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特開2024-165124曲面石膏ボート及びその作製方法、並びに、隅構造及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165124
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】曲面石膏ボート及びその作製方法、並びに、隅構造及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/26 20060101AFI20241121BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E04C2/26 Q
E04C2/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081007
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】520160808
【氏名又は名称】チヨダ加工センター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 輝哉
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162CA19
(57)【要約】
【課題】曲面で形成される外表面を滑らかに仕上げることができる曲面石膏ボートを提供する。
【解決手段】実施の形態による曲面石膏ボード1は、第1面2A及び第1面2Aの反対に位置する第2面2Bを有し、石膏を含む芯材部分2と、芯材部分2の第1面2Aに固着された第1原紙3と、を備える。芯材部分2には、第2面2Bからへこみ、それぞれの長手方向Lが同じ方向となる複数の溝10が設けられる。溝10は、長手方向Lに直交する方向における断面で見たとき、第2面2Bから第1原紙3に向けて延びる主部11と、主部11の互いに向き合う一対の側面11Sのうちの少なくとも一方に対して向きを変えるように主部11に接続し、第1原紙3に最も近くなる最底点BPに向けて先細り形状となる底部分12Aを含む曲げ起点部12と、を有する。そして、芯材部分2は、溝10の底部分12Aと対面する位置を起点に曲げられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面の反対に位置する第2面を有し、石膏を含む芯材部分と、
前記芯材部分の前記第1面に固着された原紙と、を備え、
前記芯材部分には、前記第2面からへこみ、それぞれの長手方向が同じ方向となる複数の溝が設けられ、
前記溝は、前記長手方向に直交する方向における断面で見たとき、前記第2面から前記原紙に向けて延びる主部と、前記主部の互いに向き合う一対の側面のうちの少なくとも一方に対して向きを変えるように前記主部に接続し、前記原紙に最も近くなる最底点に向けて先細り形状となる底部分を含む曲げ起点部と、を有し、
前記芯材部分は、前記溝の前記底部分と対面する位置を起点に曲げられている、曲面石膏ボード。
【請求項2】
前記最底点と前記原紙との間に前記芯材部分の一部が位置する、請求項1に記載の曲面石膏ボード。
【請求項3】
前記芯材部分は、前記最底点又はその近傍と対面する位置を起点に曲げられている、請求項1又は2に記載の曲面石膏ボード。
【請求項4】
前記底部分は、前記長手方向に直交する方向における断面で見たとき、互いに向き合う一対の曲面を有し、
前記一対の曲面は、前記原紙側に凹状の曲面であり、前記第1原紙側で合流する位置に前記最底点を形成する、請求項1に記載の曲面石膏ボード。
【請求項5】
前記芯材部分の前記第2面に固着された他の原紙をさらに備え、
前記他の原紙は、前記第2面における前記溝により分断された複数の部分に固着された複数の原紙要素からなり、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の前記主部は、一対の前記側面の前記第2面側の端点を互いに接触又は近接させており、
