(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165125
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】燃料電池搭載ドローン
(51)【国際特許分類】
B64U 50/32 20230101AFI20241121BHJP
B64U 60/55 20230101ALI20241121BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241121BHJP
B64U 10/14 20230101ALI20241121BHJP
B64D 1/16 20060101ALI20241121BHJP
B64U 101/45 20230101ALN20241121BHJP
B64U 101/29 20230101ALN20241121BHJP
【FI】
B64U50/32
B64U60/55
H02J7/00 303E
H02J7/00 302D
B64U10/14
B64D1/16
B64U101:45
B64U101:29
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081009
(22)【出願日】2023-05-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】523181031
【氏名又は名称】佐々木 弘之
(71)【出願人】
【識別番号】522426641
【氏名又は名称】堀井 樹
(71)【出願人】
【識別番号】523181042
【氏名又は名称】宮本 翼
(71)【出願人】
【識別番号】522426652
【氏名又は名称】株式会社ROBOTIX JAPAN
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 弘之
(72)【発明者】
【氏名】堀井 樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 翼
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA07
5G503DA13
5G503GB03
(57)【要約】
【課題】必要電力に応じて燃料電池及び二次電池の電力を利用することが可能な燃料電池搭載ドローンを提供する。
【解決手段】飛行用電動モータ24と、飛行用電動モータ24に供給する電力を発生する水素燃料電池42と、電力を飛行用電動モータ24へ供給する二次電池46と、を有する燃料電池搭載ドローン11であって、水素燃料電池42の電力を飛行用電動モータ24へ供給する低負荷モードと、水素燃料電池42の電力及び二次電池46の電力を飛行用電動モータ24へ供給する高負荷モードと、を切り替えできる切替部44と、飛行用電動モータ24の必要電力が水素燃料電池42の発生電力以下であるか否かを判断する制御部45と、必要電力が発生電力以下であると低負荷モードを選択し、必要電力が発生電力を超えると高負荷モードを選択する制御部45と、を有する燃料電池搭載ドローン11を構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローン本体に設けられた電力消費部と、
前記ドローン本体に設けられ、かつ、前記電力消費部に供給する電力を発生する燃料電池と、
前記ドローン本体に設けられて電力を蓄え、かつ、蓄えている電力を前記電力消費部へ供給する二次電池と、
を有する燃料電池搭載ドローンであって、
前記燃料電池の電力を前記電力消費部へ供給し、かつ、前記二次電池の電力を前記電力消費部へ供給しない第1モードと、前記燃料電池の電力を前記電力消費部へ供給し、かつ、前記二次電池の電力を前記電力消費部へ供給する第2モードと、を切り替えできる切替部と、
前記ドローン本体に設けられ、前記電力消費部の必要電力が所定値以下であるか否かを判断する判断部と、
前記電力消費部の必要電力が所定値以下であると前記切替部のモードとして前記第1モードを選択し、前記電力消費部の必要電力が所定値を超えると前記切替部のモードとして前記第2モードを選択する電力制御部と、
を有する、燃料電池搭載ドローン。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記判断部が判断に用いる所定値は、前記燃料電池の発生電力であり、
前記電力制御部が、前記切替部のモードとして前記第1モードを選択すると、前記燃料電池の発生電力から、前記電力消費部の必要電力を差し引いた余剰電力が、前記二次電池へ充電される、燃料電池搭載ドローン。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記判断部が判断に用いる所定値は、前記燃料電池の発生電力であり、
前記電力制御部が、前記切替部のモードとして前記第2モードを選択すると、前記電力制御部の必要電力から前記燃料電池の発生電力を差し引いた不足電力が、前記二次電池から前記電力消費部へ供給される、燃料電池搭載ドローン。
【請求項4】
請求項1または2記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記ドローン本体に、
前記ドローン本体の揚力及び推進力を発生させるプロペラと、
電力が供給されて前記プロペラを回転させる飛行用電動モータと、
が設けられ、
前記電力消費部は、前記飛行用電動モータを含む、燃料電池搭載ドローン。
【請求項5】
請求項1または2記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記ドローン本体に、
前記ドローン本体の揚力及び推進力を発生させない作業を行なう作業部と、
電力が供給されて前記作業部を作動させる作業用アクチュエータと、
が設けられ、
前記電力消費部は、前記作業用アクチュエータを含む、燃料電池搭載ドローン。
【請求項6】
請求項5記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記作業部は、
対象物を清掃する清掃ローラと、
前記対象物に着陸された前記ドローン本体を前記対象物に沿って移動させるキャタピラーと、
前記清掃ローラを回転させる第1電動モータと、
前記キャタピラーを作動させる第2電動モータと、
を有し、
前記作業用アクチュエータは、前記第1電動モータ及び前記第2電動モータを含む、燃料電池搭載ドローン。
【請求項7】
請求項5記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記作業部は、
前記ドローン本体が地上へ着陸する場合に接地される複数の脚部と、
電力が供給されて前記複数の脚部を作動させる脚部駆動用電動モータと、
を有し、
前記作業用アクチュエータは、前記脚部駆動用電動モータを含む、燃料電池搭載ドローン。
【請求項8】
請求項5記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記作業部は、電力が供給されて作動し、かつ、地上へ物体を散布する噴射ノズルを有し、
前記作業用アクチュエータは、前記噴射ノズルを含む、燃料電池搭載ドローン。
【請求項9】
