けられた絵柄層と、を含み、
前記絵柄層は、前記第2層のパターンに対応したパターンで設けられている、請求項1に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているような、化粧シートとして用いられる積層体が知られている。積層体は、建築物の内装及び外装、建具、家具及び家電等の表面、車両の内装等に用いられている。積層体の表面には、光沢を抑制するための表面層が設けられる。表面層は、積層体の表面に凹凸形状を形成する。積層体に入射した光が、凹凸形状で乱反射して拡散することにより、積層体の表面における光沢が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-165030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凹凸形状により、積層体の表面の表面積が大きくなっている。積層体の表面を指で触った際に、指と積層体とが接触する面積が大きくなるため、積層体の表面に皮脂が指紋として付着しやすい。指紋は汚れとして観察される。積層体の表面に指紋が付着しにくいことが望まれる。本開示は、積層体の表面の凹凸形状により光沢を抑制しながら、積層体の表面に指紋を付着しにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]乃至[8]に関する。
[1]
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有する積層体であって、
前記第1面から前記第2面に向かって、基材と、表面層と、を順に備え、
前記表面層は、第1層と、前記第1層に対して前記第1面より前記第2面の近くに設けられた第2層と、を含み、
前記第2層は、所定のパターンで設けられており、
前記第2面には、凹凸形状が形成されており、
前記第2面の表面積に対する、前記第2面の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合は、10%以下である、積層体。
[2]
前記第2面のJIS B0601:2013に規定される最大高さ粗さRzは、12.5μm以下である、[1]に記載の積層体。
[3]
前記凹凸形状は、不規則なシワ構造を有している、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]
前記凹凸形状は、線状凸部と、前記線状凸部の間の凹部と、によって形成されている、[1]乃至[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]
前記第1層の厚みは、1μm以上20μm以下である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]
前記第2層の厚みは、0.1μm以上5μm以下である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]
前記第2面におけるJIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度は、10.0以下である、[1]乃至[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]
前記基材と前記表面層との間に配置された意匠層と、を備え、
前記意匠層は、着色層と、前記着色層に対して前記第1面より前記第2面の近くに設けられた絵柄層と、を含み、
前記絵柄層は、前記第2層のパターンに対応したパターンで設けられている、[1]乃至[7]のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、積層体の表面の凹凸形状により光沢を抑制しながら、積層体の表面に指紋を付着しにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、積層体の一例を示す断面図である。
図2図2は、積層体の他の例を示す断面図である。
図3図3は、積層体の第2面の写真である。
図4図4は、積層体の表面層の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0009】
本明細書において、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等は、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0010】
本明細書において、パラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータは、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせた数値範囲であってもよい。
【0011】
本開示の一実施の形態の積層体10は、化粧シートとして用いられる。積層体10は、例えば、建築物の内装及び外装、建具、家具及び家電等の表面、車両の内装等の最表層を構成する部材として用いられてもよい。より詳細には、積層体10は、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装用部材、外壁、軒天井、屋根、塀、柵等の外装用部材、窓枠、扉、扉枠、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具又は造作部材、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、家電、OA機器等のキャビネット等の表面化粧板、車両の内装、外装用部材に用いられてもよい。積層体10は、包装材料、ディスプレイ用防眩フィルム、白板(ホワイトボード)又は黒板、クレジットカード、キャッシュカード、テレフォンカード、各種証明書類等の各種カード、各種キーボードの鍵盤、窓、扉、間仕切り等の透明板(窓硝子等)、人工皮革等に用いられてもよい。
【0012】
本実施の形態の積層体10は、被着体となる他の部材に重ねられてもよい。被着体は、例えば、建築物の内装及び外装、建具、家具及び家電等の表面、車両の内装等の下層を構成する部材であってもよい。被着体と積層体10とにより、化粧材が構成されてもよい。
【0013】
本実施の形態の積層体10は、表面層40を有している。表面層40により、積層体10の第2面12に凹凸形状13が形成される。凹凸形状13により、第2面12はマット面となる。積層体10に入射した光は、第2面12の凹凸形状13で乱反射して拡散する。表面層40により、積層体10の第2面12における光沢が減少する。光沢が減少することで、第2面が天然木等の天然素材のような見た目に近づけることができる。本実施の形態では、第2面12に特定の凹凸形状13が形成されている。積層体10の第2面12の凹凸形状13により光沢を減少させながら、積層体10の第2面12に指紋を付着しにくくできる。