一対の前記側面の前記第2面側の端点が互いに接触又は近接する前記溝の両側に位置する前記原紙要素は、互いに接触又は近接し、互いに接着されている、請求項1に記載の曲面石膏ボード。
【請求項6】
第1面及び前記第1面の反対に位置する第2面を有し、石膏を含む芯材部分と、前記芯材部分の前記第1面に固着された原紙とを備える平板形状の石膏ボードを準備する工程と、
前記石膏ボードに、前記第2面からへこみ、それぞれの長手方向が同じ方向となる複数の溝を形成する工程と、
凹状又は凸状の曲面部分を有する型枠を準備し、前記原紙の少なくとも一部が前記曲面部分に接するように前記石膏ボードを前記型枠に載せて、前記溝が狭まるように又は拡がるように前記原紙の少なくとも一部とともに前記芯材部分の少なくとも一部を曲げる工程と、を備え、
前記溝は、前記長手方向に直交する方向における断面で見たとき、前記第2面から前記原紙に向けて延びる主部と、前記主部の互いに向き合う一対の側面のうちの少なくとも一方に対して向きを変えるように前記主部に接続し、前記原紙に最も近くなる最底点に向けて先細り形状となる底部分を含む曲げ起点部と、を有するように形成され、
前記芯材部分は、前記溝の前記底部分と対面する位置を起点に曲げられる、曲面石膏ボードの作製方法。
【請求項7】
請求項1に記載の曲面石膏ボードと、
前記曲面石膏ボードの前記芯材部分の前記第2面に沿って延びる曲線に沿って配置された複数の下地部材と、を備え、
前記曲面石膏ボードは、前記芯材部分の前記第2面が前記下地部材に対面し、前記原紙が居住空間側を向くように配置されて、前記下地部材に支持され、
前記原紙が出隅又は入隅の下地を形成する、隅構造。
【請求項8】
請求項1に記載の曲面石膏ボードを準備し、所定の位置に設置する工程と、
前記曲面石膏ボードにおける前記芯材部分の前記第2面側の曲面をなぞって曲線の隅出し線を描く工程と、
前記隅出し線に沿って複数の下地部材を設置する工程と、
前記曲面石膏ボードを、前記芯材部分の前記第2面が前記下地部材に対面し、前記原紙が居住空間側を向くように配置した後、前記下地部材で支持する工程と、を備え、
前記原紙により出隅又は入隅の下地を形成する、隅構造の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面石膏ボート及びその作製方法、並びに、隅構造及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
曲面形状の石膏ボードは、互いに平行に延びる複数の溝が設けられた平板形状の石膏ボードを、溝が狭まるように又は拡がるように折り曲げることで作製され得る。このような作製手法に関する技術は、例えば特許文献1~3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-75328号公報
【特許文献2】特開平4-176952号公報
【特許文献3】実用新案登録第3228561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2の技術では、平板形状の石膏ボードの片面から設けられた溝が反対の面にある原紙に至らず、溝の底面が原紙に沿って平坦に形成される。この構成では、平板形状の石膏ボードが折り曲げられた際に、溝の底面と原紙との間の石膏ボードの芯材部分の削り残し部分が曲げられる。この際、削り残し部分は決まった位置で曲げられるわけではないため、複数の削り残し部分間において曲げ位置のばらつきが生じることがある。また、削り残し部分は、その厚みが比較的大きいため、粉砕することもある。そのため、完成した曲面形状の石膏ボードにおいては、原紙が形成する下地表面が角ばった曲面となり、滑らかでなくなることがある。
【0005】
