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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165136
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/508 20060101AFI20241121BHJP
   F16F 9/348 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F16F9/508
F16F9/348
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081036
(22)【出願日】2023-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069EE04
3J069EE28
3J069EE31
3J069EE64
(57)【要約】
【課題】複筒型であってもピストン速度が微低速域における減衰力特性を良好にでき車両における乗心地を向上し得る緩衝器を提供する。
【解決手段】緩衝器Dは、シリンダ1と、ピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ1との間にリザーバRを形成する外筒4と、伸側メインバルブ7と、圧側室R2とリザーバRとの間に直列に設けられる圧側メインバルブ11と圧側サブバルブ13と、リザーバRと圧側室R2との間に直列に設けられる伸側サブバルブ12と吸込チェックバルブ14とを備え、伸長作動時におけるピストン速度が微低速域では伸側サブバルブ12のみにより減衰力を発生し、収縮作動時におけるピストン速度が微低速域では圧側サブバルブ13のみにより減衰力を発生する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結されるとともに前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されて前記シリンダ内を液体で満たされる伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記シリンダの外周を覆って前記シリンダとの間にリザーバを形成する外筒と、
前記伸側室から前記圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側メインバルブと、
前記圧側室と前記リザーバとの間に直列に設けられて前記圧側室から前記リザーバへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側メインバルブと圧側サブバルブと、
前記リザーバと前記圧側室との間に設けられて前記リザーバから前記圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側サブバルブと、
前記リザーバと前記圧側室との間に前記伸側サブバルブと直列に設けられて前記リザーバから前記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェックバルブとを備え、
伸長作動時におけるピストン速度が微低速域では前記伸側サブバルブのみにより減衰力を発生し、
収縮作動時におけるピストン速度が微低速域では前記圧側サブバルブのみにより減衰力を発生する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
第1隔壁と前記第1隔壁との間に中間室を形成する第2隔壁とを有して、前記圧側室と前記リザーバとを区画する隔壁部材を備え、
前記第1隔壁は、前記圧側室と前記リザーバの一方と前記中間室とを連通する第1伸側ポートと第1圧側ポートとを有し、
前記第2隔壁は、前記圧側室と前記リザーバの他方と前記中間室とを連通する第2伸側ポートと第2圧側ポートとを有し、
前記伸側サブバルブおよび前記圧側サブバルブは、前記第1隔壁に設けられ、
前記圧側メインバルブと前記吸込チェックバルブは、前記第2隔壁に設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記伸側サブバルブは、
環状で全体が前記第1隔壁に対して遠近可能であって前記第1隔壁のピストン側端に当接すると前記第1伸側ポートを隙間なく閉塞する伸側弁体と、
前記伸側弁体を前記第1隔壁に着座させる方向へ付勢する伸側ばねとを有し、
前記圧側サブバルブは、
環状で全体が前記第1隔壁に対して遠近可能であって前記第1隔壁の反ピストン側端に当接すると前記第1圧側ポートを隙間なく閉塞する圧側弁体と、
前記圧側サブバルブを前記第1隔壁に着座させる方向へ付勢する圧側ばねとを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記伸側メインバルブは、環状のリーフバルブであって、前記伸側弁体の内径は、前記伸側メインバルブの内径よりも小径であるか、または、前記圧側メインバルブは、環状のリーフバルブであって、前記圧側弁体の内径は、前記圧側メインバルブの内径よりも小径である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、車両における乗心地を向上する目的で、車両における車体と車輪との間に介装されて使用され、伸縮時に発揮する減衰力で車体および車輪の振動を抑制する。
【0003】
このような緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内の圧側室の下方に気室を区画するフリーピストンと、ピストンに設けられて伸側室と圧側室とを連通する減衰通路と、減衰通路に設けた減衰バルブとを備えている。
【0004】
近年、車両用の緩衝器には、車両における乗心地の向上のため、伸縮速度が低速よりも低い微低速域では減衰係数を高くし減衰力を伸縮の行程の切り換わりに対して速やかに立ち上げ、低速域では減衰係数を微低速域よりも小さくし、さらに、低速を超える中高速域では伸縮速度に比例するが低速域よりも減衰係数が小さくさせる減衰力特性の発揮が要望されている。
【0005】
このような要望に応えるために、減衰バルブは、環状であって内周側が固定されて外周側の撓みが許容されるリーフバルブと、環状であってリーフバルブの外周に非接触で対向する環状の対向座部と対向座部の内周側にポートとを有する弁座部材を備えており、伸側室と圧側室とを行き交う作動油の流れに抵抗を与える。
【0006】
このように構成された減衰バルブでは、緩衝器の伸縮速度が微低速域にある場合、リーフバルブが然程撓まず対向座部との間の流路面積を極小さくするように制限するので、伸縮速度に応じて急激に立ち上がる減衰力特性が得られ、車両に適する減衰力特性を実現できる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-183918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の減衰バルブは、リーフバルブと対向座部とを備えることにより緩衝器が微低速で伸縮する場合の減衰力特性を良好にし得るが、シリンダ径が小さな複筒型の緩衝器に利用しようとする場合、当然、対向座部の内径が小さくなるが、強度上の問題からピストンロッドのリーフバルブが装着される部位の外径を小さくできず、リーフバルブの内周を支持する間座の外径も小さくできないので、リーフバルブの内外径差が小さくなってしまう。
【0009】
リーフバルブの内外径差が小さくなると、リーフバルブが撓んで対向座部から軸方向に離間した際に流路面積を大きく確保するためリーフバルブの撓み量を大きくする必要があるが、そうすると、リーフバルブに大きな応力が作用してリーフバルブが疲労してしまうので、複筒型の緩衝器に従来の減衰バルブを適用して微低速域の減衰力特性を向上させるのは難しい。