【0014】
図1乃至図4を参照しながら、本開示の一実施の形態に係る積層体10について説明する。図1は、積層体10の一例の断面図である。図2は、積層体10の他の例の断面図である。図1及び図2に示されている例において、積層体10は、第1面11と、第2面12と、を有している。第2面12は、第1面11の反対側の面である。第1面11及び第2面12は、積層体10の主面である。第1面11は、積層体10が被着体となる他の部材に重ねられる際に、当該部材と対面する。積層体10の第2面12は、外部の観察者から観察される。積層体10は、第2面12に意匠を表示する。第2面12には、凹凸形状13が形成されている。凹凸形状13により、積層体10は、第2面12において光沢が減少する。凹凸形状13は、シワ構造を有している。積層体10の第2面12には、凹凸形状13による触感が付与されている。
【0015】
図1及び図2に示されているように、積層体10は、第1面11から第2面12に向かって、基材20と、意匠層30と、表面層40と、を含んでいる。意匠層30は、基材20と表面層40との間に配置されている。図2に示されている例では、積層体10は、意匠層30と表面層40との間に配置された樹脂層50をさらに含んでいる。積層体10は、特定の機能を発揮することが意図された他の層を含んでいてもよい。例えば、積層体10は、表面層40と意匠層30または樹脂層50との接着性を向上させるために、表面層40と意匠層30または樹脂層50との間に、プライマー層をさらに含んでいてもよい。
【0016】
基材20は、意匠層30及び表面層40を支持する。基材20は、フィルム状である。基材20の厚みは、10μm以上であってもよいし、20μm以上であってもよい。基材20の厚みは、1mm以下であってもよいし、300μm以下であってもよい。
【0017】
基材20の材料は、例えば、樹脂材料、金属材料、非金属無機材料及び繊維質材料である。樹脂材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂であってもよい。金属材料は、例えば、アルミニウム、鉄、銅、金、銀、クロム、ニッケル、コバルト、錫、チタニウム又はこれらの合金であってもよい。非金属無機材料は、例えば、セメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、石膏、珪酸カルシウム、木片セメント等の非セラミック系窯業系材料、陶磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミック系窯業系材料、石灰岩、大理石、花崗岩、安山岩等の天然石であってもよい。繊維質材料は、例えば、紙、織布、不織布又はこれらに樹脂を含侵させたものであってもよい。基材20は、これらの材料により構成される1層のみを含んでもよい。基材20は、これらの材料により構成される複数の層を含んでもよい。基材20は、互いに異なる材料からなる複数の層を含んでもよい。基材20は、複数の層の間に接着剤層等を含んでいてもよい。
【0018】
意匠層30は、積層体10の第2面12に表示される意匠を形成する。意匠層30が形成する意匠は、例えば、絵、写真、図形、模様、マーク、文字、色彩等の絵柄であってもよい。より具体的には、意匠層30が形成する意匠は、例えば、木材板表面の年輪や導管溝等の木目模様;大理石、花崗岩等の石板表面の石目模様;布帛表面の布目模様;皮革表面の皮シボ模様;目地溝を含むタイル貼り模様;目地溝を含む煉瓦積模様;砂目模様;梨地模様;互いに平行な方向に伸びる凹條部及び凸條部を複数配列させてなる模様(いわゆる「万線状凹凸模様」又は「光線彫模様」);幾何学模様、文字、図形、水玉及び花柄等の抽象柄模様;等である。
【0019】
意匠層30は、着色層31と、絵柄層32と、を含んでいる。絵柄層32は、着色層31に対して第1面11より第2面12の近くに設けられている。第2面12からの観察において、着色層31及び絵柄層32が観察される。絵柄層32は、後述する表面層40の第2層42のパターンに対応したパターンで設けられている。図示されている例では、絵柄層32は、第2面12からの観察において、表面層40の第2層42が設けられていない部分に設けられている。
【0020】
着色層31は、意匠層30が形成する意匠の下地を形成する。着色層31は、積層体10の全面に所望の色を表示する。着色層31は、いわゆるベタ層である。着色層31は、単一の色を有していてもよいし、複数の色の組み合わせを有していてもよい。着色層31は、例えば一様な単色のインキや金属薄膜等によって形成されている。絵柄層32は、着色層31との組み合わせにより、意匠を形成する。絵柄層32は、例えば、木材板表面の年輪や導管溝等の模様を形成し、着色層31との組み合わせにより、木目模様等を形成する。絵柄層32は、積層体10の一部に所望の色を表示する。絵柄層32は、着色層31とは異なる色を呈する。絵柄層32は、例えば着色層31より濃い色を呈する。絵柄層32は、例えば着色層31に重ねて印刷されたインキや金属薄膜によって形成されている。着色層31及び絵柄層32の厚みは、0.5μm以上であってもよいし、1μm以上であってもよいし、2μm以上であってもよい。着色層31及び絵柄層32の厚みは、20μm以下であってもよいし、10μm以下であってもよいし、5μm以下であってもよい。
【0021】
着色層31及び絵柄層32は、バインダー樹脂に顔料、染料等の着色剤を適宜混合したインキであってもよい。バインダー樹脂は、例えば、ウレタン樹脂、アクリルポリオール樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、ブチラール樹脂、スチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等の樹脂である。着色剤は、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料;等であってもよい。着色層31及び絵柄層32は、例えば、金、銀、銅、錫、鉄、ニッケル、クロム、コバルト等の金属元素単体の薄膜;前記金属元素の二種以上を含む合金の薄膜;等であってもよい。合金は、例えば、真鍮、青銅、ステンレス鋼等であってもよい。
【0022】