また、特許文献3の技術では、平板形状の石膏ボードの片面から設けられた溝の底面が反対の面にある原紙に至り、溝から原紙が露出する。この構成では、石膏ボードを曲げた際の芯材部分の粉砕の問題は生じない。しかしながら、下地表面を形成する原紙は、石膏ボードの溝によって分断された芯材部分と、溝に充填された接着剤とに交互に接する状態となり、芯材部分が連続的に原紙に接しない。この場合も、完成した曲面形状の石膏ボードにおいて、原紙が形成する下地表面が角ばった曲面となり、滑らかでなくなることがある。
【0006】
本発明は以上の点を鑑みてなされたものであり、曲面で形成される外表面を滑らかに仕上げることができる曲面石膏ボート及びその作製方法、並びに、曲面石膏ボードを用いた隅構造及びその作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に関連する。
【0008】
<項目1> 第1面及び前記第1面の反対に位置する第2面を有し、石膏を含む芯材部分と、
前記芯材部分の前記第1面に固着された原紙と、を備え、
前記芯材部分には、前記第2面からへこみ、それぞれの長手方向が同じ方向となる複数の溝が設けられ、
前記溝は、前記長手方向に直交する方向における断面で見たとき、前記第2面から前記原紙に向けて延びる主部と、前記主部の互いに向き合う一対の側面のうちの少なくとも一方に対して向きを変えるように前記主部に接続し、前記原紙に最も近くなる最底点に向けて先細り形状となる底部分を含む曲げ起点部と、を有し、
前記芯材部分は、前記溝の前記底部分と対面する位置を起点に曲げられている、曲面石膏ボード。
【0009】
<項目2> 前記最底点と前記原紙との間に前記芯材部分の一部が位置する、項目1に記載の曲面石膏ボード。
【0010】
<項目3> 前記芯材部分は、前記最底点又はその近傍と対面する位置を起点に曲げられている、項目1又は2に記載の曲面石膏ボード。
【0011】
<項目4> 前記底部分は、前記長手方向に直交する方向における断面で見たとき、互いに向き合う一対の曲面を有し、
前記一対の曲面は、前記原紙側に凹状の曲面であり、前記第1原紙側で合流する位置に前記最底点を形成する、項目1乃至3のいずれかに記載の曲面石膏ボード。
【0012】
<項目5> 前記芯材部分の前記第2面に固着された他の原紙をさらに備え、
前記他の原紙は、前記第2面における前記溝により分断された複数の部分に固着された複数の原紙要素からなり、
前記複数の溝のうちの少なくとも一部の前記主部は、一対の前記側面の前記第2面側の端点を互いに接触又は近接させており、
一対の前記側面の前記第2面側の端点が互いに接触又は近接する前記溝の両側に位置する前記原紙要素は、互いに接触又は近接し、互いに接着されている、項目1乃至4のいずれかに記載の曲面石膏ボード。
【0013】
<項目6> 第1面及び前記第1面の反対に位置する第2面を有し、石膏を含む芯材部分と、前記芯材部分の前記第1面に固着された原紙とを備える平板形状の石膏ボードを準備する工程と、
前記石膏ボードに、前記第2面からへこみ、それぞれの長手方向が同じ方向となる複数の溝を形成する工程と、
凹状又は凸状の曲面部分を有する型枠を準備し、前記原紙の少なくとも一部が前記曲面部分に接するように前記石膏ボードを前記型枠に載せて、前記溝が狭まるように又は拡がるように前記原紙の少なくとも一部とともに前記芯材部分の少なくとも一部を曲げる工程と、を備え、
前記溝は、前記長手方向に直交する方向における断面で見たとき、前記第2面から前記原紙に向けて延びる主部と、前記主部の互いに向き合う一対の側面のうちの少なくとも一方に対して向きを変えるように前記主部に接続し、前記原紙に最も近くなる最底点に向けて先細り形状となる底部分を含む曲げ起点部と、を有するように形成され、
前記芯材部分は、前記溝の前記底部分と対面する位置を起点に曲げられる、曲面石膏ボードの作製方法。
【0014】
<項目7> 項目1乃至5のいずれかに記載の曲面石膏ボードと、
前記曲面石膏ボードの前記芯材部分の前記第2面に沿って延びる曲線に沿って配置された複数の下地部材と、を備え、
前記曲面石膏ボードは、前記芯材部分の前記第2面が前記下地部材に対面し、前記原紙が居住空間側を向くように配置されて、前記下地部材に支持され、
前記原紙が出隅又は入隅の下地を形成する、隅構造。