請求項4記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記ドローン本体に、前記ドローン本体の揚力及び推進力を発生させず、かつ、物体を運搬する物体運搬部が設けられている、燃料電池搭載ドローン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池及び二次電池を搭載したドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池及び二次電池を搭載したドローン(飛行体)の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された飛行体は、燃料電池と、二次電池と、プロペラと、モータと、電源コントローラと、を備える。プロペラは、モータに接続されており、モータによって駆動される。プロペラがモータの動作に応じて回転することによって、飛行体に揚力が発生する。燃料電池は、燃料容器から供給された燃料ガスを使用することによって、電気を生成する。電源コントローラは、燃料電池に供給される燃料ガスの量を制御することによって、燃料電池の出力電力を制御することができる。燃料電池は、電力線を通ってモータに接続されている。燃料電池によって生成された電力は、電力線を通ってモータに供給される。
【0003】
二次電池は、電力線に接続されている。二次電池は、電力線を介して燃料電池に並列に接続され、燃料電池と共にモータに接続されている。燃料電池と二次電池との間には、燃料電池に向かう電流を遮断するためのダイオードが挿入されている。二次電池で生成された電流は、ダイオードによって燃料電池へ流れることが禁止されるとともに、電力線を通ってモータに供給される。二次電池は、燃料電池が生成した電力を充電することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、特許文献1に記載されているドローンは、電力消費部の必要電力に応じて燃料電池及び二次電池の電力を利用する態様が考慮されておらず、その点で改善の余地がある、という課題を認識した。
【0006】
本開示の目的は、電力消費部の必要電力に応じて燃料電池及び二次電池の電力を利用することが可能な燃料電池搭載ドローンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ドローン本体に設けられた電力消費部と、前記ドローン本体に設けられ、かつ、前記電力消費部に供給する電力を発生する燃料電池と、前記ドローン本体に設けられて電力を蓄え、かつ、蓄えている電力を前記電力消費部へ供給する二次電池と、を有する燃料電池搭載ドローンであって、前記燃料電池の電力を前記電力消費部へ供給し、かつ、前記二次電池の電力を電力消費部へ供給しない第1モードと、前記燃料電池の電力を前記電力消費部へ供給し、かつ、前記二次電池の電力を前記電力消費部へ供給する第2モードと、を切り替えできる切替部と、前記ドローン本体に設けられ、前記電力消費部の必要電力が所定値以下であるか否かを判断する判断部と、前記電力消費部の必要電力が所定値以下であると前記切替部のモードとして前記第1モードを選択し、前記電力消費部の必要電力が所定値を超えると前記切替部のモードとして前記第2モードを選択する電力制御部と、を有する、燃料電池搭載ドローンを構成した。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電力消費部の必要電力に応じて燃料電池及び二次電池の電力を利用することの可能な燃料電池搭載ドローンを提供することができる。
【0009】
また、制御部が切替部のモードとして低負荷モードを選択すると、燃料電池の発生電力から、電力消費部の必要電力を差し引いた余剰電力が、二次電池へ充電される。したがって、燃料電池の発生電力を有効に活用できる。さらに、制御部が、切替部のモードとして高負荷モードを選択すると、電力消費部の必要電力から燃料電池の発生電力を差し引いた不足電力が、二次電池から電力消費部へ供給される。したがって、電力消費部における電力不足を抑制できる。
【0010】
さらに、飛行用電動モータの必要電力を、燃料電池の発生電力及び二次電池の電力で賄うことができる。したがって、ドローンの揚力及び推進力の低下を抑制できる。
【0011】
さらに、ドローンの揚力及び推進力を発生させない作業を行なう作業部を有し、燃料電池から電力が供給されて作業部を作動させる作業用アクチュエータと、を有する。燃料電池の電力は、作業用アクチュエータへ供給される。したがって、作業部の機能が低下することを抑制できる。
【0012】
さらに、対象部を清掃する作業部を有し、燃料電池から電力が供給されて作業部を作動させる第1電動モータ及び第2電動モータを有する。したがって、作業部が対象物を清掃する機能が低下することを抑制できる。
【0013】
さらに、ドローンが地上へ着陸する場合に接地される複数の脚部を有し、燃料電池から脚部駆動用電動モータへ電力が供給されると、複数の脚部を作動させることができる。したがって、ドローンが地上の傾斜面へ着陸する場合に、姿勢を安定させることができる。
【0014】
さらに、ドローンの作業部は、燃料電池から電力が供給されて作動し、かつ、地上へ物体を散布する噴射ノズルを有する。したがって、噴射ノズルから地上へ物体を散布する作業を円滑に行うことができる。
【0015】
さらに、ドローンの物体運搬部は、物体を運搬する。したがって、ドローンは物体を運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示のドローンシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本開示のドローンの一例を示す側面図である。
【
図6】本開示のドローンの他の構成例を示す概念図である。
【
図7】ドローンの電源部で行われる制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(概要)
本開示の燃料電池搭載ドローンのいくつかの具体例を、図面を参照して説明する。各図において、共通する構成は、同じ符号を付してあり、重複する説明を省略する。
図1には、ドローンシステム10が示されている。ドローンシステム10は、燃料電池搭載ドローン(以下、「ドローン」と略記する)11と、ドローン11を外部から制御する管理装置12と、を有する。本開示では、便宜上、ドローン11によりソーラーパネルを清掃する例を説明する。
【0018】
(管理装置)
管理装置12は、ドローン11を管理する基地に設けられたサーバ、または管理者が手動操作する送信機のうちの何れであってもよい。管理装置12は、操作部13、制御部14、通信部15、表示部16、記憶部17を有する。操作部13は、管理装置12を利用する管理者により操作される。管理者は、操作部13を操作することにより、ドローン11を制御するための制御情報を管理装置12へ入力できる。制御情報は、ドローン11の出発地及び目的地、出発地と目的地との間の距離、ドローン11を出発地から目的地へ到達させるまでの目標時間、ドローン11の飛行目的、清掃する対象物の所在地、清掃する対象物の数及び面積、等を含む。
【0019】
ドローン11を基地とソーラーシステムの所在地とで往復させる場合、ドローン11の往路において、ドローン11の出発地は基地であり、目的地は、ソーラーシステムの所在地である。ドローン11の復路において、ドローン11の出発地は、ソーラーシステムの所在地であり、目的地は、基地である。制御部14は、操作部13から入力される制御情報を処理する機能と、ドローン11へ送る制御信号を生成する機能と、ドローン11から取得する情報を処理する機能と、取得した情報を記憶部17へ記憶させる機能と、を有する。また、制御部14は、操作部13が操作されて入力される制御情報、記憶部17に記憶されている情報及びデータに基づいて、ドローン11へ送る制御信号を生成する。
