(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165131
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】点火コイル
(51)【国際特許分類】
F02P 13/00 20060101AFI20241121BHJP
F02P 15/00 20060101ALI20241121BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20241121BHJP
H01T 15/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F02P13/00 303D
F02P13/00 303B
F02P15/00 303A
F02P15/00 303E
F02P13/00 301C
F02F1/24 H
H01T15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081022
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 貴之
【テーマコード(参考)】
3G019
3G024
【Fターム(参考)】
3G019KA13
3G019KA23
3G019KB05
3G019KC09
3G024AA04
3G024DA01
3G024FA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】屈曲形状のプラグホールへ装着される際に、ジョイント部の挿入性を保持しつつ軸ずれを抑制し、組付性及び耐摩耗性の向上が可能な点火コイルを提供する。
【解決手段】点火コイルは、屈曲部を有するプラグホールに配置された点火プラグに先端側が装着され、屈曲部よりも内径の大きい基端入口部に配置されるコイル本体部に基端側が装着され、屈曲変形可能な筒状の弾性体からなるジョイント部を備える。ジョイント部には、屈曲部に対向する本体筒部の外周面に、軸線に沿って延在する複数の第1リブが設けられ、それよりも基端側に位置する基端筒部の外周面に、軸線Lに沿って延在する複数の第2リブが設けられる。軸線に沿った方向から見たときに、本体筒部の複数の第1リブの先端に外接する仮想外接円の径で表される第1リブ径の最大径は、基端筒部の複数の第2リブの先端を接続する仮想外接円の径で表される第2リブ径の最大径よりも小さい関係にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部(H1)を有するプラグホール(H)に配置された点火プラグ(P)に高電圧を供給する点火コイル(1)であって、
上記屈曲部よりも内径の大きい上記プラグホールの基端入口部(H2)に配置されるコイル本体部(11)と、
屈曲変形可能な筒状の弾性体からなり、上記コイル本体部に基端側が装着され、上記点火プラグに先端側が装着されるジョイント部(2)と、を備えており、
上記ジョイント部には、上記屈曲部に対向する部位を含む本体筒部(21)の外周面に、軸線(L)に沿って延在する複数の第1リブ(31)が設けられると共に、上記本体筒部よりも基端側に位置する基端筒部(22)の外周面に、上記軸線に沿って延在する複数の第2リブ(32)が設けられており、
上記軸線に沿った方向から見たときに、上記本体筒部の軸心を中心(c1)とすると共に複数の上記第1リブの先端に外接する仮想外接円(C1)の径で表される第1リブ径の最大径d1と、上記基端筒部の軸心を中心(c2)とすると共に複数の上記第2リブの先端に外接する仮想外接円(C2)の径で表される第2リブ径の最大径d2とは、d2>d1の関係にある、点火コイル。
【請求項2】
上記第1リブは、上記屈曲部に対向する部位を挟んで、その先端側及び基端側に連続的に配置される、請求項1に記載の点火コイル。
【請求項3】
上記第1リブは、先端側の端部において、上記第1リブ径が先端側へ向けて小さくなるテーパ部(311)を有する、請求項2に記載の点火コイル。
【請求項4】
上記第2リブは、上記基端入口部を含む基端側の端部に対向して、基端側から先端側へ連続的に配置される、請求項1に記載の点火コイル。
【請求項5】
上記第2リブは、先端側の端部において、上記第2リブ径が先端側へ向けて小さくなるテーパ部(321)を有する、請求項4に記載の点火コイル。
【請求項6】
上記第1リブ径の最大径d1と、上記屈曲部における上記プラグホールの内径である第1内径D1とは、D1>d1の関係にあり、上記第2リブ径の最大径d2と、上記基端入口部における上記プラグホールの内径である第2内径D2とは、D2>d2の関係にある、請求項1に記載の点火コイル。
【請求項7】