【0015】
<項目8> 項目1乃至5のいずれかに記載の曲面石膏ボードを準備し、所定の位置に設置する工程と、
前記曲面石膏ボードにおける前記芯材部分の前記第2面側の曲面をなぞって曲線の隅出し線を描く工程と、
前記隅出し線に沿って複数の下地部材を設置する工程と、
前記曲面石膏ボードを、前記芯材部分の前記第2面が前記下地部材に対面し、前記原紙が居住空間側を向くように配置した後、前記下地部材で支持する工程と、を備え、
前記原紙により出隅又は入隅の下地を形成する、隅構造の作製方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、曲面で形成される外表面を滑らかに仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態にかかる曲面石膏ボードを示す図である。
図2図1に示す曲面石膏ボードの作製方法の一例を説明する図である。
図3図1に示す曲面石膏ボードの作製方法の一例を説明する図である。
図4図1に示す曲面石膏ボードの作製方法の一例を説明する図である。
図5】変形例1にかかる曲面石膏ボードを示す図である。
図6】変形例2にかかる曲面石膏ボードを示す図である。
図7】変形例3にかかる曲面石膏ボードを示す図である。
図8】変形例4にかかる曲面石膏ボードを示す図である。
図9図5に示す曲面石膏ボードを用いる隅構造の作製方法を説明する図である。
図10図5に示す曲面石膏ボードを用いる隅構造の作製方法を説明する図である。
図11図5に示す曲面石膏ボードを用いる隅構造の作製方法を説明する図である。
図12図5に示す曲面石膏ボードを用いる隅構造の作製方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
(曲面石膏ボードの構成)
図1は、一実施の形態にかかる曲面石膏ボード1を示す。曲面石膏ボード1は、石膏を含む芯材部分2と、第1原紙3と、第2原紙4と、を備える。芯材部分2は、第1面2A及び第1面2Aの反対に位置する第2面2Bを有する。第1原紙3は、芯材部分2の第1面2Aに固着されている。第2原紙4は、芯材部分2の第2面2Bに固着されている。
【0020】
本実施の形態では、曲面石膏ボード1が一例として円弧状に湾曲している。第1原紙3は、凸状の曲面を形成する。第2原紙4は、凹状の曲面を形成する。なお、本明細書でいう曲面とは、滑らかな弧状の湾曲面又は概略弧状の折れ面のことを意味する。
【0021】
芯材部分2には、第2面2Bからへこみ、それぞれの長手方向Lが同じ方向となる複数の溝10が設けられている。溝10の長手方向Lは、図1に示すように図1の紙面に直交する方向である。溝10の長手方向Lにおける両端部は、芯材部分2の端面から開放する。また、図1における符号Cは、曲面石膏ボード1の湾曲方向を示す。図1には、曲面石膏ボード1の一端面が示されているが、曲面石膏ボード1は、図1に示されるその一端面の外輪郭の形状と同一の断面形状で長手方向Lに延びる形態を有している。
【0022】
本実施の形態では、複数の溝10の断面形状は互いに同じとなる。そして、各溝10は、同一の断面形状で長手方向Lに延びる。また、複数の溝10は等間隔に並ぶ。ただし、複数の溝10の断面形状は必ずしも互いに同じでなくてもよい。例えば、所望する曲面石膏ボード1の曲率が2つ以上ある場合等に応じて、複数の溝10のうちの一部の断面形状を、他の溝10の断面形状に対して変更してもよい。また、複数の溝10は、非等間隔で形成されてもよい。例えば、複数の溝10においては、第1の間隔で並ぶように形成される複数の溝10の群と、第1の間隔と異なる第2の間隔で並ぶように形成される複数の溝の群とが混在してもよい。複数の溝10の断面形状が互いに同じである状態とは、実質的に同じ状態であることを意味し、例えば製造誤差により違いが生じている状態は、ここで言う「同じ」の概念に含まれるものとする。
【0023】