【0010】
そこで、複筒型であってもピストン速度が微低速域における減衰力特性を良好にでき車両における乗心地を向上し得る緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した目的を解決するために、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されるとともにシリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ内を液体で満たされる伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダの外周を覆ってシリンダとの間にリザーバを形成する外筒と、伸側室から圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側メインバルブと、圧側室とリザーバとの間に直列に設けられて圧側室からリザーバへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側メインバルブと圧側サブバルブと、リザーバと圧側室との間に設けられてリザーバから圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側サブバルブと、リザーバと圧側室との間に伸側サブバルブと直列に設けられてリザーバから圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェックバルブとを備え、伸長作動時におけるピストン速度が微低速域では伸側サブバルブのみにより減衰力を発生し、収縮作動時におけるピストン速度が微低速域では圧側サブバルブのみにより減衰力を発生することを特徴とする。
【0012】
このように構成された緩衝器では、ピストン速度が微低速域にある場合に、圧側室とリザーバとの間に設けられた伸側サブバルブ或いは圧側サブバルブによって減衰力を発生でき、伸側サブバルブと圧側サブバルブとをピストンロッドに設けずに済み、伸側サブバルブと圧側サブバルブの開弁時の流路面積を大きくできる。
【0013】
さらに、緩衝器は、第1隔壁と第1隔壁との間に中間室を形成する第2隔壁とを有して、圧側室とリザーバとを区画する隔壁部材を備え、第1隔壁は、圧側室とリザーバの一方と中間室とを連通する第1伸側ポートと第1圧側ポートとを有し、第2隔壁は、圧側室とリザーバの他方と中間室とを連通する第2伸側ポートと第2圧側ポートとを有し、伸側サブバルブおよび圧側サブバルブは、第1隔壁に設けられ、圧側メインバルブと吸込チェックバルブは、第2隔壁に設けられてもよい。このように構成された緩衝器によれば、圧側メインバルブ、伸側サブバルブ、圧側サブバルブおよび吸込チェックバルブを容易に設置でき、組立性が向上する。
【0014】
また、緩衝器において、伸側サブバルブは、環状で全体が第1隔壁に対して遠近可能であって第1隔壁のピストン側端に当接すると第1伸側ポートを隙間なく閉塞する伸側弁体と、伸側弁体を第1隔壁に着座させる方向へ付勢する伸側ばねとを有し、圧側サブバルブは、環状で全体が第1隔壁に対して遠近可能であって第1隔壁の反ピストン側端に当接すると第1圧側ポートを隙間なく閉塞する圧側弁体と、圧側サブバルブを第1隔壁に着座させる方向へ付勢する圧側ばねとを有してもよい。
【0015】
このように構成された緩衝器によれば、伸側サブバルブと圧側サブバルブとが対応する第1伸側ポートと第1圧側ポートとを隙間なく閉塞するので、オリフィスやチョークが存在せず、ピストン速度が極低い速度域から減衰力を立ち上げることができ、また、伸側弁体および圧側弁体の全体が第1隔壁に対して遠近するので開弁後に流路面積を大きくできるので、伸側メインバルブおよび圧側メインバルブによって減衰力を出したい場面で伸側サブバルブおよび圧側サブバルブが影響を与えずに済むとともに、緩衝器の伸長時に伸側サブバルブがシリンダ内での液体の吸込不良を招くこともない。
【0016】
緩衝器において、伸側メインバルブが環状のリーフバルブであって、伸側弁体の内径が伸側メインバルブの内径よりも小径であるか、または、圧側メインバルブが環状のリーフバルブであって、圧側弁体13aの内径が圧側メインバルブ11の内径よりも小径となっていてもよい。このように構成された緩衝器によれば、環状の伸側弁体或いは圧側弁体の内外径差を大きくでき、開弁後に大きな流路面積を確保できるから、伸側サブバルブが伸側メインバルブ以上に大きな減衰力を発生してしまう恐れがなくなるか、あるいは、圧側サブバルブが圧側メインバルブ以上に大きな減衰力を発生してしまう恐れがなくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の緩衝器によれば、複筒型であってもピストン速度が微低速域における減衰力特性を良好にでき車両における乗心地を向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
図2】本発明の一実施の形態における緩衝器の一部拡大縦断面図である。
図3】本発明の一実施の形態における緩衝器の第1隔壁の平面図である。
図4】本発明の一実施の形態における緩衝器の減衰力特性を示した図である。
図5】本発明の一実施の形態の変形例における緩衝器の一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されるとともにシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を液体で満たされる伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ1の外周を覆ってシリンダ1との間にリザーバRを形成する外筒4と、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側メインバルブ7と、圧側室R2とリザーバRとの間に直列に設けられて圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側メインバルブ11と圧側サブバルブ13と、リザーバRと圧側室R2との間に設けられてリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側サブバルブ12と、リザーバRと圧側室R2との間に伸側サブバルブ12と直列に設けられてリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェックバルブ14とを備えている。緩衝器Dは、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて伸縮時に減衰力を発生して車体の振動を抑制する。
【0020】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。シリンダ1は、筒状であって内部には、前述したようにピストン3が移動自在に挿入されている。そして、シリンダ1内は、ピストン3によって、図1中ピストン3よりも上方の伸側室R1と、図1中ピストン3よりも下方の圧側室R2とに区画されている。また、シリンダ1内における伸側室R1と圧側室R2には、液体として、たとえば、作動油が充填されている。なお、液体としては、作動油の他にも、水、水溶液等を充填してもよい。
【0021】