【0020】
通信部15は、制御部14で生成された制御信号をドローン11へ送る機能と、ドローン11から取得した情報を制御部14へ送る機能と、を有する。表示部16は、操作部13を操作する場合の画面を表示する機能と、ドローン11から取得した情報、地図テータ等を表示する機能と、を有する。表示部16は、一例として液晶ディスプレイである。記憶部17には、制御部14で行われる処理、判断等に用いられる情報、データ、プログラム、地図データ等が記憶されている。地図データには、基地の所在地、目的地の所在地、ドローン11が飛行する領域の所在地、地形、標高、田畑、農地、道路、建築物、ソーラーパネルの所在地、等が含まれる。
【0021】
(ドローン)
ドローン11は、
図2、
図3及び
図4のように、本体部18、電源部19、2軸ジンバル20、清掃部21を有する。
図3のように、本体部18には、複数のアーム22が設けられ、各アーム22にプロペラ23がそれぞれ取り付けられている。各プロペラ23は、飛行用電動モータ24の回転軸にそれぞれ取り付けられている。飛行用電動モータ24は、一例としてブラシレスモータである。飛行用電動モータ24は、電源部19から電力が供給されて回転する。飛行用電動モータ24は、回転、停止、回転方向、回転速度が、それぞれ別々に制御される。
【0022】
また、
図1のように、本体部18には、距離センサ25、位置検出部26、制御部27、記憶部28、ジャイロセンサ29、障害物検出センサ30、気象複合センサ32、通信部33、速度センサ34、重量センサ31等が設けられている。距離センサ25は、複数設けられている。距離センサ25は、例えば、レーザー光線を地上へ向けて照射し、反射したレーザー光線を受光することにより、地上からドローン11までの距離(高さ)を測定して信号を出力する。地上は、地面、田畑、道路、建築物、建築物の屋根、建築物の屋上、地面に設けられたソーラーパネル、建築物に設けられたソーラーパネル、等の何れであってもよい。
【0023】
位置検出部26は、例えば、GPS(Global Positioning System)により構成されており、4基以上の人工衛星からの信号を受信することで、地図データにおけるドローン11の位置情報、つまり、現在位置を検出するシステムである。ジャイロセンサ29は、角速度センサ及び加速度センサを含む。ジャイロセンサ29は、ドローン11の回転、振動、傾き等を検出して信号を出力する。障害物検出センサ30は、ドローン11の周囲の障害物を検出して信号を出力する。
【0024】
気象複合センサ32は、ドローン11が受けている風向、風圧及び風速、降雨量、等を検出して信号を出力する。速度センサ34は、ドローン11の飛行速度を検出して信号を出力する。重量センサ31は、本体部18で支持する物体の重量を検出して信号を出力するセンサである。本実開示では、重量センサ31は、2軸ジンバル20及び清掃部21の重量に応じた信号、本体部18で支持する運搬物等の重量に応じた信号を出力できる。
【0025】
通信部33は、例えば、本体部18に設けられており、通信部33と管理装置12との間で双方向通信が可能である。また、制御部27と清掃部21とが、相互に通信可能に接続されている。
【0026】
制御部27は、通信部33、距離センサ25、位置検出部26、ジャイロセンサ29、障害物検出センサ30、重量センサ31、気象複合センサ32、記憶部28に接続されている。制御部27は、入力ポート、出力ポート及び中央演算処理回路をする。制御部27は、管理装置12から取得する制御情報、距離センサ25から出力される信号、ジャイロセンサ29から出力される信号、位置検出部26により検出されるドローン11の現在位置、障害物検出センサ30により検出される障害物、気象複合センサ32から出力される信号、重量センサ31から出力される信号、速度センサ34から出力される信号、記憶部28に記憶されている情報、データに基づいて、各種の処理及び判断を行い、その処理結果、及び判断結果に基づいて、飛行用電動モータ24及び2軸ジンバル20を制御し、かつ、清掃部21へ送信する制御信号を生成する。
【0027】
制御部27は、例えば、ドローン11の現在位置、天候、地上からドローン11までの距離、ドローン11が受ける風向、風圧及び風速、ドローン11の飛行速度、等に基づいて、複数の飛行用電動モータ24をそれぞれ制御する。したがって、ドローン11の上昇、下降、空中での停止、空中での飛行、飛行中の向き、方向変換、旋回、右折、左折、等を行うことができ、かつ、地上からドローン11までの距離を調整できる。制御部27は、ドローン11の飛行中、地上からドローン11までの距離を所定値以上に確保すること、または、地上からドローン11までの距離を所定の範囲内とすること、飛行中におけるドローン11の姿勢を安定させること、ドローン11を出発地から目的地への所要時間を目標時間内にすること、等を目的として、複数の飛行用電動モータ24の回転速度を、それぞれ別々に制御できる。
【0028】
また、制御部27は、ジャイロセンサ29から出力される信号を処理し、その処理結果に基づいて、複数の飛行用電動モータ24の回転速度、及び回転方向をそれぞれ制御することにより、ドローン11の姿勢、例えば、水平度を保持することができる。さらに、制御部27は、複数の距離センサ25の信号を処理することにより、地表の状態、例えば、地面の傾斜角度、地面に存在する凹凸、ソーラーパネルの表面の傾斜角度、等を判断できる。傾斜角度は、水平な仮想線と地面との間の鋭角側の角度で表すことができる。
図4には、ドローン11がソーラーパネル63の上空にある状態が示されている。そして、水平な仮想線B1とソーラーパネル63の表面64との間の鋭角側の角度が、傾斜角度θ1として示されている。制御部27は、複数の距離センサ25で検出される距離の差から、傾斜角度θ1を判断できる。
【0029】
制御部27は、傾斜角度θ1の判断結果に基づいて、2軸ジンバル20及び清掃部21を制御することができる。制御部27が、傾斜角度θ1の判断結果に基づいて行う制御は、後述する。さらに、制御部27は、本体部18に設けられている電力消費部、例えば、飛行用電動モータ24の必要電力を判断する機能を有する。制御部27は、飛行用電動モータ24の必要電力を、天候、洗浄液タンク50内の洗浄液量、向かい風であるか追い風であるか、風圧、ドローン11の飛行速度、ドローン11の飛行中における地上からドローン11までの距離(高さ)、ドローン11を出発地から目的地へ到達させるまでの目標時間、本体部18に吊り下げられる運搬物の重量等の情報に基づいて判断する。また、制御部27は、本体部18で得られた情報及び判断結果、処理結果、及び清掃部21から取得した情報を、電源部19へ送る機能を有する。
【0030】
図1に示す記憶部28には、制御部27が処理及び判断を行うための情報、地図データ、プログラム、2軸ジンバル20を制御するための情報及びプログラム、清掃部21へ送信する制御信号を生成するためのプログラム及び情報、清掃部21から受信する情報を処理するためのプログラム及び情報、等が記憶されている。
【0031】
(2軸ジンバル)