上記ジョイント部は、上記本体筒部よりも先端側に、上記点火プラグの頭部に嵌合されるストレート形状の先端筒部(23)を備えており、上記先端筒部の外径d3と、上記第1リブ径の最大径d1及び最小径d11とは、d1>d11≧d3の関係にある、請求項6に記載の点火コイル。
【請求項8】
上記ジョイント部は、上記本体筒部と上記基端筒部との間に、ストレート形状の中間筒部(24)を備えており、上記中間筒部の外径d4と、上記第2リブ径の最大径d2及び最小径d21とは、d2>d21≧d4の関係にある、請求項7に記載の点火コイル。
【請求項9】
上記先端筒部の外径d3と、上記中間筒部の外径d4とは、d4>d3の関係にある、請求項8に記載の点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の点火装置に用いられる点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に設けられる点火装置は、燃焼室に臨む点火プラグへ高電圧を印加するための点火コイルを備える。近年の高効率な内燃機関では、燃費効率の向上の観点から小型化が求められ、点火装置が設けられるシリンダヘッド等においても、内部構造の複雑化や組付部位の制約が大きくなっている。そのため、点火プラグが配置されるプラグホールを屈曲形状として、点火コイルの組付構造をコンパクトにすることが検討されている。
【0003】
その場合には、点火プラグに嵌合される点火コイルのジョイント部を、例えば、自由に屈曲可能なゴム等の一体成形品にて構成し、プラグホール内に屈曲させた状態で搭載することが求められる。その一例として、特許文献1には、ジョイント部となる筒状のプラグブーツを備え、絶縁性及び可撓性を有するプラグブーツに、プラグホールの屈曲部と対向する薄肉部を形成した内燃機関用点火コイル装置が開示されている。これにより、途中が屈曲した一定径のプラグホール内で、プラグブーツが点火プラグに挿入される際に、薄肉部が容易に屈曲するようにしている。さらに、プラグブーツの先端部に、径方向に突出するガード部を設けることで、軸心が容易に一致するようにして、挿入性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、屈曲したプラグホールへ点火装置を装着する際には、工具をプラグホール内に挿入する必要がある。そのため、実際には、特許文献1のようにプラグホール径を一定とすることは難しく、屈曲部よりも入口側におけるプラグホールの内径が、点火プラグ側より大きくなる。その場合に、ジョイント部の全体が弾性体であると、プラグ挿入時の圧縮力により、局部的な圧縮又はたわみが生じやすくなる。そのため、プラグホールの屈曲部とその先端側及び基端側のそれぞれにおいて、軸ずれを同時に抑制しながら、ジョイント部を装着することは容易でない。また、特許文献1のように薄肉部を有する形状では、例えば、軸ずれにより薄肉部と屈曲部が接触すると、機関搭載時の振動等により摩耗が生じて耐電圧が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、屈曲形状のプラグホールへ点火コイルが装着される際に、ジョイント部の挿入性を保持しつつ軸ずれを抑制して、組付性及び耐摩耗性の向上が可能な点火コイルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
屈曲部(H1)を有するプラグホール(H)に配置された点火プラグ(P)に高電圧を供給する点火コイル(1)であって、
上記屈曲部よりも内径の大きい上記プラグホールの基端入口部(H2)に配置されるコイル本体部(11)と、
屈曲変形可能な筒状の弾性体からなり、上記コイル本体部に基端側が装着され、上記点火プラグに先端側が装着されるジョイント部(2)と、を備えており、
上記ジョイント部には、上記屈曲部に対向する部位を含む本体筒部(21)の外周面に、軸線(L)に沿って延在する複数の第1リブ(31)が設けられると共に、上記本体筒部よりも基端側に位置する基端筒部(22)の外周面に、上記軸線に沿って延在する複数の第2リブ(32)が設けられており、