図2に示されている樹脂層50は、意匠層30を保護し、且つ積層体10の強度を高める。樹脂層50は、透明である。樹脂層50の材料は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等であってもよい。樹脂層50の厚みは、20μm以上であってもよいし、40μm以上であってもよいし、60μm以上であってもよい。樹脂層50の厚みは、150μm以下であってもよいし、120μm以下であってもよいし、100μm以下であってもよい。
【0023】
本明細書において、「透明」とは、可視光透過率が、40%以上、70%以上、80%以上または90%以上であることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3600i Plus」、JIS K0115準拠品)を用いて測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。可視光透過率の測定時における入射角は、特に透過方向が定められていない場合、0°とする。入射角は、入射面への法線方向に対して入射光の進行方向がなす角度であり、90°未満の値となる。
【0024】
表面層40は、積層体10の第2面12における光沢が減少する。表面層40は、積層体10の第2面12を形成する。表面層40は、第2面12に凹凸形状13を形成する。凹凸形状13は、不規則なシワ構造を有している。第2面12に入射した光は、表面層40によって形成された凹凸形状13によって乱反射して拡散される。積層体10の第2面12における光沢が減少する。
【0025】
表面層40は、第1層41と、第2層42と、を含んでいる。第2層42は、第1層41に対して第1面11より第2面12の近くに設けられている。第2層42は、所定のパターンで設けられている。第2層42のパターンは、意匠層30が形成する意匠に対応している。第2層42により、表面層40は、積層体10が表示する意匠に対応した触感を付与できる。図示されている例では、第2層42は、第2面12からの観察において、意匠層30の絵柄層32が設けられていない部分に設けられている。意匠層30が木材板表面の年輪や導管溝等の木目模様の意匠を形成し、絵柄層32が年輪や導管溝等の模様を形成する場合、第2層42が第2面12に年輪や導管溝等の模様に対応した凹部を形成する。年輪や導管溝の模様を表示する部分において、第2層42は、積層体10の第2面12に窪んだ触感を付与できる。図示されている例に限らず、第2層42は、第2面12からの観察において、意匠層30の絵柄層32が設けられている部分に設けられていてもよい。
【0026】
第1層41は、バインダー樹脂41aと、複数の粒子41bと、を含んでいる。各粒子41bの少なくとも一部は、バインダー樹脂41aの内部に位置する。バインダー樹脂41aは、第2面12においてシワ構造を有する凹凸形状13の一部を形成する。第1層41は、第2面12の一部において光沢を減少させる。複数の粒子41bは、バインダー樹脂41aにシワ構造を形成されるシワ形成剤である。粒子41bは、エキシマ光等を用いてバインダー樹脂41aにシワ構造を形成する際に、シワ構造の形状を制御する。
【0027】
バインダー樹脂41aは、樹脂組成物の硬化物を含む。樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂を含んでもよい。電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する樹脂である。電離放射線硬化性官能基は、電離放射線の照射によって架橋する基である。電離放射線硬化性官能基は、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基であってもよい。本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合及び/又は架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味する。電離放射線は、紫外線(UV)、電子線(EB)、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線であってもよい。
【0028】
電離放射線硬化性樹脂は、電子線硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂であってもよい。電離放射線硬化性樹脂は、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択されてもよい。
【0029】
重合性モノマーは、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーであってもよい。重合性モノマーは、多官能性(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、2以上であってもよい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、8以下であってもよいし、6以下であってもよい。多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
重合性オリゴマーは、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ該官能基として少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。重合性オリゴマーは、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー等であってもよい。重合性オリゴマーは、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、及びノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等であってもよい。
【0031】
重合性オリゴマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。重合性オリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。
【0032】
重合性オリゴマーの官能基数は、2以上であってもよい。重合性オリゴマーの官能基数は、8以下であってもよいし、6以下であってもよい。重合性オリゴマーの重量平均分子量は、2500以上であってもよいし、3000以上であってもよいし、3500以上であってもよい。重合性オリゴマーの重量平均分子量は、7500以下であってもよいし、7000以下であってもよいし、6000以下であってもよい。重量平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