シリンダ1の外周側には、シリンダ1の外周を覆う有底筒状の外筒4が設けられている。外筒4とシリンダ1との間には、環状隙間が設けられており、当該環状隙間によってリザーバRが形成されている。このように緩衝器Dは、複筒型の緩衝器として構成されている。リザーバRには、シリンダ1内に充填される液体と同じ液体の他に気体が充填されている。なお、液体を作動油とする場合、リザーバR内に充填される液体は、作動油の劣化を防止するため気体を窒素等といった不活性ガスとされるとよい。
【0022】
また、シリンダ1内の図1中下端側には、圧側室R2に面する第1隔壁15が取り付けられており、シリンダ1の図1中下端には、外筒4の底部に載置されて外周側がリザーバRに面する第2隔壁20が嵌合されている。第1隔壁15と第2隔壁20とによって、圧側室R2とリザーバRとが区画されており、これら第1隔壁15と第2隔壁20とで隔壁部材Wを構成している。第1隔壁15と第2隔壁20とは、シリンダ1の軸方向で離間しており、シリンダ1内であって第1隔壁15と第2隔壁20との間に液体が充填される中間室R3を区画している。
【0023】
また、シリンダ1の図1中上端には、ピストンロッド2を摺動自在に軸支するロッドガイド5が嵌合されている。このロッドガイド5は、外筒4の内周に嵌合され、外筒4の上端を加締めることで、ロッドガイド5の図1中上方に積層されて外筒4、シリンダ1およびピストンロッド2のそれぞれの間をシールするシール部材6とともに外筒4に固定される。このようにロッドガイド5を外筒4に固定するとシリンダ1は、外筒4の底部に載置された第2隔壁20とで挟持され、シリンダ1も第2隔壁20とともに外筒4内で固定される。なお、外筒4の上端開口端を加締める代わりに、上端開口部にキャップを螺着して、このキャップと外筒4の底部とで、前記シール部材6、ロッドガイド5、シリンダ1および第2隔壁20を挟持して、これら部材を外筒4内で固定してもよい。
【0024】
ピストンロッド2は、円柱状であって先端側の外径が縮径されており、先端側の最小径のピストン嵌合部2aと、ピストン嵌合部2aより外径が大きくピストン嵌合部2aの図2中上側に設けられた大径部2bと、ピストン嵌合部2aと大径部2bとの境に設けられた段部2c、ピストン嵌合部2aの先端外周に設けられた図示しない螺子部とを備えている。
【0025】
そして、ピストンロッド2の図1中上端となる基端には、ブラケット(図示せず)が設けられており、ピストンロッド2が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の一方に連結される。また、外筒4の底部にもブラケット(図示せず)が設けられており、外筒4が図外の前記ブラケットを介して車体と車輪の他方に連結される。
【0026】
このようにして緩衝器Dは車体と車輪との間に介装される。そして、車両が凹凸のある路面を走行する等して車輪が車体に対して上下に振動すると、ピストンロッド2が外筒4に出入りして緩衝器Dが伸縮するとともに、ピストン3がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。
【0027】
ピストン3は、環状であって図1に示すように、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ピストンポート3aと、圧側室R2と伸側室R1とを連通する圧側ピストンポート3bを備えている。ピストン3の図1中上方には環状の圧側チェックバルブ8が重ねられ、ピストン3の図1中下方には環状の伸側メインバルブ7が重ねられている。そして、圧側チェックバルブ8、ピストン3および伸側メインバルブ7は、ピストンロッド2のピストン嵌合部2aの外周に順番に嵌合され、ピストンロッド2の先端の図外の螺子部に螺子結合されるピストンナット9と段部2cとで挟持されてピストンロッド2に固定される。
【0028】
伸側メインバルブ7は、環状板を複数枚積層して構成された積層リーフバルブであって、ピストン3の図1中下側である圧側室側に重ねられており、伸側ピストンポート3aの出口端を開閉する。また、伸側メインバルブ7のピストン3に当接する環状板の外周には、図示しない切欠で形成されたオリフィス7aが設けられている。なお、オリフィス7aは、ピストン3における伸側ピストンポート3aを取り囲む図外の弁座に打刻等によって設けられた凹部で形成されてもよいし、後述する圧側チェックバルブ8或いは圧側チェックバルブ8が着座する図外の弁座に設けられてもよい。
【0029】
また、伸側メインバルブ7は、内周がピストンロッド2に固定されて外周側の撓みが許容されており、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力より高くなり両者の差圧が開弁圧に達すると、伸側ピストンポート3aを介して作用する伸側室R1の圧力を受けて撓んで開弁し、伸側ピストンポート3aを開放して伸側室R1と圧側室R2とを連通させる。そして、伸側メインバルブ7は、伸側ピストンポート3aを通過する液体の流れに抵抗を与えて伸側室R1の圧力を上昇させる。
【0030】
反対に、伸側メインバルブ7は、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力より高いと背面側から作用する圧側室R2の圧力によってピストン3に押しつけられて伸側ピストンポート3aを閉塞する。伸側メインバルブ7の閉弁時には、伸側ピストンポート3aは前記オリフィス7aのみにより圧側室R2に連通される状態となる。
【0031】
なお、伸側メインバルブ7における環状板の積層枚数は、所望する減衰力に応じて任意に変更できる。また、伸側メインバルブ7は、リーフバルブとされているが、第2圧側ポート20dを通過する液体の流れに抵抗を与えることができれば、リーフバルブ以外のバルブとされてもよい。
【0032】
他方、圧側チェックバルブ8は、ピストン3に軸方向で遠近する方向へ移動可能な環状板と、環状板をピストン3へ向けて付勢するばねと備えて構成されてピストン3の図1中上側である伸側室側に重ねられており、圧側ピストンポート3bの出口端を開閉する。圧側チェックバルブ8は、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力より高くなり、圧側ピストンポート3bを介して作用する圧側室R2の圧力を受けてピストン3から離間して開弁すると圧側ピストンポート3bを開放して圧側室R2と伸側室R1とを連通させる。なお、圧側チェックバルブ8は、開弁すると然程抵抗を与えずに液体が圧側ピストンポート3bを通過するのを許容する。反対に、圧側チェックバルブ8は、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力より高いと背面側から作用する伸側室R1の圧力によってピストン3に押しつけられて圧側ピストンポート3bを閉塞して圧側室R2と伸側室R1との連通を遮断する。
【0033】
つづいて、圧側メインバルブ11、圧側サブバルブ13、伸側サブバルブ12および吸込チェックバルブ14について説明する。図2に示すように、圧側メインバルブ11と吸込チェックバルブ14は、第2隔壁20に設けられており、圧側サブバルブ13および伸側サブバルブ12は、第1隔壁15に設けられている。
【0034】
第2隔壁20は、シリンダ1と外筒4の底部とで挟持されてシリンダ1の図2中下端に取り付けられており、リザーバRに面している。第1隔壁15は、シリンダ1の下方であって第2隔壁20から離間して設けられており、圧側室R2に面しているとともに、シリンダ1内であって第2隔壁20との間に中間室R3を形成している。このように、第1隔壁15と第2隔壁20とは、圧側室R2とリザーバRとの間に設けられており、圧側室R2とリザーバRとを仕切っている。
【0035】