図1においては、曲面石膏ボード1における溝10及びその周辺を含む一部が、二点鎖線で囲まれた範囲Aにおいて拡大して示されている。溝10は、第2面2Bから第1原紙3に向けて延びる主部11と、主部11から第1原紙3に向けてさらに延びる曲げ起点部12と、を有する。
【0024】
主部11は、図1に示すように互いに向き合う一対の側面11Sを有する。曲げ起点部12は、主部11の一対の側面11Sのうちの少なくとも一方に対して向きを変えるように主部11に接続している。そして、曲げ起点部12は、第1原紙3に最も近くなる最底点BPに向けて先細り形状となる底部分12Aを含む。上述したように溝10は、同一の断面形状で長手方向Lに延びる。すなわち、溝10は、長手方向Lに直交する方向における断面(各断面)で見たときに、第2面2Bから第1原紙3に向けて延びる主部11と、主部11の互いに向き合う一対の側面11Sのうちの少なくとも一方に対して向きを変えるように主部11に接続し、第1原紙3に最も近くなる最底点BPに向けて先細り形状となる底部分12Aを含む曲げ起点部12と、を有していることになる。
【0025】
本実施の形態では、主部11が第2面2Bから第1原紙3に向けて拡開するように形成されている。より詳しくは、主部11は、一対の側面11Sの間の間隔が第2面2Bから第1原紙3に向けて次第に大きくなるように形成されている。
【0026】
本実施の形態では、曲げ起点部12が、底部分12Aと、底部分12Aと主部11とを接続する中継部分12Bと、を含む。中継部分12Bは、主部11から第1原紙3に向けて先細りに延びた後、第1原紙3に向けて拡開する形状に形成されている。この例では、中継部分12Bが主部11の一対の側面11Sの両方に対して向きを変えるようにして主部11に接続している。また、中継部分12Bにおける第1原紙3に向けて拡開する部分は、長手方向Lに直交する方向における断面で見たときに、互いに向き合う曲面を含む。そして、底部分12Aは、中継部分12Bにおける第1原紙3に向けて拡開する部分の端部に接続して、最底点BP(第1原紙3)に向けて先細り形状となる。
【0027】
底部分12Aは、長手方向Lに直交する方向における断面で見たとき、互いに向き合う一対の曲面12A1を有する。そして、一対の曲面12A1は、第1原紙3側で合流する位置に最底点BPを形成している。最底点BPは、長手方向Lに直交する方向における断面で見たときに、底部分12Aにおける中央又は中央近傍に設けられている。詳しくは、湾曲方向Cでの底部分12Aにおける中央又は中央近傍に、最底点BPが位置する。一対の曲面12A1は、第1原紙3側に向けて凹状となる曲面である。本例では、一対の曲面12A1が、中継部分12Bにおける第1原紙3に向けて拡開する部分を構成する曲面と滑らかに連なる。なお、曲げ起点部12においては中継部分12Bが設けられなくてもよく、底部分12Aが直接的に主部11に接続してもよい。
【0028】
本実施の形態では、芯材部分2が、少なくとも部分的に溝10の底部分12Aと対面する位置を起点に曲げられている。詳しくは、芯材部分2は、全体的に溝10の底部分12Aと対面する位置を起点に曲げられて、円弧状を形成する。芯材部分2が底部分12Aと対面する位置を起点に曲げられている状態とは、芯材部分2における底部分12Aと対面する位置を挟んで両側に位置する部分(特に当該部分の表面(第1面2A又は第2面2B上の)が、直線状に連なっていない状態を意味する。
【0029】
より詳しくは、芯材部分2の一部は、底部分12Aの最底点BPと第1原紙3との間に位置している。そして、芯材部分2は、最底点BP又はその近傍と対面する位置を起点に曲げられている。すなわち、底部分12Aと第1原紙3との間に芯材部分2の一部においては、最底点BP又はその近傍と対面する位置を挟んで両側に位置する部分が直線状に連なっていない。なお、芯材部分2が曲げられた際に、最底点BPが第1原紙3に開口する場合もあり得る。この場合、芯材部分2は、底部分12Aと対面する位置を起点に曲げられた状態となる。
【0030】