【0033】
本実施の形態において、バインダー樹脂41aは、重合性オリゴマーと重合性モノマーとの組み合わせであってもよい。重合性オリゴマーは、多官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであってもよい。重合性モノマーは、多官能の重合性モノマーであってもよい。重合性モノマーは、多官能性(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。重合性オリゴマーと重合性モノマーとの混合比率は、必要とする特性に応じて適宜調整できる。
【0034】
樹脂組成物は、上述の樹脂の他、所望の性能等に応じて、他の成分を含んでもよい。例えば、樹脂組成物は、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを含有してもよい。単官能性(メタ)アクリレートは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上述の樹脂が紫外線により硬化する紫外線硬化性樹脂である場合、光重合開始剤、光重合促進剤等の添加剤を含んでもよい。光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上であってもよい。光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速める。光重合促進剤は、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上であってもよい。
【0036】
粒子41bは、例えば、有機粒子又は無機粒子であってもよい。有機粒子を構成する有機物は、ポリメチルメタクリレート、アクリル-スチレン共重合体樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等であってもよい。無機粒子を構成する無機物は、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、アルミノシリケート及び硫酸バリウム等であってもよい。粒子41bの形状は、例えば、球形、多面体、鱗片状、不定形等であってもよい。
【0037】
粒子41bの平均粒子径は、1μm以上であってもよいし、1.3μm以上であってもよいし、1.5μm以上であってもよいし、1.8μm以上であってもよい。粒子41bの平均粒子径は、30μm以下であってもよいし、20μm以下であってもよいし、15μm以下であってもよいし、10μm以下であってもよい。粒子41bの平均粒径は、バインダー樹脂41aの厚み以下であってもよい。
【0038】
本明細書において、粒子の平均粒子径は、積層体10の厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、加速電圧3.0kV、拡大倍率5万倍の条件で観察し、無作為に選択した100個の粒子の非凝集体について測定した粒子径の平均値(算術平均径)である。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだときに、その2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離を測定した値である。
【0039】
バインダー樹脂41aを形成する樹脂100質量部に対して、粒子41bの含有量は、0.5質量部以上であってもよいし、0.75質量部以上であってもよいし、1質量部以上であってもよいし、1.2質量部以上であってもよい。バインダー樹脂41aを形成する樹脂100質量部に対して、粒子41bの含有量は、25質量部以下であってもよいし、15質量部以下であってもよいし、10質量部以下であってもよいし、7.5質量部以下であってもよいし、6質量部以下であってもよい。
【0040】
第1層41の厚みは、1μm以上であってもよいし、2μm以上であってもよいし、3μm以上であってもよいし、4μm以上であってもよい。第1層41の厚みは、20μm以下であってもよいし、15μm以下であってもよいし、10μm以下であってもよい。第1層41の厚みとは、第1層41から粒子41bを除いた部分の厚さを意味する。第1層41の厚みは、バインダー樹脂41aの厚みである。
【0041】
本明細書において、積層体10の各部材の厚みは、積層体10の断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像から20箇所の当該部材の厚みを測定し、20箇所の厚みの値の相加平均の値とする。SEMの加速電圧は3kV、倍率は厚さに応じて設定する。
【0042】
第2層42は、第2面12においてシワ構造を有する凹凸形状13の他の一部を形成する。第2層42は、第2面12の他の一部において光沢を減少させる。第2層42が形成する凹凸形状13は、第1層41が形成する凹凸形状13とは異なる。第2層42が第2面12において減少させる光沢は、第1層41が第2面12において減少させる光沢とは異なる。第2層42が意匠層30の絵柄層32のパターンに対応したパターンで設けられていることで、第2面12において積層体10が表示する意匠に合わせて光沢を減少させることができ、積層体10が表示する意匠に合わせて第2面12に触感を付与できる。
【0043】
第2層42は、第1層41と同様に、バインダー樹脂と、複数の粒子と、を含んでいてもよい。バインダー樹脂が、第2面12においてシワ構造を有する凹凸形状13の他の一部を形成してもよい。バインダー樹脂の材料及び粒子の材料は、上述した第1層41のバインダー樹脂41aの材料及び粒子の材料と同様のものを採用してもよい。
【0044】
第2層42は、第1層41とは異なる構成であってもよい。第2層42は、バインダー樹脂と、複数の粒子と、を含んでいるが、バインダー樹脂がシワ構造を有する凹凸形状を形成しなくてもよい。第2層42において、複数の粒子が、バインダー樹脂から突出することで、凹凸形状13の他の一部を形成してもよい。バインダー樹脂の材料及び粒子の材料は、上述した第1層41のバインダー樹脂41aの材料及び粒子の材料と同様のものを採用してもよい。
【0045】