2軸ジンバル20は、本体部18に対する清掃部21の姿勢を調整する機構である。2軸ジンバル20は、本体部18の下面に固定された第1ブラケット35と、清掃部21に固定された第2ブラケット36と、第1ブラケット35と第2ブラケット36とを接続する接続具37と、第1電動モータ38及び第2電動モータ39と、を有する。接続具37は、第1ブラケット35に対し、仮想線Q1を中心とする所定角度の範囲内で作動(回転)及び停止が可能である。第1電動モータ38は、接続具37を作動及び停止させるアクチュエータである。
【0032】
第2ブラケット36は、接続具37に対し、仮想線Q2を中心とする所定角度の範囲内で作動(回転)及び停止が可能である。第2電動モータ39は、仮想線Q2を中心として、第2ブラケット36を作動(回転)及び停止させるアクチュエータである。第1電動モータ38及び第2電動モータ39は、電源部19から電力が供給されて回転する。制御部27は、第1電動モータ38及び第2電動モータ39の停止、回転、回転速度、回転方向をそれぞれ別々に制御する。ドローン11を、
図3のように真上から平面視すると、仮想線Q1と仮想線Q2とは、略90度の角度で交差する位置関係にある。
【0033】
(清掃部)
清掃部21は、ソーラーパネル63の表面64を清掃する機構である。清掃部21は、本体部18に対し2軸ジンバル20を介して取り付けられている。清掃部21は、接続フレーム48、本体部49、洗浄液タンク50、噴射ノズル51、清掃ローラ52、キャタピラー(登録商標)53、清掃ローラ駆動部54、キャタピラー駆動部55、制御部56、カメラ57、記憶部58、ワイプ59、洗浄液量センサ65、勾配センサ66等を有する。接続フレーム48は、第2ブラケット36及び本体部49に固定されている。
【0034】
洗浄液タンク50内に洗浄液が貯留される。噴射ノズル51は、例えば、接続フレーム48に設けられている。噴射ノズル51は、洗浄液タンク50内の洗浄液を清掃ローラ52の前方へ噴射する。噴射ノズル51は、例えば、電磁弁を有し、電磁弁は、電力により動作される。キャタピラー駆動部55は、本体部49の下部に取り付けられている。キャタピラー駆動部55に支持フレーム60が接続され、清掃ローラ52が支持フレーム60に取り付けられている。清掃ローラ52は、ソーラーパネル63の表面64を清掃する要素である。
【0035】
清掃ローラ駆動部54は、支持フレーム60に取り付けられている。清掃ローラ駆動部54は、清掃ローラ52を回転させる電動モータ61を有する。電動モータ61は、電源部19から電力が供給されて回転する。清掃ローラ52の周速度は、キャタピラー53の周速度を超えるように制御される。キャタピラー(無限軌道)53は、清掃部21をソーラーパネル63の表面64に沿って移動させるための機構である。キャタピラー53は、起動輪、転輪、遊動輪(誘導輪)を囲むように巻かれたベルト62を有する。キャタピラー53は、キャタピラー駆動部55の両側にそれぞれ設けられており、2つのキャタピラー53のベルト62は、それぞれ単独で回転、停止、回転方向の切り替えが行われる。
【0036】
キャタピラー駆動部55は、電動モータ83を有し、電動モータ83が、2つのキャタピラー53のベルト62をそれぞれ別々に作動及び停止させる。電動モータ83は、電源部19から電力が供給されて回転する。キャタピラー53のベルト62が作動されると、ソーラーパネル63の表面64に清掃部21が設置された状態で、ドローン11が前進及び後退できる。また、2つのキャタピラー53のベルト62の回転方向をそれぞれ制御することにより、清掃部21の右折、左折、方向変換、旋回、等を行える。
【0037】
ワイプ59は、例えば、キャタピラー駆動部55に取り付けられている。ワイプ59は、ソーラーパネル63の表面64に付着している異物、例えば、水滴を拭き取る要素である。カメラ57は、例えば、支持フレーム60に取り付けられている。カメラ57は、ドローン11の周囲の映像を撮影して信号を出力する。
【0038】
ドローン11が空中で飛行中、または、空中で静止中、または、地上で静止中において、カメラ57は、ドローン11の周囲及び地上の映像を撮影できる。カメラ57は、例えば、ソーラーパネル63の表面64の外周形状、ソーラーパネル63の表面64の汚れ状態、等の映像を撮影できる。カメラ57で撮影された映像は、制御部56へ送られ、かつ、記憶部58に記憶される。洗浄液量センサ65は、洗浄液タンク50内の洗浄液量を検出して信号を出力する。洗浄液量センサ65が検出した洗浄液量は、制御部56により処理される。勾配センサ66は、清掃部21がソーラーパネル63へ着陸している状態で、清掃部21がソーラーパネル63の表面64の傾斜角度θ1、及び傾斜方向を検出する。
図3は、ドローン11を真上から平面視した平面図である。仮想線C1は、本体部18の幅方向の中心を示す。
【0039】
また、本体部18の仮想線C1に沿った方向において、清掃ローラ52とワイプ59とが間隔をおいて配置されている。仮想線C1に沿った方向を、便宜上、ドローン11の前後方向と定義できる。そして、ドローン11が、仮想線C1に沿った方向で、清掃ローラ52より後方にワイプ59が位置する方向D1で移動することを前進と定義可能である。これに対し、ドローン11が、仮想線C1に沿った方向で、ワイプ59より後方が清掃ローラ52位置する方向D2で移動することを後退と定義可能である。
【0040】
勾配センサ66は、ソーラーパネル63の表面64が、清掃ローラ52の下端がワイプ59の下端より上に位置する向きで傾斜されているか、または、ソーラーパネル63の表面64が、清掃ローラ52の下端がワイプ59の下端より下に位置する向きで傾斜されているか、を検出して信号を出力できる。また、勾配センサ66は、
図3に示すドローン11において、ソーラーパネル63の表面64が、仮想線C1より右側の部位が左側の部位よりも低位となるように傾斜されているか、
図3に示すドローン11において、ソーラーパネル63の表面64が、仮想線C1より左側の部位が右側の部位よりも低位となるように傾斜されているか、を判断して信号を出力できる。また、勾配センサ66は、ドローン11に対するソーラーパネル63の表面64の傾斜方向を検出できることに加え、傾斜角度θ1を検出することができる。
【0041】
制御部56は、本体部49内に設けられている。制御部56は、入力ポート、出力ポート及び中央演算処理回路を有し、制御部56は、制御部27とつながっている。制御部56は、本体部49の制御部27から受信する信号、記憶部58に記憶されている情報及びプログラムに基づいて、各種の処理及び判断を行い、その処理結果、及び判断結果に基づいて清掃ローラ駆動部54及びキャタピラー駆動部55を制御する。
【0042】
また、制御部56は、キャタピラー駆動部55の必要電力及び清掃ローラ駆動部54の必要電力を判断する機能を有する。制御部56は、キャタピラー駆動部55の必要電力を、洗浄液タンク50内の洗浄液量、清掃部21でソーラーパネル63の表面64を清掃中における表面64の傾斜角度θ1、清掃部21でソーラーパネル63の表面64を清掃中にドローン11が表面64を登っているか下降しているか、等の情報に基づいて判断できる。制御部56は、勾配センサ66の信号を処理することにより、清掃部21でソーラーパネル63の表面64を清掃中における表面64の傾斜角度θ1を判断できる。
【0043】