より詳しくは、第2隔壁20は、円環状であってシリンダ1の内周に嵌合する隔壁本体20aと、環状であって隔壁本体20aの図2中下端に連なって外径が隔壁本体20aの外径よりも大径で内径が隔壁本体20aの外径よりも小径であってシリンダ1の下端と外筒4の底部との間で挟持されるフランジ部20bと、隔壁本体20aを軸方向に貫く第2伸側ポート20cと第2圧側ポート20dとを備えている。
【0036】
また、第2隔壁20における隔壁本体20aの内周には第2取付軸21が挿通されており、第2取付軸21の外周に、圧側メインバルブ11と吸込チェックバルブ14とが装着されている。
【0037】
第2隔壁20におけるフランジ部20bには、図2中下端から開口する複数の切欠20eが周方向に等間隔で設けられており、フランジ部20b内の空隙とリザーバRとの連通が確保されている。
【0038】
第2伸側ポート20cおよび第2圧側ポート20dは、ともに、一端が第1隔壁15と第2隔壁20との間の中間室R3に連通されるとともに、他端がフランジ部20b内の空隙を介してリザーバRに連通されており、中間室R3とリザーバRとを連通している。
【0039】
圧側メインバルブ11は、環状板を複数枚積層して構成された積層リーフバルブとされており、第2隔壁20における隔壁本体20aの図2中下側であるリザーバ側に重ねられており、第2圧側ポート20dの出口端を開閉する。圧側メインバルブ11は、内周が第2取付軸21に固定されて外周側の撓みが許容されており、中間室R3の圧力がリザーバRの圧力より高くなり両者の差圧が開弁圧に達すると、第2圧側ポート20dを介して作用する中間室R3の圧力を受けて撓んで開弁し、第2圧側ポート20dを開放して中間室R3とリザーバRとを連通させる。また、圧側メインバルブ11の第2隔壁20に当接する環状板の外周には、切欠で形成されたオリフィス11aが設けられている。なお、オリフィス11aは、第2隔壁20における第2圧側ポート20dを取り囲む弁座に打刻等によって設けられた凹部で形成されてもよいし、後述する吸込チェックバルブ14或いは吸込チェックバルブ14が着座する図外の弁座に設けられてもよい。
【0040】
このように、圧側メインバルブ11は、第2圧側ポート20dを通過する液体の流れに抵抗を与えて中間室R3の圧力を上昇させる。反対に、圧側メインバルブ11は、リザーバRの圧力が中間室R3の圧力より高いと背面側から作用するリザーバRの圧力によってピストン3に押しつけられて第2圧側ポート20dを閉塞する。圧側メインバルブ11の閉弁時には、第2圧側ポート20dはオリフィス11aのみによりリザーバRに連通される状態となる。
【0041】
なお、圧側メインバルブ11における環状板の積層枚数は、所望する減衰力に応じて任意に変更できる。また、圧側メインバルブ11は、リーフバルブとされているが、第2圧側ポート20dを通過する液体の流れに抵抗を与えることができれば、リーフバルブ以外のバルブとされてもよい。
【0042】
他方、吸込チェックバルブ14は、第2隔壁20に対して軸方向で遠近する方向へ移動可能な環状板と環状弁体を第2隔壁20ヘ向けて付勢するばねとを備えて構成されて第2隔壁20における隔壁本体20aの図2中上側である中間室側に重ねられており、第2伸側ポート20cの出口端を開閉する。吸込チェックバルブ14は、リザーバRの圧力が中間室R3の圧力より高くなり、第2伸側ポート20cを介して作用するリザーバRの圧力を受けて第2隔壁20から離間して撓んで開弁すると第2伸側ポート20cを開放してリザーバRと中間室R3とを連通させる。なお、吸込チェックバルブ14は、開弁すると然程抵抗を与えずに液体が第2伸側ポート20cを通過するのを許容する。反対に、吸込チェックバルブ14は、中間室R3の圧力がリザーバRの圧力より高いと背面側から作用する中間室R3の圧力によって第2隔壁20に押しつけられて第2伸側ポート20cを閉塞して中間室R3とリザーバRとの連通を遮断する。
【0043】
このように構成された圧側メインバルブ11と吸込チェックバルブ14は、第2隔壁20とともに第2取付軸21の外周に嵌合される。第2取付軸21は、第2隔壁20、圧側メインバルブ11および吸込チェックバルブ14の内周に挿入される軸部21aと、軸部21aの図2中下端に設けられたフランジ21bと、軸部21aの先端となる図2中上端に設けられた螺子部21cとを備えている。そして、第2取付軸21は、軸部21aの外周に嵌合された第2隔壁20、圧側メインバルブ11および吸込チェックバルブ14をフランジ21bと螺子部21cに螺子結合されるナット22とによって第2隔壁20、圧側メインバルブ11および吸込チェックバルブ14の内周を保持する。
【0044】
第1隔壁15は、シリンダ1の下方であって、第2隔壁20から上方へ離間した位置に取り付けられている。具体的には、第1隔壁15は、円環状であって、軸方向に貫く第1伸側ポート15aと第1圧側ポート15bと、外周に周方向に沿って設けられた環状溝15eとを備えている。そして、第1隔壁15は、環状溝15e内にシリンダ1を外周から加締めることによって塑性変形した加締部1aが入り込むことにより、シリンダ1に固定される。また、このように加締部1aが環状溝15e内に入り込むことによって、第1隔壁15とシリンダ1との間がシールされて、圧側室R2と中間室R3とが第1隔壁15とシリンダ1との間を通じて連通されるのが阻止される。
【0045】
第1隔壁15は、前述したように、シリンダ1の下方であって第2隔壁20から離間して設けられており、圧側室R2に面しているとともに、シリンダ1内であって第2隔壁20との間に中間室R3を形成している。
【0046】
また、第1隔壁15の内周には第1取付軸16が挿通されており、第1取付軸16の外周に、伸側サブバルブ12と圧側サブバルブ13とが取り付けられている。
【0047】
第1伸側ポート15aおよび第1圧側ポート15bは、図3に示すように、第1隔壁15に対して3つずつ同一円周上の周方向に交互に配置されて設けられている。第1伸側ポート15aおよび第1圧側ポート15bは、ともに、一端が第1隔壁15よりも上方の圧側室R2に連通されるとともに、他端が第1隔壁15と第2隔壁20との間の中間室R3に連通されており、圧側室R2と中間室R3とを連通している。
【0048】
また、第1隔壁15の圧側室側となる図2中上端には、第1伸側ポート15aの出口端を取り囲む花弁型の伸側弁座15cが圧側室側へ向けて突出して設けられており、第1隔壁15の中間室側となる図2中下端には、第1圧側ポート15bの出口端を取り囲む花弁型の圧側弁座15dが中間室側へ向けて突出して設けられている。
【0049】
伸側サブバルブ12は、環状であって、第1隔壁15に対して軸方向へ遠近可能であって、第1隔壁15の図2中上端である圧側室側に重ねられる伸側弁体12aと、伸側弁体12aを第1隔壁15へ向けて付勢する伸側ばね12bとを備えている。伸側弁体12aは、円環状であって伸側弁座15cに離着座する弁部12a1と、弁部12a1の内周から反第1隔壁側へ向けて立ち上がる環状のガイド部12a2とを備えており、伸側弁座15cに当接すると伸側弁座15cに対して隙間なく密着して、第1伸側ポート15aを隙間なく閉塞し、伸側弁座15cから離間すると第1伸側ポート15aを開放できる。
【0050】
また、伸側弁体12aは、ガイド部12a2の内周を第1取付軸16の外周に嵌合する筒状のカラー17の外周に摺接させており、第1取付軸16に対して軸方向へ移動可能に装着されている。このように伸側弁体12aは、カラー17によって軸方向への移動が案内されており、第1隔壁15に対して遠近できる。カラー17は、第1隔壁15から立ち上がり伸側弁体12aの内周に挿入されるセンターロッドとして機能し、カラー17の外径は、ピストンロッド2のピストン嵌合部2aの外径よりも小径となっている。カラー17の外周に摺接される伸側弁体12aの内径は、ピストン嵌合部2aの外周に装着される圧側メインバルブ11を構成する積層リーフバルブの内径よりも小さい。
