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  • 特開-位置検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165127
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20241121BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01D5/245 R
G01H17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081016
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 文平
(72)【発明者】
【氏名】福井 憲之
【テーマコード(参考)】
2F077
2G064
【Fターム(参考)】
2F077AA01
2F077AA21
2F077CC09
2F077CC10
2F077NN02
2F077NN03
2F077NN21
2F077NN24
2F077PP14
2F077QQ01
2F077RR01
2G064AA13
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064CC43
(57)【要約】
【課題】回転軸の回転位置を検出する位置検出装置を用いて、回転軸の軸方向の振動を検出できるようにする。
【解決手段】位置検出装置は、位置を示すコードが付与された位置コード円板6、および、規則的なパターンを有する歯車7を含む被検出体1と、位置コード円板6との間の磁気抵抗変化を検出する位置センサ3と、歯車7との間の磁気抵抗変化を検出する歯車用センサ4を備える。位置コード円板6と歯車7は、回転軸に固定されている。位置センサ3は、回転軸の軸方向における位置コード円板6の厚みよりも広い範囲を検出範囲とし、歯車用センサ4は、回転軸の軸方向における歯車7の厚み以下の範囲を検出範囲とする。位置検出装置は、歯車用センサ4の検出信号に基づいて回転軸の回転の停止状態を判定して、回転軸の回転の停止状態において、位置センサ3の検出信号に基づいて回転軸の軸方向の振動成分を導出する振動成分導出手段を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材から構成されて位置を示すコードが付与された位置コード円板、および、磁性材から構成されて規則的なパターンを有する歯車、を含む被検出体と、
前記位置コード円板に対向して配置されて前記位置コード円板との間の磁気抵抗変化を検出する位置センサと、
前記歯車に対向して配置されて前記歯車との間の磁気抵抗変化を検出する歯車用センサと、を備える位置検出装置であって、
前記位置コード円板と前記歯車は、回転軸に固定されており、
前記位置センサは、前記回転軸の軸方向における前記位置コード円板の厚みよりも広い範囲を検出範囲とし、
前記歯車用センサは、前記回転軸の軸方向における前記歯車の厚み以下の範囲を検出範囲とし、
前記位置検出装置は、
前記歯車用センサの検出信号に基づいて前記回転軸の回転の停止状態を判定して、前記回転軸の回転の停止状態において、前記位置センサの検出信号に基づいて前記回転軸の軸方向の振動成分を導出する振動成分導出手段、を備える、
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出装置であって、
前記位置コード円板は、二値乱数列からなる不規則循環コードが付与された絶対位置符号円板である、
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の位置検出装置であって、
前記振動成分導出手段は、
前記回転軸の回転が停止状態である場合に、前記回転軸の軸方向の振動成分が有効であることを示し、そうではない場合に、前記回転軸の軸方向の振動成分が無効であることを示す信号を出力する、
ことを特徴とする位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工振動を抑制する機能を搭載した工作機械に用いる位置検出装置に関し、特に、工作機械の回転軸制御に用いる位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位置検出装置は、工作機械の旋盤主軸、マシニングセンタの工具主軸等の位置制御のために搭載される。位置検出装置は、回転軸の回転位置を検出する。位置検出装置は、回転軸の磁気回路を形成するための磁性体と、磁気センサを内蔵したセンサユニットを含んで構成されたものが知られている。
【0003】