また、制御部56は、勾配センサ66の信号を処理することにより、清掃部21でソーラーパネル63の表面64を清掃中に、ドローン11が表面64を登っているか下降しているかを判断できる。制御部56は、清掃するソーラーパネル63の1基あたりの表面64の面積に基づいて、清掃ローラ駆動部54の必要電力を判断できる。制御部56は、キャタピラー駆動部55の必要電力及び清掃ローラ駆動部54の必要電力を判断した結果を記憶部58へ記憶し、かつ、制御部27へ送る。
【0044】
さらに、制御部56はカメラ57で撮影される映像を処理し、その処理結果を記憶部58へ記憶し、かつ、本体部18の制御部27へ送る。制御部56は、カメラ57の映像を処理することにより、ソーラーパネル63の表面64上におけるドローン11の位置、清掃部21が表面64を登っているか下降しているか、等を判断できる。記憶部58には、制御部56の処理及び判断に用いられるプログラム及び情報が記憶されている。また、記憶部58には、カメラ57で撮影された映像、制御部56により行われた処理及び判断の結果が記憶される。
【0045】
(電源部)
電源部19は、例えば、本体部49内に設けられている。電源部19は、燃料タンク40、空気供給機41、水素燃料電池42、コンバータ43、切替部44、制御部45、二次電池46、記憶部47等を有する。燃料タンク40には、水素燃料、例えば、天然ガス、メタノール等の燃料が、例えば、常圧(1気圧(1013.25hPa))で充填されている。燃料タンク40内の水素燃料は、水素燃料電池42へ供給される。空気供給機41は、例えば、空気を吸い込んで吐出するコンプレッサである。空気供給機41は、二次電池46の電力で駆動される。空気供給機41から吐出された空気、具体的には、酸素は、水素燃料電池42へ供給される。水素燃料電池42は、水素燃料から得られる水素ガスと、酸素とを化学反応させて電力を発生する。コンバータ43は、具体的には、電圧(電位)を変換するDC-DCコンバータであり、コンバータ43は、水素燃料電池42における水素燃料の使用量に対する発生電力(出力)が一定、つまり、発電効率が最大となるように、発電制御を行う。
【0046】
切替部44は、水素燃料電池42、二次電池46、本体部18に設けられた電力消費部、清掃部21に設けられた電力消費部、2軸ジンバル20に設けられた電力消費部に対し、電気的に接続されたスイッチング回路である。切替部44は、動作状態として低負荷モード及び高負荷モードを有する。切替部44の動作状態が低負荷モードであると、水素燃料電池42の電力の一部は、電力消費部へ供給され、かつ、水素燃料電池42の電力の一部は、二次電池46へ充電される。つまり、水素燃料電池42の発生電力から、電力消費部の必要電力を差し引いた余剰電力が、二次電池46へ充電される。切替部44が低負荷モードであると、二次電池46から放電されない。
【0047】
切替部44の動作状態が高負荷モードであると、水素燃料電池42の発生電力は、電力消費部へ供給され、かつ、二次電池46の電力は電力消費部へ供給される。つまり、電力消費部の必要電力から、水素燃料電池42の発生電力を差し引いた不足電力が、二次電池から電力消費部へ供給される。なお、電力消費部は、後述する。
【0048】
二次電池46は、充電及び放電を行うことのできる蓄電池である。二次電池46としては、例えば、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄えるバッテリを用いることができる。制御部45は、入力ポート、出力ポート、及び中央演算処理回路を有する。制御部45は、ドローン11の電力消費部の必要電力を判断する機能と、水素燃料電池42の発生電力を制御及び判断する機能と、を有する。制御部45は、制御部27から必要電力を取得する。制御部45は、コンバータ43及び空気供給機41を制御することにより、水素燃料電池42の発生電力を制御する。また、制御部45は、電力消費部の必要電力が所定値以下であるか否かを判断する機能を有する。所定値は、例えば、水素燃料電池42の発生電力に応じた値である。
【0049】
さらに、制御部45は、電力消費部の必要電力が所定値以下であるか否かを判断した結果に基づいて、切替部44の動作状態、つまり、低負荷モードと高負荷モードとを切り替える機能を有する。さらに、記憶部47には、制御部45が行う処理、及び判断に用いられる情報、データ及びプログラムが記憶されている。例えば、水素燃料電池42における発電効率が最大となるように、コンバータ43及び空気供給機41を制御するデータ、及び情報が記憶されている。
【0050】
(稼働例)
ドローンシステム10の稼働例は、次の通りである。管理装置12は、制御情報をドローン11へ送信する。制御情報は、例えば、清掃対象であるソーラーパネル63の所在地、ソーラーパネル63の総面積、ソーラーパネル63の清掃開始から終了までの所要時間の目標値、等を含む。ドローン11の制御部27は、制御情報を取得すると、複数の飛行用電動モータ24を回転させ、ドローン11を基地からソーラーパネル63の所在地へ発進させる。
【0051】
ドローン11は、
図3に示す4つのプロペラ23のうち、本体部18を隔てて対角に位置するプロペラ23は、時計回りに回転され、本体部18を隔てて対角に位置するプロペラ23は、反時計回りに回転される。4つのプロペラ23が回転されることで、ドローン11の揚力及び推進力が発生する。
【0052】
制御部27は、ドローン11が、複数のソーラーパネル63が設置されている所在地の上空へ到達すると、ドローン11を何れかのソーラーパネル63の上で停止させる。制御部27は、ドローン11を下降させる前に、カメラ57の映像から表面64に対するドローン11の向きを判断する。また、制御部27は、複数の距離センサ25の信号から、
図4に示すソーラーパネル63の表面64の傾斜角度θ1を判断する。そして、制御部27は、これらの判断結果に基づいて、複数の飛行用電動モータ24を制御して、表面64に対するドローン11の向き調整する。また、制御部27は、傾斜角度θ1の判断結果に基づいて2軸ジンバル20を制御し、表面64の傾斜方向及び傾斜角度θ1に応じ、清掃部21の姿勢を調整する。
【0053】
その後、制御部27は、ドローン11を下降させ、ドローン11をソーラーパネル63の表面64へ着陸させる。ソーラーパネル63に対するドローン11の向きが調整され、清掃部21の姿勢が傾斜角度θ1の判断結果に基づいて調整されている。したがって、ベルト62がソーラーパネル63の表面64へ接触される時点の衝撃、及び清掃ローラ52がソーラーパネル63の表面64へ接触される時点の衝撃を低減できる。
【0054】
制御部27は、ドローン11が表面64へ着陸した後、制御信号を清掃部21の制御部56へ送信する。すると、制御部56は、キャタピラー駆動部55を制御することにより、ドローン11を方向D1で前進させる。また、制御部56は、噴射ノズル51を制御することにより、表面64のうち、清掃ローラ52より前方に位置する領域へ洗浄液を噴射させる。さらに、制御部56は、清掃ローラ駆動部54を制御することにより、清掃ローラ52を回転させる。したがって、表面64の汚れが清掃ローラ52により除去される。
【0055】
さらに、制御部56は、清掃ローラ52がソーラーパネル63の表面64の端部へ接近すると、キャタピラー駆動部55を制御することにより、清掃部21の方向変換を行う。また、制御部27は、清掃部21が方向変換されることに同期して、飛行用電動モータ24を制御し、本体部18を方向変換させる。
【0056】