上記軸線に沿った方向から見たときに、上記本体筒部の軸心を中心(c1)とすると共に複数の上記第1リブの先端に外接する仮想外接円(C1)の径で表される第1リブ径の最大径d1と、上記基端筒部の軸心を中心(c2)とすると共に複数の上記第2リブの先端に外接する仮想外接円(C2)の径で表される第2リブ径の最大径d2とは、d2>d1の関係にある、点火コイルにある。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の点火コイルによれば、ジョイント部の本体筒部に設けられた第1リブと基端筒部に設けられた第2リブとが、ジョイント部の剛性を高める。また、軸線に沿って延在するリブ形状がガイドとなって、プラグホールへの挿入性を向上させる。したがって、屈曲するプラグホールの形状に沿って、本体筒部が軸ずれを抑制しながら屈曲変形することが可能となり、第1リブが屈曲部と対向する部位に同軸的に配置される。また、屈曲部よりも内径の大きい基端入口側においては、最大径のより大きい第2リブを設けた基端筒部が配置されて、軸ずれを抑制すると共に、振動等による変位を規制して、摩耗による特性低下を抑制することができる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、屈曲形状のプラグホールへ点火コイルが装着される際に、ジョイント部の挿入性を保持しつつ軸ずれを抑制して、組付性及び耐摩耗性の向上が可能な点火コイルを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1における、点火コイルを組み付けた状態の点火装置の一部断面正面図。
【
図2】実施形態1における、点火コイルの組付工程を示す点火装置の一部断面正面図。
【
図4】実施形態1における、点火コイルの横断面図で、
図3のI-I線矢視断面図及びII-II線矢視断面図。
【
図5】実施形態1における、点火コイルの横断面図で、
図3のIII-III線矢視断面図及びIV-IV線矢視断面図。
【
図6】実施形態1における、点火コイルの主要部の縦断面図。
【
図7】比較形態1における、点火コイルの組付工程を説明するための図。
【
図8】比較形態1における、点火コイルの組付工程を説明するための図。
【
図9】比較形態2における、点火コイルの組付状態を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
点火コイルに係る実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
図1に示すように、点火コイル1は、車両エンジン等の内燃機関に設けられる点火プラグPに電気的に接続されて、高電圧を供給するために用いられる。点火プラグPは、屈曲部H1を有するプラグホールHに配置されており、点火コイル1は、プラグホールHの基端入口部H2に配置されるコイル本体部11と、ジョイント部2とを備えている。
【0012】
シリンダヘッド等に設けられるプラグホールHは、途中に屈曲部H1を有する屈曲形状を有する。プラグホールHの基端入口部H2は、屈曲部H1よりも内径が大きくなっている。ジョイント部2は、屈曲変形可能な筒状の弾性体からなり、プラグホールHの内側において、コイル本体部11に基端側が装着され、点火プラグPに先端側が装着されている。
【0013】
ここで、基端側とは、
図2に示すように、屈曲するプラグホールHの延在方向に対して、ジョイント部2が挿入されて点火プラグPに装着される際の入口側であり、コイル本体部11が配置される側となる。その反対側を先端側といい、点火プラグPが配置される側となる。なお、屈曲するプラグホールHでは、屈曲部H1の基端側における軸線L2と、先端側における軸線L1とは一致しないため、軸線L1、L2に沿う方向であるプラグホールHの延在方向も変化することになる。
【0014】
図1に示す組付状態において、ジョイント部2は、屈曲部H1に対向する部位を含む本体筒部21と、それよりも基端側に位置する基端筒部22とを有する。
図3に示すように、本体筒部21の外周面には、軸線Lに沿って延在する複数の第1リブ31が設けられる。また、基端筒部22の外周面には、軸線Lに沿って延在する複数の第2リブ32が設けられる。第1リブ31及び第2リブ32は、軸線Lと直交する方向、すなわち、径方向Xの外方へ突出している。
【0015】
さらに、
図4に示すように、軸線Lに沿った方向から見たときに、本体筒部21における第1リブ径を、本体筒部21の軸心を中心c1とすると共に複数の第1リブ31の先端に外接する仮想外接円C1の径で表し、基端筒部22における第2リブ径を、基端筒部22の軸心を中心c2とすると共に複数の第2リブ32の先端に外接する仮想外接円C2の径で表すものとする。このとき、第1リブ径の最大径d1と、第2リブ径の最大径d2とは、d2>d1の関係にある。すなわち、本体筒部21における最大外径よりも、基端筒部22における最大外径が大きくなるように、ジョイント部2が構成されている。
【0016】
このような構成により、点火コイル1のジョイント部2が、屈曲形状のプラグホールHに挿入される際に、第1リブ31及び第2リブ32がガイドとなって、挿入性を向上させる。また、第1リブ31及び第2リブ32により剛性が高められて、軸ずれを抑制しながら組付可能となる。そして、屈曲部H1に対向するように、第1リブ31が配置され、屈曲部H1よりも内径が大きい入口側には、第1リブ31よりも最大外径が大きい第2リブ32が配置される。