バインダー樹脂が第2面12においてシワ構造を有する凹凸形状13の他の一部を形成する場合、第2層42におけるバインダー樹脂を形成する樹脂100質量部に対する粒子の含有量は、第1層41におけるバインダー樹脂41aを形成する樹脂100質量部に対する粒子41bの含有量より少ない。バインダー樹脂が第2面12においてシワ構造を有する凹凸形状13の他の一部を形成する場合、第2層42におけるバインダー樹脂を形成する樹脂100質量部に対する粒子の含有量は、0.05質量部以上であってもよいし、0.25質量部以上であってもよいし、0.5質量部以上であってもよい。第2層42におけるバインダー樹脂を形成する樹脂100質量部に対する粒子の含有量は、24質量部以下であってもよいし、15質量部以下であってもよいし、10質量部以下であってもよいし、7.5質量部以下であってもよいし、6質量部以下であってもよい。
【0046】
特に粒子が第2面12の凹凸形状13の他の一部を形成する場合、第2層42の厚みは、0.1μm以上であってもよいし、0.5μm以上であってもよい。第2層42の厚みは、5μm以下であってもよいし、3μm以下であってもよい。第2層42の厚みは、バインダー樹脂の厚みである。
【0047】
図3には、シワ構造を有する凹凸形状13が形成された第2面12の上面図が示されている。図3に示されているように、シワ構造を有する凹凸形状13は、線状に延びる複数の線状凸部14と、線状凸部14の間の凹部15と、によって形成されている。線状凸部14及び凹部15は、平面視において不規則な形状を有して不規則に配置される。
【0048】
シワ構造を有する凹凸形状13における線状凸部14及び凹部15は、例えば、積層体10の第2面12の画像の明度差を利用して、互いに区別してもよい。例えば、積層体10の第2面12の濃度分布画像における最も濃い部分を階調255とし、濃度分布画像における最も薄い部分を階調0として、濃度分布画像の濃度を階調0~255に区分する。階調0~127を凹部15、階調128~255を線状凸部14と、二値化処理して区別してもよい。線状凸部14と凹部15とを区分する階調の閾値は、任意の値に設定してもよい。
【0049】
第2面12の全体において、凹凸形状13の最大高さに近い部分の割合が少なくなっている。より詳細には、第2面12の表面積に対する、第2面12の最大高さから2.5μm以下の高さを有する部分の表面積の合計の割合は、10%以下であり、好ましくは8%以下であり、より好ましくは5%以下である。図4には、図1及び図2に示された積層体10の断面図における第2面12の近傍が拡大して示されている。図4に示されている破線が、第2面12の最大高さから2.5μmを示している。当該破線より紙面の上方における第2面12の表面積の合計が、第2面12の最大高さから2.5μm以下の高さを有する部分の表面積の合計となる。第2面12の表面積は、凹凸形状13に沿った面積である。
【0050】
第2面12のJIS B0601:2013に規定される最大高さRzは、12.5μm以下であってもよいし、6μm以下であってもよい。
【0051】
第2面12の表面積に対する第2面12の最大高さから2.5μm以下の高さを有する部分の表面積の合計の割合及び第2面12の最大高さRzは、形状解析レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK-X150(制御部)/VK-X160(測定部))を用いて測定された第2面12の形状から算出する。測定する第2面12の大きさは、平面視において271×204μmである。第2面12を測定する際の解像度は、1024×768picとする。第2面12の表面積に対する、第2面12の最大高さから2.5μm以下の高さを有する部分の表面積の合計の割合は、第2面12における任意の10箇所で算出された値の相加平均の値とする。第2面12の最大高さRzは、第2面12における任意の20箇所で測定された最大高さRzの値の相加平均の値とする。
【0052】
第2面12におけるJIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度は、10.0以下であってもよいし、5以下であってもよい。
【0053】
鏡面光沢度は、JIS Z8741:1997に準拠し、BYK-Gardner社製のmicro-TRI-gloss Cat.No.4563を用いて測定する。60°鏡面光沢度は、JIS Z8741:1997に記載の方法3に準拠して、入射角を60°として測定される。第2面12の鏡面光沢度は、積層体10の第2面12の1cm角の正方形領域について、測定される。10箇所の正方形領域での第2面12の鏡面光沢度を測定し、10箇所の平均値として、鏡面光沢度の平均を特定する。鏡面光沢度を測定する10箇所は、ランダムに選択される。これらの平均を第2面12における鏡面光沢度として特定する。
【0054】
本実施の形態の積層体10の製造方法の一例として、図1に示された積層体10の製造方法について説明する。積層体10の製造方法は、基材20に意匠層30を設ける工程と、意匠層30に表面層40の第1層41を設ける工程と、第1層41の一部に第2層42を設ける工程と、を含む。
【0055】
基材20に意匠層30を設ける工程について説明する。基材20に対して着色層31を印刷によって設ける。着色層31の一部に対して、絵柄層32を印刷によって設ける。絵柄層32は、積層体10の第2面12に表示される意匠を形成するように、所定のパターンで設けられる。着色層31及び絵柄層32は、オフセット印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等、任意の印刷方法で設けられる。印刷方法は、着色層31及び絵柄層32に含まれる着色剤等に応じて、適宜に選択されてもよい。
【0056】
意匠層30に表面層40の第1層41を設ける工程について説明する。意匠層30に第1層41のバインダー樹脂41aとなる樹脂組成物と粒子41bとの混合物を配置する。混合物は、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等により意匠層30に対して塗布されることで配置されてもよい。混合物は、シート状に成形された状態で意匠層30に貼付されることで配置されてもよい。
【0057】
樹脂組成物に、380nmを超える波長の光、好ましくは385nm以上400nm以下の波長の光を照射して、樹脂組成物の全体を予備硬化させる。予備硬化の工程は、省略してもよい。
【0058】