本実施の形態では、溝10の最底点BPと第1原紙3との間に芯材部分2が位置する。ここで、図1の範囲A内に示すように、最底点BPと第1原紙3との間に位置する芯材部分2の厚みTは、例えば0.2mm以上1.5mm以下でもよい。ただし、厚みTの寸法は、特に限られない。また、溝10は、第1原紙3に開放してもよい。つまり、溝10の最底点BPと第1原紙3との間に芯材部分2の一部が位置しなくてもよい。
【0031】
溝10にはそれぞれ充填材20が充填され、充填材20により、曲面石膏ボード1の曲げ状態が維持される。詳しくは、充填材20は、溝10に固着して硬化する。つまり、充填材20は、芯材部分2における溝10の両側に位置する部分に固着して硬化する。これにより、充填材20は、芯材部分2における溝10の両側に位置する部分が接近すること及び離れることを抑制して、曲面石膏ボード1の曲げ状態を維持する。
【0032】
本実施の形態では、充填材20は、有機系接着剤又は無機系接着剤の硬化物により形成されてもよい。また、充填材20は、石膏パテの硬化物でもよい。
【0033】
第1原紙3は、芯材部分2の第1面2Aの全体にわたり繋がった状態で延び拡がっている。一方で、第2原紙4は、溝10により分断された芯材部分2の第2面2Bにおける複数の部分に固着された複数の原紙要素4eからなる。本実施の形態では、各溝10の主部11は、それぞれの一対の側面11Sの第2面2B側の端点を互いに接触又は近接させている。そして、一対の側面11Sの第2面2B側の端点が互いに接触又は近接することで、溝10の両側に位置する隣り合う原紙要素4eは、互いに接触又は近接する。そして、本実施の形態では、隣り合う原紙要素4eが互いに接着されている。隣り合う原紙要素4eの接着は、溝10からはみ出た充填材20によってなされる。充填材20が有機系接着剤からなる場合、紙と強固に固着し得る。そのため、充填材20を有機系接着剤の硬化物により形成する場合には、隣り合う原紙要素4eは強固に接着され、曲面石膏ボード1の曲げ状態の維持の信頼性が向上する。
【0034】
なお、図1の範囲A内に示すように、本実施の形態では一対の側面11Sの第2面2B側の端点が互いに近接しているが、接触はしていない。一対の側面11Sの第2面2B側の端点が互いにする場合には、溝10は第1面2A側及び第2面2B側で閉じられる形態になるが、この形態も、本明細書では溝の概念に含まれるものとする。
【0035】
(曲面石膏ボードの作製方法)
次に、曲面石膏ボード1の作製方法について説明する。
【0036】
まず、平板形状の石膏ボードを準備する。図示省略するが、ここで準備される平板形状の石膏ボードは、曲げられる前であることで互いに平行となる第1面2A及び第2面2Bを有する芯材部分2と、第1面2Aに固着された第1原紙3と、第2面2Bに固着された第2原紙4とを備える。この時点では、第2原紙4は第2面2Bの全体にわたり繋がっている。
【0037】
上述のような平板形状の石膏ボードが準備された後、図2に示すように、当該石膏ボードに、第2面2Bからへこみ、それぞれの長手方向Lが同じ方向となる複数の溝10を形成する。溝10は、長手方向Lに直交する方向における断面で見たとき、第2面2Bから第1原紙3に向けて延びる主部11と、主部11に接続し、第1原紙3に最も近くなる最底点BPに向けて先細り形状となる底部分12Aを含む曲げ起点部12と、を有する。ただし、図示の例では、このときの主部11の一対の側面11Sは互いに平行に延びている。
【0038】
溝10は、例えば一方向に送られる石膏ボードを、回転させた円形の回転刃で切削することにより形成されてもよい。主部11及び曲げ起点部12を含むような溝10の形状は、回転刃の形状により定まる。
【0039】
そして、溝10を形成した後、図3に示すように、溝10に硬化前の充填材20を充填する。
【0040】
次に、図4に示すように、凹状の曲面部分31を有する型枠30を準備する。そして、第1原紙3の少なくとも一部(本例では全部)が曲面部分31に接するように上記石膏ボードを型枠30に載せる。そして、この例では、各溝10が狭まるように第1原紙3とともに芯材部分2を曲げる。このとき、芯材部分2は、溝10の底部分12Aと対面する位置を起点に曲げられる。