【0017】
具体的には、複数の第1リブ31は、プラグホールHの屈曲部H1に対向する部位を挟んで、その先端側及び基端側に連続的に配置することができる。このとき、プラグホールHの屈曲形状に応じて、第1リブ31を含む本体筒部21が屈曲変形すると、第1リブ31が、屈曲部H1を跨ぐように配置されて、挿入時の軸ずれや振動等による変位を抑制する効果を高める。
【0018】
また、複数の第2リブ32は、基端入口部H2を含む基端側の端部に対向して、基端側から先端側へ連続的に配置することができる。これにより、ジョイント部2の基端側における軸方向の剛性を高め、挿入時の軸ずれや振動等による変位を抑制する効果を高める。また、ジョイント部2の挿入後に、コイル本体部11を組み付ける際にも、軸ずれを抑制して組付性を向上させる。
ジョイント部2のより具体的な形状については、後述する。
【0019】
次に、プラグホールHへの点火コイル1の組付構造について詳述する。
図2は、点火コイル1の組み付け途中で、ジョイント部2が屈曲する前の状態を示し、
図1は、点火コイル1の組み付け後の状態を示している。
図1、
図2において、点火コイル1のジョイント部2が収容されるプラグホールHは、屈曲部H1よりも先端側の先端半部H21と、屈曲部H1よりも基端側の基端半部H22とを有する。先端半部H21は、点火プラグPの装着部に至る略一定径の円形穴であり、基端半部H22は、屈曲部H1から基端側へ向けて徐々に拡径するテーパ穴形状を有する。屈曲部H1は、プラグホールHの延在方向における中間位置に設けられており、図示する位置より先端側であっても基端側であってもよい。
【0020】
プラグホールHは、エンジンの気筒毎にシリンダヘッドE1の所定位置に設けられ、先端半部H21の軸線L1は、基端半部H22の軸線L2に対して傾斜している。軸線L2は、基端半部H22が開口するシリンダヘッドE1の第1面E11と直交する方向に延びている。屈曲部H1における屈曲角度は、軸線L2に対する軸線L1の傾斜角度θで表され(
図1参照)、ここでは、基端半部H22のテーパ角度と同じになっている。すなわち、図示する断面の左半部においては、先端半部H21の内周面から基端半部H22の内周面は屈曲せずに連続し、反対側の右半部において、屈曲部H1が形成される。
【0021】
このとき、プラグホールHの先端半部H21における第1内径D1と、基端半部H22の基端側に開口する基端入口部H2における第2内径D2とは、D2>D1の関係にある(
図2参照)。そのため、ジョイント部2には、屈曲部H1を跨いで配置される本体筒部21と、それよりも基端側の基端筒部22とが設けられ、それぞれに、第1リブ31、第2リブ32が設けられる。本体筒部21は、屈曲部H1を挟んで連続する先端半部H21の一部と基端半部H22の一部に対向して配置され、基端筒部22は、基端入口部H2を含む基端半部H22の一部に対向して配置される。
【0022】
図1において、点火プラグPは、先端半部H21に続く先端孔H3を閉鎖するように配置される。先端孔H3は、先端半部H21よりも小径の略一定径の円形穴であり、点火プラグPの先端は、図示しない燃焼室に臨むように配置される。点火プラグPは、絶縁碍子P1から基端側に突出する頭部端子P2と(
図2参照)、絶縁碍子P1を内側に保持するハウジングP3と、絶縁碍子P2から先端側に突出する中心電極P4と、中心電極P4に対向する接地電極P5とを有する。点火プラグPは、ハウジングP3の外周面に取付ネジ部が形成され、その基端側に、工具を係合するための六角部が形成されて、プラグホールHに締め付け固定されるようになっている。
【0023】
図3~
図5において、ジョイント部2は、全体がゴム等の絶縁性を有する弾性部材からなる、筒状の一体成型品であり、プラグホールHの形状に応じて自由に弾性変形し、屈曲した状態で保持可能に構成されている。ジョイント部2は、本体筒部21の先端側に、点火プラグPの絶縁碍子P1の頭部側に嵌合される、ストレート形状の先端筒部23を有し、本体筒部21と基端筒部22との間に、ストレート形状の中間筒部24を有している。先端筒部23及び中間筒部24は、外周面がリブを有しない平坦な筒面で、略一定の外径を有する形状となっており、リブを有する部位よりも肉厚が薄く剛性が低くなることで、弾性変形しやすくなっている。先端筒部23の外径d3と、中間筒部24の外径d4とは、d4>d3の関係にある(
図5参照)。
【0024】