さらに、制御部27は、清掃部21の方向変換を行う過程において、表面64の傾斜角度θ1に基づいて、2軸ジンバル20の第1電動モータ38及び第2電動モータ39を制御する。したがって、キャタピラー53のベルト62及び清掃ローラ52が、ソーラーパネル63の表面64へ常に接触された状態を保持できる。
【0057】
そして、制御部56は、ソーラーパネル63の表面64の清掃が完了すると、制御部56は、キャタピラー駆動部55及び清掃ローラ駆動部54を停止させる。制御部56は、カメラ57の映像を処理して、ソーラーパネル63の表面64の清掃が完了したかどうかを判断できる。また、制御部56は、ソーラーパネル63の表面64の清掃が完了したことを、制御部27へ送信する。制御部27は、清掃部21によりソーラーパネル63の表面64の清掃が完了したことを検出すると、ドローン11を上昇させる。ドローン11は、全てのソーラーパネル63の清掃が完了すると、空中を飛行してソーラーパネル63の所在地から基地へ戻る。
【0058】
(ドローンの他の構成例)
図6に示すドローン11は、他の構成例を示している。本体部18の下部には、清掃部21に代えて物体散布部70が設けられている。物体散布部は、地上へ向けて、物体、例えば、薬剤、農薬、水、消火液、肥料、花粉等を散布する機能を有する。物体は、液体、粒状体、の何れであってもよい。地上は、田畑、農地、農園、山林、工事現場、火事現場、等を含む。物体散布部70は、物体タンク71、噴射ノズル72、制御部73、記憶部74、物体量センサ75を有する。物体タンク71は、物体を収容する。噴射ノズル72は、物体タンク71内の物体を噴射する。
【0059】
噴射ノズル72は、例えば、電磁弁を有し、電磁弁は、電源部19から供給される電力で作動する。制御部73は、物体噴射情報、物体量センサ75の信号、記憶部74に記憶されている情報、データに基づいて、噴射ノズル72を制御する。また、制御部73は、噴射ノズル72における必要電力を判断する。例えば、噴射ノズル72から物体を噴射する場合の必要電力は、噴射ノズル72から物体を噴射しない場合の必要電力より高い。制御部73は制御部27との間で双方向通信が可能である。物体噴射情報は、管理装置12の制御部14から本体部18の制御部27を経由して、制御部73へ送られている。物体噴射情報は、物体を噴射するべき地図データ上の所在地、物体の噴射量、物体の噴射タイミング、等を含む。記憶部74には、制御部73が噴射ノズル72を制御するための情報、データが記憶されている。物体量センサ75は、物体タンク71に収容されている物体の重量を検出して信号を出力する。物体量センサ75から出力された信号は、制御部73を介して制御部27へ送られる。
【0060】
また、ドローン11は、脚部80、脚部駆動用電動モータ81及び制御部82を備えている。脚部80は、複数設けられており、各脚部80は所定の範囲内で下向きの突出量を変更可能である。脚部駆動用電動モータ81は、複数の脚部80をそれぞれ別個に作動及び停止させる機能を有する。脚部駆動用電動モータ81は、電源部19から供給される電力で作動する。制御部82は、制御部27との間で双方向通信が可能である。制御部82は、脚部駆動用電動モータ81における必要電力を判断する。例えば、脚部駆動用電動モータ81を回転させる場合の必要電力は、脚部駆動用電動モータ81が停止している場合の必要電力より高い。
【0061】
なお、
図6は、脚部80、脚部駆動用電動モータ81、制御部82を、電源部19の下に設けた例を示す。脚部80、脚部駆動用電動モータ81、制御部82は、本体部18の下面に取り付けられていてもよい。また、各脚部80は、高さ方向に沿って直線状に作動する構成、または、支持軸を中心として所定角度の範囲内で円弧状に作動する構成のうち、何れであってもよい。
【0062】
制御部82は、ドローン11の飛行中、脚部駆動用電動モータ81を停止させている。つまり、複数の脚部80は、待機位置で停止されている。制御部27は、ドローン11が地上へ着陸する前に、距離センサ25により地上の状態、例えば、着陸場所の傾斜角度または地上の凹凸を検出し、地上の状態を制御部82へ送信する。制御部82は、ドローン11が地上へ着陸する前に、着陸場所の状態に基づいて脚部駆動用電動モータ81を回転させて少なくとも1個の脚部80を作動させ、かつ、停止させる。このため、ドローン11が着陸する場合に、各脚部80の停止位置を、着陸場所の状態に合わせることができる。したがって、ドローン11の姿勢を水平に保持することができる。制御部82は、ドローン11が地上から上昇する場合、脚部駆動用電動モータ81を回転させ、複数の脚部80を待機位置へ復帰させる。
【0063】
なお、図示はしないが、ドローン11は、散布しない物体としての荷物を運搬する構成であってもよい。この場合、ドローン11は、
図6に示す物体散布部70、制御部82、脚部駆動用電動モータ81、に代えて、荷物を吊り下げるフック、コンテナ等を有する。本体部18に設けられている重量センサ31は、荷物の重量を検出して信号を出力する。制御部27は、荷物の重量を判断し、判断結果を制御部45へ送る。
【0064】
(制御例)
図7には、電源部19の制御部45が行う制御の一例が示されている。制御部45は、ステップS10において、各種の情報を処理する。制御部45は、ステップS11において、電力消費部における必要電力が所定値以下であるか否かを判断する。具体的に説明すると、制御部45は、ステップS11において、電力消費部の必要電力が、水素燃料電池42の発生電力以下であるか否かを判断する。
【0065】
制御部45は、ステップS11でYesと判断すると、ステップS12において、切替部44のモードを低負荷モードとし、
図6の制御を終了する。制御部45は、ステップS11でNoと判断すると、ステップS13において、切替部44のモードを高負荷モードとし、
図6の制御を終了する。
【0066】
(具体例)
制御部45が、
図7のステップS11でYesと判断する例、ステップS11でNoと判断する具体例には、次のようなものが含まれる。制御部45は、ドローン11の下降時または定速飛行(巡航飛行)時における飛行用電動モータ24の必要電力が所定値以下であると、ステップS11でYesと判断できる。これに対し、制御部45は、ドローン11の上昇時または加速時における飛行用電動モータ24の必要電力が所定値を超えると、ステップS11でNoと判断できる。
【0067】
制御部45は、ドローン11が飛行中に追い風を受けており、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値以下であると、ステップS11でYesと判断できる。これに対し、制御部45は、ドローン11が飛行中に向かい風を受けており、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値を超えていると、ステップS11でNoと判断できる。
【0068】
制御部45は、晴天時または曇天時であり、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値以下であると、ステップS11でYesと判断できる。これに対し、制御部45は、雨天時であり、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値を超えていると、ステップS11でNoと判断できる。
【0069】