樹脂組成物の表面に、100nm以上380nm以下の波長を有する光を照射する。樹脂組成物の表面にシワ構造が形成される。このシワ構造が形成されるメカニズムは、以下のように推測される。樹脂組成物の表面に、100nm以上380nm以下の波長を有する光を照射すると、照射される光の波長が短いことから、光のエネルギーが表面部分のみに浸透し、内部には光のエネルギーが到達しない。当該樹脂組成物の表面部分だけが硬化を始める。表面だけが硬化収縮を生じ、樹脂組成物の表面にシワ構造が形成される。樹脂組成物における、表面からのある厚さの範囲内の部分のみが硬化した状態において生じていると考えられる。粒子41bがシワ構造の形成のきっかけとなる核のような機能を発揮しているものと考えられる。粒子41bを中心に樹脂組成物の表面部分の樹脂が集まり、シワ構造を有する凹凸形状が形成されるものと推測される。ただし、本開示は、この推測に制限されない。
【0059】
100nm以上380nm以下の波長を有する光としては、例えば、Ar、Kr、Xe、Ne等の希ガス、F、Cl、I、Br等のハロゲンによる希ガスのハロゲン化物等ガス、又はこれらの混合ガスの放電によって形成される励起状態の2量体、すなわちエキシマ(excimer)からの紫外線波長域の光を含む「エキシマ光」を用いてもよい。エキシマ光の波長及び光源となるエキシマは、例えばArのエキシマから輻射される波長126nmの光(以下、「126nm(Ar)」のように略称する)、146nm(Kr)、157nm(F)、172nm(Xe)、193nm(ArF)、222nm(KrCl)、247nm(KrF)、308nm(XeCl)、351nm(XeF)等であってもよい。エキシマ光は、自然放出光、誘導放出によるコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザー光のいずれでもよい。エキシマ光を放射する放電ランプは、「エキシマランプ」とも称される。エキシマ光は波長ピークが単一であり、通常の紫外線(例えば、メタルハライドランプ、水銀ランプ等から放射される紫外線)と比べて波長の半値幅が狭い。このようなエキシマ光を用いることで、樹脂組成物に安定してシワ構造を形成できる。
【0060】
樹脂組成物の表面に照射される光の波長は、120nm以上であってもよいし、140nm以上であってもよいし、150nm以上であってもよいし、155nm以上であってもよい。樹脂組成物の表面に照射される光の波長は、320nm以下であってもよいし、300nm以下であってもよいし、250nm以下であってもよいし、200nm以下であってもよいし、172nm(Xe)であってもよい。
【0061】
樹脂組成物の表面に照射される光が172nmの波長を有する場合、当該光の積算光量は、0.1mJ/cm以上であってもよいし、0.5mJ/cm以上であってもよいし、1mJ/cm以上であってもよい。樹脂組成物の表面に照射される光の積算光量は、300mJ/cm以下であってもよいし、100mJ/cm以下であってもよいし、50mJ/cm以下であってもよい。樹脂組成物の表面に照射される光が172nmの波長を有する場合、当該光の出力密度は、0.001W/cm以上であってもよいし、0.01W/cm以上であってもよいし、0.02W/cm以上であってもよい。樹脂組成物の表面に照射される光の出力密度は、1W/cm以下であってもよいし、0.5W/cm以下であってもよいし、0.1W/cm以下であってもよい。
【0062】
樹脂組成物の表面に光を照射する際の酸素濃度は、1000ppm以下であってもよいし、750ppm以下であってもよいし、500ppm以下であってもよいし、300ppm以下であってもよい。
【0063】
樹脂組成物の表面に100nm以上380nm以下の波長を有する光を照射した後、樹脂組成物に、当該光の波長よりも長い波長を有する光を照射する。樹脂組成物の内部における硬化が進行し、樹脂組成物の全体が硬化する。樹脂組成物の表面における硬化の進行度合いと、樹脂組成物の内部における硬化の進行度合いの差により、シワ構造の形成がさらに進行する。樹脂組成物の全体を硬化させる際に用いられる光として、例えば紫外線(UV)を用いてもよい。樹脂組成物の全体を硬化させる際には、紫外線に代えて他の電離放射線、例えば電子線(EB)を用いてもよい。
【0064】
第1層41の一部に第2層42を設ける工程について説明する。意匠層30の絵柄層32のパターンに対応したパターンで、バインダー樹脂となる組成物と粒子との混合物を配置する。混合物は、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等により第1層41に対して塗布されることで配置されてもよい。混合物は、シート状に成形された状態で第1層41に貼付されることで配置されてもよい。
【0065】
バインダー樹脂が第2面12におけるシワ構造を有する凹凸形状13の一部を形成する第2層42は、上述した第1層41と同様の工程により設けられる。すなわち、樹脂組成物の表面に100nm以上380nm以下の波長を有する光を照射した後、樹脂組成物に、当該光の波長よりも長い波長を有する光または他の電離放射線を照射することで、樹脂組成物の全体を硬化させる。
【0066】
粒子が第2面12における凹凸形状13の他の一部を形成する第2層42は、樹脂組成物に、紫外線または他の電離放射線を照射することで、樹脂組成物を硬化させることで設けられる。
【0067】
接着性を向上させるため、各層を設ける際に、コロナ放電表面処理等の表面処理がなされてもよい。
【0068】
積層体の第2面を指で触った際に、凹凸形状により第2面と指との接触面積が大きくなるため、第2面に指から皮脂が指紋として付着しやすい。指紋は、汚れとして観察される。指紋により、第2面に表示される意匠が損なわれ、第2面の光沢も劣化し得る。
【0069】
本実施の形態の積層体10では、第2面12に凹凸形状13が設けられている。凹凸形状13により、第2面12での光沢を抑制できる。第2面12の表面積に対する、第2面12の最大高さから2.5μm以下の高さを有する部分の表面積の合計の割合は、10%以下である。第2面12の全体に対する、凹凸形状13の最大高さに近い部分の割合が十分に少なくなっている。積層体10の第2面12を指で触ると、第2面12において最大高さに近い部分に皮脂が付着する。第2面12において最大高さに近い部分の割合が少ないことから、積層体10の第2面12を指で触っても、第2面12と指との接触面積が小さく、皮脂が付着しにくい。積層体10の第2面12の凹凸形状13により光沢を抑制しながら、積層体10の第2面12に指紋を付着しにくくできる。
【0070】
第2面12のJIS B0601:2013に規定される最大高さ粗さRzは、12.5μm以下である。最大高さ粗さRzが大きすぎないため、第2面12の凹凸形状13の凹部15に皮脂等の汚れが入り込んでも、第2面12を拭き取ることで汚れを容易に除去できる。積層体10の第2面12から指紋を容易に除去できる。
【0071】