工作機械は、加工時の加工振動が問題になることがある。その加工振動を自動抑制するシステムが知られている。このようなシステムは、一般的には、主軸に加速度検出装置が取り付けられている。加速度検出装置により検出される加速度データに基づいてNC(Numerically Control)装置側で主軸の回転速度や送り量が自動的に設定されることで、加工振動が抑制される。特許文献1には、工作機械に振動センサを設置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-118366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工作機械の加工振動を抑制するために、加速度検出装置が必要となっており、コストを増加させる要因となっている。そこで、加速度検出装置を省いて、回転軸の回転位置を検出する位置検出装置を用いて、工作機械の加工振動を検出できるようにすることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、回転軸の回転位置を検出する位置検出装置を用いて、回転軸の軸方向の振動を検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る位置検出装置は、磁性材から構成されて位置を示すコードが付与された位置コード円板、および、磁性材から構成されて規則的なパターンを有する歯車、を含む被検出体と、前記位置コード円板に対向して配置されて前記位置コード円板との間の磁気抵抗変化を検出する位置センサと、前記歯車に対向して配置されて前記歯車との間の磁気抵抗変化を検出する歯車用センサと、を備える位置検出装置であって、前記位置コード円板と前記歯車は、回転軸に固定されており、前記位置センサは、前記回転軸の軸方向における前記位置コード円板の厚みよりも広い範囲を検出範囲とし、前記歯車用センサは、前記回転軸の軸方向における前記歯車の厚み以下の範囲を検出範囲とし、前記位置検出装置は、前記歯車用センサの検出信号に基づいて前記回転軸の回転の停止状態を判定して、前記回転軸の回転の停止状態において、前記位置センサの検出信号に基づいて前記回転軸の軸方向の振動成分を導出する振動成分導出手段、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る位置検出装置において、前記位置コード円板は、二値乱数列からなる不規則循環コードが付与された絶対位置符号円板である、としてもよい。
【0009】
本発明に係る位置検出装置において、前記振動成分導出手段は、前記回転軸の回転が停止状態である場合に、前記回転軸の軸方向の振動成分が有効であることを示し、そうではない場合に、前記回転軸の軸方向の振動成分が無効であることを示す信号を出力する、としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転軸の回転位置を検出する位置検出装置により、回転軸の軸方向の振動を検出することができるので、その振動を検出するための専用の検出装置が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】位置検出装置の一例を示す概略構成図である。
図2】位置検出装置のギャップ方向と厚み方向からなる平面に対して垂直な方向から位置検出装置を見た図である。
図3】センサ装置の内部処理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、位置検出装置100の一例を示す概略構成図である。位置検出装置100は、アブソリュート型のエンコーダである。位置検出装置100は、回転軸の回転位置を検出する機能を有するとともに、回転軸の軸方向の振動を検出する機能を有する。位置検出装置100は、磁性体からなる被検出体1と、それに対向して配置されるセンサ装置2を備える。
【0014】
図2は、位置検出装置100のギャップ方向と厚み方向からなる平面に対して、垂直な方向から位置検出装置100を見た図である。被検出体1は、符号板6、中間部材8、及び検出歯車7を備える。符号板6は、二値乱数列からなる不規則循環コードが付与された絶対位置符号円板である。具体的には、符号板6は、循環する所定の0または1の二値乱数列からなる循環コードであって、二値の配列が全て異なる循環コード(不規則循環コード)に対応した乱数列パターンが付与されている。検出歯車7は、外周に周期的な凹凸が施されたものであり、例えば平歯車である。中間部材8は、符号板6と検出歯車7の間に位置している。符号板6と検出歯車7は、中間部材8を介して結合されている。符号板6、中間部材8、及び検出歯車7は、厚み方向に並ぶ構成となっている。
【0015】