制御部45は、ドローン11がソーラーパネル63に着陸し、かつ、ソーラーパネル63の清掃を行っていない状態における清掃ローラ駆動部54及びキャタピラー駆動部55の必要電力が所定値以下であると、ステップS11でYesと判断できる。これに対し、制御部45は、ドローン11がソーラーパネル63に着陸してソーラーパネル63を清掃中であり、清掃ローラ駆動部54及びキャタピラー駆動部55の必要電力が所定値を超えると、ステップS11でNoと判断できる。
【0070】
制御部45は、ドローン11がソーラーパネル63の表面64に沿って降る時に、キャタピラー駆動部55の必要電力が所定値以下であると、ステップS11でYesと判断できる。制御部45は、ドローン11がソーラーパネル63の表面64に沿って登る時に、キャタピラー駆動部55の必要電力が所定値を超えるとステップS11でNoと判断できる。
【0071】
制御部45は、ドローン11が基地からソーラーパネル63の所在地へ出発する場合、洗浄液タンク50の洗浄液量が多く、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値を超えていると、ステップS11でNoと判断できる。これに対し、制御部45は、ドローン11がソーラーパネル63の所在地から基地へ戻る場合、洗浄液タンク50の洗浄液量が少なく、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値以下であると、ステップS11でYesと判断できる。
【0072】
制御部45は、ドローン11の噴射ノズル72から物体を噴射しない場合における物体散布部70の必要電力が所定値以下であると、ステップS11でYesと判断できる。これに対し、制御部45は、ドローン11の噴射ノズル72から物体を噴射する場合における物体散布部70の必要電力が所定値を超えると、ステップS11でYesと判断できる。
【0073】
制御部45は、
図6に示すドローン11が基地から物体を散布する所在地へ出発する場合、物体タンク71の物体量が多く、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値を超えていると、ステップS11でNoと判断できる。これに対し、制御部45は、
図6に示すドローン11が物体を散布する所在地から基地へ戻る場合、物体タンク71の物体量が少なく、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値以下であると、ステップS11でYesと判断できる。
【0074】
図6に示すドローン11が、物体を基地から目的地へ運搬する場合、制御部45は、重量センサ31により検出される物体の重量が重く、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値を超えていると、ステップS11でNoと判断できる。これに対し、ドローン11が、目的地から基地へ戻る場合、制御部45は、重量センサ31により検出される物体の重量が軽く、飛行用電動モータ24の必要電力が所定値以下であると、ステップS11でYesと判断できる。
【0075】
(補足説明)
本実施形態に開示されている技術事項の意味の一例は、次の通りである。ドローン11は、燃料電池搭載ドローンの一例である。本体部18は、ドローン本体の一例である。本実施形態において、「ドローン本体に設けられた電力消費部」は、「ドローン本体に直接に設けられた電力消費部」と、「ドローン本体に間接的に設けられた電力消費部」と、を含む。水素燃料電池42は、燃料電池の一例である。二次電池46は、二次電池の一例である。電源部19は、電源部の一例である。低負荷モードは、第1モードの一例であり、高負荷モードは、第2モードの一例である。切替部44は、切替部の一例である。制御部45は、判断部及び電力制御部の一例である。飛行用電動モータ24、第1電動モータ38、第2電動モータ39、脚部駆動用電動モータ81、噴射ノズル72は、電力消費部の一例である。電力消費部は、電気負荷と定義することもできる。
【0076】
清掃部21、物体散布部70、脚部80は、作業部の一例である。電動モータ61,83、脚部駆動用電動モータ81、噴射ノズル72は、噴射ノズル及び作業用アクチュエータの一例である。清掃ローラ52は、清掃ローラの一例である。キャタピラー53は、キャタピラーの一例である。ソーラーパネル63は、対象物の一例である。電動モータ61は、第1電動モータの一例である。電動モータ83は、第2電動モータの一例である。脚部80は、脚部の一例である。脚部駆動用電動モータ81は、脚部駆動用電動モータの一例である。清掃部21、物体散布部70、コンテナ、フックは、物体運搬部の一例である。ドローン本体は、ケーシング、ハウジング、フレーム等を含む。また、ドローンにおける電力消費部の必要電力は、ドローンの作動負荷が相対的に高くなることに伴い、相対的に高くなる。ドローンの作動負荷は、ドローンの作動抵抗と定義することもできる。ドローンの作動は、ドローンが空中で飛行すること、ドローンが地上で移動すること、ドローンの清掃対象部を清掃すること、を含む。清掃対象部は、ソーラーパネル、建築物の屋根、建築物の窓、等を含む。
図7に示す制御例は、ドローンの制御方法と定義することもできる。
【0077】
本開示において、燃料電池は、電解質を移動するイオンが水素イオンの代わりに、炭酸イオン、酸素イオンであってもよい。つまり、燃料電池は、固体高分子型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、リン酸型燃料電池、アルカリ型燃料電池、溶融炭酸型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、のうちの何れであってもよい。また、二次電池は、バッテリの他、キャパシタを含む。さらに、アクチュエータは、電動モータ、ソレノイドを含む。キャパシタは、電気エネルギーを電極の表面に静電気の力で蓄える蓄電池である。制御部は、ドローンの作動負荷の変化を事前に予測して、電力消費部における必要電力を事前に判断する処理を行うことができる。制御部は、ドローンの作動負荷が変化してから、電力消費部における必要電力を判断する処理を行うこともできる。
【0078】
さらに、ドローンの制御部は、管理装置から取得した制御情報に基づいて、自律的に、上昇、巡航飛行、減速、加速、旋回、空中での静止、下降(降下)、着陸、停止等を行う構成である。また、管理者が管理装置の操作部を操作する都度、ドローンが上昇、巡航飛行、減速、加速、旋回、空中での静止、下降(降下)、着陸、停止等を行う構成でもよい。本開示において、制御部は、制御回路と定義することもできる。判断部は、判断回路と定義することもできる。切替部は、切替回路と定義することもできる。電力制御部は、電力制御回路と定義することも可能である。作業部は、作業装置または作業機構と定義することも可能である。本開示において、必要電力は、消費電力として定義することもできる。
【0079】
(具体例の効果)
本開示のドローン11によれば、制御部45が、電力消費部の必要電力が所定値以下であるか否かを判断する。そして、制御部45は、電力消費部の必要電力が水素燃料電池42の発生電力以下であると、切替部44のモードとして低負荷モードを選択する。制御部45は、電力消費部の必要電力が水素燃料電池42の発生電力を超えると、切替部44のモードとして高負荷モードを選択する。したがって、電力消費部の必要電力に応じて水素燃料電池42及び二次電池46の電力を利用することの可能なドローン11を提供することができる。