図2に示すように、ジョイント部2を軸方向に貫通する筒孔20には、コイル本体部11と点火プラグPとを電気的に接続する導電部材4が収容される。導電部材4は、ここでは、軸方向に弾性変形するスプリングからなる。導電部材4の先端は、先端筒部23の筒内に位置し、先端筒部23が、絶縁碍子P1の基端側から外挿されることにより、導電部材4が頭部端子P2に当接するようになっている。先端筒部23の軸方向長は、点火プラグPの頭部へ挿入される際の圧縮変形量等を考慮して、所望の嵌合寸法が得られるように、適宜設定することができる。
【0025】
図4に示すように、ジョイント部2の本体筒部21には、外周面の複数箇所から、径方向Xの外方に突出する凸条形状の複数の第1リブ31が配置される。複数の第1リブ31は、ここでは、外周面の8数箇所に設けられて、それぞれ、概略台形の断面形状を有して放射状に突出し、全体が歯車状の外形を有している。これら複数の第1リブ31は、それぞれ、ジョイント部2の軸線Lに沿って互いに平行に延び、本体筒部21の基端側から先端側まで、すなわち、中間筒部24の先端位置から先端筒部23の基端位置までの全長にわたって形成されている(
図3参照)。
【0026】
図3に示すように、複数の第1リブ31は、先端側の端部に、先端側へ向けて下り傾斜するテーパ部311を有する。このとき、本体筒部21の先端側の端部は、
図4に示す仮想外接円C1の径である第1リブ径が、先端側へ向けて徐々に小さくなる。先端側の端部を除く本体筒部21において、第1リブ径は略一定であり、最大径d1となる。テーパ部311の先端は、先端筒部23に接続する。その場合には、第1リブ径の最小径d11は、
図5に示す先端筒部23の外径d3と同じかそれよりも大きくなり、d1>d11≧d3の関係にある。テーパ部311が形成される先端側の端部においては、基端側ほど、第1リブ径が大きくなり、最大径d1に近づく。
【0027】
このように、本体筒部21の複数の第1リブ31が、先端側の端部にテーパ部311を有することにより、全体として先細りのテーパ形状となり、挿入性をより向上させることができる。
【0028】
なお、本体筒部21は、基端側において、第1リブ径を略一定の最大径d1としたまま、略一定径の中間筒部24に接続する。その場合には、
図5に示す中間筒部24の外径d4は、第1リブ径の最大径d1と同じかそれよりも大きくなり、先端筒部23の外径d3よりも大きい(すなわち、d4≧d1>d11≧d3)。このような関係となるよう、中間筒部24側の端部において、本体筒部21は、周方向に隣り合う複数の第1リブ31の間、すなわち、第1リブ31が形成されない部位が、基端側へ向けて徐々に肉厚となり、径方向の外側に突出するように形成されている。これにより、中間筒部24側の端部において、基端側ほど剛性が高くなり、第1リブ31の突出高さは相対的に低くなる。
【0029】
複数の第1リブ31は、本体筒部21の外周面において、周方向に略等間隔となるように均等配置されていることが望ましい。複数の第1リブ31の突出端は、径方向Xの外方に配置されるプラグホールHの内周面と、隙間を有して対向している。隙間が大きいほど挿入性は向上するが、軸ずれのおそれがあるので、好適には、屈曲部H1の周辺部とその先端側において、その内周面と第1リブ31とが、挿入性を損なわない範囲のわずかな隙間で近接配置されるのがよい。このとき、先端半部H21における第1内径D1と(
図2参照)、第1リブ径の最大径d1は(
図4参照)、D1>d1の関係にある。
【0030】
第1リブ31が配置される本体筒部21の軸方向長は、必ずしも限定されず、プラグホールHにおける屈曲部H1の位置に応じて、適宜設定することができる。具体的には、点火プラグPに装着される先端筒部23の長さ、基端筒部22の長さ等を考慮して、第1リブ31の基端位置が、例えば、ジョイント部2の先端(すなわち、先端筒部23の先端)位置から、30%以上80%以下の範囲の位置となるように設定することができる。好適には、第1リブ31の基端位置が、屈曲部H1よりも基端側となるように、上記範囲において第1リブ31の軸方向長がより長くなるように設定すると、ジョイント部2の剛性力を向上させるために望ましい。なお、一般に、ジョイント部2の基端側にはシール部25が一体的に設けられており、その場合には、ジョイント部2の長さ(以下、適宜、ジョイント長さと称する)とは、シール部25を含む長さ(すなわち、先端筒部23の先端位置からシール部25の基端位置までの軸方向長)をいう。シール部25については、後述する。
【0031】
第1リブ31の数は、必ずしも限定されないが、プラグホールHへ挿入する際のガイドとして挿入性を向上させる観点から、例えば、外周面の3箇所ないしそれ以上の箇所に形成されていればよい。好適には、外周面の4箇所以上10箇所以下の範囲において、本体筒部21の基端側又は先端側の外径や、対向するプラグホールHの内径等に応じて、所望の挿入性や剛性が得られるように、適宜設定することができる。第1リブ31の幅や突出高さも同様にして、適宜設定することができる。