【0051】
圧側サブバルブ13は、環状であって、第1隔壁15に対して軸方向へ遠近可能であって、第1隔壁15の図2中下端である中間室側に重ねられる圧側弁体13aと、圧側弁体13aを第1隔壁15へ向けて付勢する圧側ばね13bとを備えている。圧側弁体13aは、円環状であって圧側弁座15dに離着座する弁部13a1と、弁部13a1の内周から反第1隔壁側へ向けて立ち上がる環状のガイド部13a2とを備えており、圧側弁座15dに当接すると圧側弁座15dに対して隙間なく密着して、第1圧側ポート15bを閉塞し、圧側弁座15dから離間すると第1圧側ポート15bを開放できる。
【0052】
また、圧側弁体13aは、ガイド部13a2の内周を第1取付軸16の外周に嵌合する筒状のカラー18の外周に摺接させており、第1取付軸16に対して軸方向へ移動可能に装着されている。このように圧側弁体13aは、カラー18によって軸方向への移動が案内されており、第1隔壁15に対して遠近できる。カラー18は、第1隔壁15から立ち上がり圧側弁体13aの内周に挿入されるセンターロッドとして機能し、カラー18の外径は、圧側メインバルブ11が装着される第2取付軸21の軸部21aの外径よりも小径となっている。よって、カラー18の外周に摺接される圧側弁体13aの内径は、ピストン嵌合部2aの外周に装着される圧側メインバルブ11を構成する積層リーフバルブの内径よりも小さい。
【0053】
第1取付軸16は、第1隔壁15、カラー17,18、伸側サブバルブ12、圧側サブバルブ13、ばね受19の内周に挿入される軸部16aと、軸部16aの図2中上端に設けられたフランジ16bと、軸部16aの図2中下端を加締めて形成される鍔部16cとを備えている。そして、第1取付軸16は、軸部16aの外周に嵌合されるカラー17、第1隔壁15、カラー18およびばね受19をフランジ16bと鍔部16cとで挟持してこれらカラー17、第1隔壁15、カラー18およびばね受19を保持している。よって、カラー17、第1隔壁15、カラー18およびばね受19は、第1取付軸16の軸部16aの外周に不動に固定される。
【0054】
また、カラー17の外周には、伸側サブバルブ12における伸側弁体12aのガイド部12a2が摺接しており、伸側弁体12aは、軸部16aに保持されたカラー17に対して軸方向へ移動できる。伸側ばね12bは、カラー17の外周であって伸側弁体12aの弁部12a1とフランジ16bとの間に介装されており、常時、伸側弁体12aを第1隔壁15へ向けて付勢している。また、伸側ばね12bは、円錐コイルばねとされていて密着長が短いので、伸側サブバルブ12の全長を短くしても伸側弁体12aの第1隔壁15に対するストローク長を確保しやすいが、円筒状のコイルばねであってもよいし、ウェーブワッシャその他の弾性体とされてもよい。伸側ばね12bのばね定数は小さく、また、伸側弁体12aが第1隔壁15に着座する状態における伸側弁体12aを付勢する伸側ばね12bの付勢力も小さく、開弁時には伸側弁体12aが第1隔壁15から大きく離間する。
【0055】
ばね受19は、軸部16aの外周に嵌合する筒部19aと、筒部19aの下端から径方向外周側へ突出する環状のシート部19bとを備えており、カラー18の下方に重ねられて第1取付軸16に取り付けられている。
【0056】
さらに、カラー18の外周には、圧側サブバルブ13における圧側弁体13aのガイド部13a2が摺接しており、圧側弁体13aは、軸部16aに保持されたカラー18に対して軸方向へ移動できる。圧側ばね13bは、カラー18の外周であって圧側弁体13aの弁部13a1とばね受19のシート部19bとの間に介装されており、常時、圧側弁体13aを第1隔壁15へ向けて付勢している。また、圧側ばね13bは、円錐コイルばねとされていて密着長が短いので、圧側サブバルブ13の全長を短くしても圧側弁体13aの第1隔壁15に対するストローク長を確保しやすいが、円筒状のコイルばねであってもよいし、ウェーブワッシャその他の弾性体とされてもよい。圧側ばね13bのばね定数は小さく、また、圧側弁体13aが第1隔壁15に着座する状態における圧側弁体13aを付勢する圧側ばね13bの付勢力も小さく、開弁時には圧側弁体13aが第1隔壁15から大きく離間する。
【0057】
そして、前述のように構成された伸側サブバルブ12は、緩衝器Dの伸長作動時に圧側室R2が減圧されると中間室R3の圧力を受けて第1隔壁15から離間し、伸側弁座15cから離座して第1伸側ポート15aを開放し、緩衝器Dの伸長作動時には、中間室R3の圧力も減圧されるため、第2隔壁20に設けられた吸込チェックバルブ14も開弁して第2伸側ポート20cを開放する。反対に、緩衝器Dの収縮作動時には圧側室R2の圧力を受けて第1隔壁15に押し付けられて伸側弁座15cに着座して第1伸側ポート15aを遮断し、緩衝器Dの収縮作動時には、第2隔壁20に設けられた吸込チェックバルブ14も昇圧される中間室R3の圧力を受けて閉弁して第2伸側ポート20cを遮断する。よって、伸側サブバルブ12と吸込チェックバルブ14は、圧側室R2とリザーバRとの間にリザーバRを上流として直列に設けられている。
【0058】
伸側サブバルブ12と伸側メインバルブ7とは、緩衝器Dの伸長作動時に開弁するが、伸側サブバルブ12の開弁圧は伸側メインバルブ7の開弁圧よりも低く、緩衝器Dの伸縮作動の際に伸側サブバルブ12の方が伸側メインバルブ7よりも早いタイミングで開弁する。
【0059】
また、圧側サブバルブ13は、緩衝器Dの収縮作動時に昇圧される圧側室R2を受けて第1隔壁15から離間し、圧側弁座15dから離座して第1圧側ポート15bを開放し、緩衝器Dの収縮作動時には、中間室R3の圧力が昇圧されてリザーバRとの差圧が圧側メインバルブ11の開弁圧に達すると、圧側メインバルブ11も開弁して第2圧側ポート20dを開放する。反対に、緩衝器Dの収縮作動時には中間室R3の圧力を受けて第1隔壁15に押し付けられて圧側弁座15dに着座して第1圧側ポート15bを遮断し、緩衝器Dの収縮作動時には、第2隔壁20に設けられた圧側メインバルブ11も中間室R3の減圧によってリザーバRの圧力を受けて閉弁して第2圧側ポート20dを遮断する。よって、圧側サブバルブ13と圧側メインバルブ11は、圧側室R2とリザーバRとの間に圧側室R2を上流として直列に設けられている。
【0060】
圧側サブバルブ13と圧側メインバルブ11とは、緩衝器Dの収縮作動時に開弁するが、圧側サブバルブ13の開弁圧は圧側メインバルブ11の開弁圧よりも低く、緩衝器Dの収縮作動の際に圧側サブバルブ13の方が圧側メインバルブ11よりも早いタイミングで開弁する。
【0061】
以上のように構成された緩衝器Dの作動について説明する。まず、ピストン3がシリンダ1に対して図1中上方側へ移動する緩衝器Dの伸長作動時の作動について説明する。
【0062】
ピストン3がシリンダ1に対して図1中上方へ移動すると、ピストン3の移動に伴って伸側室R1が縮小されるとともに圧側室R2が拡大される。緩衝器Dの伸長作動時におけるシリンダ1に対するピストン3の移動速度であるピストン速度が微低速域では、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差が伸側メインバルブ7の開弁圧に達しないので、伸側メインバルブ7が撓まず閉弁した状態となるので、縮小される伸側室R1内の液体は、伸側ピストンポート3aおよびオリフィス7aを通過して圧側室R2へ移動する。ピストン速度が微低速域では、オリフィス7aを流れる液体の流量が極僅かであるため、オリフィス7aが液体の流れに与える抵抗も極小さくなる。