【0080】
また、制御部45が切替部44のモードとして低負荷モードを選択すると、水素燃料電池42の発生電力から、電力消費部の必要電力を差し引いた余剰電力が、二次電池46へ充電される。したがって、水素燃料電池42の発生電力を有効に活用できる。さらに、制御部45が、切替部44のモードとして高負荷モードを選択すると、電力消費部の必要電力から水素燃料電池42の発生電力を差し引いた不足電力が、二次電池46から電力消費部へ供給される。したがって、電力消費部における電力不足を抑制できる。
【0081】
さらに、飛行用電動モータ24の必要電力を、水素燃料電池42の発生電力及び二次電池46の電力で賄うことができる。したがって、ドローン11の揚力及び推進力の低下を抑制できる。
【0082】
さらに、ドローン11の揚力及び推進力を発生させない作業を行なう作業部を有し、電源部19から電力が供給されて作業部を作動させる作業用アクチュエータと、を有する。電源部19の電力は、作業用アクチュエータへ供給される。したがって、ドローン11の揚力及び推進力を発生させない作業部の機能が低下することを抑制できる。
【0083】
さらに、対象部を清掃する作業部を有し、電源部19から電力が供給されて作業部を作動させる第1電動モータ及び第2電動モータを有する。したがって、作業部が対象物を清掃する機能が低下することを抑制できる。
【0084】
さらに、ドローン11が地上へ着陸する場合に接地される複数の脚部80を有し、電源部19から脚部駆動用電動モータ81へ電力が供給されると、複数の脚部80を作動させることができる。したがって、ドローン11が地上の傾斜面へ着陸する場合に、姿勢を安定させることができる。
【0085】
さらに、ドローン1の作業部は、電源部19から電力が供給されて作動し、かつ、地上へ物体を散布する噴射ノズル72を有する。したがって、噴射ノズル72から地上へ物体を散布する作業を円滑に行うことができる。
【0086】
さらに、ドローン11の物体運搬部は、物体を運搬する。したがって、ドローン11は物体を運搬することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示は、電力消費部、燃料電池及び二次電池を有する燃料電池搭載ドローンとして利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
11…燃料電池搭載ドローン(ドローン)、18…本体部、19…電源部、21…清掃部、24…飛行用電動モータ、42…水素燃料電池、44…切替部、45…制御部、46…二次電池、52…清掃ローラ、53…キャタピラー、61,83…電動モータ、72…噴射ノズル、63…ソーラーパネル、70…物体散布部、80…脚部、81…脚部駆動用電動モータ
【手続補正書】
【提出日】2023-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローン本体に設けられた電力消費部と、
前記ドローン本体に設けられ、かつ、前記電力消費部に供給する電力を発生する燃料電池と、
前記ドローン本体に設けられて電力を蓄え、かつ、蓄えている電力を前記電力消費部へ供給する二次電池と、
を有する燃料電池搭載ドローンであって、
前記燃料電池の電力を前記電力消費部へ供給し、かつ、前記二次電池の電力を前記電力消費部へ供給しない第1モードと、前記燃料電池の電力を前記電力消費部へ供給し、かつ、前記二次電池の電力を前記電力消費部へ供給する第2モードと、を切り替えできる切替部と、
前記ドローン本体に設けられ、前記電力消費部の必要電力が所定値以下であるか否かを判断する判断部と、
前記電力消費部の必要電力が所定値以下であると前記切替部のモードとして前記第1モードを選択し、前記電力消費部の必要電力が所定値を超えると前記切替部のモードとして前記第2モードを選択する電力制御部と、
を有し、
前記ドローン本体に、
前記ドローン本体の揚力及び推進力を発生させない作業を行なう作業部と、
電力が供給されて前記作業部を作動させる作業用アクチュエータと、
が設けられ、
前記電力消費部は、前記作業部と前記作業用アクチュエータとを含み、
前記作業部は、
対象物に着陸された前記ドローン本体を前記対象物に沿って移動させるキャタピラーを有し、
前記電力制御部は、清掃中における掃除対象の表面の傾斜角度からドローン本体が掃除対象の表面を登っているか下降しているかに応じて、前記キャタピラーを駆動させるための必要電力を判断する、
燃料電池搭載ドローン。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記判断部が判断に用いる所定値は、前記燃料電池の発生電力であり、
前記電力制御部が、前記切替部のモードとして前記第1モードを選択すると、前記燃料電池の発生電力から、前記電力消費部の必要電力を差し引いた余剰電力が、前記二次電池へ充電される、燃料電池搭載ドローン。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記判断部が判断に用いる所定値は、前記燃料電池の発生電力であり、
前記電力制御部が、前記切替部のモードとして前記第2モードを選択すると、前記電力制御部の必要電力から前記燃料電池の発生電力を差し引いた不足電力が、前記二次電池から前記電力消費部へ供給される、燃料電池搭載ドローン。
【請求項4】
請求項1または2記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記ドローン本体に、
前記ドローン本体の揚力及び推進力を発生させるプロペラと、
電力が供給されて前記プロペラを回転させる飛行用電動モータと、
が設けられ、
前記電力消費部は、前記飛行用電動モータを含む、燃料電池搭載ドローン。
【請求項5】
請求項1記載の燃料電池搭載ドローンであって、
地上へ向けて、物体タンク部に収容された物体を噴射ノズルを介して噴射する物体散布部を有し、
前記電力制御部は、前記噴射ノズルが物体を噴射するか物体を噴射していないかに応じて必要電力を判断する、
燃料電池搭載ドローン。
【請求項6】
請求項1記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記電力制御部は、洗浄液タンク内の洗浄液量に応じて、前記キャタピラーを駆動させるための必要電力を判断する、
燃料電池搭載ドローン。
【請求項7】
請求項5記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記作業部は、
前記ドローン本体が地上へ着陸する場合に接地される複数の脚部と、
電力が供給されて前記複数の脚部を作動させる脚部駆動用電動モータと、
を有し、
前記作業用アクチュエータは、前記脚部駆動用電動モータを含む、燃料電池搭載ドローン。
【請求項8】
請求項5記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記作業部は、電力が供給されて作動し、かつ、地上へ物体を散布する噴射ノズルを有し、
前記作業用アクチュエータは、前記噴射ノズルを含む、燃料電池搭載ドローン。
【請求項9】
請求項4記載の燃料電池搭載ドローンであって、
前記ドローン本体に、前記ドローン本体の揚力及び推進力を発生させず、かつ、物体を運搬する物体運搬部が設けられている、燃料電池搭載ドローン。