【0032】
図6に示すように、プラグホールHの基端側において、ジョイント部2は、コイル本体部11から突出する高圧タワー部12に嵌合している。高圧タワー部12は、高電圧端子13と抵抗体131とを内側に保持しており、ジョイント部2の基端筒部22が、高圧タワー部12の先端側から外挿されることにより、高圧タワー部12が筒孔20内に挿入され、導電部材4の基端が、抵抗体131に当接するようになっている。これにより、抵抗体131を介して高電圧端子13と導電部材4とが電気的に接続される。
【0033】
コイル本体部11は、高圧タワー部12の基端側に配置される絶縁性のコイルケース14を備え、コイルケース14内に、同心状に配設された一次コイル151及び二次コイル152と、その内側に配置された中心鉄心161、外周側に配置された外周鉄心162とを収容している。これにより、二次コイル152にて発生する高電圧を、高電圧端子13から出力し、導電部材4を中継して、点火プラグPへ印加可能となっている。
【0034】
図4に示すように、ジョイント部2の基端筒部22には、外周面の複数箇所から径方向Xの外方に突出する複数の第2リブ32が配置される。複数の第2リブ32は、ここでは、外周面の8数箇所に設けられて、それぞれ、概略台形の断面形状を有して放射状に突出し、全体が歯車状の外形を有している。これら複数の第2リブ32は、それぞれ、ジョイント部2の軸線Lに沿って互いに平行に延び、基端筒部22の基端側から先端側、すなわち、中間筒部24の基端位置までの全長にわたって形成されている。
【0035】
図3に示すように、複数の第2リブ32は、先端側の端部に、先端側へ向けて下り傾斜するテーパ部321を有する。このとき、基端筒部22の先端側の端部は、上述した仮想外接円C2の径である第2リブ径が、先端側へ向けて徐々に小さくなる。先端側の端部を除く基端筒部22においても、複数の第2リブ32は、緩やかな傾斜を有しており、第2リブ径は、基端筒部22の基端側の端部において最大径d2となる。具体的には、プラグホールHの基端側の内周面に対して、基端筒部22が面で接触するように、基端半部H22のテーパ角度と同等の傾斜を有していることが望ましい。テーパ部321における傾斜は、その基端側の基端筒部22よりも大きくなり、テーパ部321の先端は、中間筒部24に接続する。その場合には、第2リブ径の最小径d21は、
図5に示す中間筒部24の外径d4と同じかそれよりも大きくなり、d2>d21≧d4の関係にある。テーパ部321が形成される先端側の端部においては、基端側ほど、第2リブ径が大きくなり、最大径d2に近づく。
【0036】
このように、複数の第2リブ32が、先端側にテーパ部321を有することにより、全体として先細り状のテーパ部となり、挿入性をより向上させることができる。
【0037】
複数の第2リブ32は、基端筒部22の外周面において、周方向に略等間隔となるように均等配置されていることが望ましい。複数の第2リブ32の突出端は、径方向Xの外方に配置されるプラグホールHの内周面と、隙間を有して対向している。隙間が大きいほど挿入性は向上するが、軸ずれのおそれがあるので、好適には、基端半部H22の入口側の内周面と第2リブ32とが、挿入性を損なわない範囲のわずかな隙間で近接配置されるのがよい。このとき、基端入口部H2における第2内径D2と、第2リブ径の最大径d2は、D2>d2(>D1>d4≧d1>d11≧d3)の関係にある。
【0038】
第2リブ32が配置される基端筒部22の軸方向長は、必ずしも限定されないが、基端筒部22の軸方向長よりも、屈曲部H1を跨ぐ第1リブ31の軸方向長が長くなるように、シール部25を含めたジョイント長さに応じて設定されることが望ましい。具体的には、プラグホールHの基端入口部H2に挿入される第2リブ32の先端位置が、例えば、ジョイント部2の基端(すなわち、シール部25の基端)位置から、1%以上20%以下の範囲の位置となるようにし、プラグホールHにおける基端半部H22の入口側における軸合わせの効果が得られるように、先端側の第1リブ31の配置等に応じて設定することができる。好適には、第2リブ32の先端位置を、ジョイント部2の基端から、5%以上の位置とし、第1リブ31の長さが確保される範囲で、適宜設定することが望ましい。これにより、基端入口部H2近傍のプラグホールHの内周面に対し、面接触する長さを確保して、リブとしての機能を高めることができる。
【0039】