【0063】
緩衝器Dの伸長作動時には、ピストンロッド2が図1中上方へ移動してシリンダ1内から退出し、シリンダ1内でピストンロッド2が押し退ける容積が減少するため、シリンダ1内でピストンロッド2のシリンダ1内から退出する体積分の液体が不足する。すると、吸込チェックバルブ14が開弁して第2伸側ポート20cを通じてリザーバRと中間室R3とを連通するとともに、伸側サブバルブ12が開弁して第1伸側ポート15aを通じて中間室R3と圧側室R2とを連通する。そして、伸側サブバルブ12は、第1伸側ポート15aを通過する液体の流れに抵抗を与えるので、圧側室R2が減圧されて伸側室R1の圧力よりも低くなる。
【0064】
よって、緩衝器Dの伸長作動時であってピストン速度が微低速域にある場合、図4に示すように、伸側サブバルブ12が液体の流れに与える抵抗によって緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生し、ピストン速度に対する減衰力の特性である減衰力特性は減衰係数が高く減衰力がピストン速度の増加に応じて速やかに立ち上がる特性となる。
【0065】
また、伸側サブバルブ12を通過する液体量は、ピストンロッド2がシリンダ1から退出する体積に等しく、伸側サブバルブ12をピストン部に設ける場合よりも通過液体量を少なくできる。また、シリンダ1の外径を大きくできない複筒型の緩衝器Dであっても、ピストンロッド2のピストン嵌合部2aの外径よりも小径なカラー17の外周に設けられているので伸側サブバルブ12の内径と外径との差を大きくできる。よって、シリンダ1の内径を小さくし難い複筒型の緩衝器Dであっても、伸側サブバルブ12が開弁後に液体の流れに与える抵抗は、ピストン部に伸側サブバルブを設ける場合に比較して小さくなり、減衰力が過剰になることもない。
【0066】
つづいて、緩衝器Dの伸長作動時におけるピストン速度が微低速域を超えて低速域になると、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差が大きくなるが未だ伸側メインバルブ7の開弁圧に達しないので、伸側メインバルブ7が撓まず閉弁したままとなり、縮小される伸側室R1内の液体は、伸側ピストンポート3aおよびオリフィス7aを通過して圧側室R2へ移動する。ピストン速度が低速域になると、オリフィス7aを流れる液体の流量が増加するため、オリフィス7aが液体の流れに与える抵抗が大きくなる。
【0067】
緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が低速域にある場合、吸込チェックバルブ14および伸側サブバルブ12がともに開弁するが、伸側サブバルブ12の伸側弁体12aが第1隔壁15から大きく離間するために、伸側サブバルブ12が液体の流れに与える抵抗はオリフィス7aが液体の流れに与える抵抗と比べて小さくなる。
【0068】
よって、緩衝器Dの伸長作動時であってピストン速度が低速域にある場合、図4に示すように、主としてオリフィス7aが液体の流れに与える抵抗によって緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生する。よって、緩衝器Dの伸長作動時であってピストン速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、オリフィス特有のピストン速度の二乗に比例する減衰力を発生し、減衰力特性は、微低速域の時よりも減衰係数が低くなる特性となる。
【0069】
さらに、緩衝器Dの伸長作動時におけるピストン速度が低速域を超えて高速域になると、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力との差が大きくなって伸側メインバルブ7の開弁圧を超えるようになり、縮小される伸側室R1内の液体は、伸側メインバルブ7を押し開いて伸側ピストンポート3aを通過して圧側室R2へ移動する。
【0070】
緩衝器Dの伸長作動時のピストン速度が高速域にある場合、吸込チェックバルブ14および伸側サブバルブ12がともに開弁するが、伸側サブバルブ12の伸側弁体12aが第1隔壁15から大きく離間するために、伸側サブバルブ12が液体の流れに与える抵抗は伸側メインバルブ7が液体の流れに与える抵抗と比べて小さくなる。
【0071】
よって、緩衝器Dの伸長作動時であってピストン速度が高速域にある場合、図4に示すように、主として伸側メインバルブ7が液体の流れに与える抵抗によって緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生する。よって、緩衝器Dの伸長作動時であってピストン速度が高速域にある場合の減衰力特性は、低速時の時よりも減衰係数が低くなるが概ねピストン速度にリニアに減衰力が大きくなる特性となる。
【0072】
まず、ピストン3がシリンダ1に対して図1中下方側へ移動する緩衝器Dの収縮作動時の作動について説明する。
【0073】
ピストン3がシリンダ1に対して図1中下方へ移動すると、ピストン3の移動に伴って圧側室R2が縮小されるとともに伸側室R1が拡大される。緩衝器Dが収縮作動を呈すると、圧側チェックバルブ8が開弁して、縮小される圧側室R2内の液体は、然程抵抗を受けずに圧側ピストンポート3bを通過して伸側室R1へ移動する。緩衝器Dの収縮作動時には、シリンダ1内にピストンロッド2が侵入するので、ピストンロッド2がシリンダ1内に侵入する体積分の液体がシリンダ1内で過剰となるため、過剰分の液体がシリンダ1内からリザーバRへ移動しようとする。
【0074】
緩衝器Dの収縮作動時におけるピストン速度が微低速域では、圧側室R2の圧力とリザーバRの圧力との差が小さいが、圧側サブバルブ13が開弁して第1圧側ポート15bを開放して、圧側室R2内の液体が中間室R3へ移動する。他方、緩衝器Dの収縮作動時におけるピストン速度が微低速域では、圧側室R2の圧力とリザーバRの圧力との差が小さく、中間室R3の圧力とリザーバRの圧力との差が圧側メインバルブ11の開弁圧に達しないので、圧側メインバルブ11が撓まず閉弁した状態となり、中間室R3内の液体はオリフィス11aおよび第2圧側ポート20dを通じてリザーバRへ移動する。ピストン速度が微低速域では、オリフィス7aを流れる液体の流量が極僅かであるため、オリフィス7aが液体の流れに与える抵抗も極小さくなる。
【0075】
よって、緩衝器Dの収縮作動時におけるピストン速度が微低速域では、圧側サブバルブ13が開弁して第1圧側ポート15bを通過する液体の流れに抵抗を与えるので、圧側室R2および伸側室R1の圧力が上昇する。ピストン3の圧側室側の受圧面積は、ピストン3の伸側室側の受圧面積よりピストンロッド2の断面積分だけ大きいため、圧側室R2および伸側室R1の圧力が上昇によってピストン3を押し上げる方向の力が大きくなり、これが緩衝器Dの収縮を妨げる減衰力となる。
【0076】
よって、緩衝器Dの伸長作動時であってピストン速度が微低速域にある場合、図4に示すように、圧側サブバルブ13が液体の流れに与える抵抗によって緩衝器Dの伸長作動を妨げる減衰力を発生し、ピストン速度に対する減衰力の特性である減衰力特性は減衰係数が高く減衰力がピストン速度の増加に応じて速やかに立ち上がる特性となる。
【0077】
また、圧側サブバルブ13を通過する液体量は、ピストンロッド2がシリンダ1内に侵入する体積に等しく、圧側サブバルブ13をピストン部に設ける場合よりも通過液体量を少なくできる。また、シリンダ1の外径を大きくできない複筒型の緩衝器Dであっても、ピストンロッド2のピストン嵌合部2aの外径よりも小径なカラー18の外周に設けられているので圧側サブバルブ13の内径と外径との差を大きくできる。よって、シリンダ1の内径を小さくし難い複筒型の緩衝器Dであっても、圧側サブバルブ13が開弁後に液体の流れに与える抵抗は、ピストン部に伸側サブバルブを設ける場合に比較して小さくなり、減衰力が過剰になることもない。