凹凸形状13は、不規則なシワ構造を有している。凹凸形状13は、線状凸部14と、線状凸部14の間の凹部15と、によって構成されている。このような凹凸形状13は、少なくとも第1層41がエキシマ光を用いて設けられることで、形成される。エキシマ光を用いて形成されることで、凹凸形状13は、上述したような効果を奏する構造を実現可能である。少なくとも第1層41が含む粒子41bの数が従来の積層体の表面層より少ないため、第2面12において粒子が引きずられて第2面12に傷ができる可能性が低減される。第2面12に傷ができることによって第2面12の光沢が劣化することを抑制できる。
【0072】
第1層41の厚みは、1μm以上20μm以下である。第1層41が十分に厚いことで、第1層41によって積層体10の第2面12に適切な凹凸形状13を形成できる。適切な凹凸形状13により、積層体10の第2面12における光沢を抑制できる。第1層41が厚すぎないことで、積層体10が厚くなりすぎることを抑制できる。
【0073】
第2層42の厚みは、0.1μm以上5μm以下である。第2層42が十分に薄いため、第1層41によって形成された凹凸形状の凹部を埋めることなく、第2層42においても凹凸形状13を形成できる。第2層42が設けられた部分においても、積層体10の第2面12における光沢を抑制できる。
【0074】
上述した実施の形態に対して、様々な変更を加えることが可能である。
【0075】
上述した実施の形態において、積層体10において、意匠層30が省略されていてもよい。意匠層30が省略される場合、表面層40の第2層42が設けられるパターンは、第2面12において第1層41によって減少させる光沢とは異なるように光沢を減少させる部分である。
【実施例0076】
本開示を実施例により更に詳細に説明する。本開示は以下の実施例に限定されない。
【0077】
実施例及び比較例として、基材と、第1層及び第2層を含む表面層と、を有する積層体を作製した。各実施例及び比較例の積層体の作製条件について説明する。
【0078】
<実施例1>
コロナ放電表面処理をしたポリプロピレン樹脂からなる厚みが60μmの基材を用意した。当該基材に、平均官能基数3の多官能オリゴマー30質量部及び2官能モノマー70質量部に平均粒径8μmのシリカ粒子3質量部、平均粒径3μmのアルミナ粒子3質量部、及び光重合開始剤0.5質量部を添加した第1樹脂組成物を、厚み15μmとなるように塗布した。第1樹脂組成物に対して、UV-LED光源を用いて紫外線を照射して予備硬化を行った後、エキシマランプにより波長172nmのエキシマ光を1W/cmの照度で照射して、第1樹脂組成物の表面を硬化させた。表面が硬化した第1樹脂組成物に対して、酸素濃度200ppm以下の環境で、加速電圧125keV、照射線量5Mradの電子線を照射して、第1樹脂組成物の全体を硬化させて、第1層を形成した。第1層にコロナ放電表面処理をした。第1層に、多官能オリゴマー60質量部に平均粒径8μmのシリカ粒子3質量部、及び光重合開始剤0.5質量部を添加した第2樹脂組成物を、第1層の80%を覆うように天然木の導管状のパターンで、厚み2μmとなるように塗布した。第2樹脂組成物に対して、酸素濃度200ppm以下の環境で、加速電圧110keV、照射線量5Mradの電子線を照射して、第2樹脂組成物の全体を硬化させて、第2層を形成した。
【0079】
<実施例2>
実施例1と同様の工程で、基材に第1層を設け、第1層に第2樹脂組成物を塗布した。第2樹脂組成物に対して、UV-LED光源を用いて紫外線を照射して予備硬化を行った後、エキシマランプにより波長172nmのエキシマ光を1W/cmの照度で照射して、第2樹脂組成物の表面を硬化させた。表面が硬化した第2樹脂組成物に対して、酸素濃度200ppm以下の環境で、加速電圧110keV、照射線量5Mradの電子線を照射して、第2樹脂組成物の全体を硬化させて、第2層を形成した。
【0080】
<実施例3>
第2樹脂組成物に替えて、平均官能基数3の多官能オリゴマー30質量部、2官能モノマー40質量部及び単官能モノマー40質量部に平均粒径8μmのシリカ粒子3質量部、平均粒径3μmのアルミナ粒子3質量部、及び光重合開始剤0.5質量部を添加した第3樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0081】
<実施例4>
実施例1の積層体の第2層に、アクリルポリオール樹脂とヘキサメチレンジイソシアネートとを主成分とする2液型アクリルウレタン樹脂75質量部及び平均粒径20μmのアクリルビーズ25質量部の第4樹脂組成物を、第2層の25%を覆うように天然木の導管状のパターンで、厚み10μmとなるように塗布した。最後に、70℃で24時間の養生を行い、第4樹脂組成物による盛上げ部(盛上げ層)を形成した。盛上げ部により表面を盛り上げることで、積層体に触感が付与される。
【0082】
<実施例5>
実施例2の積層体の第2層に、実施例4と同様に第4樹脂組成物による盛上げ部(盛上げ層)を形成した。
【0083】
<実施例6>
第2樹脂組成物を、第1層の90%を覆うように塗布した以外は、実施例1と同様にした。
【0084】
<実施例7>
第2樹脂組成物を、第1層の20%を覆うように塗布した以外は、実施例1と同様にした。
【0085】
<実施例8>
第1樹脂組成物にアルミナを添加しなかった以外は、実施例1と同様にした。
【0086】
<比較例1>
実施例1と同様の基材に、2液硬化型ウレタン系樹脂を厚み15μmとなるように塗布して、第1層を形成した。第1層に、電離放射線硬化型樹脂を第1層の80%を覆うように天然木の導管状のパターンで、厚み2μmとなるように塗布した。当該電離放射線硬化型樹脂に対して、酸素濃度200ppm以下の環境で、加速電圧110keV、照射線量5Mradの電子線を照射して、電離放射線硬化型樹脂を硬化させて、第2層を形成した。
【0087】
<比較例2>
比較例1の積層体の第2層に、実施例4と同様に第4樹脂組成物を塗布した。
【0088】
<比較例3>
実施例1と同様の基材に、実施例1と同様に第1樹脂組成物を塗布した。第1樹脂組成物を硬化させずに、第1樹脂組成物に実施例1と同様に第2樹脂組成物を塗布した。第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物に対して、酸素濃度200ppm以下の環境で、加速電圧110keV、照射線量5Mradの電子線を照射して、第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物の全体を硬化させて、第1層及び第2層を形成した。
【0089】
<比較例4>