【0041】
その後、溝10に充填された充填材20が硬化する。これにより、曲面石膏ボード1が完成する。そして、曲面石膏ボード1は、型枠30から取り外される。
【0042】
以上に説明した曲面石膏ボード1は、第1面2A及び第1面2Aの反対に位置する第2面2Bを有し、石膏を含む芯材部分2と、芯材部分2の第1面2Aに固着された第1原紙3と、を備える。芯材部分2には、第2面2Bからへこみ、それぞれの長手方向Lが同じ方向となる複数の溝10が設けられる。そして、溝10は、長手方向Lに直交する方向における断面で見たとき、第2面2Bから第1原紙3に向けて延びる主部11と、主部11の互いに向き合う一対の側面11Sのうちの少なくとも一方に対して向きを変えるように主部11に接続し、第1原紙3に最も近くなる最底点BPに向けて先細り形状となる底部分12Aを含む曲げ起点部12と、を有する。そして、芯材部分2は、溝10の底部分12Aと対面する位置を起点に曲げられている。
【0043】
このような曲面石膏ボード1では、芯材部分2が溝10の底部分12Aと対面する位置を起点に曲げられることにより、曲がりの開始位置が所望の位置(溝10の底部分12Aと対面する位置、特に最底点BP)に制御され得るため、曲がり形状が整った状態で形成され得る。これにより、滑らかな曲面で外表面を形成できる。具体的には、滑らかな曲面で第1原紙3が形成する表面を仕上げることができる。
【0044】
また、本実施の形態では溝10の底部分12Aの最底点BPと第1原紙3との間に芯材部分2の一部が位置する。これにより、溝10によって芯材部分2の第1面2A側の連続性が損なわれないため、第1原紙3が形成する表面をより滑らかに仕上げることができる。
【0045】
また、本実施の形態では、底部分12Aが、長手方向Lに直交する方向における断面で見たとき、互いに向き合う一対の曲面12A1を有し、この一対の曲面12A1は、第1原紙3側に凹状の曲面であり、第1原紙3側で合流する位置に最底点BPを形成する。この場合、底部分12Aと第1原紙3との間で芯材部分2の一部が曲面12A1に沿うように曲がり得る。これにより、第1原紙3が形成する表面をより滑らかに仕上げることができる。
【0046】
また、本実施の形態では、溝10の主部11における一対の側面11Sの第2面2B側の端点が互いに接触又は近接し、これにより互いに接触又は近接する第2原紙4における隣り合う原紙要素4eが、互いに接着される。この場合、曲面石膏ボード1の曲げ状態の維持の信頼性を向上させることができる。
【0047】
以下、曲面石膏ボード1の変形例を説明する。以下の変形例における上述の実施の形態の構成部分と同じものには、同一の符号をつけて、重複する説明は省略する。
【0048】
(変形例1)
図5に示す変形例1では、第1原紙3が凹状の曲面を形成し、第2原紙4が凸状の曲面を形成している。変形例1にかかる曲面石膏ボード1Rは、図2に示すような溝10付きの平板形状の石膏ボードを、各溝10が拡がるように第1原紙3とともに芯材部分2を曲げることで形成される。この際、凸状の曲面部分を有する型枠に平板形状の石膏ボードが載せられて曲げられる。ただし、この例では、溝10が拡がるように第1原紙3とともに芯材部分2を型枠上で曲げた後に、拡がった溝10に硬化前の充填材20が充填される。このような曲面石膏ボード1Rにおいても、芯材部分2は、溝10の底部分12Aと対面する位置を起点に曲げられる。この例では、充填材20として石膏パテが用いられるが、特に限られるものではない。
【0049】
(変形例2)
図6に示す変形例2では、第1原紙3が、凸状の曲面を形成するとともに、凹状の曲面を形成する。第2原紙4は、第1原紙3における凸状の曲面を形成する部分の反対側の位置で凹状の曲面を形成し、第1原紙3における凹状の曲面を形成する部分の反対側の位置で凸状の曲面を形成する。変形例2にかかる曲面石膏ボードは、図2に示すような溝10付きの平板形状の石膏ボードを、一部における溝10が狭まり、他の部分における溝10が拡がるように、第1原紙3とともに芯材部分2を曲げることで形成され得る。