工作機械の回転軸(不図示)は、被検出体1の内側に配置される。図2には、回転軸の中心5が示されている。符号板6、中間部材8、及び検出歯車7のそれぞれは、回転軸に固定される。なお、回転軸の軸方向は、位置検出装置100の厚み方向と同じである。符号板6と検出歯車7は、回転軸の軸方向に間隔をあけて配置されている。符号板6は、位置コード円板の一例である。
【0016】
センサ装置2は、絶対位置桁センサ3と高分解能桁センサ4を備える。絶対位置桁センサ3は、符号板6に対向して配置されて、符号板6との間の磁気抵抗変化を検出する。絶対位置桁センサ3は、磁気抵抗変化量を検出することで符号板6のパターンを読み取る。絶対位置桁センサ3は、励磁用コイルと信号検出用コイルを含む。なお、励磁用コイルに代えて永久磁石が用いられてもよい。絶対位置桁センサ3は、位置センサの一例である。
【0017】
高分解能桁センサ4は、検出歯車7に対向して配置されて、検出歯車7との間の磁気抵抗変化を検出する。高分解能桁センサ4は、磁気抵抗変化量を検出することで検出歯車7の外周の凹凸を検出する。高分解能桁センサ4は、励磁用コイルと信号検出用コイルを含む。なお、励磁用コイルに代えて永久磁石が用いられてもよい。高分解能桁センサ4は、歯車用セ
ンサの一例である。
【0018】
ここで、位置検出装置100の実施例を説明する。検出歯車7は、所定の基本ピッチ長を有する平歯車であり、外周に規則的に歯が並んでいる。符号板6は、外周に不規則な切り欠きを有しており、その切り欠きを以て、コードを二値化する。また、符号板6の1ビット長は、検出歯車7の基本ピッチ長と等しくなっており、連続する9ビット分のコードを読み取れば、同じコードが他に存在しないような不規則循環コードを付してある。
【0019】
センサ装置2は、機械側のフランジ等の非回転体に固定される。高分解能桁センサ4は、検出歯車7の凹凸部によって変化する磁束密度を検出する2個の信号検出用コイル(磁気抵抗素子でもよい)を備える。高分解能桁センサ4の2個の信号検出用コイルは、検出歯車7に対して、互いに直交する二相信号(90°位相差の2相正弦波信号)が得られるように配置される。すなわち、1個目を基準として、2個目は1/4ピッチ、測定軸方向にずらして配置される。高分解能桁センサ4は、励磁用コイル(永久磁石でもよい)を備える。励磁用コイルから発せられる磁束は、検出歯車7の凹凸の有無によって、その磁束密度が高い領域や、逆に低い領域を形成する。高分解能桁センサ4の2個の信号検出用コイルは、この磁束密度の高低を検出するしくみである。
【0020】
絶対位置桁センサ3は、符号板6の切り欠き部によって変化する磁束密度を検出する9個の信号検出用コイル(磁気抵抗素子でもよい)を備える。絶対位置桁センサ3の9個の信号検出用コイルは、符号板6の切り欠きの有無を二値化する信号が得られるように配置されている。すなわち、9個の信号検出用コイルはそれぞれ、1ピッチ長ずつ隔てて配置され、連続する9ビット分のコードを読み取る。絶対位置桁センサ3は、励磁用コイル(永久磁石でもよい)を備える。励磁用コイルから発せられる磁束は、符号板6の切り欠きの有無によって、その磁束密度が高い領域や、逆に低い領域を形成する。絶対位置桁センサ3の9個の信号検出用コイルは、この磁束密度の高低を検出するしくみである。
【0021】
図3は、センサ装置2の処理に関する機能ブロック図である。センサ装置2は、演算部9と振動検出部10を備える。演算部9は、回転軸の回転位置POSを検出する部分であり、演算部9の中の一部の信号が、振動検出(後述)のために用いられる。振動検出部10は、振動検出のための部分である。
【0022】
ここでは、上記の実施例の続きとして、回転軸の回転位置POSを検出する構成(演算部9)について説明する。演算部9は、増幅回路14-1,14-2と、アナログ/ディジタル変換器18-1,18-2と、位置算出器22を備える。また、演算部9は、増幅回路11-1~11-nと、アナログ/ディジタル変換器15-1~15-nと、比較器19-1~19-nを備える。
【0023】
上記の実施例における、高分解能桁センサ4の2個の信号検出用コイル(又は磁気抵抗素子)はそれぞれ、検出歯車7の凹凸部によって変化する磁束密度を検出して、検出信号として、VL(0),VL(1)を出力する。信号VL(0),VL(1)はそれぞれ、磁気抵抗レベル(変換して電圧レベル)であり、増幅回路14-1,14-2にて増幅されてAVL(0),AVL(1)となる。信号AVL(0),AVL(1)はそれぞれ、アナログ/ディジタル変換器18-1,18-2にてディジタル化されて、DVL(0),DVL(1)となる。そして、ディジタル信号である二相信号DVL(0),DVL(1)は、位置算出器22に送られる。位置算出器22において、二相信号DVL(0),DVL(1)はそれぞれ、予め記憶器(不図示)に格納されたオフセット補正値を除去される。そして、オフセット補正値を除去された二相信号は、正接信号化されて正接信号(Tan信号)となり、演算器(不図示)にて逆正接演算され、歯車の基本ピッチ内の絶対位置θpが取得される。