【0078】
つづいて、緩衝器Dの収縮作動時におけるピストン速度が微低速域を超えて低速域になると、圧側室R2の圧力とリザーバRの圧力との差が大きくなるが未だ圧側メインバルブ11の開弁圧に達しないので、圧側メインバルブ11が撓まず閉弁したままとなり、縮小される圧側室R2内の液体は、第1圧側ポート15b、第2圧側ポート20dおよびオリフィス11aを通過してリザーバRへ移動する。ピストン速度が低速域になると、オリフィス11aを流れる液体の流量が増加するため、オリフィス11aが液体の流れに与える抵抗が大きくなる。
【0079】
緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が低速域にある場合、圧側サブバルブ13の圧側弁体13aが第1隔壁15から大きく離間するために、圧側サブバルブ13が液体の流れに与える抵抗はオリフィス11aが液体の流れに与える抵抗と比べて小さくなる。
【0080】
よって、緩衝器Dの収縮作動時であってピストン速度が低速域にある場合、図4に示すように、主としてオリフィス11aが液体の流れに与える抵抗によって緩衝器Dの収縮作動を妨げる減衰力を発生する。よって、緩衝器Dの収縮作動時であってピストン速度が低速域にある場合、緩衝器Dは、オリフィス特有のピストン速度の二乗に比例する減衰力を発生し、減衰力特性は、微低速域の時よりも減衰係数が低くなる特性となる。
【0081】
さらに、緩衝器Dの収縮作動時におけるピストン速度が低速域を超えて高速域になると、圧側室R2の圧力とリザーバRの圧力との差が大きくなって圧側メインバルブ11の開弁圧を超えるようになり、圧側室R2内の液体は、圧側メインバルブ11を押し開いて第2圧側ポート20dを通過してリザーバRへ移動する。
【0082】
緩衝器Dの収縮作動時のピストン速度が高速域にある場合、圧側サブバルブ13が開弁するが、圧側サブバルブ13の圧側弁体13aが第1隔壁15から大きく離間するために、圧側サブバルブ13が液体の流れに与える抵抗は圧側メインバルブ11が液体の流れに与える抵抗と比べて小さくなる。
【0083】
よって、緩衝器Dの収縮作動時であってピストン速度が高速域にある場合、図4に示すように、主として圧側メインバルブ11が液体の流れに与える抵抗によって緩衝器Dの収縮作動を妨げる減衰力を発生する。よって、緩衝器Dの収縮作動時であってピストン速度が高速域にある場合の減衰力特性は、低速時の時よりも減衰係数が低くなるが概ねピストン速度にリニアに減衰力が大きくなる特性となる。
【0084】
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されるとともにシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を液体で満たされる伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、シリンダ1の外周を覆ってシリンダ1との間にリザーバRを形成する外筒4と、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側メインバルブ7と、圧側室R2とリザーバRとの間に直列に設けられて圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側メインバルブ11と圧側サブバルブ13と、リザーバRと圧側室R2との間に設けられてリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側サブバルブ12と、リザーバRと圧側室R2との間に伸側サブバルブ12と直列に設けられてリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェックバルブ14とを備え、伸長作動時におけるピストン速度が微低速域では伸側サブバルブ12のみにより減衰力を発生し、収縮作動時におけるピストン速度が微低速域では圧側サブバルブ13のみにより減衰力を発生する。
【0085】
このように構成された緩衝器Dでは、ピストン速度が微低速域にある場合に、圧側室R2とリザーバRとの間に設けられた伸側サブバルブ12或いは圧側サブバルブ13によって減衰力を発生でき、伸側サブバルブ12と圧側サブバルブ13とをピストンロッド2に設けずに済む。ピストンロッド2は、緩衝器Dに対して軸方向に直交する横方向から入力される横力を受けるために小径にすることが難しく、さらに複筒型の緩衝器ではシリンダ内径を大きくすることが難しいことから、従来の緩衝器では、減衰バルブにおけるリーフバルブの内外径差を大きくできない。対して、本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側サブバルブ12或いは圧側サブバルブ13とが圧側室R2とリザーバRとの間に設けられるので、緩衝器Dの伸縮時における通過液体量を低減できるとともに、横力を受けずに済むので強度上外径を小さくできないピストンロッド2に伸側サブバルブ12或いは圧側サブバルブ13を設ける必要がないので、伸側サブバルブ12と圧側サブバルブ13の開弁時の流路面積を大きくできる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、複筒型であっても、ピストン速度が微低速域における減衰力が過剰とならず、良好な減衰力特性を実現でき車両における乗心地を向上できる。また、圧側室R2とリザーバRとの間に圧側メインバルブ11と圧側サブバルブ13とが直列に設けられ、リザーバRと圧側室R2との間に伸側サブバルブ12と吸込チェックバルブ14とが直列に設けられているので、圧側サブバルブ13が圧側メインバルブ11を迂回し、伸側サブバルブ12が伸側メインバルブ7を迂回する構造を採る必要が無く、複筒型の緩衝器Dの狭いシリンダ1内に圧側サブバルブ13と伸側サブバルブ12とを無理なく設置でき、緩衝器Dの大型化を招かずに済む。
【0086】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dは、第1隔壁15と第1隔壁15との間に中間室R3を形成する第2隔壁20とを有して、圧側室R2とリザーバRとを区画する隔壁部材Wを備え、第1隔壁15は、圧側室R2と中間室R3とを連通する第1伸側ポート15aと第1圧側ポート15bとを備え、第2隔壁20は、リザーバRと中間室R3とを連通する第2伸側ポート20cと第2圧側ポート20dとを備え、伸側サブバルブ12および圧側サブバルブ13は、第1隔壁15に設けられ、圧側メインバルブ11と吸込チェックバルブ14は、第2隔壁20に設けられている。
【0087】
このように構成された緩衝器Dによれば、伸側サブバルブ12および圧側サブバルブ13が設けられた第1隔壁15と、圧側メインバルブ11および吸込チェックバルブ14が設けられた第2隔壁20とを圧側室R2とリザーバRとの間に設置すれば、圧側室R2とリザーバRとの間に圧側メインバルブ11と圧側サブバルブ13とを直列に設けることができるとともに、リザーバRと圧側室R2との間に伸側サブバルブ12と吸込チェックバルブ14とを直列に設けることができる。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、圧側メインバルブ11、伸側サブバルブ12、圧側サブバルブ13および吸込チェックバルブ14を容易に設置でき、組立性が向上する。
【0088】