【0050】
(変形例3)
図7に示す変形例3では、溝10の形状が上述の実施の形態と異なる。図7における溝10は、主部11と、曲げ起点部12とを含むが、曲げ起点部12には、上述の実施の形態で説明した中継部分12Bが無く、曲げ起点部12は断面形状が二等辺三角形となる底部分12Aのみで構成されている。底部分12Aは、主部11の一対の側面11Sの両方に対して向きを変えるようにして主部11に接続している。最底点BPは、長手方向に底部分12Aを見たときに、底部分12Aにおける中央又は中央近傍に設けられている。なお、曲げ起点部12は、断面形状が台形状又は円弧状となる底部分12Aのみで構成されてもよい。なお、曲げ起点部12の断面形状が台形状となる場合、最底点BPは、台形状の上底(第1原紙3に近い部分)に対応する面で形成される場合もあり得る。
【0051】
(変形例4)
図8に示す変形例4では、溝10の形状が上述の実施の形態と異なる。図8における溝10は、主部11と、曲げ起点部12とを含むが、曲げ起点部12には、上述の実施の形態で説明した中継部分12Bが無く、曲げ起点部12は断面形状が直角三角形となる底部分12Aのみで構成されている。底部分12Aは、主部11の一対の側面11Sの一方のみに対して向きを変えるようにして主部11に接続している。最底点BPは、長手方向に底部分12Aを見たときに、底部分12Aに端部に位置している。
【0052】
(曲面石膏ボードを用いた隅構造)
以下では、上述した曲面石膏ボードの活用例を説明する。上述したような曲面石膏ボードは、建造物内の内装の施工において有益に用いることができる。曲面石膏ボードは、例えば、入隅、出隅、天井材、廻り縁等で利用できる。以下では、図5に示した曲面石膏ボード1Rを用いる隅構造としての入隅構造の作製方法について図9乃至図12を用いて説明する。
【0053】
まず、図9に示すように曲面石膏ボード1Rを準備し、所定の位置に設置する。所定の位置は、曲面石膏ボード1Rが固定される予定の床面における位置である。
【0054】
次に、図10に示すように、曲面石膏ボード1Rにおける芯材部分2の第2面2B側の曲面(第2原紙4)を、墨出し用のペンでなぞって、上記床面に曲線の隅出し線SLを描く。次に、図11に示すように、隅出し線SLに沿って複数の下地部材40を設置する。
【0055】
その後、図12に示すように、曲面石膏ボード1Rを、芯材部分2の第2面2Bが下地部材40に対面し、第1原紙3が居住空間側を向くように配置する。その後、曲面石膏ボード1Rを下地部材40で支持する。下地部材40に対する曲面石膏ボード1Rの支持は、曲面石膏ボード1Rを貫通して下地部材40に差し込まれるスクリューねじ41により行われる。スクリューねじ41は、曲面石膏ボード1Rの両端部側のみに差し込まれている。これにより、第1原紙3により入隅の下地が形成される。以上のようにして入隅を作製する場合、施工者に要求される技能が大幅に緩和されることで、工期及びコストの両方を大幅に軽減することが可能となる。なお、上述と同様の手順で、例えば曲面石膏ボード1を用いて出隅構造が作製されてもよい。
【0056】
以上、本発明の実施の形態及びその変形例を説明したが、本発明は上述の実施の形態及び変形例の構成に限定されるものではなく、上述の実施の形態及び変形例においては種々の変更をさらに加えることができる。
【符号の説明】
【0057】
1,1R…曲面石膏ボード
2…芯材部分
2A…第1面
2B…第2面
3…第1原紙
4…第2原紙
4e…原紙要素
10…溝
11…主部
11S…側面
12…曲げ起点部
12A…底部分
12A1…曲面
BP…最底点
20…充填材
30…型枠
31…曲面部分
40…下地部材
図1
図2
図3
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図5
図6
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図12