第2リブ32の数は、必ずしも限定されないが、プラグホールHへ挿入する際のガイドとして挿入性を向上させる観点から、例えば、外周面の3箇所ないしそれ以上の箇所に形成されていればよい。好適には、外周面の4箇所以上10箇所以下の範囲において、基端筒部22が配置される基端半部H2の形状や、対向する基端入口部H2の内径等に応じて、所望の挿入性や剛性が得られるように、適宜設定することができる。第2リブ32の幅や突出高さも同様にして、適宜設定することができる。
【0040】
図1、
図2において、プラグホールHの基端側には、基端入口部H2とコイル本体部11との間に、シール部25が配置される。シール部25はゴム製であり、ジョイント部2の基端筒部22の基端側に一体的に設けられて、ジョイント部2の一部をなしている。その場合には、基端筒部22の基端から、径方向Xの外方へフランジ状に突出して、プラグホールHの基端入口部H2を覆うように、シール部25を形成することができる。基端入口部H2は、プラグホールHの基端が開口するシリンダヘッドE1の第1面E11に、環状に突出する形状を有し、シール部25を係止する係止部として機能する。シール部25は、断面L字状に屈曲する突出端が、基端入口部H2に係止されることで、プラグホールHの基端開口を封止することができる。
【0041】
コイル本体部11には、コイルケース14の側方から突出する取付フランジ部141が設けられる。取付フランジ部141には、ボルト挿通用の貫通穴142が設けられ、対向するシリンダヘッドE1の第1面E11には、ネジ穴E13が形成された支持台部E12が突設されている。この構成により、取付フランジ部141を支持台部E12上に配置して、図示しないボルトを締結することにより、シール部25を介してコイル本体部11をプラグホールHの基端側に固定し、プラグホールHをシール部25により気密的に封止することができる。
【0042】
なお、点火コイル1のプラグホールHへの組み付けは、例えば、次のようにして行う。まず、
図2に示すように、プラグホールHの基端入口部H2から、コイル本体部11に基端側が嵌合されたジョイント部2を、点火プラグPが装着されたプラグホールHの先端側へ向けて挿入する。ジョイント部2は、本体筒部21に設けられた第1リブ31をガイドとして、プラグホールHの先端半部H21における軸線L1と同軸的に挿入される。また、第1リブ31の先端部にテーパ部311が設けられるので、第1リブ31の引っ掛かりが防止される。その場合には、第1リブ径の最大径d1と、先端半部H21の内径D1との隙間を小さくしても、挿入力を増加させることがなく、また、剛性が向上することにより、軸合わせが容易となる。これにより、ジョイント部2の先端筒部23を、点火プラグPに同軸的に外挿することができる。
【0043】
次いで、プラグホールHの屈曲部H1において、屈曲形状に沿うように、ジョイント部2の本体筒部21を屈曲させながら、プラグホールHの先端側へ、さらに挿入する。これにより、ジョイント部2の先端側においては、先端筒部23を点火プラグPと同軸に保ちつつ、屈曲部H1に対向する部位よりも基端側において、第1リブ31の軸線Lが、基端半部H22の軸線L2と同軸となるように、屈曲変形させることができる。そして、プラグホールHの基端側において、第2リブ32をガイドとして、ジョイント部2の基端筒部22が、基端入口部H2の内側に装着される。その場合も、第2リブ32の先端部に設けられたテーパ部321により、挿入性が向上し、第2リブ径の最大径d2と、基端半部H22の内径D2との隙間を小さくして、同軸位置に規制することができる。
【0044】
このとき、
図7に比較形態1として示すように、ジョイント部2が第2リブ32を有しておらず、屈曲部H1に対応する部位から基端まで一定径であると、プラグホールHの屈曲形状に沿ってジョイント部2を屈曲させながら(例えば、
図7中に矢印で示す方向)、基端開口縁部に組み付ける際の軸合わせが容易でない。また、
図8に示すように、基端入口部H2の内径D2とジョイント部2の外径との隙間が大きくなる。その場合には、コイル本体部11の取付フランジ部141に、取付ボルトBを締め付け固定する際に、回転方向の力が作用して(例えば、
図8中に矢印で示す方向)、ジョイント部2が軸ずれを生じやすくなる。それに伴い、コイル本体部11のずれを抑制するために、回り止め等を設けることが必要となる。
【0045】
さらに、
図9に比較形態2として示すように、ジョイント部2の一部が薄肉となる構成では、屈曲形状に沿って変形しやすくなるが、屈曲部H1に接触すると、接触部(例えば、
図9中に示すA部)が摩耗するおそれがある。例えば、点火コイル1がエンジンに搭載された状態で、振動等を受けて接触部が屈曲部H1に接触した状態で変位すると、摩耗により徐々に肉厚が薄くなり、耐電圧の低下につながるおそれがある。
【0046】