なお、前述したところでは、第1隔壁15によって圧側室R2と中間室R3とを区画し、第2隔壁20によってリザーバRと中間室R3とを区画しているが、第1隔壁15によってリザーバRと中間室R3とを区画し、第2隔壁20によって圧側室R2と中間室R3とを区画してもよい。よって、圧側室R2とリザーバRとの間に、圧側メインバルブ11を上流側に、圧側サブバルブ13を下流側に配置して圧側メインバルブ11と圧側サブバルブ13とを直列に設けてもよいし、リザーバRと圧側室R2との間に、伸側サブバルブ12を上流側に、吸込チェックバルブ14を下流側に配置して伸側サブバルブ12と吸込チェックバルブ14とを直列に設けてもよい。伸側サブバルブ12と圧側メインバルブ11とを第1隔壁15と第2隔壁20との一方に設け、圧側サブバルブ13と吸込チェックバルブ14とを第1隔壁15と第2隔壁20との他方に設けてもよいが、既存の複筒型の緩衝器Dは、圧側メインバルブ11と吸込チェックバルブ14とをシリンダ1の端部に取り付けられるバルブケースに設けているので、バルブケースを第2隔壁20として利用すれば、伸側サブバルブ12と圧側サブバルブ13とを備えた第1隔壁15を既存の複筒型の緩衝器に設置するだけで本実施の形態の緩衝器Dを実現できるのでコストや設計変更を最小にできる点で有利である。
【0089】
また、本実施の形態では、第1隔壁15がシリンダ1を外周から加締めて形成した加締部1aを利用してシリンダ1に固定されているが、図5に示すように、第2取付軸と第1取付軸とを1本の取付軸23で構成して、第2隔壁20と第1隔壁15とを取付軸23により連結し、第1隔壁15の外周の環状溝15e内にシリンダ1の内周に密着するシールリング24を装着することで、圧側室R2と中間室R3との間をシールするようにしてもよい。このようにすることで、第1隔壁15、第2隔壁、圧側メインバルブ11、伸側サブバルブ12、圧側サブバルブ13および吸込チェックバルブ14を予め組み立ててバルブ組立体とし、当該バルブ組立体を緩衝器Dに組み付けることができ、より一層、緩衝器Dの組付性が向上する。また、第1隔壁15の外周をシリンダ1に接触させない場合、第1隔壁15の下端と第2隔壁20の上端との間に仕切筒を設けて、当該仕切筒内であって第1隔壁15および第2隔壁20のとの間に中間室R3をシリンダ1内に区画してもよい。なお、仕切筒は、第1隔壁15および第2隔壁20とは別体とされてもよいし、第1隔壁15に一体に設けられてもよいし、第2隔壁20に一体に設けられてもよい。
【0090】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側サブバルブ12は、環状で全体が第1隔壁15に対して遠近可能であって第1隔壁15のピストン側端に当接すると第1伸側ポート15aを隙間なく閉塞する伸側弁体12aと、伸側弁体12aを第1隔壁15に着座させる方向へ付勢する伸側ばね12bとを備え、圧側サブバルブ13は、環状で全体が第1隔壁15に対して遠近可能であって第1隔壁15の反ピストン側端に当接すると第1圧側ポート15bを隙間なく閉塞する圧側弁体13aと、圧側弁体13aを第1隔壁15に着座させる方向へ付勢する圧側ばね13bとを備えている。
【0091】
このように構成された緩衝器Dによれば、伸側サブバルブ12と圧側サブバルブ13とが対応する第1伸側ポート15aと第1圧側ポート15bとを隙間なく閉塞するので、オリフィスやチョークが存在せず、ピストン速度が極低い速度域から減衰力を立ち上げることができ、また、伸側弁体12aおよび圧側弁体13aの全体が第1隔壁15に対して遠近するので開弁後に流路面積を大きくできるので、伸側メインバルブ7および圧側メインバルブ11によって減衰力を出したい場面で伸側サブバルブ12および圧側サブバルブ13が影響を与えずに済むとともに、緩衝器Dの伸長時に伸側サブバルブ12がシリンダ1内での液体の吸込不良を招くこともない。
【0092】
なお、伸側サブバルブ12および圧側サブバルブ13における伸側弁体12aおよび圧側弁体13aは、内周側が第1取付軸16に固定されて外周の撓みが許容されるリーフバルブとされてもよいし、図示はしないが、特開2004-225834に開示されているように、径の異なる内側弁座と外側弁座と、内側弁座に一端面の内周側を着座させるとともに外側弁座に他端面の外周側を着座させる環状の内外両開きのリーフバルブとでなるドカルボンバルブとされてもよい。また、伸側サブバルブ12および圧側サブバルブ13における伸側弁体12aおよび圧側弁体13aは、特開2019-116902に開示されているように、環状であって内周側或いは外周側の一方が固定されるとともに、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れに対しては内周側或いは外周側の他方をリザーバR側へ撓ませて前記液体の流れを許容し、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れに対しては内周側或いは外周側の他方を圧側室R2側へ撓ませて前記液体の流れを許容するバルブであってもよい。このように、伸側サブバルブ12および圧側サブバルブ13は、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れに抵抗を与えるとともにリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与えることができる単一のバルブによって実現されてもよい。
【0093】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、伸側メインバルブ7は、環状のリーフバルブであって、伸側弁体12aの内径は、伸側メインバルブ7の内径よりも小径であるか、または、圧側メインバルブ11は、環状のリーフバルブであって、圧側弁体13aの内径は、圧側メインバルブ11の内径よりも小径となっている。
【0094】
このように構成された緩衝器Dによれば、環状の伸側弁体12a或いは圧側弁体13aの内外径差を大きくでき、開弁後に大きな流路面積を確保できるから、伸側サブバルブ12が伸側メインバルブ7以上に大きな減衰力を発生してしまう恐れがなくなるか、あるいは、圧側サブバルブ13が圧側メインバルブ11以上に大きな減衰力を発生してしまう恐れがなくなる。なお、伸側メインバルブ7を環状のリーフバルブとして、伸側弁体12aの内径を伸側メインバルブ7の内径よりも小径とするとともに、圧側メインバルブ11を環状のリーフバルブとして、圧側弁体13aの内径を圧側メインバルブ11の内径よりも小径としてもよい。
【0095】
なお、本実施の形態ではカラー17,18をセンターロッドとしているが、第1取付軸16をカラー17,18を廃止してセンターロッドとしてもよいし、第1隔壁15にセンターロッドが一体に設けられてもよい。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1・・・シリンダ、2・・・ピストンロッド、2a・・・ピストン嵌合部、3・・・ピストン、4・・・外筒、7・・・伸側メインバルブ、11・・・圧側メインバルブ、12・・・伸側サブバルブ、12a・・・伸側弁体、12b・・・伸側ばね、13・・・圧側サブバルブ、13a・・・圧側弁体、13b・・・圧側ばね、14・・・吸込チェックバルブ、15・・・第1隔壁、15a・・・第1伸側ポート、15b・・・第1圧側ポート、20・・・第2隔壁、20a・・・第2伸側ポート、20b・・・第2圧側ポート、D・・・緩衝器、R・・・リザーバ、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室、R3・・・中間室、W・・・隔壁部材
図1
図2
図3
図4
図5