【0024】
上記の実施例における、絶対位置桁センサ3の9個の信号検出用コイル(又は磁気抵抗素子)はそれぞれ、符号板6の切り欠き部によって変化する磁束密度を検出して、検出信号VS(0)~VS(n)を出力する(なお、nは整数である。この実施例ではnは8となる。以下同じ)。検出信号VS(0)~VS(n)はそれぞれ、磁気抵抗レベル(変換して電圧レベル)であり、増幅回路11-1~11-nにて増幅されてAVS(0)~AVS(n)となる。信号AVS(0)~AVS(n)はそれぞれ、アナログ/ディジタル変換器15-1~15-nにてディジタル化されて、DVS(0)~DVS(n)となる。そして、ディジタル信号DVS(0)~DVS(n)は、予め記憶器(不図示)に格納された二値化判定のためのスレッショルドレベル(オフセット補正値)を減算され、正負二値化信号BS(0)~BS(n)となる。正負二値化信号BS(0)~BS(n)は、位置算出器22に送られる。
【0025】
位置算出器22において、正負二値化信号BS(0)~BS(n)は、被検出体1のデータサイズ(検出歯車7の歯数等)を示す値とともに、絶対位置化処理され、一回転を検出歯車7の歯数で分割したどの位置かを示すθaが取得される。そして、位置算出器22は、基本ピッチ内の絶対位置θp(高分解能桁センサ4の検出信号から取得)と、一回転を検出歯車7の歯数で分割した際のどの位置かを示すθa(絶対位置桁センサ3の検出信号から取得)とを桁合わせ(結合処理)し、一回転内の絶対位置POSを得る。位置検出装置100は、回転軸の回転位置POSを外部に出力する。
【0026】
以上が、位置検出装置100の実施例の説明である。なお、このような位置検出装置100における回転軸の回転位置POSの検出構成は、従来のアブソリュート型のエンコーダと同じ構成である。なお、アブソリュート型のエンコーダの詳細は、例えば出願人の特許文献である、特開平5-118874号公報、特開2012-7919号公報、等に開示されている。
【0027】
ここからは、主に、位置検出装置100における、回転軸の軸方向の振動検出を実現するための構成について説明する。
【0028】
図2に示すように、被検出体1の符号板6の厚み寸法は、絶対位置桁センサ3の厚み方向の検出領域に対して例えば0.2~0.3倍とする。言い換えれば、絶対位置桁センサ3は、回転軸の軸方向における符号板6の厚みよりも広い範囲を検出範囲とする。符号板6の厚みを絶対位置桁センサ3の検出領域に対して薄くすることにより、符号板6が厚み方向に振動したときに磁路の変化が生じて、絶対位置桁センサ3の検出信号が変化することになる。例えば、絶対位置桁センサ3の厚み方向の検出領域の中心に対して、符号板6が振動により厚み方向に移動するので、絶対位置桁センサ3の検出信号が変化することになる。絶対位置桁センサ3が符号板6の厚み方向(回転軸の軸方向)の振動によって変化する磁気抵抗を検出することで、回転軸の軸方向の振動成分(加速度)が検出される。
【0029】
検出歯車7の厚み寸法は、高分解能桁センサ4の検出領域に対して例えば1.0~1.2倍とする。言い換えれば、高分解能桁センサ4は、回転軸の軸方向における検出歯車7の厚み以下の範囲を検出範囲とする。検出歯車7の厚みを高分解能桁センサ4の検出領域に対して厚くすることにより、検出歯車7が厚み方向に振動したときに磁路の変化が生じ難いか、或いは生じなくなり、高分解能桁センサ4の検出信号が変化し難いか、或いは変化しないことになる。すなわち、検出歯車7が厚み方向に振動したとしても、高分解能桁センサ4の厚み方向の検出領域の全体に検出歯車7が存在し続けるように構成されるため、高分解能桁センサ4が検出する磁気抵抗が変化し難いか、或いは変化しないことになる。
【0030】
例えば、符号板6は、検出歯車7に比べて、厚み方向(回転軸の軸方向)の厚さが薄くなるように構成される。
【0031】
図3に示すように、センサ装置2は、振動成分導出部50を備える。振動成分導出部50は、演算部9と振動検出部10を備える。上記したように、演算部9は、回転軸の回転位置POSを検出する部分であり、演算部9の中の一部の信号が、振動検出のために用いられる。振動検出部10は、振動検出のための部分である。
【0032】
位置検出装置100(振動成分導出部50)は、絶対位置桁センサ3の検出信号VS(0)~VS(n)と高分解能桁センサ4の検出信号VL(0),VL(1)に基づいて、回転軸の軸方向の振動成分としての加速度データADを導出して、加速度データADを外部に出力する。なお、振動成分導出部50は、振動成分導出手段の一例である。
【0033】