これに対して、本形態の構成を有するジョイント部2は、屈曲部H1に対向する第1リブ31と、基端入口部H2に対向する第2リブ32を備えており、ジョイント部2の全長において軸ずれを抑制することができる。また、第2リブ32が基端入口部H2に配置されることにより、ジョイント部2を同軸に規制して、組み付けの際の回り止めを不要とすることができる。
【0047】
さらに、第1リブ31及び第2リブ32により、剛性が向上しているので、第1リブ31が屈曲部H1に接触しても、振動等による変位が抑制される。また、変位が生じたとしても、軸方向に延びる第1リブ31にのみ当接することになる。そのため、本体筒部21の本体部分において、摩耗による肉厚の減少が生じることはなく、耐電圧の低下が防止される。
【0048】
(その他の実施形態)
上記実施形態1では、ジョイント部2の内側に配置される導電部材4をスプリングとして、高圧タワー部12の抵抗体131を介して高電圧端子13と電気的に接続する構成としたが、ジョイント部2と共に屈曲変形可能な導電性の部材で構成されていればよい。また、上記実施形態1では、点火コイルを車両エンジンへの適用例として説明したが、コージェネレーションシステム等の内燃機関に用いられるものであってもよい。
なお、実施形態1以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0049】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、点火コイルのコイル本体部の構成や、ジョイント部との連結構造等は、種々変更することができる。
本発明の特徴を以下の通り示す。
[1]屈曲部(H1)を有するプラグホール(H)に配置された点火プラグ(P)に高電圧を供給する点火コイル(1)であって、
上記屈曲部よりも内径の大きい上記プラグホールの基端入口部(H2)に配置されるコイル本体部(11)と、
屈曲変形可能な筒状の弾性体からなり、上記コイル本体部に基端側が装着され、上記点火プラグに先端側が装着されるジョイント部(2)と、を備えており、
上記ジョイント部には、上記屈曲部に対向する部位を含む本体筒部(21)の外周面に、軸線(L)に沿って延在する複数の第1リブ(31)が設けられると共に、上記本体筒部よりも基端側に位置する基端筒部(22)の外周面に、上記軸線に沿って延在する複数の第2リブ(32)が設けられており、
上記軸線に沿った方向から見たときに、上記本体筒部の軸心を中心(c1)とすると共に複数の上記第1リブの先端に外接する仮想外接円(C1)の径で表される第1リブ径の最大径d1と、上記基端筒部の軸心を中心(c2)とすると共に複数の上記第2リブの先端に外接する仮想外接円(C2)の径で表される第2リブ径の最大径d2とは、d2>d1の関係にある、点火コイル。
[2]上記第1リブは、上記屈曲部に対向する部位を挟んで、その先端側及び基端側に連続的に配置される、[1]に記載の点火コイル。
[3]上記第1リブは、先端側の端部において、上記第1リブ径が先端側へ向けて小さくなるテーパ部(311)を有する、[1]又は[2]に記載の点火コイル。
[4]上記第2リブは、上記基端入口部を含む基端側の端部に対向して、基端側から先端側へ連続的に配置される、[1]~[3]のいずれか1つに記載の点火コイル。
[5]上記第2リブは、先端側の端部において、上記第2リブ径が先端側へ向けて小さくなるテーパ部(321)を有する、[1]~[4]のいずれか1つに記載の点火コイル。
[6]上記第1リブ径の最大径d1と、上記屈曲部における上記プラグホールの内径である第1内径D1とは、D1>d1の関係にあり、上記第2リブ径の最大径d2と、上記基端入口部における上記プラグホールの内径である第2内径D2とは、D2>d2の関係にある、[1]~[5]のいずれか1つに記載の点火コイル。
[7]上記ジョイント部は、上記本体筒部よりも先端側に、上記点火プラグの頭部に嵌合されるストレート形状の先端筒部(23)を備えており、上記先端筒部の外径d3と、上記第1リブ径の最大径d1及び最小径d11とは、d1>d11≧d3の関係にある、[1]~[6]のいずれか1つに記載の点火コイル。
[8]上記ジョイント部は、上記本体筒部と上記基端筒部との間に、ストレート形状の中間筒部(24)を備えており、上記中間筒部の外径d4と、上記第2リブ径の最大径d2及び最小径d21とは、d2>d21≧d4の関係にある、[7]に記載の点火コイル。
[9]上記先端筒部の外径d3と、上記中間筒部の外径d4とは、d4>d3の関係にある、[8]に記載の点火コイル。
【符号の説明】
【0050】
1 点火コイル
11 コイル本体部
2 ジョイント部
21 本体筒部
22 基端筒部
23 先端筒部
24 中間筒部
31 第1リブ
32 第2リブ
311、321 テーパ部
H プラグホール
H1 屈曲部