第2樹脂組成物を、第1層の100%を覆うように塗布した以外は、実施例1と同様にした。
【0090】
<比較例5>
第2樹脂組成物に替えて、平均官能基数3の多官能オリゴマー30質量部、2官能モノマー40質量部及び単官能モノマー30質量部に平均粒径8μmのシリカ粒子3質量部、平均粒径3μmのアルミナ粒子3質量部、及び光重合開始剤0.5質量部を添加した第5樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0091】
作製された各実施例及び比較例の積層体に対して、第2面の表面積に対する第2面の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合、第2面におけるJIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度、第2面に付着したオレイン酸の付着重量及び除去率を測定した。第2面とは、積層体の面のうち表面層が形成する面である。
【0092】
第2面の表面積に対する第2面の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合は、形状解析レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製、VK-X150(制御部)/VK-X160(測定部))を用いて測定された第2面の形状から算出される。測定する第2面の大きさは、平面視において271×204μmである。第2面を測定する際の解像度は、1024×768picとする。第2面の表面積に対する、第2面の最大高さから2.5μm以下の高さを有する部分の表面積の合計の割合は、第2面における任意の10箇所で算出された値の相加平均の値とする。
【0093】
第2面におけるJIS Z8741:1997に規定される60°鏡面光沢度は、BYK-Gardner社製のmicro-TRI-gloss Cat.No.4563を用いて、JIS Z8741:1997に記載の方法3に準拠して、入射角を60°として測定される。鏡面光沢度は、第2面の1cm角の正方形領域について、測定される。ランダムな10箇所の領域での第2面の鏡面光沢度を測定し、10箇所の平均値として、鏡面光沢度の平均を特定する。
【0094】
第2面に付着したオレイン酸の除去率は、以下の方法で測定される。測定に用いる積層体の重量を測定する。指にオレイン酸を付着させる。オレイン酸が付着した指を積層体の第2面に15回押し当てて、指から第2面にオレイン酸を付着させる。オレイン酸が付着した積層体の重量を測定する。オレイン酸を付着させる前の積層体の重量との差から、積層体に付着したオレイン酸の重量を特定する。積層体の第2面に付着したオレイン酸をウエスで10回拭き取る。積層体の重量を測定する。オレイン酸を拭き取る前の積層体の重量との差から、積層体から拭き取られたオレイン酸の重量を特定する。積層体に付着したオレイン酸の重量に対する積層体から拭き取られたオレイン酸の重量の比を、オレイン酸の除去率とする。
【0095】
各実施例及び比較例の積層体の第1面に対面するよう黒色板を配置し、目視にて、光沢が十分に減少しているか観察した。光沢が十分に減少していると観察されたものはAと、光沢の減少が不十分に観察されたものはBと、評価した。
【0096】
各実施例及び比較例の積層体に対して、オレイン酸の除去率を測定した後、目視にて、第2面に付着したオレイン酸が目立っているか観察した。オレイン酸がほとんど観察されなかったものはAと、オレイン酸が目立たない程度に観察されたものはBと、オレイン酸が目立って観察されたものはCと、オレイン酸が著しく目立って観察されてものはDと、評価した。
【0097】
各実施例及び比較例の積層体の第2面を、1500gの重りを乗せたスチールウール(ボンスター、#0000)によって5往復擦り、第2面に傷が付くか観察した。傷がほとんど観察されなかったものはAと、傷が目立たない程度に観察されたものはBと、傷が目立って観察されたものはCと、評価した。
【0098】
各実施例及び比較例の積層体の第2面に、油性の黒マジック(寺西化学工業株式会社製マジックインキ)で線を引いた後、線をウエスで10回拭き取り、線が目立つか確認した。線がほとんど観察されなかったものはAと、線が目立たない程度に観察されたものはBと、線が目立って観察されたものはCと、線が著しく目立って観察されてものはDと、評価した。
【0099】
各実施例及び比較例の積層体について、測定結果及び評価結果を以下の表1にまとめて記載する。
【0100】
【表1】
【0101】
表1の実施例及び比較例の比較から、以下のことが理解される。
【0102】
第2面の表面積に対する第2面の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合が10%以下となっていても、第2面において光沢を適切に減少させることができる。
【0103】
第2面の表面積に対する第2面の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合が10%以下となっていることで、第2面にオレイン酸が付着する重量を減らすことができる。第2面に皮脂が指紋として付着しにくくできると考えられる。第2面の表面積に対する第2面の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合が10%以下となっていることで、第2面に付着したオレイン酸の除去率が高くなっている。第2面に皮脂が指紋として付着しても、容易に除去できると考えられる。同様に、第2面の表面積に対する第2面の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合が10%以下となっていることで、第2面において油性マジックの線が拭き取られやすくなっている。第2面の表面積に対する第2面の最大高さから2.5μm以内の高さを有する部分の表面積の合計の割合が10%以下となっていることで、第2面に対するオレイン酸や油性マジックの成分の接触面積が小さくなり、オレイン酸や油性マジックの成分が第2面に付着しにくくなっているためであると考えられる。
【0104】
エキシマ光を用いて第1層が形成されていることで、第2面において光沢を適切に減少させながら、スチールウール試験において傷が目立ちにくくなっていると考えられる。
【符号の説明】
【0105】
10 積層体
11 第1面
12 第2面
13 凹凸形状
14 線状凸部
15 凹部
20 基材
30 意匠層
31 着色層
32 絵柄層
40 表面層
41 第1層
42 第2層
50 樹脂層
図1
図2
図3
図4