振動成分導出部50は、例えばマイクロコンピュータを含んで構成される。振動成分導出部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、メモリと、入出力インターフェース(いずれも不図示)を備える。プロセッサが、メモリに予め記憶されたプログラム、データに従って処理を行うことで、振動成分導出部50の各種機能が実現される。なお、振動成分導出部50は、CPUに代えて、又はそれと伴にASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を用いて実現されてもよい。
【0034】
振動検出部10は、周波数解析器23と停止判定器24を備える。
【0035】
周波数解析器23は、符号板6のパターンを読み取る、絶対位置桁センサ3の複数の信号検出用コイル(又は磁気抵抗素子)のうちの1つの信号検出用コイルの検出値(磁気抵抗変化量)に基づいて、回転軸の軸方向の振動成分としての加速度データADを導出する。具体的には、周波数解析器23は、絶対位置桁センサ3の複数の検出信号VS(0)~VS(n)のうちの1つに関し(図3の例ではVS(0))、増幅されてディジタル変換された信号(図3の例ではDVS(0))をフーリエ解析することにより振幅と周波数を求めて、加速度データADとして出力する。
【0036】
停止判定器24は、回転軸の回転が停止していることを判定する部分である。停止判定器24は、回転軸の回転位置POSの値が変化しない場合に、回転軸の回転が停止状態にあると判定してよい。また、停止判定器24は、高分解能桁センサ4が検出する磁気抵抗変化量VL(0),VL(1)、又は、それらに基づいて算出される歯車の基本ピッチ内の絶対位置θpが変化しない時に、回転軸の回転が停止状態にあると判定してよい。高分解能桁センサ4に対する被検出体1(検出歯車7)の変位方向(回転方向)への変化が無い時には、高分解能桁センサ4の検出信号は変化しない。また、上記したように、高分解能桁センサ4に対して被検出体1(検出歯車7)が厚み方向に振動した場合であっても、高分解能桁センサ4の検出信号は、変化し難いか、或いは変化しない。よって、停止判定器24は、高分解能桁センサ4の検出信号に基づいて回転軸の回転の停止状態を判定することで、停止状態の誤判定を抑制することができる。
【0037】
停止判定器24は、周波数解析器23に対して指令OCを出力してもよい。指令OCは、回転軸が停止状態にある時に、周波数解析器23の動作指令(オン指令)を示し、回転軸が停止状態にない時(回転軸が回転状態である時)に、周波数解析器23の停止指令(オフ指令)を示す。そして、周波数解析器23は、指令OCを受信して、指令OCが動作指令(オン指令)を示す場合のみ、動作してもよい。
【0038】
なお、周波数解析器23は、指令OCにかかわらず、動作してもよい。停止判定器24は、回転軸の回転が停止状態である場合に、周波数解析器23が出力する加速度データADが有効であることを示し、回転軸が停止状態にない場合(回転軸が回転状態である場合)に、加速度データADが無効であることを示す信号(有効/無効信号と言う)を出力してもよい。そして、NC装置は、加速度データADと有効/無効信号を受け取って、有効/無効信号が有効を示す場合にのみ、加速度データADを利用するとよい。
【0039】
なお、被検出体1とセンサ装置2の形態は適宜、変更することができる。センサ装置2は、2つ以上のセンサを備え、1つのセンサ(上記の実施形態の絶対位置桁センサに相当)は、被検出体1の厚み方向の振動を検出可能に構成され、別の1つのセンサ(上記の実施形態の高分解能桁センサに相当)は、被検出体1の厚み方向の振動を検出しないように構成されるとよい。
【0040】
また、以上で説明した実施形態では、位置検出装置がアブソリュート型のエンコーダであったが、位置検出装置は、インクリメント型のエンコーダ(インクリメンタルエンコーダ)であってもよい。この場合には、上記した符号板6が、原点位置のみを付与した形状の位置コード円板に置き換わることになる。なお、インクリメント型のエンコーダの詳細は、例えば出願人の特許文献である、特開2010-156554号公報、特開2021-165706号公報、等に開示されている。
【0041】
1 被検出体、2 センサ装置、3 絶対位置桁センサ(位置センサ)、4 高分解能桁センサ(歯車用センサ)、5 回転軸の中心、6 符号板(位置コード円板)、7 検出歯車、8 中間部材、9 演算部、10 振動検出部、11-1~11-n,14-1,14-2 増幅回路、15-1~15-n,18-1,18-2 アナログ/ディジタル変換器、19-1~19-n 比較器、22 位置算出器、23 周波数解析器、24 停止判定器、50 振動成分導出部、100 位置検出装置。
図1
図2
図3